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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】マニピュレータ
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021041211
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141073
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 康祐
(72)【発明者】
【氏名】吉原 康二
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146794(JP,A)
【文献】特開2007-136975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクが関節を介して繋がり、基端がベース部材に固定され、先端に設けたエンドエフェクタが前記関節の動作により目標の位置に移動可能なアームと、
前記アームの関節を動作させて前記エンドエフェクタを目標の位置に移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作を検出する位置センサと、
前記アームまたは前記エンドエフェクタのいずれかに設けられた加速度センサと、
位置指令に基づいて前記アクチュエータを駆動して前記位置センサの出力値をフィードバックしつつ前記エンドエフェクタを目標の位置に移動させるフィードバック制御を行うとともに、前記加速度センサの出力値に基づいて振動抑制制御を行う制御部と、
を備えるマニピュレータであって、
前記制御部は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の前記加速度センサの出力値が基準レベルとクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化する
ことを特徴とするマニピュレータ。
【請求項2】
前記制御部は、重力によるオフセット分を差し引いた前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、前記基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、前記基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、ゼロレベルに重力によるオフセット分を加算した前記基準レベルとクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記クロスするタイミングから一定時間後に前記振動抑制制御を無効化する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム制御において、移動~停止後に残留振動が生じることがある。その際、振動が落ち着くのを待ってから次の動作へ移るため、残留振動が大きいと動作の遅れにつながる。そのため、特許文献1に開示の成形品取出機のチャック制振方法においては、チャックの移動停止時に出力される停止指示信号に基づいて加速度センサからの信号を制御に用いることで、停止後の残留振動を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-136975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、停止指示信号を受けた瞬間、即ち、位置指令の動作停止となった瞬間に加速度センサの出力値をいきなり制御に反映させると、制御の出力が急峻に変化するため、振動を誘発する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのマニピュレータは、リンクが関節を介して繋がり、基端がベース部材に固定され、先端に設けたエンドエフェクタが前記関節の動作により目標の位置に移動可能なアームと、前記アームの関節を動作させて前記エンドエフェクタを目標の位置に移動させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータの動作を検出する位置センサと、前記アームまたは前記エンドエフェクタのいずれかに設けられた加速度センサと、位置指令に基づいて前記アクチュエータを駆動して前記位置センサの出力値をフィードバックしつつ前記エンドエフェクタを目標の位置に移動させるフィードバック制御を行うとともに、前記加速度センサの出力値に基づいて振動抑制制御を行う制御部と、を備えるマニピュレータであって、前記制御部は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の前記加速度センサの出力値が基準レベルとクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化することを要旨とする。
【0006】
これによれば、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の加速度センサの出力値が基準レベルとクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化することにより、位置指令の動作停止となった瞬間に加速度センサの出力値を制御に反映させる場合に比べ、振動を適切に抑制することができる。
【0007】
また、マニピュレータにおいて、前記制御部は、重力によるオフセット分を差し引いた前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、前記基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化するとよい。
【0008】
また、マニピュレータにおいて、前記制御部は、前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、前記基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化するとよい。
【0009】
また、マニピュレータにおいて、前記制御部は、前記加速度センサの出力値を元に算出した検出振動が、ゼロレベルに重力によるオフセット分を加算した前記基準レベルとクロスするタイミングで前記振動抑制制御を有効化するとよい。
【0010】
また、マニピュレータにおいて、前記制御部は、前記クロスするタイミングから一定時間後に前記振動抑制制御を無効化するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるマニピュレータの概略構成図。
図2】マニピュレータの電気的構成を示すブロック図。
図3】コントローラの機能ブロック図。
図4】(a)~(d)は位置指令、加速度、加速度センサ使用/不使用を示すタイムチャート。
図5】マニピュレータの概略構成図。
図6】(a)~(d)は位置指令、加速度、加速度センサ使用/不使用を示すタイムチャート。
図7】(a)~(d)は位置指令、加速度、加速度センサ使用/不使用を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1図2に示すように、マニピュレータ10は、アーム20と、アクチュエータ30と、位置センサ40と、加速度センサ50と、制御部としてのコントローラ60と、を備える。図1において、水平方向をx,y方向で示すとともに、上下方向をz方向としている。
【0014】
図1に示すように、アーム20は、リンク21a,21b,21c,21d,21e,21fが関節22a,22b,22c,22d,22eを介して繋がっている。詳しくは、基端側の棒状のリンク21aの先端側には関節22aが設けられ、関節22aと関節22bとの間が棒状のリンク21bで連結されている。関節22bと関節22cとの間が棒状のリンク21cで連結されている。関節22cと関節22dとの間が棒状のリンク21dで連結されている。関節22dと関節22eとの間が棒状のリンク21eで連結されている。関節22eには先端側の棒状のリンク21fが繋がっている。
【0015】
リンク21aの基端がベース部材24に固定されている。これにより、アーム20は、基端がベース部材24に固定されている。リンク21fの先端にはエンドエフェクタ(手先効果器)23が取り付けられている。これにより、アーム20は、先端に設けたエンドエフェクタ23が関節22a,22b,22c,22d,22eの動作により目標の位置に移動可能である。
【0016】
アクチュエータ30は、アーム20の関節22a,22b,22c,22d,22eに設けられている。アクチュエータ30は、アーム20の関節22a,22b,22c,22d,22eを動作させてエンドエフェクタ23を目標の位置に移動させるためのものである。アクチュエータ30は、例えば、関節モータで構成されている。エンドエフェクタ23は、例えば、把持機器である。
【0017】
位置センサ40は、アクチュエータ30の動作を検出する。位置センサ40により、例えば、アクチュエータ30の動作としてモータの回転角を検出でき、これにより関節角度等を検知することが可能となる。
【0018】
加速度センサ50は、エンドエフェクタ23に設けられている。加速度センサ50は、アーム20の先端部の振動を検出するためのものである。
図1に示すように、エンドエフェクタ23に設けられた加速度センサ50は、取付面に対して平行方向(x´,y´方向)と垂直方向(z´方向)の3方向の加速度を検出する。よって、図1のリンク21fが斜め下方に延びる状態では、地面に対して水平方向(x,y方向)と加速度検出方向とはずれている。これにより、加速度センサ50の検出値には、重力によるオフセット分が含まれている。
【0019】
コントローラ60は、マイクロコンピュータを中心に構成されている。マイクロコンピュータは、命令を解読しデータ処理を実行するCPU、プログラムやデータを保存するメモリ、外部のセンサ、アクチュエータとのデータの送受信を制御する入出力部等から構成されている。
【0020】
図2に示すように、コントローラ60には上位機器であるホストコンピュータ100が接続されている。ホストコンピュータ100からコントローラ60に位置指令が送られてくる。なお、位置指令とは、上位から送られてくる位置指令だけでなくフィルタを介した位置指令も含む。コントローラ60にはアクチュエータ30が接続されている。コントローラ60は、アクチュエータ30に指令を出してアーム20の関節22a,22b,22c,22d,22eを動作させてエンドエフェクタ23を目標の位置に移動させる。
【0021】
コントローラ60には位置センサ40が接続されている。コントローラ60は位置センサ40の出力値を入力してアクチュエータ30の動作を検知することができる。コントローラ60には加速度センサ50が接続されている。コントローラ60は加速度センサ50の出力値を入力してアーム20またはエンドエフェクタ23の振動を検知することができる。
【0022】
コントローラ60は、位置指令に基づいてアクチュエータ30を駆動して位置センサ40の出力値をフィードバックしつつエンドエフェクタ23を目標の位置に移動させるフィードバック制御を行う。コントローラ60は、加速度センサ50の出力値に基づいて振動抑制制御を行う。
【0023】
図3に示すように、コントローラ60は、減算部61と減算部62と開閉部63と開閉制御部64と検出振動算出部65と振動抑制制御部66と位置制御部67と速度制御部68と速度推定部69を有する。また、本例では位置制御-速度制御のP-PIカスケード構造を示しているが、速度推定部や速度制御部を有さないPID制御やI-PD制御も同様の効果を期待できる。
【0024】
位置指令であるアクチュエータへの駆動指令値が減算部61に入力される。位置センサ40の出力値が減算部61に入力される。減算部61において、位置指令(アクチュエータへの駆動指令値)に対する位置センサ40の出力値である実位置の差が出力される。
【0025】
位置制御部67において、減算部61の出力が入力され、制御信号ωrefが出力される。
検出振動算出部65において、加速度センサ50の出力値である実加速度が入力され、オフセット処理ならびに姿勢に応じた座標変換処理がなされ、検出振動が出力される。ここで算出される検出振動は、振動抑制制御を行うアクチュエータの回転軸から見た接線方向の振動である。図1において、関節22c内のアクチュエータで振動抑制制御を実施する際の検出振動の方向は、関節22c内のアクチュエータの回転軸の接線方向となる。
【0026】
振動抑制制御部66において、検出振動が入力され、制御信号ωaccが出力される。
速度推定部69において、アクチュエータないしはアームの速度ωmが出力される。
減算部62において、制御信号ωrefと、制御信号ωaccと、速度ωmが入力される。減算部62において、制御信号ωrefに対する制御信号ωaccと、速度ωmの差が出力される。
【0027】
減算部62の出力が速度制御部68に入力され、速度制御部68は駆動指令を出力する。
速度制御部68の出力がアクチュエータ(関節モータ)30に駆動指令として送られ、この駆動指令に基づいてアクチュエータ(関節モータ)30が駆動する。
【0028】
検出振動算出部65から振動抑制制御部66への信号伝達ライン上には開閉部63が設けられている。開閉部63は開閉制御部64により開閉される。開閉制御部64は、位置指令を入力するとともに検出振動算出部65の出力値を入力する。開閉制御部64は、位置指令と検出振動算出部65の出力値に基づいて開閉部63を開閉する。
【0029】
コントローラ60は、アクチュエータへの駆動指令値あるいは位置センサ40の実測値からアーム20の姿勢を検知する。コントローラ60は、アーム20の姿勢から加速度センサ50の姿勢を検知する。コントローラ60は、加速度センサ50の姿勢に基づいて重力によるオフセット分OSg(図4(b)参照)を算出する。つまり、コントローラ60は、アーム20の姿勢が分かることにより加速度センサ50の出力値のうちの重力によるオフセット分OSgを検知することができる。
【0030】
次に、作用について説明する。
図4(a)には位置指令を示す。図4(b)には検出振動算出部65の出力値を示す。図4(c)には開閉部63の開閉、即ち、検出振動算出部65の出力値を制御に使用する、あるいは、不使用とする指令を示す。図4(d)には開閉部63が開くことによる振動抑制制御部66の入力信号accを示す。
【0031】
図4(a)においてt1が動作開始タイミングであり、t2が動作停止タイミングである。
図1図4(b)に示すように、加速度センサ50の加速度検出方向と重力の方向が直交しない場合、アーム20の姿勢に応じて加速度センサ50の出力値に重力によるオフセット分OSgが生じる。即ち、加速度センサ50の出力値には重力によるオフセット分OSgが含まれている。コントローラ60の開閉制御部64は、加速度センサ50の出力値から姿勢による重力オフセット分(OSg)を差し引いて検出振動を得る。つまり、アクチュエータへの駆動指令値あるいは位置センサ40の実測値からアーム20の姿勢が分かるので加速度センサ50の姿勢が分かり、加速度センサ50の姿勢に基づいて重力によるオフセット分OSgを計算することができる。
【0032】
そして、コントローラ60の開閉制御部64は、図4(a)~図4(d)に示すように、検出振動と基準レベルとしてのゼロレベルとを比較して検出振動が基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするt3のタイミングで開閉部63を閉じる。これにより、減算部62において、減算部61の出力に対し加速度センサ50の出力値が減算されてアクチュエータ30の駆動指令となる。
【0033】
このように、コントローラ60は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の重力によるオフセット分OSgを差し引いた加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が、基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで加速度センサ50を用いた振動抑制制御を有効化する。広義には、コントローラ60は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の加速度センサ50の出力値が基準レベルとクロスするt3のタイミングで振動抑制制御を有効化する。
【0034】
図4(c)に示すように、コントローラ60の開閉制御部64は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の一定時間T2が経過した後のt4のタイミングで開閉部63を開く。
【0035】
このように、コントローラ60は、図4(c)に示すように、クロスするタイミングから一定時間T2後のt4のタイミングで開閉部63を開いて振動抑制制御を無効化する。
その結果、図4(d)に示すように、t3~t4の期間における加速度センサ50の出力値が振動抑制制御に反映される。
【0036】
図5に示すように、リンク21fが水平方向に延びる状態からエンドエフェクタ23を水平方向に移動させる場合には、リンク21fでは、水平方向(x,y方向)と加速度検出方向とが一致している。これにより、加速度センサ50の検出値には、重力によるオフセット分が含まれない。即ち、水平方向にしか動かない場合には重力によるオフセット分を考慮しなくてもよい。
【0037】
重力に直交する水平方向へ移動する場合、即ち、加速度センサ50の加速度検出方向と重力の方向が直交する場合、加速度センサ50の出力値に重力によるオフセット分が生じない。この場合には、次のようになる。
【0038】
図6(a)においてt1が動作開始タイミングであり、t2が動作停止タイミングである。
図5図6(b)に示すように、加速度センサ50の出力値には重力によるオフセット分が含まれていない。よって、加速度センサ50の出力値が検出振動となる。コントローラ60の開閉制御部64は、加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動と基準レベルとしてのゼロレベルとを比較して加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするt10のタイミングで開閉部63を閉じる。これにより、減算部62において、減算部61の出力に対し加速度センサ50の出力値が減算されてアクチュエータ30の駆動指令となる。このように、コントローラ60は、加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするt10のタイミングで加速度センサ50の出力値を用いた振動抑制制御を有効化する。
【0039】
図6(c)に示すように、コントローラ60の開閉制御部64は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の一定時間T2が経過した後のt11のタイミングで開閉部63を開く。このように、コントローラ60は、図6(c)に示すように、クロスするタイミングから一定時間T2後のt11のタイミングで開閉部63を開いて振動抑制制御を無効化する。
【0040】
その結果、図6(d)に示すように、t10~t11の期間における加速度センサ50の出力値が振動抑制制御に反映される。
以下、詳しく説明する。
【0041】
アクチュエータ(モータ)駆動開始直後から加速度センサ50による振動抑制制御を行うと、駆動のための加速度を振動による加速度と捉えてしまい加速度を加わりにくくする方向にトルクが出るようにしてしまい移動速度が低下する懸念がある。振動にはアーム先端部が動いている時の振動と停止した時の振動がある。本実施形態では、アーム先端部が動いている時の振動、及び、位置指令の動作停止直後の振動は制御に反映させない。これにより、移動速度が低下することを防止することができる。
【0042】
また、特許文献1に開示の技術のように停止指示信号を入力した瞬間に振動抑制制御を行うと、加速度センサ出力値を入力した途端に大きな外乱を入力することにより振動が誘発されることが懸念される。アクチュエータ(モータ)停止後の残留振動について、本実施形態では、検出振動がゼロとなるタイミングから制御を開始することにより、ゼロでなければアクチュエータ(モータ)への指令が急峻に変化して振動を誘発するのに対し、振動の誘発を防ぐことができる。具体的には、図4(a)~図4(d)でのt2~t3の時間T1における加速度センサ出力値(ステップ状の外乱)を無効化する。
【0043】
このようにして、アーム20の移動(アクチュエータ30の駆動)速度を低下させることなく、かつアーム先端部の振動を抑制することができる。
また、目標指令値はA→B→Cというように変わっていくので、次にアクチュエータ(モータ)が駆動する際に加速度センサ50を用いた制御が有効化していると次の動き出しにおいて動作に遅れが生じる。本実施形態では、加速度センサ50を用いた制御を有効化してから一定時間T2が経過したら、加速度センサ50を用いた制御を再度無効化する。よって、加速度センサ50の出力値の内の所定時期の出力値を排除することにより、アクチュエータ(モータ)への指令に対して遅れなく追従することができる。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)マニピュレータ10の構成として、リンク21a,21b,21c,21d,21e,21fが関節22a,22b,22c,22d,22eを介して繋がり、基端がベース部材24に固定され、先端に設けたエンドエフェクタ23が関節22a,22b,22c,22d,22eの動作により目標の位置に移動可能なアーム20を備える。アーム20の関節を動作させてエンドエフェクタ23を目標の位置に移動させるためのアクチュエータ30と、アクチュエータ30の動作を検出する位置センサ40を備える。エンドエフェクタ23に設けられた加速度センサ50を備える。位置指令に基づいてアクチュエータ30を駆動して位置センサ40の出力値をフィードバックしつつエンドエフェクタ23を目標の位置に移動させるフィードバック制御を行うとともに、加速度センサ50の出力値に基づいて振動抑制制御を行う制御部としてのコントローラ60を備える。コントローラ60は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の加速度センサ50の出力値が基準レベルとクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化する。
【0045】
よって、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の加速度センサ50の出力値が基準レベルとクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化することにより、位置指令の動作停止となった瞬間に加速度センサの出力値をいきなり制御に反映させる場合に比べ、図4(b)に示すように所定の時間T1だけ遅らせて振動を適切に抑制することができる。
【0046】
(2)図4(a)~図4(d)を用いて説明したように、コントローラ60は、重力によるオフセット分OSgを差し引いた加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が、基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化する。よって、加速度センサ50において重力を加味して振動を適切に抑制することができる。
【0047】
(3)図6(a)~図6(d)を用いて説明したように、コントローラ60は、加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が、基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化する。よって、加速度センサ50において重力を加味することなく加速度検出方向のみ考慮すればよい場合において振動を適切に抑制することができる。
【0048】
(4)コントローラ60は、クロスするタイミングから一定時間後に振動抑制制御を無効化する。よって、次の位置指令に対して動作に遅れが生じるのを抑制することができる。
【0049】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4(a)~図4(d)で説明したように、コントローラ60は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の加速度センサ50の出力値から重力によるオフセット分OSgを差し引いた検出振動が基準レベルとしてのゼロレベルとゼロクロスするタイミングで加速度センサ50の出力値を用いた振動抑制制御を有効化した。
【0050】
これに代わり図7(a)~図7(d)に示すようにしてもよい。
検出振動を計算せずに、加速度センサ50の出力値と重力によるオフセット分OSgを直接比較する。アーム姿勢から重力によるオフセット分OSgを計算し、ゼロレベルに重力によるオフセット分OSgを加算したものを基準レベルLrefとする。
【0051】
図7(a)においてt1が動作開始タイミングであり、t2が動作停止タイミングである。図7(b)に示すように、加速度センサ50の出力値には重力によるオフセット分OSgが含まれている。コントローラ60の開閉制御部64は、ゼロレベルに重力によるオフセット分OSgを加算した基準レベルLrefと加速度センサ50の出力値を比較して基準レベル(ゼロレベルに重力オフセット分を加算したもの)Lrefに加速度センサ50の出力値がクロスするt20のタイミングで開閉部63を閉じる。これにより、減算部62において、減算部61の出力に対し加速度センサ50の出力値が減算されてアクチュエータ30の駆動指令となる。よって、アクチュエータ(モータ)への指令が急峻に変化するのを防止できる。
【0052】
図7(c)に示すように、コントローラ60の開閉制御部64は、位置指令の動作停止タイミングを検知した後の一定時間T2が経過した後のt21のタイミングで開閉部63を開く。このように、コントローラ60は、図7(c)に示すように、クロスするタイミングから一定時間T2後のt21のタイミングで開閉部63を開いて振動抑制制御を無効化する。その結果、図7(d)に示すように、t20~t21の期間における加速度センサ50の出力値が振動抑制制御に反映される。
【0053】
このようにして、コントローラ60は、加速度センサ50の出力値を元に算出した検出振動が、ゼロレベルに重力によるオフセット分OSgを加算した基準レベルLrefとクロスするタイミングで振動抑制制御を有効化する。よって、加速度センサ50において重力を加味して振動を適切に抑制することができる。
【0054】
・加速度センサ50は、エンドエフェクタ23に設けたが、加速度センサ50は、アーム20に設けられていてもよい。要は、加速度センサ50は、アーム20またはエンドエフェクタ23のいずれかに設けられていればよい。
【符号の説明】
【0055】
10…マニピュレータ、20…アーム、21a,21b,21c,21d,21e,21f…リンク、22a,22b,22c,22d,22e…関節、23…エンドエフェクタ、24…ベース部材、30…アクチュエータ、40…位置センサ、50…加速度センサ、60…コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7