(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240516BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240516BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20240516BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/184 Z
H01M50/186
H01G11/28
(21)【出願番号】P 2021021094
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-273350(JP,A)
【文献】特開2020-030962(JP,A)
【文献】特開2020-061221(JP,A)
【文献】特開2020-024820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00- 10/39
H01M 50/00- 50/198
H01G 11/00- 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体、及び前記第1集電体の第1面に設けられた第1活物質層を有する第1電極と、
第2集電体、及び前記第2集電体の第2面に設けられ、前記第1活物質層と対向すると共に、前記第1活物質層と異なる極性の第2活物質層を有する第2電極と、
前記第1活物質層と前記第2活物質層が対向する対向方向において、前記第1活物質層及び前記第2活物質層の間に配置されたセパレータと、
前記第1集電体及び前記第2集電体の間の空間に電解液を封止する封止部と、を備え、
前記封止部は、前記第1面の縁部の全周及び前記第2面の縁部の全周にわたって接着された外周領域と、前記対向方向から見て前記外周領域の内側に配置され、前記第1面及び前記第2面に接着されていない内周領域と、を含み、
前記外周領域は、前記第1面と対向して当該第1面に接着された第3面と、前記第2面と対向して当該第2面に接着された第4面と、を有し、
前記セパレータの端部は、前記第3面及び前記第4面から離間して前記封止部に固定されている、
蓄電セル。
【請求項2】
前記セパレータの端部は、前記内周領域に固定されている、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記対向方向から見て、前記セパレータの端部は、前記外周領域の内周よりも内側に位置し、前記外周領域の内周から離間している、
請求項1
又は2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記対向方向において、前記内周領域は、前記第1面との間に前記セパレータの端部を挟み込んでいる、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記
封止部は、前記第1面の縁部に接着された第1樹脂層と、前記第2面の縁部に接着された第2樹脂層とが積層されてなり、
前記対向方向から見て、前記第1樹脂層の内周は、前記第2樹脂層の内周よりも内側に位置し、前記第1樹脂層のうち、前記第2樹脂層の内周よりも内側に位置している領域は、前記内周領域を構成している、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記対向方向において、前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層よりも薄い、
請求項
5に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記対向方向において、前記内周領域は、前記第1面から離間している、
請求項
5又は
6に記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記第1集電体は、前記第2集電体に対し、重力方向の上側に配置されている、
請求項
1~7のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の蓄電セルが積層された積層体を備える、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体と、集電体の一方の面に形成された正極活物質層と、集電体の他方の面に形成された負極活物質層と、を備える双極型電極がセパレータを介して積層されてなる双極型二次電池が記載されている。この双極型二次電池では、集電体の一方面及び他方面の周縁部にそれぞれシール部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池では、正極と負極の短絡を抑制するように、積層方向で隣り合うシール部の間にセパレータの周縁部を挟み込んだ状態で、シール部同士及びシール部と集電体とが溶着されている。シール部を集電体に接着するには、集電体とシール部とが重なる溶着範囲に圧力及び熱をかけて、シール部を溶融させる必要がある。ところで、シール部と集電体の溶着範囲にセパレータの端部が位置する場合、熱をかける前の状態では、セパレータの端面の外側には、セパレータの厚さに起因してシール部が存在しない微小空間が形成される。セパレータの端部を溶着範囲に位置させた状態で、溶着範囲に圧力及び熱をかけると、溶融した樹脂の一部がこの微小空間にも流れ込む。しかしながら、この微小空間が形成されていた部分には、セパレータの厚さにより、圧力が十分にかかり難い。このため、セルを封止するためにシールしている領域の端部に、シール部同士の接合が不十分な弱接着部が形成されることとなる。この弱接着部は、セパレータの周縁部に隣接して形成されるため、電池に電解液を封入した状態では、セパレータ経由で電解液が弱接着部に浸透しやすくなっている。セパレータの端部を介して弱接着部の樹脂が電解液により膨潤すると、弱接着部の接着力が低下して、シール部同士の剥離が発生する。そして、この弱接着部は、シール部同士が強く接着された部分に連続しているため、弱接着部の剥離が起点となり、強く接着されている部分にも剥離が伝播するおそれがある。その結果、シール部が開裂し、電池の封止性が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、封止性の低下を抑制可能な蓄電セル及び蓄電装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電セルは、第1集電体、及び第1集電体の第1面に設けられた第1活物質層を有する第1電極と、第2集電体、及び第2集電体の第2面に設けられ、第1活物質層と対向すると共に、第1活物質層と異なる極性の第2活物質層を有する第2電極と、第1活物質層と第2活物質層が対向する対向方向において、第1活物質層及び第2活物質層の間に配置されたセパレータと、第1集電体及び第2集電体の間の空間に電解液を封止する封止部と、を備え、封止部は、第1面の縁部の全周及び第2面の縁部の全周にわたって接着された外周領域と、対向方向から見て外周領域の内側に配置され、第1面及び第2面に接着されていない内周領域と、を含み、内周領域には、セパレータの端部が固定されている。
【0007】
上記蓄電セルでは、封止部は、第1集電体及び第2集電体に接着された外周領域を有し、外周領域により第1集電体及び第2集電体の間の空間を封止する。封止部は、セパレータの端部が固定されている内周領域を更に有する。セパレータの端部が封止部と第1集電体及び第2集電体との接着部である外周領域に固定されている場合と異なり、本構成では、封止部が第1集電体及び第2集電体に接着される接着部とは別の部分でセパレータの端部を固定している。したがって、接着部の端部に弱接着部が形成されない。このため、弱接着部の剥離を起点とする封止部の剥離が抑制される。これにより、封止性の低下を抑制することができる。
【0008】
対向方向から見て、セパレータの端部は、外周領域から離間して外周領域の内周よりも内側に位置していてもよい。この場合、外周領域における第1集電体及び第2集電体との接着部と、セパレータの端部は、非接着部を介して互いに離間するので、接着部の端部に弱接着部が形成されないことに加えて、セパレータの端部を介して封止部が電解液により膨潤することによる影響は、外周領域における第1集電体及び第2集電体との接着部には更に及び難い。
【0009】
対向方向において、内周領域は、第1面との間にセパレータの端部を挟み込んでいてもよい。この場合、セパレータと内周領域を接合しなくても、第1電極や第2電極の活物質が膨張・収縮した際のセパレータの位置ずれを防止することができる。
【0010】
外周領域は、第1面の縁部に接着された第1樹脂層と、第2面の縁部に接着された第2樹脂層とが積層されてなり、対向方向から見て、第1樹脂層の内周は、第2樹脂層の内周よりも内側に位置し、第1樹脂層のうち、第2樹脂層の内周よりも内側に位置している領域は、内周領域を構成していてもよい。この場合、内周領域を第2樹脂層の分だけ薄くすることができる。よって、空間を広く保つことができる。
【0011】
対向方向において、第1樹脂層は、第2樹脂層よりも薄くてもよい。この場合、空間を更に広く保つことができる。
【0012】
対向方向において、内周領域は、第1面から離間していてもよい。この場合、第1面と内周領域との間に電解液が溜まり難い。
【0013】
第1集電体は、第2集電体に対し、重力方向の上側に配置されていてもよい。この場合、第1面と内周領域との間に電解液が更に溜まり難い。
【0014】
本開示に係る蓄電装置は、上記蓄電セルが積層された積層体を備える。
【0015】
上記蓄電装置では、上記蓄電セルが積層された積層体を備えるので、封止性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、封止性の低下を抑制可能な蓄電セル及び蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1変形例に係る蓄電セルの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、第2変形例に係る蓄電セルの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0019】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電装置1は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0020】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2がスタック(積層)されたセルスタック3(積層体)を備える。
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
図1及び
図2に示されるように、各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、封止部14と、を備える。正極11及び負極12は、互いに対向して配置されている。正極11及び負極12の対向方向Dは、複数の蓄電セル2の積層方向と一致している。正極11及び負極12は、対向方向Dから見て、例えば矩形状の電極である。対向方向Dは、例えば、重力方向であり、正極11は、負極12に対し、重力方向の上側に配置されている。
【0021】
正極11は、集電体21と、正極活物質層23とを備える。集電体21は、互いに反対を向く第1面21a及び第2面21bを有している。第1面21aには、正極活物質層23が設けられている。第1面21aの縁部21cには、正極活物質層23が設けられていない。縁部21cは、対向方向Dから見て、第1面21aにおいて正極活物質層23が設けられた領域の外側に位置している。第2面21bには、全面的に正極活物質層23が設けられていない。
【0022】
負極12は、集電体22と、正極活物質層23と異なる極性の負極活物質層24とを備える。集電体22は、互いに反対を向く第1面22a及び第2面22bを有している。第1面22aには、負極活物質層24が設けられている。負極活物質層24は、正極活物質層23と対向方向Dにおいて対向する。第1面22aの縁部22cには、負極活物質層24が設けられていない。縁部22cは、対向方向Dから見て、第1面22aにおいて負極活物質層24が設けられた領域の外側に位置している。第2面22bには、全面的に負極活物質層24が設けられていない。
【0023】
正極11及び負極12は、正極活物質層23及び負極活物質層24が対向方向Dにおいて互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層23及び負極活物質層24は、いずれも対向方向Dから見て矩形状に形成されている。負極活物質層24は、正極活物質層23よりも一回り大きく形成されている。対向方向Dから見て、正極活物質層23の全体が負極活物質層24の外縁よりも内側に位置している。
【0024】
集電体21の第2面21bと集電体22の第2面22bとが互いに接するように、蓄電セル2がスタックされることによって、セルスタック3が構成される。これにより、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層方向において互いに隣り合う蓄電セル2,2では、一方の蓄電セル2の集電体21と、他方の蓄電セル2の集電体22とが互いに接する。
【0025】
セルスタック3では、積層方向において互いに隣り合う蓄電セル2,2により、互いに接する集電体21及び集電体22を1つの集電体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。積層方向におけるセルスタック3の一端には、集電体21を含む終端電極(本実施形態では正極終端電極)が配置される。積層方向におけるセルスタック3の他端には、集電体22を含む終端電極(本実施形態では負極終端電極)が配置される。
【0026】
集電体21,22は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層23及び負極活物質層24に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21,22を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料や非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体21,22は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体21,22の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。集電体21,22は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体21,22を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等が用いられる。集電体21,22は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。集電体21,22が箔状の場合、集電体21,22の厚さは1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。集電体21,22は、例えばアルミニウム箔の片面に銅メッキすることにより一体化されていてもよい。本実施形態では、集電体21はアルミニウム箔であり、集電体22は銅箔である。
【0027】
正極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等が挙げられる。
【0028】
負極活物質層24は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0029】
正極活物質層23及び負極活物質層24には、活物質のほか、結着剤及び導電助剤が含まれ得る。結着剤は、活物質又は導電助剤を互いに繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタアクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等の導電性材料であり、電気伝導性を高めることができる。粘度調整溶媒には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。
【0030】
正極活物質層23及び負極活物質層24を第1面21a,22aに形成するには、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を第1面21a,22aに塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮してもよい。
【0031】
セパレータ13は、対向方向Dにおいて、正極11及び負極12の間に配置されている。セパレータ13は、正極11及び負極12の間に介在している。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合う正極11及び負極12を隔離することで、両極の接触による電気的短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、互いに対向する正極活物質層23及び負極活物質層24の間に配置されている。
【0032】
セパレータ13は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24よりも一回り大きく、かつ集電体21,22よりも一回り小さい矩形状をなしている。セパレータ13の端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24の外側に配置されている。セパレータ13の端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24のいずれとも重ならない。
【0033】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ13は、例えば、多層構造である。セパレータ13は、基材層(不図示)及び一対の接着層(不図示)を含み、一対の接着層により正極活物質層23及び負極活物質層24に接着固定されている。セパレータ13は、耐熱層となるセラミック層を含んでもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。セパレータ13は、単層構造であってもよい。
【0034】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。セパレータ13に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0035】
封止部14は、集電体21及び集電体22の間の空間Sに電解液を封止する樹脂部材である。封止部14は、対向方向Dから見て正極活物質層23及び負極活物質層24の周囲を取り囲むように、集電体21の第1面21a及び集電体22の第1面22aの間に配置されている。封止部14は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24から離間している。
【0036】
蓄電セル2では、集電体21、集電体22、及び封止部14により空間Sが画定されている。空間Sには電解液(不図示)が収容されている。封止部14は、集電体21及び集電体22の間に配置されることにより、集電体21と集電体22との間の間隔を保持するスペーサとしても機能している。封止部14は、第1面21aと対向する対向面14aと、第1面22aと対向する対向面14bと、空間Sに面する内周面14cと、を有する。
【0037】
封止部14は、外周領域R1及び内周領域R2を含む。外周領域R1は、例えば熱圧着又は超音波により、第1面21aの縁部21cの全周及び第1面22aの縁部22cの全周にわたって接着されている。対向面14a,14bのうち、外周領域R1に含まれる部分がそれぞれ縁部21c,22cに接着されている。封止部14は、外周領域R1により空間Sを封止している。内周領域R2は、対向方向Dから見て、外周領域R1と隣り合い、外周領域R1の内側に配置されている。内周領域R2は、第1面21a及び第1面22aに当接しているものの、第1面21a及び第1面22aに接着されていない。よって、内周領域R2は、空間Sの封止には寄与していない。
【0038】
封止部14は、
図2で示されるように外周領域R1及び内周領域R2において略均一の厚さ(対向方向Dにおける長さ)であってもよい。また、封止部14は、集電体21,22に接着された外周領域R1の厚さが、接着されていない内周領域R2の厚さよりも薄くなっていてもよく、接着されていない内周領域R2の厚さよりも厚くなっていてもよい。
【0039】
内周領域R2には、セパレータ13の端部13aが溶着されている。対向方向Dにおいて、内周領域R2は、集電体22の第1面22aとの間に端部13aを挟み込んでいる。これによっても、端部13aの位置が固定されている。対向方向Dから見て、端部13aは、外周領域R1の内周よりも内側に位置し、外周領域R1の内周から離間している。端部13aは、対向方向Dから見て、内周領域R2と重なっているので、端部13a及び内周領域R2の接触面積を十分に確保することができる。
図1及び
図2では、厚さが強調して示されているが、実際の封止部14は薄く、内周面14cは狭い。
【0040】
内周領域R2の幅は、例えば、外周領域R1の幅よりも狭い。内周領域R2の幅は、例えば1mm以上10mm以下である。幅が1mm以上であることにより、セパレータ13の端部13a及び内周領域R2の接触面積が確保され、端部13aの位置をしっかり固定することができる。幅が10mm以下であることにより、空間Sを広く保つことができる。なお、外周領域R1及び内周領域R2の幅は、対向方向Dから見て、集電体21,22の外縁21d,22d又は内周面14cに直交する方向における外周領域R1及び内周領域R2の長さである。
【0041】
封止部14は、耐電解液性及び電気絶縁性を有する樹脂材料により構成される。封止部14を構成する樹脂材料としては、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、ポリスチレン、ABS樹脂、及びアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂が挙げられる。本実施形態では、封止部14は、酸変性ポリプロピレンにより構成される。酸変性ポリプロピレンは、酸変性されていないポリプロピレンと比較して、金属に接着し易いので、封止性を向上させることができる。酸変性ポリエチレンも、酸変性されていないポリエチレンと比較して、金属に接着し易い。
【0042】
本実施形態では、セルスタック3の積層方向に配列された複数の封止部14が、溶着により互いに一体化されて矩形の筒状部材4を形成している。本実施形態では、封止部14における集電体21,22の外縁21d,22dから外にはみ出した部分が、溶着により互いに一体化されている。筒状部材4は、セルスタック3の積層方向の一端に配置された集電体21から、積層方向の他端に配置された集電体22まで積層方向に延在している。
【0043】
以下、蓄電セル2及び蓄電装置1の作用効果について説明する。蓄電セル2では、封止部14は、集電体21及び集電体22に接着された外周領域R1を有し、外周領域R1により集電体21及び集電体22の間の空間Sを封止している。空間Sには、電解液が収容されている。電解液はセパレータ13に染み込むので、セパレータ13の端部13aが封止部14に当接する構成では、電解液がセパレータ13の端部13aを通じて封止部14を膨潤させるおそれがある。仮に、集電体21,22と封止部14とが接着される部分である外周領域R1にセパレータ13の端部13aが固定されている場合、特許文献1に記載の発明のようにセパレータ13の端面の外側に弱接着部が形成される。弱接着部の樹脂は、電解液の膨潤により接着性が低下し易い。よって、セパレータ13を介して弱接着部の樹脂が膨潤して剥離が発生すると、その弱接着部の剥離が起点となって、弱接着部に連続する集電体21,22と封止部14とが強く接着された接着部にも剥離が伝播して、蓄電セル2の封止性が低下するおそれがある。
【0044】
蓄電セル2では、封止部14は、外周領域R1とは別の部分に、セパレータ13の端部13aが溶着された内周領域R2を有する。内周領域R2は、集電体22との間にセパレータ13の端部13aを挟み込んでいる。内周領域R2は、集電体21及び集電体22に接着されていない。すなわち、対向方向Dから見て、内周領域R2の溶着部の外縁と、外周領域R1の各接着部の内縁とは、どこにも接着されていない非接着部を介して、互いに離間している。したがって、セパレータ13の端部13aが外周領域R1に固定されている場合と異なり、外周領域R1における接着部の端部に弱接着部が形成されることがない。このため、電解液がセパレータ13を通じて弱接着部の樹脂を膨潤させることにより発生する、封止部14の集電体21,22からの剥離が抑制される。また、セパレータ13の端部13aを介して内周領域R2の樹脂が電解液によって膨潤したとしても、外周領域R1の接着部には、その影響が及び難い。つまり、内周領域R2の樹脂の電解液による膨潤は、外周領域R1の接着部の接着性を低下させる直接の要因とはならない。よって、封止部14が集電体21,22から剥離することが抑制される。これにより、蓄電セル2では、封止性の低下を抑制することができる。蓄電セル2では、対向方向Dから見て、セパレータ13の端部13aは、外周領域R1から離間して外周領域R1の内周(内縁)よりも内側に位置している。
【0045】
内周領域R2と集電体22との間にセパレータ13の端部13aを挟み込んだ状態で、外周領域R1及び内周領域R2を集電体21,22に接着した場合、内周領域R2側ではセパレータ13の端部13aの分だけ厚さが増す。よって、内周領域R2にセパレータ13の端部13aを溶着しなくても、セパレータ13の端部13aを挟み込み、固定することができる。正極11の集電体21と負極12の集電体22が対向方向Dに直接対向しないように、セパレータ13の端部13aが内周領域R2に溶着固定されているので、正極11と負極12の短絡が抑制される。
【0046】
蓄電装置1は、蓄電セル2が積層されたセルスタック3を備える。
【0047】
図3は、第1変形例に係る蓄電セルの概略的な断面図である。
図3に示されるように、第1変形例に係る蓄電セル2Aは、主に封止部14Aを備える点で、蓄電セル2(
図2参照)と相違している。封止部14Aは、対向方向Dにおいて積層された第1樹脂層15及び第2樹脂層16を有する。第1樹脂層15は、縁部21cに接着されている。第2樹脂層16は、縁部22cに接着されている。第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、互いに溶着(接着)されている。第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、互いに同じ樹脂材料により構成されていてもよい。第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、互いに異なる樹脂材料により構成されてもよい。対向方向Dにおいて、第1樹脂層15は第2樹脂層16よりも薄い。
【0048】
第1樹脂層15は、第1面21aと対向する対向面15aと、第2樹脂層16を介して第1面22aと対向する対向面15bと、空間Sに面する内周面15cとを有する。第2樹脂層16は、第1面22aと対向する対向面16aと、第1樹脂層15を介して第1面21aと対向する対向面16bと、空間Sに面する内周面16cとを有する。
【0049】
対向方向Dから見て、第1樹脂層15の幅は、第2樹脂層16の幅よりも広く、内周面15c(第1樹脂層15の内周)は、内周面16c(第2樹脂層16の内周)よりも内側に位置している。第1樹脂層15の外周面及び第2樹脂層16の外周面は、対向方向Dから見て同じ位置にある。第1樹脂層15は、内周面16cよりも内側に延在する延在部15dを有している。延在部15dは、対向方向Dから見て、第1樹脂層15のうち、第2樹脂層16よりも内側に位置している領域である。延在部15dの厚さは、空間Sの厚さよりも薄い。延在部15dは、第1面21a及び第1面22aの少なくとも一方から離間している。なお、第1樹脂層15及び第2樹脂層16の幅は、対向方向Dから見て、集電体21,22の外縁21d,22d又は内周面15c,16cに直交する方向における第1樹脂層15及び第2樹脂層16の長さである。
【0050】
外周領域R1は、第1樹脂層15及び第2樹脂層16が積層されてなる。外周領域R1は、第1樹脂層15の一部分(延在部15d以外の部分)、及び、第2樹脂層16の全部を含む。対向面15a,16aのうち、外周領域R1に含まれる部分が縁部21c,22cにそれぞれ接着されている。対向面15b,16bのうち、外周領域R1に含まれる部分同士が互いに溶着されている。
【0051】
内周領域R2は、延在部15dにより構成される。セパレータ13の端部13aは、内周領域R2に溶着(接着)されている。端部13aは、第1樹脂層15の対向面15aに溶着され、第1面21aと対向している。端部13aは、例えば、スポット溶着等により、部分的に内周領域R2に接着されている。内周領域R2は、外周領域R1よりも薄い。上述のように、封止部14を接着により集電体21,22に取り付ける場合、外周領域R1の厚さは、溶着前より薄くなるものの、内周領域R2の厚さよりは厚い。内周領域R2は、重力及びセパレータ13により引っ張られて垂れ下がり、対向方向Dにおいて、第1面21aから離間している。内周領域R2は、第1面21aに当接していてもよい。
【0052】
図4は、第2変形例に係る蓄電セルの概略的な断面図である。
図4に示されるように、第2変形例に係る蓄電セル2Bは、主に封止部14Bを備える点で、蓄電セル2(
図2参照)と相違している。封止部14Bは、封止部14A(
図3参照)と同形状を有しているため、説明を省略する。蓄電セル2Bでは、セパレータ13の端部13aは、第1樹脂層15の対向面15bに溶着され、第1面22aと対向している点で、蓄電セル2A(
図3参照)と相違している。
【0053】
蓄電セル2A,2Bにおいても、対向方向Dから見て、内周領域R2の溶着部の外縁と外周領域R1の各接着部の内縁とは、非接着部を介して互いに離間している。したがって、外周領域R1の各接着部の端部に弱接着部が形成されないので、電解液がセパレータ13を通じて弱接着部の樹脂を膨潤させて封止部14を集電体21,22から剥離させるおそれがない。また、セパレータ13の端部13aを介して内周領域R2の樹脂が電解液によって膨潤したとしても、外周領域R1の接着部には、その影響が及び難い。つまり、内周領域R2の樹脂の電解液による膨潤は、外周領域R1の接着部の接着性を低下させる直接の要因とはならない。よって、封止部14が集電体21,22から剥離することが抑制され、蓄電セル2A,2Bの封止性の低下を抑制することができる。蓄電セル2A,2Bでは、内周領域R2が第1樹脂層15の延在部15dのみで構成されている。このため、内周領域R2を第2樹脂層16の分だけ薄くすることができる。対向方向Dにおいて、内周領域R2を外周領域R1より薄くしているので、蓄電セル内に電池反応により発生するガス等を収容する余剰空間を確保しつつ蓄電セルの大型化を抑制することができる。
【0054】
内周領域R2は、第1面21a及び第1面22aの少なくとも一方から離間している。
図4において蓄電セル2A,2Bでは、内周領域R2が第1面22a側に垂れ下がり、第1面21a及び第1面22aの両方から離間している。よって、封止部14の外周領域R1の接着部がセパレータ13の端部13aを介して電解液によって膨潤されることが更に抑制され、封止性の低下を更に抑制することができる。
【0055】
蓄電セル2A,2Bでは、集電体21は、集電体22に対し、重力方向の上側に配置されていてもよい。電解液が重力方向に下に移動するので、セパレータ13の端部13aが溶着されている内周領域R2と集電体22の間に電解液が溜まり難い。よって、封止性の低下をより一層抑制することができる。
【0056】
本開示は上記実施形態及び上記変形例に限定されない。
【0057】
蓄電セル2では、正極11は、負極12に対し、重力方向の上側に配置されているが、正極11は、負極12に対し、重力方向の下側に配置されていてもよい。この場合、電解液は集電体22側に溜まり難い。蓄電セル2A,2Bにおいても、正極11は、負極12に対し、重力方向の下側に配置されていてもよい。
【0058】
蓄電セル2では、内周領域R2は、集電体22の第1面22aとの間にセパレータ13の端部13aを挟み込んでいるが、集電体21の第1面21aとの間にセパレータ13の端部13aを挟み込んでいてもよい。この場合、正極11は、負極12に対し、重力方向の上側に配置されているため、電解液は集電体21側に溜まり難い。
【0059】
蓄電セル2A,2Bでは、第1樹脂層15が延在部15dを有し、延在部15dが内周領域R2を構成するが、第2樹脂層16が延在部(不図示)を有してもよい。また、第2樹脂層16は、第1樹脂層15より薄くてもよいし、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、互いに同等の厚さを有していてもよい。
【0060】
蓄電セル2A,2Bでは、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、別部材であるが、一部材からなってもよい。例えば、1枚の樹脂層を折り畳んで積層し、1層目を第1樹脂層15とし、2層目を第2樹脂層16としてもよい。この場合、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は外縁部で互いに連続する構成となる。
【0061】
蓄電装置1は、蓄電セル2の代わりに蓄電セル2Aが積層されたセルスタック3を備えてもよいし、蓄電セル2Bが積層されたセルスタック3を備えてもよい。セルスタック3は、蓄電セル2,2A,2Bのうち2種類以上を含んでいてもよい。これらの場合でも、封止性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…蓄電装置、2,2A,2B…蓄電セル、3…セルスタック(積層体)、11…正極、12…負極、13…セパレータ、13a…端部、14,14A,14B…封止部、15…第1樹脂層、16…第2樹脂層、16c…内周面、21…集電体、21a…第1面、21c…縁部、22…集電体、22a…第1面、22c…縁部、23…正極活物質層、24…負極活物質層、R1…外周領域、R2…内周領域、S…空間。