(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウイルス繊維、抗菌・抗ウイルス剤及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/01 20060101AFI20240516BHJP
D06M 13/152 20060101ALI20240516BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20240516BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240516BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
D06M15/01
D06M13/152
D06M13/188
A61P31/00
A61K36/61
(21)【出願番号】P 2023132214
(22)【出願日】2023-08-15
【審査請求日】2023-08-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520447732
【氏名又は名称】ブルーオーシャン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523310505
【氏名又は名称】海老澤 裕紀子
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 裕紀子
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0064714(KR,A)
【文献】特開2008-231593(JP,A)
【文献】国際公開第2022/035309(WO,A1)
【文献】特開2010-202520(JP,A)
【文献】特開2006-225780(JP,A)
【文献】特開2017-088583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
A61P31/00-31/22
A61K36/00-36/9068
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維素材に対して抗菌・抗ウイルス剤の成分を固着することで抗菌・抗ウイルス繊維を製造する抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法であって、
レモンマートルを熱水に浸漬することで、前記レモンマートル中のシトラールを含有せず且つ前記レモンマートル中のポリフェノールを含有する抽出液を取得する抽出ステップと、
抗菌・抗ウイルス剤としての前記抽出液に前記繊維素材を浸漬させて、前記抽出液の成分を前記繊維素材に固着させる抽出液浸漬ステップと
を有することを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法において、
前記抽出液の成分は、ヒペロシド、イソケルセチン、ミリシトリン及び没食子酸を含む
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法において、
前記抽出ステップでは、85℃以上の熱水に前記レモンマートルを10分以上浸漬して前記レモンマートル中のシトラールを除外して前記抽出液を取得する
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法において、
前記抽出液浸漬ステップでは、前記抽出液に酸を加えた溶液に前記繊維素材を浸漬させて、前記抽出液の成分を前記繊維素材に固着させる
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法において、
前記繊維素材の種類は、天然繊維又は化学繊維であり、
前記繊維素材の形態は、糸、織物、編み物、不織布、生地、タオル地又は縫製品である
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法において、
前記抽出液浸漬ステップの後に、前記抗菌・抗ウイルス繊維を染色する染色ステップをさらに含む
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法。
【請求項7】
繊維素材に対してレモンマートルの抽出成分が固着された抗菌・抗ウイルス繊維であって、
前記レモンマートルの抽出成分は、
シトラールを含有せず且つヒペロシド、イソケルセチン、ミリシトリン及び没食子酸を含む
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・抗ウイルス繊維、抗菌・抗ウイルス剤及びそれらの製造方法に関する。より詳細には、レモンマートルの抽出成分を用いる抗菌・抗ウイルス繊維、抗菌・抗ウイルス剤及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性又は抗ウイルス性を有する繊維が知られている(例えば、特許文献1-3)。特許文献1では、人体や環境に対する負荷が少なく、繊維加工にも適用可能な抗菌剤を有する繊維の提供を課題としている([0014]、要約)。当該課題を解決するため、特許文献1(要約)では、繊維表面に、健康食品や化粧品として広く用いられているキダチアロエの粉末又は熱水抽出物を繊維表面へ塗布することで、繊維に主に抗菌防臭効果を付与させる。キダチアロエは天然物由来なので、環境への負荷や人体への副作用も小さく、また、耐熱性もあるので、染色加工にも用いることができるとされている。
【0003】
特許文献2では、繊維に対する付着耐久性に優れ、且つ環境と生物に優しい抗菌性繊維を提供することが課題とされている(要約)。当該課題を解決するため、特許文献2(要約)の抗菌性繊維は、炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10~14の脂肪族又は脂環族アルデヒド化合物のアルデヒド基(-CHO)と繊維形成ポリマー中の水酸基(-OH)との反応により形成される基を有する。すなわち、天然由来の抗菌剤のうち、特定の繊維と結合性を有するものとして選定した「炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10~14の脂肪族又は脂環族アルデヒド化合物」を繊維の水酸基と反応させることにより、耐久性に優れ、安全性に優れた抗菌繊維を提供できるとされている([0007]、[0009]、[0013])。
【0004】
特許文献3では、種々の繊維及び繊維物品に、容易に優れた抗菌性及び抗ウイルス性の両方を付与でき、好ましくは、繊維物品を洗濯しても、その抗菌性及び抗ウイルス性の両方が低下し難い繊維、及びそのような繊維を含む繊維物品を提供することが課題とされている(要約)。当該課題を解決するため、特許文献3(要約)では、抗菌及び抗ウイルス加工剤は、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン並びに第4級アンモニウムイオンを含む複合物を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-231593号公報
【文献】特開2006-225780号公報
【文献】特開2017-088583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1(要約)では、繊維表面に、キダチアロエの粉末又は熱水抽出物を繊維表面へ塗布することで、繊維に主に抗菌防臭効果を付与させる。キダチアロエは天然物由来なので、環境への負荷や人体への副作用も小さいことが想定される。しかしながら、特許文献1では、抗ウイルス性については検討されていない。
【0007】
また、特許文献2では、天然由来の抗菌剤としての「炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10~14の脂肪族又は脂環族アルデヒド化合物」を繊維の水酸基と反応させることにより、耐久性に優れ、安全性に優れた抗菌繊維を提供できるとされている([0007]、[0009]、[0013])。しかしながら、特許文献2では、抗ウイルス性については検討されていない。
【0008】
さらに、特許文献3(要約)では、抗菌及び抗ウイルス加工剤は、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン並びに第4級アンモニウムイオンを含む複合物を含む。特許文献3では、抗菌性及び抗ウイルス性を有する加工剤、及び当該加工剤を用いる繊維及び繊維製品について触れられている。しかしながら、特許文献3の加工剤は天然由来でないため、環境負荷等の点で改善の余地がある。
【0009】
なお、上記のような課題は、繊維又は繊維製品に限らず、その他の用途(例えば、抗菌・抗ウイルス剤及び加工品)にも該当する。
【0010】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、環境負荷を低減しつつ抗菌性・抗ウイルス性を実現可能な抗菌・抗ウイルス繊維、抗菌・抗ウイルス剤及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法は、繊維素材に対して抗菌・抗ウイルス剤の成分を固着することで抗菌・抗ウイルス繊維を製造する方法であって、
レモンマートルを熱水に浸漬することで、前記レモンマートル中のシトラールを含有せず且つ前記レモンマートル中のポリフェノールを含有する抽出液を取得する抽出ステップと、
抗菌・抗ウイルス剤としての前記抽出液に前記繊維素材を浸漬させて、前記抽出液の成分を前記繊維素材に固着させる抽出液浸漬ステップと
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、熱水によるレモンマートルの抽出液(熱水抽出液)を抗菌・抗ウイルス剤として用いる。当該抽出液は天然由来(植物由来)であるため、環境負荷を低減しつつ抗菌性・抗ウイルス性を繊維素材に付与可能となる。
【0013】
また、熱水によるレモンマートルの成分抽出は、成分抽出用容器、加熱装置等により行うことができ、抽出液に対する繊維素材の浸漬は、浸漬用容器等により行うことができる。そのため、例えば蒸留による成分抽出と比較して、簡易な機器又は装置により、繊維素材に対して抗菌性・抗ウイルス性を付与することが可能となる。
【0014】
さらに、レモンマートル抽出成分は天然由来であり、レモンマートルはハーブティーとして飲用されている。そのため、レモンマートル抽出液を廃棄する場合でも、特殊な廃棄処理(及びそのための機器又は装置)の必要性を低減可能となる。
【0015】
さらにまた、本発明によれば、レモンマートル抽出液に繊維素材を浸漬させて、抽出液の成分を繊維素材に固着させる。これにより、バインダ樹脂又は架橋剤を用いる場合(例えば特許文献2)と比較して、簡易に抗菌性・抗ウイルス性を付与することが可能となる。
【0016】
加えて、本発明者が確認したところでは、レモンマートル抽出成分は、緑膿菌に対する抗菌性が認められた。緑膿菌は健常者においては危険性が少ないが免疫が低下した患者に高い病原性を示し、院内感染を防ぐ努力が続けられている。そのため、レモンマートル抽出成分を抗菌・抗ウイルス剤として固着した抗菌・抗ウイルス繊維は、今後、医療機関で緑膿菌の院内感染を防ぐ手段の1つとしての潜在的な価値があると考えられる。
【0017】
前記抽出液の成分は、ヒペロシド(ヒペリン)、イソケルセチン(イソケルシトリン)、ミリシトリン及び没食子酸を含んでもよい。
【0018】
前記抽出ステップでは、85℃以上の熱水に前記レモンマートルを10分以上浸漬して前記レモンマートル中のシトラールを除外して前記抽出液を取得してもよい。
【0019】
前記抽出液浸漬ステップでは、前記抽出液に酸を加えた溶液に前記繊維素材を浸漬させて、前記抽出液の成分を前記繊維素材に固着させてもよい。これにより、繊維素材に対するレモンマートル抽出液の成分の固着を強固にすることが可能となる。
【0020】
前記繊維素材の種類は、天然繊維又は化学繊維としてもよい。前記繊維素材の形態は、糸、織物、編み物、不織布、生地、タオル地又は縫製品であってもよい。
【0021】
前記抽出液浸漬ステップの後に、前記抗菌・抗ウイルス繊維を染色する染色ステップをさらに含んでもよい。これにより、レモンマートル抽出成分による抗菌性・抗ウイルス性を実現しつつ、抗菌・抗ウイルス繊維の色を変化させることが可能となる。
【0022】
本発明の別の態様に係る抗菌・抗ウイルス剤の製造方法は、繊維素材に対して抗菌性及び抗ウイルス性を付与する抗菌・抗ウイルス剤の製造方法であって、
レモンマートルを熱水に浸漬することで、前記レモンマートル中のシトラールを含有せず且つ前記レモンマートル中のポリフェノール(フラボノイド)を含有する抽出液を抗菌・抗ウイルス剤として取得する抽出ステップを備える
ことを特徴とする。
【0023】
本発明のさらに別の態様に係る抗菌・抗ウイルス繊維は、対象物に対してレモンマートルの抽出成分が固着されたものであって、
前記レモンマートルの抽出成分は、ヒペロシド(ヒペリン)、イソケルセチン(イソケルシトリン)、ミリシトリン及び没食子酸を含む
ことを特徴とする。
【0024】
本発明のさらに別の態様に係る抗菌・抗ウイルス剤は、水とレモンマートルの抽出成分とを含有する溶液としてのものであって、
前記レモンマートルの抽出成分は、ヒペロシド(ヒペリン)、イソケルセチン(イソケルシトリン)、ミリシトリン及び没食子酸を含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、環境負荷を低減しつつ抗菌性・抗ウイルス性の効果を発揮可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法の全体な流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、例を表すに過ぎず、その用途、目的又は規模等に応じて、他の既知の要素や代替手段を採用可能である。
【0028】
<A.一実施形態>
[A-1.製造方法]
(A-1-1.全体的な流れ)
図1は、本実施形態に係る抗菌・抗ウイルス繊維52の製造方法の全体的な流れを示す図である。
図1の各ステップは、作業者(図示せず)による作業(マニュアル作業)である。或いは、
図1のステップの一部又は全部を製造装置(図示せず)により自動で行ってもよい。
【0029】
図1のステップS11を開始する前に、作業者は事前準備を行っておく。事前準備としては、例えば、以下が含まれる。
(1)繊維素材50の準備
(2)レモンマートル60の準備
(3)酸34(浸漬用)の準備
(4)各種設備・機器の準備
【0030】
繊維素材50は、抗菌性及び抗ウイルス性を付与する対象となる繊維(対象繊維)である。繊維素材50は、浸漬加工できる繊維であれば特に種類は限定されず、天然繊維又は化学繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、例えば、植物繊維(綿、麻等)又は動物繊維(ウール、シルク等)を用いることができる。化学繊維としては、合成繊維(ナイロン、ポリエステル等)、再生繊維(レーヨン等)又は半合成繊維(アセテート等)を用いることができる。繊維素材50の形態としては、例えば、糸、織物、編み物、不織布、生地、タオル地又は縫製品(衣料品等)とすることができる。
【0031】
図1のステップS11において、作業者は、レモンマートル60の乾燥葉を熱水30に浸漬して抽出液32を生成する(抽出ステップ)。水(熱水30)は、例えば水道水又は地下水を用いることができる。抽出液32(以下「レモンマートル抽出液32」ともいう。)は、抗菌・抗ウイルス剤として機能する。具体的には、抽出用容器10に水及びレモンマートル60を入れて第1加熱装置12で抽出用容器10ごと熱することにより、水を熱水30にする。
図1では乾燥葉1枚のみを示しているが、実際には複数枚を入れてもよい。また、
図1では、葉の形を示しているが、実際は、乾燥葉を粉砕した形で用いることが望ましい。
【0032】
熱水30の温度が例えば85℃以上の状態で例えば10分以上浸漬する。これにより、レモンマートル60に含まれるシトラールのほとんど又は全てが揮発又はその疎水性により除外された状態で抽出液32が取得される。従って、抽出液32には、シトラールがほとんど又は全て含まれない。代わりに、抽出液32には、例えば、ヒペロシド(ヒペリン)、イソケルセチン(イソケルシトリン)、ミリシトリン及び没食子酸が含まれる。ヒペロシド(ヒペリン)及びイソケルセチン(イソケルシトリン)は、レモンマートル由来のケルセチン配糖体であり、ミリシトリンは、レモンマートル由来のミリセチン配糖体である。
【0033】
ステップS12において、作業者は、レモンマートル抽出液32を濾過器14に通して、レモンマートル60を分離して浸漬用容器16に入れる(濾過ステップ)。
【0034】
ステップS13において、作業者は、浸漬用容器16内のレモンマートル抽出液32に繊維素材50を浸漬させる(浸漬ステップ)。これにより、抽出液32(抗菌・抗ウイルス剤)の成分を繊維素材50に固着させて抗菌・抗ウイルス繊維52(以下「繊維52」ともいう。)にすると共に、繊維52を染色する。
【0035】
この際、繊維素材50に抗菌・抗ウイルス加工を施す溶液としては、抽出液32のみを使用してもよいが、本実施形態では、抽出液32に酸34を加えた溶液36を繊維素材50の浸漬に用いる。酸34を加えることで、繊維素材50に対する抽出液32の成分の固着がより強固となる。酸34を加えることで溶液36のphが3.0~5.0の範囲となることが好ましい。
【0036】
酸34としてはクエン酸を用いる。或いは、酸34の種類としては、脂肪族有機酸に類するもの、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、又はフマル酸を用いてもよい。
【0037】
浴比(繊維素材50に対する溶液36の重量比)は、浸漬用容器16、第2加熱装置18等、使用機器の仕様によって変化させることができる。また、浸漬温度は例えば60℃以上、浸漬時間は例えば10分以上とすることができる。但し、浸漬温度及び浸漬時間は、例えば、繊維素材50の種類又は染色の度合いによって適宜調整可能である。
【0038】
レモンマートル抽出液32(抗菌・抗ウイルス剤)の成分を繊維素材50に固着する過程で、繊維素材50は薄黄色から茶色に染色されるため、植物染めとしても利用可能である。或いは、抽出液32の成分を繊維素材50に固着させた後に、さらにその上から反応染め等を施すことで色を自由に選択してもよい。抽出液32の成分の上に染色した後も抗菌・抗ウイルス効果が発現する。植物染めの色変化を楽しむために、例えば、鉄、アルミ又はチタンの金属媒染を施してもよい。いずれの場合も抗菌・抗ウイルス効果を固着させた繊維素材50(結果物としての抗菌・抗ウイルス繊維52)を得ることが可能である。
【0039】
ステップS14において、作業者は、抗菌・抗ウイルス繊維52をキュアリングする(キュアリングステップ)。具体的には、抗菌・抗ウイルス繊維52を浸漬用容器16から取り出し、キュアリング装置20内に配置した状態でキュアリング装置20により繊維52を加熱する。これにより、繊維素材50に対する抽出液32の成分の固着をより強固にすることが可能となる。その結果、繊維52の抗菌・抗ウイルス効果を高めることができる。なお、綿タオル等の場合、キュアリングを省略することも可能である。
【0040】
ステップS15において、作業者は、繊維52の生地表面を洗浄(ソーピング)する(ソーピングステップ)。具体的には、繊維52の生地表面をソーピング用容器22内の洗浄液40(例えば、冷水、ぬるま湯又は界面活性剤)により洗浄して、繊維素材50の生地表面についた不要物を取り除く。ここでの不要物には、例えば、抽出液32の成分のうち繊維52に未固着のもの、又は汚れが含まれる。洗浄液は、例えば、繊維素材50の材質に応じて選択する。
【0041】
ステップS16において、作業者は、繊維52を乾燥させる(乾燥処理)。
【0042】
以上のステップにより、本実施形態の抗菌・抗ウイルス繊維52が完成する。
【0043】
(A-1-2.レモンマートル抽出液32の追加情報)
上記のように、抽出ステップ(
図1のS11)では、レモンマートル60の乾燥葉を熱水30に浸漬して抽出液32(抗菌・抗ウイルス剤)を取得する。
【0044】
レモンマートルは、葉や茎にシトラールを豊富に含有する。シトラールによる抗菌性・抗ウイルス性は原産国のオーストラリアを中心に広く知られ、食品、茶、洗剤等の用途で使用されている。乾燥葉を蒸留して得られるオイルのシトラール含有量は90%以上であり、シトラールを含有する植物オイルの中でもレモンマートルは群を抜いている。
【0045】
ところで、シトラールは揮発性が高く、常温でも揮発する。また、シトラールは、水にほとんど溶解しない。従って、水溶液中にシトラールを抽出することは困難である。本実施形態では、レモンマートル60の乾燥葉を熱水30に浸漬することで、揮発の促進又は疎水性によりシトラールを除外して抽出液32(抗菌・抗ウイルス剤)を取得する。すなわち、本実施形態では、レモンマートル60中のシトラールを除外して、レモンマートル60に含まれるその他の抽出成分を抗菌・抗ウイルス剤として用いる。上記のように、その他の抽出成分には、ヒペロシド(ヒペリン)、イソケルセチン(イソケルシトリン)、ミリシトリン及び没食子酸が含まれる。
【0046】
なお、シトラールはその強い抗菌・抗ウイルス作用を持つ反面、シトラール特有の香りが人体への不快な影響又は害を生じかねないという問題がある。本実施形態では、熱水抽出を用いることで、レモンマートル60に含まれるシトラールを敢えて除外する(又は含有させない)ことで、その濃度を下げる。これにより、上記のような問題を回避することが可能となる。
【0047】
また、レモンマートルは、古来よりハーブティーとして飲用されてきた。このことは、レモンマートルの熱水抽出液は、経口しても安全であることを意味している。さらに、そのような熱水抽出液は、環境を汚染するリスクも低く、廃棄時に特別な処理を必要としない。そのため、レモンマートルの熱水抽出液を繊維用の抗菌・抗ウイルス剤として用いる場合、人にも地球にも優しい繊維製品の製造を可能とする。
【0048】
[A-2.レモンマートル抽出液32の成分の例]
(A-2-1.成分分析結果の例)
表1は、レモンマートル抽出液32の成分分析結果の一例を示す。
【0049】
【0050】
表1によれば、10~60分抽出を行った場合、レモンマートル抽出液32は、ヒペロシド100重量部に対して、イソケルシトリン(イソケルセチン)を24~28重量部、ミリシトリンを81~88重量部、没食子酸を33~52重量部を含む。ここでは、イソケルシトリン、ミリシトリン及び没食子酸それぞれの数値をヒペロシドの数値で割った値の最小値の小数点以下を切り捨てし、最大値の小数点以下を切り上げている。例えば、イソケルシトリンの重量部の場合、24.6(=100×16/65)、26.1(=100×17/65)、27.5(=100×22/80)、24.6(=100×20/81)のうち、最小の24.6の小数点以下を切り捨てて24とし、最大の27.5を切り上げて28としている。
【0051】
上記各抽出成分のうち、ケルセチンは、例えば、黄色ブドウ球菌、薬剤耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びインフルエンザウイルスへの効果が期待される。ヒペロシド(ヒペリン)は、例えば、緑膿菌への効果が期待される。イソケルセチン(イソケルシトリン)は、例えば、黄色ブドウ球菌及びインフルエンザウイルスへの効果が期待される。ミリセチン、ミリシトリン及び没食子酸は、例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び肺炎桿菌への効果が期待される。
【0052】
(A-2-2.試験条件)
表1の成分分析結果は、以下の条件で取得した。
【0053】
(A-2-2-1.試料)
100mlの熱水に2gのレモンマートル(LM)乾燥葉を粉砕して投入した後に濾過して得た溶液(抽出時間毎に4パターンを用意した。)
【0054】
(A-2-2-2.分析方法)
液体クロマトグラフ/質量分析 (LC/MS)
LC装置:Waters製ACQUITY UPLC
MS装置:Waters製SYNAPT G2-S
カラム:Waters製ACQUITY UPLC BEH C18 (内径2.1mm、長さ100mm)
カラム温度:40℃
移動相A:0.1%ギ酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
%B:5(0-2min)→65(13.5mm)→100(15-20min)
流速:0.4mL/min
検出器:MS
イオン化法、極性:エレクトロスプレーイオン化法 (ES I)、Negative
測定質量範囲:m/z 50~1200
抽出イオン:表2参照
試料注入量:0.2μL
抽出液:メタノールにて希釈後、フィルタにて濾過
標準溶液:水/メタノール混合液又はメタノールにて調整
【0055】
【0056】
[A-3.実施例]
(A-3-1.実施例の概要)
次に以下に挙げる実施例1~6について抗菌性又は抗ウイルス性を試験した。
【0057】
(A-3-1-1.実施例1)
染色試験用綿布10gを、モノゲン2mlを加えた40℃の湯に20分浸し、ぬるま湯で洗い、熱風乾燥する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を4g用意し400mlの熱水(85~100℃)で10分抽出する。フィルタで濾過した抽出液に水を加えて400mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤に芒硝20g、クエン酸0.55gを加えph3.1に調整し、試験布を加工液に浸漬する。80℃に昇温してから10分加工し、その後100℃で熱風乾燥し、その後140~160℃でアイロン掛けする。冷水で色が出なくなるまで洗い、熱風乾燥する。上記のようにモノゲンを加えたぬるま湯で洗い、熱風乾燥することで、繊維に付着している可能性のある細かな汚れ及び不純物を、綿布(繊維)の加工前に予め取り除き、抗菌・抗ウイルス剤を均一に固着することができる。
【0058】
(A-3-1-2.実施例2)
染色試験用綿布10gを、モノゲン2mlを加えた40℃の湯に20分浸し、ぬるま湯で洗い、熱風乾燥する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を4g用意し400mlの熱水(85~100℃)で20分抽出する。フィルタで濾過した抽出液に水を加えて400mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤に芒硝20g、クエン酸0.5gを加えph3.1に調整し、試験布を加工液に浸漬する。80℃に昇温してから30分加工し、その後100℃で熱風乾燥し、その後140~160℃でアイロン掛けする。冷水で色が出なくなるまで洗い、熱風乾燥する。
【0059】
(A-3-1-3.実施例3)
綿タオル10gを、ぬるま湯で洗い、鉄媒染液にて20分間鉄媒染する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を0.7g用意し400mlの熱水(85~100℃)で20分抽出し、濾過した後に水を加えて400mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤400mlに綿タオル生地を浸漬し、80℃に昇温してから30分加工する。水洗いした後にもう一度加工液に浸漬し、80℃に昇温してから30分加工する。冷水、温水で色が出なくなるまで洗い、熱風乾燥する。なお、抗菌・抗ウイルス剤への浸漬前に鉄媒染(又は金属媒染)することで、綿タオルの色変化を楽しむことができると共に、綿タオルの布地とポリフェノール成分(フラボノイド成分)の固着を強固にすることが可能となる。鉄媒染(又は金属媒染)は、抗菌・抗ウイルス剤への浸漬の後又は最中としてもよい。
【0060】
(A-3-1-4.実施例4)
染色試験用綿布20gを、モノゲン2mlを加えた40℃の湯に20分浸し、ぬるま湯で洗い熱風乾燥する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を8g用意し800mlの熱水(85~100℃)で10分抽出する。フィルタ濾過した抽出液に水を足し800mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤に芒硝16g、クエン酸1gを加えph3.1に調整し加工液とする。試験布を加工液に浸漬し、80℃に昇温し30分加工する。100℃で熱風乾燥し、140~160℃でアイロンする。冷水、熱水で色が出なくなるまで洗う。レマゾール1gを400mlの水に溶かし、芒硝28gを溶解させ60℃に昇温した染色液に生地を投入し30分浸漬する。ソーダ灰8gを加え再び60℃で60分反応染め染色を施す。冷水で洗ったのち、400mlの水に2mlのフィックス剤を溶かし60℃に昇温し、生地を投入して15分フィックス。水洗い後熱水で10分ソーピングし、さらに水洗い後に熱風乾燥する。
【0061】
(A-3-1-5.実施例5)
染色試験用ポリエステル10gを、モノゲン2mlを加えた40℃の湯に20分浸し、ぬるま湯で洗い熱風乾燥する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を8g用意し400mlの熱水(85~100℃)で10分抽出する。フィルタ濾過した後の抽出液に水を加え、800mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤に芒硝20g、クエン酸1g加えph3.2に調整し加工液とする。試験布を加工液に浸漬し、126℃に昇温して140hPaの圧力下で60分加工、後に100℃で熱風乾燥し、140~160℃でアイロン掛けする。ソーピング剤を溶かした400ml、100℃の熱水で10分ソーピングし、温水、冷水で洗い、熱風乾燥する。
【0062】
(A-3-1-6.実施例6)
染色試験用ナイロン20gを、モノゲン2mlを加えた40℃の湯に20分浸し、ぬるま湯で洗い熱風乾燥する。粉砕したレモンマートル乾燥葉を16g用意し800mlの熱水(85~100℃)で10分抽出する。フィルタ濾過し水を加えて800mlとした液を抗菌・抗ウイルス剤とする。上記で得た抗菌・抗ウイルス剤に芒硝40g、クエン酸1gを加えph3.1に調整し加工液とする。試験布を加工液に浸漬し、90℃に昇温して30分加工、後に100℃で熱風乾燥する。冷水、温水で色が出なくなるまで洗い、熱風乾燥する。
【0063】
(A-3-2.抗菌性試験結果)
(A-3-2-1.共通条件)
試験方法: 日本産業規格(JIS) L1902:2015 菌液吸収法
試験菌株: 黄色ブドウ球菌・Staphylococcus aureus NBRC 12732
洗濯方法: (一社)繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準洗濯法)による
【0064】
(A-3-2-2.実施例1の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
抽出時間 10分
浸漬時間 10分
【0065】
【0066】
(A-3-2-3.実施例2の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
抽出時間 20分
浸漬時間 30分
【0067】
【0068】
(A-3-2-4.実施例3の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: 綿100%タオル
抽出時間 20分
浸漬時間 30分
【0069】
【0070】
(A-3-2-5.実施例4の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
抽出時間 10分
加工時間 30分
染色: レマゾールにて反応染色90分
【0071】
【0072】
(A-3-2-6.実施例5の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用ポリエステル布
抽出時間 10分
加工時間 60分
【0073】
【0074】
(A-3-2-7.実施例6の条件及び抗菌性試験結果)
繊維種類: 染色試験用ナイロン6タフタ
抽出時間 10分
加工時間 30分
【0075】
【0076】
(A-3-3.抗ウイルス性試験結果)
(A-3-3-1.共通条件)
試験方法: JIS L1922 プラーク測定法
試験ウイルス: A型インフルエンザウイルス(H3N2)A/Hong Kong/8/68;TC adapted ATCC VR-1679
宿主細胞 MDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)
洗濯方法: (一社)繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準洗濯法)による
表中略語: PFU: plaque forming units
抗ウイルス活性値Mv= lg(Va)-lg(Vc)
減少値M= lg(Va)-lg(Vb) (試験成立条件:減少値M≦1.0)
注:本試験では、実施例2、5のデータは存在しない。
【0077】
(A-3-3-2.実施例1の条件及び抗ウイルス性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
【0078】
【0079】
(A-3-3-3.実施例3の条件及び抗ウイルス性試験結果)
繊維種類: 綿100%タオル
【0080】
【0081】
(A-3-3-4.実施例4の条件及び抗ウイルス性試験結果)
繊維種類: JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
染色: レモンマートル抽出液で加工後にレマゾールにて反応染色60分
【0082】
【0083】
(A-3-3-5.実施例6の条件及び抗ウイルス性試験結果)
繊維種類; 染色試験用ナイロン6タフタ
【0084】
【0085】
(A-3-4.抗菌性試験結果(黄色ブドウ球菌以外))
(A-3-4-1.共通条件)
試験方法: JIS L1902:2015 菌液吸収法
試験菌株: 肺炎桿菌・Klebsiella pneumoniae NBRC 13277
緑膿菌・Pseudomonas aeruginosa NBRC 3080
MRSA・Methicillin resistant Staphylococcus aureus IID1677
洗濯方法: (一社)繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準洗濯法)による
【0086】
(A-3-4-2.実施例3の条件及び抗菌性試験結果(肺炎桿菌))
試験菌株: 肺炎桿菌・Klebsiella pneumoniae NBRC 13277
繊維種類: 綿100%タオル
抽出時間 20分
浸漬時間 30分
【0087】
【0088】
(A-3-4-3.実施例3の条件及び抗菌性試験結果(MRSA))
試験菌株: MRSA・Methicillin resistant Staphylococcus aureus IID1677
繊維種類; 綿100%タオル
抽出時間 20分
浸漬時間 30分
【0089】
【0090】
(A-3-4-4.実施例6の条件及び抗菌性試験結果(緑膿菌))
試験菌株: 緑膿菌・Pseudomonas aeruginosa NBRC 3080
繊維種類: 染色試験用ナイロン6タフタ
抽出時間 10分
浸漬時間 30分
【0091】
【0092】
(A-3-5.抗菌性試験結果(加工時間別))
抗菌効果を付与するための抽出及び浸漬加工時間の下限を調べた結果、それぞれ10分以上で十分に高い効果を得、洗濯耐久性も持ち得ることが示された。
試験方法: JIS L1902:2015 菌液吸収法
試験菌株: 黄色ブドウ球菌・Staphylococcus aureus NBRC 12732
洗濯方法: (一社)繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準洗濯法)による
繊維種類; JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
抽出方法: 1.6mm角に粉砕されたレモンマートル乾燥葉8gを400mlの水にいれ、90℃以上の熱水になってからそれぞれの時間抽出し、フィルタで濾過した。
抽出液の調整: 上記の抽出液に水を足して400mlの液とし、芒硝20gを溶かした後にクエン酸を加え、抽出液のphが3.1になるように調整した。
浸漬時間 上記の試験布10gを抽出液に投入し、70℃以上でそれぞれの時間浸漬した。
【0093】
【0094】
(A-3-6.抗ウイルス性:芒硝と熱を加えることによる効果)
綿布に対して抗ウイルス効果を高めるためには、浸漬加工時に芒硝を溶解させるとよく、また浸漬後ソーピング前にキュアリングを行うと効果が高まることが試験結果より判明した。
抽出方法: 1.6mm角に粉砕されたレモンマートル乾燥葉4gを200mlの水にいれ、90℃以上の熱水になってから20分抽出し、フィルタで濾過した。
抽出液の調整:
ケース1:上記の抽出液に水を足して400mlの液とし、クエン酸を加え、抽出液のphが3.1になるように調整した。
ケース2:上記の抽出液に水を足して400mlの液とし、芒硝20gを溶かした後にクエン酸を加え、抽出液のphが3.2になるように調整した。
ケース3:上記の抽出液に水を足して400mlの液とし、芒硝20gを溶かした後にクエン酸を加え、抽出液のphが3.3になるように調整した。
浸漬時間: 上記の試験布10gを抽出液に投入し、70℃以上で30分浸漬した。
浸漬後処理:
ケース1:試験布を冷水・温水にて繰り返し洗い、熱風乾燥した。
ケース2:試験布を冷水・温水にて繰り返し洗い、熱風乾燥した。
ケース3:試験布を熱風乾燥し、アイロンした後に冷水・温水にて繰り返し洗い、再度熱風乾燥し、アイロンした。
繊維種類; JIS L 0803準拠 染色堅牢度用綿布
【0095】
【0096】
試験方法:JIS L1922 プラーク測定法
試験ウイルス: A型インフルエンザウイルス(H3N2)A/Hong Kong/8/68;TC adapted ATCC VR-1679
宿主細胞 MDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)
洗濯方法: (一社)繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準洗濯法)による
表中略語: PFU: plaque forming units
抗ウイルス活性値Mv= lg(Va)-lg(Vc)
減少値M= lg(Va)-lg(Vb) (試験成立条件:減少値M≦1.0)
【0097】
<B.変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成又は方法を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成又は方法を採用することができる。
【0098】
上記実施形態では、抽出ステップ(
図1のS11)においてレモンマートル60の乾燥葉を用いた。しかしながら、例えば、熱水によるレモンマートル60の抽出成分を抗菌・抗ウイルス剤として用いる観点に着目すれば、これに限らず、乾燥葉の代わりに、非乾燥の葉を用いてもよい。或いは、乾燥した又は非乾燥の茎を用いてもよい。
【0099】
上記実施形態では、抽出ステップ(
図1のS11)の後に濾過ステップ(S12)を設けた。しかしながら、例えば、熱水によるレモンマートル60の抽出成分を抗菌・抗ウイルス剤として用いる観点に着目すれば、これに限らず、濾過ステップを省略することも可能である。
【0100】
上記実施形態の浸漬ステップ(
図1のS13)では、
図1に示す浸漬用容器16を用いて浸漬を行った。しかしながら、例えば、熱水によるレモンマートル60の抽出成分を抗菌・抗ウイルス剤として用いる観点に着目すれば、これに限らず、その他の浸漬方法又は浸漬装置を用いることも可能である。例えば、浸漬装置として、一般的に染色に使用する装置(染色装置)を使用してもよい。そのような染色装置としては、例えば、ウィンス染色機、ジッガー(ジッガー染色機)又は液流染色機を用いることができる。或いは、パッド・スチーム法、パッド・ドライ・スチーム法又はパッド・ドライ・ベーク法を行う装置を浸漬ステップで用いてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…抽出用容器 12…第1加熱装置
14…濾過器 16…浸漬用容器
18…第2加熱装置 20…キュアリング装置
22…ソーピング用容器 30…熱水
32…レモンマートル抽出液 34…酸
36…浸漬用溶液 40…洗浄液
50…繊維素材 52…抗菌・抗ウイルス繊維
60…レモンマートル
【要約】
【課題】 環境負荷を低減しつつ抗菌性・抗ウイルス性を実現可能な抗菌・抗ウイルス繊維、抗菌・抗ウイルス剤及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様としての抗菌・抗ウイルス繊維の製造方法は、繊維素材に対して抗菌・抗ウイルス剤の成分を固着することで抗菌・抗ウイルス繊維を製造する。同製造方法は、レモンマートルを熱水に浸漬することで、前記レモンマートル中のシトラールを含有せず且つ前記レモンマートル中のポリフェノールを含む抽出液を取得する抽出ステップと、抗菌・抗ウイルス剤としての前記抽出液に前記繊維素材を浸漬させて、前記抽出液の成分を前記繊維素材に固着させる抽出液浸漬ステップとを有する。
【選択図】
図1