(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】無人搬送車システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/244 20240101AFI20240516BHJP
B65G 67/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G05D1/244
B65G67/02
(21)【出願番号】P 2020131682
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 勇一
(72)【発明者】
【氏名】星 昌良
(72)【発明者】
【氏名】北口 亮一
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-504125(JP,A)
【文献】特開2004-264099(JP,A)
【文献】特開2000-321350(JP,A)
【文献】特開平07-191744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行う無人搬送車システムであって、
前記無人搬送車は、
車体に、リフレクタを検出するレーザーセンサを備え、
前記荷物収容体の内部及び外部を自律走行し、
前記リフレクタを、
前記荷物収容体の入口の左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように設け
、
前記レーザーセンサとして、
前方のレーザーセンサ及び後方のレーザーセンサを、
前記車体の前後対角の位置に備え、
前記無人搬送車は、前記荷物収容体内の地図を記憶しており、
前記荷物収容体内において、
前記前方のレーザーセンサは、前記荷物収容体の横壁及び前記リフレクタの一方までの距離を測定し、
前記後方のレーザーセンサは、前記荷物収容体の横壁及び前記リフレクタの両方までの距離を測定し、
前記前方のレーザーセンサ及び前記後方のレーザーセンサの測定データを統合して、前記無人搬送車の自己位置推定に用いる、
無人搬送車システム。
【請求項2】
前記リフレクタは、
半円柱の中心軸を鉛直方向とする、前記半円柱の側面に沿う形状を含む、又は、
四角柱の側面間の辺を鉛直方向とする、前記四角柱の3つの側面に沿う形状を含む、
請求項1に記載の無人搬送車システム。
【請求項3】
荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行う無人搬送車システムであって、
前記無人搬送車は、
車体に、リフレクタを検出するレーザーセンサを備え、
前記荷物収容体の内部及び外部を自律走行し、
前記リフレクタを、
前記荷物収容体の入口の左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように設け
、
前記レーザーセンサは、2次元レーザーセンサであり、
前記荷物収容体の入口に繋がるように設置するドックレベラーの左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように第2のリフレクタを設ける、
無人搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行う無人搬送車システムに関わり、さらに詳しくは、前記作業を行う無人搬送車が荷物収容体の内外を自律走行する無人搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車システムとして、トラックのコンテナ等の荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行うものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1の無人搬送車システムは、無人搬送車であるモービルロボット6がトラック4の荷物収容体である荷台5内を自律走行して物品Wの積み降ろし作業を行う。モービルロボット6は、レーザービーム発生装置を有し、レーザービームを上方及び両側方に広範囲に照射する([0013])。荷台5の側壁及び天井の内面側の一定の位置に貼付された複数の、リフレクタである反射板9によって反射されるレーザー光をセンサで検出することにより、モービルロボット6は、荷台5内部における自らの位置および姿勢を知ることができる([0013])。
【0004】
特許文献2の無人搬送車システムは、無人搬送車である搬送車両1がトラックTの荷物収容体である収容体C内を自律走行して荷物Wの積み降ろし作業を行う。搬送車両1は、収容体Cの外部に配置されて車体2の基準位置を設定する基準位置設定部材10と、車体2と基準位置設定部材10との間の距離に関する情報を取得する距離取得部11A,11Bとを備える([0016]-[0019])。基準位置設定部材10は、車体2の幅方向に沿って延びるような形状を有しており、車体2が収容体Cの外部から収容体C内へ進入しようとする際における車体2の走行開始位置に、収容体Cの外部のプラットフォーム上に配置される([0017])。
【0005】
制御部20の走行状態取得部31が、距離取得部11Aで取得された第1の距離情報と距離取得部11Bで取得された第2の距離情報とに基づいて、車体2が基準方向SDから傾斜した異常状態であると判定した場合、制御部20の駆動制御部32が前記異常状態を補正するための制御を行い、車体2を直進状態に戻す([0025]-[0026])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-101554公報
【文献】特開2020-1845公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の無人搬送車システムの構成では、荷物収容体の側壁及び天井の内面側の一定の範囲に多くの反射板9を設ける必要がある。そのため、作業対象となる荷物収容体が変わるたびに、多くの反射板9を荷物収容体内に新たに設置しなおす作業を行う必要があるので、前記作業に大きな手間が掛かる。
【0008】
特許文献2の無人搬送車システムの構成では、車体2の基準位置を設定する、車体2の幅方向に沿って延びる形状を有する基準位置設定部材10を、荷物収容体の外部のプラットフォーム上に配置して固定する必要がある。そのため、トラックの停止位置が規定の位置からずれると、基準位置設定部材10を設置しなおす必要がある。その上、車体2の幅方向に沿って延びるような形状を有する基準位置設定部材10をプラットフォーム上に配置するので、基準位置設定部材10が邪魔になる場合がある。
【0009】
本発明は、リフレクタを検出するレーザーセンサを車体に備える無人搬送車システムにおいて、リフレクタを設置する作業に手間が掛からず、トラックの停止位置が規定の位置からずれてもリフレクタを設置しなおす必要がなく、リフレクタが邪魔にならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無人搬送車システムは、前記課題解決のために、
荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行う無人搬送車システムであって、
前記無人搬送車は、
車体に、リフレクタを検出するレーザーセンサを備え、
前記荷物収容体の内部及び外部を自律走行し、
前記リフレクタを、
前記荷物収容体の入口の左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように設け、
前記レーザーセンサとして、
前方のレーザーセンサ及び後方のレーザーセンサを、
前記車体の前後対角の位置に備え、
前記無人搬送車は、前記荷物収容体内の地図を記憶しており、
前記荷物収容体内において、
前記前方のレーザーセンサは、前記荷物収容体の横壁及び前記リフレクタの一方までの距離を測定し、
前記後方のレーザーセンサは、前記荷物収容体の横壁及び前記リフレクタの両方までの距離を測定し、
前記前方のレーザーセンサ及び前記後方のレーザーセンサの測定データを統合して、前記無人搬送車の自己位置推定に用いる。
【0011】
このような構成によれば、リフレクタを、荷物収容体の入口の左右に、無人搬送車が自律走行する通路に面するように設けている。そして、無人搬送車は、車体に備えたレーザーセンサにより前記リフレクタを検出しながら、荷物収容体の内部及び外部を自律走行する。したがって、無人搬送車は、誘導テープ等を設けなくても、高い走行精度を維持しながら、荷物収容体の内外を自律走行で往来できる。
【0012】
その上、荷物収容体の内部及び外部を無人搬送車が走行する際に同一のリフレクタを使用できるため、リフレクタの数を少なくできる。その上さらに、荷物収容体の入口の左右に設けるリフレクタは、例えばマグネット等で容易に設置することができるので、リフレクタの設置作業が非常に簡単になる。すなわち、荷物収容体の入口の左右にリフレクタを設置するだけでよいので、特許文献1におけるリフレクタの設置作業のように、作業対象となる荷物収容体が変わるたびに、多くのリフレクタを荷物収容体内に新たに設置しなおす必要がない。
【0013】
その上、トラックの停止位置が規定の位置からずれて荷物収容体の位置が規定の位置からずれた場合であっても、荷物収容体の入口の左右にリフレクタを設置すればよいので、特許文献2の基準位置設定部材のようにリフレクタを設置しなおす必要がない。その上さらに、リフレクタを荷物収容体の入口の左右に設けているので、特許文献2の左右方向に沿って延びるような形状を有してプラットフォーム上に配置する基準位置設定部材のように邪魔になることがない。
その上、無人搬送車が荷物収容体の内外を往来する際に、車体の前後対角の位置に備えた前方及び後方のレーザーセンサにより、荷物収容体の入口の左右に設置したリフレクタを検出し続けることができる。
その上、荷物収容体の全長が長い場合に、荷物収容体の入口から遠い荷物収容体の奥まで無人搬送車が進入しても、前方のレーザーセンサが測定した荷物収容体の横壁及びリフレクタの一方までの距離データ、並びに後方のレーザーセンサが測定した荷物収容体の横壁及びリフレクタの両方までの距離データを統合して、記憶している荷物収容体内の地図上におけるリフレクタ及び横壁の位置と照合することで、無人搬送車は、自己位置、及び上下軸まわりに回転する方向への姿勢のずれを正確に把握しながら荷物収容体内を自律走行できる。
【0014】
ここで、前記リフレクタは、
半円柱の中心軸を鉛直方向とする、前記半円柱の側面に沿う形状を含む、又は、
四角柱の側面間の辺を鉛直方向とする、前記四角柱の3つの側面に沿う形状を含むのが好ましい実施態様である。
【0015】
このような構成によれば、無人搬送車が荷物収容体の外部から内部へ進入する際、及び無人搬送車が荷物収容体の内部から外部へ退出する際に、無人搬送車のレーザーセンサから照射されてリフレクタに入射したレーザー光の反射方向をより連続的に変化させることができる。それにより、無人搬送車が荷物収容体の内外を往来する際に、リフレクタに対する無人搬送車の位置を連続的に正確に検出することができる。
【0020】
本発明に係る無人搬送車システムは、前記課題解決のために、
荷物収容体の内部で無人搬送車が荷物の積み降ろし作業を行う無人搬送車システムであって、
前記無人搬送車は、
車体に、リフレクタを検出するレーザーセンサを備え、
前記荷物収容体の内部及び外部を自律走行し、
前記リフレクタを、
前記荷物収容体の入口の左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように設け、
前記レーザーセンサは、2次元レーザーセンサであり、
前記荷物収容体の入口に繋がるように設置するドックレベラーの左右に、前記無人搬送車が自律走行する通路に面するように第2のリフレクタを設ける。
【0021】
このような構成によれば、リフレクタを、荷物収容体の入口の左右に、無人搬送車が自律走行する通路に面するように設けている。そして、無人搬送車は、車体に備えたレーザーセンサにより前記リフレクタを検出しながら、荷物収容体の内部及び外部を自律走行する。したがって、無人搬送車は、誘導テープ等を設けなくても、高い走行精度を維持しながら、荷物収容体の内外を自律走行で往来できる。
その上、荷物収容体の内部及び外部を無人搬送車が走行する際に同一のリフレクタを使用できるため、リフレクタの数を少なくできる。その上さらに、荷物収容体の入口の左右に設けるリフレクタは、例えばマグネット等で容易に設置することができるので、リフレクタの設置作業が非常に簡単になる。すなわち、荷物収容体の入口の左右にリフレクタを設置するだけでよいので、特許文献1におけるリフレクタの設置作業のように、作業対象となる荷物収容体が変わるたびに、多くのリフレクタを荷物収容体内に新たに設置しなおす必要がない。
その上、トラックの停止位置が規定の位置からずれて荷物収容体の位置が規定の位置からずれた場合であっても、荷物収容体の入口の左右にリフレクタを設置すればよいので、特許文献2の基準位置設定部材のようにリフレクタを設置しなおす必要がない。その上さらに、リフレクタを荷物収容体の入口の左右に設けているので、特許文献2の左右方向に沿って延びるような形状を有してプラットフォーム上に配置する基準位置設定部材のように邪魔になることがない。
その上、荷物収容体の床面の高さとプラットフォームの床面の高さが異なる場合の段差を無くすようにドックレベラーを設置した場合において、無人搬送車は、車体に備えた2次元レーザーセンサにより、ドックレベラーの左右に、無人搬送車が自律走行する通路に面するように設けた第2のリフレクタを検出しながら、ドックレベラーの位置を正確に検出してドックレベラー上を走行できる。その上、ドックレベラーの左右に設ける第2のリフレクタは、例えばマグネット等で容易に設置することができるので、第2のリフレクタの設置作業も非常に簡単になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明の無人搬送車システムによれば、リフレクタを検出するレーザーセンサを車体に備えた無人搬送車が荷物収容体の内外を自律走行する無人搬送車システムにおいて、リフレクタを設置する作業に手間が掛からず、トラックの停止位置が規定の位置からずれてもリフレクタを設置しなおす必要がなく、リフレクタが邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無人搬送車システムの部分横断面平面図である。
【
図3】ドックレベラーを備えた例を示す本発明の実施の形態に係る無人搬送車システムの部分横断面平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る無人搬送車の斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るリフレクタの例を示す、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図8】リフレクタの変形例を示す、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図9】
図3におけるリフレクタまわりの要部拡大平面図である。
【
図10】
図4におけるリフレクタまわりの要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
以下の実施形態において、無人搬送車が荷物収容体の外部から内部へ進入する方向を前とし、前方に向かって左右を定義し、左方から見た図を正面図とする。
【0026】
本発明の実施の形態に係る無人搬送車システムとして、
図1の部分横断面平面図、及び
図2の部分縦断面正面図は、例えばトラックTのコンテナである荷物収容体Aの床面Nとプラットフォームの床面Jとの間に段差がない例を、
図3の部分横断面平面図、及び
図4の部分縦断面正面図は、前記段差があるためにドックレベラーDを備えた例を示している。
【0027】
無人搬送車1は、荷物収容体Aの内部及び外部を自律走行し、荷物収容体Aの内部で荷物Wの積み降ろし作業を行う。荷物Wは、例えば、パレットP、及びパレットPに積載される積載物Qである。
【0028】
無人搬送車1は、車体2に2次元レーザーセンサ3,4を備える。ここで、レーザーセンサ3,4は、2次元レーザーセンサである。
【0029】
図1及び
図2の例では、荷物収容体Aの入口Eの左右にリフレクタ5,6を設けており、
図3及び
図4の例では、リフレクタ5,6に加え、ドックレベラーDの左右にも第2のリフレクタ7,8を設けている。リフレクタ5~8は、無人搬送車1が自律走行する通路G(
図1、
図3)に面する。
【0030】
無人搬送車1のレーザーセンサ3,4は、
図1及び
図2の例では、リフレクタ5,6を検出する(例えば、
図1のレーザー光L1,L2参照)。
【0031】
図3及び
図4の例において、無人搬送車1がプラットフォームの床面Jに位置する場合は、レーザーセンサ3,4は2次元レーザーセンサのため、リフレクタ5、6を検出できない。無人搬送車1のレーザーセンサ3,4は、
図3及び
図4の例では、リフレクタ5~8を検出する(例えば、
図3のレーザー光L1,L2参照)。
【0032】
ここで、荷物収容体Aの奥の突き当り面Vにリフレクタを設置しようとしても、荷物収容体A内には通常、奥から荷物Wが配置されているので、突き当り面Vにはリフレクタを設置できない。また、仮に荷物Wにリフレクタを設置すると、荷物Wは積み降ろされるのでリフレクタの位置が変動してしまう。すなわち、荷物収容体Aの入口Eの左右にリフレクタ5,6を設けることにより、荷物収容体Aに設けるリフレクタの設置位置が最適化されている。
【0033】
レーザーセンサ3,4は、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)であり、方向を変えながらレーザー光L1,L2をパルス状に照射し、反射して返ってくる散乱光を検出し、物体に反射されて返ってくるまでの時間から対象物までの距離、方向などを測定する。電波に比べて光束密度が高く、短い波長のレーザー光L1,L2を利用することにより、高い精度で位置や形状などを検出できる。
【0034】
本発明の実施の形態に係る無人搬送車1は、例えば無人フォークリフトであり、
図5の斜視図、及び
図6の正面図に示すように、荷役作業を行う荷役装置B、走行動作及び旋回動作を行う移動装置C、並びに荷役装置B及び移動装置Cを制御する制御装置等を備える。
【0035】
荷役装置Bは、上下に昇降し、前後方向に傾動するマストM、荷物Wを積載するフォークF、及び、フォークFを支持する、マストMに沿って上下するリフトブラケットK等を有する。移動装置Cは、左右一対の前輪、及び駆動輪であるとともに操舵輪である後輪、並びに後輪の駆動装置を有する。制御装置は、荷役装置B及び移動装置Cの駆動を制御するとともに、地上側の制御装置と通信を行う通信装置等を有する。
【0036】
無人搬送車1は、自律移動式であり、環境地図における自己位置を推定する自己位置推定機能を有する。前記自己位置推定機能は、例えば、JIS D 6801:2019の「無人搬送車システムに関する用語」で定義される「レーザSLAM式」又は「画像SLAM式」である(「SLAM」は、Simultaneously Localization And Mappingの略)。すなわち、壁、柱などの表面までの距離を無人搬送車1上のレーザレンジファインダ又は距離計測可能なカメラで計測し、周囲の環境地図を作製するとともに環境地図上の自己位置を推定する。
【0037】
無人搬送車1の車体2が備えるレーザーセンサは、前方のレーザーセンサ3、及び後方のレーザーセンサ4であり、前方のレーザーセンサ3は車体2の左前部に位置し、後方のレーザーセンサ4は車体2の右後部に位置する(
図9の要部拡大平面図も参照)。前方のレーザーセンサ3を車体2の右前部に配置し、後方のレーザーセンサ4を車体2の左後部に配置してもよく、すなわち、レーザーセンサ3,4は、車体2の前後対角の位置に備えればよい。
【0038】
レーザーセンサ3,4を車体2の前後対角の位置に備えることにより、無人搬送車1が荷物収容体Aの内外を往来する際に、レーザーセンサ3,4により、荷物収容体Aの入口Eの左右に設置したリフレクタ5,6を検出し続けることができる。
【0039】
車体2の前後において左右の位置に一つずつ(合計4つ)のレーザーセンサ3及び4を配置しても良い(変形配置例1)。
【0040】
前方のレーザーセンサ3、及び後方のレーザーセンサ4の配置位置は、車体2の前後対角の位置に限定されない。例えば、車体2の左右方向の中央部の前後にレーザーセンサ3及び4を配置してもよい(変形配置例2)。その場合は、車体2の側方までレーザーが届くように、車体2にスリットを設ける。
【0041】
また、車体2の左右方向の中央部の前後に加えて、車体2の左右の側面にもレーザーセンサを設けてもよい(変形配置例3)。あるいは、車体2の上方に、車体2の周囲360度を検出できる3次元レーザーセンサを設けてもよい(変形配置例4)。
【0042】
変形配置例1及び3のように車体2に4つのレーザーセンサを配置するとレーザーセンサの数が増えてコストが掛かる。変形配置例2のように車体2にスリットを設けると車体2の強度が低下する。変形配置例4のように車体2の上方に3次元レーザーセンサを設けた場合は、無人搬送車1に積んでいる荷物WやマストM等により3次元レーザーセンサからリフレクタへ向けて出射されるレーザーが遮られる恐れがある。以上から、車体2の前後対角の位置にレーザーセンサ3,4を配置するのがより好ましい実施態様である。
【0043】
無人搬送車1は、
図1~
図4の荷物収容体A内の地図を記憶している。荷物収容体A内において、前方のレーザーセンサ3は、荷物収容体Aの横壁S1,S2及びリフレクタの一方5までの距離を測定し、後方のレーザーセンサ4は、荷物収容体Aの横壁S1,S2及びリフレクタの両方5,6(
図1及び
図3のレーザー光L2参照)までの距離を測定する。そして、前方のレーザーセンサ3及び後方のレーザーセンサ4の測定データを統合して、無人搬送車1の自己位置推定に用いる。
【0044】
このような構成によれば、荷物収容体Aの全長が長い場合に、荷物収容体Aの入口Eから遠い荷物収容体Aの奥まで無人搬送車1が進入しても、前方のレーザーセンサ3が測定した荷物収容体Aの横壁S1,S2及びリフレクタの一方5までの距離データ、並びに後方のレーザーセンサ4が測定した荷物収容体Aの横壁S1,S2及びリフレクタの両方5,6までの距離データを統合して、記憶している荷物収容体A内の地図上におけるリフレクタ5,6及び横壁S1,S2の位置と照合することで、無人搬送車1は、自己位置、及び上下軸まわりに回転する方向への姿勢のずれを正確に把握しながら荷物収容体A内を自律走行できる。
【0045】
図1~
図4において、無人搬送車1は、荷物収容体Aの外部から荷物収容体Aの入口Eまでは、荷物収容体Aの外部の地図において、入口Eのリフレクタ5,6の位置が反映された地図を用いて自律走行する。無人搬送車1が入口Eから荷物収容体A内へ進入すると、荷物収容体A内の地図は荷物収容体Aごとに異なるので、無人搬送車1は記憶していた荷物収容体A内の環境地図を読み出し、もしくはその場で荷物収容体A内の環境地図を取得あるいは作製し、環境地図上の自己位置を推定しながら自律走行する。
【0046】
図7(a)の斜視図、及び
図7(b)の平面図に示す、本発明の実施の形態に係るリフレクタ5,6、及び第2のリフレクタ7,8は、例えば同一形状である。リフレクタ5~8は、半円柱9の中心軸Oを鉛直方向とする、半円柱9の側面9Aに沿う形状を含む。
【0047】
図8(a)の斜視図、及び
図8(b)の平面図に示す、変形例のリフレクタ5,6、及び第2のリフレクタ7,8も、例えば同一形状である。リフレクタ5~8は、四角柱10の側面間の辺Rを鉛直方向とする、四角柱10の3つの側面10A,10B,10Cに沿う形状を含む。リフレクタ5~8は、
図8(a)及び
図8(b)の例では、側面10A,10B,10Cに沿うリフレクタが3つに分離しているが、それらを繋げた一体のものとしてもよい。
【0048】
リフレクタ5~8の高さUは、無人搬送車1のレーザーセンサ3,4からのレーザー光を受光できるように設定する。例えば、
図4の部分縦断面正面図、及び
図10の要部拡大正面図において、無人搬送車1がプラットフォームの床面J上を走行している場合、無人搬送車1がドックレベラーDの傾斜面I上を走行している場合、及び無人搬送車1が荷物収容体Aの床面N上を走行している場合において、リフレクタ5~8がレーザーセンサ3,4からのレーザー光L1,L2(
図3の部分横断面平面図、及び
図9の要部拡大平面図参照)を受光できるようにする。
【0049】
以上のようなリフレクタ5及び6の形状により、無人搬送車1が荷物収容体Aの外部から内部へ進入する際、及び無人搬送車1が荷物収容体Aの内部から外部へ退出する際に、無人搬送車1のレーザーセンサ3,4から照射されてリフレクタ5,6に入射したレーザー光L1,L2の反射方向をより連続的に変化させることができる。それにより、無人搬送車1が荷物収容体Aの内外を往来する際に、リフレクタ5,6に対する無人搬送車1の位置を連続的に正確に検出することができる。
【0050】
また、以上のようなリフレクタ7及び8の形状により、無人搬送車1がドックレベラーDに対して後方から進入する際、及び無人搬送車1がドックレベラーDから後方へ退出する際に、無人搬送車1のレーザーセンサ3,4から照射されてリフレクタ7,8に入射したレーザー光L1,L2の反射方向をより連続的に変化させることができる。それにより、無人搬送車1が荷物収容体Aの内外を往来してドックレベラーDを通過する際に、第2のリフレクタ7,8に対する無人搬送車1の位置を連続的に正確に検出することができる。
【0051】
図7(a)及び
図7(b)、並びに
図8(a)及び
図8(b)に示す例のリフレクタ5~8は、それらの下面にマグネット11が固定されているので、マグネット11の磁気吸着力により、荷物収容体Aの入口Eの左右にリフレクタ5,6を設置する作業、及びドックレベラーDの左右に第2のリフレクタ7,8を設置する作業が非常に簡単になる。
【0052】
図9の要部拡大平面図、及び
図10の要部拡大正面図に示すように、ドックレベラーDを備えた例において、ドックレベラーDの左右に設ける第2のリフレクタ7,8は、ドックレベラーDの傾斜面Iの最下部に近い下方水平面Hの左右に設けている。ドックレベラーDが、傾斜面Iを有するものではなく、リフト機構により水平面を昇降させる場合、第2のリフレクタ7,8は、ドックレベラーDの水平面において、荷物収容体Aから最遠の領域(例えば、
図9及び
図10の傾斜面Iを有するドックレベラーDにおける下方水平面Hに対応する領域)の左右に設ければよい。
【0053】
このように第2のリフレクタ7,8を設置することにより、荷物収容体Aの床面Nの高さとプラットフォームの床面Jの高さが異なる場合の段差を無くすようにドックレベラーDを設置した場合において、無人搬送車1は、車体2に備えたレーザーセンサ3,4により、第2のリフレクタ7,8を検出しながら、ドックレベラーDの位置を正確に検出してドックレベラーD上を走行できる。
【0054】
図9及び
図10のように、ドックレベラーDが、傾斜面Iを有する場合、無人搬送車1が傾斜面Iを走行している際における無人搬送車1の傾きは、車体2に搭載した傾斜センサにより認識する。
【0055】
図3及び
図4の最も右に記載した無人搬送車1のように、無人搬送車1がプラットフォームの床面J上をドックレベラーDへ向かって走行している際には、荷物収容体Aの外部の地図において、ドックレベラーD上の第2のリフレクタ7,8の位置が反映された地図を用いて自律走行する。無人搬送車1がドックレベラーDを走行する際には、荷物収容体Aの外部の地図において、荷物収容体Aの入口Eのリフレクタ5,6の位置が反映された地図を用いて自律走行する。無人搬送車1が入口Eから荷物収容体A内へ進入すると、無人搬送車1は記憶していた荷物収容体A内の環境地図を読み出し、もしくはその場で荷物収容体A内の環境地図を取得あるいは作製し、環境地図上の自己位置を推定しながら自律走行する。
【0056】
以上のような無人搬送車システムによれば、無人搬送車1は、誘導テープ等を設けなくても、高い走行精度を維持しながら、荷物収容体Aの内外を自律走行で往来できる。また、トラックTの停止位置が規定の位置からずれて荷物収容体Aの位置が規定の位置からずれた場合であっても、荷物収容体Aの入口Eの左右にリフレクタ5,6を設置すればよいので、リフレクタ5,6を設置しなおす必要がない。さらに、リフレクタ5,6を荷物収容体Aの入口Eの左右に設けているので、リフレクタ5,6が邪魔にならない。
【0057】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 無人搬送車
2 車体
3,4 レーザーセンサ
5,6 リフレクタ
7,8 第2のリフレクタ
9 半円柱
9A 半円柱の側面
10 四角柱
10A,10B,10C 四角柱の側面
11 マグネット
A 荷物収容体
B 荷役装置
C 移動装置
D ドックレベラー
E 入口
F フォーク
G 通路
H 下方水平面
I 傾斜面
J プラットフォームの床面
K リフトブラケット
L1,L2 レーザー光
M マスト
N 荷物収容体の床面
O 半円柱の中心軸
P パレット
Q 積載物
R 辺
S1,S2 横壁
T トラック
U リフレクタの高さ
V 突き当り面
W 荷物