(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/244 20240101AFI20240516BHJP
G05D 1/242 20240101ALI20240516BHJP
G05D 1/246 20240101ALI20240516BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240516BHJP
【FI】
G05D1/244
G05D1/242
G05D1/246
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020211082
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020063953
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐太
(72)【発明者】
【氏名】小田 和孝
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024598(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026761(WO,A1)
【文献】特開2008-165275(JP,A)
【文献】特開2019-220035(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0080025(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0072975(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/20 ー 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体から周囲にレーザを照射し、前記レーザの反射光を受光することにより、前記移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出するレーザセンサと、
前記レーザセンサにより検出された前記物体までの距離データと前記移動体の周囲環境の地図データとを用いて、前記移動体の自己位置を推定する第1自己位置推定部と、
前記移動体が走行する走行路に沿って設置され、前記レーザセンサから照射される前記レーザを前記物体よりも高い輝度で反射させる複数の反射部材と、
前記複数の反射部材のうち少なくとも2つの反射部材の位置情報を用いて、前記移動体の自己位置を推定する第2自己位置推定部と
、
前記第1自己位置推定部による前記移動体の自己位置の推定信頼度を判定する信頼度判定部と、
前記信頼度判定部により判定された前記第1自己位置推定部による前記移動体の自己位置の推定信頼度に基づいて、前記移動体の自己位置を決定する自己位置決定部と、
前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記移動体の周囲に前記反射部材が存在するかどうかを判断し、前記移動体の周囲に未登録の反射部材が存在するときに、前記未登録の反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして登録するランドマーク登録部とを備え
、
前記自己位置決定部は、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、前記第1自己位置推定部により推定された前記移動体の自己位置である第1自己位置推定値を前記移動体の自己位置として決定する第1推定モードを実施し、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、前記第2自己位置推定部により推定された前記移動体の自己位置である第2自己位置推定値を前記移動体の自己位置として決定する第2推定モードを実施し、
前記ランドマーク登録部は、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、前記第1自己位置推定値に基づいて、前記未登録の反射部材の位置情報を前記輝度ランドマークとして登録し、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、前記移動体の周囲に前記輝度ランドマークとして登録済の反射部材が少なくとも2つ存在するときは、前記第2自己位置推定値に基づいて、前記未登録の反射部材の位置情報を前記輝度ランドマークとして登録する位置推定システム。
【請求項2】
移動体から周囲にレーザを照射し、前記レーザの反射光を受光することにより、前記移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出するレーザセンサと、
前記レーザセンサにより検出された前記物体までの距離データと前記移動体の周囲環境の地図データとを用いて、前記移動体の自己位置を推定する第1自己位置推定部と、
前記移動体が走行する走行路に沿って設置され、前記レーザセンサから照射される前記レーザを前記物体よりも高い輝度で反射させる複数の反射部材と、
前記複数の反射部材のうち少なくとも2つの反射部材の位置情報を用いて、前記移動体の自己位置を推定する第2自己位置推定部と、
前記第1自己位置推定部による前記移動体の自己位置の推定信頼度を判定する信頼度判定部と、
前記信頼度判定部により判定された前記第1自己位置推定部による前記移動体の自己位置の推定信頼度に基づいて、前記移動体の自己位置を決定する自己位置決定部と
、
前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記移動体の周囲に前記反射部材が存在するかどうかを判断し、前記移動体の周囲に未登録の反射部材が存在するときに、前記未登録の反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして登録するランドマーク登録部とを備え
、
前記自己位置決定部は、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、前記第1自己位置推定部により推定された前記移動体の自己位置である第1自己位置推定値を前記移動体の自己位置として決定する第1推定モードを実施し、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、前記第2自己位置推定部により推定された前記移動体の自己位置である第2自己位置推定値を前記移動体の自己位置として決定する第2推定モードを実施
し、
前記ランドマーク登録部は、前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記輝度ランドマークとして登録済の反射部材からの前記レーザの反射光を受光しなくなったかどうかを判断し、前記登録済の反射部材からの前記レーザの反射光を受光しなくなったときは、前記登録済の反射部材に対応する輝度ランドマークを削除する位置推定システム。
【請求項3】
前記第1自己位置推定値と前記第2自己位置推定値との距離が予め決められた規定値以上であるときに、前記第1自己位置推定値が異常であると検知する異常検知部を更に備える請求項
1または2記載の位置推定システム。
【請求項4】
前記異常検知部により前記第1自己位置推定値が異常であると検知されたときに、前記第2自己位置推定値を前記第1自己位置推定値として再設定する自己位置補正部を更に備える請求項
3記載の位置推定システム。
【請求項5】
前記自己位置決定部は、前記第1推定モードの実施時に、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記移動体の周囲に前記反射部材が少なくとも2つ存在すると判断されたときは、前記第1推定モードから前記第2推定モードに移行する請求項
1または2記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記自己位置決定部は、前記第2推定モードの実施時に、前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されると共に、前記第1自己位置推定値と前記第2自己位置推定値との距離が予め決められた閾値以下であるときは、前記第2推定モードから前記第1推定モードに移行する請求項
1~5の何れか一項記載の位置推定システム。
【請求項7】
前記自己位置決定部は、前記第2推定モードの実施時に、前記移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されると共に前記第1自己位置推定値と前記第2自己位置推定値との距離が前記閾値以下である状態が規定時間だけ継続したときに、前記第2推定モードから前記第1推定モードに移行する請求項
6記載の位置推定システム。
【請求項8】
前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記移動体の周囲に前記反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断されたときに、前記第1自己位置推定値及び前記第2自己位置推定値が異常であると検知する異常検知部を更に備える請求項
5~7の何れか一項記載の位置推定システム。
【請求項9】
前記異常検知部は、前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に前記移動体の周囲に前記反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断される状態が規定時間だけ継続したときに、前記第1自己位置推定値及び前記第2自己位置推定値が異常であると検知する請求項
8記載の位置推定システム。
【請求項10】
前記信頼度判定部により前記移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、前記レーザセンサの検出データに基づいて、前記移動体の周囲に前記反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断されたときに、直前に推定または補完された前記第2自己位置推定値を前記第1自己位置推定値として再設定する自己位置補正部を更に備える請求項
5~9の何れか一項記載の位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置推定システムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の位置推定システムは、レーザを用いて移動体と周囲にある物体との距離を計測するレーザ測長器と、移動体が走行する領域の地図を記憶した地図データ記憶部と、移動体と周囲にある物体との距離データと地図データとを基にして、移動体の自己位置を推定する同定装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、移動体が自己位置を推定しながら走行している際に、移動体が廊下等のように同じ風景が続く走行路を走行すると、レーザ測長器によって同じような形状のレーザ点群が計測されることになる。その結果、移動体の自己位置の推定精度が低下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、移動体の周囲環境に関わらず、移動体の自己位置を高精度に推定することができる位置推定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る位置推定システムは、移動体から周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、移動体の周囲に存在する物体までの距離を検出するレーザセンサと、レーザセンサにより検出された物体までの距離データと移動体の周囲環境の地図データとを用いて、移動体の自己位置を推定する第1自己位置推定部と、移動体が走行する走行路に沿って設置され、レーザセンサから照射されるレーザを物体よりも高い輝度で反射させる複数の反射部材と、複数の反射部材のうち少なくとも2つの反射部材の位置情報を用いて、移動体の自己位置を推定する第2自己位置推定部とを備える。
【0007】
このような位置推定システムにおいては、第1自己位置推定部によって、レーザセンサにより検出された移動体の周囲に存在する物体までの距離データと移動体の周囲環境の地図データとを用いて、移動体の自己位置が推定される。このとき、同じ風景が続く走行路を移動体が走行する場合には、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定精度が低下しやすい。そこで、そのような同じ風景が続く周囲環境では、レーザセンサから照射されるレーザを移動体の周囲に存在する物体よりも高い輝度で反射させる複数の反射部材を、予め走行路に沿って設置しておく。そして、第2自己位置推定部によって、少なくとも2つの反射部材の位置情報を用いて、移動体の自己位置を推定することにより、移動体の自己位置の推定精度が確保される。これにより、移動体の周囲環境に関わらず、移動体の自己位置が高精度に推定される。
【0008】
位置推定システムは、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定信頼度を判定する信頼度判定部と、信頼度判定部により判定された第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定信頼度に基づいて、移動体の自己位置を決定する自己位置決定部とを更に備え、自己位置決定部は、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、第1自己位置推定部により推定された移動体の自己位置である第1自己位置推定値を移動体の自己位置として決定する第1推定モードを実施し、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、第2自己位置推定部により推定された移動体の自己位置である第2自己位置推定値を移動体の自己位置として決定する第2推定モードを実施してもよい。
【0009】
このような構成では、第1自己位置推定部により移動体の自己位置を推定している際に、移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると、第2自己位置推定部により推定された移動体の自己位置である第2自己位置推定値が移動体の自己位置として決定される。従って、同じ風景が続く走行路を移動体が走行することで、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定精度が低下しても、移動体の自己位置が確実に高精度に推定される。
【0010】
位置推定システムは、レーザセンサの検出データに基づいて、移動体の周囲に反射部材が存在するかどうかを判断し、移動体の周囲に未登録の反射部材が存在するときに、第1自己位置推定値または第2自己位置推定値に基づいて、未登録の反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして登録するランドマーク登録部を更に備えてもよい。
【0011】
このような構成では、移動体の周囲に未登録の反射部材が存在するときには、第1自己位置推定値または第2自己位置推定値に基づいて、未登録の反射部材の位置情報が輝度ランドマークとして自動的に登録される。従って、複数の反射部材を走行路に沿って設置したときに、作業者が各反射部材の設置箇所の位置情報をいちいち設定登録しなくて済むため、作業者の負担が軽減される。
【0012】
ランドマーク登録部は、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、第1自己位置推定値に基づいて、未登録の反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして登録してもよい。
【0013】
このような構成では、第1自己位置推定値に基づいて、反射部材の位置情報が輝度ランドマークとして自動的に登録される場合でも、移動体の自己位置の推定精度が確保されているため、反射部材の位置情報が適切な輝度ランドマークが得られる。
【0014】
ランドマーク登録部は、移動体の周囲に輝度ランドマークとして登録済の反射部材が少なくとも2つ存在するときは、第2自己位置推定値に基づいて、反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして登録してもよい。
【0015】
このような構成では、同じ風景が続く走行路を移動体が走行する場合でも、第2自己位置推定部によって、輝度ランドマークとして登録済の少なくとも2つの反射部材の位置情報を用いて移動体の自己位置が推定されるため、反射部材の位置情報が適切な輝度ランドマークが得られる。
【0016】
ランドマーク登録部は、レーザセンサの検出データに基づいて、輝度ランドマークとして登録済の反射部材からのレーザの反射光を受光しなくなったかどうかを判断し、登録済の反射部材からのレーザの反射光を受光しなくなったときは、登録済の反射部材に対応する輝度ランドマークを削除してもよい。
【0017】
このような構成では、移動体が輝度ランドマークとして登録済の反射部材を通過することで、当該反射部材からのレーザの反射光がレーザセンサによりを受光されなくなると、当該反射部材に対応する輝度ランドマークが削除されることになる。従って、移動体が同じ走行路を再度走行する際に、走行路の周囲環境の変化によって反射部材の数や位置等が変わっていても、反射部材の位置情報を輝度ランドマークとして再度登録することで、第2自己位置推定部により移動体の自己位置が高精度に推定される。
【0018】
位置推定システムは、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が予め決められた規定値以上であるときに、第1自己位置推定値が異常であると検知する異常検知部を更に備えてもよい。
【0019】
このような構成では、第1自己位置推定値が異常であると検知されたときに、その旨を作業者に知らせたり、移動体の走行を強制的に停止させることができる。
【0020】
位置推定システムは、異常検知部により第1自己位置推定値が異常であると検知されたときに、第2自己位置推定値を第1自己位置推定値として再設定する自己位置補正部を更に備えてもよい。
【0021】
このような構成では、第1自己位置推定値が異常であると検知されたときは、第2自己位置推定値が第1自己位置推定値として再設定される。このため、第1自己位置推定部により推定される移動体の自己位置が適切な値に初期化されることになる。従って、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定精度が高くなる。
【0022】
自己位置決定部は、第1推定モードの実施時に、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、レーザセンサの検出データに基づいて、移動体の周囲に反射部材が少なくとも2つ存在すると判断されたときは、第1推定モードから第2推定モードに移行してもよい。
【0023】
このような構成では、第1推定モードの実施時に、移動体の自己位置の推定信頼度が低くなっても、移動体の周囲に反射部材が少なくとも2つ存在すると判断されたときは、第2自己位置推定部による移動体の自己位置推定が可能である。このため、第1推定モードから第2推定モードに移行するようになる。従って、移動体の自己位置推定の信頼性が確保される。
【0024】
自己位置決定部は、第2推定モードの実施時に、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されると共に、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が予め決められた閾値以下であるときは、第2推定モードから第1推定モードに移行してもよい。
【0025】
このような構成では、第2推定モードの実施時に、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定信頼度が高いと共に、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下であるときは、第2推定モードから第1推定モードに移行する。従って、移動体の自己位置推定の信頼性が確保される。
【0026】
自己位置決定部は、第2推定モードの実施時に、移動体の自己位置の推定信頼度が高いと判定されると共に第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下である状態が規定時間だけ継続したときに、第2推定モードから第1推定モードに移行してもよい。
【0027】
このような構成では、第2推定モードから第1推定モードへの移行時に、ノイズ等の影響があっても、移動体の自己位置推定の信頼性が確保される。
【0028】
位置推定システムは、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、レーザセンサの検出データに基づいて、移動体の周囲に反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断されたときに、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知する異常検知部を更に備えてもよい。
【0029】
このような構成では、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知されたときに、その旨を作業者に知らせたり、移動体の走行を強制的に停止させることができる。
【0030】
異常検知部は、移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に移動体の周囲に反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断される状態が規定時間だけ継続したときに、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知してもよい。
【0031】
このような構成では、ノイズ等の影響があっても、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であることを精度良く検知することができる。
【0032】
位置推定システムは、信頼度判定部により移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、レーザセンサの検出データに基づいて、移動体の周囲に反射部材が少なくとも2つ存在しないと判断されたときに、直前に推定または補完された第2自己位置推定値を第1自己位置推定値として再設定する自己位置補正部を更に備えてもよい。
【0033】
このような構成では、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定信頼度が低い状態で、第2自己位置推定部による移動体の自己位置推定が不可能になると、直前に推定または補完された第2自己位置推定値が第1自己位置推定値として再設定される。このため、第1自己位置推定部により推定される移動体の自己位置が適切な値に初期化されることになる。従って、第1自己位置推定部による移動体の自己位置の推定精度が高くなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、移動体の周囲環境に関わらず、移動体の自己位置を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】レーザセンサから移動体の周囲にレーザが照射される様子を示す概念図である。
【
図3】レーザセンサから照射されたレーザが反射板で反射される様子を示す概念図である。
【
図4】
図1に示された3点測量自己位置推定部において、輝度ランドマークとして登録された3つの反射板の位置座標を用いた3点測量法によって、移動体の自己位置が推定される様子を示す概念図である。
【
図5】
図1に示されたランドマーク登録部により実行されるランドマーク登録処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】移動体が前方に進んだときに、反射板からのレーザ反射点の位置が移動体の進行方向とは逆の方向に変化する様子を示す概念図である。
【
図7】3点測量自己位置推定部により推定された移動体の自己位置に基づいて、反射板の位置座標が輝度ランドマークとして新たに登録される様子を示す概念図である。
【
図8】
図1に示された自己位置決定部により実行される自己位置決定処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図10】
図9に示された異常検知部により実行される異常検知処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】SLAM自己位置推定部により得られた移動体の第1自己位置推定値が異常であると検知される様子を示す概念図である。
【
図12】3点測量自己位置推定部により得られた移動体の第2自己位置推定値がSLAM自己位置推定部により得られた移動体の第1自己位置推定値として再設定される様子を示す概念図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図14】
図13に示された自己位置決定部により実行される自己位置決定処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】
図13に示された異常検知部により実行される異常検知処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図16】
図13に示された位置推定システムにおいて、3点測量モードからSLAMモードに移行する様子を示すタイミングチャートである。
【
図17】
図13に示された位置推定システムにおいて、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知される様子を示すタイミングチャートである。
【
図18】輝度ランドマークとして登録された2つの反射板の位置座標を用いて、移動体の自己位置が推定される様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
図1は、本発明の第1実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、走行制御システム1は、例えばフォークリフトや無人搬送車等の移動体2(
図2参照)を自動的に誘導走行させるシステムである。
【0038】
走行制御システム1は、レーザセンサ3と、エンコーダ4と、複数の反射板5と、コントローラ6と、駆動部7とを備えている。レーザセンサ3、エンコーダ4、コントローラ6及び駆動部7は、移動体2に搭載されている。
【0039】
レーザセンサ3は、移動体2から周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、移動体2の周囲に存在する物体までの距離を検出する。レーザセンサ3としては、例えばレーザレンジファインダが使用される。レーザセンサ3から照射されるレーザとしては、2Dレーザでもよいし、3Dレーザでもよい。
【0040】
レーザセンサ3は、
図2に示されるように、レーザLを移動体2の周囲に扇状に照射する。具体的には、レーザセンサ3は、移動体2の前方直進方向を中心した規定の角度範囲(ここでは270度)にレーザLを照射する。レーザセンサ3から照射されたレーザLは物体8に当たり、その物体8で反射したレーザLの反射光がレーザセンサ3で受光される。物体8は、壁や柱等といった静止物体であり、地図データ(後述)に登録されている。
【0041】
エンコーダ4は、移動体2の車輪(図示せず)の回転角度を計測するオドメトリ用のセンサである。
【0042】
反射板5は、
図3に示されるように、レーザセンサ3から照射されるレーザLを移動体2の周囲に存在する物体8よりも高い輝度で反射させる反射部材である。物体8は、例えば移動体2が走行する走行路9の左右両側に設置された壁である。複数の反射板5は、走行路9に沿って左右両側に間隔を隔てて設置されている。各反射板5は、物体8の同じ高さ位置に取り付けられている。
【0043】
コントローラ6は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ6は、レーザセンサ3の検出データ及びエンコーダ4の計測値を取得し、所定の処理を実行し、駆動部7を制御する。なお、駆動部7は、特に図示はしないが、移動体2を走行させる走行モータと、移動体2を転舵させる操舵モータとを有している。
【0044】
コントローラ6は、SLAM自己位置推定部10と、オドメトリ自己位置推定部11と、信頼度判定部12と、ランドマーク登録部13と、3点測量自己位置推定部14と、自己位置決定部15と、駆動制御部16とを有している。
【0045】
SLAM自己位置推定部10は、レーザセンサ3の検出データと移動体2の周囲環境の地図データとを用いて、移動体2の自己位置を推定する第1自己位置推定部である。SLAM自己位置推定部10は、SLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、移動体2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。SLAMは、レーザセンサ等を利用して、自己位置推定と環境地図の作成とを同時に行う。
【0046】
具体的には、SLAM自己位置推定部10は、レーザセンサ3により検出された移動体2の周囲に存在する物体8までの距離データと移動体2の周囲環境の地図データとをマッチングさせて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。なお、移動体2の自己位置は、例えば移動体2の中心の位置である。また、移動体2の自己位置は、位置座標(XY座標)及び向き(角度)で表される。
【0047】
オドメトリ自己位置推定部11は、エンコーダ4により計測された移動体2の車輪の回転角度から移動体2の移動量を求め、その移動体2の移動量に基づいて移動体2の自己位置を推定する。
【0048】
信頼度判定部12は、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とオドメトリ自己位置推定部11により推定された移動体2の自己位置とに基づいて、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度を判定する。
【0049】
具体的には、信頼度判定部12は、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とオドメトリ自己位置推定部11により推定された移動体2の自己位置とのずれ量が予め決められた閾値以上であるときは、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定する。信頼度判定部12は、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とオドメトリ自己位置推定部11により推定された移動体2の自己位置とのずれ量が閾値よりも少ないときは、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判定する。
【0050】
このとき、信頼度判定部12は、例えばX座標のずれ量、Y座標のずれ量及び角度のずれ量のうちの少なくとも1つが対応する閾値以上であるときに、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定する。
【0051】
ランドマーク登録部13は、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が存在するかどうかを判断し、移動体2の周囲に未登録の反射板5が存在するときに、SLAM自己位置推定部10または3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報を輝度ランドマークとして登録する。なお、ランドマーク登録部13の具体的な処理については、後で詳述する。
【0052】
3点測量自己位置推定部14は、ランドマーク登録部13により輝度ランドマークとして登録された複数の反射板5のうちの3つの反射板5の位置情報を用いて、移動体2の自己位置を推定する第2自己位置推定部である。
【0053】
具体的には、3点測量自己位置推定部14は、
図4に示されるように、三角測量法を用いて、輝度ランドマークMとして登録された3つの反射板5の位置情報から移動体2の自己位置の推定演算を行う。このとき、移動体2に近い3つの輝度ランドマークMの位置座標が使用される。3点測量自己位置推定部14は、3つの輝度ランドマークM(反射板5)の位置座標と、移動体2と反射板5との相対距離とから、移動体2の自己位置の推定演算を行う。
【0054】
自己位置決定部15は、信頼度判定部12により判定されたSLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度に基づいて、移動体2の自己位置を決定する。なお、自己位置決定部15の具体的な処理については、後で詳述する。
【0055】
駆動制御部16は、自己位置決定部15により決定された移動体2の自己位置に基づいて、移動体2を目的地まで走行させるように駆動部7を制御する。
【0056】
ここで、レーザセンサ3、エンコーダ4、複数の反射板5、コントローラ6のSLAM自己位置推定部10、オドメトリ自己位置推定部11、信頼度判定部12、ランドマーク登録部13、3点測量自己位置推定部14及び自己位置決定部15は、本実施形態の位置推定システム17を構成している。
【0057】
図5は、ランドマーク登録部13により実行されるランドマーク登録処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の走行が開始されると実行される。なお、本処理の実行前は、登録フラグが0に設定されている。登録フラグは、輝度ランドマークとして登録された反射板5があるかどうかを表すフラグである。輝度ランドマークとして登録された反射板5がないときは、登録フラグが0に設定される。
【0058】
図5において、ランドマーク登録部13は、まずレーザセンサ3の検出データを取得する(手順S101)。そして、ランドマーク登録部13は、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が存在するかどうかを判断する(手順S102)。このとき、
図6に示されるように、レーザセンサ3の検出データにおける複数のレーザ反射点R
Lのうち輝度値が予め決められた規定値よりも高いレーザ反射点P
Lが存在するときに、反射板5が存在すると判定される。
【0059】
ランドマーク登録部13は、移動体2の周囲に反射板5が存在すると判断したときは、登録フラグが1であるかどうかを判断する(手順S103)。輝度ランドマークとして登録された反射板5があるときは、登録フラグが1に設定される。
【0060】
ランドマーク登録部13は、登録フラグが1であると判断したときは、レーザセンサ3の検出データに基づいて、輝度ランドマークとして登録された反射板5からのレーザの反射光を受光したかどうかを判断する(手順S104)。
【0061】
ここで、
図6に示されるように、移動体2が前方に進むに従い、反射板5からのレーザ反射点P
Lは、移動体2から見て進行方向(A方向)とは逆の方向(B方向)においてレーザセンサ3により計測される。そして、移動体2が更に前方に進むと、反射板5からのレーザ反射点P
Lがレーザセンサ3により計測されなくなる。従って、移動体2が輝度ランドマークとして登録された反射板5を通過すると、当該反射板5からのレーザLの反射光がレーザセンサ3により受光されなくなる。
【0062】
ランドマーク登録部13は、輝度ランドマークとして登録された反射板5からのレーザの反射光を受光していないと判断したときは、当該反射板5に対応する輝度ランドマークを削除する(手順S105)。
【0063】
ランドマーク登録部13は、手順S103で登録フラグが0であると判断したとき、手順S104で輝度ランドマークとして登録された反射板5からのレーザの反射光を受光したと判断したとき、または手順S105を実行した後、信頼度判定部12により得られた移動体2の自己位置の推定信頼度の判定結果を取得する(手順S106)。そして、ランドマーク登録部13は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いかどうかを判断する(手順S107)。
【0064】
ランドマーク登録部13は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判断したときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置(第1自己位置推定値)を取得する(手順S108)。
【0065】
そして、ランドマーク登録部13は、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標を輝度ランドマークとして登録する(手順S109)。このとき、ランドマーク登録部13は、移動体2の自己位置と、移動体2と反射板5との相対距離とから、未登録の反射板5の位置座標を求める。
【0066】
ランドマーク登録部13は、手順S107で移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判断したときは、輝度ランドマークが3つ以上あるかどうかを判断する(手順S110)。
【0067】
ランドマーク登録部13は、輝度ランドマークが3つ以上あると判断したときは、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置(第2自己位置推定値)を取得する(手順S111)。
【0068】
そして、ランドマーク登録部13は、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標を輝度ランドマークとして登録する(手順S112)。このとき、ランドマーク登録部13は、上記の手順S109と同様に、移動体2の自己位置と、移動体2と反射板5との相対距離とから、未登録の反射板5の位置座標を求める。これにより、
図7に示されるように、新たな輝度ランドマークMが登録される。
【0069】
ランドマーク登録部13は、手順S109または手順S112を実行した後、登録フラグを1に設定する(手順S113)。そして、ランドマーク登録部13は、上記の手順S101を再度実行する。
【0070】
また、ランドマーク登録部13は、手順S110で輝度ランドマークが3つ以上ないと判断したとき、または移動体2の周囲に反射板5が存在しないと判断したときも、上記の手順S101を再度実行する。
【0071】
図8は、自己位置決定部15により実行される自己位置決定処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の走行が開始されると実行される。
【0072】
図8において、自己位置決定部15は、まず信頼度判定部12により得られた移動体2の自己位置の推定信頼度の判定結果を取得する(手順S121)。そして、自己位置決定部15は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いかどうかを判断する(手順S122)。
【0073】
自己位置決定部15は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判断したときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置(第1自己位置推定値)を最終的な移動体2の自己位置として決定するSLAMモードを実施する(手順S123)。SLAMモードは、移動体2の自己位置として第1自己位置推定値を使用する第1推定モードである。そして、自己位置決定部15は、上記の手順S121を再度実行する。
【0074】
自己位置決定部15は、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判断したときは、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置(第2自己位置推定値)を最終的な移動体2の自己位置として決定する3点測量モードを実施する(手順S124)。3点測量モードは、移動体2の自己位置として第2自己位置推定値を使用する第2推定モードである。そして、自己位置決定部15は、上記の手順S121を再度実行する。
【0075】
以上において、移動体2を目的地に向かって誘導走行させる際には、レーザセンサ3から移動体2の周囲にレーザが照射され、移動体2の周囲に存在する物体8で反射したレーザの反射光がレーザセンサ3により受光されることで、移動体2の周囲に存在する物体8までの距離が検出される。そして、SLAM自己位置推定部10において、レーザセンサ3の検出データと移動体2の周囲環境の地図データとのマッチングを行って、移動体2の自己位置が推定される。
【0076】
ただし、同じ風景が続く走行路9を移動体2が走行する際には、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低下する。この場合には、
図4に示されるように、3点測量自己位置推定部14において、輝度ランドマークMとして登録された3つの反射板5の位置座標を用いた3点測量によって移動体2の自己位置が推定される。これにより、移動体2の自己位置の推定精度が確保される。
【0077】
また、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が高いときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標が輝度ランドマークMとして登録される。一方、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低いときは、
図7に示されるように、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標が輝度ランドマークMとして登録される。
【0078】
以上のように本実施形態によれば、SLAM自己位置推定部10によって、レーザセンサ3により検出された移動体2の周囲に存在する物体8までの距離データと移動体2の周囲環境の地図データとを用いて、移動体2の自己位置が推定される。このとき、同じ風景が続く走行路9を移動体2が走行する場合には、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定精度が低下しやすい。そこで、そのような同じ風景が続く周囲環境では、レーザセンサ3から照射されるレーザを移動体2の周囲に存在する物体8よりも高い輝度で反射させる複数の反射板5を、予め走行路9に沿って設置しておく。そして、3点測量自己位置推定部14によって、3つの反射板5の位置情報を用いて、移動体2の自己位置を推定することにより、移動体2の自己位置の推定精度が確保される。これにより、移動体2の周囲環境に関わらず、移動体2の自己位置が高精度に推定される。その結果、移動体2の誘導走行のロバスト性を向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、SLAM自己位置推定部10により得られた第1自己位置推定値が移動体2の自己位置として決定され、移動体の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、3点測量自己位置推定部14により得られた第2自己位置推定値が移動体2の自己位置として決定される。このため、SLAM自己位置推定部10により移動体2の自己位置を推定している際に、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると、3点測量自己位置推定部14により得られた第2自己位置推定値が移動体2の自己位置として決定される。従って、同じ風景が続く走行路9を移動体2が走行することで、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定精度が低下しても、移動体2の自己位置が確実に高精度に推定される。
【0080】
また、本実施形態では、移動体2の周囲に未登録の反射板5が存在するときには、SLAM自己位置推定部10または3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報が輝度ランドマークとして自動的に登録される。従って、複数の反射板5を走行路9に沿って設置したときに、作業者が各反射板5の設置箇所の位置情報をいちいち設定登録しなくて済むため、作業者の負担が軽減される。
【0081】
また、本実施形態では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報が輝度ランドマークとして登録される。従って、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報が輝度ランドマークとして自動的に登録される場合でも、移動体2の自己位置の推定精度が確保されているため、反射板5の位置情報が適切な輝度ランドマークが得られる。
【0082】
また、本実施形態では、移動体2の周囲に輝度ランドマークとして登録済の反射板5が3つ存在するときは、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報が輝度ランドマークとして登録される。従って、同じ風景が続く走行路9を移動体2が走行する場合でも、3点測量自己位置推定部14によって3つの登録済の反射板5の位置情報を用いて移動体2の自己位置が推定されるため、反射板5の位置情報が適切な輝度ランドマークが得られる。
【0083】
また、本実施形態では、輝度ランドマークとして登録済の反射板5からのレーザ反射光を受光しなくなったときは、登録済の反射板5に対応する輝度ランドマークが削除される。このため、移動体2が登録済の反射板5を通過することで、当該反射板5からのレーザの反射光がレーザセンサ3により受光されなくなると、当該反射板5に対応する輝度ランドマークが削除されることになる。従って、移動体2が同じ走行路9を再度走行する際に、走行路9の周囲環境の変化によって反射板5の数や位置等が変わっていても、反射板5の位置情報を輝度ランドマークとして再度登録することで、3点測量自己位置推定部14により移動体2の自己位置が高精度に推定される。
【0084】
図9は、本発明の第2実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図9において、本実施形態の位置推定システム17は、上記のレーザセンサ3、エンコーダ4、複数の反射板5及び駆動部7と、報知部20と、コントローラ21とを備えている。
【0085】
報知部20は、移動体2に搭載されている。報知部20としては、表示器及び警報器等が使用される。
【0086】
コントローラ21は、上記のコントローラ6の構成に加え、異常検知部22と、自己位置補正部23とを更に有している。
【0087】
異常検知部22は、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置(第1自己位置推定値)と3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置(第2自己位置推定値)との距離が予め決められた規定値以上であるときに、第1自己位置推定値が異常であると検知する。
【0088】
図10は、異常検知部22により実行される異常検知処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の走行が開始されると実行される。
【0089】
図10において、異常検知部22は、まずSLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置(第1自己位置推定値)と3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置(第2自己位置推定値)とを取得する(手順S131)。
【0090】
そして、異常検知部22は、
図11に示されるように、移動体2の第1自己位置推定値S1と移動体2の第2自己位置推定値S2との距離Dが規定値以上であるかどうかを判断する(手順S132)。
【0091】
異常検知部22は、移動体2の第1自己位置推定値S1と移動体2の第2自己位置推定値S2との距離Dが規定値以上であると判断したときは、第1自己位置推定値S1が異常であると検知する(手順S133)。
【0092】
そして、異常検知部22は、第1自己位置推定値S1が異常である旨を報知信号として報知部20に出力する(手順S134)。また、異常検知部22は、移動体2の走行を強制的に停止させるように駆動部7を制御する(手順S135)。
【0093】
異常検知部22は、手順S132で移動体2の第1自己位置推定値S1と移動体2の第2自己位置推定値S2との距離Dが規定値以上でないと判断したときは、手順S133~S135を実行しない。
【0094】
自己位置補正部23は、異常検知部22により移動体2の第1自己位置推定値が異常であると検知されたときに、3点測量自己位置推定部14により得られた移動体2の第2自己位置推定値をSLAM自己位置推定部10により得られた移動体2の第1自己位置推定値として再設定する。
【0095】
例えば
図12(a)に示されるように、移動体2の第1自己位置推定値S1と移動体2の第2自己位置推定値S2との距離Dが規定値以上である場合には、
図12(b)に示されるように、第2自己位置推定値S2が第1自己位置推定値S1として再設定される。つまり、第1自己位置推定値S1が第2自己位置推定値S2に補正されることになる。その状態で、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定が継続して実施される。
【0096】
以上のように本実施形態では、SLAM自己位置推定部10により得られた移動体2の第1自己位置推定値と3点測量自己位置推定部14により得られた移動体2の第2自己位置推定値との距離が規定値以上であるときは、第1自己位置推定値が異常であると検知される。従って、第1自己位置推定値が異常であると検知されたときに、その旨を作業者に知らせたり、移動体2の走行を強制的に停止させることができる。
【0097】
また、本実施形態では、第1自己位置推定値が異常であると検知されたときは、3点測量自己位置推定部14により得られた移動体2の第2自己位置推定値がSLAM自己位置推定部10により得られた移動体2の第1自己位置推定値として再設定される。このため、SLAM自己位置推定部10により推定される移動体2の自己位置が適切な値に初期化(リセット)されることになる。従って、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定精度が高くなる。
【0098】
図13は、本発明の第3実施形態に係る位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図13において、本実施形態の位置推定システム17は、上記のレーザセンサ3、エンコーダ4、複数の反射板5、駆動部7及び報知部20と、コントローラ30とを備えている。
【0099】
コントローラ30は、上記のSLAM自己位置推定部10、オドメトリ自己位置推定部11、信頼度判定部12、ランドマーク登録部13及び3点測量自己位置推定部14と、自己位置決定部31と、異常検知部32と、自己位置補正部33と、上記の駆動制御部16とを有している。
【0100】
自己位置決定部31は、信頼度判定部12により判定されたSLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度とレーザセンサ3の検出データとに基づいて、移動体2の自己位置を決定する。自己位置決定部31による自己位置決定処理については、後で詳述する。
【0101】
異常検知部32は、信頼度判定部12により移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断されたときに、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知する。
【0102】
自己位置補正部33は、信頼度判定部12により移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断されたときに、直前に推定された第2自己位置推定値を第1自己位置推定値として再設定する。
【0103】
このとき、自己位置補正部33は、オドメトリ自己位置推定部11により推定された移動体2の自己位置を用いて、直前に推定された第2自己位置推定値を補完することで、第1自己位置推定値を再設定してもよい。また、自己位置補正部33は、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断される状態が継続している間、第1自己位置推定値の再設定を繰り返し実施してもよい。
【0104】
図14は、自己位置決定部31により実行される自己位置決定処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の走行が開始されると実行される。
【0105】
図14において、自己位置決定部31は、まず現在実施されている推定モードがSLAMモードであるかどうかを判断する(手順S151)。自己位置決定部31は、現在実施されている推定モードがSLAMモードであると判断したときは、信頼度判定部12により得られた移動体2の自己位置の推定信頼度の判定結果を取得する(手順S152)。
【0106】
そして、自己位置決定部31は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いかどうかを判断する(手順S153)。自己位置決定部31は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判断したときは、上記の手順S151を再度実行する。
【0107】
自己位置決定部31は、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判断したときは、レーザセンサ3の検出データを取得する(手順S154)。そして、自己位置決定部31は、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在するかどうかを判断する(手順S155)。ここで、自己位置決定部31は、輝度ランドマークとして登録済の3つ以上の反射板5からのレーザの反射光を受光したかどうかによって、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在するかどうかを判断する。
【0108】
自己位置決定部31は、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在すると判断したときは、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能であるとして、推定モードをSLAMモードから3点測量モードに移行し(手順S156)、上記の手順S151を再度実行する。これにより、3点測量モードが実施されることとなる。
【0109】
自己位置決定部31は、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在していないと判断したときは、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が不可能であるとして、上記の手順S156を実行せずに、上記の手順S151を再度実行する。これにより、SLAMモードがそのまま継続して実施されることとなる。
【0110】
自己位置決定部31は、手順S151で現在実施されている推定モードがSLAMモードでなく3点測量モードであると判断したときは、信頼度判定部12により得られた移動体2の自己位置の推定信頼度の判定結果を取得する(手順S157)。
【0111】
そして、自己位置決定部31は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いかどうかを判断する(手順S158)。自己位置決定部31は、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判断したときは、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が予め決められた閾値以下であるかどうかを判断する(手順S159)。
【0112】
自己位置決定部31は、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下であると判断したときは、両者の距離が閾値以下となってから規定時間が経過したかどうかを判断する(手順S160)。自己位置決定部31は、規定時間が経過したと判断したときは、推定モードを3点測量モードからSLAMモードに移行し(手順S161)、上記の手順S151を再度実行する。これにより、SLAMモードが実施されることとなる。
【0113】
自己位置決定部31は、手順S158で移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判断したとき、手順S159で第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下でないと判断したとき、手順S160で規定時間が経過していないと判断したときは、上記の手順S161を実行せずに、上記の手順S151を再度実行する。これにより、3点測量モードがそのまま継続して実施されることとなる。
【0114】
図15は、異常検知部32により実行される異常検知処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の走行が開始されると実行される。
【0115】
図15において、異常検知部32は、まず信頼度判定部12により得られた移動体2の自己位置の推定信頼度の判定結果を取得する(手順S171)。そして、異常検知部32は、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いかどうかを判断する(手順S172)。異常検知部32は、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判断したときは、レーザセンサ3の検出データを取得する(手順S173)。
【0116】
そして、異常検知部32は、レーザセンサ3の検出データに基づいて、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないかどうかを判断する(手順S174)。ここでの判断手法は、上記のS155と同様である。異常検知部32は、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断したときは、3つ以上の反射板5が存在しないと判断されてから規定時間が経過したかどうかを判断する(手順S175)。
【0117】
異常検知部32は、規定時間が経過したと判断したときは、SLAM自己位置推定部10及び3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が不可能であるとして、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知する(手順S176)。
【0118】
そして、異常検知部32は、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常である旨を報知信号として報知部20に出力する(手順S177)。また、異常検知部32は、移動体2の走行を強制的に停止させるように駆動部7を制御する(手順S178)。
【0119】
異常検知部32は、手順S172で移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判断したとき、手順S174で移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在すると判断したとき、手順S175で規定時間が経過していないと判断したときは、手順S176~S178を実行しない。
【0120】
図16は、3点測量モードからSLAMモードに移行する様子を示すタイミングチャートである。
図16において、時間t1では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いため、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能であっても、SLAMモードが実施され、SLAM自己位置推定部10により得られた第1自己位置推定値が採用される。
【0121】
その後の時間t2では、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能である状態で、移動体2の自己位置の推定信頼度が低くなるため、SLAMモードから3点測量モードに移行し、3点測量自己位置推定部14により得られた第2自己位置推定値が採用される。
【0122】
その後の時間t3では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高くなっても、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値S以下でないため、3点測量モードが継続して実施される。
【0123】
その後の時間t4では、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値S以下となったが、両者の距離が閾値S以下となってから規定時間Tが経過していないため、3点測量モードが継続して実施される。
【0124】
その後の時間t5では、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値S以下となってから、規定時間Tが経過したため、3点測量モードからSLAMモードに移行し、SLAM自己位置推定部10により得られた第1自己位置推定値が採用される。
【0125】
図17は、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知される様子を示すタイミングチャートである。
図17において、時間t1では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いため、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能であっても、SLAMモードが実施され、SLAM自己位置推定部10により得られた第1自己位置推定値が採用される。
【0126】
その後の時間t2では、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能である状態で、移動体2の自己位置の推定信頼度が低くなるため、SLAMモードから3点測量モードに移行し、3点測量自己位置推定部14により得られた第2自己位置推定値が採用される。
【0127】
その後の時間t3では、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が不可能になる。このため、直前に推定または補完された第2自己位置推定値が第1自己位置推定値として再設定される。
【0128】
その後の時間t4では、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が不可能になってから規定時間Tが経過したため、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知され、報知部20によって異常発報される。
【0129】
以上のような本実施形態では、SLAMモードの実施時に、移動体2の自己位置の推定信頼度が低くなっても、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在すると判断されたときは、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が可能である。このため、SLAMモードから3点測量モードに移行するようになる。従って、移動体2の自己位置推定の信頼性が確保される。
【0130】
また、本実施形態では、3点測量モードの実施時に、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと共に、第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下であるときは、3点測量モードからSLAMモードに移行する。従って、移動体2の自己位置推定の信頼性が更に確保される。
【0131】
また、本実施形態では、移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと共に第1自己位置推定値と第2自己位置推定値との距離が閾値以下である状態が規定時間だけ継続したときに、3点測量モードからSLAMモードに移行する。このため、3点測量モードからSLAMモードへの移行時に、ノイズ等の影響があっても、移動体2の自己位置推定の信頼性が確保される。
【0132】
また、本実施形態では、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断されたときに、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知される。このため、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常である旨を作業者に知らせたり、移動体2の走行を強制的に停止させることができる。
【0133】
また、本実施形態では、移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されると共に移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在しないと判断された状態が規定時間だけ継続したときに、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であると検知される。このため、ノイズ等の影響があっても、第1自己位置推定値及び第2自己位置推定値が異常であることを精度良く検知することができる。
【0134】
また、本実施形態では、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低い状態で、3点測量自己位置推定部14による移動体2の自己位置推定が不可能になると、直前に推定または補完された第2自己位置推定値が第1自己位置推定値として再設定される。このため、SLAM自己位置推定部10により推定される移動体2の自己位置が適切な値に初期化されることになる。従って、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定精度が高くなる。
【0135】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置が採用され、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置が採用されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、輝度ランドマークとして登録済の3つ以上の反射板5が設置されている環境下では、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度に関わらず、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置を採用してもよい。
【0136】
また、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置と3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置との平均値を、最終的な移動体2の自己位置として採用してもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が高いと判定されたときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標が輝度ランドマークとして新たに登録され、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が低いと判定されたときは、移動体2の周囲に輝度ランドマークとして登録済の反射板5が3つ以上存在する場合に、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標が輝度ランドマークとして新たに登録されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、移動体2の周囲に輝度ランドマークとして登録済の反射板5が3つ以上存在していれば、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度に関わらず、3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置座標を輝度ランドマークとして新たに登録してもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、オドメトリ自己位置推定部11によって、エンコーダ4の計測値を用いて移動体2の自己位置が推定され、その移動体2の自己位置とSLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とが比較されることで、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が判定されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、エンコーダ4に代えて、移動体2の角速度及び加速度を計測する慣性計測ユニットを使用し、慣性計測ユニットの計測値を用いて移動体2の自己位置を推定し、その移動体2の自己位置とSLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とを比較することで、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度を判定してもよい。また、路面にARマーカまたはバーコードを設置し、ARマーカの撮像画像またはバーコードの読込データを用いて移動体2の自己位置を推定し、その移動体2の自己位置とSLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置とを比較することで、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度を判定してもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定信頼度が判定されているが、複数の反射板5が設置されている環境下では、特にそのような形態には限られない。例えば、移動体2の周囲に反射板5が3つ以上存在するときには、上記の第2実施形態のように、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置と3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置とを比較してもよい。この場合、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置と3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置とのずれ量が規定値よりも少ないときは、SLAM自己位置推定部10により推定された移動体2の自己位置を優先して採用してもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、複数の反射板5が設置されている環境下において、輝度ランドマークとして登録された3つの反射板5の位置座標を用いた3点測量法によって、移動体2の自己位置が推定されているが、特に3点測量法には限られず、輝度ランドマークとして登録された2つの反射板5の位置座標を用いて、移動体2の自己位置を推定してもよい。
【0141】
具体的には、
図18に示されるように、移動体2におけるレーザセンサ3の搭載位置と輝度ランドマークMとして登録された2つの反射板5の位置座標とが予め分かっている。従って、レーザセンサ3によって反射板5までの距離と反射板5でのレーザ反射点R
Lとを検出すると共に、エンコーダ4等を用いて移動体2の移動量を検出することにより、移動体2の自己位置を推定することができる。
【0142】
また、上記実施形態では、SLAM自己位置推定部10または3点測量自己位置推定部14により推定された移動体2の自己位置に基づいて、未登録の反射板5の位置情報が輝度ランドマークとして自動的に登録されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、複数の反射板5が走行路9に沿って設置されたときに、作業者が各反射板5の設置箇所の位置情報を設定登録してもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、移動体2が走行する走行路9の左右両側に物体8としての壁が設置された環境となっているが、本発明は、例えば走行路9の左右片側に物体8としての壁が設置されることで同じ風景が続くような環境下でも適用可能である。また、本発明は、例えば荷物等の特徴物が変化することで、SLAM自己位置推定部10による移動体2の自己位置の推定精度が低下するような環境下でも適用可能である。
【0144】
また、上記実施形態は、移動体2を目的地まで自動的に誘導走行させる走行制御システム1であるが、本発明は、特にその形態には限られず、例えば移動体2を対象物に追尾して走行させるシステム等、移動体2の自己位置を推定する必要があれば適用可能である。
【符号の説明】
【0145】
2…移動体、3…レーザセンサ、5…反射板(反射部材)、8…物体、9…走行路、10…SLAM自己位置推定部(第1自己位置推定部)、12…信頼度判定部、13…ランドマーク登録部、14…3点測量自己位置推定部(第2自己位置推定部)、15…自己位置決定部、17…位置推定システム、22…異常検知部、23…自己位置補正部、31…自己位置決定部、32…異常検知部、33…自己位置補正部、L…レーザ、M…輝度ランドマーク、S1…第1自己位置推定値、S2…第2自己位置推定値。