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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】車両の泥水汚れ防止構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021081596
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175305
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕章
(72)【発明者】
【氏名】藤田 紘平
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125048(JP,A)
【文献】特開2019-073138(JP,A)
【文献】実開平04-096526(JP,U)
【文献】特開2008-030631(JP,A)
【文献】実開昭59-060075(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0167010(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110366507(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第04315151(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の両側部の下端に配置されて車両前後方向に延びる一対のロッカーと、
一対の前記ロッカーの車幅方向外側面及び車両上下方向下面を覆うように取り付けられて、車両前後方向に延びる一対のロッカーモールと、
前記車両の両側部に開閉自在に配置されて、ドア閉時に下端縁が前記ロッカーモールの下端部に対向する一対のフロントドアと一対のリヤドアと、
一対の前記フロントドアと一対の前記リヤドアのそれぞれの内側ドアパネルの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられて、ドア閉時に前記ロッカーモールに弾接する長尺状のウエザーストリップと、
を備え、
前記フロントドアと前記リヤドアは、
それぞれの外側ドアパネルの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられたドア下モールを有し、
一対の前記ロッカーモールは、
ドア閉時に、前記フロントドアと前記リヤドアとの間に形成される見切り隙よりも車両前後方向後側の位置で、且つ、前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの車両前後方向前側の端面よりも車両前後方向前側の位置に、車幅方向外側へ所定高さ突出する泥水遮蔽部を有し、
前記泥水遮蔽部は、
前記車両の走行時に、前記見切り隙の下方部から前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの前端面側へ侵入する泥水を遮るように設けられており、
車両上下方向に沿って車幅方向外側へ突出するリブ状の本体部を有し、
前記本体部は、
前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの車両上下方向上端部に対向する位置から、前記ロッカーモールの車幅方向外側の側面の下端縁までの車両上下方向の長さと、
ドア閉時に、前記ロッカーモールの車幅方向外側の側面から、前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁及び前記ドア下モールの車幅方向内側の上端縁部に達する車幅方向の幅と、
を有する、
車両の泥水汚れ防止構造。
【請求項2】
請求項に記載の車両の泥水汚れ防止構造において、
前記本体部は、車両前後方向において、車両上下方向上端縁に対し車両上下方向下端縁が後方側に位置するように斜め下後方側へ傾斜している、
車両の泥水汚れ防止構造。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の車両の泥水汚れ防止構造において、
前記泥水遮蔽部は、
前記本体部の車両上下方向上端縁から車幅方向全幅に渡って車両前後方向に沿って車両前後方向前側へ所定長さ延出されたリブ状の延出部を有する、
車両の泥水汚れ防止構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の車両の泥水汚れ防止構造において、
前記泥水遮蔽部は、前記ロッカーモールに一体成形により形成されている、
車両の泥水汚れ防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の泥水汚れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両の泥水汚れ防止構造に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献に記載された自動車乗降口の衣服汚れ防止構造では、ロッカーアウタパネルの外側面に、車両前後方向の段部を形成し、段部の上側部の側面を車外側に配し、段部の下側部の側面を車内側に配して、ドア開閉時に、ドアの下端縁が段差の下方に位置するように構成する。そして、断面コの字状で横長のロッカーモールを段部の下側部の側面に固着して、ドアが閉じられた時に、ドアの下端縁が凹条内に進入するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭59-60075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドア下端縁をロッカーアウタパネルの下端縁まで延ばした構造では、断面コの字状のロッカーモールの代わりに、直線状のウエザーストリップをフロントドアとリヤドアのそれぞれの下端部に車両前後方向に沿って設ける必要がある。その結果、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの見切り隙の下端部から泥水が浸入して、左右のリヤ入口の下端部に泥や埃等が付着し、リヤドアの開閉時に見映えが悪くなる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部からロッカー部への泥水の浸入を抑止することできる車両の泥水汚れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両の両側部の下端に配置されて車両前後方向に延びる一対のロッカーと、一対の前記ロッカーの車幅方向外側面及び車両上下方向下面を覆うように取り付けられて、車両前後方向に延びる一対のロッカーモールと、前記車両の両側部に開閉自在に配置されて、ドア閉時に下端縁が前記ロッカーモールの下端部に対向する一対のフロントドアと一対のリヤドアと、一対の前記フロントドアと一対の前記リヤドアのそれぞれの内側ドアパネルの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられて、ドア閉時に前記ロッカーモールに弾接する長尺状のウエザーストリップと、を備え、一対の前記ロッカーモールは、ドア閉時に、前記フロントドアと前記リヤドアとの間に形成される見切り隙よりも車両前後方向後側の位置で、且つ、前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの車両前後方向前側の端面よりも車両前後方向前側の位置に、車幅方向外側へ所定高さ突出する泥水遮蔽部を有し、前記泥水遮蔽部は、前記車両の走行時に、前記見切り隙の下方部から前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの前端面側へ侵入する泥水を遮るように設けられている、車両の泥水汚れ防止構造である。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る車両の泥水汚れ防止構造において、前記フロントドアと前記リヤドアは、それぞれの外側ドアパネルの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられたドア下モールを有し、前記泥水遮蔽部は、車両上下方向に沿って車幅方向外側へ突出するリブ状の本体部を有し、前記本体部は、前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁に取り付けられた前記ウエザーストリップの車両上下方向上端部に対向する位置から、前記ロッカーモールの車幅方向外側の側面の下端縁までの車両上下方向の長さと、ドア閉時に、前記ロッカーモールの車幅方向外側の側面から、前記リヤドアの前記内側ドアパネルの下端縁及び前記ドア下モールの車幅方向内側の上端縁部に達する車幅方向の幅と、を有する、車両の泥水汚れ防止構造である。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る車両の泥水汚れ防止構造において、前記本体部は、車両前後方向において、車両上下方向上端縁に対し車両上下方向下端縁が後方側に位置するように斜め下後方側へ傾斜している、車両の泥水汚れ防止構造である。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明又は第3の発明に係る車両の泥水汚れ防止構造において、前記泥水遮蔽部は、前記本体部の車両上下方向上端縁から車幅方向全幅に渡って車両前後方向に沿って車両前後方向前側へ所定長さ延出されたリブ状の延出部を有する、車両の泥水汚れ防止構造である。
【0010】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つに係る車両の泥水汚れ防止構造において、前記泥水遮蔽部は、前記ロッカーモールに一体成形により形成されている、車両の泥水汚れ防止構造である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、一対のロッカーのそれぞれには、ロッカーの車幅方向外側面及び車両上下方向下面を覆うように車両前後方向に延びるロッカーモールが取り付けられている。このロッカーモールには、ドア閉時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙よりも車両前後方向後側の位置で、且つ、リヤドアの内側ドアパネルの下端縁に取り付けられたウエザーストリップの前端面よりも車両前後方向前側の位置に、車幅方向外側へ所定高さ突出する泥水遮蔽部が設けられている。この泥水遮蔽部は、車両の走行中に、見切り隙の下方部からリヤドアの内側ドアパネルの下端縁に取り付けられたウエザーストリップの前端面側へ侵入する泥水を遮るように設けられている。
【0012】
これにより、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部からロッカー側への泥水の浸入を、泥水遮蔽部及びウエザーストリップによって効果的に抑止することできる。その結果、左右のリヤドア開口部の下端部に泥や埃等が付着するのを抑止し、リヤドアの開閉時の見映えをよくすることができると共に、後部座席の乗降時における乗員の衣類の汚れ等を防止することができる。
【0013】
第2の発明によれば、泥水遮蔽部を構成するリブ状の本体部は、リヤドアの内側ドアパネルの下端縁に取り付けられたウエザーストリップの車両上下方向上端部に対向する位置から、ロッカーモールの車幅方向外側の側面の下端縁までの車両上下方向の長さと、ドア閉時に、ロッカーモールの車幅方向外側の側面から、リヤドアの内側ドアパネルの下端縁及びドア下モールの車幅方向内側の上端縁部に達する車幅方向の幅を有している。これにより、ドア閉時に、ロッカーモールに設けられたリブ状の本体部によって、リヤドアのウエザーストリップよりも車両前後方向前側を塞ぐことができ、見切り隙の下方部からロッカー側への泥水の浸入を効果的に抑止することできる。
【0014】
第3の発明によれば、車幅方向外側へ突出するリブ状の本体部は、車両前後方向において、車両上下方向上端縁に対し車両上下方向下端縁が後方側に位置するように斜め下後方側へ傾斜している。これにより、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部から流入する気流を斜め下後方側へ整流することができ、空気抵抗を低減することが可能となる。また、車両走行時に、見切り隙の下方部から侵入した泥水を斜め下後方側へ案内することができ、見切り隙の下方部から侵入した泥水を斜め下後方側へスムーズに排出することができる。
【0015】
第4の発明によれば、泥水遮蔽部は、リブ状の本体部の車両上下方向上端縁から車幅方向全幅に渡って車両前後方向に沿って車両前後方向前側へ所定長さ延出されたリブ状の延出部を有する。これにより、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部から侵入してリブ状の本体部に当たった後、本体部上を上方へ進んだ泥水は、リブ状の延出部に当たるため、泥水の延出部よりも上方側への侵入を抑止することができる。その結果、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部から侵入した泥水が、泥水遮蔽部の上方を乗り越えてリヤドア開口部の下端部側へ侵入することを効果的に抑止することができる。
【0016】
第5の発明によれば、泥水遮蔽部は、ロッカーモールに一体成形により形成されているため、部品を追加することなく、車両走行時に、フロントドアとリヤドアとの間に形成される見切り隙の下方部から侵入してくる泥水の侵入経路を、簡易な構成で塞ぐことができる。ロッカーモールと泥水遮蔽部は、樹脂製、又は、アルミニウム合金製等によって一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る車両のドア閉時における左側部の要部を示す側面図である。
図2図1のX3-X3矢視の拡大断面図である。
図3図1のX2-X2矢視の拡大断面図である。
図4】ロッカーモールのロッカーへの取り付けを説明する説明図である。
図5】車両走行時の泥水の侵入を説明する説明図である。
図6図5のVI部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両の泥水汚れ防止構造を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、車両1の概略構成について図1乃至図4に基づいて説明する。尚、実線矢印によって各図に適宜に示されるUPは、車両の上方向を示し、FRは車両の前方向を示し、INは車幅方向内側を示している。
【0019】
図1に示すように、車両1は、4ドアを有する車で、一対のフロントドア11と一対のリヤドア12とが車体13の車幅方向両側に開閉自在に設けられている。各フロントドア11は、それぞれドア本体15Aと、ドア本体15Aの下端縁部に車両前後方向に沿って全幅に渡って取り付けられた樹脂製のドア下モール16Aとを有している。また、各リヤドア12は、それぞれドア本体15Bと、ドア本体15Bの下端縁部に車両前後方向に沿って全幅に渡って取り付けられた樹脂製のドア下モール16Bとを有している。
【0020】
ドア下モール16Aとドア下モール16Bは、フロントドア11とリヤドア12を閉じたドア閉時に、それぞれの下端縁が車両前後方向に沿って、側面視略同一直線上で連続するように設けられている。また、フロントドア11とリヤドア12を閉じたドア閉時には、車両前後方向において、フロントドア11の後端縁とリヤドア12の前端縁の間に見切り隙18が形成されている。尚、図1ではフロントドア11とリヤドア12を閉じたドア閉時の状態を示している。
【0021】
次に、車両1の両側部における、車体13のロッカー21及びロッカーモール22を含む下部構造について図2乃至図4に基づいて説明する。図2は、図1のリヤドア12の前部におけるX3-X3矢視のロッカー21等を含む拡大断面図である。図3は、図1のリヤドア12の前端部におけるX2-X2矢視のロッカー21等を含む拡大断面図である。図4はロッカー21にロッカーモール22を取り付ける状態を示す分解斜視図である。尚、図1中、車両前後方向において、フロントドア11の後部におけるX1-X1矢視の断面構成は、リヤドア12の前部におけるX3-X3矢視の断面構成とほぼ同じ構成である。
【0022】
図2乃至図4に示すように、車体13の車幅方向における両側部の下端には、車両前後方向に延びて、車体13の両サイドを構成する一対のロッカー21が設けられている。各ロッカー21は、サイドシル等と呼ばれ、図4に示すように、左右のフロントドア開口部13Aとリヤドア開口部13Bの下辺部分を構成している。尚、図2及び図3では、リヤドア開口部13Bがリヤドア12によって閉じられた状態を示している。
【0023】
図2及び図3に示すように、ロッカー21は、半筒状のロッカーアウタパネル21Aとロッカーインナパネル21Bとをスポット溶接等で接合して、略四角筒状に形成されている。ロッカーアウタパネル21Aの車幅方向外側の側面部には、車両前後方向に延びて、ロッカー21の上面部と共にフロントドア開口部13Aやリヤドア開口部13Bを構成するボディパネル23の下端縁部がスポット溶接等により接合されている。ロッカー21及びボディパネル23は、鋼板等の金属で構成される。
【0024】
また、各ロッカー21のロッカーアウタパネル21Aの車両上下方向下面、及び、ロッカーアウタパネル21Aの車幅方向外側の側面部は、ボディパネル23を挟んで車両前後方向に延びる断面略L字状の一対のロッカーモール22によって全長に渡って覆われている。ロッカーモール22は、通常樹脂材で構成されており、ロッカー21等を外側からガードする。尚、ロッカーモール22は、アルミニウム合金等で構成してもよい。図4に示すように、ロッカーモール22は、ボディパネル23を挟んでロッカーアウタパネル21Aの車幅方向外側の側面部に対して、所定の間隔をおいて、例えば、15カ所程度で通常クリップ結合されると共に、数カ所(例えば、3カ所)でスクリュー結合される。
【0025】
次に、フロントドア11とリヤドア12の車両上下方向下部の概略構成について図1及び図2に基づいて説明する。尚、フロントドア11とリヤドア12の車両上下方向下部の構成は、ほぼ同じ構成であるため、リヤドア12の車両上下方向下部の構成について図2に基づいて説明する。
【0026】
図2に示すように、リヤドア12のドア本体15Bは、外側ドアパネル27Bと、内側ドアパネル28Bとからなる。ドア本体15Bの外側ドアパネル27Bと内側ドアパネル28Bの下端は、内側ドアパネル28Bを外側ドアパネル27Bで折り返して挟み込む、いわゆるヘム加工によって接合されている。ドア本体15Bの内部には、外側ドアパネル27Bと、内側ドアパネル28Bとによって空間が形成され、ウインドウガラス(不図示)を昇降させるウインドウレギュレータ(不図示)等が内蔵されている。同様に、フロントドア11のドア本体15Aは、外側ドアパネル27Aと、内側ドアパネル28Aとからなる。
【0027】
リヤドア12は、ドア本体15Bの下部の外側に車両前後方向に沿って全幅に渡って取り付けられたドア下モール16Bと、内側ドアパネル28Bの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられて、ドア閉時に、ロッカーモール22に弾接する長尺状のウエザーストリップ31Bと、を備えている。同様に、図1及び図2に示すように、フロントドア11は、ドア本体15Aの下部の外側に車両前後方向に沿って全幅に渡って取り付けられたドア下モール16Aと、内側ドアパネル28Aの下端縁に車両前後方向に沿って取り付けられて、ドア閉時に、ロッカーモール22に弾接する長尺状のウエザーストリップ31Aと、を備えている。
【0028】
ドア下モール16Bは、外側ドアパネル27Bの下部に重なり覆うと共に、下端縁が、ドア閉時に、ロッカーモール22の下端部に対向するまで延びて、更に、車幅方向内側へ略直角に内側ドアパネル28Bの下部に対向する位置まで延出された後、略直角上方へドア本体15Bの下端のヘム加工部に対向する位置まで延びている。このため、リヤドア12のドア閉時に、リヤドア開口部13Bの下方のロッカーモール22は、車幅方向外側がドア下モール16Bによって覆われる。また、同様に、フロントドア11のドア閉時に、フロントドア開口部13Aの下方のロッカーモール22は、車幅方向外側がドア下モール16Aによって覆われる。
【0029】
ウエザーストリップ31Bは、ドア本体15Bの下端部における車両前後方向の長さよりも少し短い長さの長尺状に形成され、内側ドアパネル28Bの車両前後方向中央に位置するように取りつけられている。同様に、ウエザーストリップ31Aは、ドア本体15Aの下端部における車両前後方向の長さよりも少し短い長さの長尺状に形成され、内側ドアパネル28Aの車両前後方向中央に位置するように取りつけられている。
【0030】
従って、図1に示すように、ウエザーストリップ31Aは、車両前後方向において、フロントドア11の前端縁及び後端縁との間に所定距離の隙間(例えば、20mm~40mmの距離の隙間)ができるように取り付けられている。また、ウエザーストリップ31Bは、車両前後方向において、フロントドア11のウエザーストリップ31Aと同様に、リヤドア12の前端縁及び後端縁との間に所定距離の隙間(例えば、30mm~40mmの距離の隙間)ができるように取り付けられている。
【0031】
図2に示すように、長尺状のウエザーストリップ31Bは、クリップによって内側ドアパネル28Bの下端縁に弾接するように取り付けられる取付基部32Aと、取付基部32Aから車幅方向斜め内側下方に延出されて、ドア閉時にロッカーモール22に弾接する第1リップ32Bと、取付基部32Aから下方へ延出されて、ドア下モール16Bの車幅方向内側の上端縁部に車幅方向内側から弾接する第2リップ32Cと、取付基部32Aから車幅方向外側下方へ延出されて、内側ドアパネル28Bの下端部に弾接する第3リップ32Dと、を有している。
【0032】
同様に、フロントドア11のウエザーストリップ31Aも、取付基部32A、第1リップ32Bと、第2リップ32C、第3リップ32Dと、を有している。また、各ウエザーストリップ31A、31Bは、例えば、エチレンプロピレンゴム等の弾性部材で形成され、取付基部32A及び各リップ32B~32Dは、一体に形成されている。
【0033】
ここで、図1図3及び図4に示すように、車体13の両側部の下部に設けられた各ロッカーモール22は、一体成形により形成された泥水遮蔽部35を有している。この泥水遮蔽部35は、ドア閉時に、フロントドア11とリヤドア12との間に形成される見切り隙18よりも車両前後方向後側の位置で、且つ、リヤドア12の内側ドアパネル28Bの下端縁に取り付けられたウエザーストリップ31Bの前端面よりも車両前後方向前側の位置に、設けられ、車幅方向外側へ所定高さ(例えば、リヤドア12のドア本体15Bの下端縁に対向する高さ)突出している。従って、リヤドア12を閉じた際に、泥水遮蔽部35は、リヤドア12の下方部分によって覆われ、車両1の車幅方向外側からは見えない。
【0034】
図3図4及び図6に示すように、泥水遮蔽部35は、ロッカーモール22の車幅方向外側の側面から車両上下方向に沿って車幅方向外側へ突出するリブ状の本体部35Aと、この本体部35Aの車両上下方向上端縁から車幅方向全幅に渡って車両前後方向に沿って車両前後方向前側へ所定長さ(例えば、20mm~30mm)延出されたリブ状の延出部35Bと、を有している。尚、延出部35Bは、本体部35Aの車両上下方向上端縁から、車両前後方向に対して、所定角度(例えば、約2度~15度程度)だけ車両上下方向上方側へ傾斜するように延出してもよい。
【0035】
リブ状の本体部35Aの車両上下方向の長さは、リヤドア12の内側ドアパネル28Bの下端縁に取り付けられたウエザーストリップ31Bの車両上下方向上端部に対向する位置から、ロッカーモール22の車幅方向外側の側面22Aのほぼ下端縁までの長さに形成されている。また、リブ状の本体部35Aの車幅方向の幅は、ドア閉時に、ロッカーモール22の車幅方向外側の側面22Aから、リヤドア12の内側ドアパネル28Bの下端縁及びドア下モール16Bの車幅方向内側の上端縁部に達する幅に形成されている。
【0036】
従って、泥水遮蔽部35は、車両1の走行中に、見切り隙18の下方部からリヤドア12の内側ドアパネル28Bの下端縁に取り付けられたウエザーストリップ31Bの前端面側へ侵入する泥水を遮るように設けられている。また、図6に示すように、リブ状の本体部35Aは、車両前後方向において、車両上下方向上端縁に対し車両上下方向下端縁が後方側に位置するように斜め下後方側へ所定角度θ1(例えば、θ1=約2度~約45度、好ましくは、θ1=約5度~30度)をなすように傾斜している。
【0037】
次に、泥水遮蔽部35の奏する効果について図5及び図6に基づいて説明する。尚、図5及び図6において、フロントドア11とリヤドア12のドア閉時における、各ウエザーストリップ31A、31Bをロッカーモール22上に示している。図5及び図6に示すように、車両1の走行時に、前輪14によって後方側へ跳ねられた泥水が(矢印41参照)、ドア閉時に、フロントドア11とリヤドア12との間に形成される見切り隙18の下方部からロッカー21側へ侵入した場合には、泥水遮蔽部35のリブ状の本体部35Aの前方側の面及びリブ状の延出部35Bの下方側の面に当たって、車体13の斜め下後方側へスムーズに排出することができる(矢印42参照)。
【0038】
これにより、見切り隙18の下方部からロッカー21側へ侵入した泥水の本体部35Aよりも後方側、及び、延出部35Bよりも上方側への侵入を効果的に抑止することができる。その結果、左右のリヤドア開口部13Bの下端部に泥や埃等が付着するのを泥水遮蔽部35及びウエザーストリップ31Bによって効果的に抑止し、リヤドア12の開閉時の見映えをよくすることができると共に、後部座席の乗降時における乗員の衣類の汚れ等を防止することができる。
【0039】
また、泥水遮蔽部35は、ロッカーモール22に一体成形により形成されているため、部品を追加することなく、車両走行時に、フロントドア11とリヤドア12との間に形成される見切り隙18の下方部から侵入してくる泥水の侵入経路を、簡易な構成で塞ぐことができる。また、車両走行時に、フロントドア11とリヤドア12との間に形成される見切り隙18の下方部から流入する気流を斜め下後方側へ整流することができ(矢印42参照)、空気抵抗を低減することが可能となり、車両1の燃費の低減化を図ることができる。
【0040】
尚、前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【0041】
本発明の車両の泥水汚れ防止構造は、前記実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記図1図6の前記実施形態に係る車両1等と同一符号は、前記実施形態に係る車両1等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0042】
(A)例えば、泥水遮蔽部35のリブ状の本体部35Aは、上端縁をロッカーモール22の車幅方向外側の側面22Aの上端縁部まで延ばしてもよい。これにより、本体部35Aを大きくして、ウエザーストリップ31Bの前方側を塞ぐことができ、泥水の浸入を更に効果的に抑止することができる。
【0043】
(B)また、例えば、泥水遮蔽部35のリブ状の本体部35Aとリブ状の延出部35Bとの接続部分を、側面視円弧状に形成してもよい。これにより、延出部35Bの下方側の面に当たった泥水や気流を、本体部35Aの前方側の面へ更にスムーズに案内して、車両1の斜め下後方側へ排出することができる。その結果、車両走行時に、フロントドア11とリヤドア12との間に形成される見切り隙18の下方部から流入する気流を斜め下後方側へ更にスムーズに案内して整流することができ、空気抵抗をより低減することが可能となり、車両1の燃費の更なる低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
11 フロントドア
12 リヤドア
16A、16B ドア下モール
18 見切り隙
21 ロッカー
22 ロッカーモール
27A、27B 外側ドアパネル
28A、28B 内側ドアパネル
31A、31B ウエザーストリップ
35 泥水遮蔽部
35A 本体部
35B 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6