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  • 特許-車両用計器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】車両用計器
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/10 20130101AFI20240516BHJP
   G06F 21/12 20130101ALI20240516BHJP
   G01D 11/24 20060101ALI20240516BHJP
   B60K 35/00 20240101ALI20240516BHJP
【FI】
G06F21/10 350
G06F21/12
G01D11/24 B
B60K35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021530734
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020026942
(87)【国際公開番号】W WO2021006326
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019128915
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 守
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0356280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/10
G06F 21/12
G01D 11/24
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
オープンソースソフトウエアを含むプログラムを実行して前記表示部に車両情報を表示させる制御部と、
禁止ライセンスあるいは許容ライセンスのリストを記憶する記憶部と、を備えた車両用計器であって、
前記制御部は、前記オープンソースソフトウエアのライセンスを確認する確認機能を有し、
前記確認機能は、前記記憶部に記憶されたリストと前記オープンソースソフトウエアのライセンスとを対比することを含む
車両用計器。
【請求項2】
前記オープンソースソフトウエアは、複数の異なるライセンスのソフトウエアを含み、
前記確認機能は、前記複数のライセンスの相互運用性を確認することを含む
請求項1の車両用計器。
【請求項3】
前記確認機能は、前記オープンソースソフトウエアを利用するための必須機能を確認することを含む
請求項1の車両用計器。
【請求項4】
前記制御部は、前記確認機能による確認の結果、正常と判断した場合に限り車両情報の表示を開始する、
請求項1乃到の何れか1項の車両用計器。
【請求項5】
前記確認機能は、前記車両用計器が起動したときに実行する、
請求項1乃到の何れか1項の車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両情報を表示する車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両情報の改ざんを防ぐ車両用計器が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、オープンソースソフトウエア(OSS)であるLINUX(登録商標)を利用した車両用計器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-65804号公報
【文献】特開2007-139901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OSSのライセンスの中には、ソフトウエアのソースコードを開示した上で、ソフトウエアの利用、再配布、改変の自由を認めるコピーレフトのものがある。このようなコピーレフトライセンスのOSSが車両用計器のソフトウエアに含まれている場合、車両情報の改ざんや不正操作をする改変(悪意のある改変)が可能で、車両用計器の堅牢が低くなると、本願の発明者は認識した。そして、このようなライセンスのOSSを車両用計器に含まれないように防ぐ必要があると、本願の発明者は考えた。
【0006】
本開示は、上述した課題を考慮し、堅牢な車両用計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用計器は、
表示部と、
オープンソースソフトウエアを含むプログラムを実行して前記表示部に車両情報を表示させる制御部と、
禁止ライセンスあるいは許容ライセンスのリストを記憶する記憶部と、を備えた車両用計器であって、
前記制御部は、前記オープンソースソフトウエアのライセンスを確認する確認機能を有し、
前記確認機能は、前記記憶部に記憶されたリストと前記オープンソースソフトウエアのライセンスとを対比することを含む
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、堅牢な車両用計器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の車両用計器の構成概略図。
図2】車両用計器の確認機能のフローチャート図。
図3】車両用計器の第1表示モードの表示例を示す図。
図4】車両用計器の第2表示モードの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の車両用計器1を説明する。車両用計器1は、車両のインストルメントパネルに搭載され、車両の走行速度やエンジン回転数や経路案内情報などの車両情報を表示する車両用表示装置である。
【0011】
図1を参照する。車両用計器1は、表示部11と、第1制御部12と、第2制御部13と、第1記憶部14と、第2記憶部15と、を有する。車両用計器1は、車両情報出力部2、操作部3と接続している。
【0012】
車両情報出力部2は、エンジンコントロールユニットやABSコントロールユニットなどの車両情報を有するコントロールユニットである。車両用計器1は、コントローラエリアネットワークなどの通信路を介して車両情報出力部2と通信し、車両情報出力部2から車両情報を取得する。車両情報出力部2は、例えば、車速センサや燃料センサなどの種々の車両情報を検出するセンサであってもよく、この場合、車両用計器1はアナログ信号によって車両情報出力部2から車両情報を取得してもよい。
【0013】
操作部3は、例えば、車両のステアリングに備え付けられた操作スイッチである。車両用計器1は、操作部3からの操作信号に応じて、表示部11の表示の切り替えや機能の選択、機能を実行する。
【0014】
表示部11は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの画像によって情報を表示する画像表示器である。表示部11は、文字板の位置を指し示すことにより数値を表示する指針式表示器を含んでいてもよい。
【0015】
第1制御部12は、例えば、RAM、ROM、CPUを含むマイクロコントローラである。第1制御部12は、車両情報出力部2、操作部3と接続している。第1制御部12は、後述する第1記憶部14に記憶された第1プログラムを実行する。第1プログラムは、車両情報出力部2から取得した車両情報のうち表示部11に表示させる情報を第2制御部2に出力する機能を有する。また、第1プログラムは、後述する確認機能を有する。
【0016】
第2制御部13は、例えば、RAM、ROM、CPU、グラフィックアクセラレータを含むマイクロコントローラである。第2制御部13は、後述する第2記憶部15に記憶された第2プログラムを実行する。第2プログラムは、第1制御部12から出力された車両情報を表す画像を表示部11に表示させる機能を有する。
【0017】
第1記憶部14は、例えば、NAND型フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。第1記憶部14には、第1ライセンスの第1オープンソースソフトウエアを含む第1プログラムが記憶されている。第1ライセンスは、例えば、非コピーレフト型のMIT Licenseである。MIT Licenseは、著作権の表示が必要なライセンスである。
【0018】
また、第1記憶部14には、ポリシー情報として、禁止ライセンス、あるいは、許容ライセンスのリストが記憶されている。禁止ライセンスは、例えば、GNU General Public License、GNU Lesser General Public License、Mozilla Public Licenseなどのコピーレフト型のライセンスがリストされている。許容ライセンスは、例えば、BSD License、MIT License、Apache Licenseなどの非コピーレフト型のライセンスがリストされている。
【0019】
第2記憶部15は、例えば、NAND型フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。第2記憶部15には、第2ライセンスの第2オープンソースソフトウエアを含む第2プログラムが記憶されている。第2ライセンスは、例えば、非コピーレフト型のApache v2 Licenseである。Apache v2 Licenseは、著作権の表示と、変更箇所の明示が必要なライセンスである。
【0020】
第1プログラムの確認機能の制御手順について、図2を参照して説明する。
【0021】
起動トリガTR1が車両用計器1に入力されると、第1制御部12は第1記憶部14に記憶されている第1プログラムの確認機能の実行を開始する。起動トリガTR1は、例えば、車両用計器1に電源が投入されたとき、などの車両用計器1が起動するトリガである。あるいは、起動トリガTR1は、車両のイグニッションキーがオンとなったとき、車両のスタートボタンが押されたとき、などの車両の運転開始を表すトリガである。
【0022】
(手順S1)
第1制御部12は、起動トリガTR1が入力されると、車両用計器1に搭載されているプログラムが含むオープンソースソフトウエアのライセンスを取得する。具体的には、第1制御部12は、第1記憶部14から第1ライセンスの情報を取得し、第2制御部13を介して第2記憶部15に記憶されている第2ライセンスの情報を取得する。第1制御部12は、次に手順S2を実行する。
【0023】
(手順S2)
第1制御部12は、取得したライセンス情報から、車両用計器1にオープンソースソフトウエアが含まれているかを確認する。第1制御部12は、車両用計器1にオープンソースソフトウエアを含んでいると判断した場合は、手順S3を実行する。そうでない場合は、第1制御部12は、手順S6を実行する。
【0024】
(手順S3)
第1制御部12は、予め設定したライセンスポリシーを満たすかどうかを確認する。第1制御部12は、取得したライセンス情報と第1記憶部に予め記憶されたリストとを対比して、ライセンスポリシーを満たすかどうかを確認する。具体的には、第1制御部12は、取得したライセンス情報が第1記憶部に予め記憶された禁止ライセンスを含まない場合にライセンスポリシーを満たすと判断する。あるいは、第1制御部12は、取得したライセンス情報が第1記憶部に予め記憶された許容ライセンスのみで構成される場合にライセンスポリシーを満たすと判断する。第1制御部12は、取得したライセンス情報がライセンスポリシーを満たすと判断した場合は、手順S4を実行する。そうでない場合は、第1制御部12は、手順S7を実行する。
【0025】
(手順S4)
第1制御部12は、取得したライセンス情報の組み合わせに相互運用性(ライセンス互換性)があるかを確認する。相互運用性があるとは、取得したライセンス情報に含まれる各ライセンス(第1ライセンスと第2ライセンス)の各条項が共存できるかどうかである。第1制御部12は、各ライセンスに相互運用性があると判断した場合は、手順S5を実行する。そうでない場合は、第1制御部12は、手順S8を実行する。
【0026】
(手順S5)
第1制御部12は、オープンソースソフトウエアを利用するための必須機能が車両用計器1のプログラムに含まれているかを確認する。具体的には、第1ライセンスと第2ライセンスが必要とする機能として、著作権の表示と、変更箇所の明示をする機能を車両用計器1のプログラムが有しているかを確認する。第1制御部12は、必須機能が車両用計器1のプログラムに含まれていると判断した場合、手順S10を実行する。そうでない場合は、手順S9を実行する。
【0027】
(手順S6)
第1制御部12は、第1表示モードで車両情報を表示させる。第1表示モードは、車両用計器1のプログラムにオープンソースソフトウエアが含まれていない場合の表示モードである。第1制御部12は第2制御部13を制御して、表示部11に車両情報を表示させる。また、第1表示モードは、図3に示すような設定表示を行う。第1表示モードの設定表示は、時計設定機能Fn1、計器設定機能Fn2、車両設定機能Fn3、メンテナンス設定機能Fn4の各種設定を選択し、設定値の確認や再設定ができる。
【0028】
(手順S7)
第1制御部12は、予め設定したライセンスポリシーを満たしていないことを警告する。第1制御部12は、第2制御部13を制御して、表示部11にライセンスポリシーエラーという文字列を表示させる。また、具体的にどのような理由でライセンスポリシーを満たしていないかを表示部11に表示させることが好ましい。
【0029】
(手順S8)
第1制御部12は、ライセンスの相互運用性がないことを警告する。第1制御部12は、第2制御部13を制御して、表示部11にライセンス相互運用性エラーという文字列を表示させる。また、具体的にどのような理由でライセンスの相互運用性がないかを表示部11に表示させることが好ましい。
【0030】
(手順S9)
第1制御部12は、ライセンスを利用するための必須機能が含まれていないことを警告する。第1制御部12は、第2制御部13を制御して、表示部11にライセンス必要要件エラーという文字列を表示させる。また、具体的にどのような理由でライセンスの必要要件を満たしていないかを表示部11に表示させることが好ましい。具体的には、表示すべき著作権情報が含まれていない、含まれているライセンスと表示する著作権情報が不一致である、などの理由を表示することが好ましい。
【0031】
(手順S10)
第1制御部12は、第2表示モードで車両情報を表示させる。第2表示モードは、車両用計器1のプログラムにオープンソースソフトウエアが含まれている場合の表示モードである。第1制御部12は、第1制御部12は第2制御部13を制御して、表示部11に車両情報を表示させる。また、第2表示モードは、図4に示すような設定表示を行う。第2表示モードの設定表示は、時計設定機能Fn1、計器設定機能Fn2、車両設定機能Fn3、メンテナンス設定機能Fn4の各種設定を選択し、設定値の確認や再設定ができる。また、第2表示モードの設定表示は、ライセンス情報表示機能Fn5を有する。ライセンス情報表示機能Fn5は、著作権の表示や、変更箇所を明示する。このライセンス情報表示機能Fn5は、文字や図形、あるいは、Webサイトへのリンクを画像表示することによって行われる。
【0032】
以上、本開示の車両用計器1の構成を説明した。
【0033】
本開示の車両用計器1は、表示部11と、オープンソースソフトウエアを含むプログラムを実行して表示部11に車両情報を表示させる制御部(12、13)と、を備えた車両用計器である。制御部(12、13)は、オープンソースソフトウエアのライセンスを確認する確認機能を有する。
このように構成することで、堅牢性を低下させるオープンソフトウエアを含むことを予防できる。
【0034】
本開示は、ライセンス情報表示機能Fn5を設定表示に含めたが、これに限らない。例えば、車両用計器1がオープニング演出やエンディング演出の表示を行う際にライセンス情報を表示するように変更してもよい。
【0035】
また、本開示は、オープンソースソフトウエアのライセンスを確認する確認機能を車両用計器1内のプログラムに含むように構成したが、これに限らない。例えば、車両用計器1のプログラムを書き換える治具が確認機能を有する構成としてもよい。この場合、確認機能を有する治具が車両用計器1と通信し、該治具が車両用計器1に含まれているライセンス情報から各種確認をする。また、該治具は、オンボードダイアグノーシス(OBD)であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用計器
11 表示部
12 第1制御部
13 第2制御部
14 第1記憶部
15 第2記憶部
Fn5 ライセンス情報表示機能
図1
図2
図3
図4