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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】部材検査方法及び部材検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/07 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G01N29/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020136451
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032568
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515326321
【氏名又は名称】株式会社CORE技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 智基
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝文
(72)【発明者】
【氏名】小椋 紀彦
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185643(JP,A)
【文献】特開2018-155662(JP,A)
【文献】特開2016-099119(JP,A)
【文献】実開昭56-121159(JP,U)
【文献】国際公開第2018/051534(WO,A1)
【文献】桃木 昌平,AEトモグラフィによるAE源位置標定の精度向上,非破壊検査,2015年06月01日,第64巻 第6号,262-266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01H 1/00-17/00
G01M 1/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象である部材において、入力部に入力された弾性波が、前記弾性波を受信する受信部に到達する実測到達時間と、シミュレーションにより算出した仮想到達時間とを比較し、前記部材における欠陥部位の位置を判定する部材検査方法であって、
前記部材に対応する仮想部材において、前記欠陥部位を有する領域を仮想的に設定するとともに、前記入力部に対応する仮想入力部に入力した弾性波が前記受信部に対応する仮想受信部に到達する前記仮想到達時間をシミュレーション演算するシミュレーション工程と、
前記実測到達時間と前記仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を判定する比較判定工程とで構成され、
前記シミュレーション工程において、
前記仮想部材を仮想領域に分割し、
分割されたそれぞれ前記仮想領域に、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成し、
前記仮想入力部から前記仮想受信部まで前記弾性波が伝搬する経路を探索するとともに、前記経路における前記正常領域の距離を正常距離として算出し、前記経路における前記欠陥領域の距離を欠陥距離として算出し、
生成可能な前記割当パターンの数に応じて、前記正常距離及び前記欠陥距離と、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度とに基づいて前記仮想到達時間を算出し、
前記受信部を、前記入力部を包囲するように前記部材に複数配置するとともに、
前記仮想受信部を、前記仮想入力部を包囲するように前記仮想部材に複数設定する
部材検査方法。
【請求項2】
前記割当パターンを、無作為に設定する
請求項1に記載の部材検査方法。
【請求項3】
前記シミュレーション工程において、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度を設定する
請求項1又は請求項2に記載の部材検査方法。
【請求項4】
前記比較判定工程は、
複数配置された前記受信部のそれぞれに対応する実測到達時間と、前記仮想受信部のそれぞれに対応する仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を評価する
請求項に記載の部材検査方法。
【請求項5】
前記仮想到達時間が前記実測到達時間の許容範囲内と判定された複数の割当パターンにおいて、前記正常領域又は前記欠陥領域が重複する割合によって評価する
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の部材検査方法。
【請求項6】
前記仮想領域を前記正常領域及び前記欠陥領域が割り当てられた割当パターンに基づいて存在確率を算定する
請求項又は請求項に記載の部材検査方法。
【請求項7】
前記シミュレーション工程と前記比較判定工程とを繰り返し行う構成とし、
前記比較判定工程後に、前記比較判定工程で前記正常領域と判定された前記仮想領域を正常領域として確定し、
前記シミュレーション工程において、
前記欠陥領域と判定された前記仮想領域を再分割し、分割された前記仮想領域を、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域に再度割り当てる
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の部材検査方法。
【請求項8】
前記部材において、前記入力部に弾性波を入力し、前記入力部に入力された前記弾性波が前記受信部に到達する実測到達時間を計測する実測工程を行う
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の部材検査方法。
【請求項9】
前記部材が、多相材料で構成された
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の部材検査方法。
【請求項10】
評価対象である部材において、入力部に入力された弾性波が、前記弾性波を受信する受信部に到達する実測到達時間と、シミュレーションにより算出した仮想到達時間とを比較し、前記部材における欠陥部位の位置を判定する部材検査システムであって、
前記部材に対応する仮想部材において、前記欠陥部位を有する領域を仮想的に設定するとともに、前記入力部に対応する仮想入力部に入力した弾性波が前記受信部に対応する仮想受信部に到達する前記仮想到達時間をシミュレーション演算するとともに、前記実測到達時間と前記仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を判定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記仮想部材を仮想領域に分割するとともに、分割されたそれぞれ前記仮想領域に、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成し、
前記仮想入力部から前記仮想受信部まで前記弾性波が伝搬する経路を探索するとともに、前記経路における前記正常領域の距離を正常距離として算出し、前記経路における前記欠陥領域の距離を欠陥距離として算出し、
生成可能な前記割当パターンの数に応じて、前記正常距離及び前記欠陥距離と、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度とに基づいて前記仮想到達時間を算出し、
前記受信部を、前記入力部を包囲するように前記部材に複数配置するとともに、
前記仮想受信部を、前記仮想入力部を包囲するように前記仮想部材に複数設定する
部材検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、コンクリートなどの部材における欠陥部位の位置を判定する部材検査方法及び部材検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンクリート製の橋脚、梁、あるいはカルバートなどのコンクリート部材、シールドトンネルなど、鋼製部材とコンクリート部材との合成部材、さらには鋼製橋梁における鋼製部材などの部材では、繰り返される外力の作用による損傷が問題となっている。
【0003】
このような部材の維持管理を目的として、従来から非破壊・診断技術による内部品質評価が行われている。その一例として、弾性波を利用してコンクリート構造物の厚さや、内部の亀裂、劣化などを非破壊診断する方法が特許文献1に提案されている。
【0004】
この特許文献1に開示されている方法では、打撃手段によってコンクリート構造物に打撃を与えて弾性波と表面波を同時に発生させ、時間差で到来した表面波と弾性波の反射波をセンサーで受信する。そして、受信した測定データを表面波デジタル加速度と反射波デジタル加速度に分離して算出した時間軸上の相互相関係数を用いて、コンクリート構造物の内部における欠陥の大きさを指標化できるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法は、測定データに基づいて複雑な解析を行なう必要であるため、解析プロセスが複雑であり、演算処理にかかる負担が大きくなるといった問題があった。また、内部に空隙などの欠陥部位があった場合に、欠陥部位での反射波の挙動が不明確であり、欠陥部位の位置を判定するのが困難であるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-296253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑み、演算処理の負担を軽減できるとともに、部材における欠陥の有無を判定することができる部材検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、評価対象である部材において、入力部に入力された弾性波が、前記弾性波を受信する受信部に到達する実測到達時間と、シミュレーションにより算出した仮想到達時間とを比較し、前記部材における欠陥部位の位置を判定する部材検査方法であって、前記部材に対応する仮想部材において、前記欠陥部位を有する領域を仮想的に設定するとともに、前記入力部に対応する仮想入力部に入力した弾性波が前記受信部に対応する仮想受信部に到達する前記仮想到達時間をシミュレーション演算するシミュレーション工程と、前記実測到達時間と前記仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を判定する比較判定工程とで構成され、前記シミュレーション工程において、前記仮想部材を仮想領域に分割し、分割されたそれぞれ前記仮想領域に、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成し、前記仮想入力部から前記仮想受信部まで前記弾性波が伝搬する経路を探索するとともに、前記経路における前記正常領域の距離を正常距離として算出し、前記経路における前記欠陥領域の距離を欠陥距離として算出し、生成可能な前記割当パターンの数に応じて、前記正常距離及び前記欠陥距離と、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度とに基づいて前記仮想到達時間を算出し、前記受信部を、前記入力部を包囲するように前記部材に複数配置するとともに、前記仮想受信部を、前記仮想入力部を包囲するように前記仮想部材に複数設定することを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、評価対象である部材において、入力部に入力された弾性波が、前記弾性波を受信する受信部に到達する実測到達時間と、シミュレーションにより算出した仮想到達時間とを比較し、前記部材における欠陥部位の位置を判定する部材検査システムであって、前記部材に対応する仮想部材において、前記欠陥部位を有する領域を仮想的に設定するとともに、前記入力部に対応する仮想入力部に入力した弾性波が前記受信部に対応する仮想受信部に到達する前記仮想到達時間をシミュレーション演算するとともに、前記実測到達時間と前記仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を判定する制御部を備え、前記制御部は、前記仮想部材を仮想領域に分割するとともに、分割されたそれぞれ前記仮想領域に、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成し、前記仮想入力部から前記仮想受信部まで前記弾性波が伝搬する経路を探索するとともに、前記経路における前記正常領域の距離を正常距離として算出し、前記経路における前記欠陥領域の距離を欠陥距離として算出し、生成可能な前記割当パターンの数に応じて、前記正常距離及び前記欠陥距離と、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度とに基づいて前記仮想到達時間を算出し、前記受信部を、前記入力部を包囲するように前記部材に複数配置するとともに、前記仮想受信部を、前記仮想入力部を包囲するように前記仮想部材に複数設定することを特徴とする。
【0010】
前記部材は、コンクリートなどの多相材料や金属などの単一構成材料、コンクリートと金属との合成部材などを含む。
前記欠陥部位は、部材の内部に形成されたひび割れなどの亀裂や空隙、例えば施工不良などにより密実でない粗な状態などをさす。
【0011】
上述の前記仮想部材を仮想領域に分割しとは、仮想部材を均等な大きさで分割する場合や、不均等な大きさで分割する場合を含む。また、分割された仮想領域の大きさや分割する仮想部材の範囲を指定して分割する場合や、分割された仮想領域の大きさや分割する範囲を無作為に決定して分割する場合を含む。
【0012】
上述の欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成しとは、生成可能なすべての割当パターンを生成する場合や、生成可能なすべての割当パターンの一部のみを生成する場合を含む。
【0013】
また、生成可能なすべての割当パターンの一部のみを生成する場合、モンテカルロ法などを用いて、仮想領域に正常領域又は欠陥領域を無作為に割り当てて生成してもよいし、人為的に正常領域又は欠陥領域を割り当てて割当パターンを生成してもよい。さらには、特定の仮想領域に正常領域又は欠陥領域を人為的に割り当て、その他の仮想領域に正常領域又は欠陥領域をランダムに割り当てて割当パターンを生成してもよい。
【0014】
上述の前記パターン数に応じてとは、割り当てたすべての割当パターンに対して前記仮想到達時間を算出する場合の他、割当パターンの一部に対して前記仮想到達時間を算出する場合を含む。なお、割当パターンの一部に対して前記仮想到達時間を算出する場合、割当パターンをランダムに抽出してもよい。
【0015】
上述の前記弾性波の伝搬速度は、正常領域及び欠陥領域のそれぞれに対して所定の値や範囲を入力する構成としてもよいし、正常領域及び欠陥領域のそれぞれに対してあらかじめ既定値が設定された構成、既定値が設定された状態で所定の値や範囲を入力できる構成としてもよい。
【0016】
この発明により、演算処理の負担を軽減するとともに、部材における欠陥の有無を判定することができる。
詳述すると、評価対象である部材に対応する仮想部材を分割した仮想領域に正常領域及び欠陥領域を割り当てた割当パターンを複数生成し、割当パターンに応じて算出された仮想到達時間を実測到達時間と比較することで、実測到達時間の誤差の許容範囲内である仮想到達時間を判定することができる。
【0017】
このように実測到達時間の誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間は、実測到達時間が計測された部材の構成と大差がないと考えられるため、仮想到達時間に対応する正常領域及び欠陥領域の領域を特定することで、部材における欠陥部位の位置を判定することができる。
【0018】
また、欠陥部位の判定方法として従来から行われている方法では、一般的に、仮想部材の全てが正常領域又は欠陥領域と設定した上で、設定された条件に基づいて仮想到達時間を算出し、算出された仮想到達時間と実測到達時間とを比較して差分を算出する。そして、その差分を収束するように設定条件を変更して再度仮想到達時間を算出し、算出された仮想到達時間と実測到達時間とを比較して差分を算出する。このように算出される差分が許容範囲内に収束するまで、設定条件を変更して再度仮想到達時間の算出工程と、算出された仮想到達時間と実測到達時間とを比較する工程とを繰り返し行っていた(逆問題解析)。
【0019】
これに対して本願発明では、仮想領域に正常領域又は欠陥領域を割り当てた割当パターンの数に応じて仮想到達時間を算出し、算出されたこの仮想到達時間と実測到達時間とを比較して、実測到達時間の誤差の許容範囲内である仮想到達時間を解として求める方法(順問題解析)である。すなわち、設定条件を変更して再度仮想到達時間を算出する算出工程と、算出された仮想到達時間と実測到達時間とを比較する工程を差分が収束するまで繰り返す必要がなく、欠陥部位の位置の判定に要する演算処理の負担を軽減できる。
【0020】
さらにまた、従来のように、設定条件を変更しながら仮想到達時間と実測到達時間との比較を繰り返し、実測到達時間との差分が収束するまで仮想到達時間を求める方法では、複数の欠陥部位が存在する場合に、その欠陥部位の中間部分も欠陥しているように評価されることがあった。すなわち、複数の欠陥部位の中間部分を含めて一つの欠陥部位として判定されることがあった。
【0021】
これに対して、本願発明では、複数の仮想領域に欠陥領域を配置させた割当パターンに基づいて算出された仮想到達時間を、実測到達時間と比較判定することができる。そして、この仮想到達時間が実測到達時間の許容範囲内であると判定された場合に、部材が複数の欠陥部位を有すると評価できるとともに、割当パターンに基づいてその複数の欠陥部位の位置を判定することができる。
【0022】
また、前記受信部が、前記部材に複数配置されているため、複数の受信部に対応する仮想受信部ごとに仮想到達時間を算出し、それぞれの受信部における実測到達時間と対応する仮想到達時間とを比較することができるため、より正確に欠陥部位の位置を判定することができる。
【0023】
この発明の態様として、前記割当パターンを、無作為に設定してもよい。
上述の無作為に設定とは、例えば、モンテカルロ法のように乱数を用いて、前記仮想領域に前記正常領域又は前記欠陥領域を割り当てた所定の数の割当パターンをランダムに生成する又は複数生成された割当パターンの中から所定の数の割当パターンをランダムに抽出することをさす。
【0024】
すなわち、仮想領域に正常領域又は欠陥領域をランダムに割り当てた割当パターンを所定の数だけ生成する場合や、前記仮想領域に前記正常領域又は前記欠陥領域を割り当てたすべての割当パターンの中から所定の数の割当パターンを無作為に抽出する場合を含む。
【0025】
この発明によると、割当パターンを無作為に選択することで、割当パターンにおける仮想到達時間と実測到達時間とを順に比較判定する場合と比べて、より早く実測到達時間の許容範囲内である正当することができる。
【0026】
また、仮想領域に対して正常領域又は欠陥領域を割り当てるすべての割当パターンに対して仮想到達時間を算出するのではなく、無作為に設定された所定の数の割当パターンに基づいて仮想到達時間を算出し、算出された仮想到達時間と実測到達時間と比較することで部材において欠陥部位が存在する位置の傾向を判定することができる。すなわち、仮想到達時間を算出するための割当パターンの数を減らしながら、欠陥部位が存在する位置の傾向を判定することができるため、欠陥部位の位置を判定するための演算処理の負担をより軽減できる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記シミュレーション工程において、前記正常領域及び前記欠陥領域における前記弾性波の伝搬速度を設定してもよい。
上述の伝搬速度を設定とは、仮想部材を伝搬する弾性波の伝搬速度の範囲を設定する場合や、正常領域又は欠落領域における弾性波の伝搬速度を所定の値に設定する場合などを含む。
【0028】
この発明により、評価対象である部材の材質や材料の配合などに基づいて弾性波の伝搬速度を設定することができる。すなわち、部材に合わせてあらかじめ仮想到達時間を算出するための条件の一部を設定することができるため、演算処理にかかる負担をより軽減できるとともに、欠陥部位の位置を判定することができる。
【0029】
また、正常領域又は欠落領域における弾性波の伝搬速度を所定の値に設定する場合には、仮想到達時間を算出する際に弾性波の伝搬速度を変更する演算を行う必要がないため、仮想到達時間を算出するための演算処理の負担をより軽減できる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記比較判定工程は、複数配置された前記受信部のそれぞれに対応する実測到達時間と、前記仮想受信部のそれぞれに対応する仮想到達時間とを比較して、前記部材における前記欠陥部位の位置を評価してもよい。
【0031】
この発明によると、所定の割当パターンにおいて、複数の仮想受信部に対する仮想到達時間が、対応する実測測到達時間の許容範囲内である割合を判定することができる。これにより、実測測到達時間の許容範囲内である割合が高い仮想到達時間に対応する割当パターンほど、実際の部材の構成と大差がないと評価することができる。したがって、割当パターンに対応する欠陥領域に基づいて部材の欠陥部位の位置を評価することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記仮想到達時間が前記実測到達時間の許容範囲内と判定された複数の割当パターンにおいて、前記正常領域又は前記欠陥領域が重複する割合によって評価してもよい。
この発明により、複数の割当パターンに基づいて部材における欠陥の有無を評価することができる。
【0033】
詳述すると、実測到達時間の誤差の許容範囲内である複数の仮想到達時間に対応する割当パターンを比較することにより、割当パターンにおいて正常領域及び欠陥領域が重複している領域を明確にすることができる。
【0034】
このように、実測到達時間の誤差の許容範囲内である複数の仮想到達時間に基づいた割当パターンにおける正常領域及び欠陥領域の重複部分は、対応する部材においても欠落部位の存在しない部分及び欠落部位の存在する部分に対応している可能性が高いと評価することができる。したがって、仮想到達時間が実測到達時間の許容範囲内と判定された複数の割当パターンにおける正常領域及び欠陥領域の割合に応じて、部材における欠陥部位が存在する位置をより正確に評価することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記仮想領域を、前記正常領域及び前記欠陥領域が割り当てられた割当パターンに基づいて存在確率を算定してもよい。
この発明により、部材において欠陥領域に対応する欠陥部位を有する可能性を期待値としてより評価することができ、部材における欠陥部位の有無を客観的に評価することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記シミュレーション工程と前記比較判定工程とを繰り返し行う構成とし、前記比較判定工程後に、前記比較判定工程で前記正常領域と判定された前記仮想領域を正常領域として確定し、前記シミュレーション工程において、前記欠陥領域と判定された前記仮想領域を再分割し、分割された前記仮想領域を、欠陥部位を有さない正常領域、又は、欠陥部位を有する欠陥領域に再度割り当ててもよい。
【0037】
この発明により、段階的に欠陥部位の位置を判定することができるため、演算処理の負担をより軽減しながら、部材における欠陥部位の位置を判定することができる。
詳述すると、前段階でのシミュレーション工程において、仮想部材を少数の仮想領域で分割し、仮想領域に対して正常領域及び欠陥領域を割り当てることができるため、正常領域及び欠陥領域に割り当てられる割当パターンの数を減らすことができる。このように少数に分割した仮想領域に対する仮想到達時間を実測到達時間と比較判定することで、演算処理にかかる負担を軽減しつつ、部材における欠陥部位の範囲を概略判定できる。
【0038】
そして、次に実行されるシミュレーション工程において、欠陥部位のないと判定された仮想領域を正常領域と確定するとともに、欠陥領域と判定された仮想領域を再分割し、仮想領域に正常領域又は欠陥領域を再度割り当てて仮想到達時間を算出することができる。これにより、仮想部材の全領域を細かく分割する場合に比べて、分割する領域を小さくできるため、演算処理にかかる負担を軽減できる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記部材において、前記入力部に弾性波を入力し、前記入力部に入力された前記弾性波が前記受信部に到達する実測到達時間を計測する実測工程を行ってもよい。
この発明により、実測工程から連続して部材の欠陥部位の位置を評価することができる。そのため、欠陥部位の位置の評価結果に応じて、再度実測到達時間の再計測などを容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0040】
またこの発明の態様として、部材が、多相材料で構成されてもよい。
この発明により、コンクリートのような多相材料における欠陥部位を、計算処理の負担を軽減しながら、判定することができる。
【発明の効果】
【0041】
この発明により、演算処理の負担を軽減するとともに、部材における欠陥の有無を判定することができる部材検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】部材のモデル図。
図2】部材検査システムのブロック図。
図3】部材検査方法のフローチャート。
図4】シミュレーション工程のフローチャート。
図5】比較判定工程のフローチャート。
図6】シミュレーション工程における仮想部材のモデル図。
図7】シミュレーション工程における仮想到達時間の算出方法の説明図。
図8】シミュレーション工程における部材のモデル図。
図9】割当パターンの評価方法の説明図。
図10】複数の割当パターンに基づく部材の評価方法の説明図。
図11】部材の評価を示す棒グラフ。
図12】他の実施形態におけるシミュレーション工程及び比較判定工程のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この発明の一実施態を以下図面とともに説明する。
図1はコンクリート部材Prのモデル図を示し、図2は部材検査システム1の概略ブロック図を示し、図3は部材検査方法のフローチャートを示し、図4はシミュレーション工程S1のフローチャートを示し、図5は比較判定工程S2のフローチャートを示す。
【0044】
図6はシミュレーション工程S1における仮想部材Pfのモデル図を示し、図7は仮想到達時間Tfの算出方法の説明図を示す。図8は再度のシミュレーション工程S1における仮想部材Pfのモデル図を示し、図9は仮想到達時間Tfの判定結果に基づく割当パターンの評価方法を説明する説明図を示す。図10は複数の割当パターンに基づく部材の評価方法を説明する説明図を示し、図11は仮想部材Pfにおける欠陥領域の評価を示す棒グラフを示す。
なお、図7図9図10では、欠陥領域Cを割り当てた仮想領域Vに斜線を入れ、欠陥領域Cを割り当てたことを表している。
【0045】
本発明である部材検査方法は、評価対象であるコンクリート部材Prにおいて、入力部Irに入力された弾性波Wが受信部Rrに到達する実測到達時間Trと、仮想空間上で設定された仮想部材Pfにおいて、入力部Irに対応する仮想入力部Ifに入力されたと仮定された弾性波Wが受信部Rrに対応する仮想受信部Rfに到達する仮想到達時間Tfとを比較し、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの有無を判定する方法である。
以下、部材検査方法及び部材検査システム1について、図1乃至図11に基づいて説明する。
【0046】
はじめに、評価対象であるコンクリート部材Prについてモデル図を用いて説明する。コンクリート部材Prはコンクリートで構成されており、図1に示すように、外観からはその位置を確認することのできない、ひび割れなどの亀裂や空隙などの欠陥部位Zが内部に存在する。なお、図1では、コンクリート部材Prの説明のため欠陥部位Zを明示している。
【0047】
このコンクリート部材Prには、弾性波Wを入力する入力部Irと、入力部Irから入力された弾性波Wを受信する複数(本実施形態のモデルでは16個)の受信部Rrが備えられており、入力部Irに入力された弾性波Wが受信部Rrに到達した実測到達時間Trを計測することができる。
【0048】
次に、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの有無を検査する部材検査システム1について簡単に説明する。
部材検査システム1は、図2に示すように、制御部11と、入力装置12と、記憶部13と、表示部14とを備えている。
【0049】
制御部11は、部材検査方法のプログラムを実行するためのCPUである。また、制御部11は、入力部Ir及び受信部Rrと接続されており、弾性波Wを入力する入力部Irの制御及び弾性波Wを受信する受信部Rrの制御も行うことができる、なお、本実施形態では、制御部11が入力部Ir及び受信部Rrと接続されているが、必ずしも接続されている必要はない。
【0050】
入力装置12は、部材検査システム1を用いて部材検査方法を行うにあたり、必要な情報を入力するための入力装置である。例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなどである。
記憶部13は、部材検査方法のプログラムや部材検査方法のプログラムを実行する際に用いる各種情報や結果を保存するための記憶装置であり、例えばメモリーやハードディスクある。記憶される情報などの例として、入力部Irに弾性波Wが入力された時刻や、それぞれの受信部Rrが弾性波Wを受信した時刻や時間、それぞれの受信部Rrに対して測定された実測到達時間Trなどを保存することができる。また、入力装置12で入力された値や、制御部11で演算された結果などを保存することができる。
【0051】
表示部14は、部材検査方法のプログラムを実行させるのに必要な情報を入力させるGUIや制御部11による判定結果などを表示するディスプレイである。なお、表示することができれば構成に限定はない。
【0052】
次に、本願発明の部材検査方法の一例について説明する。
ここでは、仮想部材Pfを少数の仮想領域Vに分割して欠陥部位Zの位置を概略判定し、概略判定の結果欠陥部位Zが存在するであろう仮想領域Vをさらに分割して欠陥部位Zの位置を判定する部材検査方法について説明する。
【0053】
部材検査方法は、部材検査システム1を用いて仮想到達時間Tfを算出し、仮想到達時間Tfと実測到達時間Trを比較する方法であり、図3に示すように、シミュレーション工程S1と、比較判定工程S2と、仮想領域判定工程S3と、正常領域確定工程S4で構成されている。また、部材検査方法とは別に実測工程S0を事前に実行している。なお、本実施形態における部材検査方法では、実測到達時間Trを計測する実測工程S0を事前に行っているが、実測工程S0は部材検査方法に組み込まれていても構わない。
また、部材検査システム1により、実測工程S0を制御してもよい。
【0054】
この実測工程S0は、評価対象であるコンクリート部材Prにおいて、入力部Irに入力された弾性波Wが複数配置された受信部Rrに到達する実測到達時間Trを計測する工程である。
具体的には、実測工程S0は、打撃手段を用いて入力部Irから弾性波Wを入力する工程と、入力部Irに入力された弾性波Wをそれぞれの受信部Rrで受信する工程と、入力部Irで入力された弾性波Wが受信部Rrに到達する実測到達時間Trを計測する工程とで構成されている。
【0055】
シミュレーション工程S1は、弾性波Wが入力部Irに入力されたと仮定した場合に、受信部Rrに到達すると考えられる仮想到達時間Tfを、仮想空間上に設定された仮想部材Pfを用いて算出する工程である。
【0056】
ここで、仮想部材Pfは、仮想空間上にコンクリート部材Prに基づいて設定されたモデルであり、例えば体積や材質などの条件がコンクリート部材Prと同様となるように設定されている。また、仮想入力部If及び仮想受信部Rfは、コンクリート部材Prにおける入力部Ir及び受信部Rrと同じ位置となるように、仮想部材Pfに配置されている。
【0057】
シミュレーション工程S1について詳述する。シミュレーション工程S1は、図4に示すように、仮想到達時間Tfの許容値を設定する許容値設定工程S10と、正常領域N及び欠陥領域Cにおける弾性波Wの伝搬速度を設定する速度設定工程S11と、仮想部材Pfを所定の仮想領域Vに分割する分割工程S12と、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた複数の割当パターンを生成する割当工程S13と、生成された割当パターンから1つの割当パターンを選択するパターン選択工程S14と、仮想到達時間Tfの対象である仮想受信部Rfを選択する受信部選択工程S15と、仮想入力部Ifから仮想受信部Rfまでの距離を算出する距離算出工程S16と、仮想到達時間Tfを算出する時間算出工程S17と、その他の仮想受信部Rfについて仮想到達時間Tfを算出したかを判定する算出判定工程S18と、所定の数の割当パターンについて仮想到達時間Tfを算出したかを判定するパターン数判定工程S19とで構成される。
【0058】
許容値設定工程S10は、実測到達時間Trと比較された仮想到達時間Tfが、実測到達時間Trと一致すると判定される範囲を設定する工程である。
速度設定工程S11は、正常領域N及び欠陥領域Cが割り当てられた仮想領域Vに、正常領域N及び欠陥領域Cに対応する弾性波Wの伝搬速度を設定する工程である。本実施形態における伝搬速度の設定は、所定の値を入力する構成としている。なお、伝搬速度の設定は、この構成に限らず、例えば、仮想部材Pfの材質に基づいてあらかじめ既定値が入力されていてもよいし、所定の速度範囲を入力する構成としてもよく、また、所定の速度範囲からランダムに伝搬速度を選択する構成であってもよい。
【0059】
分割工程S12は、仮想空間上でコンクリート部材Prに対応するように設定された仮想部材Pfを、所定の数の仮想領域Vに分割する工程である。ここで、仮想部材Pfの分割は、仮想領域Vが所定の数となるように仮想部材Pfを均等に分割するように設定されている。
【0060】
なお、仮想部材Pfの分割は、上記の設定に基づく分割方法に限定されず、例えば、仮想領域Vの体積を指定する設定とすることもできるし、分割したい範囲を指定できるような設定とすることもできる。さらにまた、分割する範囲や仮想領域Vの体積を無作為に決定する設定とすることもできる。また、仮想部材Pfの分割は、仮想領域Vが均等な体積となるように分割する設定に限定されず、不均等に分割するように設定とすることもできる。
【0061】
割当工程S13は、分割されたそれぞれの仮想領域Vに、欠陥部位Zが存在しない正常領域Nと欠陥部位Zが存在する欠陥領域Cを割り当てた割当パターンを生成する工程である。この工程では、モンテカルロ法を用いて仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cをランダムに割り当てた割当パターンを所定の数だけ生成する。ここで、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てる割当パターンの最大数は、2通り(仮想部材Pfを分割した仮想領域Vの数をnとする。)となる。
なお、割当工程S13は、他の方法を用いて仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cをランダムに割り当てた割当パターンを所定の数だけ生成する構成とすることもできる。
【0062】
パターン選択工程S14は、割当工程S13で生成された所定の数の割当パターンから、一つの割当パターンを選択する工程である。なお、生成された割当パターンの選択は、例えば生成された順番に割当パターンを選択してもよいし、ランダムに選択してもよい。
【0063】
受信部選択工程S15は、パターン選択工程S14において選択された割当パターンにおいて、仮想部材Pfに設定された複数の仮想受信部Rfから一つ選択する工程である。
距離算出工程S16は、仮想入力部Ifから受信部選択工程S15において選択された仮想受信部Rfまでの経路Pを探索し、経路Pのうち正常領域Nに含まれる経路Pの距離(正常距離Ln)と、欠陥領域Cに含まれる経路Pの距離(欠陥距離Lc)とを算出する工程である。
【0064】
時間算出工程S17は、距離算出工程S16で算出された正常距離Lnと欠陥距離Lcと、速度設定工程S11で設定した正常領域N及び欠陥領域Cにおける弾性波Wの伝搬速度に基づいて、弾性波Wが仮想入力部Ifに入力されたと仮定した場合において、弾性波Wが仮想受信部Rfに到達する仮想到達時間Tfを算出する工程である。
【0065】
算出判定工程S18は、割当工程S13で設定した割当パターンにおいて、複数ある仮想受信部Rfの数に応じて仮想到達時間Tfを算出したかを判定する工程である。複数ある仮想受信部Rfの数に応じて仮想到達時間Tfを算出していない場合には(算出判定工程S18:No)、受信部選択工程S15~時間算出工程S17を繰り返し行う。複数ある仮想受信部Rfの数に応じて仮想到達時間Tfを算出した場合には(算出判定工程S18:Yes)、割当工程S13で設定した割当パターンでの仮想到達時間Tfの算出を終了する。
【0066】
パターン数判定工程S19は、割当工程S13で生成したすべての割当パターンについて仮想到達時間Tfを算出したかを判定する工程である。所定の数の割当パターンついて仮想到達時間Tfを算出していない場合には(パターン数判定工程S19:No)、割当工程S13に戻り、割当工程S13~算出判定工程S18を繰り返し行う。すべての数の割当パターンについて仮想到達時間Tfを算出した場合には(パターン数判定工程S19:Yes)シミュレーション工程S1を終了する。
なお、割当工程S13で生成した割当パターンの数は、コンクリート部材Prを評価するのに十分に適した数をさす。
【0067】
比較判定工程S2は、実測工程S0で計測された実測到達時間Trと、シミュレーション工程S1で算出された仮想到達時間Tfを比較し、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定する工程である。
具体的には、比較判定工程S2は、仮想到達時間Tfに対応する実測到達時間Trを読み込む時間読込工程S21と、シミュレーション工程S1で仮想到達時間Tfを算出した割当パターンを選択する割当選択工程S22と、仮想到達時間Tfと実測到達時間Trとを比較し、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の範囲内にあるか否かを判定する時間判定工程S23と、時間判定工程S23の結果に基づき割当パターンを評価する評価工程S24と、すべての割当パターンについて比較判定したかを判定する割当判定工程S25と、割当パターンの評価結果に基づいてコンクリート部材Prを評価する部材評価工程S26とで構成されている。
【0068】
時間読込工程S21は、実測工程S0で計測した実測到達時間Trを読み込む工程である。
割当選択工程S22は、シミュレーション工程S1において仮想到達時間Tfを算出した所定の数の割当パターンから一つの割当パターンを選択するとともに、割当パターンに対応する仮想到達時間Tfを読み込む工程である。
【0069】
時間判定工程S23は、割当選択工程S22で選択された割当パターンにおける仮想到達時間Tfを、時間読込工程S21で読み込まれた実測到達時間Trと比較し、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の範囲内にあるか否かを判定する工程である。具体的には、割当選択工程S22で選択された割当パターンにおいて、複数の仮想受信部Rfに対応して算出されたそれぞれの仮想到達時間Tfを、受信部Rrで計測されたそれぞれの実測到達時間Trと比較し、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の範囲内にあるか否かを判定する。
【0070】
評価工程S24は、時間判定工程S23での比較判定結果に応じて、実測到達時間Trを算出するのに用いた割当パターンを評価する工程である。例えば、すべての仮想到達時間Tfが対応する実測到達時間Trの誤差の範囲内にある場合には、仮想部材Pfの割当パターンはコンクリート部材Prの構成と大差がないと評価することができる。また、すべての仮想到達時間Tfが対応する実測到達時間Trの誤差の範囲外にある場合には、仮想部材Pfの割当パターンはコンクリート部材Prの構成と異なると評価することができる。
【0071】
割当判定工程S25は、生成されたすべての割当パターンについて仮想到達時間Tfと実測到達時間Trとを比較判定したかを判定する工程である。すべての割当パターンについて比較判定していない場合には(S25:No)、割当選択工程S22~評価工程S24を繰り返し行う。すべての割当パターンについて比較判定している場合には(S25:Yes)、割当パターンの評価結果に基づきコンクリート部材Prを評価する(部材評価工程S26)。
【0072】
部材評価工程S26は、割当パターンの評価結果に基づいて、コンクリート部材Prを評価する工程である。
具体的には、評価工程S24でコンクリート部材Prの構成と大差がないと評価された複数の割当パターンを読み込み、特定の仮想領域Vに割り当てられた正常領域N及び欠陥領域Cが重複する割合を算出する。このように正常領域N又は欠陥領域Cが重複する仮想領域Vは、コンクリート部材Prの構成と大差がないと評価された複数の割当パターンに基づいているため、この仮想部材Pfにおける正常領域N及び欠陥領域Cは、仮想部材Pf対応するコンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置として評価することができる。
【0073】
仮想領域判定工程S3はシミュレーション工程S1で分割された仮想領域Vが所定の体積よりも小さいかを判定する工程である。この仮想領域判定工程S3は、仮想領域Vをさらに分割してコンクリート部材Prにおける欠陥部位Zが存在する領域をさらに特定するかを判定するために行う。
【0074】
仮想領域Vが所定の体積よりも大きい場合には(S3:No)、仮想部材Pfのうち比較判定工程S2において正常領域Nと確定された仮想領域Vに対して正常領域Nを割り当て(正常領域確定工程S4)、シミュレーション工程S1と比較判定工程S2を繰り返し行う。仮想領域Vが所定の体積よりも小さい場合には(S3:No)、部材検査方法を終了する。
なお、仮想領域判定工程S3における比較対象である体積は、適宜設定することができる。
【0075】
以下、上述の部材検査方法について、簡易化されたモデルを用いて具体的に説明する。
なお今回のモデルでは、均等に16分割された仮想部材Pfにおける欠陥部位Zの位置を判定することにより、コンクリート部材Prでの欠陥部位Zの位置を判定する方法について説明する。
【0076】
はじめに、図6に示すように、コンクリート部材Prに対応するように体積などの諸条件を入力した仮想部材Pfを仮想空間上で設定し、コンクリート部材Prにおける入力部Irに対応する位置に仮想入力部Ifを設定するとともに、コンクリート部材Prにおける受信部Rrに対応する位置に仮想受信部Rfを設定する。なお、図1に示すコンクリート部材Prに合わせて、仮想入力部Ifは1個、仮想受信部Rfは16個設定されている。
【0077】
次に、弾性波Wが仮想入力部Ifに入力されたと場合に、弾性波Wが仮想受信部Rfに到達する仮想到達時間Tfを算出するシミュレーション工程S1を開始する。
はじめに、実測到達時間Trと比較判定する仮想到達時間Tfの許容値を設定する(許容値設定工程S10)。具体的には、実測到達時間Trと比較判定において、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trと一致すると判定される許容誤差として、±50μsecと設定する。
【0078】
また、正常領域Nが割り当てられる仮想領域Vにおける弾性波Wの伝搬速度を、欠陥部位Zの無いコンクリートにおける弾性波Wの伝搬速度である『4000m/sec』と設定し、欠陥領域Cが割り当てられる仮想領域Vにおける弾性波Wの伝搬速度を、欠陥部位Zがあるコンクリートにおける弾性波Wの伝搬速度の一例である『2700m/sec』と設定する(速度設定工程S11)。
【0079】
次に、図6に示すように、仮想部材Pfを均等な大きさの仮想領域Vで4分割する(分割工程S12)。ここで、仮想部材Pfを4分割して形成された仮想領域Vをそれぞれ仮想領域V1~仮想領域V4とする。
【0080】
そして、分割されたそれぞれの仮想領域Vに対して、欠陥部位Zが存在しない正常領域N、又は、欠陥部位Zが存在する欠陥領域Cを、モンテカルロ法を用いてランダムに割り当てた複数の割当パターンをランダムに生成する(割当工程S13)。この際に生成される割当パターンの最大数は2(16)通りである。なお、割当パターンの生成は、コンクリート部材Prを評価するのに適した数だけの割当パターンをランダムに生成してもよいし、すべての(16通りの)割当パターンを生成させてもよい。
【0081】
そして、生成された割当パターンのうちの一つが選択される(パターン選択工程S14)。例えば、図7に示すように、仮想領域V1及び仮想領域V3に正常領域Nを割り当て、仮想領域V2及び仮想領域V4に欠陥領域Cが割り当てられた割当パターンが選択されたとする。
【0082】
また、仮想到達時間Tfを算出する対象である仮想受信部Rfを選択する(受信部選択工程S15)。例えば、図7における仮想領域V4の上端中央に配置された仮想受信部Rf1を選択する。そして、仮想入力部Ifから仮想受信部Rf1までの弾性波Wの経路Pを探索し、経路Pにおける仮想領域V1の距離(正常距離Ln)と、経路Pにおける仮想領域V2及び仮想領域V4の距離(欠陥距離Lc)とを算出する(距離算出工程S16)。
【0083】
そして、このように算出された正常距離Ln及び欠陥距離Lcと、正常領域N及び欠陥領域Cに設定された弾性波Wの伝搬速度に基づいて、弾性波Wが仮想入力部Ifに入力されたと仮定した場合に、弾性波Wが仮想受信部Rf1に到達する仮想到達時間Tfを算出する(時間算出工程S17)。
【0084】
次に、割当工程S13において仮想領域Vに正常領域N及び欠陥領域Cを割り当てた割当パターンに対して、仮想受信部Rf1以外の仮想受信部Rfについて仮想到達時間Tfを算出しているかを判定する(S18)。
仮想受信部Rf1以外の仮想受信部Rfについて仮想到達時間Tfを算出していない場合(算出判定工程S18:No)、仮想受信部Rf1以外の仮想受信部Rfを選択して(受信部選択工程S15)、選択された仮想受信部Rfに対応する仮想到達時間Tfを同様に算出する(距離算出工程S16、時間算出工程S17)。
【0085】
そして、すべての仮想受信部Rfについて仮想到達時間Tfを算出したら(算出判定工程S18:Yes)、仮想領域Vに対して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てる他の割当パターンについても、仮想到達時間Tfを算出しているかを判定する(パターン数判定工程S19)。
【0086】
他の割当パターンについて仮想到達時間Tfを算出していない場合には(パターン数判定工程S19:No)、他の割当パターンを選択し、対応する仮想到達時間Tfを算出する(パターン選択工程S14~算出判定工程S18)。
一方、他のパターンについて仮想到達時間Tfを算出していた場合(パターン数判定工程S19:Yes)、シミュレーション工程S1を終了し、比較判定工程S2を実行する。
【0087】
比較判定工程S2では、実測工程S0で測定したデータから実測到達時間Trを読み込むとともに(時間読込工程S21)、生成された複数の割当パターンから1つの割当パターンを選択する(割当選択工程S22)。
【0088】
そして、仮想到達時間Tfと実測到達時間Trを比較して、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の許容範囲内(±50μsec以内)であるか否かを判定し(時間判定工程S23)、判定結果に基づいて仮想到達時間Tfに対応する割当パターンを評価する(評価工程S24)。なお、評価工程S24における評価方法については後述する。
【0089】
次に、シミュレーション工程S1で生成されたすべての割当パターンにおいて、仮想到達時間Tfと実測到達時間Trが比較判定されたかを判定する(割当判定工程S25)。すべての割当パターンにおいて仮想到達時間Tfと実測到達時間Trが比較判定されていない場合には(割当判定工程S25:No)、新たな割当パターンを選択するとともに、仮想到達時間Tfと実測到達時間Trと比較判定して、判定結果に基づいて仮想到達時間Tfに対応する割当パターンを評価する(割当選択工程S22~評価工程S24)。
【0090】
一方、すべての仮想到達時間Tfが対応する実測到達時間Trと比較判定されている場合(割当判定工程S25:Yes)、対応する実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfに基づいて、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を評価し(部材評価工程S26)、比較判定工程S2を終了する。なお、部材評価工程S26における仮想部材Pfの評価については後述する。
【0091】
次に、シミュレーション工程S1で分割した仮想領域Vが所定の体積よりも小さいかを判定する(仮想領域判定工程S3)。仮想領域Vが所定の範囲よりも大きい場合には(仮想領域判定工程S3:No)、部材評価工程S26において正常領域Nと評価された仮想領域Vを欠陥部位Zの無い領域として確定し(正常領域確定工程S4)、シミュレーション工程S1及び比較判定工程S2を実行する。
【0092】
ここで、シミュレーション工程S1では、実測到達時間Trの許容誤差を再設定するとともに(許容値設定工程S10)、欠陥部位Zの無いと確定された領域を除いた部分を再分割することとなる(分割工程S12)。
具体的には、実測到達時間Trと比較判定において、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trと一致すると判定される許容誤差として、±10μsecと設定する。
【0093】
また、図7におけるモデルにおいて、仮想領域V1及び仮想領域V3には欠陥部位Zが無いと評価された場合、図8に示すように、仮想領域V1及び仮想領域V3に対応する仮想領域V11ついては正常領域Nとして確定し(正常領域確定工程S4)、仮想領域V2及び仮想領域V4を再分割する(分割工程S12)。なお、図8に示す例では、仮想領域V2及び仮想領域V4をそれぞれ4分割し、仮想領域V2に対応する仮想領域Vを仮想領域V21~仮想領域V24とし、仮想領域V4に対応する仮想領域Vを仮想領域V41~仮想領域V44としている。
【0094】
このように分割された仮想領域V2及び仮想領域V4に対して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた割当パターンをランダムに生成する(割当工程S13)。
この場合における正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てる割当パターンの最大数は、2(=256)通りとなる。このため、一回目のシミュレーション工程S1における割当パターンの最大数と、二回目のシミュレーション工程S1における割当パターンの最大数の合計は、272通りとなる。
【0095】
例えば、仮想部材Pfを16等分して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てる割当パターン数は、216通り(65536通り)であるため、欠陥部位Zがない領域を概略判定しながら繰り返し計算を行うことで、生成する割当パターンの数及び割当パターンも基づいて算出される仮想到達時間Tfの数を大幅に削減できる。したがって、正常領域N及び欠陥領域Cを割り当てた割当パターンの生成及び割当パターンに基づいて仮想到達時間Tfを算出する演算処理にかかる負荷を軽減できる。
【0096】
また、仮想領域V11を正常領域Nとして固定するため、仮想領域V11に対応する仮想受信部Rfについては、仮想到達時間Tfを算出する必要がないため、仮想到達時間Tfを算出及び仮想到達時間Tfと実測到達時間Trとの比較にかかる演算処理の負担も軽減できる。
【0097】
このように仮想領域V2及び仮想領域V4を分割した仮想領域Vに対して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てて生成した割当パターンに対して、仮想到達時間Tfを算出するとともに(シミュレーション工程S1)、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の許容範囲内(±50μsec以内)であるかを比較判定して割当パターンを評価し、割当パターンの評価結果に基づいて、仮想到達時間Tfに基づいてコンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を評価する(比較判定工程S2)。
【0098】
そして、シミュレーション工程S1で分割した仮想領域Vが所定の体積よりも小さいかを再度判定し(仮想領域判定工程S3)、仮想領域Vが所定の体積よりも大きい場合には(仮想領域判定工程S3:No)、部材評価工程S26において正常領域Nと評価された仮想領域Vを欠陥部位Zの無い領域として再度正常領域Nと確定し(正常領域確定工程S4)、仮想領域Vが所定の体積よりも小さくなるまでシミュレーション工程S1~正常領域確定工程S4を繰り返す。
仮想領域Vが所定の体積よりも小さい場合には(仮想領域判定工程S3:Yes)、部材検査方法を終了する。
【0099】
なお、許容値設定工程S10における実測到達時間Trと比較判定する仮想到達時間Tfの許容値は、適宜設定を変更することができる。本実施形態における二回目の許容値設定工程S10~正常領域確定工程S4では、実測到達時間Trと比較判定において、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trと一致すると判定される許容誤差として、±10μsecと設定する。
【0100】
次に、比較判定工程S2における割当パターンの評価方法(評価工程S24)について、図9に基づいて説明する。
ここで図9は、割当パターンの評価方法を説明する説明図であり、図9(a)は仮想領域V23及び仮想領域V42に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターン(『割当パターンT1』とする。)を示し、図9(b)は仮想領域V23及び仮想領域V41に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターン(『割当パターンT2』とする。)を示す。
【0101】
例えば、比較判定工程S2において、図9(a)に示すように、選択された割当パターンT1におけるそれぞれの仮想受信部Rf(Rf1~Rf7)に対応する仮想到達時間Tfと、対応する受信部Rrにおける実測到達時間Trを比較判定した結果、Rf1~Rf3における仮想到達時間Tfは、実測到達時間Trの誤差の許容範囲外であり、Rf4~Rf7における仮想到達時間Tfは、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であったとする。この場合、仮想到達時間Tfの一部(57.1%)が対応する実測到達時間Trの誤差の許容範囲外であるため、割当パターンT1はコンクリート部材Prの構成と異なるものと評価できる。したがって、割当パターンT1はコンクリート部材Prの評価に適さないものと評価される。
【0102】
一方で、比較判定工程S2において、図9(b)に示すように、選択された割当パターンT2におけるそれぞれの仮想受信部Rf(Rf1~Rf7)に対応する仮想到達時間Tfと、対応する受信部Rrにおける実測到達時間Trを比較判定した結果、Rf1~Rf7における仮想到達時間Tfは、すべて実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であったとする。この場合、すべての仮想到達時間Tfが対応する実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であるため、割当パターンT2はコンクリート部材Prの構成と大差がないと評価できる。したがって、割当パターンT1はコンクリート部材Prの評価に適したものと評価される。
【0103】
なお、割当パターンにおけるすべての仮想到達時間Tfの数に対する、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内と判定された仮想到達時間Tfの数の割合を用いて、対応する割当パターンがコンクリート部材Prの構成を示す期待値を算出することもできる。そして、この期待値に基づいてコンクリート部材Prを評価に適しているかを判定してもよい。
【0104】
次に、コンクリート部材Prを評価する評価方法(部材評価工程S26)について、図10及び図11に基づいて説明する。
図10は、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた割当パターンを示す。詳しくは、図10における割当パターンは、図8と同様に、図7における割当パターンでの仮想領域V1及び仮想領域V3を正常領域Nで確定し、仮想領域V2及び仮想領域V4をさらに4分割したモデルに基づくものである。
【0105】
具体的には、図10(a)は仮想領域V43及び仮想領域V44に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示し、図10(b)は仮想領域V24及び仮想領域V41に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示す。
【0106】
図10(c)は仮想領域V23及び仮想領域V41に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示し、図10(d)は仮想領域V23及び仮想領域V42に欠陥領域Cを割り当て、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示す。図10(e)は仮想領域V23及び仮想領域V24、仮想領域V41に欠陥領域Cを割り当てて、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示し、図10(f)は仮想領域V23及び仮想領域V41、仮想領域V42に欠陥領域Cを割り当てて、他の仮想領域Vに正常領域Nを割り当てた割当パターンを示す。
【0107】
また、図10(a)及び図10(b)の割当パターンに基づいて算出した仮想到達時間Tfは、一部が実測到達時間Trの誤差(図中のε)の許容範囲外であったとし、図10(c)乃至図10(f)の割当パターンに基づいて算出した仮想到達時間Tfはすべて実測到達時間Trの誤差(図中のε)の許容範囲内であったとする。
【0108】
上述のように、評価工程S24において、実測到達時間Trと仮想到達時間Tfを比較判定した結果、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の許容範囲外であった割当パターン(図10(a)及び図10(b))はコンクリート部材Prの評価に適さないものと評価される(評価工程S24)。
【0109】
一方で、評価工程S24において、実測到達時間Trと仮想到達時間Tfを比較判定した結果、すべての仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であった割当パターン(図10(c)乃至図10(f))はコンクリート部材Prの評価に適したもの評価される(評価工程S24)。
【0110】
コンクリート部材Prを評価する部材評価工程S26では、この評価工程S24での評価に基づき、評価工程S24において実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された全ての割当パターンを読み込み、複数の割当パターンにおいて正常領域N及び欠陥領域Cの重複度に基づいてコンクリート部材Prを評価する。
【0111】
例えば、図10(c)乃至図10(f)に示すように、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された割当パターンにおいて、仮想領域V23はすべての仮想到達時間Tfに対して割り当てられていることから、仮想部材Pfにおける仮想領域V23に対応する位置に欠陥部位Zが存在する可能性が高いと評価することができる。
【0112】
また、仮想領域V41は図10(d)を除く3パターンにおいて欠陥領域Cが割り当てられているため、仮想部材Pfにおける仮想領域V41に対応する位置も、仮想領域V23よりは可能性が低いものの、欠陥部位Zが存在する可能性が十分に高いと評価することができる。
【0113】
これに対して、仮想領域V42は2パターンにおいて欠陥領域Cが割り当てられ、仮想領域V24は1パターンのみで欠陥領域Cが割り当てられている。このことから、コンクリート部材Prにおける仮想領域V42及び仮想領域V24に対応する位置には、欠陥部位Zが存在する可能性はあるものの、仮想領域V23や仮想領域V41と比べて可能性は低いと評価することができる。
【0114】
このように、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定されたすべての仮想到達時間Tfに基づいて、正常領域N及び欠陥領域Cと割り当てられた割当パターンを読み込み、欠陥領域Cが割り当てられている仮想領域Vの割合に基づいて、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を評価することができる。
【0115】
また、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfに基づいて、特定の仮想領域Vに欠陥領域Cが割り当てられている割当パターン数を、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfの数で割ることにより、仮想部材Pfにおいて所定の仮想領域Vに欠陥領域Cが存在する存在確率を算出することができる。これにより、コンクリート部材Prにおける所定の領域に欠陥部位Zが存在する確率を算出することができる(図11(a)参照)。
【0116】
さらにまた、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfの数に対する、正常領域Nと割り当てられた割付パターン数と、欠陥領域Cと割り当てられた割付パターン数とを用いることにより、それぞれの仮想領域Vにおける弾性波Wの伝搬速度の期待値を算出することができる。
【0117】
具体的には、下記数式により仮想領域Vにおける弾性波Wの伝搬速度の期待値Viを算出することができる。
【0118】
【数1】
【0119】
ここで、f4000は、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfにおいて、分割された仮想領域Vが4000(m/sec)となる割付パターン数を全割付パターン数で除算した値であり、f2700は、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfにおいて、分割された仮想領域Vが2700(m/sec)となる割付パターン数を全割付パターン数で除算した値である。
【0120】
例えば、図10に示すように、仮想領域V21では、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfに対応する割当パターンのすべてにおいて正常領域Nと評価されているため、仮想領域V21における伝搬速度の期待値Viは4000m/sec(4000×1+2700×0)となる。
【0121】
一方、仮想領域V24では実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfに対応する割当パターンにおける正常領域N及び欠陥領域Cの割合は、それぞれ0.75と0.25である。このため、仮想領域V24における伝搬速度の期待値Viは3675m/sec(4000×0.75+2700×0.25)となる。
【0122】
このように、数式1を用いることで、仮想領域Vにおける弾性波Wの伝搬速度の期待値を算出することができ(図11(b)参照)、この期待値に基づきコンクリート部材Prにおける仮想領域Vに対応する位置での欠陥部位Zがない可能性を客観的に評価することができる。
【0123】
このように、部材検査方法は、評価対象であるコンクリート部材Prにおいて、入力部Irに入力された弾性波Wが、弾性波Wを受信する受信部Rrに到達する実測到達時間Trと、シミュレーションにより算出した仮想到達時間Tfとを比較し、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定する方法である。詳しくは、コンクリート部材Prに対応する仮想部材Pfにおいて、欠陥部位Zを有する領域を仮想的に設定するとともに、入力部Irに対応する仮想入力部Ifに入力した弾性波Wが受信部Rrに対応する仮想受信部Rfに到達する仮想到達時間Tfをシミュレーション演算するシミュレーション工程S1と、実測到達時間Trと仮想到達時間Tfとを比較して、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定する比較判定工程S2とで構成されている。そして、シミュレーション工程S1において、仮想部材Pfを仮想領域Vに分割し、分割されたそれぞれの仮想領域Vに、欠陥部位Zを有さない正常領域N、又は、欠陥部位Zを有する欠陥領域Cを割り当てて割当パターンを生成する。また、仮想入力部Ifから仮想受信部Rfまで弾性波Wが伝搬する経路Pを探索するとともに、経路Pにおける正常領域Nの距離を正常距離Lnとして算出し、経路Pにおける欠陥領域Cの距離を欠陥距離Lcとして算出する。そして、生成可能な割当パターンの数に応じて、正常距離Ln及び欠陥距離Lcと、正常領域N及び欠陥領域Cにおける弾性波Wの伝搬速度とに基づいて仮想到達時間Tfを算出する。
【0124】
これにより、演算処理の負担を軽減するとともに、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定することができる。
詳述すると、評価対象であるコンクリート部材Prに対応する仮想部材Pfを分割した仮想領域Vに正常領域N及び欠陥領域Cを割り当てた割当パターンを複数生成し、割当パターンに応じて算出された仮想到達時間Tfを実測到達時間Trと比較することで、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内である仮想到達時間Tfを判定することができる。
【0125】
このように実測到達時間Trの誤差の許容範囲内であると判定された仮想到達時間Tfは、実測到達時間Trが計測されたコンクリート部材Prの構成と大差がないと考えられるため、仮想到達時間Tfに対応する正常領域N及び欠陥領域Cの領域を特定することで、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定することができる。
【0126】
またこの部材検査方法では、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた割当パターンの数に応じて仮想到達時間Tfを算出し、算出されたこの仮想到達時間Tfと実測到達時間Trとを比較して、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内である仮想到達時間Tfを解として求める方法である。すなわち、設定条件を変更しながら仮想到達時間Tfを算出する工程と、算出された仮想到達時間Tfと実測到達時間Trとを比較する工程とを繰り返す必要がなく、欠陥部位Zの位置の判定に要する演算処理にかかる負担を軽減できる。
【0127】
さらにまた、複数の仮想領域Vに欠陥領域Cを配置させた割当パターンに基づいて算出された仮想到達時間Tfを、実測到達時間Trと比較判定することができる。そして、この仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容範囲内であると判定された場合に、コンクリート部材Prが複数の欠陥部位Zを有すると評価できるとともに、割当パターンに基づいてその複数の欠陥部位Zの位置を判定することができる。
【0128】
また、割当パターンを、無作為に作成することにより、仮想領域Vに対して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てるすべての割当パターンに対して仮想到達時間Tfを算出するのではなく、無作為に設定された所定の数の割当パターンに基づいて仮想到達時間Tfを算出できる。これにより、算出された仮想到達時間Tfと実測到達時間Trと比較することでコンクリート部材Prにおいて欠陥部位Zが存在する位置の傾向を判定することができる。
【0129】
すなわち、仮想到達時間Tfを算出するための割当パターンの数を減らしながら、欠陥部位Zが存在する位置の傾向を判定することができるため、欠陥部位Zの位置を判定するための演算処理の負担をより軽減できる。
【0130】
なお、本実施形態では、割当パターンを無作為に生成しているが、例えば、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当ててすべて又は一部の割当パターンを生成し(割当工程S13)、生成された割当パターンから所定の数の割当パターンを無作為に選択してもよい(パターン選択工程S14)。
【0131】
さらにまた、シミュレーション工程S1において、正常領域N及び欠陥領域Cにおける弾性波Wの伝搬速度を設定することにより、コンクリート部材Prの材質や材料の混成条件などに基づいて弾性波Wの伝搬速度を設定することができる。すなわち、コンクリート部材Prに合わせてあらかじめ仮想到達時間Tfを算出するための条件の一部を設定することができるため、演算処理にかかる負担をより軽減できるとともに、欠陥部位Zの位置を判定することができる。
【0132】
また、正常領域N又は欠落領域における弾性波Wの伝搬速度を所定の値に設定する場合には、仮想到達時間Tfを算出する際に弾性波Wの伝搬速度を変更する演算を行う必要がないため、仮想到達時間Tfを算出するための演算処理の負担をより軽減できる。
【0133】
また、受信部Rrが、コンクリート部材Prに複数配置されていることにより、複数の受信部Rrに対応する仮想受信部Rfごとに仮想到達時間Tfを算出し、それぞれの受信部Rrにおける実測到達時間Trと対応する仮想到達時間Tfとを比較することができるため、より正確に欠陥部位Zの位置を判定することができる。
【0134】
さらに、比較判定工程S2は、複数配置された受信部Rrのそれぞれに対応する実測到達時間Trと、仮想受信部Rfのそれぞれに対応する仮想到達時間Tfとを比較して、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を評価する。
【0135】
これにより、所定の割当パターンにおいて、複数の仮想受信部Rfに対する仮想到達時間Tfが、対応する実測測到達時間の許容範囲内である割合を判定することができる。したがって、実測測到達時間の許容範囲内である割合が高い仮想到達時間Tfに対応する割当パターンほど、実際のコンクリート部材Prの構成と大差がないと評価することができる。これにより、割当パターンに対応する欠陥領域Cに基づいてコンクリート部材Prの欠陥部位Zの位置を評価することができる。
【0136】
また、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容範囲内と判定された複数の割当パターンにおいて、正常領域N又は欠陥領域Cが重複する割合を評価することにより、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zが存在する位置を評価することができる。
【0137】
詳述すると、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内である複数の仮想到達時間Tfに対応する割当パターンを比較することにより、割当パターンにおいて正常領域N及び欠陥領域Cが重複している領域を明確にすることができる。
【0138】
このように、実測到達時間Trの誤差の許容範囲内である複数の仮想到達時間Tfに基づいた割当パターンにおける正常領域N及び欠陥領域Cの重複部分は、対応するコンクリート部材Prにおいても欠落部位の存在しない部分及び欠落部位の存在する部分に対応している可能性が高いと評価することができる。したがって、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容範囲内と判定された複数の割当パターンにおける正常領域N及び欠陥領域Cの割合に応じて、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zが存在する位置をより正確に評価することができる。
【0139】
さらにまた、仮想領域Vを、正常領域N及び欠陥領域Cが割り当てられた割当パターンに基づく存在確率で算定することにより、コンクリート部材Prにおいて欠陥領域Cに対応する箇所を欠陥部位Zを有する可能性を期待値としてより評価することができる。したがって、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの有無を客観的に評価することができる。
【0140】
また、シミュレーション工程S1と比較判定工程S2とを繰り返し行う構成とし、比較判定工程S2後に、比較判定工程S2で正常領域Nと判定された仮想領域Vを正常領域Nとして確定し、シミュレーション工程S1において、欠陥領域Cと判定された仮想領域Vを再分割し、分割された仮想領域Vを、欠陥部位Zを有さない正常領域N、又は、欠陥部位Zを有する欠陥領域Cに再度割り当てることができる。
【0141】
これにより、段階的に欠陥部位Zの位置を判定することができるため、演算処理の負担をより軽減しながら、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの位置を判定することができる。
詳述すると、前段階でのシミュレーション工程S1において、仮想部材Pfを少数の仮想領域Vで分割し、仮想領域Vに対して正常領域N及び欠陥領域Cを割り当てることができるため、正常領域N及び欠陥領域Cに割り当てられる割当パターンの数を減らすことができる。このように少数に分割した仮想領域Vに対する仮想到達時間Tfを実測到達時間Trと比較判定することで、演算処理にかかる負担を軽減しつつ、コンクリート部材Prにおける欠陥部位Zの範囲を大まかに限定することができる。
【0142】
そして、次に実行されるシミュレーション工程S1において、欠陥部位Zのないと判定された仮想領域Vを正常領域Nと確定するとともに、欠陥領域Cと判定された仮想領域Vを再分割し、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを再度割り当てて仮想到達時間Tfを算出することができる。これにより、仮想部材Pfの全領域を細かく分割する場合に比べて、細かく分割する領域を小さくできるため、演算処理にかかる負担を軽減できる。
【0143】
また、コンクリート部材Prにおいて、入力部Irに弾性波Wを入力し、入力部Irに入力された弾性波Wが受信部Rrに到達する実測到達時間Trを計測する実測工程S0を行うことにより、実測工程S0から連続してコンクリート部材Prの欠陥部位Zの位置を評価することができる。そのため、欠陥部位Zの位置の評価結果に応じて、再度実測到達時間Trの再計測などを容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0144】
また、コンクリート部材Prが、多相材料で構成されていることにより、コンクリートのような多相材料における欠陥部位Zを、計算処理の負担を軽減しながら、判定することができる。
【0145】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
例えば、本実施形態において、割当工程S13において、仮想領域Vに対して正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた割当パターンを所定の数だけ生成しているが、例えば全ての割当パターンを生成してもよい。この場合、パターン選択工程S14で選択する割当パターンをランダムに選択するとともに、繰り返し選択する割当パターンの数を所定の数としてもよい。
【0146】
また、本実施形態において、前段階として仮想部材Pfを少数の仮想領域Vで分割し、欠陥部位Zの位置を大まかに判定した後に、欠陥部位Zが存在しているであろう領域を再分割することで段階的に欠陥部位Zの位置を判定する構成としている。しかしながら、仮想部材Pf最初からを細かく分割して、欠陥部位Zの位置を判定する構成としてもよい。
【0147】
また、本実施形態では、仮想部材Pfを均等な大きさで分割しているが、例えば、仮想部材Pfを不均等な大きさで分割してもよいし、分割された仮想領域Vの大きさや分割する仮想部材Pfの範囲を指定して分割してもよい。また、分割された仮想領域Vの大きさや分割する範囲を無作為に決定して分割してもよい。
【0148】
さらにまた、本実施形態においては、正常領域Nと欠陥領域Cに対する弾性波Wの伝搬速度を『4000(m/sec)』と『2700(m/sec)』とにしているが、この二つに限定することはなく適宜設定することができる。すなわち、伝搬速度は二値化に限定することはなく、所定の範囲(例えば2000~5000(m/sec)などのように。)で入力された伝搬速度から適宜選択されてもよい。また、『2000,3000,4000、5000(m/sec)』のように『1000(m/sec)』刻みで入力する構成や、『2000,2100,2200,…,4800,4900,5000(m/sec)』のように『100(m/sec)』刻みで入力する構成とすることもできる。
【0149】
さらにまた、本実施形態では、複数に分割した仮想領域Vを正常領域N及び欠陥領域Cに割り当てた複数の割当パターンを生成し、生成された割当パターンにおける仮想到達時間Tfと実測到達時間Trを比較判定しているが、必ずしもこの構成に限定されない。例えば、図12に示すように、一の割当パターンに対して仮想到達時間Tfと実測到達時間Trと比較判定し、欠陥部位Z有無を判定してもよい。
【0150】
以下、図12に基づいて簡単に説明する。
なお、図12において、本実施形態における工程と同じ工程には同じ付番を付し、その説明は省略する。
【0151】
この方法では、割当工程S13の代わりに、仮想領域Vに正常領域N又は欠陥領域Cを割り当てた一の割当パターンをランダムに生成し、この割当パターンに対して仮想到達時間Tfを算出する(受信部選択工程S15~算出判定工程S18)。そして、算出された仮想到達時間Tfを実測到達時間Trと比較し(時間判定工程S23)、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容誤差の範囲内か否かを判定する(時間評価工程S23-2)。仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容誤差の範囲外の場合(時間評価工程S23-2:No)、割当工程S13-1に戻り、新たな割当パターンを生成し(割当工程S13-1)、割当パターンに対する仮想到達時間Tfを算出する。そして、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容誤差の範囲内となるまで計算を繰り返す。
【0152】
仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容誤差の範囲内である場合(時間評価工程S23-2:Yes)、時間判定工程S23-1の結果に基づき割当パターンを評価し(評価工程S24)、割当パターンの評価結果に基づいてコンクリート部材Prを評価する(部材評価工程S26)。この方法により、計算時間の負担が大幅に軽減される可能性が上がる。
【0153】
なお、仮想到達時間Tfが実測到達時間Trの許容誤差の範囲内である割当パターンが複数見つかるまで、割当工程S13-1~時間評価工程S23-2を繰り返してもよい。この場合には、複数の時間判定工程S23-1の結果に基づき割当パターンを評価し(評価工程S24)、割当パターンの評価結果に基づいてコンクリート部材Prを評価する(部材評価工程S26)。
【符号の説明】
【0154】
1 部材検査システム
11 制御部
Pr コンクリート部材
Pf 仮想部材
Ir 入力部
If 仮想入力部
Rr 受信部
Rf 仮想受信部
Tr 実測到達時間
Tf 仮想到達時間
W 弾性波
Z 欠陥部位
S0 実測工程
S1 シミュレーション工程
S2 比較判定工程
V 仮想領域
N 正常領域
C 欠陥領域
P 経路
Ln 正常距離
Lc 欠陥距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12