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特許7489044トンネルセントルのコンクリート打込み装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】トンネルセントルのコンクリート打込み装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020186393
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076123
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 善英
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-212896(JP,A)
【文献】特開2020-56196(JP,A)
【文献】特開平11-256825(JP,A)
【文献】特開昭61-103000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルセントルの型枠に沿ってその周方向へ延びるガイドレールを設けるとともに、当該ガイドレールの周方向の複数個所にコンクリート打込み口を設け、前記ガイドレールに沿って移動可能な台車を設けて、前記台車に、前記ガイドレールの周面に接して閉鎖されるとともに当該台車の所定位置への移動によって前記コンクリート打込み口に合致してこれに連通するコンクリート供給口を設けたトンネルセントルのコンクリート供給装置。
【請求項2】
前記ガイドレールに沿ってチェーンを敷設し、当該チェーンを前記台車に設けられて駆動モータによって回転させられる駆動スプロケットに懸架して、駆動スプロケットの正逆回転に伴い前記チェーンを手繰るようにして前記台車が正逆移動させられる請求項1に記載のトンネルセントルのコンクリート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルセントルの型枠外周に形成されたコンクリート注入空間内へ二次覆工コンクリートの打込みを行う際に使用するトンネルセントルのコンクリート打込み装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、トンネル掘削による地山の半円断面のトンネル内に相似断面の型枠を備えたトンネルセントルを挿入設置して、上記型枠の外周とトンネル内周壁との間に形成された所定間隔(巻厚)のコンクリート注入空間内へ二次覆工コンクリート(以下、単にコンクリートという)を打ち込んでおり、特許文献1に示されるように、このコンクリート打込み作業を自動化するためのコンクリート打込み装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に示されたコンクリート打込み装置では、型枠の円弧状の外周部に周方向へ間隔をおいて開口する複数のコンクリート打込み管を設け、ガイドレールに沿って移動する移動装置に進退可能に搭載した打込みノズルを順次各コンクリート打込み管に対向させて、打込みノズルを進出させその先端開口を打込み管の開口(コンクリート打込み口)内に挿入して液密的に連通させ、打込みノズルから打込み管へコンクリートを供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-056196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコンクリート供給装置はコンクリート打込み作業の自動化を実現して作業効率を大きく改善したものではあるが、装置構造が未だ複雑でコスト高になるという問題があった。
【0006】
そこで本発明はこのような問題点を解決するもので、装置構造が簡易で低コストで実現できるトンネルセントルのコンクリート打込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本第1発明では、トンネルセントル(C)の型枠(1)に沿ってその周方向へ延びるガイドレール(2)を設けるとともに、当該ガイドレール(2)の周方向の複数個所にコンクリート打込み口(61)を設け、前記ガイドレール(2)に沿って移動可能な台車(3)を設けて、前記台車(3)に、前記ガイドレール(2)の周面(21)に接して閉鎖されるとともに当該台車の所定位置への移動によって前記コンクリート打込み口(61)に合致してこれに連通するコンクリート供給口(321)を設ける。
【0008】
本第1発明においては、ガイドレールの周面によって移動中の台車のコンクリート供給口を閉鎖しているから、別途閉止用のバルブ装置を設けることなく、一のコンクリート打込み口から他のコンクリート打込み口へ台車が移動する間にコンクリート供給口からコンクリートが流出するのを効果的に防止することができる。また、台車を所定位置に移動させるだけでコンクリート供給口をコンクリート打込み口に連通させることができるから、従来のように打込みノズルをコンクリート打込み口内へ挿入しないし退出させる機構が不要となる。これらによって、コンクリート打込み装置の構造を簡易かつ安価なものにできる。
【0009】
本第2発明では、前記ガイドレール(2)に沿ってチェーン(37)を敷設し、当該チェーン(37)を、前記台車(3)に設けられて駆動モータ(34)によって回転させられる駆動スプロケット(361)に懸架して、駆動スプロケット(361)の正逆回転に伴い前記チェーン(37)を手繰るようにして前記台車(3)が正逆移動させられる。
【0010】
本第2発明においては、ガイドレールに沿って設けたチェーンとこれに結合する駆動スプロケットによって、滑り等を生じることなく、台車の確実な移動と位置決めが行われる。このようにして、台車の確実な移動と位置決めが、ガイドレールに沿ってチェーンを敷設する簡易な構造で実現される。
【0011】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のトンネルセントルのコンクリート打込み装置は装置構造が簡易で低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンクリート供給装置を備えたトンネルセントルの切羽側端部の透視斜視図である。
図2】配管切替装置から台車へ至る配管図である。
図3】移動途中の台車の部分断面側面図である。
図4】台車の正面図である。
図5】台車の平面図である。
図6】台車の部分断面正面図である。
図7】所定位置(最下段コンクリート打ち込み部)へ移動した台車の部分断面側面図である。
図8】台車が上方(下から二段目)のコンクリート打込み口へ移動した状態におけるトンネルセントルの切羽側端部の透視斜視図である。
図9】台車がさらに上方(下から三段目)のコンクリート打込み口へ移動した状態におけるトンネルセントルの切羽側端部の透視斜視図である。
図10】台車がさらに上方(最上段)のコンクリート打込み口へ移動した状態におけるトンネルセントルの切羽側端部の透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0015】
図1には本発明のコンクリート供給装置を備えたトンネルセントルCを示す。トンネルセントルCの型枠1はトンネルの断面内周に沿った半円弧状となっており、型枠1の切羽側端面11からトンネル長手方向へ間隔をおいて、型枠1の左右の側部に沿ってそれぞれ円弧状に延びるガイドレール2がトンネルセントルCに一体に設けられている。
【0016】
各ガイドレール2にはこれに沿って移動可能に、詳細構造を以下に説明する台車3がそれぞれ一台設けられており、各台車3に公知の配管切替装置4から延びるコンクリート供給支管52,53が連結されている。配管切替装置4には左右に移動可能な矩形の枠体41が設けられて、当該枠体41に、図略のコンクリート供給ポンプから延びるコンクリート供給主管51が連結されている。
【0017】
配管切替装置4には左右位置に上記コンクリート供給支管52,53が開口しており、枠体41が図1に示す一端位置にある場合にはコンクリート供給主管51がコンクリート供給支管52に連通させられ、枠体41が他端位置に移動するとコンクリート供給主管51はコンクリート供給支管53に連通させられる。なお本実施形態では配管切替装置4の左右の中間位置に、型枠1の天端位置から延びるコンクリート供給支管54が開口しており、枠体41が上記中間位置に移動した際には、コンクリート供給主管51はコンクリート供給支管54に連通させられる。なお、配管切替装置4のコンクリート供給支管52~54の並び順は限定しない。
【0018】
コンクリート供給主管51およびコンクリート供給支管52,53はいずれも金属管で、コンクリート供給支管52,53は適宜位置に設けた接手部55(図2にコンクリート供給支管53を示す)によって、上記コンクリート供給支管52,53を構成する複数の湾曲する管体56が互いに捩じり変形可能となっている。なお各管体56の接手部55間は直線的なリンク板57,58によって補強連結されている。
【0019】
図3にはガイドレール2に沿って移動する途中の台車3の部分断面側面図を示し、図4には台車3の正面図を、図5には台車3の平面図を示す。ガイドレール2は両側縁にフランジ21,22を有する断面角筒状に成形されており(図3)、台車3はその下半部に設けた基体31が、ガイドレール2の一方の側縁フランジ21を抱持してこれに摺動可能に装着されている。基体31は正面視で縦長の長方形をなし(図4)その板面には連結管32が貫設されている。連結管32はコンクリート供給支管53(図3)と連結されている。連結管32のガイドレール2側の開口はコンクリート供給口321となり、台車3の移動中は図3に示すように、上記コンクリート供給口321はガイドレール2の側縁フランジ21のフランジ面に液密的に接して閉鎖されている。
【0020】
台車3の上半部には駆動機構が設けられており、駆動機構を構成するギアボックス33には駆動モータ34が付設され、ギアボックス33の出力軸331はガイドレール2の外周直上に位置する箱状の本体35内に延びて(図5)、出力軸331の外周には本体35内に設けた駆動スプロケット361が装着されている。ガイドレール2に沿って延びる長方形の本体35内には駆動スプロケット361の前後の下方位置にガイドスプロケット362,363(図6)がそれぞれ設けられており、ガイドレール2の外周に沿って配設されたチェーン37がガイドスプロケット362,363を介して駆動スプロケット361に懸架されている。なお、チェーン37の図示しない両端はガイドレール2の両端にそれぞれ固定されている。
【0021】
このような構造で、図略の制御装置の出力信号によって駆動モータ34を正逆回転させると、これに伴って駆動スプロケット361が回転し、チェーン37を手繰るようにして台車3がガイドレール2に沿って正逆移動する。ガイドレール2には図1に示すように周方向の複数個所に、型枠1外周の必要カ所へ延びるコンクリート打込み管6のコンクリート打込み口61が開口しており、台車3が所定位置へ移動すると、図7に示すように、コンクリート供給口321が、ガイドレール2の側縁フランジ21のフランジ面に開口する同径の上記コンクリート打込み口61に合致してこれに連通する。これにより、コンクリートがコンクリート供給支管53からコンクリート打込み管6へ供給される。
【0022】
このようにして、配管切替え装置4でコンクリート供給主管51と所望のコンクリート供給支管52,53を連通させ、図1から、図8ないし図10に示すように、順次台車3をガイドレール2に沿って下方から上方へ移動させて、コンクリート供給口321を順次コンクリート打込み口61へ連通させることによって、コンクリートをコンクリート支管52,53から所望のコンクリート打込み管6へ順次供給することができる。
【0023】
本実施形態によれば、ガイドレール2の側縁フランジ21のフランジ面によって移動途中の台車3のコンクリート供給口321が閉鎖されるから、配管切替え装置4よりも低い位置にある一のコンクリート打込み口61から他のコンクリート打込み口61へ台車3が移動する間に、別途閉止用のバルブ装置を設けることなく、コンクリート支管52,53内に残留したコンクリートがコンクリート供給口321から流出するのを効果的に防止することができる。また、台車3を所定位置に移動させるだけでコンクリート供給口321をコンクリート打込み口61に連通させることができるから、従来のように打込みノズルをコンクリート打込み口内へ挿入ないし退出させる機構が不要となる。このようにして、装置構造が簡易かつ安価なものとなる。
【符号の説明】
【0024】
1…型枠、2…ガイドレール、21…側縁フランジ(周面)、3…台車、321…コンクリート供給口、34…駆動モータ、361…駆動スプロケット、37…チェーン、61…コンクリート打込み口、C…トンネルセントル。
図1
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図3
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