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特許7489058油中水型エマルジョン型凝集処理剤及びその溶解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】油中水型エマルジョン型凝集処理剤及びその溶解方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B01D21/01 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020070127
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021166947
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛子
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252476(JP,A)
【文献】特開2002-079258(JP,A)
【文献】特開平09-225482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/52-56
B01D21/00-34
D21B1/00-38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型エマルジョンからなる高分子凝集処理剤製品原液と、ロジン及び/又はカルボキシル基を有するロジン誘導体を含有することを特徴とする凝集処理剤。
【請求項2】
前記高分子がポリアクリルアミド系高分子及び一級アミノ基含有高分子から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の凝集処理剤。
【請求項3】
前記ロジン及び/又はカルボキシル基を有するロジン誘導体を油中水型エマルジョンからなる高分子凝集処理剤製品原液に対して、0.01~5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の凝集処理剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の凝集処理剤を水に溶解させることを特徴とする凝集処理剤の溶解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型エマルジョン型凝集処理剤及びその凝集処理剤の溶解方法に関する。更に詳しくは、溶解性が改善した油中水型エマルジョン型凝集処理剤及びその溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集処理剤は、排水や汚泥処理用の排水処理剤、汚泥脱水剤、汚泥沈降剤、あるいは製紙用薬剤としての歩留及び/又は濾水性向上剤として幅広く用いられている。
これら凝集処理剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)系水溶性高分子、一級アミノ基を含有する水溶性高分子が汎用されている。凝集処理剤の形態としては、油中水型エマルジョン、粉末品、高粘稠品、塩水中分散液等が使用されている。この中で油中水型エマルジョンは高濃度での製品が製造可能であり、粉末品や高粘稠品に比べて溶解しやすいので高分子量を要する凝集処理剤用途として適した形態である。
一般的に油中水型エマルジョンは、溶解時、水に分散させると水滴のまわりには油が存在するため、転相剤として親水性乳化剤をエマルジョン中にあるいは溶解水中に添加し溶解を促進させる。しかし、転相のバランスが崩れるとエマルジョンを膨潤させ未溶解部が生じることや、油中水型エマルジョンの急速な溶解や粘性上昇によって粗大な未溶解粒子の発生が生じる場合がある。
そこで、油中水型エマルジョン型の凝集処理剤の溶解性を改善するために種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、油中水型高分子エマルジョンに転相剤として非イオン性油溶性乳化剤及び非イオン性水溶性乳化剤を併用添加する溶解性調節方法が開示されている。
特許文献2、3では、特定の構造単位を有するカチオン性油溶性高分子を必須として含有することで溶解性が優れる油中水型エマルジョンが開示されている。
しかし、これら提案技術においても現場によっては溶解撹拌効率が低い場合や完全溶解までの時間が設定できない場合が有り、更なる溶解性の改善が要望されている。
【0003】
【文献】特開2002-332358号公報
【文献】特開2008-173543号公報
【文献】特開2010-116551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、汚泥脱水処理、産業廃水処理あるいは抄紙工程で使用する歩留向上剤や濾水性向上剤として使用される油中水型エマルジョン型凝集処理剤に関するものであり、より溶解性の高い油中水型エマルジョン型凝集処理剤あるいは凝集処理剤の溶解方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、油中水型エマルジョンからなる高分子と、ロジン及び/又はロジン誘導体を含有することで溶解性の優れた凝集処理剤が得られることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における凝集処理剤は、溶解性に優れるため溶解条件に制約がある現場においても凝集処理剤の効果を最大限に発揮できるため凝集処理剤として広範囲で有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における凝集処理剤としては、形態が油中水型エマルジョンからなる高分子であれば効果を発揮する。特にポリアクリルアミド系高分子、一級アミノ基を含有する高分子が好ましい。
本発明におけるポリアクリルアミド系高分子とは、ポリ(メタ)アクリルアミドあるいは(メタ)アクリルアミドと共重合可能なカチオン性単量体及び/又はアニオン性単量体との共重合体である。具体的には、(メタ)アクリルアミド1~100モル%、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体0~99モル%、下記一般式(2)で表されるアニオン性単量体0~99モル%を含有する単量体混合物を重合して製造したものである。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基、Rは水素、炭素数1~3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素又はNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基又はアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
本発明におけるポリアクリルアミド系高分子を製造する際に使用する一般式(1)で表されるカチオン性単量体は、以下の様なものがある。即ち、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である。その例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物である。これらから選択される一種以上を使用する。
【0009】
本発明におけるポリアクリルアミド系高分子を製造する際に使用する一般式(2)で表されるアニオン性単量体は、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。これらから選択される一種以上を使用する。
【0010】
本発明におけるポリアクリルアミド系高分子を製造する際にアクリルアミド以外の非イオン性単量体を併用しても良い。非イオン性単量体は、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらから選択される一種以上を使用する。
【0011】
油中水型エマルジョンの製造方法は、特開平10-140496号公報や特開2011-99076号公報等に挙げられる方法に準じて適宜に製造することができる。即ち、(メタ)アクリルアミド、カチオン性単量体及び/又はアニオン性単量体を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0012】
又、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類、ナフテン類、あるいは灯油、軽油、中油等の鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%~50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%~35質量%の範囲である。
【0013】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1~15のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。これら界面活性剤の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは1~5質量%の範囲である。
【0014】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては20~80℃、好ましくは20~60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性或いは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、レドックス系、過酸化物系の何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、1、1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0015】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0016】
又、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1~5質量%併用、あるいはギ酸ソーダを対単量体0.02~0.5質量%併用すると効果的である。
【0017】
単量体の重合濃度は20~60質量%の範囲であり、単量体の組成、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
【0018】
本発明における油中水型エマルジョンからなる高分子では、重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用しても良い。使用する場合は、単量体総量に対し0.01質量%以下が好ましい。架橋性単量体の例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン等が挙げられる。
【0019】
重合後は、必要に応じて転相剤と呼ばれる親水性界面化成剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子を水に馴染み易くし、中の水溶性高分子が溶解し易くする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9~15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
【0020】
本発明における油中水型エマルジョンからなる高分子としてポリアクリルアミド系高分子を使用する場合は、凝集処理剤として一定の性能を発揮するには高分子量が必要である。極限粘度法による重量平均分子量が100万~3000万の範囲が好ましい。
【0021】
次いで、本発明における油中水型エマルジョンからなる高分子として使用できる一級アミノ基を含有する高分子について説明する。一級アミノ基を含有する高分子として、ポリビニルアミン系高分子が挙げられる。
【0022】
ポリビニルアミンは、構造が最も単純な一級アミノ基含有ビニルポリマーであり、その製造方法は、N-ビニルカルボン酸アミドの重合物を酸又は塩基にて加水分解する方法、N-ビニル-O-t-ブチルカルバメートの重合物を加水分解する方法、あるいはポリアクリルアミドを次亜ハロゲン酸及びアルカリ金属水酸化物の存在下ホフマン反応を行う方法等が挙げられる。
【0023】
本発明における油中水型エマルジョンからなる高分子としてのポリビニルアミン系高分子は常法により製造することができる。例えば、特開2012-153747号公報や特開2019-131652号公報に開示されている方法で製造できる。先ず、N-ビニルカルボン酸アミド単量体を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合することによってN-ビニルカルボン酸アミド重合体を合成する。
【0024】
その後、前記N-ビニルカルボン酸アミド重合体の油中水型エマルジョンを酸又は塩基で加水分解し得ることができる。目的に応じて適宜選択することが可能であり、酸の存在下で使用する必要がある場合は、酸により加水分解することが好適である。酸による加水分解では、副生成物としてギ酸が生成し製造槽や貯槽を腐食するため、塩基により加水分解することが好適である。加水分解によって、酸アミド基をアミノ基に変換することによりカチオン化するが、加水分解率は使用目的によって適宜に設定される。
【0025】
加水分解は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの存在下で行うことが好ましい。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが例示される。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLBは重合条件に応じて任意のものが使用できる。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルは、N-ビニルカルボン酸アミドの重合時に添加することも、重合後加水分解の前に添加することも可能であるが、重合後、加水分解前に添加する方法が好ましい。
【0026】
N-ビニルカルボン酸アミド単量体の例としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミドが挙げられるが、N-ビニルホルムアミドを使用することが好ましい。
【0027】
水と非混和性の炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油等の鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20~50質量%であり、好ましくは20~35質量%である。
【0028】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系、あるいは分子量が1000以上のブロック及び/又はグラフト型の高分子界面活性剤等である。具体的には、2~10好ましくは3~7のHLB値を有する分子量1000未満の界面活性剤、例えばグリセロールモノ-、ジ-、及びトリ-、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンモノ-、ジ-、及びポリ-、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったソルビタン脂肪酸エステル、更にこれらのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加物が例示できる。分子量1000以上のブロック及び/又はグラフト型の高分子界面活性剤としては、12-ヒドロキシステアリン酸とポリ(エチレンオキサイド)の反応物であるポリエステル・ブロック-ポリ(エチレンオキシド)・ブロック-ポリエステル・ブロックコポリマーが例示できる。又、これらの中から二つ以上の界面活性剤を併用することも可能である。特に分子量1000未満の界面活性剤と分子量1000以上のブロック及び/又はグラフト型の高分子界面活性剤を併用することが好ましく、添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは1~5質量%の範囲である。
【0029】
重合はラジカル重合開始剤を使用し行う。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、1、1’-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2、2’-アゾビス-2-メチルプロピオネート、2、2’-アゾビス-(4-メトキシ-2、4-ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0030】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0031】
重合温度は、使用する重合開始剤によって適宜決めていき、通常0~100℃の範囲で行ない、特に10~60℃の範囲が好ましい。
【0032】
又、分子量の調整のため連鎖移動性を持つ化合物を併用することができ、例えば、2-メルカプトエタノール、2-プロパノール、亜硫酸水素ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等が使用できる。
【0033】
N-ビニルカルボン酸アミドの濃度は適宜設定するが、通常は油中水型エマルジョン全量に対して10~50質量%の範囲であり、特に15~40質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明における油中水型エマルジョンからなるポリビニルアミンは、前記N-ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸又は塩基で加水分解し得ることができる。目的に応じて適宜選択することが可能であり、酸の存在下で使用する必要がある場合は、酸により加水分解することが好適である。酸による加水分解では、副生成物としてギ酸が生成し製造槽や貯槽を腐食するため、塩基により加水分解することが好適である。
【0035】
加水分解のために適当な酸としては、加水分解の際にpHを0~5の範囲とすることができれば制限はなく、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸、炭素数1~5の範囲のモノ及びジカルボン酸、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸といった有機酸が例示でき、特にハロゲン化水素酸及びハロゲン化水素のガスを用いることが好ましく、ハロゲン化水素酸を用いることが最も好ましい。添加量は、ポリマーのホルミル基に対し0.05~2、さらに好ましくは0.4~1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0036】
加水分解のために適当な塩基としては、加水分解の際にpHを8~14の範囲とすることができれば制限はなく、周期律表第一及び二a族の金属水酸化物、アンモニア及びアンモニアのアルキル誘導体が例示でき、周期律表第一及び二a族の金属水酸化物及びアンモニアを用いることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液を用いることが最も好ましい。添加率は、ポリマーのホルミル基に対し0.05~2、更に好ましくは0.4~1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0037】
このようにして得られた油中水型エマルジョンのポリビニルアミンの重量平均分子量は、100万~500万の範囲が好ましい。1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度は、0.5~10.0dL/gの範囲が好ましい。
【0038】
加水分解後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行なうことが好ましい。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9~15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル等が例示できる。
【0039】
又、本発明における一級アミノ基を含有する高分子として、下記一般式(3)で表されるカチオン性単量体を必須として含有する単量体混合物を重合して得られた高分子も使用できる。一般式(3)で表わされるカチオン性単量体の例としては、2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタアクリレート、3-アミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピルメタアクリレート等の有機酸や無機酸の塩が挙げられる。これらの単量体は、通常、無機あるいは有機の酸塩の形でのみ存在が可能であり、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸塩等が挙げられる。これらのうち、硫酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩が好ましい。好ましいのは、2-アミノエチルアクリレート塩酸塩、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2-アミノエチルアクリレート硫酸塩、2-アミノエチルメタクリレート硫酸塩、2-アミノエチルアクリレートメタンスルホン酸塩、2-アミノエチルメタクリレートメタンスルホン酸塩、2-アミノエチルアクリレートパラトルエンスルホン酸塩、2-アミノエチルメタクリレートパラトルエンスルホン酸塩である。
一般式(3)
は水素又はメチル基、Aは酸素原子又はNH、Bは炭素数2~3のアルキレン基又はアルコキシレン基、Z は陰イオンをそれぞれ表わす。
【0040】
一般式(3)で表されるカチオン性単量体は、単独で重合しても良く、他の単量体と共重合しても良い。例えば、非イオン性単量体の(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等が挙げられ、非イオン性の単量体のうちから一種又は二種以上と組み合わせ共重合することも可能である。最も好ましい非イオン性単量体の例としては、アクリルアミドである。又、アニオン性単量体のビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸あるいはマレイン酸等とも共重合可能である。更に三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体とも共重合可能である。三級アミノ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等である。又、四級アンモニウム基単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられる。更にジメチルジアリルアンモニウム塩化物等とも共重合可能である。これら四級アンモニウム基含有単量体と非イオン性単量体と本発明で使用する一般式(3)で表されるカチオン性単量体からなる三元共重合体も使用可能である。
【0041】
これら一級アミノ基含有高分子中の一般式(3)で表わされる一級アミノ基含有単量体のモル%としては、好ましくは70~100モル%である。両性の場合、アニオン性単量体のモル%としては、1~20モル%である。
【0042】
次いで、一般式(3)で表されるカチオン性単量体を必須として含有する単量体混合物を重合して得られた高分子の製造は油中水型エマルジョン重合法により製造する。例えば、先ず、一般式(3)で表わされるカチオン性単量体、あるいは共重合する場合は、共重合する単量体を共存させた水溶液を調製し、pHを2.0~6.0に調節した後、窒素置換により反応系の酸素を除去し常法の油中水型エマルジョン重合法により製造する。ラジカル重合性開始剤を添加することによって重合を開始させ、重合体を製造することができる。そのため重合濃度としては、5~60質量%の範囲での実施が可能であり、好ましくは20~50質量%で行うのが適当である。又、反応の温度としては、10~100℃の範囲で行うことができる。
【0043】
重合の機構としては、ラジカル重合開始剤を使用した一般的なラジカル重合によって重合体を生成することができる。即ち開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、1、1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。こらのなかで特に好ましい開始剤としては、水溶性のアゾ系開始剤である2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物等である。
【0044】
一般式(3)で表されるカチオン性単量体を含有する高分子の重量平均分子量は、100万~600万であり、100万以下では凝集性能が不足し、600万より高くなると溶液粘度が高くなり過ぎ分散性が低下するので好ましくはない。4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した塩水溶液粘度は、5mPa・s以上、70mPa・s以下の範囲である。
【0045】
本発明における凝集処理剤は、油中水型エマルジョンからなる高分子にロジン及び/又はロジン誘導体を含有させる。ロジンとして、ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジンを使用する。ロジン誘導体として、これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体を使用する。ロジン誘導体としては、例えば、ロジンエステル類、ロジンフェノール類が挙げられる。ロジンエステル類としては、例えば、前記ロジン類と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたロジンエステル、原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化ロジンの多価アルコールエステル、原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化させた後、不均化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化不均化ロジンの多価アルコールエステル等が挙げられる。又、ロジンフェノール類とは、ロジン類にフェノール類を付加させ熱重合したもの、又は次いでエステル化したものをいう。ロジン及び/又はロジン誘導体と同様な構造を有していれば本発明における溶解促進効果が得られる。その例として、ステロール骨格を有する化合物が挙げられ、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、セレブロステロール、デヒドロコレステロール、コプロスタノール等の動物系ステロール骨格、β-シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール及びエルゴステロール、フコステロール、スピナステロール及びブラシカステロール等の植物系ステロール骨格、及びミコステロール及びチモステロール等の微生物系ステロール骨格等が挙げられる。又、ステロール誘導体が挙げられる。ステロール誘導体の具体例としては、例えばラノリン脂肪酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、リシノール酸コレステリル、及びマカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル等のコレステロール誘導体、並びにラノリン脂肪酸フィトステリル、ステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、リシノール酸フィトステリル、及びマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル等のフィトステロール誘導体が挙げられる。その他に、テルペノイド、例えば、イソプレン、プレノール、3-メチルブタン酸等のヘミテルペン、ゲラニル二リン酸、シネオール、リモネン、ピネン等のモノテルペン、ファルネシル二リン酸、アルテミシニン、ビサボロール等のセスキテルペン、ゲラニルゲラニル二リン酸、レチノール、レチナール、フィトール、パクリタキセル、ホルスコリン、アフィジコリン等のジテルペン、スクアレン、ラノステロール等のトリテルペン、リコペン、カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン等のテトラテルペン等が挙げられる。
【0046】
本発明におけるロジン及び/又はロジン誘導体は、油中水型エマルジョンからなる高分子の製品原液に添加する。油中水型エマルジョンからなる高分子としてポリアクリルアミド系高分子及び一級アミノ基含有高分子が複数含まれていても良い。ロジン及び/又はロジン誘導体の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.01~5質量%(製品濃度換算)の範囲であり、好ましくは0.02~5質量%である。0.01質量%より少ないと溶解促進効果は得られ難く、5質量%より多いと油中水型エマルジョンからなる高分子との混合が不良となり溶解が悪化する可能性があり好ましくはない。ロジン及び/又はロジン誘導体を添加して任意の方法で混合する。油中水型エマルジョン中に均一に混合できれば混合方法は問わない。効果発現機構としては、ロジン及び/又はロジン誘導体が有するカルボキシル基が水相、炭化水素骨格部分が油相に配置することで油中水型エマルジョンを水に溶解、希釈時に転相を促進することで溶解性が改善すると考えられる。
【0047】
本発明における凝集処理剤は水に溶解して添加対象物に添加する。凝集処理剤を溶解する水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等が使用できる。これらが混合されていても差し支えない。本発明における凝集処理剤を0.01~1.0質量%に溶解して対象物に添加する。更に水で二次希釈、三時希釈しても差し支えない。
【0048】
本発明における凝集処理剤は、排水や汚泥処理用の排水処理剤、汚泥脱水剤、汚泥沈降剤、あるいは製紙用薬剤として歩留向上剤又は濾水性向上剤、凝結剤、紙力増強剤等、広範囲に使用できる。
【0049】
本発明における凝集処理剤の汚泥脱水剤として適用可能な汚泥は、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水等の生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥及びこれらの混合物)であるが、これら汚泥に任意の濃度に水で希釈して添加される。汚泥に対する添加率は、汚泥種、脱水機種によっても異なるが、汚泥液量に対し1~1000ppmである。使用する脱水機の種類は、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円板型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等に対応できる。又、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、PAC、硫酸バンド等の無機系凝集剤と併用しても良い。
【0050】
本発明における凝集処理剤を廃水処理用途として使用する場合は、食品加工廃水、染色廃水、メッキ廃水、化学工場廃水、製紙廃水、金属加工廃水、生活廃水、し尿処理廃水、畜産排水等に適用できる。廃水に対する添加率は、1~1000ppmの範囲であるが、対象廃水により任意に調節する。
【0051】
本発明における凝集処理剤を製紙用歩留向上剤あるいは濾水性向上剤として使用する場合は、抄紙前の製紙原料に添加される。通常、製紙工程において上流からパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上で移送されてきた製紙原料が抄紙機の直前では白水や清水等によりパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されている。一般的には0.5~1.5質量%に希釈されており、これらはインレット原料やヘッドボックス原料と呼ばれている。これら原料(以下、インレット原料とする。)に対して歩留向上剤あるいは濾水性向上剤が添加され抄紙される。本発明の凝集処理剤もインレット原料に適用する。
【0052】
本発明における凝集処理剤の製紙用歩留向上剤あるいは濾水性向上剤を使用する紙の種類としては、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙等が挙げられる。製紙工程における添加場所は、せん断工程であるファンポンプやスクリーンの前後に適用される。凝集処理剤の添加率は、紙料固形分濃度に対して10~1000ppmの範囲である。
【実施例
【0053】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
本発明における油中水型エマルジョンからなる高分子としてポリアクリルアミド系高分子試料1~3、一級アミノ基含有高分子試料4及び5をそれぞれ油中水型エマルジョン重合の常法により調製、用意した。これらは凝集処理剤として汎用される範囲の組成、物性を有する高分子である。その組成、物性を表1に示す。又、市販品のロジン(松脂、ガム系)(関東化学株式会社製、製品番号36031-02)を用意した。
【0055】
(表1)
【0056】
(実施例1)
表1の高分子試料1の油中水型エマルジョン全量に対して0.25質量%(製品濃度100質量%換算)のロジンを添加し均一に混合した。これを凝集処理剤試料Aとした。同様に表1の高分子試料にロジンを所定量添加し、凝集処理剤試料B~Eとした。これらを表2に示す。
【0057】
(表2)
【0058】
(実施試験例1~4)
(水溶液粘度の測定試験)
凝集処理剤試料を水に溶解し、溶解開始からの経時の水溶液粘度を測定した。水溶液粘度は、油中水型エマルジョンの溶解度の指標となり、溶解初期は粘度が低いが完全に溶解すると粘度は高くなり略一定の粘度に到達する。
500mLビーカーに脱塩水497.5g採取し、マグネットスターラーで800rpmにて撹拌しながら、凝集処理剤試料A2.5gをシリンジにて添加した。添加開始時間を0分とし、10分毎の水溶液粘度(0.2質量%)をB型粘度計(東機産業株式会社製B8M型)にて、2号ローターを使用し30rpmで測定した。凝集処理剤試料B~Eについても0.2質量%濃度にて同様な試験を実施した。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0059】
(比較試験例1~4)ロジン無添加の高分子試料1、2、4、5について、実施試験例1~4と同様な試験を実施した。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0060】
(表3)
【0061】
(表4)
【0062】
実施試験例1では、凝集処理剤試料A、Bを添加、10~20分で水溶液粘度は高く略一定となるが、高分子試料1添加時、凝集処理剤試料A、Bと同程度の水溶液粘度を示すには30分は要する。又、実施試験例2では、凝集処理剤試料Cを添加、10分で水溶液粘度は最も高くなるが、高分子試料2添加では最も高い水溶液粘度を示すには40分を要する。又、一級アミノ基含有高分子試料を用いた実施試験例3、4と比較試験例3、4についても同様な結果が得られた。
【0063】
(実施試験例5~7)
(電気伝導度の測定試験)
電気伝導度は、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量の指標であり、油中水型エマルジョン溶解度の指標となる。溶解初期の電気伝導度は低いが溶解が進行するにつれ電気伝導度は高くなり略一定の電気伝導度に到達する。
500mLビーカーに脱塩水497.5g採取し、水中に電気伝導度計を設置した。マグネットスターラーで800rpmにて撹拌開始、凝集処理剤試料A2.5gを添加、電気伝導度値(mS/m)を60分間計測した。60分間撹拌後の電気伝導度の値を100とし、各分の測定値を%に変換した。凝集処理剤試料D、Eについても0.2質量%濃度にて同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0064】
(比較試験例5~7)ロジン無添加の高分子試料1、4、5について、実施試験例5~7と同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0065】
(表5)
【0066】
実施試験例5では、凝集処理剤試料Aを添加後の電気伝導度の上昇度合いに比べて、高分子試料1添加後の電気伝導度の上昇度合いは小さい。又、一級アミノ基含有高分子試料を用いた実施試験例6、7と比較試験例6、7についても同様な結果が得られた。
【0067】
(実施試験例8)
(凝集処理性能試験)
某製紙工場より入手した製紙余剰汚泥(pH6.4、電気伝導度132mS/m、SS分9500mg/L、VTS81.6質量%/SS、VSS89.5質量%/SS)を用い、本発明における凝集処理剤の汚泥脱水試験を実施した。当該現場では現行汚泥脱水剤として高分子試料3が使用されている。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、硫酸バンドを対汚泥120ppm添加、スパチュラを使用し50回かき混ぜ撹拌後、凝集処理剤試料B 0.2質量%溶解液(60分撹拌調製)を対汚泥70ppm加え、ビーカー移し替え攪拌20回行った後、ナイロン製濾布(T-1179L)により濾過し、60秒後の濾液量を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cmで60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。凝集処理剤試料Cについても同様な試験を実施した。これらの結果を表6に示す。
【0068】
(比較試験例8) 実施例1と同様な汚泥を対象に同様な操作により、表1の高分子試料3に関して同様な試験を実施した。結果を表6に示す。
【0069】
(表6)
【0070】
本発明における凝集処理剤試料を添加した実施試験例8では、高分子試料3添加時と比較して同等以上の濾水性、搾水性を示し、本発明における凝集処理剤の凝集処理性能が確認できた。
【0071】
油中水型エマルジョンからなる高分子にロジンを含有した本発明における凝集処理剤では、ロジンを含有しない高分子試料についてのそれぞれの比較試験例に比べて、一定の水溶液粘度及び電気伝導度に到達するのが速く、溶解が促進していることが確認できた。これは、現場での溶解条件の制約を受け難く、ロジンを油中水型エマルジョンからなる高分子に含有させる簡易な方法で溶解を改善でき、凝集処理剤として広範囲で有用であることを意味する。