(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/04 20060101AFI20240516BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20240516BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240516BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20240516BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G09F3/04 C
G09F3/10 A
C09J7/38
C09J153/02
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2020115114
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591037476
【氏名又は名称】株式会社ILファーマパッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】天野 泰之
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦裕
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瑞紀
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191858(JP,A)
【文献】特開2018-052083(JP,A)
【文献】特開2019-065242(JP,A)
【文献】特開2000-356952(JP,A)
【文献】特開2018-089800(JP,A)
【文献】特開2018-159027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0223879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00-5/04
C09J 7/38
C09J 153/02
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製容器の容器本体に胴巻きに巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて前記容器本体をシュリンク包装するために用いられるラベルであって、
少なくとも1つの熱収縮性基材と、無機酸化物からなる透明蒸着膜と、粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体を含有
し、
前記トリブロック共重合体において、セグメントA1及びセグメントA2のガラス転移温度(T
g
)がいずれも90℃以上であり、かつ、前記セグメントBのガラス転移温度(T
g
)が-40℃以下である、粘着剤組成物を有す
る、ラベル。
【請求項2】
樹脂製容器の容器本体と、前記容器本体の取り出し口に着脱可能に装着される蓋部とにまたがって前記樹脂製容器の周方向に巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて樹脂製容器及び蓋部を封緘し、シュリンク包装するために用いられるラベルであって、
少なくとも1つの熱収縮性基材と、無機酸化物からなる透明蒸着膜と、粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体を含有
し、
前記トリブロック共重合体において、セグメントA1及びセグメントA2のガラス転移温度(T
g
)がいずれも90℃以上であり、かつ、前記セグメントBのガラス転移温度(T
g
)が-40℃以下である、粘着剤組成物を有す
る、ラベル。
【請求項3】
前記容器本体に胴巻きに、又は前記樹脂製容器の周方向に巻き付けられた前記ラベルは、前記粘着剤層により、全面にわたり接着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のラベル。
【請求項4】
前記トリブロック共重合体が、スチレン系トリブロック共重合体及びその水添物、並びにアクリル系トリブロック共重合体からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項5】
前記ラベルにおいて、前記粘着剤層の上に、前記透明蒸着膜と前記熱収縮性基材が順番に積層され、
前記熱収縮性基材の前記透明蒸着膜と接する面とは反対側の面に、印刷層が設けられていることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項6】
前記透明蒸着膜の厚さは1nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項7】
前記粘着剤組成物は、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、及び炭化水素系樹脂からなる群からから選ばれる1種以上の粘着性付与剤を含み、
前記粘着性付与剤の含有量は、前記トリブロック共重合体100質量部に対し、1質量部以上200質量部以下であることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項8】
前記粘着剤組成物は、可塑剤を含まないことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか1項に記載のラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルに関する。特に、医薬品又は食品等に対して好適に使用される低汚染性を目的とした熱収縮性ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱収縮性ラベルは、複雑な形状をした容器に対して密着性を高く維持した状態で包装できる等の理由から、食品、飲食品、化粧品、医薬品などのガラス製、合成樹脂製などの容器に対して広く用いられている。
【0003】
熱収縮性ラベルを用いて容器を包装する場合、容器の周側面に熱収縮性ラベルを巻き回して、この熱収縮性ラベルの左右両端を重ねて接合部を有する筒状ラベルを形成し、この筒状ラベルの外側から熱収縮をかけることにより、一般的に容器の周側面がシュリンク包装される。また、キャップで閉蓋された容器の上部からキャップにわたって円筒状の熱収縮性のフィルムを熱収縮させて容器の上部及びキャップに緊着させてキャップの部分(キャップ部分)を封緘する熱収縮性ラベルが知られている。熱収縮性ラベルは、運送中や展示されている間にキャップ部分が汚れたり、流通過程でキャップが開かれて内容物の改竄などが行われたりする危険性を防止し、バージンシール性を保証する目的で使用される。このようなシュリンク包装に用いられる熱収縮性ラベルは、表面に文字や模様等、所望の印刷が施される場合がある。
【0004】
近年、医薬品や食品を収めるための容器は、従来のガラス製容器から樹脂製容器に変わってきているが、このような樹脂製容器に、表面に文字や模様等、所望の印刷が施された熱収縮性ラベルを用いると、印刷層のインクに含まれる低分子量成分など不純物が樹脂製容器を透過し、内容物を汚染することが懸念されている。
【0005】
特許文献1には、水蒸気及び酸素に対するガスバリア性を有するバリアフィルムと、粘着剤層を備えた表示ラベル用粘着シートであって、粘着剤層、熱可塑性エラストマーを含有する粘着剤組成物の押出成形物である表示ラベル用粘着シートが開示されている。
特許文献2には、水蒸気及び酸素に対するガスバリア性を有するバリアフィルムと、熱収縮性を有するシュリンクフィルムとを接着剤層を介して積層してなる熱収縮性ラベルであって、バリアフィルムは、エチレン-ビニルアルコール系共重合体を含む材料からなり、バリアフィルムは、熱収縮性ラベルの最外層の少なくとも一方を構成することを特徴とする熱収縮性ラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-159027号公報
【文献】特開2018-89800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、医薬品などの分野では、品質管理に対する要求が非常に高く、樹脂製容器をシュリンク包装するためのラベルには、改竄防止性(バージンシール性)及び印刷層のインク成分による内容物を汚染防止の性能の他に、ラベルを樹脂製容器に接着するために使用するホットメルト接着剤や粘着剤等の接着剤による樹脂製容器の内容物の汚染防止、容器内への異物の混入や、内容物の変質を確認するための透明性が求められている。
【0008】
従来のラベルでは、これらの要求をすべて満たすものはなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、優れたバリア性及び透明性を有し、粘着剤層中の残留モノマーによる容器の汚染や糊残りが抑制されるラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、粘着剤層の上に無機酸化物の透明蒸着膜を設け、かつ、粘着剤層に用いる粘着剤組成物にトリブロック共重合体を含有させることで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、樹脂製容器の容器本体に胴巻きに巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて前記容器本体をシュリンク包装するために用いられるラベルであって、少なくとも1つの熱収縮性基材と、無機酸化物からなる透明蒸着膜と、粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層が、セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体を含有する、粘着剤組成物を有することを特徴とする、ラベルである。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、樹脂製容器の容器本体と、前記容器本体の取り出し口に着脱可能に装着される蓋部とにまたがって前記樹脂製容器の周方向に巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて樹脂製容器及び蓋部を封緘し、シュリンク包装するために用いられるラベルであって、少なくとも1つの熱収縮性基材と、無機酸化物からなる透明蒸着膜と、粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層が、セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体を含有する、粘着剤組成物を有することを特徴とする、ラベルである。
【0013】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のラベルであって、前記容器本体に胴巻きに、又は前記樹脂製容器の周方向に巻き付けられた前記ラベルは、前記粘着剤層により、全面にわたり接着されていることを特徴とするものである。
【0014】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のラベルであって、前記トリブロック共重合体において、セグメントA1及びセグメントA2のガラス転移温度(Tg)がいずれも90℃以上であり、かつ、前記セグメントBのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のラベルであって、前記トリブロック共重合体が、スチレン系トリブロック共重合体及びその水添物、並びにアクリル系トリブロック共重合体からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とするものである。
【0016】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載のラベルであって、前記ラベルにおいて、前記粘着剤層の上に、前記透明蒸着膜と前記熱収縮性基材が順番に積層され、前記熱収縮性基材の前記透明蒸着膜と接する面とは反対側の面に、印刷層が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載のラベルであって、前記透明蒸着膜の厚さは1nm以上1000nm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載のラベルであって、前記粘着剤組成物は、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、及び炭化水素系樹脂からなる群からから選ばれる1種以上の粘着性付与剤を含み、前記粘着性付与剤の含有量は、前記トリブロック共重合体100質量部に対し、1質量部以上200質量部以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載のラベルであって、前記粘着剤組成物は、可塑剤を含まないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
よって、本発明によれば、優れたバリア性及び透明性を有し、粘着剤層中の残留モノマーによる容器の汚染や糊残りが抑制されるラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)本発明のラベルが使用された容器の斜視図であり、(b)本発明の別態様のラベルが使用された容器の斜視図である。
【
図2】(a)本発明のラベルが使用された別態様の容器の側面図であり、(b)本発明の別態様のラベルが使用された別態様の容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0023】
<ラベル>
図1(a)は、本発明のラベルが使用された容器の斜視図である。本発明に係るラベル1は、樹脂製容器10の容器本体11に胴巻きに巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて容器本体11をシュリンク包装するために用いられる。これにより、運送中や展示されている間に容器本体11が汚れることを防止することができる。
また、本発明の別態様として
図1(b)に示すように、樹脂製容器10の容器本体11と、容器本体11の取り出し口に着脱可能に装着される蓋部12とにまたがって樹脂製容器10の周方向に巻き付けられ、収縮性ラベルを熱収縮させて樹脂製容器10及び蓋部12を封緘し、シュリンク包装するために用いられるラベル1であってもよい。これにより、ラベル1を取り除かないで樹脂製容器10の蓋部12を開けることができないので、樹脂製容器10の流通過程などで蓋部12の開封を防止し、内容物の改竄などが行われることを防止する。かつ、運送中や展示されている間に蓋部12が汚れることを防止する機能も果たす。
ラベル1には、必要に応じて、ミシン目や半切り溝等の切離し線(図示せず)が設けられていてもよい。切離し線を設けることで、容器本体11又は樹脂製容器10からラベル1を容易にきれいに切離し、開封することが可能となる。
【0024】
また、ラベル1は、容器本体11に胴巻きに、又は樹脂製容器10の周方向に巻き付けられ、後述する粘着剤層40により全面にわたり接着されていることが好ましい。これにより、樹脂製容器10の流通過程などでラベル1が剥がれにくく、優れた改竄防止性(バージンシール性)を有することができる。また、粘着剤層40により接着されている部分は、熱収縮が抑えられ、後述する透明蒸着膜30にクラックが入りにくく、熱収縮後も優れたバリア性と透明性が保たれる。なお、必要に応じて、粘着剤層40の表面の一部が印刷ニス等で糊殺し処理が施されていてもよい。これにより、容器本体11又は樹脂製容器10からラベル1を剥がす際に、剥がすきっかけが出来るため開封しやすくなる。
【0025】
また、本発明に係るラベル1は、
図2(a)及び
図2(b)に示すような注射器のシリンジ型の樹脂製容器10の場合も同様に、樹脂製容器10の容器本体11に胴巻きに巻き付けられるか、又は樹脂製容器10の容器本体11と、容器本体11の取り出し口に着脱可能に装着される蓋部12とにまたがって樹脂製容器10の周方向に巻き付けられ、いずれもシュリンク包装するために用いられる。
なお、
図1(b)や
図2(b)に示すように、ラベル1を開封しやすくするために、ラベル1は樹脂製容器10の容器本体11の取り出し口を一部又は全部覆うようにシュリンク包装してもよい。
樹脂製容器10としては、特に限定されず、例えば、食品、飲食品、医薬品などが挙げられる。本発明に係るラベル1は、特に品質管理が厳しい、点眼薬や点鼻薬、プレフィルドシリンジ等の医薬品の容器本体11又は容器本体11及び蓋部12をシュリンク包装するために好適に用いられる。
【0026】
図3は、本発明のラベル1の断面図である。本発明のラベル1は、少なくとも1つの熱収縮性基材20と、無機酸化物からなる透明蒸着膜30と、粘着剤層40と、を備える。また、本発明のラベル1において、粘着剤層40の上に、透明蒸着膜30と熱収縮性基材20が順番に積層され、熱収縮性基材20の透明蒸着膜30と接する面とは反対側の面に、印刷層(図示せず)が設けられていることが好ましい。本発明のラベル1は、無機酸化物からなる透明蒸着膜30が設けられていることにより、印刷層(図示せず)のインク成分による樹脂製容器10の内容物の汚染を防止することができる。
【0027】
(熱収縮性基材)
本発明のラベル1に用いる熱収縮性基材20の材料は、ラベル1が熱収縮性を発揮できる限り、特に限定されず、シュリンク包装用のフィルムとして一般的に使用されるフィルムを使用することができる。例えば、熱収縮性基材20の材料は、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の少なくとも1種が含まれていてよい。特に、熱収縮性基材20は、所望の熱収縮性を発揮し易いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種を含む材料からなることが好ましく、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れて印刷ラベル等に適しているという点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0028】
熱収縮性基材20は、単層であってもよく、又は多層であってもよい。
【0029】
本発明のラベル1では、熱収縮性基材20の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、熱収縮性基材20の厚さは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。熱収縮性基材20の厚さが上記数値範囲内であることで、ラベル1が所望の熱収縮性を発揮し易いものとなる。
【0030】
(透明蒸着膜)
無機酸化物からなる透明蒸着膜30は、無機酸化物を熱収縮性基材20の少なくとも一方の面側に形成される。
透明蒸着膜30に用いる無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を挙げることができるが、中でも酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましく、コスト及び汎用性の点から酸化アルミニウムがより好ましい。無機酸化物を用いることにより、透明性とバリア性が高い透明蒸着膜30となり、ラベル1が優れたバリア性及び透明性を有することができる。透明蒸着膜30は、単層であってもよく、又は多層であってもよい。また、透明蒸着膜30には、窒化珪素などの無機窒化物からなる膜、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウムなどの無機酸窒化物からなる膜が積層されていてもよい。
【0031】
透明蒸着膜30を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上述の無機酸化物を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材上に形成する方法が挙げられる。なお、あらかじめ剥離性の基材上に透明蒸着膜30を形成し、熱収縮性基材20に転写させることで形成してもよい。透明蒸着膜30を形成する方法としては、無機酸化物を直接蒸発により堆積する方法でもよいが、酸化雰囲気下での反応性蒸着による方法が生産性の上からより好ましい。酸化雰囲気とするためには、酸素ガス単独又は酸素ガスを不活性ガスで希釈した気体を真空蒸着機中に必要量導入すればよい。不活性ガスとはアルゴンやヘリウムなどの希ガスや窒素ガス及びこれらの混合ガスを指す。反応性蒸着は、こういった酸化雰囲気下で金属又は無機酸化物を蒸発源から蒸発させ、熱収縮性基材20近傍で酸化反応を起こさせ、熱収縮性基材20上に透明蒸着膜30を形成する手法により行われる。無機酸化物からなる透明蒸着膜30は、完全酸化物であることが最も好ましい。しかし、一般に完全酸化物を形成しようとすると、過剰に酸化された部分が形成される確率が高く、過剰酸化部分のガスバリア性能が劣り、全体として高いガスバリア性能を得ることは難しい。このため、多少金属成分が残った不完全酸化膜であってもよい。
【0032】
一例として、熱収縮性基材20上に、酸化アルミニウムの透明蒸着膜30を形成する方法を説明する。熱収縮性基材20を、フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させる。この時、アルミニウムを加熱蒸発させながら、蒸発した金属蒸気によって蒸着を行う。または、金属蒸気の存在する箇所に酸素ガスを供給し、アルミニウムを酸化させながら熱収縮性基材20に凝集堆積させ、酸化アルミニウムの透明蒸着膜30を形成し、巻き取る。この時のアルミニウムの蒸発量と供給酸素ガス量の比率を変更することで、透明蒸着膜30の透明性を変更することができる。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して巻き取る。この後、大気圧下、所定温度で所定期間放置してエージング処理を行うとバリア性及び透明性が安定化するので好ましい。エージング処理は、熱収縮性基材20の熱収縮による透明蒸着膜30の物性の低下を避けるため、大気圧下、30℃以上50℃未満の温度で1日以上行うことが好ましく、30℃以上45℃未満の温度で1日以上行うことがより好ましい。
【0033】
本発明のラベル1では、透明蒸着膜30の厚さは、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましい。また、透明蒸着膜30の厚さは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。透明蒸着膜30の厚さが1nm以上であることで、ラベル1は、優れたバリア性を発揮し、熱収縮性基材20の表面に印刷層がある場合に、印刷層のインク成分の樹脂製容器10内への浸入を防ぎ、容器の内容物の汚染を防止することができる。また、透明蒸着膜30の厚さが1000nm以下であることで、ラベル1の厚さが過度に厚くなることを抑制することができ、熱収縮性基材20を熱収縮させても、透明蒸着膜30にクラックが入りにくく、優れたバリア性を維持しながら、透明蒸着膜30の透明性が保たれる。
【0034】
(粘着剤層)
本発明のラベル1において、粘着剤層40は、セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体を含有する、粘着剤組成物から形成された層である。
【0035】
また、粘着剤層40は、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等を用いて粘着剤組成物を溶媒に溶解させた溶液を塗工し、乾燥により溶媒を除去する方法(溶液キャスト法)を用いて形成してもよく、ホットメルト塗工法、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー成形法、ラミネーション法等を用いて粘着剤組成物を加熱溶融して形成してもよい。
【0036】
上記のトリブロック共重合体としては、例えばスチレン系トリブロック共重合体やその水添物、アクリル系トリブロック共重合体を用いることができる。トリブロック共重合体は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良いが、中でもスチレン系トリブロック共重合体及びその水添物、並びにアクリル系トリブロック共重合体からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
スチレン系トリブロック共重合体やその水添物としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)や、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体・スチレン共重合体(SEBS)が好ましい。
【0037】
また、アクリル系トリブロック共重合体としては、好ましくはメタクリル酸エステル単位からなるセグメントA1及びセグメントA2とアクリル酸エステル単位からなるセグメントBを有する。このとき、セグメントA1及びセグメントA2の構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、セグメントA1及びセグメントA2の構成単位となるメタクリル酸エステルは、得られる粘着剤層40の、透明性、熱収縮性基材20を熱収縮させる時の耐熱性観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニルがより好ましい。
【0038】
アクリル系トリブロック共重合体のセグメントBの構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-アミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、セグメントBの構成単位となるメタクリル酸エステルは、得られる粘着剤層40の粘着特性を向上させる観点から、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸エステルがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、上記セグメントA1-セグメントB-セグメントA2のブロック構造を有するトリブロック共重合体において、セグメントA1及びセグメントA2のガラス転移温度(Tg)がいずれも90℃以上であり、かつ、セグメントBのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であることが好ましい。それぞれのセグメントのガラス転移温度(Tg)が上記の数値範囲内であることにより、粘着剤層40の粘着特性を最適な範囲に制御することが可能となる。
【0040】
上記のアクリル系トリブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、5万以上100万以下であることが好ましく、より好ましくは6万以上50万以下、更に好ましくは7万以上45万以下である。また、上記のスチレン系トリブロック共重合体やその水添物のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1万以上50万以下であることが好ましく、より好ましくは2万以上40万以下、更に好ましくは3万以上30万以下である。これにより、粘着剤層40が適度なタックを有し、樹脂製容器10に対して高い粘着力を発現し、かつ本発明のラベル1を剥がした時には糊残りが発生しにくくなる。したがって、本発明のラベル1は、取り扱い性が良好なものとなる。なお、本明細書において、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の値は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定された値を意味する。具体的には、GPC測定装置(東ソー社製「HLC-8220GPC」)を使用して、以下に示す条件にて行うものとする。
カラム:TSKgelGMHXL→TSKgelGMHXL→TSKgel2000HXL
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
試料濃度:1%(w/v)
【0041】
なお、上記粘着剤組成物は、上述したトリブロック共重合体以外の成分をさらに含有してもよい。当該成分としては、粘着性付与剤、カップリング剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、難燃剤又は帯電防止剤等が挙げられる。特に、上記粘着剤組成物は、粘着性付与剤を含有することが好ましく、上記粘着性付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、及び炭化水素系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。なお、粘着性付与剤としては、これらの樹脂を水素化した水素化樹脂を用いてもよい。粘着性付与剤の含有量は、粘着剤層40の粘着力、タック及び凝集力の観点から、トリブロック共重合体100質量部に対し、1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上180質量部以下であることがより好ましい。
本明細書において、粘着性付与剤とは、粘着剤層40の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーであり、上述のトリブロック共重合体とは区別されるものである。上述したトリブロック共重合体と共に、粘着性付与剤を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層40は、樹脂製容器10の容器本体11に対して、高い粘着力を発現させることができる。
【0042】
また、上記粘着剤組成物は可塑剤を含まないことが好ましい。可塑剤を含有しないことで、粘着剤層40から樹脂製容器10への可塑剤のブリードがなく、樹脂製容器10の内容物の汚染を防止できるとともに、かつ透明性に優れる粘着剤層40が得られる。
【0043】
粘着剤層40の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることが更に好ましい。粘着剤層40の厚さが5μm以上であることで、ラベル1が樹脂製容器10に対して優れた貼付性を発揮し易くなる。また、粘着剤層40の厚さが100μm以下であることで、熱収縮性基材20の熱収縮を妨げることなく、シュリンク包装することができる。また、粘着剤層40から樹脂製容器10への成分の移行をより低減させることができ、ラベル1を使用した際の樹脂製容器10の汚染を効果的に抑制することができる。
【0044】
本発明のラベル1は、全光線透過率(JIS K7361-1:1997に準拠して測定した値)が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。全光線透過率が80%以上であると、透明性が高く、樹脂性容器をシュリンク包装した状態であっても、ラベル1越しに樹脂製容器10の内容物の変質を確認することができる。かかる全光線透過率は、無機酸化物からなる透明蒸着膜30として、酸化珪素や酸化アルミニウムの蒸着膜を使用することにより、達成し易いものとなる。
【0045】
(剥離シート)
本発明のラベル1では、
図3に示すように、粘着剤層40の粘着面を樹脂製容器10に貼付するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着面に剥離シート50が積層されていてもよい。剥離シート50の構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、及びポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0046】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 ラベル
10 樹脂製容器
11 容器本体
12 蓋部
20 熱収縮性基材
30 透明蒸着膜
40 粘着剤層
50 剥離シート