(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】高塩濃度汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/147 20190101AFI20240516BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C02F11/147 ZAB
B01D21/01 107A
(21)【出願番号】P 2020124860
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米倉 温
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277600(JP,A)
【文献】特開2015-100763(JP,A)
【文献】特開2015-150534(JP,A)
【文献】特開2002-166299(JP,A)
【文献】特開2019-141789(JP,A)
【文献】国際公開第2020/027312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F1/52-1/56
B01D21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導度1000mS/m以上の高塩濃度汚泥に、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体
として、2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、3-アミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレートの有機酸及び無機酸の塩から選択される一種以上を含有する単量体あるいは単量体混合物を乳化重合して得た油中水型エマルジョンからなる一級アミノ基含有重合体を添加し凝集処理することを特徴とする汚泥の脱水方法。
一般式(1)
R
1は水素またはメチル基、Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2~3のアルキレン基またはアルコキシレン基、X
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記一級アミノ基含有重合体が、前記一般式(1)で表されるカチオン性単量体70~100モル%を含有する単量体混合物を乳化重合して得た油中水型エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【請求項3】
前記汚泥の
浮遊物質濃度1g当たりのアニオン度が0.1meq/
g以上であることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【請求項4】
前記一級アミノ基含有重合体の25℃における、0.2質量%水溶液粘度をAQV、0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度をSLVとすると、AQVとSLVの比が、10≦AQV/SLV<30
であることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集処理剤を使用する高塩濃度汚泥の脱水方法に関するものであり、詳しくは、凝集処理剤として油中水型エマルジョンからなる特定の構造を有する一級アミノ基含有重合体の凝集処理剤を電気伝導度が1000mS/m以上である高塩濃度汚泥に添加する汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市下水などの処理場において、下水から沈降させた初沈生汚泥、活性汚泥槽からの流出水から沈降させた余剰汚泥あるいは混合生汚泥といった有機性の汚泥に対して、凝集処理剤としてポリアクリルアミド(PAM)系高分子やポリアミジン系高分子を添加、脱水処理する汚泥の脱水方法が汎用されている。
しかし、汚泥の中には、塩濃度の高い、即ち、電気伝導度が高いものがあり、これら一般的な高分子凝集剤では十分な脱水処理効果が得られない場合がある。これは、高塩濃度溶液中では、PAM系高分子が糸鞠状に分子が丸まり、架橋吸着作用における高分子束と称される高分子液滴の結合力が低下する結果、汚泥粒子表面のアニオン性解離基とのイオン性コンプレックスの形成が抑制されることになり、凝集性が低下するためと考えられる。又、一級アミノ基を有するアミジン系水溶性高分子も高塩濃度では凝集効果が低下することが知られている。そのため、高塩濃度の有機汚泥に対して種々の凝集処理剤が提案されている。
例えば、特許文献1では、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドと2官能性単量体を含有する単量体を、連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合を行って得た重合物と、親水性界面活性剤の混合物である脱水剤を電気伝導度が1000mS/m以上である有機汚泥に適用する技術が開示されている。しかし、必ずしも安定して効率的な脱水ができない場合が有る。
特許文献2では、電気伝導度が100mS/m以上である高塩濃度の有機汚泥に対して、特定の単量体混合物水溶液を分散相、水に非混和性の有機液体を界面活性剤によって有機液体を連続相となるよう乳化重合したカチオン性または両性水性高分子の油中水型エマルジョン、あるいは油中水型エマルジョンの二種からなる凝集処理剤を添加することが開示されている。しかし、電気伝導度1000mS/m以上の高塩濃度汚泥においては、効果が発揮され難い。
そこで、1000mS/m以上の高塩濃度汚泥においても安定して脱水効率の高い凝集処理剤の開発が要望されている。
【0003】
【文献】特開平10-277600号公報
【文献】特開2015-100763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる高塩濃度の有機汚泥に対して凝集処理剤を添加し、効率が良い脱水処理を可能とする汚泥の脱水方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、以下に述べる発明に達した。即ち、油中水型エマルジョンからなる一級アミノ基含有重合体を電気伝導度が1000mS/m以上である高塩濃度の有機汚泥に添加する汚泥の脱水方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明における凝集処理剤は高塩濃度の有機汚泥に対して、特に電気伝導度が1000mS/m以上の汚泥に対して特効であり、従来の凝集処理剤を添加するよりも優れた脱水処理効果が達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における一級アミノ基含有重合体は、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体を必須として含有する単量体混合物を重合して得られる一級アミノ基含有重合体である。一般式(1)で表わされるカチオン性単量体の例としては、2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、3-アミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレート等の有機酸や無機酸の塩が挙げられる。これらの単量体は、通常、無機あるいは有機の酸塩の形でのみ存在が可能であり、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸塩等が挙げられる。これらのうち、硫酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩が好ましい。好ましいのは、2-アミノエチルアクリレート塩酸塩、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2-アミノエチルアクリレート硫酸塩、2-アミノエチルメタクリレート硫酸塩、2-アミノエチルアクリレートメタンスルホン酸塩、2-アミノエチルメタクリレートメタンスルホン酸塩、2-アミノエチルアクリレートパラトルエンスルホン酸塩、2-アミノエチルメタクリレートパラトルエンスルホン酸塩である。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、Aは酸素原子又はNH、Bは炭素数2~3のアルキレン基又はアルコキシレン基、X
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体は、単独で重合しても良く、他の単量体と共重合しても良い。例えば、非イオン性単量体の(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等が挙げられ、非イオン性の単量体のうちから一種又は二種以上と組み合わせ共重合することも可能である。最も好ましい非イオン性単量体の例としては、アクリルアミドである。又、アニオン性単量体のビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸あるいはマレイン酸等とも共重合可能である。更に三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体とも共重合可能である。三級アミノ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等である。又、四級アンモニウム基単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられる。更にジアリルジメチルアンモニウム塩化物等とも共重合可能である。これら四級アンモニウム基含有単量体と非イオン性単量体と本発明で使用する一般式(1)で表されるカチオン性単量体からなる三元共重合体も使用可能である。
【0009】
これら一級アミノ基含有重合体中の一般式(1)で表わされる一級アミノ基含有単量体のモル%としては、本発明における凝集処理剤の効果を最大限に発揮するには、好ましくは70~100モル%、より好ましくは80~100モル%である。両性の場合、アニオン性単量体のモル%としては、1~20モル%である。
【0010】
一級アミノ基含有重合体の製造は油中水型エマルジョン重合法により製造する。例えば、先ず、一般式(1)で表わされるカチオン性単量体、あるいは共重合する場合は、共重合する単量体を共存させた水溶液を調製し、pHを2.0~6.0に調節した後、窒素置換により反応系の酸素を除去し常法の油中水型エマルジョン重合法により製造する。ラジカル重合性開始剤を添加することによって重合を開始させ、重合体を製造することができる。そのため重合濃度としては、5~60質量%の範囲での実施が可能であり、好ましくは20~50質量%で行うのが適当である。又、反応の温度としては、10~100℃の範囲で行うことができる。
【0011】
重合の機構としては、ラジカル重合開始剤を使用した一般的なラジカル重合によって重合体を生成することができる。即ち開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、1、1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。これらの中で特に好ましい開始剤としては、水溶性のアゾ系開始剤である2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物等である。
【0012】
重合時に構造改質剤、すなわち高分子を構造変性する架橋性単量体を使用しても良い。この架橋性単量体は、単量体総量に対し質量で0.5~200ppmの範囲で存在させる。架橋性単量体の例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸-1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N-ビニル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシランなどがあるが、この場合の架橋剤としては、水溶性ポリビニル化合物がより好ましく、最も好ましいのはN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。又、ギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール、メタリルスルホン酸ナトリウム等の連鎖移動剤を併用することも架橋性を調節する手法として効果的である。添加率としては、単量体総量に対し0.001~1.0質量%、好ましくは0.01~0.1質量%存在させる。
【0013】
本発明における一級アミノ基含有重合体の重量平均分子量は、100万~600万であり、100万以下では凝集性能が不足し、600万より高くなると溶液粘度が高くなり過ぎ分散性が低下するので好ましくはない。200万~600万がより好ましく、250万~600万が更に好ましい。4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した塩水溶液粘度は、5mPa・s以上、70mPa・s以下の範囲である。8mPa・s以上、70mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上、70mPa・s以下が更に好ましい。
【0014】
本発明における一級アミノ基含有重合体は、25℃における0.2質量%水溶液粘度をAQV、水溶性高分子の0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度をSLVとすると、両方の比であるAQV/SLVが、10以上が好ましい。この数値は架橋の度合いを表すのに使用することができる。分岐が進行した場合や架橋型のイオン性水溶性高分子は、分子内で架橋しているために、水中においても分子が広がり難い性質を有し、直鎖型高分子に較べれば水中での広がりは小さいはずであるが、架橋度が増加するに従い、B型粘度計(回転粘度計の一種)に測定した場合の粘度は大きくなる。この原因はB型粘度計のローター(測定時の回転子)と溶液との摩擦かあるいは絡み合いによるものと推定されるが正確には不明である。一方、架橋型のイオン性水溶性高分子の塩水中の粘度は、架橋度が増加するに従い低下していく。架橋によって分子が収縮しているので、塩水の多量のイオンによってその影響をより大きく受けるものと考えられる。従ってこれらの理由によって二つの粘度測定値の比、AQV/SLVは、架橋度が高くなるに従い大きくなる(架橋がさらに進み水不溶性になった場合は、この関係は成り立たない)。本発明における凝集処理剤では、この値は10以上、30未満の範囲が好ましい。直鎖型水溶性高分子では、この値が10未満、架橋度が高い水溶性高分子では30以上を示す傾向にある。尚、AQVは、B型粘度計において2号ローター、30rpm(25℃)、SLVは、1号ローター、60rpm(25℃)で測定した値である。B型粘度計としては東京計器製B8M等が使用される。
【0015】
本発明における本発明における一級アミノ基含有重合体は、電気伝導度1000mS/m以上の高塩濃度の有機汚泥に対して適用される。高塩濃度の指標としては一般的に電気伝導度(JIS K0102)が使用されるが、電気伝導度が高い汚泥ではPAM系高分子凝集剤の効果が低下する。一方、本発明における本発明における一級アミノ基含有重合体は電気伝導度が1000mS/m以上の汚泥においても効果を発揮する。電気伝導度が高くなるほど、従来の凝集剤に比べて効果差が現れるので好ましくは2000mS/m以上である。しかし、汚泥性状によっては電気伝導度値だけでなく、汚泥中のアニオン性物質の量(アニオン度)が凝集処理剤の効果を阻害する場合がある。そこで、本発明における凝集処理剤は、アニオン度が0.1meq/g(対汚泥物質浮遊濃度質量%;SS)以上の汚泥に適用することが好ましい。より好ましくは0.15meq/g以上、より一層好ましくは0.2meq/g以上である。本出願人が鋭意検討した結果、電気伝導度が1000mS/m以上、かつアニオン度が0.1meq/g以上の汚泥において、一般的に使用されるポリアクリルアミド系水溶性高分子やアミジン系水溶性高分子に対する本発明における凝集処理剤の効果差がより大きくなり好ましい。
但し、一般的に汚泥の腐敗・発酵の指標として使用される、M-アルカリ度が、1000mg/L以上であると凝集処理剤の効果が不良となり好ましくはない。尚、Mアルカリ度は、汚泥中に含まれる炭酸塩、炭酸水素塩、又は水酸化物等のアルカリ成分に消費される塩酸量で測定した値であり、pH4.8まで中和するのに要した塩酸の量を、これと当量の炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度(mg/L)に換算して表示されたものである。
【0016】
本発明において、汚泥のアニオン度については、下記のコロイド滴定法に従い測定したものである。
(コロイド滴定法による汚泥のアニオン度の測定)
(1)300mLビーカーに汚泥5mLを採取し、これに純水175mLを加える。
(2)(1)に1/400N p-DADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物)溶液を20mL添加し、5分間、500rpmで攪拌する。
(3)(2)を遠沈管に移し、10分間、3000rpmで遠心分離する。
(4)(3)の上澄液100mLをコニカルビーカーに採り、0.1%トルイジンブルー溶液を数滴加え、攪拌しながら1/400N PVSK(ポリビニル硫酸カリウム)溶液をゆっくり(3~5mL/分程度)滴下する。
(5)滴定の終点は、青色から赤紫色に変わった点(数分間退色しない点)とし、この滴定量をa(mL)とする。
(6)同様に蒸留水についても空試験を行い、滴定量をb(mL)とする。
(7)次式により、アニオン度を求める。
アニオン度(meq/g)=-f(b-a)/(10×SS)
*fはPVSK溶液の力価(ファクター)、SSは汚泥の浮遊物質濃度(質量%)。
【0017】
本発明における一級アミノ基含有重合体の脱水性の向上は、高塩濃度の汚泥に対しても良好な凝集力を発揮することができる。一般的に使用される四級アンモニウム塩含有アクリル系高分子凝集剤では、高塩濃度溶液中では、塩類中の対イオンによりカチオン性基が中和され、高分子鎖がランダムコイル状となり汚泥粒子との接触が不良となり効果が低下する。一方、本発明における一級アミノ基含有重合体が有する一級アミンは水素結合力が高く親水性微粒子への吸着性が高い。
更に高カチオン性、分子量の調節、高分子の構造を最適化することにより高塩濃度の汚泥に対しても効率が良い脱水処理効果が可能となったと推測される。
【0018】
本発明における一級アミノ基含有重合体は水に溶解して添加対象物に添加する。一級アミノ基含有重合体を溶解する水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等が使用できる。これらが混合されていても差し支えない。本発明における一級アミノ基含有重合体を0.01~1.0質量%に溶解して対象物に添加する。更に水で二次希釈、三時希釈しても差し支えない。
【0019】
本発明における一級アミノ基含有重合体として適用可能な汚泥は、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水等の生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥及びこれらの混合物)であるが、これら汚泥に任意の濃度に水で希釈して添加される。汚泥に対する添加率は、汚泥種、脱水機種によっても異なるが、汚泥液量に対し1~1000ppmである。使用する脱水機の種類は、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円板型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等に対応できる。又、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、PAC、硫酸バンド等の無機系凝集剤と併用しても良い。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明における一級アミノ基含有重合体として、油中水型エマルジョン重合の常法により試料A及び試料Bを調製した。これらの組成、物性を表1に示す。又、凝集処理剤として汎用されているポリアクリルアミド系水溶性高分子試料1~8及びポリアミジン系水溶性高分子試料9を調製、用意した。これらの組成、物性を表2に示す。
【0022】
(表1)
形態:EM;油中水型エマルジョン
0.2質量%水溶液粘度(mPa・s);0.2質量%高分子水溶液をB型粘度計により測定(25℃)。
0.5質量%塩水溶液粘度(mPa・s);0.5質量%高分子水溶液に4質量%塩化ナトリウムを添加、完全溶解後にB型粘度計により測定(25℃)。
AQV;0.2質量%水溶液粘度(mPa・s)
SLV;0.5質量%塩水溶液粘度(mPa・s)
AQV/SLV;無次元
【0023】
(表2)
DMQ;アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
DMBZ;アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物
AAM;アクリルアミド、AAC;アクリル酸
形態:EM;油中水型エマルジョン、DR;塩水中分散液、P;粉末
0.2質量%水溶液粘度(mPa・s);0.2質量%高分子水溶液をB型粘度計により測定(25℃)。
0.5質量%塩水溶液粘度(mPa・s);0.5質量%高分子水溶液に4質量%塩化ナトリウムを添加、完全溶解後にB型粘度計により測定(25℃)。
AQV;0.2質量%水溶液粘度(mPa・s)
SLV;0.5質量%塩水溶液粘度(mPa・s)
AQV/SLV;無次元
【0024】
(実施例1)食品余剰汚泥(pH6.5、SS分15000mg/L、電気伝導度2820mS/m、VSS66.7質量%、VTS29.6質量%、M-アルカリ度249mg/L、アニオン度0.8meq/g)を用い、汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、前記表1の試料A 0.2質量%水溶解液をそれぞれ対汚泥液量200ppmあるいは250ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、ナイロン製濾布(#202)により濾過し、60秒後の濾液量を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0025】
(比較例1)実施例1と同じ汚泥を用い前記表2の凝集処理剤試料を用い同様な汚泥脱水試験を実施した。結果を表3に示す。
【0026】
【0027】
本発明における一級アミノ基含有重合体添加時では、脱水効果は良好であった。尚、試料Bについても同様な試験を実施し試料Aと同様な効果が得られた。一方、比較例では、殆どの一般的な汚泥脱水剤は凝集不良であり良好な脱水効果は得られなかった。
【0028】
(実施例2)化学余剰汚泥(pH6.9、SS分9872mg/L、電気伝導度2340mS/m、VSS50.2質量%、VTS30.7質量%、M-アルカリ度169mg/L、アニオン度0.4meq/g)を用い、汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、前記表1の試料A 0.2質量%水溶解液をそれぞれ対汚泥液量150ppm添加、CST測定装置において撹拌回転数1000rpmで30秒撹拌後、ナイロン製濾布(#202)により濾過し、60秒後の濾液量を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表4に示す。
【0029】
(比較例2)実施例2と同じ汚泥を用い前記表2の凝集処理剤試料を用い同様な汚泥脱水試験を実施した。尚、前記表2の凝集処理剤試料8と試料9のそれぞれ0.2質量%水溶液を質量比1:1で混合したものを用いた。これらの結果を表4に示す。
【0030】
【0031】
本発明における一級アミノ基含有重合体添加時では、比較例に対して脱水効果は良好であった。尚、試料Bについても同様な試験を実施し試料Aと同様な効果が得られた。
本発明における実施例では、ケーキ含水率が低下を示し電気伝導度1000mS/m以上の高塩濃度汚泥に対して、本発明における一級アミノ基含有重合体の効果が確認できた。