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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142618
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038232
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小宮 研一
(72)【発明者】
【氏名】新井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲仁
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049453(JP,A)
【文献】特開2008-164594(JP,A)
【文献】特開2019-158768(JP,A)
【文献】特開2015-121530(JP,A)
【文献】特表2009-504303(JP,A)
【文献】特開昭51-133080(JP,A)
【文献】特開2019-049452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0057366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルから磁性体を固定された被検出物を検出する検出装置であって、
前記サンプルを添付される基板を支持する設置部と、
第1の周波数を有する照射波と前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する照射波を前記基板に照射する照射部と、
前記基板からの反射波又は透過波の強度を検出する検出部と、
前記第1の周波数を有する照射波の反射波又は透過波の第1の強度と前記第2の周波数を有する照射波の反射波又は透過波の第2の強度とに基づいて感度を算出し、
前記感度に基づいてエラーを出力する、
プロセッサと、
を備える検出装置。
【請求項2】
基準感度を格納する記憶部を備え、
前記プロセッサは、前記感度と前記基準感度とが整合しない場合に前記エラーを出力する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記基準感度は、前記基板に前記被検出物が存在する場合における感度である、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1の強度と前記第2の強度との差を前記第1の周波数と前記第2の周波数との差で除算して前記感度を算出する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記被検出物は、有機物である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性ビーズなどの磁性体を固定した被検出物を基板に添付して被検出物を検出する検出装置が提供されている。そのような検出装置は、基板に電磁波を照射して基板からの反射波の強度を測定する。検出装置は、強度に基づいて被検出物を検出する。
【0003】
従来、検出装置の故障又は外乱等の影響によって照射する電磁波の強度などが変化してしまうと、被検出物の検出に誤りが生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-185552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するため、検出の誤りを防止することができる検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、サンプルから磁性体を固定された被検出物を検出する検出装置は、設置部と、照射部と、検出部と、プロセッサと、を備える。設置部は、前記サンプルを添付される基板を支持する。照射部は、第1の周波数を有する照射波と前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する照射波を前記基板に照射する。検出部は、前記基板からの反射波又は透過波の強度を検出する。プロセッサは、前記第1の周波数を有する照射波の反射波又は透過波の第1の強度と前記第2の周波数を有する照射波の反射波又は透過波の第2の強度とに基づいて感度を算出し、前記感度に基づいてエラーを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る検出装置の制御系を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る基板の構成例を概略的に示す上面図である。
図4図4は、実施形態に係る基板の構成例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る基板の反射率の例を示すグラフである。
図6図6は、実施形態に係る基板の反射率の例を示すグラフである。
図7図7は、実施形態に係る検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは適宜、設計変更することができる。
【0009】
実施形態に係る検出装置は、サンプルに含まれる大腸菌などの有機物(被検出物)を検出する。検出装置は、空隙が設けられた構造体を有する基板にサンプルを添付する。検出装置は、サンプルが添付されている基板に対して所定の周波数を有する電磁波を照射して基板からの反射波を検出する。検出装置は、反射波の強度に基づいて基板上に被検出物が存在するか否かを判定する。
【0010】
図1は、検出装置1の構成例を概略的に示す。図1が示すように、検出装置1は、電磁波発生部12、光学系13、ビーム径調整部14、ステージ16、光学系17、電磁波受信部18及び基板20などを備える。
【0011】
電磁波発生部12(照射部)は、後術するプロセッサ111の制御に従って基板20に電磁波(照射波)を照射する。電磁波発生部12は、印加される電圧に応じた周波数の電磁波を照射する。たとえば、電磁波発生部12は、数テラヘルツ程度の周波数の電磁波を照射する。たとえば、電磁波発生部12は、所定のバイアス電圧の印加によって所定の周波数で発振する共鳴トンネルダイオードなどから構成される。
【0012】
光学系13は、照射波の焦点を基板20上に合わせるレンズである。たとえば、光学系13は、複数のレンズから構成される。
【0013】
ビーム径調整部14は、基板20に照射される照射波の径を調整する。即ち、ビーム径調整部14は、基板20上において照射波が集光される領域を調整する。ビーム径調整部14は、照射波の径を所定の大きさに調整するものであってもよい。また、ビーム径調整部14は、プロセッサ111からの制御に従って照射波の径を調整するものであってもよい。
【0014】
ステージ16(設置部)は、基板20を支持する部材である。ステージ16は、所定の台に固定さている。ステージ16は、プロセッサ111からの制御に従って基板20を移動させる。たとえば、ステージ16は、プロセッサ111からの制御に従って移動する。ステージ16は、X軸方向(たとえば、図1の左右方向)、Y軸方向(たとえば、図1に対して鉛直方向)及びZ軸方向(たとえば、図1の上下方向)に基板20を移動させる。
【0015】
また、ステージ16は、プロセッサ111からの制御に従って所定の軸を中心軸として基板20を回転させるものであってもよい。
【0016】
光学系17は、基板20で反射した電磁波(反射波)の焦点を電磁波受信部18に合わせるためのレンズである。たとえば、光学系17は、複数のレンズから構成される。
【0017】
電磁波受信部18(検出部)は、反射波の強度を検出する。電磁波受信部18は、反射波の強度に応じた電圧に変換する。たとえば、電磁波受信部18は、所定のバイアス電圧の印加によってテラヘルツ帯域までの感度を有するショットキーバリアダイオードなどから構成される。また、電磁波受信部18は、ショットキーバリアダイオードからの電圧を増幅するアンプなどを備えてもよい。
【0018】
次に、検出装置1の制御系について説明する。
図2は、検出装置1の制御系を示すブロック図である。検出装置1は、電磁波発生部12、ステージ16、電磁波受信部18、プロセッサ111、メモリ112、アドレスデコーダ113、パターン発生部114、第1のD/Aコンバータ115、第2のD/Aコンバータ116、A/Dコンバータ117、モータドライバ118、第1のバイアスティ119、第2のバイアスティ120及びステージモータ121などを備える。
【0019】
アドレスデコーダ113は、プロセッサ111、メモリ112、パターン発生部114、第1のD/Aコンバータ115、第2のD/Aコンバータ116、A/Dコンバータ117及びモータドライバ118に接続する。第1のバイアスティ119は、電磁波発生部12、パターン発生部114及び第1のD/Aコンバータ115に接続する。第2のバイアスティ120は、電磁波受信部18及び第2のD/Aコンバータ116に接続する。A/Dコンバータ117は、電磁波受信部18及びパターン発生部114に接続する。モータドライバ118は、ステージモータ121に接続する。ステージモータ121は、ステージ16に接続する。
電磁波発生部12、ステージ16及び電磁波受信部18は、前述の通りである。
【0020】
プロセッサ111は、検出装置1全体の動作を制御する。たとえば、プロセッサ111は、ステージ16を制御して基板20の位置などを制御する。また、プロセッサ111は、電磁波発生部12に電磁波を照射させる。また、プロセッサ111は、電磁波受信部18が検出した反射波の強度に基づいて被検出物を検出する。
【0021】
たとえば、プロセッサ111は、CPUなどから構成される。また、プロセッサ111は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などから構成されるものであってもよい。また、プロセッサ111は、FPGA(Field Programmable Gate Array)などから構成されるものであってもよい。
【0022】
メモリ112(記憶部)は、種々のデータを格納する。たとえば、メモリ112は、ROM、RAM及びNVMとして機能する。
たとえば、メモリ112は、制御プログラム及び制御データなどを記憶する。制御プログラム及び制御データは、検出装置1の仕様に応じて予め組み込まれる。たとえば、制御プログラムは、検出装置1で実現する機能をサポートするプログラムなどである。
【0023】
また、メモリ112は、プロセッサ111の処理中のデータなどを一時的に格納する。また、メモリ112は、アプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びアプリケーションプログラムの実行結果などを格納してもよい。
【0024】
アドレスデコーダ113は、アドレスバスに従ってプロセッサ111からの制御信号を各部に供給する。たとえば、アドレスデコーダ113は、プロセッサ111からの制御信号が示すアドレスに基づいて、制御信号を供給する対象を決定する。
【0025】
パターン発生部114は、周期的な変調信号を生成する。パターン発生部114は、生成した変調信号をA/Dコンバータ117及び第1のバイアスティ119に供給する。パターン発生部114は、プロセッサ111からの設定値などに基づいて動作する。たとえば、パターン発生部114は、カウンタ又はタイマなどから構成される。
【0026】
第1のD/Aコンバータ115は、プロセッサ111からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。ここでは、第1のD/Aコンバータ115は、デジタル信号をアナログ信号に変換して第1のバイアスティ119に供給する。
【0027】
第2のD/Aコンバータ116は、プロセッサ111からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。ここでは、第2のD/Aコンバータ116は、プロセッサ111からのデジタル信号をアナログ信号に変換して第2のバイアスティ120に供給する。
【0028】
A/Dコンバータ117は、パターン発生部114からの変調信号を用いて、電磁波受信部18からの電圧をセンサ信号(デジタル信号)に変換する。ここでは、A/Dコンバータ117は、電磁波受信部18からの電圧をデジタル信号に変換してプロセッサ111に供給する。また、A/Dコンバータ117は、電磁波受信部18とダイオードを介して接続してもよい。
【0029】
モータドライバ118は、プロセッサ111からの制御に従ってステージモータ121を駆動する。たとえば、モータドライバ118は、ステージモータ121に電圧又はパルス信号などを供給する。
【0030】
ステージモータ121は、ステージ16を移動させるためのモータである。ステージモータ121は、モータドライバ118からの制御に従って駆動する。ステージモータ121は、ステージ16をX方向に移動させるモータ、Y方向に移動させるモータ及びZ方向に移動させるモータから構成されてもよい。また、ステージモータ121は、ステージ16を回転させるモータから構成されてもよい。
【0031】
第1のバイアスティ119は、第1のD/Aコンバータ115からのバイアス電圧にパターン発生部114からの変調信号を重畳する。第1のバイアスティ119は、変調信号を重畳したバイアス電圧を電磁波発生部12に供給する。
【0032】
第2のバイアスティ120は、第1のD/Aコンバータ115からのバイアス電圧を電磁波受信部18に供給する。
【0033】
なお、検出装置1は、図1及び図2が示すような構成の他に必要に応じた構成をさらに具備したり、検出装置1から特定の構成が除外されたりしてもよい。
【0034】
次に、基板20について説明する。図3は、基板20の上面図である。図3は、基板20を図3のF4-F4で切断した断面図である。
【0035】
図3及び図4が示すように、基板20は、基材21及び構造体22などから構成される。
【0036】
基材21は、たとえば、所定の大きさの矩形に形成される。基材21は、電磁波発生部12が放射する電磁波に対して変化を生じさせない素材から構成されるのが望ましい。即ち、基材21は、電磁波発生部12が照射する電磁波の周波数帯において透過性を有する素材から構成されることが望ましい。たとえば、基材21は、シリコンウエハなどから構成される。また、基材21は、ポリエチレンなどの有機材料から構成されてもよい。
【0037】
たとえば、基材の厚さは、100~800μmの範囲である。たとえば、基材21の厚さは、525μmである。
基材21の素材及び外寸は、特定の構成に限定されるものではない。
【0038】
構造体22は、基材21の所定の面に形成される。構造体22は、電磁波発生部12が照射する電磁波を反射する。構造体22は、反射率において周波数特性を有する。構造体22は、電磁波発生部12が照射する電磁波の周波数帯において反射性を有する導体であることが望ましい。
【0039】
たとえば、構造体22は、金又はアルミニウムなどの導電体から形成される。構造体22は、複数の層を備える構造であってもよい。たとえば、構造体22は、基材21との接着層としてクロム又はチタンなどの層を備えてもよい。
たとえば、構造体22の厚さは、0.1μから50μmの範囲である。たとえば、構造体22の厚さは、0.2μmである。
【0040】
構造体22は、複数の空隙23(周期構造体)を備える。構造体22は、所定の間隔で縦方向及び横方向に周期的に空隙23を備える。
【0041】
構造体22は、空隙23によって、相補型分割リング共振器を形成する。構造体22は、空隙23によってLCR(コイル、コンデンサ、抵抗)回路を形成する。構造体22は、LCR回路によって所定の共振周波数において共振特性を有する。
【0042】
空隙23は、環状構造である。空隙23は、環の一部が切断する構造である。即ち、空隙23は、C字型に形成される。たとえば、空隙23の外寸は、数十μmである。また、空隙23の幅(隙間の幅)は、数μmである。
【0043】
たとえば、構造体22は、空隙23によって数テラヘルツ帯において反射率のピーク又は極小を有する。
なお、構造体22が有する空隙23の大きさ、形状又は個数は、特定の構成に限定されるものではない。
【0044】
次に、検出装置1が実現する機能について説明する。検出装置1が実現する機能は、プロセッサ111がメモリ112などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0045】
ここでは、基板20の構造体22上には、サンプルが添付されているものとする。サンプルは、磁性ビーズ(磁性体)が固定された被検出物を含む(含み得る)液体である。添付されたサンプルは、加熱機構などによって乾燥しているものとする。
【0046】
まず、プロセッサ111は、第1の周波数(f1)を有する電磁波と、第1の周波数と異なる第2の周波数(f2)を有する電磁波とを用いて基板20からの反射波の強度を測定する機能を有する。
【0047】
たとえば、プロセッサ111は、ステージ16を用いて、電磁波発生部12からの照射波が照射される位置に基板20を移動させる。即ち、プロセッサ111は、モータドライバ118を通じてステージモータ121を駆動する。ステージ16は、ステージモータ121の駆動によって基板20を移動させる。
【0048】
なお、基板20のデフォルトの位置が、電磁波発生部12からの照射波が照射される位置であれば、プロセッサ111は、基板20を移動させなくともよい。
【0049】
基板20に移動させると、プロセッサ111は、電磁波発生部12に第1の周波数を有する照射波を照射させる。たとえば、プロセッサ111は、第1の周波数に対応するバイアス電圧の設定値をメモリ112などから取得する。設定値を取得すると、プロセッサ111は、取得された設定値を第1のD/Aコンバータ115に設定する。
【0050】
第1のD/Aコンバータ115は、プロセッサ111からの設定値に対応するバイアス電圧を第1のバイアスティ119に出力する。第1のバイアスティ119は、パターン発生部114からの信号が入力されると、第1のD/Aコンバータ115からのバイアス電圧を電磁波発生部12に出力する。電磁波発生部12は、第1のバイアスティ119からのバイアス電圧によって第1の周波数を有する照射波を照射する。
【0051】
電磁波発生部12に第1の周波数を有する照射波を基板20に照射させると、プロセッサ111は、電磁波受信部18を用いて基板20からの反射波の強度を取得する。たとえば、電磁波受信部18は、反射波の強度に対応する電圧をA/Dコンバータ117に出力する。A/Dコンバータ117は、電磁波受信部18からの電圧に従って反射波の強度を示すセンサ信号を生成する。A/Dコンバータ117は、生成されたセンサ信号をプロセッサ111へ送信する。プロセッサ111は、当該センサ信号を受信する。
【0052】
反射波の強度を取得すると、プロセッサ111は、当該強度を、第1の周波数を有する電磁波での反射強度(第1の反射強度、第1の強度)として取得する。
【0053】
第1の反射強度を取得すると、プロセッサ111は、電磁波発生部12に第2の周波数を有する照射波を照射させる。たとえば、プロセッサ111は、第2の周波数に対応するバイアス電圧の設定値をメモリ112などから取得する。設定値を取得すると、プロセッサ111は、取得された設定値を第1のD/Aコンバータ115に設定する。
【0054】
第1のD/Aコンバータ115は、プロセッサ111からの設定値に対応するバイアス電圧を第1のバイアスティ119に出力する。第1のバイアスティ119は、パターン発生部114からの信号が入力されると、第1のD/Aコンバータ115からのバイアス電圧を電磁波発生部12に出力する。電磁波発生部12は、第1のバイアスティ119からのバイアス電圧によって第2の周波数を有する照射波を照射する。
【0055】
電磁波発生部12に第2の周波数を有する照射波を基板20に照射させると、プロセッサ111は、電磁波受信部18を用いて基板20からの反射波の強度を取得する。たとえば、電磁波受信部18は、反射波の強度に対応する電圧をA/Dコンバータ117に出力する。A/Dコンバータ117は、電磁波受信部18からの電圧に従って反射波の強度を示すセンサ信号を生成する。A/Dコンバータ117は、生成されたセンサ信号をプロセッサ111へ送信する。プロセッサ111は、当該センサ信号を受信する。
【0056】
反射波の強度を取得すると、プロセッサ111は、当該強度を、第2の周波数を有する電磁波での反射強度(第2の反射強度、第2の強度)として取得する。
【0057】
また、プロセッサ111は、第1の反射強度及び第2の反射強度に基づいて感度を算出する機能を有する。
【0058】
感度は、周波数の変化に対する反射強度の変化を示すパラメータである。たとえば、感度は、反射強度のグラフの傾きである。
【0059】
プロセッサ111は、以下の式に沿って感度Xを算出する。
【0060】
感度X=(S12-S22)/(f1-f2)
ここで、S12は、第1の反射強度を示す。また、S22は、第2の反射強度を示す。
即ち、プロセッサ111は、第1の反射強度と第2の反射強度との差を第1の周波数と第2の周波数との差で除算して感度を算出する。
【0061】
また、プロセッサ111は、算出された感度に基づいてエラーを出力する機能を有する。
【0062】
ここでは、メモリ112は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在する場合における基板20の感度(基準感度)を予め格納する。
【0063】
基準感度は、以下の通り算出される。
図5は、照射波の周波数と基板の反射強度との関係を示すグラフである。図5では、横軸は、照射波の周波数を示す。また、縦軸は、反射強度を示す。
【0064】
グラフ31は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在しない場合における反射強度(基準強度)を示す。グラフ31が示すように、照射波の周波数がf1である場合、反射強度(第1の基準強度)は、S1である。また、照射波の周波数がf2である場合、反射強度(第2の基準強度)は、S2である。
【0065】
グラフ32は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在する場合における反射強度を示す。グラフ32が示すように、照射波の周波数がf1である場合、反射強度は、S11である。また、照射波の周波数がf2である場合、反射強度は、S21である。
【0066】
グラフ33は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在し照射波の強度などに異常が生じている場合における基板20の反射強度を示す。グラフ33が示すように、照射波の周波数がf1である場合、反射強度は、S12である。また、照射波の周波数がf2である場合、反射強度は、S22である。
【0067】
基準感度は、グラフ32におけるf1とf2との間の傾きである。
即ち、プロセッサ111は、以下の式に沿って基準感度Rを算出する。
【0068】
基準感度R=(S11-S21)/(f1-f2)
プロセッサ111は、算出された感度と基準感度とが一致(整合)するかを判定する。たとえば、プロセッサ111は、算出された感度と基準感度との差が所定の閾値以下であれば、両者が一致すると判定する。また、プロセッサ111は、算出された感度と基準感度との差が算出された感度又は基準感度に対して所定の比率以下である場合、両者が一致すると判定してもよい。
【0069】
両者が一致しない場合、プロセッサ111は、検出装置の故障又は外乱等の異常が生じていると判定する。異常が生じていると判定すると、プロセッサ111は、エラーを出力する。たとえば、プロセッサ111は、異常が生じていることを示すメッセージなどを表示部などに表示する。また、プロセッサ111は、異常が生じていることを示す信号を外部装置などに送信してもよい。
【0070】
また、プロセッサ111は、算出された感度と基準感度とが一致する場合、第1の反射強度及び第2の反射強度などに基づいて、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在するかを判定する機能を有する。
【0071】
ここでは、メモリ112は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在しない場合における基板20の反射強度を予め格納する。即ち、メモリ112は、第1の基準強度(ここでは、S1)及び第2の基準強度(ここでは、S2)を格納する。
【0072】
プロセッサ111は、第1の反射強度と第1の基準強度とが一致(整合)するかを判定する。たとえば、プロセッサ111は、第1の反射強度と第1の基準強度との差が所定の閾値以下であれば、両者が一致すると判定する。また、プロセッサ111は、第1の反射強度と第1の基準強度との差が第1の反射強度又は第1の基準強度に対して所定の比率以下である場合、両者が一致すると判定してもよい。
【0073】
また、プロセッサ111は、同様に、第2の反射強度と第2の基準強度とが一致(整合)するかを判定する。
【0074】
プロセッサ111は、第1の反射強度と第1の基準強度とが一致し、かつ、第2の反射強度と第2の基準強度とが一致する場合、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在しないと判定する。
【0075】
また、プロセッサ111は、第1の反射強度と第1の基準強度とが一致しない場合、又は、第2の反射強度と第2の基準強度とが一致しない場合、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在すると判定する。
【0076】
磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在するか否かを判定すると、プロセッサ111は、判定結果を提示する。たとえば、プロセッサ111は、判定結果を示すメッセージなどを表示部などに表示する。また、プロセッサ111は、判定結果を示す信号を外部装置に送信してもよい。
【0077】
なお、プロセッサ111は、第3の周波数f3、第4の周波数f4…第nの周波数fnにおいて、反射強度を測定してもよい。
【0078】
図6は、fnにおける反射強度を示すグラフである。図6では、横軸は、照射波の周波数を示す。また、縦軸は、反射強度を示す。
【0079】
図5と同様に、グラフ31は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板に存在しない場合における反射強度(基準強度)を示す。グラフ31が示すように、照射波の周波数がf1、f2…fnである場合、反射強度は、S1、S2…Snである。
【0080】
また、図5と同様に、グラフ32は、磁性ビーズが固定された被検出物が基板に存在する場合における反射強度を示す。グラフ32が示すように、照射波の周波数がf1、f2…fnである場合、反射強度は、S11、S21…Sn1である。
【0081】
この場合、メモリ112は、基準強度としてS1、S2…Snを予め格納する。
【0082】
プロセッサ111は、各周波数において測定された反射強度の何れも基準強度と一致する場合、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在しないと判定する。
【0083】
また、プロセッサ111は、各周波数において測定された反射強度の何れか1つが基準強度と一致しない場合、磁性ビーズが固定された被検出物が基板20に存在すると判定する。
【0084】
次に、検出装置1の動作例について説明する。
ここでは、ステージ16に、サンプルが添付されている基板20がセットされているものとする。
【0085】
まず、プロセッサ111は、ステージ16を移動させて照射波が照射される位置に基板20を移動させる(ACT11)。基板20を移動させると、プロセッサ111は、電磁波受信部18に印可するバイアス電圧に対応する設定値を第2のD/Aコンバータ116に設定する(ACT12)。
【0086】
設定値を第2のD/Aコンバータ116を設定すると、プロセッサ111は、所定の周波数(fn)に対応するバイアス電圧の設定値をメモリ112から取得する(ACT13)。
【0087】
設定値をメモリ112から取得すると、プロセッサ111は、取得された設定値を第1のD/Aコンバータ115に設定する(ACT14)。取得された設定値を第1のD/Aコンバータ115に設定すると、プロセッサ111は、所定の設定値をパターン発生部114に設定する(ACT15)。
【0088】
所定の設定値をパターン発生部114に設定すると、プロセッサ111は、パターン発生部114を駆動して電磁波発生部12に所定の周波数を有する照射波を照射させる(ACT16)。
【0089】
電磁波発生部12に所定の周波数を有する照射波を照射させると、プロセッサ111は、電磁波受信部18を用いて基板20からの反射波の強度(反射強度)を取得する(ACT17)。
【0090】
反射強度を取得すると、プロセッサ111は、取得された反射強度をメモリ112に格納する(ACT18)。
【0091】
取得された反射強度をメモリ112に格納すると、プロセッサ111は、電磁波発生部12に各周波数を有する照射波を照射させたかを判定する(ACT19)。即ち、プロセッサ111は、電磁波発生部12にf1及びf2の周波数を有する照射波を照射させたかを判定する。
【0092】
電磁波発生部12に各周波数を有する照射波を照射させていないと判定すると(ACT19、NO)、プロセッサ111は、ACT13に戻る。
【0093】
電磁波発生部12に各周波数を有する照射波を照射させたと判定すると(ACT19、YES)、プロセッサ111は、取得された反射強度などに基づいて感度を算出する(ACT20)。感度を算出すると、プロセッサ111は、算出された感度をメモリ112に格納する(ACT21)。
【0094】
算出された感度をメモリ112に格納すると、プロセッサ111は、算出された感度に基づいて異常が生じているかを判定する(ACT22)。
【0095】
異常が生じていないと判定すると(ACT22、NO)、プロセッサ111は、取得された反射強度などに基づいて基板20に被検出物が存在するかを判定する(ACT23)。
異常が生じていないと判定すると(ACT22、YES)、プロセッサ111は、エラーを出力する(ACT24)。
【0096】
基板20に被検出物が存在するかを判定した場合(ACT23)、又は、エラーを出力した場合(ACT24)、プロセッサ111は、動作を終了する。
【0097】
なお、プロセッサ111は、3つ以上の互いに異なる周波数における反射強度に基づいて感度を算出してもよい。また、プロセッサ111は、複数のパラメータから構成される感度を算出してもよい。この場合、基準感度は、感度に応じた複数のパラメータから構成されてもよい。
【0098】
また、プロセッサ111は、反射率に基づいて感度を算出してもよい。即ち、感度は、周波数の変化に対する反射率の変化を示すパラメータであってもよい。
また、電磁波受信部18は、基板20からの透過波の強度を取得するものであってもよい。
【0099】
以上のように構成された検出装置は、複数の周波数において基材からの反射波の強度を取得する。検出装置は、複数の強度から感度を算出する。検出装置は、感度に基づいて照射波の強度などに異常が生じているかを判定する。検出装置は、異常が生じている場合には、被検出部の検出を行わずにエラーを提示する。その結果、検出装置は、異常が生じたことによる検出の誤りを防止することができる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…検出装置、12…電磁波発生部、13…光学系、14…ビーム径調整部、16…ステージ、17…光学系、18…電磁波受信部、20…基板、21…基材、22…構造体、23…空隙、31…グラフ、32…グラフ、33…グラフ、111…プロセッサ、112…メモリ、113…アドレスデコーダ、114…パターン発生部、115…第1のD/Aコンバータ、116…第2のD/Aコンバータ、117…A/Dコンバータ、118…モータドライバ、119…第1のバイアスティ、120…第2のバイアスティ、121…ステージモータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7