IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユニ・トラストの特許一覧

特許7489074パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム
<>
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図1
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図2
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図3
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図4
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図5
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図6
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図7
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図8
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図9
  • 特許-パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】パレット用運搬装置及びパレット用運搬システム
(51)【国際特許分類】
   B62B 1/26 20060101AFI20240516BHJP
   B65D 19/42 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B62B1/26 B
B65D19/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023049118
(22)【出願日】2023-03-25
【審査請求日】2023-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522158513
【氏名又は名称】株式会社ユニ・トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【弁理士】
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】羽生 啓幸
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050832(US,A1)
【文献】米国特許第04735305(US,A)
【文献】特開2016-113283(JP,A)
【文献】特開平03-187475(JP,A)
【文献】特開昭61-021273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375920(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162624(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0028813(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0012225(US,A1)
【文献】米国特許第08979099(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第111456516(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/26
B65D 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の中心を通る十字状の補強リブが備えられ、該補強リブが前記底面の4箇所に略四角形の孔(33)を形成し、かつ側面に2つの貫通するフォーク差込み孔(32)を有しているパレット(30)に使用でき、前記フォーク差込み孔(32)に設置して移動させるパレット用運搬装置(1)であって、
台座(10)と、該台座の上方に配置されるフレーム(20)と、から構成され、
前記台座(10)は、
前記台座(10)の底面又は側面に取り付けられる駆動輪(12)又はクローラー(13)と、
前記駆動輪(12)又はクローラー(13)の駆動軸を回転させるモーター(16)と、
前記フレームを昇降させるジャッキ(11)と、
前記モーター(16)及び前記ジャッキ(11)の電源部(15)と、
前記モーター(16)及び前記ジャッキ(11)の入力部(14)と、
を備え、
前記駆動輪(12)又は前記クローラー(13)の転動方向は、前記台座(10)及び前記フレーム(20)の長手方向、かつ移動方向であり、
前記台座(10)及び前記フレーム(20)が、前記パレット(30)の前記フォーク差込み孔(32)を通過可能に構成され、
2台のパレット用運搬装置(1)を前記フォーク差込み孔(32)に設置し、前記駆動輪(12)又はクローラー(13)を前記孔(33)から突き出して、前記駆動輪(12)又はクローラー(13)を駆動させてパレット30を移動させることを特徴とするパレット用運搬装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のパレット用運搬装置(1)であって、前記ジャッキ(11)は、油圧ジャッキであることを特徴とするパレット用運搬装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパレット用運搬装置(1)であって、前記台座(10)及び/又は前記フレーム(20)は、前記パレット(30)の前記フォーク差込み孔(32)を貫通する長さに形成されていることを特徴とするパレット用運搬装置(1)。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパレット用運搬装置(1)と、遠隔操作装置(40)を備えたパレット用運搬システム(2)であって、
前記遠隔操作装置(40)は、電源部(41)と、入力部(42)と、該入力部(42)からの信号を制御する制御部(43)と、前記信号を前記パレット用運搬装置(1)に送信する送信部(44)と、から構成され、
前記パレット用運搬装置(1)は、更に、前記信号を受信する受信部(18)と、前記受信部(18)からの前記信号を受けて、前記モーター(16)と前記ジャッキ(11)の駆動を制御する制御部(17)と、を備えていることを特徴とするパレット用運搬システム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットに簡単に取り付けて移動させることができる電動のパレット用運搬装置とパレット用運搬システムに関するものである。特に、パレットのフォーク差込み孔に挿入して移動させるパレット用運搬装置とパレット用運搬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パレットに積載された荷物は、フォークリフトやハンドリフト等で倉庫に搬送されて保管され、あるいはトラックの荷台に積み込まれて搬送される。フォークリフト等で搬送又は積み込まれた、重量のある荷物が積載されたパレットを、倉庫や荷台の奥に移動させるとき又は手前に引き出すときに、フォークリフトや人力だけでは移動に困難が伴うことが多い。荷物は重量が1トンを超える場合も多く、荷物が載積されたパレットを手動で移動させることは困難である。この問題を解決するため、従来、パレットを容易に移動させる装置や台車が開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1にはパレットの下面側両端部にそれぞれ着脱自在に固定可能なパレットの搬送装置が開示されている。この発明によると、パレットに荷物を積載した状態で所定位置に移動させることができ、台車として使用でき、構造が簡単で、かつ、軽量であるため、安価に製造することができるとされている。
【0004】
特許文献2には、ボックスパレット、ポータブルラック、カゴ形パレット等のパレットを移動可能にする着脱式のパレット用台車装置が開示されている。この発明によると、パレットへの荷物の出し入れの障害物となることなく、台車体に対してパレットを堅牢に装着できるとされている。
【0005】
また、特許文献3には、パレット等に装着される運搬台車が開示されている。この運搬台車は、被運搬物を載置する載置台(例えばパレット)に装着される複数の分割台車を備えている。この発明によると、小型化、軽量化が可能であり、容易に持ち運ぶことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-328633号公報
【文献】特開2016-055882号公報
【文献】特開2013-163394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のパレットの搬送装置等は、パレットに着脱する際に、手動で道具や固定具を用いて着脱するため、手間がかかる。特に、重量のある荷物が積載されたパレットに、それらの搬送装置等を取り付けることに手間がかかり時間を要する。さらに、搬送装置等を取り付けたパレットを手動で運ぶことに労力を要する。
【0008】
そのため、重量のある荷物が積載されたパレットへの取り付けが簡単で、移動も容易なパレット用運搬装置が望まれる。特にパレットの移動を手動ではなく、電動で移動させることができる装置が望ましく、さらに遠隔で操作してパレットを移動させることができるシステムが望まれる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、パレットへの設置が簡単で、パレットを電動で移動させることができるパレット用運搬装置及びパレット用運搬システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、底面の中心を通る十字状の補強リブが備えられ、該補強リブが前記底面の4箇所に略四角形の孔(33)を形成し、かつ側面に2つの貫通するフォーク差込み孔(32)を有しているパレット(30)に使用でき、前記フォーク差込み孔(32)に設置して移動させるパレット用運搬装置(1)であって、台座(10)と、該台座の上方に配置されるフレーム(20)と、から構成され、前記台座(10)は、前記台座(10)の底面又は側面に取り付けられる駆動輪(12)又はクローラー(13)と、前記駆動輪(12)又はクローラー(13)の駆動軸を回転させるモーター(16)と、前記フレームを昇降させるジャッキ(11)と、前記モーター(16)及び前記ジャッキ(11)の電源部(15)と、前記モーター(16)及び前記ジャッキ(11)の入力部(14)と、を備え、前記駆動輪(12)又は前記クローラー(13)の転動方向は、前記台座(10)及び前記フレーム(20)の長手方向、かつ移動方向であり、前記台座(10)及び前記フレーム(20)が、前記パレット(30)の前記フォーク差込み孔(32)を通過可能に構成され、2台のパレット用運搬装置(1)を前記フォーク差込み孔(32)に設置し、前記駆動輪(12)又はクローラー(13)を前記孔(33)から突き出して、前記駆動輪(12)又はクローラー(13)を駆動させてパレット30を移動させることを特徴とするパレット用運搬装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパレット用運搬装置(1)であって、前記ジャッキ(11)は、油圧ジャッキであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のパレット用運搬装置(1)であって、前記台座(10)及び/又は前記フレーム(20)は、前記パレット(30)の前記フォーク差込み孔(32)を貫通する長さに形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のパレット用運搬装置(1)と、遠隔操作装置(40)を備えたパレット用運搬システム(2)であって、前記遠隔操作装置(40)は、電源部(41)と、入力部(42)と、該入力部(42)からの信号を制御する制御部(43)と、前記信号を前記パレット用運搬装置(1)に送信する送信部(44)と、から構成され、前記パレット用運搬装置(1)は、更に、前記信号を受信する受信部(18)と、前記受信部(18)からの前記信号を受けて、前記モーター(16)と前記ジャッキ(11)の駆動を制御する制御部(17)と、を備えていることを特徴とするパレット用運搬システム(2)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパレット用運搬装置は、パレットへの設置が簡単で、パレットを電動で移動させることができるため、労力を軽減することができる。パレット用運搬システムは、遠隔で操作して、効率的にパレットを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のパレット用運搬装置で使用可能なパレットの一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るパレットの模式図であり、(A)は平面図、(B)は底面図、(C)は側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るパレット用運搬装置の全体構成を示すブロック図である。
図4図3における駆動輪を備えたパレット用運搬装置がフォーク差込み孔に設置されている状態の内部構造を示す模式図であり、(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。
図5図3におけるクローラーを備えたパレット用運搬装置がフォーク差込み孔に設置されている状態の内部構造を示す模式図であり、(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。
図6図4に示すパレット用運搬装置の(A)は平面図、(B)は底面図である。
図7図4に示すパレット用運搬装置をパレットに設置した状態の(A)は平面図、(B)は底面図である。
図8図4に示すパレット用運搬装置をパレットに設置した状態の(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るパレット用運搬装置の動作の流れを示す説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係るパレット用運搬システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と略称する)を、図面に基づいて説明する。以下の図面において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。
【0014】
[パレット30]
本発明で使用するパレット30について図1図2を参照して説明する。図1は、本発明のパレット用運搬装置で運搬可能なパレット30の一例を示す模式図である。図2は、本発明の一実施例で使用するパレット30の模式図であり、(A)は平面図、(B)は底面図、(C)は側面図である。パレットは物流に用いる荷物を載せるための荷役台であり、平パレットの他に、ボックスパレット等、様々な種類が存在する。一般に、パレットは、運搬の際には台上に荷物を載せ、パレットの脚と脚の間(フォーク差込み孔)にフォークリフトやハンドリフトの爪を差し込んで持ち上げて移動される。
【0015】
本発明のパレット用運搬装置で運搬可能なパレット30は、図1(A)~(C)に示すように、側面に貫通するフォーク差込み孔32を有し、底面の全て又は一部が開口したパレット30である。本発明で使用することができないパレットは下が開口していない形状のパレットである。図1(A)のパレット30は、側面に貫通するフォーク差込み孔32を有し、底面が4箇所大きく開口している。図1(B)のパレット30は、上面が9カ所の複数の支柱で支えられており、底面は開口している(支柱以外の部分)。複数の支柱と複数の支柱との間がフォーク差込み孔32となる。図1(C)のパレット30は、簀子状で、上面に空隙を設けるように複数の板状部材からなり、3カ所の支柱(板状部材)で支えられている。底面は開口している(支柱以外の部分)。このパレット30の場合も支柱と支柱の間がフォーク差込み孔32となる。本発明のパレット用運搬装置1で運搬可能なパレット30は、これらの形状に限定されず、側面に貫通するフォーク差込み孔32を有し、底面の全て又は一部が開口したパレット30であれば、いかなる形状であっても使用することができる。
【0016】
本実施例では、図1(A)のような底面が4箇所大きく開口しているパレットの使用例を説明する。図2(A)の平面図に示すように、本実施例で使用するパレット30は正方形である。図2での図示を省略しているが、パレット本体31は、強度を確保するために互いに交差する複数の板状のリブで構成されおり、また、軽量化を図るため上下方向に貫通する空隙が複数設けられている。図2(B)の底面図に示すように、パレット本体31の底面の4箇所に略四角形の孔33が大きく開口している。パレット本体31の4側面は同一に形成されており、図2(C)の側面図に示すように、それぞれ2箇所ずつ貫通するフォーク差込み孔32を有している。本実施例のパレット30は、合成樹脂材で構成されている。
【0017】
本実施例のパレット本体31の寸法は、縦幅L1(あるいは横幅L1)が1100mm、高さH1が150mm、フォーク差込み孔32は、横幅X1が260mm、高さh1が90mm程度である。また、底面の4箇所の孔は、縦X2(又は横X2)が260mm程度の略正方形である。パレット本体31の寸法は、これらの値に限定されず、様々な寸法のパレットを使用できる。
【0018】
[パレット用運搬装置の構成]
本発明の一実施例に係るパレット用運搬装置1の構成を、図3~8を参照して説明する。図3は、本発明の一実施例に係るパレット用運搬装置の全体構成を示すブロック図である。図4は、駆動輪を備えたパレット用運搬装置がフォーク差込み孔に設置されている状態の内部構造を示す模式図であり、(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。図5は、クローラーを備えたパレット用運搬装置がフォーク差込み孔に設置されている状態の内部構造を示す模式図であり、(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。図6は、図4に示すパレット用運搬装置の(A)は平面図、(B)は底面図である。図7は、図4に示すパレット用運搬装置をパレットに設置した状態の(A)は平面図、(B)は底面図である。図8図4に示すパレット用運搬装置をパレットに設置した状態の(A)は収縮状態の側面図、(B)は伸長状態の側面図である。
【0019】
図3に示すように、本実施例のパレット用運搬装置1は、台座10と、パレット30の底面に接触するフレーム20と、から構成されている。また、台座10は、その底面又は側面に取り付けられる駆動輪12又はクローラー13と、駆動輪12又はクローラー13の駆動軸を回転させるモーター16と、フレーム20を支持して昇降させるジャッキ11と、モーター16及びジャッキ11の電源部15と入力部14と、を備えている。
【0020】
[台座10]
台座10は、ジャッキ11と、モーター16と、電源部15と、入力部14を載置する台であり、軽量かつ強度のある金属製(ステンレス、アルミニウム等)の薄い板、又は上が空いた筐体を使用する。本実施例では、図4~6に示すように、台座10は金属製の薄い板材である。また、台座10は、図6(B)の底面図に示すように、フォーク差込み孔32の形状に合わせて長方形に形成されている。
【0021】
台座10は、パレット30のフォーク差込み孔32に挿入するため、台座10の横幅X3が、フォーク差込み孔32の横幅X1の260mmよりも小さくする必要がある。また、台座10の長さL2はフォーク差込み孔32の長さ(図2の縦幅L1)と同程度でもよいが、台座10又はフレーム20もしくはその両方がそれよりも長く、フォーク差込み孔32を貫通する長さ、つまりパレット本体31の縦幅L1よりも長くなるように形成されることが好ましい。それにより、図7(A)、(B)に示すように、台座10がパレットの下に完全に収まらず、外部からパレット用運搬装置1を確認することができる。
【0022】
[フレーム20]
図4、5に示すように、パレット用運搬装置1のフレーム20は、台座10の上方に配置されている。フレーム20は、台座10と同様に軽量かつ強度のある金属製(ステンレス、アルミニウム等)の薄い板、又は下が空いた筐体を使用する。図4、5に示すように本実施例のフレーム20は、下が空いた筐体であり、台座10との間には空隙があり、外から入力部14(図示せず)を操作できる形状になっている。フレーム20が、このような形状であることで、ジャッキ11と、モーター16と、電源部15と、入力部14を保護でき、持ち運びが容易になる。
【0023】
フレーム20の下面はジャッキ11のラムシリンダ上面に支持され、ジャッキ11の駆動により上下方向(Z軸方向)に動かされる。フレーム20は、図4(A)と図5(A)に示す状態(収縮状態)から、図4(B)と図5(B)に示すパレット30の底面に接する状態(伸長状態)まで上方向に動かされる。フレーム20の寸法(横幅と縦幅)は、台座10と同程度でもよいが、台座10を覆うことができるように、台座10の寸法よりも少し大きいことが好ましい。また、台座10と同様に、外部からパレット用運搬装置1を確認することができるように、フォーク差込み孔32を貫通する長さに形成されることが好ましい。
【0024】
[駆動輪12又はクローラー13]
台座10の底面又は側面には、駆動輪12又はクローラー13が取り付けられている。。図4は、駆動輪を備えたパレット用運搬装置1を示し、図5は、クローラー13を備えたパレット用運搬装置1を示す。駆動輪12又はクローラー13は、駆動軸(図示せず)と連結されており、駆動軸を回転させるモーター16(図4、5で図示せず)の駆動によって始動する。図3に示すように、モーター16は、電源部15と連結具(図示せず)で連結されており、入力部14の入力によって起動される。
【0025】
駆動輪12はモーター16で回転できれば、いかなるものでもよいが、本実施例では重量のある荷物が積載されたパレット30を支えるため、金属製のローラー12を台座10の底面に付けて使用する。金属製のローラー12は、例えば径が45mm程度、長さが台座10の横幅X3よりも短い長さである(図6(B)参照)。図4に示すように、本実施例ではローラー12が台座10の前後の底面に2本ずつ取り付けられている。ローラー12の本数はこれに限定されず、何本でもよい。なお、本実施例では一方向に移動させるローラー12を使用しているが、多方向へ移動させる全方向ローラーを使用してもよい。
【0026】
図5に示すように、ローラー12の代わりにクローラー13を使用することもできる。クローラー13は、鉄製クローラーでもゴム製クローラーのどちらでもよいが、本実施例では、より軽量なゴム製クローラーを使用する。クローラー13はローラー12と比べ、同じ車体重量であれば、床への接地面の単位面積あたりに加わる力が分散され、多少の凹凸のある床でもキャタピラ自体が形状を保持し、高い走行能力を維持できる。ローラー12を使用するか、クローラー13を使用するかは、パレット30が載置されている床の強度や状態によって使い分ける。ローラー12は、比較的滑らかな床に使用でき、クローラー13は多少の凹凸のある床に使用できる。
【0027】
図5に示す例では、クローラー13が台座10の前後、左右の側面に1個ずつ、合計4個取り付けられている。クローラー13の個数はこれに限定されず、何個でもよい。また、クローラー13は、台座10の底面に取り付けてもよい。
【0028】
[ジャッキ11]
ジャッキ11は電動ジャッキであり、台座10に設置され、図示しない連結具で電源15と連結されている。また、ジャッキ11のラムシリンダの上面はフレーム20の底面と連結されており、使用者が入力部14を操作することによって、フレーム20を昇降させることができる(図4、5)。フレーム20は、パレット30の底面に接する状態(伸長状態)まで上方向に動かされる。
【0029】
ジャッキ11は、好ましくは電動の油圧ジャッキ11である。油圧ジャッキ11は、比較的小型の油圧ポンプで、大きな力を出すことができ、重量のあるパレット30を支持するフレーム20を昇降させることができる。油圧ジャッキ11では、一般に販売されている電動の油圧ジャッキを使用する。
【0030】
油圧ジャッキ11は、台座10に設置できる寸法で、フレーム20を支持した状態の高さH2と、駆動輪12又はクローラー13の高さを合わせた高さが、フォーク差込み孔32の高さh1以下になるような小型の油圧ジャッキ11が使用される(図4(A)、図5(A))。また、油圧ジャッキ11のラムシリンダが最大に伸びたとき(最大伸長)、台座10がフォーク差込み孔32の下面に接し、フレーム20がフォーク差込み孔32の上面に接するような油圧ジャッキ11を使用する(図4(B)、図5(B))。なお、一般に販売されている電動の油圧ジャッキでは高さが足りない場合には、足りない分の高さ調整部品(例えば金属板)をラムシリンダ上に追加して使用する。
【0031】
一般に油圧ジャッキ11の油圧シリンダにはいわゆる単動形と複動形のものが知られている。本発明の油圧ジャッキは、単動形と複動形のどちらの油圧シリンダを使用してもよいが、本実施例では、比較的狭い場所でも使用できるようにシリンダの最短全長が極力小さく軽量な単動形スプリング戻り型シリンダの油圧ジャッキを使用する。なお、油圧シリンダの作動油の出入口(ポート)と作動油のチューブ、作動源である油圧ポンプの図示は省略する。
【0032】
[入力部14]
入力部14は、オンとオフの切り替えができ、オンのときに電源部15から油圧ジャッキ11と、モーター16に電力を供給する。入力部14の入力手段は特に限定されないが、例えば、ボタン又はスイッチである。入力部14は、電源部15と、油圧ジャッキ11と、モーター16の装置毎に備えられてもよいし、まとめて1カ所に備えられてもよい。本実施例の入力部14は、操作しやすいように、1カ所にまとめて備えられている(図示せず)。使用者は入力部14を介して、油圧ジャッキ11を昇降させ、モーター16を起動してローラー12又はクローラー13の駆動軸を回転させる。
【0033】
[電源部15]
電源部15は、油圧ジャッキ11と、モーター16に電力を供給する。電源15は、いわゆる一次電池である乾電地を使用してもよいし、二次電池である充電式電池を使用してもよい。本実施例では、携帯電話やノートパソコン、モバイル機器などのバッテリーに用いられている薄型の充電式のリチウムポリマー電池を使用する。本実施例では、前述のように電源部15は台座10に載置される(図4、5)。
【0034】
[パレット用運搬装置1の動作]
以下、パレット用運搬装置1の動作について説明する。即ち、パレット用運搬装置1によるパレット30の移動について図4~9を用いて説明する。図9は、パレット用運搬装置1の動作の流れを示す説明図である。前述のように、重量のある荷物が積載されたパレット30を、倉庫や荷台の奥に移動させるとき又は手前に引き出すときに、フォークリフトや人力だけでは移動に労力を要する。しかし、パレット用運搬装置1を使用することでその労力を軽減することができる。以下、図9に示す各ステップ(工程)に沿って説明する。
【0035】
[ステップS11]
まず、パレット30の一対のフォーク差込み孔32,32に2台のパレット用運搬装置1,1を設置する。このとき、図4(A)、図5(A)、図7(B)に示すように、パレット用運搬装置1のローラー12又はクローラー13が、パレット本体31の底面の孔33(図2(B)参照)の上に位置するように設置する。使用者は入力部14を介してモーター16を起動し、ローラー12又はクローラー13を駆動して、フォーク差込み孔32にパレット用運搬装置1を設置してもよいし、手動で設置してもよい。なお、図7(B)においては、パレット用運搬装置1がローラー12を備えている例を示しているが、クローラー13を備えている場合に関しても同様である。
【0036】
[ステップS12]
次に、図4(B)、図5(B)、図8(B)に示すように、油圧ジャッキ11を起動してフレーム20を上昇させ、パレット30を持ち上げると同時にローラー12又はクローラー13をパレット30底面の孔33から突き出す。使用者は入力部14を介して、油圧ジャッキ11を上昇させる。より詳細には、油圧ジャッキ11のラムシリンダが最大に伸び、フレーム20を上昇させてフォーク差込み孔32の上面に接し、台座10がフォーク差込み孔32の下面に接することで、ローラー12又はクローラー13がパレット30底面の孔33から突き出されている。また、ローラー12又はクローラー13の突き出た高さ分だけパレット30が床から持ち上げられる。例えば、図4(B)に示すローラー12の突き出た高さは、全体の高さH3からフォーク差込み孔32の高さh1を引いた値である。
【0037】
[ステップS13]
ローラー12又はクローラー13をパレット30底面の孔33から突き出した後、ローラー12又はクローラー13を駆動させてパレット30を移動させる。使用者は入力部14を介してモーター16を起動し、ローラー12又はクローラー13の駆動軸を回転させる。そして、パレット30を、倉庫や荷台の奥又は手前の所定の位置に移動させた後、使用者は入力部14を介してモーター16を停止し、ローラー12又はクローラー13を止める。
【0038】
[ステップS14]
パレット30を所定の位置に移動させた後、油圧ジャッキ11を起動しフレーム20を下降させ、パレット30を床に着地させると同時にローラー12又はクローラー13をパレット30底面の孔33に引っ込める。使用者は入力部14を介して、油圧ジャッキ11を下降させる。より詳細には、油圧ジャッキ11のラムシリンダが最小に縮むことでフレーム20を下降させ、ローラー12又はクローラー13がパレット30底面の孔33に引っ込められ、同時に台座10がフォーク差込み孔32の下面から離れ、フレーム20がフォーク差込み孔32の上面から離れる(図4(A)、図5(A)、図8(A)参照)。
【0039】
[ステップS15]
最後に、パレット30のフォーク差込み孔32からパレット用運搬装置1を取り出す。使用者は入力部14を介してモーター16を起動し、ローラー12又はクローラー13を駆動して、フォーク差込み孔32からパレット用運搬装置1を取り出してもよいし、手動で取り出してもよい。以上で、パレット用運搬装置1によってパレット30を移動させる一連の動作が完了する。
【0040】
[パレット用運搬システム2の構成]
パレット用運搬システム2の構成について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の一実施例に係るパレット用運搬システム2の全体構成を示すブロック図である。パレット用運搬システム2は、前述のパレット用運搬装置1と、遠隔操作装置40を備えている。図10に示すように、遠隔操作装置(リモートコントローラー)40は、電源部41と、入力部42と、制御部43と、送信部44と、から構成される。
【0041】
電源部41は、遠隔操作装置40の各構成部に電力を供給する。電源部41は、パレット用運搬装置1の電源部15と同様にいわゆる一次電池である乾電地を使用してもよいし、二次電池である充電式電池を使用してもよい。
【0042】
入力部42はオンとオフの切り替えができ、オンのときに電源部41から制御部43を介して送信部44に電力が供給される。入力部42の入力手段は特に限定されないが、例えば、ボタン又はスイッチ、操作レバーである。入力部42には、油圧ジャッキ11の駆動を操作する操作部と、モーター16の駆動を操作する操作部の2種類あることが好ましい。それにより、使用者は入力部42を介して油圧ジャッキ11の操作と、モーター16の操作を個別に行うことができ、制御しやすくなる。
【0043】
制御部43は、入力部42からの信号(油圧ジャッキ11とモーター16の駆動の信号)に基づいて送信部44を制御する。送信部44(送信回路)は、制御部43からの信号を介してパレット用運搬装置1の受信部18(受信回路)に向けて送信する。
【0044】
パレット用運搬装置1は、前述の構成部に加え、遠隔操作装置40の送信部44から送信される信号を受信する受信部18、この受信部18から送られてくる信号に基づいて油圧ジャッキ11とモーター16の駆動を制御する制御部17を備えている。
【0045】
本実施例では図10に示すように、1台の遠隔操作装置40と1台のパレット用運搬装置1が対応している。本実施例の場合、パレット用運搬装置1の台数と同じ台数の遠隔操作装置40が必要であり、どの遠隔操作装置40がどのパレット用運搬装置1に対応しているか確認する方法が必要である。例えば、パレット用運搬装置1を識別する番号を付け、その番号に対応して遠隔操作装置40に同じ番号を付けて識別してもよい。また、パレット用運搬装置1にライトを取り付けて、遠隔操作装置40を使用する際にボタン等を押すと、対応するパレット用運搬装置1のライトが点灯するような構成としてもよい。パレット用運搬装置1を識別する方法はこれらに限定されず、いかなる方法でもよい。また、複数台のパレット用運搬装置1と遠隔操作装置40は磁石等でくっ付く構成としてもよい。それにより、運搬時や格納時の取り扱いが容易になる。
【0046】
さらに、1台の遠隔操作装置40と複数台のパレット用運搬装置1が対応する構成としてもよい。この場合、遠隔操作装置40の入力部42に、どのパレット用運搬装置1を操作するか識別する手段が必要となる。このような構成とすることで、使用者は1台の遠隔操作装置40で、複数台のパレット用運搬装置1を操作できるため、使用者の負担を減らすことができる。また、遠隔操作装置40の台数を減らすことができるため、運搬時や格納時の取り扱いが容易になる。
【0047】
[パレット用運搬システム2の動作]
パレット用運搬システム2は、以上のように構成されているため、使用者は、遠隔操作装置40の入力部42を介してパレット用運搬装置1の油圧ジャッキ11とモーター16を遠隔的に駆動させることができる。すなわち、図9に示す各ステップ(工程)を、遠隔操作装置40を使用して遠隔的に実施することができる。
【0048】
図9のステップS11で、パレット30のフォーク差込み孔32にパレット用運搬装置1の設置する際には、遠隔操作装置40の入力部42を操作してパレット用運搬装置1のモーター16を遠隔的に駆動して移動させ設置できる。次にステップS12で、遠隔操作装置40の入力部42を操作して油圧ジャッキ11を起動してフレーム20を上昇させ、パレット30を持ち上げると同時にローラー12又はクローラー13をパレット30底面の孔33から突き出す。次に、ステップS13で、遠隔操作装置40の入力部42を操作してローラー12又はクローラー13のモーター16を起動させパレット30を移動させる。次いでステップS14で、遠隔操作装置40の入力部42を操作して、油圧ジャッキ11を起動しフレーム20を下降させ、パレット30を床に着地させると同時にローラー12又はクローラー13をパレット30底面の孔33に引っ込める。最後にステップS15で、遠隔操作装置40の入力部42を操作してパレット30のフォーク差込み孔32からパレット用運搬装置1を取り出す。以上で、パレット用運搬システム2によるパレット30を移動させる一連の動作が完了する。
【0049】
パレット用運搬システム2を使用することにより、例えばトラック荷台の奥側のパレット30を手動ではなく遠隔的に移動させることができ、作業性の効率化が図れる。通常、ハンドリフト等では取っ手の部分が妨害して奥側のパレットには移動できないが、遠隔操作が可能なパレット用運搬システム2では、妨害する箇所がないため、容易に移動させることができる。また、パレット用運搬装置1は持ち運びが容易にできるため、トラック荷台や入出庫口に置いても場所を取らず運搬の妨げにならないため、設置が容易である。また、トラック荷台等にパレット用運搬装置1の充電装置を設置すれば、充電も容易にでき、繰り返しパレット用運搬装置1を使用できるため、効率的である。
【0050】
以上説明した様に、本発明のパレット用運搬装置は、パレットへの設置が簡単で、パレットを電動で移動させることができるため、労力を大幅に軽減できる。また、パレット用運搬システムは、遠隔で操作して効率的にパレットを移動させることができる。それにより、例えば、力の弱い女性や高齢者でも容易にパレットを移動させることができ、そのような人たちが、新たな仕事の機会を得ることができる。
【0051】
なお、上述したパレット用運搬装置とパレット用運搬システムは一例であり、その構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。例えば、上述した実施例では、1台のパレットを運ぶ際に2台のパレット用運搬装置を使用したが、パレットの大きさや構成によっては、1台又は3台以上のパレット用運搬装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…パレット用運搬装置、2…パレット用運搬システム、10…台座、11…ジャッキ(油圧ジャッキ)、12…駆動輪(ローラー)、13…クローラー、14…入力部、15…電源部、16…モーター、17…制御部、18…受信部、20…フレーム、30…パレット、31…パレット本体、32…フォーク差込み孔、33…底面の孔、40…遠隔操作装置、41…電源部、42…入力部、43…制御部、44…送信部。

【要約】
【課題】パレットへの設置が簡単で、パレットを電動で移動させることができるパレット用運搬装置及びパレット用運搬システムを提供する。
【解決手段】側面に貫通するフォーク差込み孔32を有し、底面の全て又は一部が開口したパレット30に使用され、フォーク差込み孔32に設置して移動させるパレット用運搬装置1であって、台座10と、該台座10の上方に配置されるフレーム20と、から構成され、台座10は、台座10の底面又は側面に取り付けられる駆動輪12又はクローラー13と、駆動輪12又はクローラー13の駆動軸を回転させるモーター16と、フレーム20を昇降させるジャッキ11と、モーター16及びジャッキ11の電源部15と、モーター16及びジャッキ11の入力部14と、を備えている。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10