(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ライニング工法に用いる一対のアダプター
(51)【国際特許分類】
F16L 55/18 20060101AFI20240516BHJP
F16L 58/02 20060101ALI20240516BHJP
E03B 1/04 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F16L55/18 Z
F16L58/02
E03B1/04
(21)【出願番号】P 2023195541
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512158468
【氏名又は名称】ニッポン・リニューアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀明
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特許第5796920(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3198936(JP,U)
【文献】中国実用新案第214368557(CN,U)
【文献】特開2008-025859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0221137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0284530(US,A1)
【文献】米国特許第03144049(US,A)
【文献】特開昭60-012178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/18
F16L 58/02
E03B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏水の原因となるピンホールが開いた給湯銅管にライニング工法を施工する際に、前記給湯銅管の両端の各々にコンプレッサーを接続するための一対のアダプターであって、
前記一対のアダプターは、それぞれ、
上流端に前記コンプレッサーが接続されると共に下流端に前記給湯銅管が接続され、前記コンプレッサーから前記給湯銅管に圧縮した気体を流し込む気体供給経路と、
前記気体供給経路に合流するように設けられ、前記気体供給経路に、ブロックボールの群、及び
内径15mm又は20mmの前記給湯銅管20m当たり100ml以上300ml以下の水を供給するボール供給経路と、
開閉弁を有し、前記気体供給経路から分岐するように設けられ、前記開閉弁を開の状態にして前記給湯銅管の中の気体を排出する排気経路と、を備えていることを特徴とする
ライニング工法に用いる一対のアダプター。
【請求項2】
前記一対のアダプターは、それぞれ
、
前記排気経路の中に設けられ、前記給湯銅管の中から気体と共に前記ブロックボールが排出されることを防止するフィルターと、
前記排気経路における前記フィルターより上流から分岐するように設けられ、前記排気経路を開放した時にブロックボールを回収するブロックボール回収部と、を備えていることを特徴とする
請求項1に記載のライニング工法に用いる一対のアダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水した給湯銅管の配管を再生復旧させるライニング工法に用いる一対のアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、漏水の原因となるピンホールが開いた配管に施工するライニング工法が開示されている。このライニング工法は、シリコーン製のブロックボールの群を、圧縮した気体と共に配管内に流し込み、ブロックボールでピンホールを塞ぐ工程と、その後に、配管内に塗料を流し込み、配管の内壁に塗膜を形成する工程と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のライニング工法では、ブロックボールがピンホールに嵌り込むまでに時間を要するため、場合によっては、ライニング工法の施工に丸一日かかることがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ライニング工法の施工時間を短縮させるライニング工法に用いる一対のアダプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、漏水の原因となるピンホールが開いた給湯銅管にライニング工法を施工する際に、前記給湯銅管の両端の各々にコンプレッサーを接続するための一対のアダプターであって、前記一対のアダプターは、それぞれ、上流端に前記コンプレッサーが接続されると共に下流端に前記給湯銅管が接続され、前記コンプレッサーから前記給湯銅管に圧縮した気体を流し込む気体供給経路と、前記気体供給経路に合流するように設けられ、前記気体供給経路に、ブロックボールの群、及び内径15mm又は20mmの前記給湯銅管20m当たり100ml以上300ml以下の水を供給するボール供給経路と、開閉弁を有し、前記気体供給経路から分岐するように設けられ、前記開閉弁を開の状態にして前記給湯銅管の中の気体を排出する排気経路と、を備えていることを特徴とするライニング工法に用いる一対のアダプターである。
【0007】
本発明によれば、ライニング工法において、給湯銅管の中の圧縮された気体は、水と共にピンホールから排出される。これにより、給湯銅管の中に、ピンホールに向けた気流及び水流が生じる。結果、ブロックボールは、給湯銅管の中に生じた水流に乗ってピンホールに到達して、当該ピンホールを塞ぐ。
【0008】
(2)本発明はまた、前記一対のアダプターは、それぞれ、前記排気経路の中に設けられ、前記給湯銅管の中から気体と共に前記ブロックボールが排出されることを防止するフィルターと、前記排気経路における前記フィルターより上流から分岐するように設けられ、前記排気経路を開放した時にブロックボールを回収するブロックボール回収部と、を備えていることを特徴とする上記(1)に記載のライニング工法に用いる一対のアダプターである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記(1)及び(2)に記載のライニング工法に用いる一対のアダプターによれば、ライニング工法の施工時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ライニング工法を施工する給湯銅管を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るライニング工法に用いるアダプターを示す概略図である。
【
図3】ライニング工法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、ライニング工法、及び本発明の実施形態に係るライニング工法に用いる一対のアダプターについて詳細に説明する。
【0012】
まず、
図1を用いて、ライニング工法を施工する給湯銅管1について説明する。
図1は、ライニング工法を施工する給湯銅管1を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、ライニング工法を施工する給湯銅管1は、マンション等の建物内に配置された複数の給湯銅管11,12,13,14,15から構成される。
【0014】
給湯銅管11は、給湯器21から分岐点16まで延びており、分岐点16において給湯銅管12及び給湯銅管13の双方に接続されている。
【0015】
給湯銅管12は、分岐点16から分岐点17まで延びており、分岐点16において給湯銅管11及び給湯銅管13の双方に接続されていると共に、分岐点17において給湯銅管14及び給湯銅管15の双方に接続されている。
【0016】
給湯銅管13は、分岐点16からキッチンの蛇口22まで延びており、分岐点16において給湯銅管11及び給湯銅管12の双方に接続されている。
【0017】
給湯銅管14は、分岐点17から洗面台の蛇口23まで延びており、分岐点17において給湯銅管12及び給湯銅管15の双方に接続されている。
【0018】
給湯銅管15は、分岐点17から浴室の蛇口24まで延びており、分岐点17において給湯銅管12及び給湯銅管14の双方に接続されている。
【0019】
次に、
図2を用いて、ライニング工法におけるブロック工程で用いるアダプター3について説明する。
図2は、ライニング工法に用いるアダプター3を示す概略図である。
【0020】
アダプター3は、コンプレッサーCを給湯銅管1に接続するための機器である。このアダプター3は、給湯銅管1の両端の各々に一つずつ取り付けられる。すなわち、一対のアダプター3は、給湯銅管1にライニング工法を施工する際に、給湯銅管1の両端の各々にコンプレッサーCを接続するためのものである。例えば、アダプター3は、給湯器21(
図1参照)の外された給湯銅管11(
図1参照)、及び浴室の蛇口24(
図1参照)の外された給湯銅管15(
図1参照)の各々に一つずつ取り付けられる。
【0021】
具体的に、アダプター3は、気体供給経路31と、ボール供給経路32と、排気経路33と、フィルター34と、ボール回収部35と、圧力計Mと、複数の開閉弁Vと、を備えている。
【0022】
気体供給経路31は、その上流端にコンプレッサーCが接続されると共に、その下流端に給湯銅管1が接続される。この気体供給経路31は、圧縮した気体(例えば、空気)を給湯銅管1の中に流し込む。
【0023】
ボール供給経路32は、気体供給経路31に合流するように設けられ、気体供給経路31に、ブロックボールの群、及びブロックボールに浮力を生じさせる量の水を供給する。
【0024】
排気経路33は、開閉弁Vを有し、気体供給経路31から分岐するように設けられ、給湯銅管1の中の気圧の調整時、又はブロック工程S10(
図3参照)の後に、開閉弁Vを開の状態にして当該排気経路33を開放することで、給湯銅管1の中の気体を排出する。
【0025】
フィルター34は、排気経路33の中に設けられ、給湯銅管1の中から気体と共にブロックボールが排出されることを防止する。
【0026】
ボール回収部35は、排気経路33におけるフィルター34より上流から分岐するように設けられ、排気経路33を開放した時にブロックボールを回収する。このボール回収部35の先端には、開閉可能な蓋Lが取り付けられている。
【0027】
圧力計Mは、気体供給経路31における下流に設けられ、気体供給経路31及び給湯銅管1の中の気圧の確認を可能にしている。
【0028】
複数の開閉弁Vは、気体供給経路31、ボール供給経路32、及び排気経路33のそれぞれに設けられ、開又は閉の状態で用いられる。
【0029】
次に、
図3を用いて、ライニング工法の流れを説明する。
図3は、ライニング工法の流れを示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すライニング工法は、漏水の原因となるピンホールが開いた給湯銅管1(
図1参照)に施工する工法である。このライニング工法は、ブロック工程S10、ライニング工程S20の順に行う。また、ライニング工法を行う場合、事前に、給湯銅管1(
図1参照)から給湯器21(
図1参照)、キッチンの蛇口22(
図1参照)、洗面台の蛇口23(
図1参照)、及び浴室の蛇口24(
図1参照)が外される。
【0031】
ブロック工程S10を行う場合、事前に、給湯銅管1(
図1参照)の両端(例えば、給湯器21(
図1参照)の外された給湯銅管11(
図1参照)、及び浴室の蛇口24(
図1参照)の外された給湯銅管15(
図1参照))の各々に、アダプター3(
図2参照)を介してコンプレッサーC(
図2参照)を接続しておくと共に、それ以外(例えば、キッチンの蛇口22の外された給湯銅管13、及び洗面台の蛇口23の外された給湯銅管14)の各々を閉じておく。
【0032】
ブロック工程S10は、水を抜いた給湯銅管1(
図1参照)の中に、ブロックボールの群(複数のブロックボール)、及びブロックボールに浮力を生じさせる量の水を入れてから、圧縮した気体を流し込み、ブロックボールでピンホールを塞ぐ工程である。
【0033】
なお、ブロックボールは、シリコーン製で断面が真円となる球体からなり、適度な比重と適度な弾力(硬度)を有する。ブロックボールの比重は、コルクより大きい。ブロックボールの硬度は、低硬度であることが好ましく、具体的には、JISK6253準拠のタイプAデュロメーターによって測定される硬さが6°以上20°以下であることが好ましい。ブロックボールの詳細は、特許第5796920号公報を参照されたい。
【0034】
具体的には、まず、ブロック工程S10では、給湯銅管1(
図1参照)の両端のいずれか一方に接続されているアダプター3(
図2参照)のボール供給経路32(
図2参照)から気体供給経路31(
図2参照)に、ブロックボールの群、及びブロックボールに浮力を生じさせる量の水を供給する。
【0035】
ボール供給経路32(
図2参照)から供給するブロックボールの数は、適宜設定されるものであり、例えば、10個程度である。ボール供給経路32(
図2参照)から供給する水の量は、ブロックボールに浮力を生じさせるために必要な量であり、内径15mm又は20mmの給湯銅管1(
図1参照)の長さ20m当たり、100ml以上300ml以下であることが好ましく、150ml以上250ml以下であることがより好ましく、200mlであることが最も好ましい。ブロックボールに浮力を生じさせるために必要な水の量は、実験に基づくものであり、上記の100ml以上であれば確実にピンホールを塞ぐことができ、上記の300ml以下であれば数分以内にピンホールを塞ぐことができる。
【0036】
その後、給湯銅管1(
図1参照)の両端の各々に接続されているコンプレッサーC(
図2参照)の各々から、給湯銅管1(
図1参照)の中に圧縮した気体を流し込む。給湯銅管1(
図1参照)の中の圧縮された気体は、水と共にピンホールから排出される。これにより、給湯銅管1(
図1参照)の中に、ピンホールに向けた気流及び水流が生じる。結果、ブロックボールは、給湯銅管1(
図1参照)の中に生じた水流に乗ってピンホールに到達して、当該ピンホールを塞ぐ。ブロックボールによってピンホールが塞がれてから15分程度は、圧縮された気体によって給湯銅管1の中の圧力を維持することで、ブロックボールによってピンホールがしっかりと塞がれたことを確認する。
【0037】
ライニング工程S20は、ブロック工程S10の後に、給湯銅管1(
図1参照)の中に塗料を流し込み、給湯銅管1(
図1参照)の内壁に塗膜を形成する工程である。ライニング工程S20に用いる塗料には、例えば、日米レジン株式会社(大阪府岸和田市)が市販する給湯銅管用のライニング材を用いることができる。
【0038】
なお、塗膜を平滑にするために、塗料を流し込んだ後に、圧縮した気体(例えば、空気)と共にライニングボールを流し込むようにしてもよい。ライニングボールの詳細は、例えば、実用新案登録第3178048号公報を参照されたい。
【0039】
このように、ライニング工法に用いる一対のアダプター3によれば、ライニング工法の施工時間を短縮させることができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置、大きさ、数量、形状、材質などは適宜変更できる。
【符号の説明】
【0041】
1,11,12,13,14,15 給湯銅管
16,17 分岐点
21 給湯器
22 キッチンの蛇口
23 洗面台の蛇口
24 浴室の蛇口
3 アダプター
31 気体供給経路
32 ボール供給経路
33 排気経路
34 フィルター
35 ボール回収部
C コンプレッサー
L 蓋
M 圧力計
V 開閉弁
S10 ブロック工程
S20 ライニング工程
【要約】
【課題】ライニング工法の施工時間を短縮させるライニング工法に用いる一対のアダプターを提供する。
【解決手段】一対のアダプター3は、漏水の原因となるピンホールが開いた給湯銅管1にライニング工法を施工する際に、給湯銅管1の両端の各々にコンプレッサーCを接続するためのものである。これら一対のアダプター3は、それぞれ、上流端にコンプレッサーCが接続されると共に下流端に給湯銅管1が接続され、コンプレッサーCから給湯銅管1に圧縮した気体を流し込む気体供給経路31と、気体供給経路31に合流するように設けられ、気体供給経路31に、ブロックボールの群、及びブロックボールに浮力を生じさせる量の水を供給するボール供給経路32と、を備えている。
【選択図】
図2