(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】局所冷房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 1/04 20110101AFI20240516BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F24F1/04
A47G9/10 W
(21)【出願番号】P 2019030357
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018043201
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018148415
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 有輝
(72)【発明者】
【氏名】河阪 雅之
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-201380(JP,A)
【文献】特開2017-080293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107404(JP,U)
【文献】特開平11-197174(JP,A)
【文献】特開2015-100489(JP,A)
【文献】特開平06-229581(JP,A)
【文献】特許第6220097(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/013059(WO,A1)
【文献】特開2010-069275(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115995(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105077746(CN,A)
【文献】特開平09-099001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/04
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置である熱源部と、
前記熱源部によって冷却された液媒体を循環させる可撓性チューブと、
前記可撓性チューブに前記液媒体を送出する液媒送出部と、
前記可撓性チューブによって前記冷却装置との間で前記液媒体が循環する枕と、
体温を検出する第1の温度センサと、
前記第1の温度センサの検出結果に基いて前記液媒送出部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記冷却装置は、
通電により一面に吸熱効果を生じ、他面に発熱効果を生じる熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の吸熱面に接触する冷却用ヒートシンクと、
前記冷却用ヒートシンクと当接し、前記液媒体を流通させて熱交換を行う流路を有する流路モジュールと、前記冷却装置内から外部へ送風するファンと、を含む冷却ユニットを備え、
前記冷却装置の筐体の内部には、
前記冷却ユニットを収容
し、前記ファンの送風により排気する排気口を有する第1区画と、
前記液媒体を貯留するタンクおよび前記液媒体を送出する電動ポンプを収容する第2区画と、
前記冷却ユニットに電力を供給する電源ユニットを収容する第3区画と、
が設けられ、
前記第1区画、前記第2区画および前記第3区画は、仕切壁によって仕切られており、
前記第1区画の排気口と前記第3区画の排気口とが前記筐体の同一側面に配置され、前記第3区画の排気口
は前記第1区画側に排気
がされるよう傾斜したガイドを有
し、前記第3区画の排気口からの排気が前記第1区画の排気口からの排気に沿うように行われる、局所冷房システム。
【請求項2】
前記可撓性チューブの押潰し状態を検知するチューブ押潰し検知手段を備え、
前記制御部は、前記チューブ押潰し検知手段により前記可撓性チューブの押潰し状態を検知した場合には、報知するように制御する、請求項1に記載の局所冷房システム。
【請求項3】
外気の温湿度を検出する温湿度センサを備え、
前記制御部は、前記温湿度センサの検出結果に基づいて前記液媒送出部の動作を制御する、請求項1または請求項2に記載の局所冷房システム。
【請求項4】
前記冷却装置の傾きを検知する傾きセンサを備え、
前記制御部は、前記傾きセンサの検知結果に基づいて、報知すると共に、前記液媒送出部の動作を停止するように制御する、請求項1~3の何れか1項に記載の局所冷房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、局所冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷却又は加熱した流体を管を介して循環させる機器を備えた衣服などにより、身体の上半身等を冷やしたり温める局所冷暖房に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の局所冷暖房に関する技術では、流体をポンプで循環させて身体の冷却や暖房を行っているが、体温に関係なく流体を循環させている。そのため、長時間使用した場合などに、身体の冷やし過ぎや、温め過ぎを生じ易いという問題があった。
【0005】
本実施の形態は、身体の冷やし過ぎを抑制して快適性を向上できる局所冷房システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様に係る局所冷暖房システムは、冷熱源又は温熱源を備える熱源部と、前記熱源部によって加熱又は冷却された液媒体を循環させる可撓性チューブと、前記可撓性チューブに前記液媒体を送出する液媒送出部と、前記可撓性チューブの一部が配置され、身体の局所に接触される局所接触部と、体温を検出する第1の温度センサと、前記第1の温度センサの検出結果に基いて前記液媒送出部の動作を制御する制御部とを備える。
【0007】
第二の態様に係る局所冷暖房システムは、第一の態様において、外気または前記液媒体の少なくとも一方の温度を検出する第2の温度センサを備え、前記制御部は、前記第1の温度センサの検出結果と、前記第2の温度センサの検出結果とに基いて前記液媒送出部を構成する電動ポンプの駆動電圧を制御し、または前記電動ポンプを間欠駆動するよう制御する。
【0008】
第三の態様に係る局所冷暖房システムは、第一又は第二の態様において、前記熱源部は、前記液媒体を貯留する密閉可能な断熱性容器を備え、前記液媒送出部に接続された前記可撓性チューブの排出側と送出側の端部が、前記断熱性容器内の前記液媒体に浸漬され、前記液媒体を前記可撓性チューブを介して循環させる。
【0009】
第四の態様に係る局所冷暖房システムは、第一又は第二の態様において、前記熱源部は、熱交換用の熱媒体を収容する密閉可能な断熱性容器を備え、前記液媒送出部に接続された前記可撓性チューブの一部が、前記断熱性容器内の前記熱媒体に浸漬され、前記熱媒体と前記液媒体との間で熱交換を行い、熱交換後の前記液媒体を前記可撓性チューブを介して循環させる。
【0010】
第五の態様に係る局所冷暖房システムは、第三又は第四の態様において、前記断熱性容器は、筐体と、該筐体の内壁に沿って配置される断熱材と、該断熱材の内壁に沿って配置される着脱自在な保冷剤と、該保冷剤間に形成される空間に着脱自在に配置される前記熱源部とを備える。
【0011】
第六の態様に係る局所冷暖房システムは、第一乃至第五のいずれかの態様において、前記熱源部は、前記冷熱源又は前記温熱源を備える着脱可能なカートリッジと、該カートリッジを収容すると共に、前記可撓性チューブを流通する前記液媒体と前記カートリッジとの間で熱交換を行う容器とを備える。
【0012】
第七の態様に係る局所冷暖房システムは、第六の態様において、前記容器内に配置される前記可撓性チューブは、前記カートリッジを取り囲むコイル状の伝熱管を備える。
【0013】
第八の態様に係る局所冷暖房システムは、第六又は第七の態様において、前記カートリッジは、前記温熱源としてのカイロまたは保冷剤を備える。
【0014】
第九の態様に係る局所冷暖房システムは、第六又は第七の態様において、前記カートリッジは、加熱又は冷却されたペットボトル飲料又は缶飲料を含む。
【0015】
第十の態様に係る局所冷暖房システムは、第一乃至第九のいずれかの態様において、前記局所接触部は、接触される身体の局所に合わせたベルト状の装着具を備える。
【0016】
第十一の態様に係る局所冷暖房システムは、第一乃至第十のいずれかの態様において、前記局所接触部が接触される身体の局所は、頭部、首筋部、腕部、腋の下、手首の群から選ばれる少なくとも1つ若しくは複数を含む。
【0017】
第十二の態様に係る局所冷暖房システムは、第三乃至第十一のいずれかの態様において、前記断熱性容器から露出する前記可撓性チューブの少なくとも一部は、三次元構造メッシュの布地で覆われる。
【0018】
第十三の態様に係る局所冷暖房システムは、第十二の態様において、前記布地は、結露防止用のヒータを備える。
【0019】
第十四の態様に係る局所冷暖房システムは、第一乃至第十三のいずれかの態様において、前記局所接触部は、シート状の枕カバーとされ、前記可撓性チューブは、前記枕カバー内にループ状に配設される。
【0020】
第十五の態様に係る局所冷暖房システムは、第十四の態様において、前記可撓性チューブは分岐され、前記枕カバー内に複数のループとして配設される。
【0021】
第十六の態様に係る局所冷暖房システムは、第一又は第二の態様において、前記熱源部は、冷却装置で構成され、該冷却装置は、通電により一面に吸熱効果を生じ、他面に発熱効果を生じる熱電変換素子と、前記熱電変換素子の吸熱面に接触する冷却用ヒートシンクと、前記冷却用ヒートシンクと当接し、前記液媒体を流通させて熱交換を行う流路を有する流路モジュールと、前記熱電変換素子の発熱面からの熱を放出する放熱用ヒートシンクと、該放熱用ヒートシンクを冷却する電動ファンとから成る冷却ユニットを備える。
【0022】
第十七の態様に係る局所冷暖房システムは、第一六の態様において、前記冷却装置の筐体の内部には、前記冷却ユニットを収容する第1区画と、前記液媒体を貯留するタンクおよび前記液媒体を送出する電動ポンプを収容する第2区画と、前記冷却ユニットに電力を供給する電源ユニットを収容する第3区画と、が設けられ、前記第1区画、前記第2区画および前記第3区画は、仕切壁によって仕切られている。
【0023】
第十八の態様に係る局所冷暖房システムは、第一六又は第一七の態様において、前記可撓性チューブの押潰し状態を検知するチューブ押潰し検知手段を備え、前記制御部は、前記チューブ押潰し検知手段により前記可撓性チューブの押潰し状態を検知した場合には、報知するように制御する。
【0024】
第十九の態様に係る局所冷暖房システムは、第一六乃至第一八のいずれかの態様において、外気の温湿度を検出する温湿度センサを備え、前記制御部は、前記温湿度センサの検出結果に基づいて前記液媒送出部の動作を制御する。
【0025】
第二十の態様に係る局所冷暖房システムは、第一六乃至第一九のいずれかの態様において、前記冷却装置の傾きを検知する傾きセンサを備え、前記制御部は、前記傾きセンサの検知結果に基づいて、報知すると共に、前記液媒送出部の動作を停止するように制御する。
【0026】
第二十一の態様に係る局所冷暖房方法は、第1の温度センサによって体温を検出する工程と、検出された体温に基いて液媒送出部の動作を制御する工程と、液媒送出部の動作により、熱源部によって加熱又は冷却された液媒体を可撓性チューブを介して循環させて、身体の局所に接触される局所接触部を冷却又は加熱する工程とを有する。
【0027】
第二十二の態様に係る局所冷暖房方法は、第二十一の態様において、第1の温度センサによって体温を検出する工程と、第2の温度センサによって外気温を検出する工程と、検出された体温と外気温との差に基いて液媒送出部の動作を制御する工程と、液媒送出部の動作により、熱源部によって加熱又は冷却された液媒体を可撓性チューブを介して循環させて、身体の局所に接触される局所接触部を冷却又は加熱する工程とを有する。
【0028】
第二十三の態様に係る局所冷暖房方法は、第二十二の態様において、前記液媒送出部の動作を制御する工程は、検出された体温と外気温との差が、予め設定した閾値以上か否かを判定する工程と、判定結果に応じて液媒送出部による液媒体の流量を制御する工程とを有する。
【0029】
第二十四の態様に係る局所冷暖房方法は、第二十二の態様において、前記検出された体温と外気温との差が、予め設定した閾値未満か否かを判定する工程と、閾値未満と判定された場合に、前記液媒送出部を停止するよう制御する工程とを有する。
【発明の効果】
【0030】
本実施の形態によれば、身体の冷やし過ぎを抑制して快適性を向上できる局所冷房システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの機能構成を示すブロック図。
【
図2】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの概略構成例を示す構成図。
【
図3】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの具体例を示す説明図。
【
図4】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の具体例を示す説明図。
【
図5】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムで実行される冷暖房制御処理の処理手順の例を示すフローチャート。
【
図6】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの概略構成例を示す構成図。
【
図7】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの概略構成例を示す構成図。
【
図8】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの概略構成例を示す構成図。
【
図9】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に適用される断熱性容器を示す断面図。
【
図10】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に適用される断熱性容器を示す上面図。
【
図11】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーを示す説明図。
【
図12】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーを示すA-A断面図。
【
図13】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーの使用状態を示す側面図。
【
図14】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーの使用状態を示す断面図。
【
図15】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーを示す説明図。
【
図16】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーを示すB-B断面図。
【
図17】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る水枕シートを示す説明図。
【
図18】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの他の実施例に係る枕カバーまたは水枕シートを循環する冷却水の温度変化を示すグラフ。
【
図19】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される結露防止構造の説明図。
【
図20】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される結露防止構造の外観図。
【
図21】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムの構成例を示すブロック図。
【
図22】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の概略構成を示す斜視図。
【
図23】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の概略構成を示す平面図。
【
図24】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の冷却ユニットの構成を示す分解斜視図。
【
図25】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の冷却ユニットの構成を示す断面図。
【
図26】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の筐体の内部構成を示す断面図。
【
図27】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置の内部構成を示す断面図。
【
図28】本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムに適用される冷却装置における水の流れを示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0033】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0034】
図1~
図5を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1aについて説明する。
【0035】
[局所冷暖房システムの機能構成]
ここで、
図1は、局所冷暖房システムS1aの機能構成を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すように、局所冷暖房システムS1aは、冷熱源又は温熱源を備える熱源部10と、熱源部10によって加熱又は冷却された液媒体200を循環させるシリコンチューブ等で構成される可撓性チューブ100と、可撓性チューブ100に液媒体200を送出する電動ポンプで構成される液媒送出部20と、可撓性チューブ100の一部が配置され、首筋部等の身体の局所に接触される局所接触部30と、体温を検出する第1の温度センサSN1と、第1の温度センサSN1の検出結果に基いて電動ポンプ20の動作を制御するマイクロコンピュータ等で構成される制御部40とを備える。
【0037】
また、局所冷暖房システムS1aは、外気温を検出する第2の温度センサSN2をさらに備え、制御部40は、第1の温度センサSN1の検出結果(体温)に加えて、第2の温度センサSN2の検出結果(外気または液媒体200の温度)を勘案して電動ポンプ20の動作を制御する。より具体的には、第1の温度センサSN1の検出結果および第2の温度センサSN2の検出結果に基づいて、電動ポンプ20の駆動電圧を制御し、または電動ポンプ20を間欠駆動するよう制御することができる。
【0038】
また、電動ポンプ20及び制御部40に電力を供給するリチウムイオン電池等のバッテリで構成される電源50を備える。
【0039】
図1に示すように、局所接触部30を除く各構成部材は、樹脂製のケース等に収容されて装置本体500を構成するようにできる。なお、第1の温度センサSN1及び第2の温度センサSN2は、局所接触部30側に設けてもよい。
【0040】
また、図示は省略するが、局所冷暖房システムS1aをオン・オフするメインスイッチや、電動ポンプ20による液媒体200の流量を手動で調整するスライド式あるいはダイヤル式のボリューム等を装置本体500に設けてもよい。
【0041】
そして、制御部40の制御によって電動ポンプ20が稼働すると、可撓性チューブ100内の液媒体200が、D1方向に循環される。
【0042】
これにより、熱源部10が備える冷熱源又は温熱源によって、液媒体200が直接的に又は間接的に冷却又は加熱されて局所接触部30に順次供給される。
【0043】
したがって、局所接触部30を首筋部、腕部、腋の下、手首の何れか一つを含む身体の局所に接触させておくことにより、身体を局所的に冷やしたり、温めたりすることができる。
【0044】
局所冷暖房システムS1aでは、第1の温度センサSN1で検出した体温と、第2の温度センサSN2で検出した外気温とに基いて電動ポンプ20の動作を制御するので、身体の冷やし過ぎや、温め過ぎを抑制して快適性を向上可能である。
【0045】
なお、第2の温度センサSN2は必須ではなく、外気温の検出については省略した構成としてもよい。この場合には、第1の温度センサSN1で検出した体温に基いて電動ポンプ20の動作を制御する。
【0046】
[局所冷暖房システムの構成例]
図2を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1aの構成例について説明する。
【0047】
図2は、局所冷暖房システムS1aの概略構成例を示す構成図である。
【0048】
図2に示す構成例では、熱源部10は、液媒体200を貯留し、蓋部601により密閉可能な断熱性容器(所謂魔法瓶のような構成を有する容器)600を備える。
【0049】
そして、液媒送出部を構成する電動ポンプ20に接続された可撓性チューブ100の排出側と送出側の端部101A、101Bは、断熱性容器600内の液媒体200に浸漬される。
【0050】
断熱性容器600に貯留される液媒体200としては、例えば冷却された水、お湯などを用いることができる。このような液媒体200は、断熱性容器600が有する保温機能により、冷えた状態あるいは温かい状態が比較的長時間に亘って維持される。
【0051】
また、
図2に示す構成例では、例えば身体の局所に密着させ易いシート状等に成形された局所接触部30に、可撓性チューブの一部100aを蛇行状態で配置している。これにより、身体の局所において、可撓性チューブの一部100aを流通する液媒体200による熱交換が行われる面積を広く確保でき、冷却効果又は暖房効果を高めることが可能である。
【0052】
なお、シート状等に成形された局所接触部30は、例えば面ファスナー等によって着脱可能に構成されたベルト状の装着具等により、首筋部等の身体の局所h1~h3などに固定可能である(
図3、
図4参照)。
【0053】
そして、制御部40の制御による電動ポンプ20の稼働により、液媒体200は、可撓性チューブ100を介してD1方向に循環される。これにより、断熱性容器600に貯留される液媒体200は、局所接触部30に設置されている可撓性チューブの一部100aに順次供給されて、身体を局所的に冷やしたり、温めたりする。第1の温度センサSN1で検出した体温と、第2の温度センサSN2で検出した外気温とに基づいた電動ポンプ20の制御手順等の詳細については後述する。
【0054】
[局所冷暖房システムの具体例]
図3及び
図4を参照して、局所冷暖房システムS1aの具体例について説明する。
【0055】
図3は、局所冷暖房システムS1aの具体例を示す説明図、
図4は、他の具体例を示す説明図である。
【0056】
図3に示す具体例では、使用者Hの腰部に装着するウエストバッグ(ウエストポーチ)型のケース700内に、
図1に示すような構成部材から成る装置本体500を収容している。
【0057】
装置本体500から延設されるシリコンチューブ等で構成される可撓性チューブ100の端部には、シート状等に成形された局所接触部30が設けられる。局所接触部30は、例えば面ファスナー等によって着脱可能に構成されたベルト状の装着具等により身体の局所の一つである首筋部h1に固定される。
【0058】
なお、局所接触部30は、ベルト状の装着具等の長さや形状を変更することにより、手首h2、腋の下h3、腕部h4等に装着可能である。
【0059】
また、例えば、両手首や両腕等の2箇所以上に局所接触部30を装着したい場合には、装置本体500から延設される可撓性チューブ100を2つ以上に分岐する構成を備えていてもよい。
【0060】
なお、局所冷暖房システムS1aの装置本体500を着衣タイプとして構成する場合には、身体の局所として胸部、腹部、背中等に可撓性チューブ100が接触するように構成してもよい。
【0061】
また、
図3に示す具体例では、局所接触部30の身体と接触する側(内側)に、体温を検出する第1の温度センサSN1を設け、局所接触部30の外側に、外気温を検出する第2の温度センサSN2を設けている。
【0062】
図4に示す具体例では、使用者Hが背負うリュックサック(ナップサック)型のケース800内に、
図1に示すような構成部材から成る装置本体500を収容している。なお、他の構成は、
図3に示す具体例と同様である。
【0063】
図3、
図4に示すような構成により、局所冷暖房システムS1aを手軽に携行可能となり、屋外等で活動する際などに、局所の冷却や暖房を容易に行うことができる。
【0064】
[冷暖房制御処理]
次に、
図5のフローチャートを参照して、局所冷暖房システムS1aで実行される冷暖房制御処理の処理手順の例について説明する。
【0065】
局所冷暖房システムS1aが稼働すると、まず、ステップS10において第1の温度センサSN1によって使用者の体温を検出してステップS11に移行する。
【0066】
ステップS11では、第2の温度センサSN2によって外気温を検出してステップS12に移行する。
【0067】
ステップS12では、ステップS10で取得した「体温」と、ステップS11で取得した「外気温」との差が、予め設定した閾値以上であるか否かが判定される。
【0068】
そして、判定結果が「No」の場合には、ステップS13に移行して、電動ポンプ20に対して、通常の流量で液媒体200を送出する電力となるように制御してステップS15に移行する。
【0069】
一方、判定結果が「Yes」の場合には、電動ポンプ20に対して、通常より流量を増加させた状態で液媒体200を送出する電力となるように制御してステップS15に移行する。
【0070】
ステップS15では、「体温」と「外気温」との差が、閾値未満となったか否かが判定される。
【0071】
そして、判定結果が「No」の場合には、ステップS14に戻って、通常より流量を増加させた状態を継続する。
【0072】
これにより、使用者の体温や外気温に合わせて、冷却が引き続き必要な場合や、暖房が引き続き必要な場合に、液媒体200の流量を増加させた状態を保持して対処できる。
【0073】
一方、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS16で、電動ポンプ20の駆動を停止してからステップS10に戻り、一連の処理を繰り返して行う。
【0074】
これにより、使用者の体温や外気温に応じて、冷却や暖房が不要な状態において電動ポンプ20を停止することができ、身体の冷えすぎや、温め過ぎを抑制できる。また、電動ポンプ20を一時的に停止することにより、電源としてのバッテリ50の消耗を抑制して、システム全体の駆動時間を稼ぐことが可能である。
【0075】
図6を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1bの構成例について説明する。
【0076】
なお、局所冷暖房システムS1bの基本構成は、局所冷暖房システムS1aと同様であるので、同一の構成には局所冷暖房システムS1aと同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0077】
局所冷暖房システムS1bは、
図6に示すように、熱源部10は、熱交換用の熱媒体650を収容し、蓋部601によって密閉可能な断熱性容器(所謂魔法瓶のような構成を有する容器)600を備える。
【0078】
なお、熱交換用の熱媒体650としては、冷却した水、お湯、あるいは一般的なクーラント等を適用可能である。
【0079】
そして、液媒送出部としての電動ポンプ20に接続された可撓性チューブ100の一部100bは、断熱性容器600内の熱媒体650に浸漬される。
【0080】
なお、
図6に示すように、可撓性チューブ100の一部100bはコイル状の伝熱管(例えば、アルミ製等の伝熱管)を備えていてもよい。これにより、熱交換用の熱媒体650との接触面積を広くすることができ、熱媒体650との熱交換の効率を向上することができる。
【0081】
このような構成の局所冷暖房システムS1bによれば、熱媒体650と液媒体200との間で熱交換を行うことができ、熱交換後の液媒体200を可撓性チューブ100を介して循環させることにより、身体の局所を冷やしたり、温めたりすることができる。
【0082】
なお、局所冷暖房システムS1bは、局所冷暖房システムS1aと同様の具体的な構成とすることができる(
図3、
図4参照)。
【0083】
また、局所冷暖房システムS1bは、局所冷暖房システムS1aと同様に、
図5のフローチャートに示す冷暖房制御処理を適用して、体温と外気温に合わせて電動ポンプ20を適宜制御可能である。
【0084】
図7を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1cの構成例について説明する。
【0085】
なお、局所冷暖房システムS1cの基本構成は、局所冷暖房システムS1aと同様であるので、同一の構成には局所冷暖房システムS1aと同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0086】
局所冷暖房システムS1cは、
図7に示すように、冷熱源又は温熱源を備える着脱可能なカートリッジ810と、このカートリッジ810を収容すると共に、可撓性チューブ100を流通する液媒体200とカートリッジ810との間で熱交換を行うための容器とを備える。
【0087】
ここで、カートリッジ810は、例えばアルミ等の伝熱素材により有底の筒状に成形される。このような筒状のカートリッジ810内には、例えば冷熱源としての保冷剤や、温熱源としてのカイロ(使い捨てカイロ等)などが収容される。
【0088】
また、
図7に示すように、容器850内に配置される可撓性チューブ100cは、カートリッジ810を取り囲むように配置されるコイル状の伝熱管(例えば、アルミ製等の伝熱管)を備えていてもよい。
【0089】
なお、容器850は、局所冷暖房システムS1a等と同様に、断熱性容器で構成してもよい。その場合には、カートリッジ810の温度を比較的長時間に亘って保持可能である。
【0090】
また、カートリッジ810を複数個用意し、各カートリッジ810に冷熱源としての保冷剤や、温熱源としてのカイロをセットしておくことにより、カートリッジ810を適時に交換して、冷却や暖房を継続して行うようにできる。
【0091】
このような構成の局所冷暖房システムS1cによれば、カートリッジ810と液媒体200との間で熱交換を行うことができ、熱交換後の液媒体200を可撓性チューブ100を介して循環させることにより、身体の局所を冷やしたり、温めたりすることができる。
【0092】
なお、局所冷暖房システムS1cは、局所冷暖房システムS1aと同様の具体的な構成とすることができる(
図3、
図4参照)。
【0093】
また、局所冷暖房システムS1cは、局所冷暖房システムS1aと同様に、
図5のフローチャートに示す冷暖房制御処理を適用して体温と外気温に合わせて電動ポンプ20を適宜制御可能である。
【0094】
図8を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1dの構成例について説明する。
【0095】
なお、局所冷暖房システムS1dの基本構成は、局所冷暖房システムS1aと同様であるので、同一の構成には局所冷暖房システムS1aと同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0096】
図8に示すように、局所冷暖房システムS1dは、局所冷暖房システムS1cにおけるカートリッジ810に代えて、加熱又は冷却されたペットボトル飲料(又は缶飲料)820を冷熱源又は温熱源として用いる。
【0097】
また、
図8に示すように、容器850内に配置される可撓性チューブ100cは、ペットボトル飲料(又は缶飲料)820を取り囲むように配置されるコイル状の伝熱管(例えば、アルミ製等の伝熱管)を備えていてもよい。
【0098】
容器850は、局所冷暖房システムS1a等と同様に、断熱性容器を備えていてもよい。その場合には、ペットボトル飲料(又は缶飲料)820の温度を比較的長時間に亘って保持することが可能である。
【0099】
なお、加熱又は冷却されたペットボトル飲料(又は缶飲料)820等は、小売店等によって容易に購入できるので、適時に交換して冷却や暖房を継続して行うことができる。
【0100】
このような構成の局所冷暖房システムS1dによれば、ペットボトル飲料(又は缶飲料)820と液媒体200との間で熱交換を行うことができ、熱交換後の液媒体200を可撓性チューブ100を介して循環させることにより、身体の局所を冷やしたり、温めたりすることができる。
【0101】
なお、局所冷暖房システムS1dは、局所冷暖房システムS1aと同様の具体的な構成とすることができる(
図3、
図4参照)。
【0102】
また、局所冷暖房システムS1dは、局所冷暖房システムS1aと同様に、
図5のフローチャートに示す冷暖房制御処理を適用して体温と外気温に合わせて電動ポンプ20を適宜制御可能である。
【0103】
[局所冷暖房システムの他の実施例(その1)]
図9~
図18を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS2の構成例等について説明する。
【0104】
ここで、
図9は、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS2の他の実施例に適用される断熱性容器901を示す断面図、
図10は、その断熱性容器901を示す上面図である。
【0105】
熱源部を構成する断熱性容器901は、樹脂等で成形されるケース本体(筐体)901aと、このケース本体901aの上部側に設けられるヒンジ部902によってD10方向に開閉自在に支持される蓋部901bとを備える。
【0106】
ケース本体901a内には、内壁に沿って発泡スチロール等で構成される板状の断熱材903が設けられている。
【0107】
また、断熱材903の内壁に沿って、保冷剤904が着脱自在に配置されている。保冷剤904は、例えば樹脂製の袋体又は容器に、吸水性ポリマー等を封入したものを用いることができ、冷蔵庫で冷却した後にケース本体901a内に装着される。
【0108】
そして、保冷剤904間に形成される空間には、熱源部10として液媒体(冷却水)200を貯留する容器610が着脱自在に配置される。
【0109】
これにより、
図10に示すように、容器610は、断熱材903および保冷剤904によってサンドイッチ状に挟まれて保持されるので、外部からの熱の侵入を防ぐと共に、効率的に冷却水200を冷やすことができる。なお、容器610は、樹脂製で構成されるが、保冷剤904との伝熱性を高めるようにアルミや銅等で構成してもよい。
【0110】
容器610の上部開口部には、冷却された冷却水200を循環させるシリコンチューブ等で構成される可撓性チューブ100(100A、100B)を挿通した蓋部601が設けられている。また、可撓性チューブ100(100A、100B)はケース本体901aを挿通するように構成しても良い。
【0111】
図9に示す構成例では、前出の
図2に示す構成と同様に、可撓性チューブ100(100A、100B)の端部が、冷却水200が浸漬されている。そして、
図2に示すように、電動ポンプPの動作により、可撓性チューブ100Aの端部から吸引された冷却水200はD1a方向に流れて、局所接触部30を循環し、D1b方向に流通して、可撓性チューブ100Bの端部から容器610内に戻される。
【0112】
なお、容器610内の可撓性チューブ100は、
図9に示す構成に代えて、前出の
図6に示すように可撓性チューブ100の一部をコイル状に成形して冷却水200に浸漬させる構成としてもよい。
【0113】
また、断熱性容器901の外部の可撓性チューブ100(100A、100B)の近傍には、温度センサSN2a、SN2bが配置されている。これにより、断熱性容器901を出た直後の冷却水200の温度T1と、局所接触部30を循環して戻って来た冷却水200の温度T2とを測定することができる。
【0114】
そして、温度T1と温度T2との平均値、あるいは温度T1と温度T2の差に基づいて、電動ポンプPの動作を制御することができる。
【0115】
具体的には、温度T1と温度T2との平均値、または温度T1と温度T2の差に基づいて、電動ポンプPを間欠動作させることにより、または電動ポンプPの駆動電圧を変化させることなどにより、可撓性チューブ100を流通する冷却水200の温度を調節することができる。
【0116】
次に、
図11~
図17を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1、S2に適用される局所接触部30の一種としてのシート状の枕カバー920A、920Bおよび水枕シート920Cについて説明する。
【0117】
ここで、
図11は、枕カバー920Aを示す説明図、
図12は、
図11のA-A断面図、
図13は、枕カバー920Aの使用状態を示す側面図、
図14は、枕カバー920Aの使用状態を示す断面図である。
【0118】
図11および
図12に示す枕カバー920Aは、枕940(
図13参照)の上面を覆う形状に裁断された2枚の生地921a、921bの間に、ループ状に蛇行させた可撓性チューブ100を挟持する構成となっている。そして、上述のように電動ポンプPを駆動させることにより、可撓性チューブ100BからD2a方向に流入する冷却水200は、蛇行する可撓性チューブ100をD2方向に循環し、可撓性チューブの一部100aからD2b方向に排出される。これにより、
図13および
図14等に示すように使用者Hの頭部h10および頸部h11を冷やすことができる。
【0119】
枕カバー920Aの生地921a、921bとしては、可撓性チューブ100が配置された位置の凸凹感を吸収できる柔らかい素材(例えば、三次元構造メッシュ(ダブルラッセル)の生地等)を用いるとよい。なお、生地921a、921bの周縁には縫代930が設けられ、縫製により閉じられている。
【0120】
また、生地921a、921bとの間に、スポンジまたは綿等を詰めて、使用者Hが頭部h10を載せた際(
図13、
図14参照)の感触を向上させるようにしてもよい。
【0121】
なお、枕カバー920Aの左右端部には、枕カバー920Aを枕940に固定する紐922が設けられている。
【0122】
また、本実施例では、枕カバー920Aと枕940とを別体としているが、これに限らず、枕カバー920Aと枕940とを一体化した状態で提供してもよい。
【0123】
次に、
図15および
図16を参照して、枕カバー920Bについて説明する。
【0124】
図15は、枕カバー920Bを示す説明図、
図16は、枕カバー920Bを示すB-B断面図である。
【0125】
図15および
図16に示す枕カバー920Bでは、可撓性チューブ100(100A、100B)は、分岐部150、151で2つの可撓性チューブ100C、100Dに分岐され、枕カバー920B内に複数のループとして配設されている。なお、その他の構成および使用方法は、枕カバー920Aと同様である。枕カバー920Bによれば、より効率的に使用者Hの頭部h10および頸部h11を冷却することができる。
【0126】
なお、
図15および
図16に示す枕カバー920Bでは、可撓性チューブ100は2つに分岐されているが、これには限定されず3つ以上に分岐させ、分岐された各可撓性チューブをループ状に配設するようにしてもよい。
【0127】
また、本実施例では、枕カバー920Bと枕940とを別体としているが、これに限らず、枕カバー920Bと枕940とを一体化した状態で提供してもよい。
【0128】
一方、
図17に示す水枕シート920Cは、枕940(
図13参照)の上面を覆う形状に裁断された2枚のシート936a、936bの間に、可撓性チューブに代えて、蛇行させた水路923を形成している。
【0129】
シート936a、936bは、例えば、軟質塩化ビニル樹脂等で成形される。
【0130】
また、シート936a、936b間には、所定厚さ(例えば、約5mm等)のエーテル系スポンジ等で形成される弾性のシート937が挟まれている。これにより、使用者Hが頭部h10を載せた際に、水路923が潰れることを防止できる。
【0131】
水路923は、
図17に示すように、互い違いに配置される線状の溶着部950aをシート936a、936b間に形成することで構成できる。また、水路923に沿って、所定間隔でスポット状の溶着部950bを形成することで、シート936a、936bを固定している。
【0132】
また、シート936a、936bの周縁部(溶着部)950cを溶着することにより、シート936a、936b間を密封している。
【0133】
なお、各溶着部950a~950cの溶着加工は、シート936a、936bの何れかの外側から加熱した所定形状のコテまたは治具等を押圧することで行うことができる。
【0134】
また、本実施例では、水枕シート920Cと枕940とを別体としているが、これに限らず、水枕シート920Cと枕940とを一体化した状態で提供してもよい。
【0135】
そして、可撓性チューブ100Bの端部からD2a方向に注入される冷却水200は、電動ポンプPの駆動によって、水路923に沿ってD2d方向のルートで循環し、可撓性チューブの一部100aから排出される。
【0136】
このように、水枕シート920Cは、可撓性チューブに代えて、溶着加工で水路923を形成する構成により、製造コストを低廉化することができる。また、可撓性チューブを用いる構成に比して、水路923を循環する冷却水200の流量を多くすることができるので、より効率的に使用者Hの頭部h10および頸部h11を冷却することができる。
【0137】
ここで、
図18に、枕カバー920A、920Bまたは水枕シート920Cを循環する冷却水の温度変化を示すグラフを示す。
【0138】
グラフにおいて、プロット線L1は、枕カバー920A、920Bまたは水枕シート920Cの冷却水入口付近の温度、プロット線L2は、枕カバー920A、920Bまたは水枕シート920Cの冷却水出口付近の温度の測定結果を示す。
【0139】
このように、一定時間に亘って温度測定した測定結果に基づいて、冷却水入口付近の温度と冷却水出口付近の温度との平均値を算出し、その算出値に基づいて、電動ポンプPの間欠運転の制御を行うことようにできる。
【0140】
これにより、電動ポンプPを電圧の変化だけで制御する場合に比して、枕カバー920A、920Bまたは水枕シート920Cを循環させる冷却水200の平均温度をよりダイナミックに制御することができる。
【0141】
[局所冷暖房システムの結露防止構造]
図19および
図20を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS1、S2に適用される結露防止構造970について説明する。
【0142】
図20に示すように、前出の断熱性容器600、901から露出する可撓性チューブ100(100A、100B)の少なくとも一部は、三次元構造メッシュ(ダブルラッセル)の布地971で覆われている。これにより、可撓性チューブ100(100A、100B)の表面に、空気中の水分が凝結した場合であっても、その水滴は、吸水性が高い三次元構造メッシュ(ダブルラッセル)の布地971によって即座に吸収されるので、結露により周囲が濡れる事態などが防止される。
【0143】
また、
図19に示すように、三次元構造メッシュ(ダブルラッセル)の布地971は、結露防止用のヒータ972を備えている。
【0144】
結露防止用のヒータ972は、例えば、ニクロム線で構成される発熱体を耐熱性のシリコンゴムで被覆したラインヒータ等で構成され、布地971上に蛇行させるなどして配設される。
【0145】
結露防止用のヒータ972は、例えば、タイマ973および制御部40等に接続され、電動ポンプPの運転終了後の所定時間(例えば、1分間)に亘って通電されて駆動するように制御できる。
【0146】
そして、このような結露防止用のヒータ972を備える布地971を可撓性チューブの一部100a(100b)に巻回して、
図20のような結露防止構造970とされる。
【0147】
このような結露防止用のヒータ972の働きにより、三次元構造メッシュ(ダブルラッセル)の布地971に吸収された水分を速やかに蒸散させることができ、結露により周囲が濡れる事態などをより効果的に防止できる。
【0148】
[局所冷暖房システムの他の実施例(その2)]
図21~
図28を参照して、本技術を適用した一実施の形態に係る局所冷暖房システムS2の構成例等について説明する。
【0149】
(局所冷暖房システムS2の概略構成)
ここで、
図21は、局所冷暖房システムS2の構成例を示すブロック図、
図22は、局所冷暖房システムS2に適用される冷却装置1010の概略構成を示す斜視図、
図23は、冷却装置1010の概略構成を示す平面図である。
【0150】
図21に示すように、本実施の形態に係る局所冷暖房システムS2は、熱源部としての冷却装置1010と、被冷却物としての水冷枕1500と、冷却装置1010と水冷枕1500との間に接続されて液媒体としての冷却水200を循環させるシリコンチューブ等の可撓性チューブ1012とから構成されている。
【0151】
水冷枕1500としては、先に説明した
図11~
図17に示す枕カバー920A、920Bなどを用いた枕等を適用することができる。
【0152】
図21等に示すように、冷却装置1010は、冷却水200を冷却する冷却ユニット1201と、冷却水200を貯留するタンク(水タンク)1203と、冷却水200を送出する液媒送出部としての電動ポンプ1202と、冷却ユニット1201や電動ポンプ1202等に電力を供給する電源ユニット1016と、冷却装置1010の各種動作モード等の設定などを行う操作ユニット1011と、マイクロコンピュータ等で構成される制御部1015等で構成される。
【0153】
なお、電動ポンプ1202と冷却ユニット1201とはシリコンチューブ等で接続されている。また、冷却ユニット1201およびタンク1203は、可撓性チューブ1012に接続されている。
【0154】
冷却ユニット1201の詳細な構成については後述する。
【0155】
制御部1015には、可撓性チューブ1012の押潰し状態を検知する押潰し検知手段SN12、外気の温湿度を検出する温湿度センサSN10および冷却装置1010の傾きを検知する傾きセンサSN11が接続されている。
【0156】
これにより、制御部1015は、押潰し検知手段SN12により、可撓性チューブ1012が例えば足や物等によって押潰された状態を検知した場合には、ブザーを鳴らすなどして報知するように制御できる。なお、押潰し状態の検知は、例えば冷却ユニット1201が備える後述のペルチェ素子1254や可撓性チューブ1012の温度変化を温度センサで検知することや、電動ポンプ1202の負荷の増大等を電流の増減を検知することなどにより行うことができる。
【0157】
また、制御部1015は、温湿度センサSN10の検出結果に基づいて電動ポンプ1202の動作を制御するようにできる。即ち、温湿度センサSN10による温度、湿度の検出結果に基づいて、冷却強度等の強弱などを調整するようにできる。
【0158】
また、制御部1015は、傾きセンサSN11の検知結果に基づいて、ブザー等を鳴らして報知したり、LEDランプによるエラー表示を表す発光等をすると共に、電動ポンプ1202の動作を停止するように制御できる。これにより、冷却装置1010からの水漏れ等を防止できる。
【0159】
図22に示すように、局所冷暖房システムS2に適用される冷却装置1010は、樹脂製の筐体1700を備え、天板部1701には、操作ユニット1011の操作部1011aが配置されている。また、天板部1701から可撓性チューブ1012が外部に延伸されている。
【0160】
筐体1700の側面には、多数のスリットで構成される空気取入口1702が設けられている。また、図示されない別の側面には、冷却ユニット1201からの熱を排出する排気口が設けられている。
【0161】
また、筐体1700の側面の下端側から電源コード1703が外部に延伸され、AC電源に接続されるようになっている。
【0162】
図23に示すように、操作部1011aには、冷却強度を選択するボタン群Ba、おやすみモードや熱冷ましモード等を選択するボタン群Bb、温湿度の状態を表示するランプ群Bc等が配置されている。
【0163】
(冷却ユニットについて)
図24および
図25を参照して、冷却装置1010の冷却ユニット1201の構成について説明する。
【0164】
ここで、
図24は、局所冷暖房システムS2に適用される冷却装置1010の冷却ユニット1201の構成を示す分解斜視図、
図25は、冷却ユニット1201の断面図である。
【0165】
図24および
図25に示すように、冷却装置1010の冷却ユニット1201は、電源ユニット1016からの通電により一面に吸熱効果を生じ、他面に発熱効果を生じる熱電変換素子(ペルチェ素子等)1254と、熱電変換素子1254の吸熱面に接触するアルミ板等で構成される冷却用ヒートシンク1255と、冷却用ヒートシンク1255と当接し、液媒体としての冷却水(流入する比較的温度の高い水HW、および送出される冷却された水HW)を流通させて熱交換を行う流路(冷却水路)1256aを有するアルミ等で成形された流路モジュール1256とを備える。
【0166】
なお、流路1256aは、流路モジュール1256内で蛇行するように形成することができる。これにより、熱交換の効率を向上することができる。
【0167】
さらに、冷却ユニット1201は、熱電変換素子1254の発熱面からの熱を放出するアルミ等で成形された放熱用ヒートシンク1252と、この放熱用ヒートシンク1252の放熱フィンと対向して配設されて冷却する電動ファン1251とを備える。
【0168】
なお、冷却用ヒートシンク1255と放熱用ヒートシンク1252との間には、断熱性発泡材等で構成される断熱材1253が設けられている。これにより、冷却用ヒートシンク1255側に熱が伝達されることを抑制できる。
【0169】
冷却ユニット1201の電動ファン1251を除く各部材は、流路モジュール1256側から螺合されるビス1257により一体的に固定される。
【0170】
そして、冷却ユニット1201は、
図25に示すように、空気取入口(図示せず)を有するケーシング1280内に収容される。
【0171】
ケーシング1280および電動ファン1251は、筐体1700の側壁1700aに固定される。
【0172】
なお、ケーシング1280の内壁と、収容された流路モジュール1256との間には、断熱用の空気層1281が設けられる。これにより、流路モジュール1256に、装置内の熱が伝達されることを抑制できる。
【0173】
また、電動ファン1251からの送風の向きは、装置内から側壁の排気口1285を経て外部に向かう方向D100とされる。これにより、装置内に熱が籠もることを防ぐことができる。
【0174】
さらに空気取入口1702の位置と放熱用ヒートシンク1252のフィンの方向を揃えるようにしてもよい。この構成を採用することで空気取入口1252から流入する空気が放熱用ヒートシンク1252のフィンの間を通過しやすくなり、熱交換を容易にし、さらに電動ファン1251によって筺体外に熱交換された暖かい空気の排出を容易に行うことが出来る。
【0175】
(冷却装置の内部構成について)
図26から
図28を参照して、冷却装置1010の内部構成について説明する。
【0176】
ここで、
図26は、局所冷暖房システムS2に適用される冷却装置1010の筐体1700の内部構成を示す断面図、
図27は各部品を組み込んだ冷却装置1010の内部構成を示す断面図、
図28は、冷却装置1010における水の流れを示す概略説明図である。
【0177】
図26および
図27に示すように、樹脂製の筐体1700は、2分割可能な半体1700A、1700B等で構成される。
【0178】
半体1700Aには、図上、右側の側壁に多数のスリットから成る排気口1285が形成されている。
【0179】
また、半体1700Aの図上、正面側および図示されない背面側には、多数のスリットから成る空気取入口1702が形成されている。
【0180】
一方の半体1700Bの上方には、操作ユニット1011および操作部1011aの収容部が形成されている。
【0181】
第3区画A3に設けられるスリットは第3区画A3殻の排気が第1区画A1側にされるように設けられる。こうすることで第3区画A3からの排気が、第1区画A1の排気に沿うように行われるため、第3区画A3の排気を第3区画A3にファンを設けなくてもスムーズに行うことが可能となる。
【0182】
また、スリットを設ける箇所と操作部1011との位置が離れるようにしてもよい。使用時、操作部1011は操作者に近い位置に置かれるため、操作者から離れた位置にスリットが存在することになる。そのため、暖かい空気は操作者から離れた位置から排気されるので、操作者側に暖かい空気が流れ難くなる。さらに、排気側にガイドを設けることで、より操作者側に排気が回り込まないようにしても良い。
【0183】
そして、半体1700A、1700Bを係合して形成される筐体1700の内部の下方には、冷却ユニット1201を収容する第1区画A1と、冷却水200を貯留するタンク1203およびタンク1203から供給される冷却水200を送出する電動ポンプ1202を収容する第2区画A2と、冷却ユニット1201等に電力を供給する電源ユニット1016を収容する第3区画A3とが形成されている。
【0184】
電源ユニット1016は第3区画A3にネジ止めして固定されても良いし、第3区画A3内に電源ユニットを挿入できる溝を設け、その溝にスライドさせて収容しても良い。
【0185】
そして、第1区画A1と第2区画A2は、仕切壁K1によって仕切られている。
【0186】
これにより、冷却ユニット1201等を通過する風路を形成する第1区画A1と、比較的温度の高い冷却水HWが流入するタンク1203および発熱源の一種となる電動ポンプ1202が設けられている第2区画A2とが分離され、冷却ユニット1201における熱交換効率を向上することができる。
【0187】
また、第1区画A1、第2区画A2と第3区画A3とは、仕切壁K2a、K2bによって仕切られている。
【0188】
これにより、万一、第1区画A1や第2区画A2で、冷却ユニット1201やタンク1203等から冷却水が漏れた場合であっても、電源ユニット1016を収容する第3区画A3に侵入することを防止することができ、感電事故等の発生を未然に防止することができ、安全性を向上することができる。
【0189】
そして、上記構成の冷却装置1010を起動すると、電動ポンプ1202が駆動し、
図28に示すように、水冷枕1500から可撓性チューブ1012を介して戻って来た比較的温度の高い冷却水HWがD200方向に流れてタンク1203に一旦貯留される。タンク1203に冷却水HWが一旦貯留されることによって電動ポンプ1202に空気が入り込むことが無く電動ポンプ1202が空転することを防ぐことができる。
【0190】
そして、冷却水は電動ポンプ1202によってD201、D202方向に流通され、冷却ユニット1201の流路モジュール1256に流れ込む。この冷却ユニット1201によって冷却された冷却水CWは、D203方向に送り出され、可撓性チューブ1012を介して水冷枕1500に送給される。このような冷却水HW、CWの循環により、水冷枕1500を連続的に冷却することができる。
【0191】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、これに限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0192】
このように、本実施の形態はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本実施の形態の局所冷暖房システム、及び局所冷暖房方法は、屋外等で活動する際の身体の局所的冷却、暖房あるいは就寝時における頭部の冷却等に適用することができる。
【符号の説明】
【0194】
S1(S1a~S1d)、S2…局所冷暖房システム
10…熱源部
20、1202…液媒送出部(電動ポンプ)
30…局所接触部
40、1015…制御部(マイクロコンピュータ)
50…電源(バッテリ)
100(100A~100D)、1012…可撓性チューブ
200、HW、CW…液媒体(冷却水)
500…装置本体
600、901…断熱性容器
610…容器
650…熱交換用の熱媒体
700…ウエストバッグ(ウエストポーチ)型のケース
800…リュックサック(ナップサック)型のケース
810…カートリッジ
820…ペットボトル飲料(缶飲料)
850…容器
903…断熱材
904…保冷剤
920A、920B…枕カバー
920C…水枕シート
921a、921b…生地
923…水路
937…弾性のシート
936a、936b…シート
940…枕
950a~950c…溶着部
970…結露防止構造
971…三次元構造メッシュの布地
972…結露防止用のヒータ
SN1…第1の温度センサ
SN2、SN2a、SN2b…第2の温度センサ
SN10…温湿度センサ
SN11…傾きセンサ
SN12…チューブ押潰し検知手段
1010…冷却装置
1011…操作ユニット
1016…電源ユニット
1201…冷却ユニット
1203…タンク(水タンク)
1251…電動ファン
1252…放熱用ヒートシンク
1253…断熱材
1254…熱電変換素子(ペルチェ素子)
1255…冷却用ヒートシンク
1256…流路モジュール
1285…排気口
1500…水冷枕
1700…筐体
1702…空気取入口
A1…第1区画
A2…第2区画
A3…第3区画
K1、K2a、K2b…仕切壁