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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】軒樋支持具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E04D13/072 502H
E04D13/072 502V
E04D13/072 502C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221028
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088906
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-049731(JP,U)
【文献】実開昭47-007720(JP,U)
【文献】特開2017-227085(JP,A)
【文献】実開平06-032542(JP,U)
【文献】実開昭57-174627(JP,U)
【文献】特開2004-092222(JP,A)
【文献】実開平05-084727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ上方に延びて立設された前板片と後板片とで軒先を挟持する挟持固定部と、軒樋を受け支持する受具本体とを備えた軒樋支持具において、
前記受具本体は、前記挟持固定部とは別体とされ、相互に回動可能に連結された前方支持片と後方支持片とを備え、該前方支持片には前記軒樋の前耳を保持する前耳保持部が設けられ、該後方支持片には前記軒樋の後耳を保持する後耳保持部が設けられており、
前記前板片と前記後板片とは、それぞれ別体の帯板により形成され、且つ、上下方向の略同位置に固着具が挿通される挿通孔がそれぞれ開設されており、前記後板片に形成された前記挿通孔の径は、前記前板片に形成された前記挿通孔の径よりも小さく、
前記前板片と前記受具本体の前部とには、前方に突出して形成された、紐状体を掛止させる掛止片がそれぞれ設けられており、
前記前板片の前記掛止片は、前記前板片の上端部から前方に上り傾斜して形成され、前記受具本体の前記掛止片は、前記前板片の前記掛止片よりも下方位置に、前方に下がり傾斜して形成されていることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記前板片と前記後板片とは、それぞれ上端部の上下方向の位置が異なることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記挟持固定部は、基板部の前端部から上方に延びるように折曲されて前記前板片が立設されている第一板体と、基板部の前端部から上方に延びるように折曲されて前記後板片が立設されている第二板体と、により構成され、
前記第一板体は、前記前板片と前記後板片との間に前後方向の空隙が形成されるように、前記基板部が前記第二板体の前記基板部に固定されていることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記前耳保持部は、折曲可能な薄板で形成され、且つ、突出して形成された係合部が設けられていることを特徴とする軒樋支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ上方に延びて立設された前板片と後板片とで軒先を挟持する挟持固定部と、軒樋を受け支持する受具本体とを備えた軒樋支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の上部を覆う屋根の外縁部から略鉛直に下方向に延びている軒先に固定される軒樋支持具が知られている(たとえば、特許文献1)。このような軒樋支持具は、軒先にあらかじめ下孔を開設してから、軒樋支持具が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-87833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような軒樋支持具では、軒先にあらかじめ下孔を開設してから、この下孔と軒樋支持具1の挿通孔とを重ねてボルトを挿通させてナットで固定する必要があるため、軒樋支持具1の取付け作業に時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、軒先にあらかじめ下孔を開設することなく、容易に軒先に固定することができる軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の軒樋支持具は、それぞれ上方に延びて立設された前板片と後板片とで軒先を挟持する挟持固定部と、軒樋を受け支持する受具本体とを備えた軒樋支持具において、前記受具本体は、前記挟持固定部とは別体とされ、相互に回動可能に連結された前方支持片と後方支持片とを備え、該前方支持片には前記軒樋の前耳を保持する前耳保持部が設けられ、該後方支持片には前記軒樋の後耳を保持する後耳保持部が設けられており、前記前板片と前記後板片とは、それぞれ別体の帯板により形成され、且つ、上下方向の略同位置に固着具が挿通される挿通孔がそれぞれ開設されており、前記後板片に形成された前記挿通孔の径は、前記前板片に形成された前記挿通孔の径よりも小さく、前記前板片の前記掛止片は、前記前板片の上端部から前方に上り傾斜して形成され、前記受具本体の前記掛止片は、前記前板片の前記掛止片よりも下方位置に、前方に下がり傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の軒樋支持具は、前記前板片と前記後板片とは、それぞれ上端部の上下方向の位置が異なることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の軒樋支持具は、前記挟持固定部は、基板部の前端部から上方に延びるように折曲されて前記前板片が立設されている第一板体と、基板部の前端部から上方に延びるように折曲されて前記後板片が立設されている第二板体と、により構成され、前記第一板体は、前記前板片と前記後板片との間に前後方向の空隙が形成されるように、前記基板部が前記第二板体の前記基板部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の軒樋支持具は、前記前耳保持部は、折曲可能な薄板で形成され、且つ、突出して形成された係合部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、軒先にあらかじめ下孔を開設することなく、挟持固定部で軒先を挟持してからドリルねじ等の固着具を用いて容易に軒先に固定することができる。また、それぞれの掛止片に架け渡すように紐状体を掛止させることで、強風や積雪等により軒樋支持具の軒樋の保持が外れにくくなる。
【0011】
請求項2に記載の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、軒樋支持具が軒先の下端部に誘導されやすくなる。
【0013】
請求項4に記載の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、凹所が形成された前耳に係合部を係合させることで、より強固に軒樋を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】は、本発明の一実施形態に係る軒樋支持具の概略側面図である。
図2】(a)は、同軒樋支持具の概略正面図、(b)は、図1X部の部分分解斜視図、(c)は、同軒樋支持具の部分概略背面図である。
図3】(a)、(b)は、同軒樋支持具の施行手順を示す説明図である。
図4】(a)、(b)は、同軒樋支持具の施行手順を示す説明図、(c)は、前耳保持部の係合部が前耳の凹所に係合される説明図、(d)は、掛止部に紐状体が固定されている同軒樋支持具の部分破断側面図である。
図5】(a)~(d)は、それぞれ本発明の軒樋支持具の変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。まず、軒樋支持具の基本構成について説明する。なお、軒樋支持具が建物の軒先に固定されている状態を基準にして、前後方向(建物側を後ろ方向、それとは反対側を前方向)、幅方向(軒先に対する見付の方向と一致する方向)、上下方向等を規定する。また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また、図2(b)では、回転軸9の図示を省略している。
【0016】
図1の軒樋支持具1について説明する。軒樋支持具1は、それぞれ上方に延びて立設された前板片31と後板片41とで軒先6を挟持する挟持固定部2と、軒樋7を受け支持する受具本体5とを備えている。受具本体5は、軒樋7の前耳71を保持する前耳保持部51と、軒樋7の後耳72を保持する後耳保持部52とを備えている。前板片31と後板片41とは、それぞれ別体の帯板により形成され、且つ、上下方向の略同位置に固着具が挿通される挿通孔31h,41hがそれぞれ開設されている。後板片41に形成された挿通孔41hの径は、前板片31に形成された挿通孔31hの径よりも小さい。以下、詳しく説明する。なお本実施形態では、挿通孔31h,41hが挿通される固着具は、ドリルねじDが用いられている。
【0017】
挟持固定部2は、前板片31が立設されている第一板体3と、後板片41が立設されている第二板体4とにより構成されている。第一板体3は、基板部30の前端部30aから上方に延びるように折曲されて前板片31が立設されている。前板片31には前後方向に貫通している挿通孔31hが上下方向に並んで複数開設されている。そして、前板片31の上端部31aには、前方に突出して形成された掛止片32が前方に上り傾斜して形成されている。第一板体3は、基板部30が第二板体4の基板部40の下方に重なるように配され、上下に貫通するリベット8等により固定されている。また、前板片31と後板片41との間に前後方向の空隙sが形成されるように、第一板体3と第二板体4とは固定されている。空隙sの前後方向の寸法は、軒先6の厚み寸法と略同じ寸法とされる。前板片31の上端部31aと後板片41の上端部41aは、それぞれ上下方向の位置が異なっており、本実施形態では、前板片31の上端部31aが、後板片41の上端部41aよりも上方に位置する。第二板体4の後板片41と前後方向に重ならずに露出している第一板体3の前板片31の後面31cの部分が、ガイド面31caとなる。
【0018】
第二板体4は、基板部40の前端部40aから上方に延びるように折曲されて後板片41が立設されている。後板片41には、前後方向に貫通している挿通孔41hが上下方向に並んで複数開設されている。後板片41の各挿通孔41hは、前板片31の各挿通孔31hよりも径が小さく形成されている。また、後板片41の各挿通孔41hは、前板片31の各挿通孔31hに対応するように上下方向の略位置に開設されている。そして、基板部40の後端部40bから下方に延びるように折曲されて連結部42が形成されている。連結部42は、リベット8等により受具本体5と連結されている。また、連結部42は、後述する受具本体5の後耳保持部52の後方に形成されている凸部52aが係合する凹所42aが形成されている。なお、第二板体4は、リベット8により第一板体3や受具本体5と固定されているが、これに限定されることはなく、ボルトや蝶ナット等により連結されてもよく、溶接等で固定されてもよい。
なお、本実施形態では、挟持固定部2に3対の挿通孔31h,41hが開設されているが、これに限定されることはない。
【0019】
受具本体5は、前方に軒樋7の前耳71を保持する前耳保持部51と、後方に軒樋7の後耳72を保持する後耳保持部52とを有する。受具本体5は、前耳保持部51が設けられている前方支持片5Aと、後耳保持部52が設けられている後方支持片5Bとがそれぞれ別体の帯板により形成されている。前方支持片5Aは、後耳保持部52に対して後述する回転軸9を中心にして回動可能に連結されている。
【0020】
前方支持片5Aは、上方に前耳71が載置される載置部53が形成され、その近傍に別体の折曲可能な薄板により形成された前耳保持部51が設けられている。前耳保持部51は、リベット8等により前方支持片5Aに固定されている。図1の側面図に示すように、前耳保持部51は、後方に横倒し略V字状に折曲して突出形成された係合部51aが設けられている。前方支持片5Aの上端部5Aaには、前方に突出して形成された掛止片54が形成されている。掛止片54は、前方支持片5Aの他の部位よりも幅方向の寸法が小さく形成されており、前耳保持部51に設けられている凹所51bに挿通されている(図2(a)参照)。凹所51bに掛止片54が挿通されることで、前耳保持部51が、リベット8を軸にして回転しにくくなる。また、掛止片54は、前方に下がり傾斜して形成されている。図2(b)に示すように、前方支持片5Aの下端部5Abは、後方向に折曲された折曲片55が形成されている。折曲片55は、後述する規制片58cに対応するように、幅方向の一方が矩形状に切り欠かれて切欠部55aが形成されている。前方支持片5Aの下方には、後述する後方支持片5Bの連結片58に開設されている軸孔58hと上下方向の略同位置に、回転軸9が挿通される軸孔5Ahが開設されている。
【0021】
図1に示すように、後方支持片5Bは、側面視して略C字状(略コ字状)に折曲されて後耳保持部52が形成されている。後耳保持部52は、後方に突出している矩形状の凸部52aが形成され、連結部42の凹所42aに係合されている(図2(c)参照)。これにより、受具本体5は、第二板体4に対してリベット8等を軸にして回動しないように強固に固定されている。そして、後耳保持部52の前方下端部52bから下方に延びて軒樋7の後面に近接または当接する後面支持部56が形成され、後面支持部56の下端部56aから前方向に折曲されて、軒樋7の下面に当接する下面支持部57が形成されている。下面支持部57の前端部57aから下方に折曲されて、連結片58が形成されている。
【0022】
連結片58の中央部には回転軸9が挿通される軸孔58hが開設されており、連結片58の下方には、軸孔58hを中心にして形成された円弧部58aと、円弧部58aの下端部58bから下方に突出した規制片58cとが形成されている。規制片58cの幅寸法は、前方支持片5Aの折曲片55に形成されている切欠部55aと幅寸法が略同じに形成されている。規制片58cは、前方支持片5Aの切欠部55aの側壁55aaに当接することで、前方支持片5Aの回転を規制する回り止めとなり、前方支持片5Aが軒樋7を支持できるように確実に位置づけすることができる。
【0023】
上述した第一板体3、第二板体4、前方支持片5A、後方支持片5Bは、ステンレス等の金属製の帯板で形成されており、その幅寸法は略同一である。なお、これに限定されることはなくその他の金属材料や樹脂材で形成されてもよい。
また、第一板体3、第二板体4、前方支持片5A、前耳保持部51、後方支持片5Bは、それぞれ別体で形成されているので、リベット8や回転軸9等で連結せずに、分解された状態でケースや倉庫等に収容されてもよい。そのようにすれば、一体形成された軒樋支持具をケースや倉庫等に収容する場合と比べて、収容スペースが小さくなる。そして、注文等があれば、必要な分だけ軒樋支持具1を組立てればよい。本発明の軒樋支持具1は、リベット8や回転軸9等で連結されるので、組立作業も容易に行うことができる。
【0024】
次に、上述の軒樋支持具1を、軒先6に固定する手順について説明する。
軒先6は、建物の上部を覆う屋根の外縁部から略鉛直に下方向に延びて形成されている。この軒先6の下端部付近の前面に対して、軒樋支持具1の前板片31のガイド面31caを接触させる(図3(a)参照)。そして、前板片31と後板片41との間の前後方向の空隙sに軒先6の下部が挟まれるように、軒樋支持具1を上方向に上昇させる。
【0025】
軒樋支持具1が所定の位置に配されたら、ドリルねじDの先端が軒先6の前面に接触するまで前板片31の挿通孔31h内に挿入させる。そして、電動ドライバー等の工具により、ドリルねじDを軒先6に螺入させる。ドリルねじDは、先端が切り刃となっているので、軒先6にあらかじめ挿通孔が形成されていなくても、ドリルねじDの回転により、軒先6に孔をあけながら螺入される。ドリルねじDの先端が軒先6を貫通すると、ドリルねじDの先端は、ドリルねじDが挿通されている前板片31の挿通孔31hと上下方向の略同位置の後板片41の挿通孔41hに案内される。そして、ドリルねじDは、後板片41の挿通孔41hの内周面にタップを切って雌ねじ41h’を形成して螺合される。同様にして、他の挿通孔31h,41hにドリルねじDを挿入させる。これにより、軒樋支持具1は、軒先6に固定される(図2(b)参照)。後板片41にドリルねじDによって雌ねじ41h’が形成されるので、ナット等を固着具に螺合させる必要がなくなり、容易に軒樋支持具1を軒先6に固定することができる。さらにドリルねじDが挿通孔31h,41hに挿通されることで、ドリルねじDは、第一板体3が第二板体4に対してリベット8を軸にしての回転を阻止する回り止めとなる。
【0026】
ドリルねじDは、全ての挿通孔31h,41hに挿入させる必要はなく、2箇所程度の挿通孔31h,41hに挿入させれば、軒樋支持具1は軒先6に十分な強度で固定される。本実施形態では、ドリルねじDを2つ用いて軒樋支持具1が軒先6に固定されている。なお、ドリルねじDが工具を用いて挿通孔31h,41hに挿入される際に、前方支持片5Aが作業の邪魔になるようならば、前方支持片5Aを後方支持片5Bに対して後述する横倒し状態にしてから、ドリルねじDを挿通孔31h,41hに挿入させてもよい。
【0027】
次に軒先6に固定された軒樋支持具1に軒樋7を支持させる手順について説明する。
軒樋支持具1は、前方支持片5Aが回転軸9を軸にして回動させることで、前方支持片5Aは後方支持片5Bに対して略水平の横倒し状態となり、軒樋支持具1の前方が開放される(図4(a)参照)。この状態で、軒樋支持具1の前方から軒樋7を差し入れ、後耳保持部52が軒樋7の後耳72を保持して軒樋7を仮支持する。そして、横倒し状態の前方支持片5Aを横倒し状態にするときとは逆方向に回転軸9を軸にして回動させる。前方支持片5Aは、切欠部55aの側壁55aaが後方支持片5Bの規制片58cに当接することで、それ以上の回転が規制され、前方支持片5Aは後方支持片5Bに対して起立し、前方支持片5Aが軒樋7を支持できるように確実に位置づけされる。
【0028】
そして、載置部53に前耳71が載置された状態で、前耳保持部51を軒樋7側に折り曲げることで、前耳保持部51が軒樋7の前耳71を保持する(図4(b)参照)。これにより、軒樋支持具1は軒樋7を支持する。なお、軒樋7が前耳71に凹所71aが形成されていれば、前耳保持部51の係合部51aが前耳71の凹所71aに係合されるように、前耳保持部51を軒樋7の内面側に折り曲げてもよい(図4(c)参照)。前耳保持部51の係合部51aが前耳71の凹所71aに係合されることで、強風等の様々な荷重が軒樋7にかかっても、軒樋7が軒樋支持具1から脱落することを十分に防止することができる。
【0029】
後方支持片5Bの連結片58には、前方に突出する凸部又は前後方向に開設する凹部が形成されてもよい。そして前方支持片5Aには、前方支持片5Aの切欠部55aの側壁55aaが規制片58cに当接している状態において連結片58の凸部又は凹部に嵌合する凹所又は凸所が形成されてもよい。凸部又は凹部と凹所または凸所とが嵌合しあうので、嵌合しあったときの感触と、嵌合した際に発する音とにより前方支持片5Aの位置づけが簡単に行うことができ、さらに、前方支持片5Aの回動が嵌合によりロックされる回り止めとなる。
【0030】
軒樋支持具1が軒樋7を支持したら、必要に応じて第一板体3の掛止片32に、紐、針金、ワイヤ等の紐状体Tの一端を引っ掛けや巻きつけ、結びつけ等で固定し、紐状体Tの他端を前方支持片5Aの掛止片54に引っ掛けや巻きつけ結びつけ等で固定する(図4(d)参照)。紐状体Tが掛止片32,54を掛け渡すように掛止されるので、積雪や強風等により前方支持片5Aの回動のロックが外れることや、強風や軒樋7内に溜まった雨水や積雪等の荷重による軒樋支持具1の変形等が防止される。また、前板片31は、軒先6の前面に密着しているので、掛止片32に掛止した紐状体Tの一端が、前板片31の上端部31aよりも下方にずれ落ちにくくなっている。なお、紐状体Tを掛止片32,54に固定する順序は特に限定されない。
【0031】
次に、軒樋支持具1の変形例について説明する。なお、上述した軒樋支持具1を第1実施形態とし、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。
図5(a)の軒樋支持具1は、第二板体4の後板片41の上端部41aから後方に上り傾斜して折り曲げられているガイド部43が形成されている。これにより、軒先6の下端部付近の前面に対して、軒樋支持具1の前板片31のガイド面31caを接触させて軒樋支持具1を上方向に上昇させる際に、ガイド部43に沿って挟持固定部2が軒先6の下端部に誘導されやすくなる。
【0032】
また、図5(a)の空隙sの前後方向の寸法は、軒先6の厚み寸法よりもわずかに小さく形成されてもよい。ガイド部43により挟持固定部2が軒先6の下端部に誘導されたあと、下方からハンマー等の工具や作業者の手の力により、軒樋支持具1を上方に押し込む。これにより、挟持固定部2が空隙s内に軒先6が配されるように前後方向に拡開して、軒樋支持具1は上昇し、所定の位置に配される。挟持固定部2は元の状態に戻ろうと軒先6を前板片31と後板片41とで前後方向に締め付ける力が働くので、軒樋支持具1は、作業者が軒樋支持具1から手を離しても軒樋支持具1が軒先6から落下しない仮固定状態となる。軒樋支持具1は仮固定状態となるので、作業者の両手が自由となり、ドリルねじDによる軒樋支持具1の固定作業が容易に行える。
【0033】
図5(b)の軒樋支持具1は、挟持固定部2の空隙sが上方につれて拡開するように、前板片31が前方にわずかに傾斜して形成されている。これにより、空隙sの上側が広くなるので、軒先6に軒樋支持具1を固定する作業の際、軒先6が挟持固定部2の空隙sに入り込みやすくなる。そして、ドリルねじDの先端を前板片31の挿通孔31hにあてがい、電動ドライバー等の工具により、ドリルねじDを軒先6に螺入させることで、傾斜していた前板片31が、軒先6の前面に密着するように変形する。なお、前板片31が傾斜することに限定されることはなく、後板片41が後方に傾斜されてもよく、前板片31、後板片41の両者が、空隙sが上方につれて拡開するように前後方向に傾斜して形成されてもよい。
【0034】
さらに第二板体4と受具本体5の後方支持片5Bとは、一体に形成されている。第二板体4の基板部40の後端部40bから下方に延びて後耳保持部52が形成されている。後耳保持部52の前方下端部52bから下方に延びて後面支持部56が形成され、後面支持部56の下端部56aから前方向に折曲されて、下面支持部57が形成されている。下面支持部57の前端部57aから下方に折曲されて、連結片58が形成されている。
【0035】
また、図5(b)の下部の空隙sの前後方向の寸法が、軒先6の厚み寸法よりも小さく形成されてもよい。軒先6の下端部が下部の空隙sに到達することで、挟持固定部2が軒先6を締め付け、作業者が軒樋支持具1から手を離しても、軒樋支持具1は軒先6から落下しない仮固定状態となる。
【0036】
図5(c)の軒樋支持具1は、第二板体4の連結部42が第1実施形態と比べてさらに下方に延びて形成されている。そして、連結部42は、上下方向に延びた長孔42bが開設されている。受具本体5の後耳保持部52には、連結部42と当接する面に挿通孔52cが開設されている。後耳保持部52の挿通孔52cと連結部42の長孔42bとが前後方向に重なった状態で、ボルト8aが前方から挿通孔52c,長孔42bとに挿通されて蝶ナット8bにより締結される。これにより、受具本体5は、蝶ナット8bの締結を緩めることで、連結部42に対して上下方向にスライド移動が可能となる。受具本体5は、挟持固定部2に対して上下方向の所定の位置に固定することができる。そのため、軒樋支持具1が軒先6に固定された後に、軒樋7の水勾配に合わせて、受具本体5の上下位置を調整することができる。なお、第1実施形態と同様に、後耳保持部52に凸部52aが形成されてもよい。凸部52aが長孔42b内に挿通されれば、凸部52aは、受具本体5が連結部42に対してボルト8aを軸にして回転しない回転止めとなる。さらに、ボルト8aは、根角ボルトとし、挿通孔52cが根角ボルトの角状部位に合致する形状であってもよい。根角ボルトの頭部の根元の角状部位が挿通孔52cに嵌合すれば、根角ボルトが後耳保持部52に対して回転しにくくなるので、蝶ナット8bの操作が容易に行いやすくなる。
【0037】
図5(d)の軒樋支持具1は、第一板体3と受具本体5の後方支持片5Bとが一体に形成されている。第一板体3の基板部30の後端部30bから下方に延びて後耳保持部52が形成されている。後耳保持部52の前方下端部52bから下方に延びて後面支持部56が形成され、後面支持部56の下端部56aから前方向に折曲されて、下面支持部57が形成されている。下面支持部57の前端部57aから下方に折曲されて、連結片58が形成されている。また、第1実施形態とは異なり、前板片31の上端部31aから掛止片32が形成されておらず、前板片31の適所に前方に切り起こし形成された掛止片32が上り傾斜して形成されている。そのため、掛止片32は、上端部31aよりも下方に位置している。第二板体4の基板部40は、第一板体3の基板部30の上方に重なるように配され、第二板体4の基板部40の後端部40bが、第一板体3の基板部30の前後方向の中間付近に位置するように形成されている。
【0038】
また、第1実施形態とは異なり、掛止片54は、前耳保持部51の適所に切り起こし形成されて、下がり傾斜して前方に突出して形成されている。掛止片54は、切り起こされた根元が前方支持片5Aの上端部5Aaと上下方向の略同位置かそれより下方に形成されるのが望ましい。そのようにすれば、前耳保持部51を内方に折曲した後、掛止片54,32に紐状体Tが掛止されても、紐状体Tが掛止片54にかける力によって、前耳保持部51が上方に起こされにくくなる。
【0039】
そして、前耳保持部51の係合部51aは、第1実施形態と異なり、前耳保持部51を折曲して形成されておらず、前耳保持部51の適所を切り起こして2つの係合部51aが突出形成されている。係合部51aは、切り起こし形成されているので、係合部51aが不要な場合は、切り起こし形成の際に形成された凹所に係合部51aが収納されてもよい。
【0040】
本発明の軒樋支持具1は、上述した各実施形態の軒樋支持具1の特徴的部分を適宜組み合わせて形成されてもよい。例えば、第1実施形態や図5(c)、図5(d)の各軒樋支持具1の空隙sの前後方向の寸法が、軒先6の厚み寸法よりもわずかに小さく形成されてもよい。また、軒樋支持具1は、上述した各実施形態に限定されることはなく、適宜設計されて構成されればよい。例えば、後板片41の上端部41aが、前板片31の上端部31aよりも上方に位置する構成であってもよい。その場合は、後板片41の前面の前板片31と前後方向に重ならずに露出している部分が、ガイド面となる。また、掛止片32,54は、別体で形成したものを溶接等で固着してもよい。さらに上述した各前耳保持部51には、係合部51aが形成されているが、形成されていなくてもよい。なお、本発明の軒樋支持具1は、あらかじめ下孔が開設されている軒先6に固定されてもよく、ドリルねじ以外の固着具により軒先6に固定されてよい。
【符号の説明】
【0041】
1 軒樋支持具
2 挟持固定部
31 前板片
31a 上端部
31h 挿通孔
32 掛止片
41 後板片
41a 上端部
41h 挿通孔
5 受具本体
51 前耳保持部
51a 係合部
52 後耳保持部
54 掛止片
6 軒先
7 軒樋
D ドリルねじ(固着具)
T 紐状体
図1
図2
図3
図4
図5