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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ウォーターサーバー
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/12 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B67D1/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020124384
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021036
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】316003276
【氏名又は名称】株式会社コスモライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】荒川 眞吾
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083329(JP,A)
【文献】特表2009-535207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置された調温タンクと、
浄水フィルタと、
その浄水フィルタを介して前記調温タンクに飲料水を送り込むポンプと、
前記調温タンク内の飲料水を筐体の外部に注出する注出管と、
前記注出管を開閉する注出弁と、
前記注出管から飲料水を注出するためにユーザーが操作する操作部と、
時計部と、
注出される飲料水の量を直接的に又は間接的に計測する水量計部と、
前記時計部の出力及び前記水量計部の出力に基づいて、あらかじめ設定された所定時間ごとの既に注出された既飲料水注出量を計算する制御部と、
前記所定時間あたりの飲料水注出量の上限値と、前記既飲料水注出量とを記録する記憶部と、を有し、
前記制御部は、前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているか否かを判定する利用限度到達判定手段と、前記既飲料水注出量が前記上限値に達していないときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときに飲料水の注出を許容する水注出許容状態にし、前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときにも飲料水の注出を制限する水注出制限状態にする注出可否制御手段とを実行するように構成されているウォーターサーバー。
【請求項2】
前記注出弁は、ユーザーによる前記操作部の注出操作に応じて開閉する電磁開閉弁であり、
前記注出可否制御手段(S112、S131)は、前記利用限度到達判定手段(S111)で前記既飲料水注出量が前記上限値に達していると判定されたときは、前記水注出制限状態として、前記操作部の注出操作があったときにも前記注出弁の閉弁を維持し、一方、前記利用限度到達判定手段(S111)で前記既飲料水注出量が前記上限値に達していないと判定されたときは、前記水注出許容状態として、前記操作部の注出操作に応じて前記注出弁を開弁させる、請求項1に記載のウォーターサーバー。
【請求項3】
外部の利用制限変更キーから利用制限変更情報を読み取る読取部を有し、
前記制御部は、前記利用制限変更情報を読み取った条件下においては、前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているときでも前記水注出制限状態にせず、水注出許容状態を維持する
請求項1又は2に記載のウォーターサーバー。
【請求項4】
外部の利用制限変更キーから利用制限変更情報を読み取る読取部を有し、
前記制御部は、前記利用制限変更情報を読み取った条件下においては、前記上限値を既定の値よりも大きい値に更新する限度情報更新手段を実行する
請求項1又は2に記載のウォーターサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザーによる利用量を制限可能なウォーターサーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にオフィスや病院などでウォーターサーバーが利用されてきたが、近年は水の安全や健康への意識の高まりから、一般家庭においてもウォーターサーバーが普及しつつある。
【0003】
ウォーターサーバーは、一般に、筐体と、筐体の内部に配置された冷水タンクと、冷水タンクに供給するための飲料水が充填された交換式の水ボトルと、冷水タンク内の低温の飲料水を筐体の外部に注出する冷水注出管と、冷水注出管を開閉する冷水注出弁と、冷水注出管から低温の飲料水を注出するためにユーザーが操作する操作部とを有し、その操作部を操作することで、いつでもすぐに美味しい冷水を利用することができ、優れた利便性をもつ(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
これらのウォーターサーバーの水ボトルは、ユーザーが業者から購入して使用される。すなわち、ユーザーは、筐体にセットされた水ボトル内の飲料水が無くなって空になると、その空の水ボトルを満水状態の新品の水ボトルに交換する。新品の水ボトルは、ユーザーが業者から購入し、ユーザーによって筐体にセットされる。
【0005】
また、ウォーターサーバーとして、筐体と、筐体の内部に配置された冷水タンクと、浄水フィルタと、その浄水フィルタを介して冷水タンクに飲料水を送り込むポンプと、冷水タンク内の低温の飲料水を筐体の外部に注出する冷水注出管と、冷水注出管を開閉する冷水注出弁と、冷水注出管から低温の飲料水を注出するためにユーザーが操作する操作部とを有する浄水フィルタタイプのものも知られている(特許文献3)。ポンプに供給される水は、タンクに充填した水道水を用いることができる。
【0006】
一方、ウォーターサーバーの本体部分(水ボトル以外の部分)は、一般に、ユーザーが業者からレンタルして使用することが多い。これにより、ユーザーは、ウォーターサーバーの本体部分を購入するための初期費用を必要とせずに、ウォーターサーバーを利用することができるというメリットがある。浄水フィルタタイプのウォーターサーバーでは、浄水フィルタもユーザーが業者からレンタルして使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-228807号公報
【文献】特開2014-169120号公報
【文献】特許第2542528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、浄水フィルタタイプのウォーターサーバーは、飲料水を使用するにつれて、浄水フィルタが次第に目詰まりしていく。そこで、浄水フィルタタイプのウォーターサーバーの性能を維持するため、一般に、所定の利用可能期間が経過するごとに、新品の浄水フィルタを事業者がユーザーに配送し、使用中の浄水フィルタを新品の浄水フィルタに交換することが行われる。
【0009】
一方、浄水フィルタの使用限界は時間経過に依存するのではなく、フィルタリングする水の総量に依存する。このため、ユーザーが、浄水フィルタを交換するまでの所定の利用可能期間であれば、浄化された飲料水が無制限に利用できると考え、大量の飲料水を利用した場合、浄水フィルタの使用限界に早々に到達してしまう。この場合、ユーザーは、浄水フィルタで十分に浄化された飲料水を利用しているつもりでも、実際には、ユーザーが気づかないうちに、浄化が不十分な飲料水(使用限界を超えた浄水フィルタを通った飲料水)を利用しているという不具合が生じてしまう。また、使用限界に達したフィルタはポンプに対する負荷も大きい。その負荷がポンプの寿命を大きく縮め、早期に不具合が生じてしまう。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、ユーザーが気づかないうちに浄化が不十分な飲料水を利用してしまう事態やポンプ寿命の短縮を防ぐことが可能な浄水フィルタタイプのウォーターサーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成のウォーターサーバーを提供する。
筐体と、
前記筐体の内部に配置された調温タンクと、
浄水フィルタと、
その浄水フィルタを介して前記調温タンクに飲料水を送り込むポンプと、
前記調温タンク内の飲料水を筐体の外部に注出する注出管と、
前記注出管を開閉する注出弁と、
前記注出管から飲料水を注出するためにユーザーが操作する操作部と、
日時データを出力する時計部と、
注出される飲料水の量を直接的に又は間接的に計測する水量計部と、
あらかじめ設定された所定時間あたりの飲料水注出量の上限値と、前記所定時間ごとの既に注出された既飲料水注出量とを記録する記憶部と、
前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているか否かを判定する利用限度到達判定手段と、前記既飲料水注出量が前記上限値に達していないときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときに飲料水の注出を許容する水注出許容状態にし、前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときにも飲料水の注出を制限する水注出制限状態にする注出可否制御手段とを実行する制御部と、を有するウォーターサーバー。
【0012】
このようにすると、前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量がまだ前記上限値に達していないと利用限度到達判定手段で判定されたときは、注出可否制御手段によって、ユーザーが操作部を操作したときに飲料水の注出が許容される。一方、前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量が前記上限値に達していると利用限度到達判定手段で判定されたときは、注出可否制御手段によって、ユーザーが操作部を操作したときにも飲料水の注出が制限される。前記所定時間あたりの飲料水注出量の上限値として、浄水フィルタを長期間交換しなくても浄水フィルタの機能を確保し続けることができる値を設定する。例えば、浄水フィルタの仕様上の使用限界を360で除算した値以下の値を1日あたりに相当する上限値として設定すると、少なくとも一年間は浄水フィルタの使用限界に到達しないことになる。これにより、浄水フィルタの使用限界に早々に到達してしまうような、短期間での過度の使用を行ってしまう前に、注出を停止させることができる。一旦注出が停止になっても、設定された所定時間が経過したら自動的に再び注出が可能になるので、ユーザーはウォーターサーバーに対して特段の作業を行わなくてもよい。また、注出が停止になることで、ユーザーは自分の使用量が推奨されている使用量を超えていたことに気づく。所定時間あたりの注出量が適度に抑えられるので、浄水フィルタの使用限界に到達するまでの期間を長く確保することができる。浄水フィルタの交換作業が難しい高齢者一人世帯のようなユーザーであっても、長期間に亘って浄水フィルタの交換をすることなく、十分に浄化された飲料水を適度なペースで利用し続けることができる。
【0013】
前記注出弁として、ユーザーによる前記操作部の注出操作に応じて開閉する電磁開閉弁を採用する場合、
前記注出可否制御手段は、前記利用限度到達判定手段で前記既飲料水注出量が前記上限値に達していると判定されたときは、前記水注出制限状態として、前記操作部の注出操作があったときにも前記注出弁の閉弁を維持し、一方、前記利用限度到達判定手段で前記既飲料水注出量が前記上限値に達していないと判定されたときは、前記水注出許容状態として、前記操作部の注出操作に応じて前記注出弁を開弁させるものを採用することができる。
【0014】
このようにすると、すでに前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量が前記上限値に達していると利用限度到達判定手段で判定されたときは、ユーザーによる操作部の注出操作があったときにも、注出弁の閉弁が維持されるので、飲料水が注出されない。また、前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量が前記上限値に超えたときに、即座に飲料水の利用を制限することが可能である。
【0015】
この発明にかかるウォーターサーバーは、外部の利用制限変更キーから利用制限変更情報を読み取る読取部を有し、
前記制御部は、前記利用制限変更情報を読み取った条件下においては、前記既飲料水注出量が前記上限値に達しているときでも前記水注出制限状態にせず、水注出許容状態を維持する構成を採用することもできる。
【0016】
外部の利用制限変更キーは、浄水フィルタ及びウォーターサーバーを提供する業者から別途提供することができる。ユーザーが短期間に大量の飲料水を利用して浄水フィルタの使用限界に早々に達してしまうのを防ぎ、浄化が不十分な飲料水を利用してしまう事態を防ぐのがこのウォーターサーバーの効果である。だが、ユーザーが、フィルタリングする水の総量に応じて浄水フィルタを適宜交換する必要性を理解し、自分で交換できるのであれば、業者は必要に応じて浄水フィルタを配達するだけでよくなる。そのように自分で交換できるユーザーに対して、業者は利用制限変更キーを提供する。この利用制限変更キーから前記利用制限変更情報を読み取った条件下においては、水注出許容状態を維持し続けるので、ユーザーは前記所定時間の上限値を気にすることなく、短期間に比較的多量の飲料水を利用できる。これにより、ウォーターサーバー自体を交換することなく、ユーザーが大量の飲料水を必要とするケースにも対応できるようになる。
【0017】
利用制限変更キーとしては、USBメモリやSDカード(登録商標)、ICカードなどの情報記録媒体を用いることができる。読取部としては、USBメモリであればUSB端子、SDカードなどのメモリカードであればそのリーダー、ICカードであればその規格に対応したリーダーなどが用いられる。これらの読取部によって利用制限変更情報を読み取ることができる条件下では、制御部のプログラムがフローを変更する。
【0018】
この発明にかかるウォーターサーバーは、また別の形態として、外部の利用制限変更キーから利用制限変更情報を読み取る読取部を有し、
前記制御部は、前記利用制限変更情報を読み取った条件下においては、前記上限値を既定の値よりも大きい値に更新する限度情報更新手段を実行する構成を採用することもできる。
【0019】
浄水フィルタを適宜交換する必要性を理解したユーザーであっても、ウォーターサーバーの利用にまったく制限がなくなってしまうと、当初想定していたよりも過剰に飲料水を利用してしまうおそれがある。そうなると、ユーザーが想定しているよりも早く浄水フィルタの使用限界を超えてしまい、理解しているユーザーであっても気づかないうちに浄化が不十分な飲料水を利用してしまう可能性がある。この構成によると、制限なく水注出許容状態にするのではなく、前記上限値を当初の既定の値よりも大きい値に更新して、前記所定時間ごとの既飲料水注出量がその大きい値に到達したときには水注出制限状態に変更して、極端に過剰な利用だけを防ぐことができる。業者は、依頼を受けてそのような構成にした利用制限変更キーを提供したユーザーを把握しておくことができ、そのユーザーは利用制限変更キーを提供していないユーザーよりも早いタイミングで浄水フィルタを交換しなければならないことを把握できる。これにより業者は、更新される大きな値での上限値までウォーターサーバーを利用した場合に浄水フィルタを交換すべきタイミングで、そのユーザーに対して業者が浄水フィルタを配達することができる。ユーザーはこれを交換することで、元の既定の値よりも大きい値となる時間あたりの潤沢な量の飲料水を、十分に浄化された状態を維持して利用し続けることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のウォーターサーバーは、浄水フィルタの使用限界に早期に達してしまうおそれがある過度の利用を防止し、ユーザーが気づかないうちに浄化が不十分な飲料水を利用してしまう事態を防いで、ユーザーが十分に浄化された飲料水を使い続けることができる。使用限界に達するまでの時間を長く確保できるため、長期間に亘って浄水フィルタを交換することなくウォーターサーバーを利用できる。また、ポンプに対する負荷が上昇する使用限界に達した後の利用を防止できるので、ポンプの長寿命化が実現でき、ウォーターサーバー自体をメンテナンスする手間を減らすことができる。
【0021】
また、ウォーターサーバーおよび浄水フィルタを提供する業者はユーザーからの依頼に応じて、利用制限変更キーを送付して、所定時間に利用できる飲料水の上限値を上昇させるか、又は上限を撤廃できるようにすることができる。これにより、ユーザーはウォーターサーバー自体を交換することなく、必要なタイミングで浄水フィルタを交換することで持続的に十分な量の良質な飲料水を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の第一の実施形態にかかるウォーターサーバーの制御部分の機能ブロック図
図2】第一の実施形態での制御フロー図
図3】この発明の第二の実施形態にかかるウォーターサーバーの制御部分の機能ブロック図
図4】第二の実施形態での制御フロー図
図5】この発明の第二の実施形態にかかるウォーターサーバーの例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、この発明の第一の実施形態にかかるウォーターサーバーの制御に関する機能ブロック図を示す。ウォーターサーバーの筐体1の中には、ポンプ6、注出弁19、調温装置18が設けられている。これらの部材は、ソフトウェアを備えた演算装置である制御部73によって制御される。制御部73には、操作部(注出操作スイッチ61)、水位センサ24、水量計部65、温度センサ28、時計部75からの信号が入力される。
【0024】
また、このウォーターサーバーは、所定時間あたりの飲料水注出量の上限値L、所定時間ごとの既に注出された既飲料水注出量n、浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量N、浄水フィルタを交換した時点からの時間経過、その他の必要な情報を記録して保存しておく記憶装置である記憶部74を有するとよい。停電やコンセントの抜けなどによってそれらの情報がリセットされることがないように、磁気ディスクや不揮発性メモリに記録されていると望ましい。衝撃耐久性の点から不揮発性メモリが特に望ましい。
【0025】
このうち、所定時間あたりの飲料水注出量の上限値Lは既定値として最初から記憶部74に記録させておくとよい。後述する第二の実施形態などの特定の条件下でこの上限値Lは変更可能であってよい。所定時間あたりの飲料水注出量の上限値Lを既定する所定時間と、所定時間ごとの既飲料水注出量nを規定する所定時間とは、そのウォーターサーバーにおいて共通の値とする。例えば、上限値Lを1か月あたりの値で規定する場合、既飲料水注出量nも1か月ごとの値で規定する。この所定時間はウォーターサーバーを提供する業者が必要に応じて、またはユーザーからの指定に応じて、適宜決定してよい。例えば、1日、数日、1週間、10日、1か月など、ユーザーが区切りとしてわかりやすい期間が望ましい。ただし、この所定時間が2か月以上となると一旦ウォーターサーバーから注水ができなくなった場合に、再び注水可能になるまで待つ期間が長くなりすぎて不便である。このため、前記所定時間は1か月以内が好ましい。一方、所定時間が半日以下になると、ユーザーが1日の間に利用するタイミングを自由に調整しにくくなってしまう。このため、前記所定時間は1日以上が好ましい。
【0026】
さらに、ウォーターサーバーは日時データを出力する時計部75を有する。制御部73は、この日時データに基づき、前記所定時間ごとの既に注出された既飲料水注出量nの積算を開始する開始時点を決定する。前記所定時間が1日から数日程度である場合は、基本的にはその日の午前0時開始であってよい。また、前記所定時間が1週間以上の週単位である場合には、例えば月曜日の午前0時などの、ユーザーがわかりやすいタイミングであると好ましい。生活時間に合わせて前記所定時間の開始時点となる時刻を変更できてもよい。変更可能である場合、ウォーターサーバーは、時計部75または制御部73に接続される、開始時点となる時刻を変更するための入力インターフェース(図示せず)と、設定した値を表示するための表示部(図示せず)とを有するとよい。
【0027】
なお、時計部75からの日時データに基づいて前記所定時間ごとの既飲料水注出量nを積算する別の形態として、その時点の直前の前記所定時間に亘る既飲料水注出量を積算してもよい。直前の前記所定時間に亘る既飲料水注出量に応じて後述する処理をする場合、制御部73は、飲料水を注出するたびに、その注出量と注出した日時データとを併せて記憶部74に記憶する。次に飲料水を注出する際には、記憶部74に記録されている直前の前記所定時間分の既飲料水注出量を積算し、上限値Lに達しているか否かの判断を行う。
【0028】
ウォーターサーバーは、注出される飲料水の量を直接的に又は間接的に計測する水量計部65を有する。直接的に計測するとは、ウォーターサーバーから注出される実際に流れる水量を測定するものである。間接的に計測するとは、注出される水量そのものではないが、注出される水量に相当する量の水量を計測したり、注出される水量を算出可能な水量以外のデータを計測したりすることで、実質的に注出される飲料水の量を求めることをいう。例えば、ウォーターサーバー内部の最終的に注出される弁に繋がる配管のいずれかの箇所の水量を測定することが挙げられる。水量以外のデータから水量を求める方法としては、例えば、時間あたりの注出量が一定であるポンプ6の作動時間や弁を使用している時間を測定し、その時間を累計することで、最終的に注出される飲料水の量を時間あたりの注出量と時間との積として算出することが挙げられる。
【0029】
なお、ウォーターサーバー内で飲料水の流れが並列となっている並列区間を有する場合は、並列区間のそれぞれに設けられた水量計部65がそれぞれの区間を流れる飲料水の量を測定する構成となっていてもよい。例えば、注出管及び注出弁が、冷水用と温水用とに並列に設けられている場合、冷水の区間を流れる冷水注出量と、温水の区間を流れる温水注出量とを合計することで、注出される既飲料水注出量nを測定することができる。一方、フローが並列となっていない区間に水量計部65を設ける場合は、一か所でよい。例えば、浄水フィルタに飲料水を送り込むポンプが一基のみである場合には、その一基のポンプやその前後の箇所に水量計部65が一つ設けられていれば、注出されることになる既飲料水注出量nに相当する量を測定することができる。注出弁や注出管よりも上流側に設けられた水量計部65で測定される水量は、既飲料水注出量nを直接的に測るものではないが、注出される飲料水とほぼ同量の水が通過することになるため、間接的に既飲料水注出量nを測定することができる。
【0030】
水量計部65で得られた注出される飲料水の量は、基準となる時点からの合計値として前記の記憶部74に記憶される。これにより、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nの値、及び浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量Nを算出できる。
【0031】
この実施形態にかかるウォーターサーバーでは、制御部73が、前記所定時間ごとの既に注出された既飲料水注出量nが前記上限値Lに達しているか否かを判定する利用限度到達判定手段を実行する。前記所定時間ごとの値とは、例えば、前記所定時間の開始時点から終了時点までの既飲料水注出量nを積算した値や、判定する時点の直前の前記所定時間分に注出した既飲料水注出量nの合計した値である。ユーザーにとっては前記所定時間の開始時点から終了時点までの積算である方がわかりやすい。開始時点は、午前0時などのわかりやすい時刻であると好ましい。なお、この判定にあたっては、既飲料水注出量nを加算していった値が上限値Lに到達するのと同義の計算ができるのであれば、算出方法は限定されない。例えば、既飲料水注出量nを上限値Lから順次減算して0に到達したか否かを判定することで、実質的に既飲料水注出量nが前記上限値Lに達していることを判定してもよい。
【0032】
制御部73は、前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量nが前記上限値Lに達していないときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときに飲料水の注出を許容する水注出許容状態にし、前記所定時間ごとの前記既飲料水注出量nが前記上限値Lに達しているときには、前記ユーザーが前記操作部を操作したときにも飲料水の注出を制限する水注出制限状態にする注出可否制御手段を実行する。ユーザーは前記所定時間ごとに、上限値Lの制限の範囲でウォーターサーバーからの飲料水の注出を利用でき、上限値Lに到達したらウォーターサーバーからの飲料水の注出が一時的にできなくなる。
【0033】
ここで、操作部とは、飲料水を筐体の外部に注出する注出管から飲料水が注出される注出状態と、その注出を停止する注出停止状態とを切り替えるためにユーザーが操作する部位のことである。例えば、押すことで注水が開始される機械式のコックや、押すことで電気信号が制御部73に送られて電磁弁や電磁ロックを開放するスイッチ(19,61)が挙げられる。例えば、図1の機能ブロック図では、注出操作スイッチ61と、これを操作されたことを検知した制御部73によって開弁される注出弁19を示す。図では例として弁及びスイッチをそれぞれ1つ記載しているがこれに限定されない。例えば冷水を注出するスイッチと温水を注出するスイッチの2つを有していてもよい。
【0034】
記憶部74には、前記所定時間ごとの既飲料水注出量n、浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量N、上限値Lの他に、前記所定時間の開始時刻や、制御部73が判定を行うための情報やログ、実行のためのソフトウェアなどが記録される。そのほか、ウォーターサーバーの管理用に記憶される情報として、ユーザーが利用している当該筐体1の共通識別番号や、ウォーターサーバーの使用開始日や契約更新日、後述する利用制限変更キー71の固有識別番号や通し番号、利用期限などが記録されていてもよい。
【0035】
調温装置18は、調温タンク7内の飲料水の温度を一定に保つための装置である。調温タンク7が冷水を蓄える冷水タンクであれば冷却装置である。調温タンク7が温水を蓄える温水タンクであれば加熱装置である。調温装置18は操作部への操作とは無関係に、調温内の所定の温度を一定にするように動作し続けているとよい。このために、調温タンク7には、調温タンク7内の温度を測定して制御部73へ出力する温度センサ28が設けられているとよい。制御部73は冷水タンクに対しては温度センサ28からの値が所定の温度以上になったら、冷却装置である調温装置18を動作させたり、調温装置18の出力を上昇させたりする。制御部は温水タンクに対しては温度センサ28からの値が所定の温度以下になったら、加熱装置である調温装置18を作動させたり、調温装置18の出力を上昇させたりする。
【0036】
また、調温タンク7には、水位センサ24が取り付けられる。水位センサ24は調温タンク7内の水位を測定するか、あるいは水位が所定の値以下になったか否かを測定する。制御部73は、水位センサ24から入力された水位が所定の値以下になったことを認識したら、ポンプ6を駆動して調温タンク7に飲料水を送り込む。この送り込む飲料水は、浄水フィルタを介して浄化されたものである。
【0037】
第一の実施形態において、制御部73が行う処理フローの例を図2に示す。初期状態では(S100)、前記所定時間あたりの飲料水注出量の上限値Lは既定値のままである。一般的な浄水フィルタの場合、1か月あたり30リットルに相当する上限値Lとすると、一年間以上にわたって浄水フィルタの使用限界を超えることなく十分に浄化された水を利用できる。また、前記所定時間ごとの既飲料水注出量n、浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量Nはいずれも初期値が0である(S101)。なおフロー中に図示しないが、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nの開始時刻を変更してもよい。特に変更しない場合は既定の値通りとなり、午前0時や午前2時などの深夜に前記所定時間のカウントが終わるとよい。週単位であれば週末や日曜日の24時に前記所定時間のカウントが終わるとわかりやすい。月単位であれば月末に前記所定時間のカウントが終わるとわかりやすい。図2のフローでは前記所定時間として、1か月を設定した例を示す。
【0038】
制御部73は、その時点における1か月ごとの既飲料水注出量nが1か月あたりの飲料水注出量の上限値Lに到達しているか否かを判定する利用限度到達判定手段を実行する(S111)。開始時点ではn=0のまま加算されていないので、L>nとなり(S111→Yes)、制御部73は水注出許容状態に設定する注出可否制御手段を実行する(S112)。操作部にあたる注出操作スイッチ61を押下されなければ(S113→No)、そのままの状態が続く(S116→No)。注出操作スイッチ61が押下されたら(S113→Yes)、水注出許容状態であるので注出を行う(S114)。このとき、水量計部65が測定した注出された水量を1か月ごとの既飲料水注出量nに加算する(S115)。その時点で、1か月が経過していなければ一旦元のフローに戻る(S116→No→S111)。この段階で1か月ごとの既飲料水注出量nが上限値Lに到達していなければ(S111→Yes)、次も同様に水注出許容状態のまま注出を許可する(S112~S116)。
【0039】
1か月ごとの既飲料水注出量nが1か月あたりの飲料水注出量の上限値Lに到達したら(S111→No)、制御部73は水注出制限状態に設定する注出可否制御手段を実行する(S131)。1か月の開始時点の時刻に到達するまでそのままの状態が続く(S132)。この間は注出操作スイッチ61を押下されても飲料水は注出されない。
【0040】
水注出許容状態であるか水注出制限状態であるかにかかわらず、1か月の開始時点の時刻に到達したら(S116→Yes、S132)、浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量Nに、それまでの1か月ごとの既飲料水注出量nを加算し(S121)、1か月ごとの既飲料水注出量nの値をリセットする(S122)。新たな前記所定期間(ここでは1か月)が再び始まると、1か月ごとの既飲料水注出量nがリセットされている。制御部73は利用限度到達判定手段により、1か月ごとの既飲料水注出量nが1か月あたりの飲料水注出量の上限値Lに到達していないと判定し(S111→Yes)、水注出許容状態に設定する注出可否制御手段を実行する(S113)。S113以降の処理は上記と同様になり、1か月ごとにこれを繰り返す。
【0041】
このような制御により、1か月の間に注出できる飲料水の量を最大でも上限値Lまでとすることができ、浄水フィルタの使用限界までの日数を長く確保できる。これにより、ユーザーは長期間に亘って浄水フィルタを交換しなくても、気づかないうちに浄化が不十分な飲料水を利用してしまうことなく、十分に浄化された飲料水を利用し続けることができる。
【0042】
次に図3に、この発明の第二の実施形態にかかるウォーターサーバーの制御に関する機能ブロック図を示す。ウォーターサーバーの筐体1の中には、ポンプ6、注出弁19、調温装置18が設けられている。これらの部材は、ソフトウェアを備えた演算装置である制御部73によって制御される。制御部73には、注出操作スイッチ61、水位センサ24、水量計部65、温度センサ28、時計部75、読取部72からの信号が入力される。
【0043】
第二の実施形態の、第一の実施形態との違いは、読取部72を有することである。この読取部72は、業者からユーザーに供給される利用制限変更キー71から情報を読み取る。利用制限変更キー71は記憶部を有する情報媒体である。この利用制限変更キー71には、制御部73のフローを変更させる識別ファイル、バッチファイル、プログラムファイルなどの利用制限変更情報が記録されており、読取部72から読み取り可能となっている。
【0044】
利用制限変更キー71と読取部72との組み合わせとしては、例えばUSBメモリとUSB端子との組み合わせや、SDカード(登録商標。miniSDカード又はmicroSDカードを含む。)などのメモリカードとそれに対応したメモリカードリーダ、磁気カードやICカードとそれらのカードリーダなどが挙げられる。利用制限変更キー71は郵送などで容易に配達できる媒体であると好ましい。業者がユーザーからの依頼に応じて速やかに配送しやすくなる。
【0045】
この利用制限変更キー71は、読取部72に接続したままの状態で運用すると好ましい。制御部73は、読取部72を介して利用制限変更キー71の利用制限変更情報が読み取り可能であるときに、後述のように処理フローを変更する。
【0046】
利用制限変更キー71に記録されている情報に従って、制御部73の利用制限変更手段が行う変更としては、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nが前記所定時間あたりの上限値Lに達していても制限されることなく水注出許容状態を続けるようにする変更と、前記所定時間あたりの上限値Lの値を既定値よりも大きい値に更新する変更とが挙げられる。この違いはあらかじめ制御部73のプログラムに従っていてもよいし、利用制限変更キー71に記録された利用制限変更情報の内容に従ってもよい。
【0047】
また、利用制限変更キー71には、利用制限変更情報の他に、個々のキーを識別する固有識別番号を有してもよい。このようにすると、業者にとって個々の利用制限変更キー71を管理しやすくなる。また、ウォーターサーバーの制御部73が、それまで使用していた利用制限変更キー71と異なる利用制限変更キー71を受け付けたとき、そのことを判別可能となる。
【0048】
さらに、利用制限変更キー71は、使用されるウォーターサーバーごとに共通する共通識別番号を有していてもよい。この場合、記憶部74には共通識別番号そのもの又は共通識別番号からのハッシュ値などの、照合可能な情報を記憶させておく。どのユーザーの下にあるどのウォーターサーバーにどの共通識別番号が付されているかを業者は管理しておき、そのウォーターサーバーに対応する共通識別番号を有する利用制限変更キー71を該当するユーザーに送付する。共通識別番号を記憶部74の情報と照合させて、一致した場合には正規の使用として扱い、一致しない場合は不正な使用として扱うことで、不正な利用制限変更キー71の利用を防止できる。これにより、業者が把握できない状況で浄水フィルタの使用限界に達してしまい、浄水フィルタによる浄化が不十分になる事態を防止できる。
【0049】
さらにまた、利用制限変更キー71は、利用期限となる日時や利用可能な期間を記録しておいてもよい。この場合、制御部73は、利用期限となる日時に到達したり、利用可能な期間が経過したりしたら、利用制限変更キー71を認識していても、上限値Lを大きい値に更新したり、制限されることなく水注出許容状態を続けるようにする変更を行わないようにする利用制限変更終了手段を実行する。利用制限変更情報が上限値Lを大きい値に更新する情報である場合、利用期限や利用可能な期間は、浄水フィルタの更新された上限値Lにおいて想定される交換期間に対応させておくとよい。すなわち、利用制限変更終了手段が実行されたら、浄水フィルタの交換が推奨されるようにするとよい。このため、利用制限変更終了手段が実行されたことを、液晶やLEDランプなどで表示する表示部(図示せず)を有しているとよい。一方で業者は、ユーザーから連絡を受けなくても、利用期限となるタイミングがわかっているので、それより前に、浄水フィルタとともに、新たな利用制限変更キー71をユーザーに送付する。
【0050】
さらにまた、利用制限変更キー71は、通し番号を記録しておいてもよい。この通し番号は個々のウォーターサーバーで使われる利用制限変更キー71の順番に対応する。例えば、通し番号が1番の利用制限変更キー71の次に利用される利用制限変更キー71の通し番号は2番であるようにし、さらに次に利用される利用制限変更キー71の通し番号は3番であるようにする。順番から外れた通し番号を有する利用制限変更キー71を認識した場合は、不正な使用として扱い飲料水の注出を制限することで、不正な利用制限変更キー71の利用を抑止することができる。なお、通し番号は開始値が1である必要はなく、任意の数値でも文字列でもよい。また、個々の利用制限変更キー71の通し番号の違いは+1の等差数列である必要はなく、所定の法則に従っていればよい。例えば、値の異なる等差数列でもよいし、等比数列などその他の数列の関係にあってもよく、規定できる所定の条件であればよい。
【0051】
読取部72は前記の利用制限変更情報の他に、利用制限変更キー71に記録された固有識別番号、共通識別番号、利用期限や利用可能な期間、通し番号も読み取り可能であるとよい。
【0052】
図4に、この第二の実施形態におけるフロー例を示す。各ステップの番号で図2と共通する番号では同じ処理を行っている。利用制限変更キー71を読み取る読取部72に応じて、S102~S106と、S141~S145の処理が追加されている。読取部72が利用制限変更キー71を認識していない場合(S102→No)は、第一の実施形態と同様のフローになる。
【0053】
読取部72が利用制限変更キー71を認識している場合(S102→Yes)、制御部73は読取部72から利用制限変更情報の他に、固有識別番号、共通識別番号、通し番号など、規格上定められた情報を読み取る。制御部73は、これらの読み取った情報から、利用制限変更キー71が正規のキーであるか否かを判定する正規キー判定手段を実行する(S103)。例えば、利用制限変更情報や固有識別番号などの規格が違っていたり、そもそも読み取れなかったりする場合や、共通識別番号が記憶部74にある情報と照合できなかった場合、通し番号が所定の規格に従っていない場合である。これらのように正規のものではない情報であった場合(S103→No)、ウォーターサーバーをレンタルしている業者によって正規の手順で発行された利用制限変更キー71ではない可能性が高いため、制御部73は飲料水の注出を制限する水注出制限状態にする制御を行う(S104)。
【0054】
一方、上記の情報が正規のものであると判定される場合は(S103→Yes)、利用制限変更情報の内容に従って処理を行う(S105)。
【0055】
利用制限変更情報が、上限値Lの更新である場合には(S105→更新)、制御部73は記憶部74に記録されている上限値Lの値を更新した値に差し替える限度情報更新手段を実行する(S106)。たとえば、1日あたりの上限値Lを既定値の1リットルから5リットルや10リットルといった値に変更する。1か月あたりの上限値Lを既定値の30リットルから150リットルや300リットルといった値に変更する。なお、既定値である元の上限値Lは別途変更不可能な状態で記憶部74に記録したままにしておくとよい。利用制限変更キー71がなくなったら、元の上限値Lの既定値を利用するように戻すことになる(S102→No)。上限値Lを更新した上で行う処理は、フロー自体は第一の実施形態と同様である(S111~)。ただし、上限値Lの値が大きくなっているため、通常の利用では水注出制限状態になりにくく、水注出許容状態のまま注出できる飲料水の量が多くなる(S111→Yes→S112)。きわめて大量の飲料水を前記所定時間の間に使って更新された上限値Lを上回った場合のみ、水注出制限状態になる(S111→No→S131)。
【0056】
一方、利用制限変更情報が、上限値Lの解除である場合には(S105→解除)、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nが前記所定時間あたりの上限値Lに達していても、水注出制限状態にせず、水注出許容状態を維持するようにする(S141)。すなわち、注出操作スイッチ61を押下されると(S142→Yes)、飲料水を注出して(S143)、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nをカウントはする(S144)。前記所定時間の間にどれほど使用しても(S145→No)、利用制限変更キーの利用制限変更情報が認識されていれば上限値Lに従った制限は受けず(S102→Yes→S103→Yes→S105→解除→S141~S145)、飲料水を注出し続ける。なお、注出操作スイッチ61が押されない場合は(S142→No)特にキーがない場合と変わりはない。ただし、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nのカウントは続けておくことが望ましい。前記所定時間ごとの既飲料水注出量nを積算することで浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量Nを算出し(S121)、浄水フィルタの交換が必要になるか否かを判定する際の判断材料として用いるからである。したがって、前記所定時間の終わりには前記所定時間ごとの既飲料水注出量nはリセットする(S122)。
【0057】
なお、S103における正規のキーであるか否かの判定において、次のような認証方式が採用可能である。業者は特定のユーザーに送付する利用制限変更キー71に記録する利用制限変更情報と併せて、個々の利用制限変更キー71に固有の固有識別番号と、個々のウォーターサーバーを識別する共通識別番号と、通し番号を付しておく。一旦利用制限変更キー71を読み込んでウォーターサーバーの使用を開始した際に、記憶部74に固有識別番号と共通識別番号と通し番号とを記憶部74に記憶しておく。業者が当該ユーザーに次に送付する新たな利用制限変更キー71には、共通識別番号と、先の通し番号から所定の条件に従って変更された番号とを付しておく。例えば先の通し番号に+1した番号である。制御部73は、固有識別番号が異なる利用制限変更キー71の読み取りを認識したら、当該新たな利用制限変更キー71に記録された共通識別番号が記憶部74に記録された共通識別番号と同一であるか否かを確認する共通識別番号確認手段を実行する。さらに、当該新たな利用制限変更キー71に記録された通し番号が、記憶部74に記録された先の利用制限変更キー71の通し番号に対して、所定の条件を満たす関係であるか否かを確認する通し番号確認手段を実行する。共通識別番号確認手段と通し番号確認手段との双方の確認がTrueであれば水注出許容状態にし(S112,S141)、Falseであれば期限切れとして水注出制限状態にする(S104)。判定後の状態の切り替えは注出可否制御手段と同様である。この認証方式を採用すると、第三者により生成された不正な利用制限変更キー71を読み込ませてウォーターサーバーを不正利用しようとしても、共通識別番号と通し番号の連続性とを一般化することが難しいため、共通の利用制限変更キー71では認証方式を突破することができず、業者が送付した正規の利用制限変更キー71による正規の利用のみを可能とすることができる。共通識別番号と通し番号の連続性とのいずれか一方のみの認証でもある程度のセキュリティを確保できるが、両方を検証する認証方式とすることで、より高いセキュリティを確保できる。これにより、サポートのない第三者から発行された不正なキーをユーザーが利用してしまい、浄化フィルタの交換をしないままウォーターサーバーを利用し続けて、ユーザーが利用する飲料水の品質が低下することを防止できる。
【0058】
この実施形態にかかるウォーターサーバーは、基本的に水道水を充填した水道水タンクの水を、浄水フィルタカートリッジに導入して浄化した水を注出させる浄水機式である。浄水フィルタを使わず業者から配達された水タンクをそのまま利用する水タンク型の場合は浄水フィルタの使用限界を想定した制限をする必要がなく、この発明における課題がそもそも成立しない。
【0059】
制御部73が、不正利用を検知したり、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nが上限値Lを超えたと判定した場合に、ウォーターサーバーの利用を制限する水注出制限状態を実現するには、筐体1内の注出のために必要ないずれかの部位を機能させないように制御するか、又は筐体1内のいずれかの部位を作動させて飲料水の注出を阻止するかのいずれかが挙げられる。ただし、機能させないようにする場合でも、ウォーターサーバー自体の電源は落とさずに維持する制御を行なうことが望ましい。電源を落としてしまうと、次の利用制限変更キー71の確認ができなくなり、ユーザーの利便性の点から好ましくない。また、電源が入ったままにしておくことで、調温装置18などの飲料水の品質管理に関する部位は稼働させ続けることができ、注出可否制御手段の実行で水注出許容状態に切り替わり利用を再開する際に速やかに対応可能になる。
【0060】
なお、フローには記載しないが、浄水フィルタを交換した時点からの既飲料水注出量Nが、浄水フィルタの設計上の使用限界に到達したら、筐体1の外部に設けた表示部(図示せず)などによりその旨を通知するような処理を行ってもよい。浄水フィルタを交換したら、制御部73は既飲料水注出量Nをリセットするとよい。
【0061】
この実施形態にかかるウォーターサーバーの制御部73が水注出制限状態にするための制御を実行する部位について、ウォーターサーバーの実施形態を挙げて例示する。なお、以下の説明はあくまで例示であり、これらの説明に示していない部位への制御を妨げるものではない。また、以下に説明する以外の実施形態であっても、浄水フィルタで浄化した飲料水を筐体1外に注出するウォーターサーバーであれば、基本的には同じように制御することができる。
【0062】
図5に、第二の実施形態における上述の制御を行なうウォーターサーバーの例の断面図を示す。このウォーターサーバーは、上下に細長い筐体1と、水道水を貯留する水道水タンク12と、交換式の浄水フィルタカートリッジ50と、水道水タンク12と浄水フィルタカートリッジ50の間を連通する原水管51と、原水管51の途中に設けられたポンプ6と、浄水フィルタカートリッジ50で濾過した浄水を貯留する調温タンク7と、調温タンク7内の浄水を保温する調温装置18と、浄水フィルタカートリッジ50と調温タンク7の間を連通する浄水管57と、調温装置18で保温された調温タンク7内の飲料水を筐体1の外部に注出する注出管8とを有する。
【0063】
筐体1は、上下方向に延びる筒壁13と、筒壁13の上端に設けられた天板14と、筒壁13の下端に設けられた底板15とを有する。
【0064】
水道水タンク12は、筐体1に着脱可能に取り付けられている。筐体1の天板14には、水道水タンク12を収容するタンク収容凹部14aが設けられている。タンク収容凹部14aの内面には、原水管51の上流側の端部の原水導入口52が設けられている。
【0065】
水道水タンク12は、水道水を収容するタンク本体53と、タンク本体53に形成された給水用の開口を開閉する蓋体54とからなる。タンク本体53は、水道水タンク12をタンク収容凹部14aに取り付けたときに原水導入口52に対応する位置にタンク開閉弁55を有する。タンク開閉弁55は、水道水タンク12をタンク収容凹部14aから取り外した状態では、水道水タンク12の内部と外部の連通を遮断し、水道水タンク12をタンク収容凹部14aに取り付けた状態では、水道水タンク12の内部を原水導入口52に連通させる開閉弁である。
【0066】
ポンプ6は、水道水タンク12の側から水道水を吸い込み、その水道水を浄水フィルタカートリッジ50の側に吐出することで、原水管51内の水道水を、水道水タンク12の側から浄水フィルタカートリッジ50の側に移送する。
【0067】
浄水フィルタカートリッジ50は、水道水をろ過することで水道水に含まれる物質を除去する浄水フィルタを内蔵した交換カートリッジである。浄水フィルタとしては、中空糸膜フィルタ、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂フィルタなどを使用することができる。浄水フィルタカートリッジ50は、カートリッジヘッド56に着脱可能とされている。浄水フィルタを通って浄化された水は、浄水管57を通って調温タンク7へ供給される。
【0068】
調温タンク7には、調温タンク7内の水を温度調整する調温装置18が取り付けられている。調温タンク7として図5では冷水タンクを例として示すが、温水タンクでもよいし、冷水タンクと温水タンクとの両方を備えていてもよい。調温タンク7が冷水タンクであれば調温装置18は冷却装置であり、調温タンク7が温水タンクであれば調温装置は加熱装置である。また、調温タンク7には内部の飲料水の温度を検出する温度センサ28が取り付けられている。例えば調温タンク7が冷水タンクである場合、温度センサ28で検出する温度が、所定の上限温度を上回ったときに冷却装置である調温装置18を作動させ、調温タンク7内の飲料水は、低温(5℃程度)に保たれている。また、調温タンク7が温水タンクである場合、温度センサ28で検出する温度が所定の下限温度を下回ったときに加熱装置である調温装置を作動させ、調温タンク7内の飲料水は高温(80℃以上など)に保つ。これらの制御は温度センサ28からの信号を受信した制御部73が行う。
【0069】
調温タンク7の底面には、注出管8が接続されている。注出管8には、注出弁19が設けられ、この注出弁19を開くことによって調温タンク7から温度調整された飲料水をカップ等に注出できるようになっている。
【0070】
なお、注出弁19を開いている時間を制御部73がカウントすることでも、水量計部65として利用できる。この場合、注出弁19の時間あたりの送水量を、開弁時間に掛けることで、送水量が算出できる。
【0071】
調温タンク7には、調温タンク7内の水位を検出する水位センサ24が設けられている。この水位センサ24によって、調温タンク7内の水位が予め設定された下限水位まで下がったことが検出されると、ポンプ6を駆動させる電動モータ30が作動し、そのポンプ6で汲み上げられた水が、原水管51と浄水フィルタカートリッジ50と浄水管57を順に通って調温タンク7に導入されるようになっている。
【0072】
このポンプ6の稼働時間を計測することでも、間接的に水量計部65として利用できる。稼働時間にポンプ6の時間あたりの送水量を掛けることで、送水量が算出できる。この送水量は基本的に全量が注出されることになるため、多少のタイムラグはあるもののウォーターサーバーから注出される注出量とほぼ同量となる。
【0073】
本体の前面には注出操作スイッチ61が設けられている。これが操作部にあたる。この操作部をユーザーが押すことで、その押したことを示す信号が制御部73に伝達され、制御部73から開弁の指令が注出弁19に伝達され、飲料水が注出される。
【0074】
なお、図示しないが、物理的に動作させるコックによって注出弁19を開弁させる実施形態でもよい。
【0075】
この実施形態にかかるウォーターサーバーは、USBメモリ型又はメモリカードの利用制限変更キー71を、USB端子又はメモリカードスロットである読取部72に読み込ませることで、利用制限変更情報を制御部73が認識する。記憶部74及び時計部75の情報を参照し、前記所定時間ごとの既飲料水注出量nが上限値Lに達していたら、制御部73の指示により、水注出制限状態にする。
【0076】
この実施形態にかかるウォーターサーバーでの水注出制限状態の形態として、注出弁19の開放を禁止し閉弁を維持させる方式が挙げられる。これは、ユーザーによる注出操作スイッチ61の操作に応じて開閉する電磁開閉弁である。この電磁開閉弁が閉弁を維持することで、ユーザーによる注出操作があったときも注出のみができなくなる。すでに利用限度に達していると利用限度到達判定手段S111で判定されたときは、ユーザーによる注出操作スイッチ61の注出操作があったときにも、注出弁19の閉弁が維持されるので、飲料水が注出されない。ユーザーによる飲料水の利用量が上限値Lを超えたときに、即座に飲料水の注出を制限することが可能である。
【0077】
また別の水注出制限状態の形態として、電動で作動するポンプ6を、水位センサ24が所定の下限水位になっても駆動させないままとする方式が挙げられる。このようにすると、すでに利用限度に達していると利用限度到達判定手段S111で判定されたときは、調温タンク7内の水位が所定の下限水位を下回ったときにもポンプ6の停止状態を維持するので、調温タンク7への飲料水の補給が行なわれない。そのため、いったん浄水フィルタカートリッジ50を通過した分の水は使用できるが、それ以上に浄水フィルタを過度に使用することはなくなる。
【0078】
調温タンク7の調温装置18は、利用限度到達判定手段S111がユーザーの利用限度に達していると判定すると否とにかかわらず、温度センサ28で検出される温度が所定の上限温度を上回ったときに調温装置を作動させるように制御すると好ましい。調温タンク7が冷水タンクであれば、温度センサ28で検出される温度が所定の上限温度を上回ったときに調温装置18である冷却装置を作動させるように制御すると好ましい。このようにすると、すでに既飲料水注出量nが上限値Lに達していると利用限度到達判定手段S111で判定され、ユーザーによる飲料水の利用が制限されているときにも、調温タンク7の飲料水の温度が、冷水であれば所定の温度以下の低温に保持される。そのため、ユーザーによる飲料水の利用が制限されている間に、調温タンク7内に雑菌が繁殖するのを防止することが可能である。また、ユーザーが、新たに利用制限変更キー71に記録された利用制限変更情報を読取部72に読み取らせることで、水注出制限状態から水注出許容状態に切り替わったときに、速やかに低温の飲料水が利用可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 筐体
6 ポンプ
7 調温タンク
8 注出管
12 水道水タンク
14 天板
15 底板
18 調温装置
19 注出弁
24 水位センサ
28 温度センサ
30 電動モータ
50 浄水フィルタカートリッジ
51 原水管
57 浄水管
61 注出操作スイッチ
65 水量計部
71 利用制限変更キー
72 読取部
73 制御部
74 記憶部
75 時計部
図1
図2
図3
図4
図5