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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】油圧作動装置
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240516BHJP
   F16K 31/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B25F5/00 D
B25F5/00 H
F16K31/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020209458
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096387
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000128692
【氏名又は名称】株式会社オグラ
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】生出 栄助
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045161(WO,A1)
【文献】実開平06-071079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
F16K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより回転部材が回転させられることにより圧力油を発生させる圧力油発生部とを有する駆動ユニットと、
圧力油により作動する工具と、圧力油発生部作動用スイッチおよび工具作動用スイッチを有するスイッチ部とを有する工具ユニットと、
前記工具ユニットと前記駆動ユニットとを接続し、前記圧力油発生部により発生した圧力油を前記工具に供給するとともに前記工具から戻し油を前記圧力油発生部に戻す可撓性の接続部材と、
前記駆動ユニットに電力を供給するためのバッテリーを有するバッテリーユニットと、
前記駆動ユニットに取り付け可能となっており、前記工具から前記接続部材を介して戻し油を前記駆動ユニットに戻させる動作を開始させるための戻し動作部と、
切替部と、
を備え、
前記バッテリーユニットは、前記バッテリーが着脱自在に取り付けられるバッテリーアダプタと、第3コードを介して前記バッテリーアダプタに接続されるダミー筐体を更に有し、
前記バッテリーアダプタおよび前記ダミー筐体はそれぞれ前記駆動ユニットに取り付け可能となっており、
前記ダミー筐体が前記駆動ユニットに取り付けられた状態で、前記圧力油発生部作動用スイッチが操作されると前記切替部により前記バッテリーから前記バッテリーアダプタ、前記第3コードおよび前記ダミー筐体を介して前記モータに電力を送るための経路がつながることにより前記バッテリーから前記モータに電力が供給されることにより前記圧力油発生部が圧力油を発生させ、発生した圧力油が前記接続部材により前記工具ユニットに供給され、
前記工具作動用スイッチが操作されると前記戻し動作部が作動することにより前記工具から前記接続部材を介して戻し油が前記駆動ユニットに戻される、油圧作動装置。
【請求項2】
記戻し動作部は第1コードを介して前記切替部に接続され、
前記スイッチ部の前記圧力油発生部作動用スイッチおよび前記工具作動用スイッチはそれぞれ第2コードにより前記切替部に接続され、
前記圧力油発生部作動用スイッチが操作されると前記切替部によって前記バッテリーから前記モータに電力を送るための経路がつながることにより前記バッテリーから前記モータに電力が供給され、
前記工具作動用スイッチが操作されると前記切替部によって前記戻し動作部に作動信号が送られることにより前記戻し動作部が作動する、請求項1記載の油圧作動装置。
【請求項3】
前記バッテリーおよび前記ダミー筐体は前記駆動ユニットにおける同じ箇所に取り付け可能となっている、請求項1または2記載の油圧作動装置。
【請求項4】
前記スイッチ部は前記工具に着脱自在に取り付け可能となっている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の油圧作動装置。
【請求項5】
前記駆動ユニットにはスプール弁が設けられており、前記スプール弁が前記駆動ユニットの内部に押し込まれていない状態では前記圧力油発生部により発生した圧力油が前記接続部材に送られ、前記スプール弁が前記駆動ユニットの内部に押し込まれると前記圧力油発生部により発生した圧力油を前記接続部材に送る油路が前記スプール弁により塞がれ、前記工具から前記接続部材を介して戻り油が前記駆動ユニットに戻される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の油圧作動装置。
【請求項6】
前記戻し動作部は前記スプール弁を押動する押動部材を有しており、前記工具作動用スイッチが操作されると前記押動部材が移動することにより当該押動部材によって前記スプール弁が前記駆動ユニットの内部に押し込まれる、請求項記載の油圧作動装置。
【請求項7】
前記戻し動作部はソレノイドを更に有しており、前記工具作動用スイッチが操作されると前記ソレノイドが前記押動部材を移動させる、請求項記載の油圧作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば交通事故で車内に閉じ込められた人を救出する際や、地震災害で建物内に閉じ込められた人を救出する際に、可搬型の油圧作動装置が用いられる。このような油圧作動装置として、特許文献1に開示されるような、カッターやスプレッダー等の先端工具が、圧力油を発生させるモータ付きポンプ部に直接取り付けられる装置や、特許文献2に開示されるような、先端工具とモータ付きポンプ部とが油圧ホースにより接続される装置が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-78988号公報
【文献】特開2005-201285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような、先端工具がモータ付きポンプ部に直接取り付けられる装置では、装置自体の重量が大きくなり持ち運びが負担になったり、作業を行う際にモータ部が邪魔になることにより装置本来の機能を発揮することができなかったりするおそれがあるという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2に開示されるような、先端工具とモータ付きポンプ部とが油圧ホースにより接続される装置では、先端工具を操作する人とモータ付ポンプを操作する人の両方が必要になるという問題がある。すなわち、先端工具を操作する人は、車両や建物におけるこじ開けようとする箇所に先端工具を差し込む。そして、このような状態でモータ付ポンプを操作する人がスイッチを指で押してモータを作動させると先端工具が動作し、また、スイッチから指を離してモータを停止させると先端工具が停止する。また、モータ付ポンプを操作する人が戻しレバーを引くとスプールがポンプ部の内部に移動して圧力油の戻し通路が開く。このことにより、先端工具が初期状態に戻る。このような装置では、二人で操作を行う必要があるため、先端工具を操作している人とモータ付ポンプを操作する人との間で意思疎通がうまくいかなければ作業を適切に行うことができないおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、現場において作業する場所が狭く、駆動ユニットと工具ユニットとが離れた状態で作業を行う必要があるときに、一人の作業者でも工具を作動させることができ、よって作業性を向上させることができる油圧作動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の油圧作動装置は、
モータと、前記モータにより回転部材が回転させられることにより圧力油を発生させる圧力油発生部とを有する駆動ユニットと、
圧力油により作動する工具と、圧力油発生部作動用スイッチおよび工具作動用スイッチを有するスイッチ部とを有する工具ユニットと、
前記工具ユニットと前記駆動ユニットとを接続し、前記圧力油発生部により発生した圧力油を前記工具に供給するとともに前記工具から戻し油を前記圧力油発生部に戻す可撓性の接続部材と、
前記駆動ユニットに電力を供給するためのバッテリーを有するバッテリーユニットと、
前記駆動ユニットに取り付け可能となっており、前記工具から前記接続部材を介して戻し油を前記駆動ユニットに戻させる動作を開始させるための戻し動作部と、
を備え、
前記圧力油発生部作動用スイッチが操作されると前記バッテリーから前記モータに電力が供給されることにより前記圧力油発生部が圧力油を発生させ、発生した圧力油が前記接続部材により前記工具ユニットに供給され、
前記工具作動用スイッチが操作されると前記戻し動作部が作動することにより前記工具から前記接続部材を介して戻し油が前記駆動ユニットに戻されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油圧作動装置によれば、現場において作業する場所が狭く、駆動ユニットと工具ユニットとが離れた状態で作業を行う必要があるときに、一人の作業者でも工具を作動させることができ、よって作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による油圧作動装置の構成を示す構成図である。
図2図1に示す油圧作動装置の先端工具が作動しているときの状態を示す構成図である。
図3図1等に示す油圧作動装置の回路図である。
図4図1等に示す油圧作動装置におけるソレノイドの先端に取り付けられた押動部材およびスプール弁を拡大して示す拡大構成図である。
図5】従来の油圧作動装置の構成を示す構成図である。
図6図5に示す油圧作動装置の先端工具が作動しているときの状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態による油圧作動装置は、レスキュー等の用途に使用されるものであり、先端工具により事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開けることができるものである。図1乃至図4は、本実施の形態による油圧作動装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による油圧作動装置の構成を示す構成図であり、図2は、図1に示す油圧作動装置の先端工具が作動しているときの状態を示す構成図である。また、図3は、図1等に示す油圧作動装置の回路図である。また、図4は、図1等に示す油圧作動装置におけるソレノイドの先端に取り付けられた押動部材およびスプール弁を拡大して示す拡大構成図である。なお、図5は、従来の油圧作動装置の構成を示す構成図であり、図6は、図5に示す油圧作動装置の先端工具が作動しているときの状態を示す構成図である。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施の形態による油圧作動装置は、駆動ユニット10と、工具ユニット40と、駆動ユニット10と工具ユニット40とを接続する接続部材30と、駆動ユニット10に電力を供給するためのバッテリーユニット60とを備えている。
【0012】
駆動ユニット10は、作業者が片方の手で把持するための把持部12と、電動モータ等のモータ14と、モータ14の回転軸に取り付けられた細長い棒状の回転部材16と、回転部材16が回転させられることにより圧力油を発生させる圧力油発生部17と、把持部12を手で握った作業者の指により操作される駆動スイッチ28とを有している。
【0013】
把持部12の下部には被取付部13が設けられている。被取付部13には、後述するバッテリーユニット60のバッテリー62が着脱可能に取り付けられる。被取付部13には、バッテリー62以外にも、バッテリーユニット60のダミー筐体68が着脱可能に取り付けられるようになっている。図1および図2は、ダミー筐体68が被取付部13に取り付けられたときの状態を示している。
【0014】
このような駆動ユニット10では、把持部12を手で握った作業者の指により駆動スイッチ28が操作されると、バッテリー62からモータ14に電力が供給され、当該モータ14によりこのモータ14に取り付けられた回転部材16が回転させられるようになっている。
【0015】
図1等に示すように、回転部材16の周囲には油室20が設けられている。また、圧力油発生部17は、回転部材16の先端に取り付けられた偏心部材18と、偏心部材18が回転することにより上下動するピストン19とを有している。偏心部材18は、回転部材16の軸線に対して偏心しており、当該偏心部材18の外周面にはニードルローラベアリング等のベアリングが取り付けられている。また、ピストン19は、図示しないバネによってベアリングの外周面に向けて常時押し付けられている。このため、回転部材16が回転すると偏心部材18およびベアリングが回転部材16の軸線に対して偏心回転運動することによりピストン19が上下運動し、油室20から接続部材30に圧力油が送られ、この接続部材30から工具ユニット40に圧力油が送られることにより工具ユニット40の工具41が作動するようになる。
【0016】
また、図1および図2に示すように、駆動ユニット10の内部には、油室20から接続部材30に圧力油を送るための第1油路22および第2油路24が直列に設けられている。また、第1油路22と第2油路24との間にはスプール弁26が配置されている。駆動ユニット10の外部からスプール弁26に何ら力が加えられていない状態では、回転部材16が回転するとピストン19が上下運動することにより油室20から第1油路22および第2油路24を介して接続部材30に圧力油が送られる。一方、駆動ユニット10の外部からスプール弁26に力が加えられ、このスプール弁26が駆動ユニット10の内部に押し込まれると、第1油路22と第2油路24とがスプール弁26の外周面により遮断されるとともにスプール弁26の内部に形成された空間により第2油路24と油室20とが連通する。このことにより、工具ユニット40から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻されるようになる。このような動作の詳細については後述する。
【0017】
接続部材30は、例えば可撓性のホース32から構成されている。具体的には、ホース32は、高圧に耐えられる強度を有する可撓性部材により形成されており、このホース32の内部には、駆動ユニット10から工具ユニット40に圧力油を供給したり工具ユニット40から駆動ユニット10に戻り油を戻したりする油路が形成されている。
【0018】
工具ユニット40は、駆動ユニット10の圧力油発生部17により発生し接続部材30により駆動ユニット10から工具ユニット40に送られた圧力油により作動する工具41と、スイッチ部50とを有している。工具41は、その上端にフランジ部材45が取り付けられているシリンダ42と、シリンダ42の内部に収容され、図1および図2における上下方向に往復移動を行うピストン43と、ピストン43の先端(図1および図2における下端)に取り付けられたベース部材44と、シリンダ42の内部に設けられたスプリング48(図2参照)とを有している。図2に示すように、シリンダ42の内部には油室46が設けられており、この油室46は接続部材30のホース32の内部に形成される油路と連通している。そして、接続部材30から工具ユニット40の工具41(具体的には、油室46)に圧力油が送られると、この圧力油によりピストン43がシリンダ42に対して図2における下方向に相対的に移動する。このことにより、シリンダ42の上端に取り付けられたフランジ部材45とベース部材44との間の距離が大きくなるため、事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開けることができるようになる。
【0019】
また、シリンダ42の内部に設けられたスプリング48の一端がシリンダ42における油室46に面する内壁に接続され、このスプリング48の他端はピストン43に接続されている。そして、スプリング48が伸びた状態から元の状態に戻ろうとする力により、ピストン43に対してシリンダ42の内部に収容される方向に向かう力が与えられる。すなわち、図2に示すようにピストン43がシリンダ42から相対的に下方に移動した状態ではスプリング48が伸びた状態となるため、このスプリング48が収縮しようとする力によって、ピストン43がシリンダ42の内部に向かって図2における上方向に移動する力が与えられる。
【0020】
スイッチ部50は例えば複数のネジにより工具41に取り付けられている。スイッチ部50は、工具作動用スイッチ52と、圧力油発生部作動用スイッチ54とを有している。工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54はそれぞれ作業者の指により押されるボタンである。工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54の機能の詳細については後述する。
【0021】
バッテリーユニット60は、駆動ユニット10に電力を供給するためのバッテリー62と、バッテリー62が着脱自在に取り付けられるバッテリーアダプタ64と、第3コード66を介してバッテリーアダプタ64に接続されるダミー筐体68とを有している。バッテリー62は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池から構成されている。第3コード66は、バッテリーアダプタ64とダミー筐体68との間で電力を送るよう構成されている。ダミー筐体68は、駆動ユニット10の被取付部13に取り付けられているときに、第3コード66から送られた電力をモータ14に送ることができるようになっている。
【0022】
また、図1等に示すように、ダミー筐体68には切替部70が取り付けられており、切替部70の内部にはリレー72が配置されている。また、切替部70には第1コネクター74および第2コネクター78がそれぞれ着脱自在に取り付けられている。第1コネクター74には第1コード76の一端が接続され、この第1コード76の他端は後述する戻し動作部80に接続されている。また、第2コネクター78には第2コード56の一端が接続され、この第2コード56の他端はスイッチ部50の工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54に接続されている。
【0023】
本実施の形態の油圧作動装置では、駆動ユニット10に戻し動作部80が着脱自在に取り付けられるようになっている。具体的には、戻し動作部80は例えば複数のネジにより駆動ユニット10に取り付けられている。戻し動作部80は、工具ユニット40の工具41から接続部材30を介して戻し油を駆動ユニット10の油室20に戻させる動作を開始させるようになっている。より詳細には、戻し動作部80は、ソレノイド82と、ソレノイド82の先端に取り付けれ、このソレノイド82により動作される押動部材84とを有している。ソレノイド82が作動していないときは、図4に示すように押動部材84は駆動ユニット10のスプール弁26から僅かに離れた箇所に位置するようになっている。一方、ソレノイド82が作動すると押動部材84はソレノイド82側に向かって引かれることにより当該押動部材84は図4における右方向に移動し、この押動部材84によりスプール弁26は駆動ユニット10の内部に押し込まれる。このことにより、第1油路22と第2油路24とがスプール弁26の外周面により遮断されるとともにスプール弁26の内部に形成された空間により第2油路24と油室20とが連通する。また、工具ユニット40において、スプリング48が伸びた状態から元の状態に戻ろうとする力により、ピストン43に対してシリンダ42の内部に収容される方向に向かう力が与えられる。このようなスプリング48により与えられる力により、ピストン43がシリンダ42の内部に向かって図2における上方向に移動し、シリンダ42の内壁とピストン43との間に形成される油室46が狭くなるため、工具ユニット40の油室46から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻される。
【0024】
次に、油圧作動装置の回路図について図3を用いて説明する。図3に示すように、工具作動用スイッチ52は第2コネクター78を介して切替部70のリレー72および第1コネクター74に接続され、更に第1コネクター74を介して戻し動作部80のソレノイド82に接続されている。そして、作業者により工具作動用スイッチ52が押されると、切替部70のリレー72によって戻し動作部80のソレノイド82に作動信号が送られ、このソレノイド82が作動する。このことにより、押動部材84はソレノイド82側に向かって引かれることにより当該押動部材84は図4における右方向に移動し、この押動部材84によりスプール弁26が駆動ユニット10の内部に押し込まれるため、工具ユニット40の油室46から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻される。
【0025】
また、圧力油発生部作動用スイッチ54は第2コネクター78を介して切替部70のリレー72に接続され、このリレー72はバッテリーアダプタ64に接続されている。また、バッテリーアダプタ64はバッテリー62に接続されるとともにモータ14に接続されている。そして、作業者により圧力油発生部作動用スイッチ54が押されると、切替部70のリレー72によってバッテリー62からモータ14に電力を送るための経路がつながることによりバッテリー62からモータ14に電力が供給される。具体的には、切替部70のリレー72によってバッテリー62からバッテリーアダプタ64、第3コード66およびダミー筐体68を介してモータ14に電力を送るための経路がつながるようになる。そして、モータ14に電力が供給されると、回転部材16が回転することにより圧力油発生部17が圧力油を発生させ、発生した圧力油が接続部材30を介して工具ユニット40の工具41に供給される。
【0026】
次に、本実施の形態による油圧作動装置の動作について説明する。
【0027】
本実施の形態による油圧作動装置によって事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開ける際に、作業者はまず現場に油圧作動装置を持参する。そして、現場において作業する場所が狭いときは、作業者は油圧作動装置の工具ユニット40および接続部材30の先端部を持って工具ユニット40の工具41を作業場所に配置する。この際に、駆動ユニット10および工具ユニット40は大きく離間する場合があるが、このような場合でも本実施の形態の油圧作動装置では一人の作業者により油圧作動装置の操作を行うことができる。
【0028】
より詳細には、作業者は工具41(具体的には、フランジ部材45およびベース部材44)を対象物の隙間に挿入し、スイッチ部50の圧力油発生部作動用スイッチ54を押す。作業者により圧力油発生部作動用スイッチ54が押されると、上述したように切替部70のリレー72によってバッテリー62からバッテリーアダプタ64、第3コード66およびダミー筐体68を介してモータ14に電力を送るための経路がつながる。このことにより、バッテリー62からモータ14に電力が供給される。そして、モータ14が回転部材16を回転させることにより圧力油発生部17が圧力油を発生させ、発生した圧力油が接続部材30を介して工具ユニット40の工具41に供給される。そして、工具41(具体的には、油室46)に圧力油が送られると、この圧力油によりピストン43がシリンダ42に対して図2における下方向に相対的に移動する。このことにより、シリンダ42の上端に取り付けられたフランジ部材45とベース部材44との間の距離が大きくなるため、事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開けることができるようになる。また、作業者が圧力油発生部作動用スイッチ54から手を離すと、モータ14に電力が供給されなくなるため回転部材16が停止し、圧力油発生部17により圧力油が発生しなくなる。このため、工具41の油室46に圧力油がこれ以上送られなくなるため、ピストン43が停止する。
【0029】
対象物の隙間をこじ開ける作業が終了すると、作業者は対象物の隙間から油圧作動装置の工具ユニット40を取り出し、スイッチ部50の工具作動用スイッチ52を押す。作業者により工具作動用スイッチ52が押されると、切替部70のリレー72によって戻し動作部80のソレノイド82が作動する。このことにより、押動部材84はソレノイド82側に向かって引かれることにより当該押動部材84は図4における右方向に移動し、この押動部材84によりスプール弁26が駆動ユニット10の内部に押し込まれるため、工具ユニット40の油室46から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻される。そして、シリンダ42の内部に設けられたスプリング48が伸びた状態から元の状態に戻ろうとする力により、ピストン43に対してシリンダ42の内部に収容される方向に向かう力が与えられる。このようなスプリング48が収縮しようとする力によって、ピストン43がシリンダ42の内部に向かって図2における上方向に移動する力が与えられる。このようにして、シリンダ42にピストン43が収容され、工具ユニット40は図1に示す初期状態に戻る。
【0030】
なお、従来の油圧作動装置の構成について図5および図6を用いて説明する。図5は、従来の油圧作動装置の構成を示す構成図であり、図6は、図5に示す油圧作動装置の先端工具が作動しているときの状態を示す構成図である。なお、図5および図6に示すような従来の油圧作動装置の構成を説明するにあたり、図1乃至図4に示すような本実施の形態の油圧作動装置と同じ構成要素については同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0031】
図5および図6に示すような従来の油圧作動装置は、図1乃至図4に示すような本実施の形態の油圧作動装置と比較して、駆動ユニット10の被取付部13にはバッテリーユニット60のダミー筐体68ではなくバッテリー62aそのものが着脱自在に取り付けられている。なお、バッテリー62aはバッテリーユニット60のバッテリー62と略同一の構成である。また、工具ユニット40においてスイッチ部50が設けられていない。また、駆動ユニット10には戻し動作部80が取り付けられておらず、代わりに操作レバー90が駆動ユニット10に設けられている。駆動ユニット10の把持部12を手で握った作業者が操作レバー90を操作すると、スプール弁26が駆動ユニット10の内部に押し込まれ、工具ユニット40の油室46から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻される。
【0032】
このような従来の油圧作動装置の動作について説明する。
【0033】
従来の油圧作動装置によって事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開ける際に、作業者はまず現場に油圧作動装置を持参する。具体的には、現場において作業する場所が狭いときは、第1の作業者は油圧作動装置の工具ユニット40および接続部材30の先端部を持って工具ユニット40の工具41を作業場所に配置する。この際に、駆動ユニット10および工具ユニット40は大きく離間する場合があり、二人の作業者により油圧作動装置の操作を行う必要がある。
【0034】
具体的には、第1の作業者は工具41(具体的には、フランジ部材45およびベース部材44)を対象物の隙間に挿入する。第1の作業者が工具41を対象物の隙間に挿入した後、駆動ユニット10の把持部12を把持する第2の作業者が駆動スイッチ28を押すと、バッテリー62aからモータ14に電力が供給される。このことにより圧力油発生部17が圧力油を発生させ、発生した圧力油が接続部材30を介して工具ユニット40の工具41に供給される。そして、工具41(具体的には、油室46)に圧力油が送られると、この圧力油によりピストン43がシリンダ42に対して図6における下方向に相対的に移動する。このことにより、シリンダ42の上端に取り付けられたフランジ部材45とベース部材44との間の距離が大きくなるため、事故現場の建物における扉等の対象物の隙間をこじ開けることができるようになる。また、第2の作業者が駆動スイッチ28から手を離すと、モータ14に電力が供給されなくなるため回転部材16が停止し、圧力油発生部17により圧力油が発生しなくなる。このため、工具41の油室46に圧力油がこれ以上送られなくなるため、ピストン43が停止する。なお、この際に、工具ユニット40の工具41を対象物の隙間に挿入している第1の作業者と、駆動ユニット10を操作する第2の作業者が離れている場合は、両者の意思疎通を上手く図ることができないおそれがあり、対象物の隙間をこじ開ける作業をスムーズに行うことができないことがある。
【0035】
対象物の隙間をこじ開ける作業が終了すると、第1の作業者は対象物の隙間から油圧作動装置の工具ユニット40を取り出す。そして、第1の作業者が対象物の隙間から油圧作動装置の工具ユニット40を取り出した後、第2の作業者が駆動ユニット10の操作レバー90を操作する。このことにより、スプール弁26が駆動ユニット10の内部に押し込まれるため、工具ユニット40の油室46から接続部材30を介して駆動ユニット10の油室20に戻り油が戻される。そして、シリンダ42の内部に設けられたスプリング48が伸びた状態から元の状態に戻ろうとする力により、ピストン43に対してシリンダ42の内部に収容される方向に向かう力が与えられる。このようなスプリング48が収縮しようとする力によって、ピストン43がシリンダ42の内部に向かって図6における上方向に移動する力が与えられる。このようにして、シリンダ42にピストン43が収容され、工具ユニット40は図5に示す初期状態に戻る。
【0036】
このように、従来の油圧作動装置では、二人の作業者が操作を行う必要があるため、工具ユニット40の工具41を操作している人と駆動ユニット10を操作する人との間で意思疎通がうまくいかなければ作業を適切に行うことができないおそれがあるという問題がある。
【0037】
これに対し、本実施の形態の油圧作動装置によれば、圧力油を発生させる圧力油発生部17を有する駆動ユニット10と、圧力油により作動する工具41を有する工具ユニット40とは可撓性の接続部材30により接続されている。また、工具ユニット40はスイッチ部50を有しており、スイッチ部50は工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54を有している。そして、圧力油発生部作動用スイッチ54が操作されると、バッテリー62からモータ14に電力が供給されることにより圧力油発生部17が圧力油を発生させ、発生した圧力油が接続部材30により前記工具ユニット40に供給されるため工具41が作動される。一方、工具作動用スイッチ52が操作されると、戻し動作部80が作動することにより工具41から接続部材30を介して戻し油が駆動ユニット10に戻されるため工具41が初期状態に戻る。このように、工具ユニット40のスイッチ部50により工具41を作動させることができるため、一人の作業者でも工具41を作動させることができ、作業性を向上させることができる。このことにより、現場において作業する場所が狭く、駆動ユニット10と工具ユニット40とが離れた状態で作業を行う必要があるときに、一人の作業者でも工具41を作動させることができ、よって作業性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態では、図5および図6に示すような従来の油圧作動装置に対して工具ユニット40にスイッチ部50を取り付け、駆動ユニット10から操作レバー90を取り外すとともに戻し動作部80を駆動ユニット10に取り付け、被取付部13からバッテリー62aを取り外すとともにバッテリーユニット60のダミー筐体68を取り付けるだけで図1乃至図4に示すような本実施の形態の油圧作動装置とすることができる。このように、既存の油圧作動装置を少し改造するだけで本実施の形態の油圧作動装置とすることができるため、本実施の形態の油圧作動装置を実現するためのコストを安価なものとすることができる。
【0039】
また、本実施の形態では、駆動ユニット10の被取付部13にバッテリー62を直接取り付けるのでなく、バッテリーユニット60のダミー筐体68を取り付けている。この場合は、例えば防塵装置に油圧作動装置の駆動ユニット10を収容して現場に持参するような運用を行うときに、バッテリーユニット60の第3コード66の一部およびバッテリー62を防塵装置の外に出すことにより、バッテリー62が切れた場合でも駆動ユニット10を防塵装置から外部に取り出すことなくバッテリー62の交換を行うことができるため、作業者にとっての作業性をより向上させることができる。
【0040】
なお、本実施の形態による油圧作動装置は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0041】
例えば、図1乃至図4に示すような本実施の形態の油圧作動装置において、駆動スイッチ28の設置が省略されていてもよい。駆動ユニット10に駆動スイッチ28が設けられていなくても、スイッチ部50の圧力油発生部作動用スイッチ54を操作することによって、圧力油発生部17により圧力油を発生させて接続部材30を介して工具ユニット40に送ることができるようになる。
【0042】
また、上述した油圧作動装置では、スイッチ部50がボタン形式の工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54を有しているが、本実施の形態の油圧作動装置はこのような態様に限定されることはない。変形例に係る油圧作動装置において、スイッチ部が1つのレバーを有しており、作業者がこのレバーを第1の方向に倒すと工具作動用スイッチが操作され、また作業者がこのレバーを第1の方向とは反対の第2の方向に倒すと圧力油発生部作動用スイッチが操作されるようになっていてもよい。
【0043】
また、工具ユニット40の工具41は図1等に示すようなシリンダ42およびピストン43から構成されるものに限定されることはない。変形例に係る油圧作動装置において、工具として鉄筋等を切断するためのカッターを有するものや、切る、開く、つぶす、引くの4つの機能を有するスプレッダーを有するものが用いられてもよい。この場合でも、工具に圧力油が供給されることにより当該工具が作動するようになっている。
【0044】
また、切替部70はダミー筐体68に取り付けられることに限定されることはない。切替部70がダミー筐体68ではなく例えば駆動ユニット10等に取り付けられていてもよい。
【0045】
また、本実施の形態の油圧作動装置では、バッテリーユニットは図1および図2に示すようなバッテリー62、バッテリーアダプタ64、第3コード66、ダミー筐体68を有するものに限定されることはない。バッテリーユニットがバッテリー62のみを有しており、このバッテリー62が駆動ユニット10の被取付部13に着脱自在に取り付けられるようになっていてもよい。この場合でも切替部70が例えば駆動ユニット10等に取り付けられるようになっていてもよい。
【0046】
また、ボタン形式の工具作動用スイッチ52および圧力油発生部作動用スイッチ54が第2コード56により切替部70に接続されるのではなく、工具作動用スイッチ52または圧力油発生部作動用スイッチ54が操作されると無線により信号が切替部70のリレー72に送信され、このリレー72による切替動作が行われるようになっていてもよい。また、戻し動作部80が第1コード76により切替部70に接続されるのではなく、無線によりリレー72からソレノイド82に作動信号が送られるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 駆動ユニット
12 把持部
13 被取付部
14 モータ
16 回転部材
17 圧力油発生部
18 偏心部材
19 ピストン
20 油室
22 第1油路
24 第2油路
26 スプール弁
28 駆動スイッチ
30 接続部材
32 ホース
40 工具ユニット
41 工具
42 シリンダ
43 ピストン
44 ベース部材
45 フランジ部材
46 油室
48 スプリング
50 スイッチ部
52 工具作動用スイッチ
54 圧力油発生部作動用スイッチ
56 第2コード
60 バッテリーユニット
62 バッテリー
62a バッテリー
64 バッテリーアダプタ
66 第3コード
68 ダミー筐体
70 切替部
72 リレー
74 第1コネクター
76 第1コード
78 第2コネクター
80 戻し動作部
82 ソレノイド
84 押動部材
90 操作レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6