(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】エンジンウインチ
(51)【国際特許分類】
B66D 1/52 20060101AFI20240516BHJP
B66D 1/14 20060101ALI20240516BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B66D1/52
B66D1/14 Z
B66D1/54 Q
(21)【出願番号】P 2021176661
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】大槻 芳朗
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-080693(JP,A)
【文献】特開2018-052629(JP,A)
【文献】特開平02-048394(JP,A)
【文献】特開2019-026420(JP,A)
【文献】特開2020-158255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/52
B66D 1/14
B66D 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を用いてロープを巻き取るエンジンウインチであって、
回転する出力軸を有するエンジンと、
クラッチ機構を介して前記出力軸に接続解除可能に接続されて回転可能なドラムと、
前記ドラム上の前記出力軸に近い基端側領域に向けて前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第1方向からロープを巻き取るように、前記基端側領域の近傍に設けられたロープ巻き取り案内部と、
前記ドラム上の前記出力軸から離れた先端側領域から前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第2方向にロープを繰り出すように、前記先端側領域から前記第2方向に所定距離だけ離れて設けられたロープ繰り出し案内部と、
を備え、
前記ロープ繰り出し案内部は、
前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されるロープの繰り出し方向を前記ドラムの軸線方向に対して略平行な第3方向へと案内可能な第1円弧状軌道部と、
前記第1円弧状軌道部と協働するように設けられ、前記第1円弧状軌道部によって前記第3方向へと案内されたロープを前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第4方向に繰り出すように案内可能な第2円弧状軌道部と、
を有しており、
前記第2円弧状軌道部は、
前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第3方向へと案内され更に前記第4方向に繰り出される逆回転防止位置と、
前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第1円弧状軌道部から当該第2方向に繰り出される繰り出し位置と、
の間で移動可能となっており、
前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、
第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、付勢手段を介して、初期状態で前記逆回転防止位置に位置するように支持され、前記繰り出し位置に移動されている時には前記付勢手段によって前記逆回転防止位置に戻るような付勢力を受けるようになっており、
第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、前記付勢手段を介して、初期状態で前記繰り出し位置に位置するように支持されるようになっている
ことを特徴とするエンジンウインチ。
【請求項2】
前記第2円弧状軌道部は、前記第1支持態様において、及び、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時において、前記第1円弧状軌道部に対して、鉛直方向に延在する回動軸線回りに回動移動するようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンウインチ。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在するバネ部材である
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンウインチ。
【請求項4】
前記第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、回動アームと支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースの第1穴に係止状態で支持されるようになっており、
前記第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記回動アームと前記支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースの第2穴に係止状態で支持されるようになっている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンジンウインチ。
【請求項5】
前記支持態様切替ピンは、切替揺動アームを介して、前記支持態様切替ピンと平行に延びる切替回転ピンに接続されており、
前記切替回転ピンは、前記バネベース及び前記第1円弧状軌道部を貫通している
ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンウインチ。
【請求項6】
前記切替回転ピンは前記第1円弧状軌道部に対して、第2付勢手段によって鉛直下向き方向に付勢されており、
前記支持態様切替ピンは、
前記第1支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースの前記第1穴との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、
前記第2支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースの前記第2穴との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、
前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時においては、前記第2付勢手段の付勢力に抗する外力によって、前記バネベースの前記第1穴または前記第2穴から抜き出されて前記切替揺動アームと共に前記切替回転ピンの軸線回りに揺動されるようになっている
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジンウインチ。
【請求項7】
前記クラッチ機構は、前記エンジンの回転数に応じて前記出力軸と前記ドラムとの接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチであり、
当該エンジンウインチは、
前記クラッチ機構による接続及び接続解除を切り替えるように前記エンジンの回転数を変化させるスロットルワイヤ
を更に備え、
前記スロットルワイヤは、
前記第2円弧状軌道部が前記第1支持態様で支持されている状態においては、前記逆回転防止位置から前記繰り出し位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構によって前記出力軸と前記ドラムとを接続するようになっており、前記繰り出し位置から前記逆回転防止位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続を解除するようになっており、
前記第2円弧状軌道部が前記第2支持態様で支持されている状態においては、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続解除状態を維持するようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のエンジンウインチ。
【請求項8】
エンジンの動力を用いてロープを巻き取るエンジンウインチであって、
回転する出力軸を有するエンジンと、
クラッチ機構を介して前記出力軸に接続解除可能に接続されて回転可能なドラムと、
前記ドラム上の前記出力軸に近い基端側領域に向けて前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第1方向からロープを巻き取るように、前記基端側領域の近傍に設けられたロープ巻き取り案内部と、
前記ドラム上の前記出力軸から離れた先端側領域から前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第2方向にロープを繰り出すように、前記先端側領域から前記第2方向に所定距離だけ離れて設けられたロープ繰り出し案内部と、
を備え、
前記ロープ繰り出し案内部は、
前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されるロープの繰り出し方向を前記ドラムの軸線方向に対して略平行な第3方向へと案内可能な第1円弧状軌道部と、
前記第1円弧状軌道部と協働するように設けられ、前記第1円弧状軌道部によって前記第3方向へと案内されたロープを前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第4方向に繰り出すように案内可能な第2円弧状軌道部と、
を有しており、
前記第2円弧状軌道部は、
前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第3方向へと案内され更に前記第4方向に繰り出される逆回転防止位置と、
前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第1円弧状軌道部から当該第2方向に繰り出される繰り出し位置と、
の間で移動可能となっており、
前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、
第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、付勢手段を介して支持され、初期状態で前記逆回転防止位置に位置するようになっており、前記繰り出し位置に移動されている時には前記付勢手段によって前記逆回転防止位置に戻るような付勢力を受けるようになっており、
第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、前記繰り出し位置において係止状態で支持されるようになっている
ことを特徴とするエンジンウインチ。
【請求項9】
前記第2円弧状軌道部は、前記第1支持態様において、及び、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時において、前記第1円弧状軌道部に対して、鉛直方向に延在する回動軸線回りに回動移動するようになっている
ことを特徴とする請求項8に記載のエンジンウインチ。
【請求項10】
前記付勢手段は、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在するバネ部材である
ことを特徴とする請求項9に記載のエンジンウインチ。
【請求項11】
前記第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、回動アームと支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースに係止状態で支持されるようになっており、
前記第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記回動アームと前記支持態様切替ピンとを介して、前記第1円弧状軌道部に係止状態で支持されるようになっている
ことを特徴とする請求項10に記載のエンジンウインチ。
【請求項12】
前記支持態様切替ピンは、切替揺動アームを介して、前記支持態様切替ピンと平行に延びる切替回転ピンに接続されており、
前記切替回転ピンは、前記バネベース及び前記第1円弧状軌道部を貫通している
ことを特徴とする請求項11に記載のエンジンウインチ。
【請求項13】
前記切替回転ピンは、前記第1円弧状軌道部に対して、第2付勢手段によって鉛直下向き方向に付勢されており、
前記支持態様切替ピンは、
前記第1支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースとの係止状態を維持するように付勢されるようになっており、
前記第2支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記第1円弧状軌道部との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、
前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時においては、前記第2付勢手段の付勢力に抗する外力によって、前記バネベースから抜き出されて前記切替揺動アームと共に前記切替回転ピンの軸線回りに揺動されるようになっている
ことを特徴とする請求項12に記載のエンジンウインチ。
【請求項14】
前記クラッチ機構は、前記エンジンの回転数に応じて前記出力軸と前記ドラムとの接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチであり、
当該エンジンウインチは、
前記クラッチ機構による接続及び接続解除を切り替えるように前記エンジンの回転数を変化させるスロットルワイヤ
を更に備え、
前記スロットルワイヤは、
前記第2円弧状軌道部が前記第1支持態様で支持されている状態においては、前記逆回転防止位置から前記繰り出し位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構によって前記出力軸と前記ドラムとを接続するようになっており、前記繰り出し位置から前記逆回転防止位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続を解除するようになっており、
前記第2円弧状軌道部が前記第2支持態様で支持されている状態においては、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続解除状態を維持するようになっている
ことを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載のエンジンウインチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力を用いてロープを巻き取るエンジンウインチに関している。
【背景技術】
【0002】
エンジンウインチは、回転する出力軸を有するエンジンと、クラッチ機構を介して前記出力軸に接続解除可能に接続されて高トルクで低速回転可能なドラムと、を備えており、0kgf~700kgf程度の負荷で0~12m/分程度のロープ巻き取り速度が実現されている。
【0003】
エンジンウインチの一般的な構成については、例えば特許文献1に記載されているように、非常に古くから知られている。
【0004】
また、作業中の安全のため、ドラムの逆回転を防止する機能(ロープの巻き上げ時における落下防止機能)が設けられることが重要である。これは、ロープの軌道を調整することで実現されている。
【0005】
ロープは、一般的に、ドラム上のエンジン(出力軸)に近い基端側領域に向けて、当該ドラムの軸線方向に対して略垂直な第1方向から巻き取られる。そして、当該ロープは、ドラム上を数巻き周回した後、ドラム上のエンジン(出力軸)から離れた先端側領域から、ドラムの軸線方向に対して略垂直な第2方向に繰り出される。
【0006】
その後、ロープの軌道は、アッセンダと呼ばれる第1円弧状軌道部とローラーを有する第2円弧状軌道部との協働によって、逆回転防止モードと繰り出しモードとで異なる軌道に案内される。
【0007】
具体的には、逆回転防止モードでは、ドラムの先端側領域から第2方向に繰り出されるロープの繰り出し方向が、ドラムの軸線方向に対して略平行な第3方向へと案内され、当該第3方向へと案内されたロープが、ドラムの軸線方向に対して略垂直な第4方向へと案内され、更に第3方向と逆側の第5方向へと案内されるようになっている(
図7参照)。このようにロープが蛇行状の軌道に案内されることによって、ドラムの逆回転(ロープの逆行)が効果的に防止される。この時、クラッチは接続解除されており、すなわち、エンジンはアイドリング状態である。
【0008】
繰り出しモードでは、第2円弧状軌道部の位置が移動されることにより、ドラムの先端側領域から第2方向に繰り出されたロープが第1円弧状軌道部から当該第2方向に繰り出されるように案内され、その後、第2円弧状軌道部によって第2方向と反対側の第6方向に案内されるようになっている(
図8参照)。このようにロープが案内されることによって、ロープの繰り出し(結果的にロープの巻き取り)が円滑に実施される。この時、クラッチは接続され、エンジンの動力がロープの巻き取りに利用される。
【0009】
逆回転防止モードと繰り出しモードとの間の切り替えは、第2円弧状軌道部の位置を変更することによってなされる。具体的には、第2円弧状軌道部は、初期状態においては逆回転防止モードに対応する位置にあり、ロープ繰り出し(ロープ巻き取り)時に、手動で外力を付与することで、ロープ繰り出しモードに対応する位置に移動されるようになっている。また、バネ機構が併用されて、手動の外力の付与が消失する時、第2円弧状軌道部は、初期状態の逆回転防止モードに対応する位置に自動的に復帰するようになっている。
【0010】
更に、クラッチの接続/接続解除の切り替えも、第2円弧状軌道部の位置を変更することによって連動してなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本件発明者は、ロープ巻き取りの作業状態によって、ロープを意図的に緩めたいというニーズがあることを知見した。
【0013】
従来の構成では、そのような場合、ドラムの逆回転(ロープの逆行)の防止機能が解除されている必要があるため、第2円弧状軌道部がロープ繰り出しモードに対応する位置に移動ないし維持され、一方、エンジンの動力がロープを巻き取らないようにエンジンが停止されていた。
【0014】
しかしながら、第2円弧状軌道部をロープ繰り出しモードに対応する位置に維持するためには、バネ機構に対抗する手動の外力の付与を継続する必要があり、ロープを緩める作業に集中することができず操作性が良くなかった。
【0015】
更に、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じる度に、その都度エンジンを停止させることは、作業者にとって面倒であるし、エンジンの停止/再駆動に時間を要するという点でも非効率的であった。
【0016】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、ロープを意図的に緩めたいというニーズに対して高い操作性を実現したエンジンウインチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、エンジンの動力を用いてロープを巻き取るエンジンウインチであって、回転する出力軸を有するエンジンと、クラッチ機構を介して前記出力軸に接続解除可能に接続されて回転可能なドラムと、前記ドラム上の前記出力軸に近い基端側領域に向けて前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第1方向からロープを巻き取るように、前記基端側領域の近傍に設けられたロープ巻き取り案内部と、前記ドラム上の前記出力軸から離れた先端側領域から前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第2方向にロープを繰り出すように、前記先端側領域から前記第2方向に所定距離だけ離れて設けられたロープ繰り出し案内部と、を備え、前記ロープ繰り出し案内部は、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されるロープの繰り出し方向を前記ドラムの軸線方向に対して略平行な第3方向へと案内可能な第1円弧状軌道部と、前記第1円弧状軌道部と協働するように設けられ、前記第1円弧状軌道部によって前記第3方向へと案内されたロープを前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第4方向に繰り出すように案内可能な第2円弧状軌道部と、を有しており、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第3方向へと案内され更に前記第4方向に繰り出される逆回転防止位置と、前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第1円弧状軌道部から当該第2方向に繰り出される繰り出し位置と、の間で移動可能となっており、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、付勢手段を介して、初期状態で前記逆回転防止位置に位置するように支持され、前記繰り出し位置に移動されている時には前記付勢手段によって前記逆回転防止位置に戻るような付勢力を受けるようになっており、第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、前記付勢手段を介して、初期状態で前記繰り出し位置に位置するように支持されるようになっていることを特徴とするエンジンウインチである。
【0018】
本発明によれば、第2円弧状軌道部が、第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では初期状態で繰り出し位置に位置するように支持される。これにより、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部が付勢手段の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープを緩める作業に集中することができる。
【0019】
好ましくは、前記第2円弧状軌道部は、前記第1支持態様において、及び、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時において、前記第1円弧状軌道部に対して、鉛直方向に延在する回動軸線回りに回動移動するようになっている。
【0020】
これによれば、第2円弧状軌道部の逆回転防止位置と繰り出し位置との間の移動を円滑に実現することができる。特に、第2円弧状軌道部は、回動アームを介して、第1円弧状軌道部の円弧状軌道の中心軸線回りに回動移動することが好ましい。
【0021】
また、この場合、前記付勢手段は、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在するバネ部材であることが好ましい。
【0022】
これによれば、付勢手段としてのバネ部材の付勢力を、より効果的に第2円弧状軌道部に作用させることができる。バネ部材は、例えば、コイルバネである。
【0023】
また、この場合、前記第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、回動アームと支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースの第1穴に係止状態で支持されるようになっており、前記第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記回動アームと前記支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースの第2穴に係止状態で支持されるようになっていることが好ましい。
【0024】
これによれば、第2円弧状軌道部が第1円弧状軌道部に対して切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるという構成を、容易かつ簡潔に実現することができる。
【0025】
この場合、更に、前記支持態様切替ピンは、切替揺動アームを介して、前記支持態様切替ピンと平行に延びる切替回転ピンに接続されており、前記切替回転ピンは、前記バネベース及び前記第1円弧状軌道部を貫通していることが好ましい。
【0026】
これによれば、第2円弧状軌道部の第1円弧状軌道部に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成を、容易かつ簡潔に実現することができる。
【0027】
この場合、更に、前記切替回転ピンは、前記第1円弧状軌道部に対して、第2付勢手段によって鉛直下向き方向に付勢されており、前記支持態様切替ピンは、前記第1支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースの前記第1穴との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、前記第2支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースの前記第2穴との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時においては、前記第2付勢手段の付勢力に抗する外力によって、前記バネベースの前記第1穴または前記第2穴から抜き出されて前記切替揺動アームと共に前記切替回転ピンの軸線回りに揺動されるようになっていることが好ましい。
【0028】
これによれば、第2円弧状軌道部の第1円弧状軌道部に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成を、更に容易かつ簡潔に実現することができる。
【0029】
また、前記クラッチ機構は、前記エンジンの回転数に応じて前記出力軸と前記ドラムとの接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチであり、当該エンジンウインチは、前記クラッチ機構による接続及び接続解除を切り替えるように前記エンジンの回転数を変化させるスロットルワイヤを更に備え、前記スロットルワイヤは、前記第2円弧状軌道部が前記第1支持態様で支持されている状態においては、前記逆回転防止位置から前記繰り出し位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構によって前記出力軸と前記ドラムとを接続するようになっており、前記繰り出し位置から前記逆回転防止位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続を解除するようになっており、前記第2円弧状軌道部が前記第2支持態様で支持されている状態においては、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続解除状態を維持するようになっていることが好ましい。
【0030】
これによれば、第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続/接続解除の切り替えが、第2円弧状軌道部の位置変更に連動して自動的になされるため、クラッチの接続/接続解除のための別途の操作が不要で操作性が良い一方で、第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続解除状態が維持されるため、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時にエンジンを停止させる操作が不要である。
【0031】
あるいは、本発明は、エンジンの動力を用いてロープを巻き取るエンジンウインチであって、回転する出力軸を有するエンジンと、クラッチ機構を介して前記出力軸に接続解除可能に接続されて回転可能なドラムと、前記ドラム上の前記出力軸に近い基端側領域に向けて前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第1方向からロープを巻き取るように、前記基端側領域の近傍に設けられたロープ巻き取り案内部と、前記ドラム上の前記出力軸から離れた先端側領域から前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第2方向にロープを繰り出すように、前記先端側領域から前記第2方向に所定距離だけ離れて設けられたロープ繰り出し案内部と、を備え、前記ロープ繰り出し案内部は、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されるロープの繰り出し方向を前記ドラムの軸線方向に対して略平行な第3方向へと案内可能な第1円弧状軌道部と、前記第1円弧状軌道部と協働するように設けられ、前記第1円弧状軌道部によって前記第3方向へと案内されたロープを前記ドラムの軸線方向に対して略垂直な第4方向に繰り出すように案内可能な第2円弧状軌道部と、を有しており、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第3方向へと案内され更に前記第4方向に繰り出される逆回転防止位置と、前記第1円弧状軌道部と協働して、前記先端側領域から前記第2方向に繰り出されたロープが前記第1円弧状軌道部から当該第2方向に繰り出される繰り出し位置と、の間で移動可能となっており、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、付勢手段を介して支持され、初期状態で前記逆回転防止位置に位置するようになっており、前記繰り出し位置に移動されている時には前記付勢手段によって前記逆回転防止位置に戻るような付勢力を受けるようになっており、第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記第1円弧状軌道部に対して、前記繰り出し位置において係止状態で支持されるようになっていることを特徴とするエンジンウインチである。
【0032】
本発明によれば、第2円弧状軌道部が、第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では繰り出し位置において係止状態で支持される。これにより、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部が付勢手段の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープを緩める作業に集中することができる。
【0033】
本発明においても、好ましくは、前記第2円弧状軌道部は、前記第1支持態様において、及び、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時において、前記第1円弧状軌道部に対して、鉛直方向に延在する回動軸線回りに回動移動するようになっている。
【0034】
これによれば、第2円弧状軌道部の逆回転防止位置と繰り出し位置との間の移動を円滑に実現することができる。特に、第2円弧状軌道部は、回動アームを介して、第1円弧状軌道部の円弧状軌道の中心軸線回りに回動移動することが好ましい。
【0035】
また、この場合、前記付勢手段は、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在するバネ部材であることが好ましい。
【0036】
これによれば、付勢手段としてのバネ部材の付勢力を、より効果的に第2円弧状軌道部に作用させることができる。バネ部材は、例えば、コイルバネである。
【0037】
また、この場合、前記第1支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、回動アームと支持態様切替ピンとを介して、前記バネ部材に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベースに係止状態で支持されるようになっており、前記第2支持態様では、前記第2円弧状軌道部は、前記回動アームと前記支持態様切替ピンとを介して、前記第1円弧状軌道部に係止状態で支持されるようになっていることが好ましい。
【0038】
これによれば、第2円弧状軌道部が第1円弧状軌道部に対して切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるという構成を、容易かつ簡潔に実現することができる。
【0039】
この場合、更に、前記支持態様切替ピンは、切替揺動アームを介して、前記支持態様切替ピンと平行に延びる切替回転ピンに接続されており、前記切替回転ピンは、前記バネベース及び前記第1円弧状軌道部を貫通していることが好ましい。
【0040】
これによれば、第2円弧状軌道部の第1円弧状軌道部に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成を、容易かつ簡潔に実現することができる。
【0041】
この場合、更に、前記切替回転ピンは、前記第1円弧状軌道部に対して、第2付勢手段によって鉛直下向き方向に付勢されており、前記支持態様切替ピンは、前記第1支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記バネベースとの係止状態を維持するように付勢されるようになっており、前記第2支持態様では、前記第2付勢手段によって、前記第1円弧状軌道部との係止状態を維持するように付勢されるようになっており、前記第1支持態様と前記第2支持態様との間の切り替え時においては、前記第2付勢手段の付勢力に抗する外力によって、前記バネベースから抜き出されて前記切替揺動アームと共に前記切替回転ピンの軸線回りに揺動されるようになっていることが好ましい。
【0042】
これによれば、第2円弧状軌道部の第1円弧状軌道部に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成を、更に容易かつ簡潔に実現することができる。
【0043】
また、本発明においても、前記クラッチ機構は、前記エンジンの回転数に応じて前記出力軸と前記ドラムとの接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチであり、当該エンジンウインチは、前記クラッチ機構による接続及び接続解除を切り替えるように前記エンジンの回転数を変化させるスロットルワイヤを更に備え、前記スロットルワイヤは、前記第2円弧状軌道部が前記第1支持態様で支持されている状態においては、前記逆回転防止位置から前記繰り出し位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構によって前記出力軸と前記ドラムとを接続するようになっており、前記繰り出し位置から前記逆回転防止位置への前記第2円弧状軌道部の移動に伴って、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続を解除するようになっており、前記第2円弧状軌道部が前記第2支持態様で支持されている状態においては、前記クラッチ機構による前記出力軸と前記ドラムとの接続解除状態を維持するようになっていることが好ましい。
【0044】
これによれば、第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続/接続解除の切り替えが、第2円弧状軌道部の位置変更に連動して自動的になされるため、クラッチの接続/接続解除のための別途の操作が不要で操作性が良い一方で、第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続解除状態が維持されるため、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時にエンジンを停止させる操作が不要である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様によれば、第2円弧状軌道部が、第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では初期状態で繰り出し位置に位置するように支持される。これにより、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部が付勢手段の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープを緩める作業に集中することができる。
【0046】
あるいは、本発明の別の態様によれば、第2円弧状軌道部が、第1円弧状軌道部に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では繰り出し位置において係止状態で支持される。これにより、ロープを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部が付勢手段の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープを緩める作業に集中することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンウインチの概略斜視図である。
【
図2】
図1のエンジンウインチの概略側面図である。
【
図3】
図1のエンジンウインチの概略正面図である。
【
図4】第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略斜視図である。
【
図5】第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略平面図である。
【
図6】第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略縦断面図である。
【
図7】第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、逆回転防止モードの
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略平面図である。
【
図8】第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、繰り出しモードの
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略平面図である。
【
図9】第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態での、
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略平面図である。
【
図10】第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態での、
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略縦断面図である。
【
図11】第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態での、逆回転防止が解除された状態を示す
図1のエンジンウインチのロープ繰り出し案内部の概略平面図である。
【
図12】本発明の別の実施形態に係るエンジンウインチにおいて、第2円弧状軌道部が第1支持態様で支持されている状態での、ロープ繰り出し案内部の概略縦断面図である(
図6に対応する)。
【
図13】本発明の別の実施形態に係るエンジンウインチにおいて、第2円弧状軌道部が第2支持態様で支持されている状態での、ロープ繰り出し案内部の概略縦断面図である(
図10に対応する)。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0049】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンウインチ1の概略斜視図であり、
図2は、本実施形態のエンジンウインチ1の概略側面図であり、
図3は、本実施形態のエンジンウインチ1の概略正面図である。
【0050】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態のエンジンウインチ1は、把持用ハンドルを兼ねるフレーム2と、回転するエンジン出力軸を有するエンジン3と、不図示のクラッチ機構を介してエンジン出力軸に接続解除可能に接続されて高トルクで低速回転可能なドラム4と、を備えている。本実施形態のエンジンウインチ1は、最大800kgfの牽引力で12m/分のロープ巻き取り速度を実現する。
【0051】
フレーム2は、前面側で上方に延び、上面側で後方に延び、後面側で下方に延びて、全体として略コの字型の上方フレーム2aと、前面側で斜め左下方に延び、底面側で後方に延び、後面側で斜め右上方に延びて、全体として略コの字型の左下方フレーム2bと、前面側で斜め右下方に延び、底面側で後方に延び、後面側で斜め左上方に延びて、全体として略コの字型の右下方フレーム2cと、を有している。
【0052】
また、ドラム4上のエンジン出力軸に近い基端側領域A(
図3参照)に向けてドラム4の軸線方向に対して略垂直な(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)第1方向D1(
図7参照)からロープRを巻き取るように、基端側領域Aの近傍にロープ巻き取り案内部5が設けられている。本実施形態のロープ巻き取り案内部5は、フック状のロープ通過案内部として構成されており、フレーム2に支持されたベース7に固定されている。
【0053】
そして、ドラム4上のエンジン出力軸から離れた先端側領域B(
図3参照)からドラム4の軸線方向に対して略垂直な(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)第2方向D2(
図7参照)にロープRを繰り出すように、先端側領域Bから第2方向D2に所定距離だけ離れてロープ繰り出し案内部6が設けられている。
【0054】
(ロープ繰り出し案内部6)
ロープ繰り出し案内部6は、先端側領域Bから第2方向D2に繰り出されるロープRの繰り出し方向をドラム4の軸線方向に対して略平行な(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)第3方向D3へと案内可能な第1円弧状軌道部10と、第1円弧状軌道部10と協働するように設けられ当該第1円弧状軌道部10によって第3方向D3へと案内されたロープRをドラム4の軸線方向に対して略垂直な(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)第4方向D4に繰り出すように案内可能な第2円弧状軌道部20と、を有している。
【0055】
第1円弧状軌道部10は、アッセンダと呼ばれている従来から公知の部材であり、ロープRの上下面を特殊な形状の複数の突出部11(
図6及び
図10参照)で案内しながら、ロープRを平面視で略1/4円弧状の軌道に案内するようになっている(
図7参照)。
【0056】
第2円弧状軌道部20は、鉛直方向に延びるローラーピン22回りに回転可能に設けられたローラー21を有する部材であり(
図6参照)、回動アーム30を介して第1円弧状軌道部10に対して回動可能に設けられている(
図7及び
図8参照、詳しくは後述される)。ローラー21の転動面には、ロープRの断面直径に対応する凹溝21gが設けられており(
図6参照)、当該凹溝21gがロープRの軌道を案内することで、ロープRを平面視で円弧状の軌道に案内するようになっている(
図7、
図8及び
図11参照)。
【0057】
逆回転防止モード(
図7参照)では、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10と協働して、先端側領域Bから第2方向D2に繰り出されたロープRが第3方向D3へと案内され更に第4方向D4に繰り出されるように作用する。本実施形態では、第2円弧状軌道部20から突設されたロープ案内螺旋24内にロープRが案内されることにより、第4方向D4に繰り出されたロープRが更に第3方向D3と逆側の第5方向D5へと案内されるようになっている。第2円弧状軌道部20の当該位置は、逆回転防止位置と呼ばれる。
【0058】
繰り出しモード(
図8参照)では、第2円弧状軌道部20の位置が移動され、第1円弧状軌道部10と協働して、先端側領域Bから第2方向D2に繰り出されたロープRが第1円弧状軌道部10から当該第2方向D2に(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)繰り出されるように案内され、その後、第2円弧状軌道部20によって第2方向D2と反対側の第6方向D6に(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)案内されるようになっている(
図8参照)。第2円弧状軌道部20の当該位置は、繰り出し位置と呼ばれる。
【0059】
(第1支持態様と第2支持態様)
そして、本発明の特徴として、本実施形態のエンジンウインチ1では、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっている。
【0060】
第1支持態様は、従来の支持態様に対応している。すなわち、当該第1支持態様において、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10に対して、付勢手段としてのコイルバネ13を介して支持され、初期状態(コイルバネ13の自然長状態に限定されず、既に変形状態であるが復帰できないようストッパ等で位置決めされた状態でもよい)では逆回転防止位置(
図7参照)に位置するようになっており、繰り出し位置(
図8参照)に移動されている時には前記付勢手段によって逆回転防止位置に戻るような付勢力(復元力)を受けるようになっている。
【0061】
一方、第2支持態様は、本件発明者によって初めて導入された概念である。当該第2支持態様において、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10に対して、付勢手段としてのコイルバネ13を介して支持されてはいるが、初期状態(コイルバネ13の自然長状態に限定されず、既に変形状態であるが復帰できないようストッパ等で位置決めされた状態でもよい)で繰り出し位置において支持されるようになっている(
図11参照)。
【0062】
図4は、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、本実施形態のエンジンウインチ1のロープ繰り出し案内部6の概略斜視図であり、
図5は、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、本実施形態のロープ繰り出し案内部6の概略平面図であり、
図6は、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、本実施形態のロープ繰り出し案内部6の概略縦断面図(
図5のA-B-C-D-E線断面図)である。
【0063】
そして、
図7が、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、逆回転防止モードのロープ繰り出し案内部6の概略平面図であり(第2円弧状軌道部20が逆回転防止位置にある)、
図8が、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、繰り出しモードのロープ繰り出し案内部6の概略平面図である(第2円弧状軌道部20が繰り出し位置にある)。
【0064】
一方、
図9は、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態での、本実施形態のエンジンウインチ1のロープ繰り出し案内部6の概略平面図であり、
図10は、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態での、本実施形態のロープ繰り出し案内部6の概略縦断面図(
図9のA’-B’-C’-D’-E’線断面図)である。
【0065】
そして、
図11が、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態での、ロープRの案内状態を示す本実施形態のロープ繰り出し案内部6の概略平面図である。
【0066】
図4乃至
図11に示すように、第2円弧状軌道部20は、第1支持態様において(
図7←→
図8)、及び、第1支持態様と第2支持態様との間の切り替え時において(
図7←→
図11)、第1円弧状軌道部10に対して、鉛直方向に延在する回動軸線(本実施形態では、後述する切替回転ピン42の軸線)回りに回動移動するようになっている。
【0067】
前述のように、第1支持態様において、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10に対して、付勢手段としてのコイルバネ13を介して支持されている。本実施形態では、コイルバネ13は、前記回動軸線(本実施形態では、後述する切替回転ピン42の軸線)と同軸に設けられた円板形状のバネベース12の側周面に沿うように2つのコイルバネ要素が連結されて延在しており、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在している。コイルバネ13の一端は、第1円弧状軌道部10に設けられたバネ一端固定部10s(
図4参照)に固定されており、コイルバネ13の他端は、バネベース12の周面上に設けられたバネ他端固定部12s(
図4参照)に固定されている。
【0068】
また、第1支持態様では、第2円弧状軌道部20は、コイルバネ13の他端に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベース12に係止状態で支持されるようになっている。より具体的には、第1支持態様では、第2円弧状軌道部20は、回動アーム30と支持態様切替ピン41とを介して、バネベース12の第1穴12aに係止されるようになっている。これにより、第1支持態様では、第2円弧状軌道部20の第1円弧状軌道部10に対する回動に伴って、バネベース12も第1円弧状軌道部10に対して回動し、コイルバネ13がバネベース12の周面上で伸縮するようになっている。
【0069】
詳細には、バネベース12の側周面上には、コイルバネ13の直径に対応する凹溝が設けられており(
図6参照)、当該凹溝がコイルバネ13の伸縮軌道を案内するようになっている。
【0070】
係止後の初期状態(コイルバネ13の自然長状態に限定されず、既に変形状態であるが復帰できないようストッパ等で位置決めされた状態でもよい)で、第2円弧状軌道部20は、逆回転防止位置(
図7参照)にあり、手動で外力を付与することで、繰り出し位置(
図8参照)に移動され得る。但し、繰り出し位置に移動されている間、第2円弧状軌道部20は、付勢手段としてのコイルバネ13によって、逆回転防止位置に戻るような付勢力(復元力)を受け続ける(これに対抗する外力の付与の継続が必要である)。
【0071】
支持態様切替ピン41は、切替揺動アーム40を介して、当該支持態様切替ピン41と平行に延びる切替回転ピン42に接続されている。そして、切替回転ピン42は、バネベース12及び第1円弧状軌道部10を貫通している。
【0072】
そして、切替回転ピン42は、第1円弧状軌道部10に対して、第2付勢手段としてのコイルバネ44によって、鉛直下向き方向に付勢されている。
【0073】
これにより、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、第1支持態様では、コイルバネ44によって、バネベース12の第1穴12aとの係止状態を維持するように付勢されるようになっている(
図6参照)。
【0074】
一方、支持態様切替ピン41は、第1支持態様から第2支持態様への切り替え時においては、コイルバネ44の付勢力に抗する外力によって、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、バネベース12の第1穴12aから抜き出されて、切替回転ピン42の軸線回りに揺動されるようになっている。
【0075】
そして、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、第2支持態様では、コイルバネ44によって、バネベース12の第2穴12bとの係止状態を維持するように付勢されるようになっている(
図10参照)。
【0076】
また、支持態様切替ピン41は、第2支持態様から第1支持態様への切り替え時においては、コイルバネ44の付勢力に抗する外力によって、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、バネベース12の第2穴12bから抜き出されて、切替回転ピン42の軸線回りに揺動されるようになっている。
【0077】
(把持用ヘッド43、23)
第1支持態様と第2支持態様との間で切り替え操作をする際の操作性を高めるべく、切替回転ピン42の上方に、把持用ヘッド43が設けられている(
図6、
図10参照)。作業者は、把持用ヘッド43を把持して持ち上げることで、切替回転ピン42(切替揺動アーム40及び支持態様切替ピン41を伴う)をコイルバネ44の付勢力に抗して容易に持ち上げることができる。
【0078】
また、第1支持態様で支持された第2円弧状軌道部20を、逆回転防止位置(
図7参照)から繰り出し位置(
図8参照)へと手動で移動操作する際の操作性を高めるべく、ローラーピン22の上方に、把持用ヘッド23が設けられている(
図6、
図10参照)。作業者は、把持用ヘッド23を把持して切替回転ピン42の軸線回りに回動することで、第2円弧状軌道部20(回動アーム30、切替揺動アーム40、支持態様切替ピン41及びバネベース12を伴う)をコイルバネ13の付勢力に抗して容易に移動させることができる。
【0079】
(スロットルワイヤ64)
図7、
図8及び
図11に示すように、本実施形態のエンジンウインチ1は、クラッチ機構(不図示)によるエンジン3のエンジン出力軸(不図示)とドラム4との接続及び接続解除を切り替えるスロットルワイヤ64を更に備えている。より具体的には、本実施形態では、クラッチ機構(不図示)は、エンジン3の回転数に応じてエンジン出力軸(不図示)とドラム4との接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチである一方、スロットルワイヤ64が引かれることによって、エンジン3の回転数が増大するようになっている。これにより、スロットルワイヤ64が引かれてエンジン3の回転数が増大することによって、遠開クラッチであるクラッチ機構が接続するようになっている。
【0080】
スロットルワイヤ64は、テンションバー61の先端部の一側(
図7、
図8、
図11では右側)に固定されており、テンションバー61の基端部は、切替回転ピン42の軸線回りに回動可能に、第1円弧状軌道部10上に支持されている(
図6、
図10参照)。また、テンションバー61の先端部の他側(
図7、
図8、
図11では左側)は、コイルバネ62を介して、ベース7に固定されたコンソール63(
図4も参照)によって支持されている。
【0081】
そして、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されていて逆回転防止位置(
図7参照)から繰り出し位置(
図8参照)に移動される際に、テンションバー61は、第2円弧状軌道部20と共に回動するバネベース12に設けられた突部(不図示)によって押圧されてコイルバネ44を圧縮しながら切替回転ピン42の軸線回りに回動する(
図7→
図8)。これにより、スロットルワイヤ64が左方に引っ張られる。このスロットルワイヤ64の移動を利用して、クラッチ機構が、エンジン出力軸とドラム4とを接続するようになっている。(逆回転防止位置(
図7参照)では、エンジン出力軸とドラム4とは接続解除された状態(アイドリング状態)となっている。)
【0082】
逆に、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されていて繰り出し位置(
図8)から逆回転防止位置(
図7)に戻される際(コイルバネ13の復元力によって自動的に戻されてもよいし手動で戻されてもよい)、テンションバー61は、第2円弧状軌道部20と共に回動するバネベース12に設けられた突部(不図示)による押圧状態から解放され、コイルバネ44の復元力を受けて切替回転ピン42の軸線回りに回動して元の位置に戻る(
図8→
図7)。これにより、スロットルワイヤ64を左方に引っ張る力が消失し、スロットルワイヤも元の位置に戻る。このスロットルワイヤ64の復帰を利用して、クラッチ機構が、エンジン出力軸とドラム4との接続を解除する。
【0083】
第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている際には、第2円弧状軌道部20は既に繰り出し位置(
図11参照)にあり、第2円弧状軌道部20が更に回動されることはなく、すなわち、バネベース12が回動されることはない。このため、テンションバー61がバネベース12に設けられた突部(不図示)によって押圧されてコイルバネ44を圧縮しながら切替回転ピン42の軸線回りに回動するということがなく、スロットルワイヤ64の移動が生じない。従って、クラッチ機構は、エンジン出力軸とドラム4との接続解除状態(アイドリング状態)を維持する。
【0084】
(作用)
次に、以上のような構成からなる本実施形態のエンジンウインチ1の作用について説明する。
【0085】
本実施形態のエンジンウインチ1は、上方フレーム2aが把持用ハンドルを兼ねているため、屋外において持ち運ぶことが容易である。そして、本実施形態のエンジンウインチ1は、左下方フレーム2bと右下方フレーム2cとによって、例えば地面上に安定的に設置される。
【0086】
次に、巻き取り対象のロープRの先端を、ドラム4上の基端側領域Aの近傍に設けられたロープ巻き取り案内部5(本実施形態ではフック状のロープ通過案内部)に通し、当該ロープRがドラム4上の基端側領域Aに向けてドラム4の軸線方向に対して略垂直な第1方向D1に巻き取られるように案内していく。そして更に、当該ロープRが、ドラム4上を数巻き周回した後、ドラム4上の先端側領域Bからドラム4の軸線方向に対して略垂直な第2方向D2に繰り出されるように案内していく。
【0087】
次に、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されていて繰り出し位置にある状態(
図8参照)として、ロープRの先端が第1円弧状軌道部10と第2円弧状軌道部20との間に通される。その後、第2円弧状軌道部20が逆回転防止位置に戻される(コイルバネ13の復元力によって自動的に戻されてもよいし手動で戻されてもよい)ことにより、ロープRは逆回転防止モードの軌道に案内される(
図7参照)。
【0088】
逆回転防止モード(
図7参照)では、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10と協働して、先端側領域Bから第2方向D2に繰り出されたロープRが第3方向D3へと案内され更に第4方向D4に繰り出されるように作用する。本実施形態では、第2円弧状軌道部20から突設されたロープ案内螺旋24内にロープRが案内されることにより、第4方向D4に繰り出されたロープRが更に第3方向D3と逆側の第5方向D5へと案内されるようになっている。このようにロープRが蛇行状の軌道に案内されることによって、ドラム4の逆回転(ロープRの逆行)が効果的に防止される。
【0089】
なお、逆回転防止モード(逆回転防止位置)では、エンジン出力軸とドラム4とは接続解除された状態(アイドリング状態)となっている。
【0090】
逆回転防止モードから繰り出しモードへの切り替えは、第2円弧状軌道部20の位置を手動で変更することによってなされる。具体的には、作業者が、ロープRの繰り出し軌道を第5方向D5(
図7参照)から第6方向D6(
図8参照)に変えるようにロープRを引っ張ることで(あるいは把持用ヘッド23を操作することで)第2円弧状軌道部20を切替回転ピン42の軸線回りに回動することにより、第2円弧状軌道部20(回動アーム30、切替揺動アーム40、支持態様切替ピン41及びバネベース12を伴う)がコイルバネ13の復元力に抗して回動して、繰り出しモードへの切り替えがなされる。
【0091】
この際、テンションバー61が、第2円弧状軌道部20と共に回動するバネベース12に設けられた突部(不図示)によって押圧されてコイルバネ62を圧縮しながら切替回転ピン42の軸線回りに回動する(
図7→
図8)。これにより、スロットルワイヤ64が左方に引っ張られ、このスロットルワイヤ64の移動を利用して、クラッチ機構が、エンジン出力軸とドラム4とを接続する。
【0092】
繰り出しモード(
図8参照)では、第2円弧状軌道部20と第1円弧状軌道部10との協働により、先端側領域Bから第2方向D2に繰り出されたロープRが、第1円弧状軌道部10から当該第2方向D2に(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)繰り出されるように案内され、その後、第2円弧状軌道部20によって第2方向D2と反対側の第6方向D6に(±20°程度、好ましくは±5°程度、は許容される)案内される(
図8参照)。
【0093】
繰り出しモード(繰り出し位置)では、エンジン出力軸とドラム4とが接続されて、エンジン3の動力がロープRの巻き取りに利用される。そして、作業者が、第6方向D6に案内されたロープRを順次に手繰り出していくことにより、ロープRの巻き取りを連続的に実施することができる。但し、作業者は、第2円弧状軌道部20の位置がコイルバネ13の付勢力に抗して維持されるように、手動の外力(ロープRを引っ張る力)を付与し続ける必要がある。
【0094】
ロープRの巻き取りを停止する場合には、作業者が手動の外力(ロープRを引っ張る力)を緩める。これにより、コイルバネ13の復元力が作用して、逆回転防止モードへの切り替えがなされる。
【0095】
この際、テンションバー61が、第2円弧状軌道部20と共に回動するバネベース12に設けられた突部(不図示)による押圧状態から解放され、コイルバネ62の復元力を受けて切替回転ピン42の軸線回りに回動して元の位置に戻る(
図8→
図7)。これにより、スロットルワイヤ64を左方に引っ張る力が消失し、スロットルワイヤも元の位置に戻り、このスロットルワイヤ64の復帰を利用して、クラッチ機構が、エンジン出力軸とドラム4との接続を解除する。
【0096】
そして、ロープRの巻き取りの作業状態によって、ロープRを意図的に緩めたいというニーズが生じた場合には、逆回転防止モードから第2円弧状軌道部20の支持態様の切り替えがなされる。(もし繰り出しモードであったならば、まず、逆回転防止モードへの切り替えがなされる。)
【0097】
逆回転防止モード(第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されていて逆回転防止位置にある)から、作業者は、把持用ヘッド43を把持して持ち上げることで、切替回転ピン42(切替揺動アーム40及び支持態様切替ピン41を伴う)をコイルバネ44の付勢力に抗して持ち上げる。これにより、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に上方へ移動され、バネベース12の第1穴12aから抜き出される。
【0098】
続いて、作業者は、把持用ヘッド43を切替回転ピン42の軸線回りにバネベース12に対して回転させることで、切替揺動アーム40及び支持態様切替ピン41を切替回転ピン42の軸線回りに回動し、支持態様切替ピン41をバネベース12の第2穴12bと位置合わせする。そして、その状態から把持用ヘッド43を持ち上げている力を徐々に弱めることで支持態様切替ピン41を第2穴12b内に挿入する。これにより、第2円弧状軌道部20の支持態様が、第1支持態様から第2支持態様に切り替えられる。
【0099】
この第2支持態様で、第2円弧状軌道部20は、第1円弧状軌道部10に対してコイルバネ13を介して支持されてはいるが、初期状態で既に繰り出し位置(
図11参照)に位置しているため、当該繰り出し位置において作業者が更に把持用ヘッド23に何らかの外力を付与する必要が無い。このため、作業者は、ロープRを緩める作業に集中することができる。
【0100】
また、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている際には、第2円弧状軌道部20は既に繰り出し位置(
図11参照)にあり、第2円弧状軌道部20が更に回動されることはなく、すなわち、バネベース12が回動されることはない。このため、テンションバー61がバネベース12に設けられた突部(不図示)によって押圧されてコイルバネ62を圧縮しながら切替回転ピン42の軸線回りに回動するということがなく、スロットルワイヤ64の移動が生じない。従って、クラッチ機構は、エンジン出力軸とドラム4との接続解除状態(アイドリング状態)を維持する。これにより、ロープRを意図的に緩めたいというニーズが生じる度に、その都度エンジンを停止させる必要がない。
【0101】
第2支持態様から第1支持態様に戻す際には、作業者は、把持用ヘッド43を把持して持ち上げることで、切替回転ピン42(切替揺動アーム40及び支持態様切替ピン41を伴う)をコイルバネ44の付勢力に抗して持ち上げる。これにより、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に上方へ移動され、バネベース12の第2穴12bから抜き出される。
【0102】
続いて、作業者は、把持用ヘッド43を切替回転ピン42の軸線回りにバネベース12に対して回転させることで、切替揺動アーム40及び支持態様切替ピン41を切替回転ピン42の軸線回りに回動し、支持態様切替ピン41をバネベース12の第1穴12aと位置合わせする。そして、その状態から把持用ヘッド43を持ち上げている力を徐々に弱めることで支持態様切替ピン41を第1穴12a内に挿入する。これにより、第2円弧状軌道部20の支持態様が、第2支持態様から第1支持態様に戻される。
【0103】
(効果)
以上のような本実施形態のエンジンウインチ1によれば、第2円弧状軌道部20が、第1円弧状軌道部10に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では初期状態で繰り出し位置に位置するように支持される。これにより、ロープRを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部20を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部20がコイルバネ13の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープRを緩める作業に集中することができる。
【0104】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、第2円弧状軌道部20が、第1支持態様において、及び、第1支持態様と第2支持態様との間の切り替え時において、第1円弧状軌道部10に対して、鉛直方向に延在する回動軸線回りに回動移動するようになっている。これにより、第2円弧状軌道部20の逆回転防止位置(
図7参照)と繰り出し位置(
図8参照)との間の移動を円滑に実現することができる。特に、本実施形態の第2円弧状軌道部20は、回動アーム30を介して第1円弧状軌道部10の円弧状軌道の中心軸線回りに回動移動するため、ロープRの軌道案内をより円滑に実施することができる。
【0105】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、付勢手段として、前記回動軸線を中心とした円弧状軌道上に延在するコイルバネ13が用いられている。これにより、付勢手段としてのコイルバネ13の付勢力(復元力)を、より効果的に第2円弧状軌道部20に作用させることができる。
【0106】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、第1支持態様において、第2円弧状軌道部20が、回動アーム30と支持態様切替ピン41とを介して、コイルバネ13に固定されて前記回動軸線回りに回動移動するバネベース12の第1穴12aに係止状態で支持され、第2支持態様において、第2円弧状軌道部20が、回動アーム30と支持態様切替ピン41とを介して、バネベース12の第2穴12bに係止状態で支持される。これにより、第2円弧状軌道部20が第1円弧状軌道部10に対して切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるという構成が、容易かつ簡潔に実現されている。
【0107】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、支持態様切替ピン41は、切替揺動アーム40を介して、支持態様切替ピン41と平行に延びる切替回転ピン42に接続されており、切替回転ピン42は、バネベース12及び第1円弧状軌道部10を貫通している。これにより、第2円弧状軌道部20の第1円弧状軌道部10に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成が、容易かつ簡潔に実現されている。
【0108】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、切替回転ピン42は、第1円弧状軌道部10に対して、コイルバネ44によって鉛直下向き方向に付勢されており、支持態様切替ピン41は、第1支持態様では、コイルバネ44によって、バネベース12の第1穴12aとの係止状態を維持するように付勢され、第2支持態様では、コイルバネ44によって、バネベース12の第2穴12bとの係止状態を維持するように付勢され、第1支持態様と第2支持態様との間の切り替え時においては、コイルバネ44の付勢力(復元力)に抗する外力によって、バネベース12の第1穴12aまたは第2穴12bから抜き出されて切替揺動アーム40と共に切替回転ピン42の軸線回りに揺動される。これにより、第2円弧状軌道部20の第1円弧状軌道部10に対する2通りの支持態様の間の切り替え操作のための構成が、更に容易かつ簡潔に実現されている。
【0109】
また、本実施形態のエンジンウインチ1によれば、クラッチ機構がエンジン3の回転数に応じてエンジン出力軸とドラム4との接続及び接続解除を切り替える遠開クラッチであり、クラッチ機構(遠開クラッチ)による接続及び接続解除を切り替えるようにエンジン3の回転数を変化させるスロットルワイヤが更に設けられ、当該スロットルワイヤ64は、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態においては、逆回転防止位置から繰り出し位置への第2円弧状軌道部20の移動に伴って、クラッチ機構によってエンジン出力軸とドラム4とを接続するようになっており、繰り出し位置から逆回転防止位置への第2円弧状軌道部20の移動に伴って、クラッチ機構によるエンジン出力軸とドラム4との接続を解除するようになっており、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態においては、クラッチ機構によるエンジン出力軸とドラム4との接続解除状態を維持するようになっている。これにより、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続/接続解除の切り替えが、第2円弧状軌道部20の位置変更に連動して自動的になされるため、クラッチの接続/接続解除のための別途の操作が不要で操作性が良い一方で、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態においては、クラッチの接続解除状態が維持されるため、ロープRを意図的に緩めたいというニーズが生じた時にエンジン3を停止させる操作が不要である。
【0110】
(別の実施形態)
前述の実施形態では、第2支持態様において、第2円弧状軌道部20がバネベース12の第2穴12bに係止された状態で繰り出し位置に位置しているが、第2円弧状軌道部20は第1円弧状軌道部10に係止された状態で繰り出し位置に位置してもよい。
【0111】
図12は、そのような本発明の別の実施形態に係るエンジンウインチにおいて、第2円弧状軌道部20が第1支持態様で支持されている状態での、ロープ繰り出し案内部の概略縦断面図であり(
図6に対応する)、
図13は、そのような別の実施形態に係るエンジンウインチにおいて、第2円弧状軌道部20が第2支持態様で支持されている状態での、ロープ繰り出し案内部の概略縦断面図である(
図10に対応する)。
【0112】
図13に示すように、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、第2支持態様では、コイルバネ44によって、第1円弧状軌道部10の係止穴10bとの係止状態を維持するように付勢されるようになっている。ここで、当該第2支持態様では、支持態様切替ピン41は、バネベース12の貫通孔12b’を貫通するようになっている。
【0113】
一方、
図12に示すように、支持態様切替ピン41は、切替回転ピン42及び切替揺動アーム40と共に一体的に、第1支持態様では、コイルバネ44によって、バネベース12の第1穴12aとの係止状態を維持するように付勢されるようになっている。ここで、
バネベース12の第1穴12aの底面と第1円弧状軌道部10の係止穴10bの底面との高さの差に起因して、当該第1支持態様では、切替揺動アーム40が回動アーム30から少しだけ浮き上がった状態となっている。
【0114】
図12及び
図13に示した実施形態のエンジンウインチのその他の構成は、
図1乃至
図11を用いて説明した前述の実施形態のエンジンウインチ1と略同様である。
図12及び
図13において、前述の実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、
図12及び
図13において、前述の実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0115】
図12及び
図13に示した実施形態によれば、第2円弧状軌道部20が、第1円弧状軌道部10に対して、切り替え可能な2通りの支持態様で支持されるようになっており、第2支持態様では繰り出し位置において係止状態で支持される。これにより、ロープRを意図的に緩めたいというニーズが生じた時、第2円弧状軌道部20を第2支持態様での支持に切り替えることにより、繰り出し位置において第2円弧状軌道部20がコイルバネ13の作用を実質的に受けない状態となり、作業者はロープRを緩める作業に集中することができる。
【0116】
その他、
図12及び
図13に示した実施形態によれば、前述の実施形態と概ね同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 エンジンウインチ
2 フレーム
2a 上方フレーム
2b 左下方フレーム
2c 右下方フレーム
3 エンジン
4 ドラム
5 ロープ巻き取り案内部
6 ロープ繰り出し案内部
7 ベース
10 第1円弧状軌道部
10b 係止穴
10s バネ一端固定部
11 突出部
12 バネベース
12a 第1穴
12b 第2穴
12b’ 貫通孔
12s バネ他端固定部
13 コイルバネ
20 第2円弧状軌道部
21 ローラー
21g 凹溝
22 ローラーピン
23 把持用ヘッド
24 ロープ案内螺旋
30 回動アーム
40 揺動アーム
41 支持態様切替ピン
42 切替回転ピン
43 把持用ヘッド
44 コイルバネ
61 テンションバー
62 コイルバネ
63 コンソール
64 スロットルワイヤ
A 基端側領域
B 先端側領域
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
D4 第4方向
D5 第5方向
D6 第6方向
R ロープ