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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】フェルラ酸エステラーゼ及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/18 20060101AFI20240516BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240516BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240516BHJP
   C12N 15/75 20060101ALI20240516BHJP
   C12P 7/42 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C12N9/18 ZNA
C12N1/21
C12N15/55
C12N15/75 Z
C12P7/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021560888
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2020119269
(87)【国際公開番号】W WO2022041397
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】202010900348.1
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010898408.0
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011048393.5
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC M 2020421
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張涛
(72)【発明者】
【氏名】江波
(72)【発明者】
【氏名】段暁莉
(72)【発明者】
【氏名】繆銘
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101039420(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106434598(CN,A)
【文献】alpha/beta hydrolase [Bacillus pumilus],NCBI Reference Sequence,2018年,WP_106036153.1
【文献】alpha/beta hydrolase [Bacillus pumilus],NCBI Reference Sequence,2019年,WP_012009018.1
【文献】LIANG, W et al.,A novel feruloyl esterase with high rosmarinic acid hydrolysis activity from Bacillus pumilus W3,International Journal of Biological Macromolecules,2020年06月,Vol. 161,pp. 525-530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12P
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼを含むことを特徴とする、フェルラ酸製造剤。
【請求項2】
アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子を発現可能なように組み込んだ宿主細胞を含むことを特徴とする、フェルラ酸製造剤。
【請求項3】
前記遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されていることを特徴とする、請求項2に記載のフェルラ酸製造剤。
【請求項4】
前記遺伝子は、組換えプラスミドに含まれていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のフェルラ酸製造剤。
【請求項5】
前記組換えプラスミドの発現ベクターは、pMA5プラスミド又はpUBプラスミドであることを特徴とする、請求項4に記載のフェルラ酸製造剤。
【請求項6】
前記宿主細胞は、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)又は枯草菌(Bacillus subtilis)であることを特徴とする、請求項2~5の何れか一項に記載のフェルラ酸製造剤。
【請求項7】
請求項1に記載のフェルラ酸製造剤を製造するための方法であって、最初に、アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子を発現可能なように組み込んだ宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得てから、発酵ブロスからフェルラ酸エステラーゼを分離する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
フェルラ酸を製造するための方法であって、最初に、請求項1に記載のフェルラ酸製造剤を、フェルラ酸エステル化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得てから、反応液からフェルラ酸を分離するか、
又は、最初に、請求項2~6の何れか一項に記載のフェルラ酸製造剤の前記宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得、次いで発酵ブロスからフェルラ酸エステラーゼを分離し、それからフェルラ酸エステラーゼを、フェルラ酸エステル化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得、最後に反応液からフェルラ酸を分離するか、
又は、最初に、請求項2~6の何れか一項に記載のフェルラ酸製造剤の前記宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得、次に発酵ブロスを、フェルラ酸エステル化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得、最後に反応液からフェルラ酸を分離することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記フェルラ酸エステル化合物は、フェルラ酸メチル又はフェルラ酸エチルであることを特徴とする、請求項に記載方法。
【請求項10】
前記反応の温度は30~90℃であり、時間は10~30分であることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項11】
フェルラ酸の製造、リグノセルロースの加水分解、飼料の調製又は製紙における、請求項1~6の何れか一項に記載のフェルラ酸製造剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸エステラーゼ及びその応用に関し、微生物技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
フェルラ酸(Ferulic acid,FA)は、植物の細胞壁に広く存在しており、多糖、セルロース、リグニンとエステル結合又はエーテル結合の形態で連結して細胞壁における複雑な網状骨格構造を構成し、細胞壁の完全性を維持し、且つ生分解率を低下させる。
【0003】
フェルラ酸は、世界的に認められている安全な抗酸化剤であり、日本、米国などの国で食品添加剤に組み込まれている。更に、フェルラ酸は、紫外線吸収、抗菌、抗炎症、癌予防、血液脂質低下などの効果を有し、医薬、化粧品、製紙などの分野でいずれも幅広い応用の将来性を有する。
【0004】
現在、フェルラ酸を製造するための方法としては、主に植物抽出法、化学合成法及び生物学的酵素法がある。そのうち、植物抽出法は、主に酸塩基加水分解によってトウキ、オウレン、米糠、小麦ふすまなどの植物から天然のフェルラ酸を抽出して分離するが、酸塩基加水分解法によって細胞壁における他の化学成分の変化を引き起こすため、この方法によりフェルラ酸を製造する場合、植物における他の高価値の化学成分を破壊し、また、酸塩基加水分解法によりフェルラ酸を製造する場合の副生成物が多く、生成物の分離が困難であり、且つ、この方法によりフェルラ酸を製造する場合、エネルギー消費が大きく、環境を汚染する。化学合成法は、主にバニリンを基本原料として一連の有機反応によってフェルラ酸を製造するが、生成物にシスフェルラ酸が混入されるため、この方法によりフェルラ酸を製造する場合、分離コストを増加させ、且つ、この方法により製造されるフェルラ酸は、そのまま医薬原料として使用できず、また、この方法によりフェルラ酸を製造する場合、反応時間が長く、環境に対する汚染が深刻であるなどの欠陥を有する。
【0005】
生物学的酵素法は、主にフェルラ酸エステラーゼ(Feruloyl esterase,Ferulic acid esterase,FAE,E.C.3.1.1.73)を、フェルラ酸エステル系化合物を含有する反応系に添加して反応させてフェルラ酸を製造するものであり、生物抽出法、酸塩基加水分解法及び化学合成法と比べ、生物学的酵素法によりフェルラ酸を製造する場合、反応条件が温和であり、特異性が高く、環境に優しいなどの利点を有し、これらの利点により、生物学的酵素法は、フェルラ酸を製造する研究の焦点になっている。しかしながら、従来のフェルラ酸エステラーゼの比活性が低く、例えば、文献「曹艶、夏其楽、陳剣兵ら、フェルラ酸エステラーゼ産生菌のスクリーニング及び同定並びに発酵条件の最適化[J]、微生物学雑誌、2019,(5):8-15.」において、アスペルギルス・タマリ由来のフェルラ酸エステラーゼの比活性が231.34U/gだけであるため、生物学的酵素法によるフェルラ酸の製造の工業化進展を大きく制限している。
【0006】
従って、比活性の高いフェルラ酸エステラーゼを早急に見出す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術課題は、比活性の高いフェルラ酸エステラーゼ(Feruloyl esterase,Ferulic acid esterase,FAE,E.C.3.1.1.73)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼを提供する。
【0009】
本発明は、前記フェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子を更に提供する。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号3に示される。
【0011】
本発明は、前記遺伝子を担持する組換えプラスミドを更に提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記組換えプラスミドの発現ベクターは、pMA5プラスミド又はpUBプラスミドである。
【0013】
本発明は、前記遺伝子又は前記組換えプラスミドを担持する宿主細胞を更に提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記宿主細胞は、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)又は枯草菌(Bacillus subtilis)である。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記枯草菌は、枯草菌168、枯草菌WB800、枯草菌WB600又は枯草菌1A751である。
【0016】
本発明は、最初に、前記宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得、次いで発酵ブロスからフェルラ酸エステラーゼを分離して得るフェルラ酸エステラーゼを製造するための方法を更に提供する。
【0017】
本発明は、前記宿主細胞又は前記フェルラ酸エステラーゼを製造するための方法のフェルラ酸エステラーゼの製造における応用を更に提供する。
【0018】
本発明は、最初に、前記フェルラ酸エステラーゼを、フェルラ酸エステル系化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得、それから反応液からフェルラ酸を分離し、
又は、最初に、前記宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得、次いで発酵ブロスからフェルラ酸エステラーゼを分離して得、それからフェルラ酸エステラーゼを、フェルラ酸エステル系化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得、最後に反応液からフェルラ酸を分離し、
又は、最初に、前記宿主細胞を発酵培地に播種して発酵させ、発酵ブロスを得、それから発酵ブロスを、フェルラ酸エステル系化合物を含有する反応系に添加して反応させ、反応液を得、最後に反応液からフェルラ酸を分離するフェルラ酸を製造するための方法を更に提供する。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記フェルラ酸エステル系化合物は、フェルラ酸メチル又はフェルラ酸エチルである。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記反応の温度は30~90℃であり、時間は10~30分である。
【0021】
本発明は、前記フェルラ酸エステラーゼ又は前記遺伝子又は前記組換えプラスミド又は前記宿主細胞又は前記方法のフェルラ酸の製造、リグノセルロースの加水分解、飼料の調製及び製紙における応用を更に提供する。
【発明の効果】
【0022】
有益な効果は、以下の通りである。
(1)本発明は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼを提供し、このフェルラ酸エステラーゼの比活性は、519U/gと高いため、このフェルラ酸エステラーゼは、フェルラ酸の製造において非常に高い応用の将来性を有する。
(2)本発明は、枯草菌を宿主とし、アミノ酸配列が配列番号2に示されるフェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子を発現する組換え枯草菌を提供し、この組換え枯草菌は、フェルラ酸エステラーゼを高収量で製造することができ、具体的に、この組換え枯草菌を発酵培地に播種して発酵させ、14時間発酵させてから、細胞破砕上澄み液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を82.53U/mLと高くすることができる。従って、この組換え枯草菌は、フェルラ酸エステラーゼ及びフェルラ酸の製造において非常に高い応用の将来性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001のコロニー形態である。
図2】バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001の菌体形態である。
図3】フェルラ酸標準品の高速液体クロマトグラムである。
図4】フェルラ酸メチル標準品の高速液体クロマトグラムである。
図5】反応液の高速液体クロマトグラムである。
図6】反応液のLC-MSである。
図7】タンパク質濃度の標準曲線である。
図8】反応液におけるフェルラ酸の収量である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例に係るフェルラ酸標準品は、北京百霊威科技有限公司から購入され、以下の実施例に係るフェルラ酸メチルは、Alfa Aesar(中国)化学有限公司から購入され、以下の実施例に係るウシアルブミン及びクーマシーブリリアントブルーG-250は、上海国薬集団化学試剤有限公司から購入され、以下の実施例に係るpMA5プラスミドは、優宝生物から購入され、以下の実施例に係る大腸菌(Escherichia coli)DH5αは、通用生物技術有限公司から購入され、以下の実施例に係る枯草菌WB800は、NTCC典型培養物寄託センターから購入され、以下の実施例に係るリゾチームは、Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltdから購入され、以下の実施例に係るトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物は、Shanghai Macklin Biochemical Co.,Ltd.から購入される。
【0025】
以下の実施例に係る培地は、以下の通りである。
菌株分離培地:ジャガイモ200g/L、スクロース20g/L、寒天15g/L、pH自然。
スクリーニング固体培地:0.22μmの濾過膜で100mg/Lのフェルラ酸エチルを含有するN,N-ジメチルホルムアミド溶液を濾過し、フェルラ酸エチル溶液を得て、滅菌された基本培地を60℃に冷却した後、基本培地に10%(v/v)のフェルラ酸エチル溶液を添加し、均一な乳白色溶液になるまで振とうする。
基本培地:NaNO 2g/L、KHPO・3HO 1g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、寒天 15g/L、pH自然。
シード培地:ジャガイモ200g/L、スクロース20g/L、pH自然。
基本発酵培地:小麦ふすま20g/L、NaNO 2g/L、KHPO・3HO 1g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH自然。
LB液体培地:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、pH自然。
LB固体培地:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、寒天粉末15g/L。
Super Rich培地:トリプトン25g/L、酵母エキス20g/L、リン酸水素二カリウム3.0g/L、グルコース30g/L、pH自然。
【0026】
以下の実施例に関する溶液は、以下の通りである。
溶解液:Tris 6.057g/L、NaCl 5.844g/L、塩酸でpHを8.0に調節し、1Lにメスアップする。
透析液:Tris 6.057g/L、塩酸でpHを8.0に調節し、1Lにメスアップする。
【0027】
実施例1 バチルス・プミルスSK52.001の取得
具体的なステップは、以下の通りである。
【0028】
1、バチルス・プミルスSK52.001の分離精製
江蘇省無錫市貢湖湾湿地地区に由来する土壌をサンプルとし、1.0gのサンプルをガラスビーズが入れられた10mLの滅菌水に入れ、30℃、200r/分のシェーカーにより30分振とうし、菌体を十分に分離させ、混合菌液を得た。0.5mLの混合菌液を吸い取って無菌環境で4.5mLの生理食塩水が入れられた10mLの遠心管に加え、10-1の希釈液を得た。上記希釈ステップを繰り返し、10-2、10-3、10-4、10-5、10-6の希釈液を順次得て、それぞれ希釈勾配が10-3、10-4、10-5、10-6の希釈液を100μL吸い取って菌株分離培地に塗布し、30℃の恒温インキュベータで24~48時間倒立培養し、希釈塗抹平板を得た。希釈塗抹平板上の単一コロニーを選別してスクリーニング固体培地に画線し、30℃の恒温インキュベータで24時間倒立培養し、単一コロニーを得た。単一コロニーの周囲に透明帯が出現したか否かを観察し、周囲に透明帯が出現した単一コロニーをスクリーニングし、今回、スクリーニングを経て合計で1つの単一コロニーを得た。この単一コロニーに対応する菌株をSK52.001と命名する。
【0029】
2、バチルス・プミルスSK52.001の同定
菌株SK52.001のゲノムを抽出し、菌株SK52.001の16S rDNAに増幅及び配列決定を行い(天一輝遠生物科技有限公司により完成する)、配列決定分析により得られた菌株SK52.001の16S rDNA配列(SK52.001の16S rDNA配列は配列番号1に示される)をGenBankにおいてアラインメントし、結果から分かるように、この菌株は、確かにバチルス・プミルスであり、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001と命名する。
【0030】
3、バチルス・プミルスSK52.001の観察
バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001の菌液を取ってLB固体培地に画線し、30℃の恒温インキュベータで12時間倒立培養し、単一コロニーを得た。単一コロニーを選別してLB液体培地に播種し、30℃、200r/分のシェーカーで12時間培養し、菌液を得た。菌液を滅菌水で100倍希釈した後にLB固体培地に塗布し、30℃のインキュベータで18時間培養した後にコロニー形態を観察し(コロニー形態を図1に示す)、菌液を滅菌水で20倍希釈した後に光学顕微鏡で菌体形態を観察した(菌体形態を図2に示す)。
【0031】
図1から分かるように、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001のコロニー形態は、円形で、薄く、中央が淡黄色で、縁部がやや白く、表面が粘稠で湿潤で、縁部には凸凹があり、不均一である。
【0032】
図2から分かるように、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001の菌体形態は、短桿状で、両端が鈍円で、典型的なバチルスの形態特徴を有し、グラム陽性菌に属する。
【0033】
実施例2 フェルラ酸エステラーゼの製造
具体的なステップは、以下の通りである。
【0034】
実施例1で得られたバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001の単一コロニーを選別してシード培地に播種し、30℃、200r/分のシェーカーで18時間培養し、シード液を得た。シード液を5%(v/v)の播種量で基本発酵培地に播種し、30℃、200r/分のシェーカーで26時間発酵させ、発酵ブロスを得た。
【0035】
発酵ブロスを4℃、10000rpmで10分遠心分離し、粗酵素液を得た。粗酵素液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を測定し、測定方法は、以下の通りである。
250μLの粗酵素液を750μLの濃度が0.003mol/Lのフェルラ酸メチル溶液(フェルラ酸メチル溶液は、フェルラ酸メチルをpHが8.0で、濃度が0.05mol/LのTris-HCl緩衝液に溶解して得られる)に加え、酵素反応系を得た。酵素反応系を50℃の水浴鍋で30分反応させた後、まず、沸騰水で酵素を10分失活させ、続いて、0.22μmの膜で濾過し、反応液を得た。酵素失活後の粗酵素液をブランク対照とし、HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)により反応液におけるフェルラ酸の濃度を測定し、フェルラ酸の濃度をフェルラ酸エステラーゼの酵素活性の計算式に代入し、粗酵素液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を得た。
【0036】
フェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、50℃で1分あたりにフェルラ酸メチルを分解して1μmolのフェルラ酸を生成するために必要な酵素量が1つの酵素活性単位(1U)であるように定義されている。
【0037】
フェルラ酸エステラーゼの酵素活性の計算式は、以下の通りである。
【0038】
フェルラ酸標準品の高速液体クロマトグラムは図3に示され、フェルラ酸メチル標準品の高速液体クロマトグラムは図4に示され、反応液の高速液体クロマトグラムは図5に示され、フェルラ酸の濃度は、高速液体クロマトグラムにおけるピーク面積Yとフェルラ酸の濃度Xの間の線形関係Y=52514X-80.417(R=0.9996)に基づいて計算することにより得られる。
【0039】
HPLC法は、Agilent 1 200型の高速液体クロマトグラフィー、クロマトグラフィー用カラムとしてZORBAX Eclipse Plus C18(Agilent,4.6mm×150mm,3.5μm)、紫外検出器、移動相Aとして1%(v/v)の酢酸溶液、移動相Bとしてメタノール、流速1mL/分、カラム温度30℃、検出波長320nmを採用し、勾配溶出プログラムは表1に示す通りである。
【0040】
検出した結果、粗酵素液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は195U/Lである。
【0041】
バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001がフェルラ酸エステラーゼを製造できることを更に証明するために、反応液にLC-MS分析を行う(分析結果を図6に示す)。
【0042】
図6から分かるように、生成物ピークの相対存在量が最も高い破片は、m/z=193であり、目的生成物の相対分子質量は194であり、フェルラ酸モノマーの相対分子量と一致する。
【0043】
【0044】
実施例3 フェルラ酸エステラーゼの製造
具体的なステップは、以下の通りである。
【0045】
実施例1を基に、基本発酵培地をそれぞれ発酵培地A~Eに置き換え、発酵ブロスA~Eを得た。
そのうち、発酵培地A:小麦ふすま45g/L、トリプトン5g/L、KHPO・3HO 1.0g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH 6.0。
発酵培地B:脱デンプン小麦ふすま10g/L、NaNO 2g/L、KHPO・3HO 1.0g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH自然。脱デンプン小麦ふすまの処理方法としては、濃度が0.3%(w/w)の酢酸カリウム溶液で小麦ふすまを浸漬し、混合物を得た。混合物を95℃で1時間水浴するとともに絶えず撹拌した後、デンプンが完全に除去されるまで脱イオン水で繰り返し洗浄し、105℃で恒量まで乾燥して使用に備えた。
発酵培養液C:小麦ふすま10g/L、NaNO 2g/L、KHPO・3HO 1.0g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH自然。
発酵培養液D:小麦ふすま 45g/L、NaNO 2g/L、KHPO・3HO 1.0g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH自然。
発酵培養液E:小麦ふすま45g/L、酵母エキス 5g/L、KHPO・3HO 1.0g/L、KCl 0.5g/L、MgSO・7HO 0.5g/L、FeSO・7HO 0.01g/L、pH自然。
【0046】
発酵ブロスA~Eをそれぞれ4℃、10000rpmで10分遠心分離し、粗酵素液A~Eを得た。粗酵素液A~Eにおけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を測定し、測定した結果、粗酵素液A~Eにおけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、それぞれ421U/L、73U/L、102U/L、241U/L、344U/Lである。発酵培地Aを使用する時、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001によってフェルラ酸エステラーゼを製造する場合の収量が最も高いことが分かる。
【0047】
実施例4 フェルラ酸エステラーゼの性能
具体的なステップは、以下の通りである。
【0048】
粗酵素液Aにおけるフェルラ酸エステラーゼの比活性を測定し、測定方法は、以下の通りである。
100mgのクーマシーブリリアントブルーG-250を秤量して50mLの90%(v/v)エタノールに溶解した後、100mLの85%(v/v)リン酸を加え、蒸留水で1Lにメスアップし、クーマシーブリリアントブルーG-250染液を得た。100mgのウシアルブミンを秤量して溶解し、蒸留水で100mLにメスアップし、標準タンパク質溶液を得た。それぞれ0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10mLの標準タンパク質溶液を吸い取って、それぞれ1.0、0.98、0.96、0.94、0.92、0.90mLの蒸留水に加えた後、それぞれ5mLのクーマシーブリリアントブルーG-250染液を加えて均一に混合し、混合液を得た。混合液を25℃で2分反応させ、反応液を得た。595nmの波長で反応液の吸光度を測定し、タンパク質濃度の標準曲線をプロットした(標準曲線を図7に示す)。
【0049】
実施例2で得られた粗酵素液Aを100μL取り、蒸留水で1mLにメスアップし、希釈液を得た。希釈液に5mLのクーマシーブリリアントブルーG-250染液を加えて均一に混合し、混合液を得た。混合液を25℃で2分反応させ、反応液を得た。595nmの波長で反応液の吸光度を測定した。測定された吸光度及びタンパク質濃度の標準曲線に基づき、粗酵素液Aにおけるタンパク質濃度を計算し、粗酵素液Aにおけるタンパク質濃度に基づき、粗酵素液Aにおけるフェルラ酸エステラーゼの比活性を計算した。
【0050】
フェルラ酸エステラーゼの比活性の計算式は、以下の通りである。
【0051】
検出した結果、粗酵素液Aにおけるタンパク質濃度は0.81mg/mLであり、粗酵素液Aにおけるフェルラ酸エステラーゼの比活性は519U/gである。
【0052】
PCRによってバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001のゲノムからフェルラ酸エステラーゼの遺伝子を増幅して配列決定した。配列決定の結果としては、粗酵素液Aにおけるフェルラ酸エステラーゼのアミノ酸配列は配列番号2に示され、粗酵素液Aにおけるフェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号3に示される。
【0053】
実施例5 フェルラ酸の製造
具体的なステップは、以下の通りである。
【0054】
実施例1で得られたバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001の単一コロニーを選別してシード培地に播種し、30℃、200r/分のシェーカーで18時間培養し、シード液を得た。シード液を5%(v/v)の播種量で基本発酵培地に播種し、30℃、200r/分のシェーカーで40時間発酵させ、発酵ブロスを得た。発酵プロセスにおいて、発酵ブロスを絶えずサンプリングした。サンプリングされた発酵ブロスを4℃、10000rpmで10分遠心分離し、粗酵素液を得た。250μLの粗酵素液を750μLの濃度が0.003mol/Lのフェルラ酸メチル溶液(フェルラ酸メチル溶液は、フェルラ酸メチルをpHが8.0で、濃度が0.05mol/LのTris-HCl緩衝液に溶解して得られた)に加え、酵素反応系を得た。酵素反応系を50℃の水浴鍋で30分反応させ、反応液を得た。
【0055】
反応液におけるフェルラ酸の収量を測定した(測定結果を図8に示す)。
【0056】
反応液におけるフェルラ酸の収量の検出方法は、以下の通りである。
反応液に対して、まず、沸騰水で酵素を10分失活させ、続いて、0.22μmの膜で濾過し、最後に酵素失活後の粗酵素液をブランク対照とし、HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)により反応液におけるフェルラ酸の濃度を測定した。
HPLC法は、Agilent 1 200型の高速液体クロマトグラフィー、クロマトグラフィー用カラムとしてZORBAX Eclipse Plus C18(Agilent,4.6mm×150mm,3.5μm)、紫外検出器、移動相Aとして1%(v/v)の酢酸溶液、移動相Bとしてメタノール、流速1mL/分、カラム温度30℃、検出波長320nmを採用し、勾配溶出プログラムは表1に示す通りである。
【0057】
図8に示すように、粗酵素液を26時間発酵させ、30分反応させた後、フェルラ酸含有量は280mg/Lである。
【0058】
実施例6 組換え枯草菌の構築
具体的なステップは、以下の通りである。
【0059】
実施例1で得られたバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001のゲノムをテンプレートとし、fae-F/fae-Rをプライマーとし、PCR増幅によってフェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子(配列番号3)を得た。フェルラ酸エステラーゼをコードする遺伝子とpMA5プラスミドを相同組換え酵素ExnaseIIによって連結し、連結産物を得て、連結産物を大腸菌DH5αコンピテント細胞に形質転換した。形質転換後の大腸菌DH5αコンピテント細胞をLB固体培地(100μg・mL-1のアンピシリンを含有する)に塗布し、37℃で24時間倒立培養した。陽性形質転換体を選別し、プラスミドを抽出し、配列決定によって検証し、正しいと検証したため、組換えプラスミドPMA5-faeを得た。得られた組換えプラスミドPMA5-faeを枯草菌WB800に形質転換し、形質転換産物を得た。形質転換産物をLB固体培地(100μg・mL-1のカナマイシンを含有する)に塗布し、37℃の恒温インキュベータで8~12時間倒立培養し、形質転換体を得た。形質転換体にPCR検証を行い、正しいと検証したため、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを得た。
【0060】
プライマーは、以下の通りである。
fae-F:aaaaggagcgatttacatatgATGAACTTACAAGAGCAAATCAAAATCGCTGC(配列番号4)
fae-R:gagctcgactctagaggatccTTAATGGTGATGGTGATGATGTTCAAATGCCTTT(配列番号5)
【0061】
実施例7 フェルラ酸エステラーゼの製造
具体的なステップは、以下の通りである。
【0062】
実施例1で得られた組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeの形質転換体をLB固体培地(100μg・mL-1のカナマイシンを含有する)に画線し、30℃の恒温インキュベータで12時間倒立培養し、単一コロニーを得た。単一コロニーを選別してLB液体培地(100μg・mL-1のカナマイシンを含有する)に播種し、37℃、200r/分で12時間培養し、シード液を得た。シード液を3%(v/v)の播種量でSuper Rich培地に移し、37℃、200r/分で60時間培養し、発酵ブロスを得た。
【0063】
発酵プロセスにおいて、一定の時間ごとに発酵ブロスをサンプリングし、サンプリング量は1mLであり、発酵ブロスを4℃、10000rpmで15分遠心分離し、発酵上澄み及び沈殿を得た。沈殿に1mLの溶解液を加えて菌体を再懸濁させ、再懸濁液(全細胞)を得た。
【0064】
異なる発酵時間で得られた発酵上澄み液及び再懸濁液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を検出した(検出結果を表2に示す)。測定方法は、以下の通りである。
10μLの発酵上澄み液又は再懸濁液を990μLの濃度が0.003mol/Lのフェルラ酸メチル溶液(フェルラ酸メチル溶液は、フェルラ酸メチルをpHが8.0で、濃度が0.05mol/LのTris-HCl緩衝液に溶解して得られた)に加え、酵素反応系を得た。酵素反応系を50℃の水浴鍋で10分反応させた後、まず沸騰水で酵素を10分失活させ、続いて、0.22μmの膜で濾過し、反応液を得た。酵素失活後の粗酵素液をブランク対照とし、HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)により反応液におけるフェルラ酸の濃度を測定た。フェルラ酸の濃度をフェルラ酸エステラーゼの酵素活性の計算式に代入し、粗酵素液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を得た。
【0065】
フェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、50℃で1分あたりにフェルラ酸メチルを分解して1μmolのフェルラ酸を生成するために必要な酵素量が1つの酵素活性単位(1U)であるように定義されている。
【0066】
フェルラ酸エステラーゼの酵素活性の計算式は、以下の通りである。
【0067】
フェルラ酸標準品の高速液体クロマトグラムは図3に示され、フェルラ酸メチル標準品の高速液体クロマトグラムは図4に示され、反応液の高速液体クロマトグラムは図5に示され、フェルラ酸の濃度は、高速液体クロマトグラムにおけるピーク面積Yとフェルラ酸の濃度Xの間の線形関係Y=52514X-80.417(R=0.9996)に基づいて計算することにより得られる。
【0068】
HPLC法は、Agilent 1 200型の高速液体クロマトグラフィー、クロマトグラフィー用カラムとしてZORBAX Eclipse Plus C18(Agilent,4.6mm×150mm,3.5μm)、紫外検出器、移動相Aとして1%(v/v)の酢酸溶液、移動相Bとしてメタノール、流速1mL/分、カラム温度30℃、検出波長320nmを採用し、勾配溶出プログラムは表1に示す通りである。
【0069】
表2から分かるように、14時間発酵した時、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた再懸濁液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、3.20U/mLに達した。60時間発酵した時、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた発酵上澄み液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、20.80U/mLに達した。14時間発酵した後、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた再懸濁液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、まず低下してから上昇し、これは、菌体が定常期に達した後に絶えず死滅し、菌体数が減少し、細胞内酵素活性が低下し、菌体が死滅して自己溶解した後に栄養素が増加し、菌体数が緩やかに上昇し、更にフェルラ酸エステラーゼの酵素活性が徐々に増加するからである。40時間発酵した後、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた発酵上澄み液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性は絶えず増加し、これは、菌体が絶えず死滅して自己溶解して破砕した後、細胞内のフェルラ酸エステラーゼが放出されることに起因する可能性がある。
【0070】
【0071】
実施例8 フェルラ酸エステラーゼの製造
具体的なステップは、以下の通りである。
【0072】
枯草菌WB800を対照とし、実施例7で得られた組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeの形質転換体をLB固体培地(100μg・mL-1のカナマイシンを含有する)に画線し、30℃の恒温インキュベータで12時間倒立培養し、単一コロニーを得た。単一コロニーを選別してLB液体培地(100μg・mL-1のカナマイシンを含有する)に播種し、37℃、200r/分で12時間培養し、シード液を得た。シード液を3%(v/v)の播種量でSuper Rich培地に移し、37℃、200r/分で14時間培養し、発酵ブロスを得た。
【0073】
発酵終了後、5mLの発酵ブロスを4℃、8000rpmで15分遠心分離し、発酵上澄み液及び沈殿を得て、沈殿に5mLの溶解液を加えて菌体を再懸濁させ、再懸濁液(全細胞)を得た。再懸濁液を15分超音波処理し、細胞破砕液を得た。細胞破砕液を4℃、8000rpmで15分遠心分離し、細胞破砕上澄みを得た。
【0074】
枯草菌WB800及び組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた発酵上澄み液及び細胞破砕上澄み液におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を検出した(検出結果を表3に示す)。
【0075】
表3から分かるように、14時間発酵した時、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた細胞内フェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、82.53U/mLであり、60時間発酵した細胞外フェルラ酸エステラーゼの酵素活性の20.80U/mLよりも4倍高く、また、組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/pMA5-faeの細胞内フェルラ酸エステラーゼの酵素活性は、枯草菌WB800の細胞内フェルラ酸エステラーゼの酵素活性よりも明らかに高い。従って、14時間発酵した細胞内フェルラ酸エステラーゼを後続の酵素精製の基礎とする。
【0076】
【0077】
実施例9 フェルラ酸エステラーゼの性能
具体的なステップは、以下の通りである。
【0078】
実施例3で得られた組換え枯草菌Bacillus subtilis WB800/PMA5-faeを発酵させて得られた細胞破砕上澄み液をニッケルカラムで精製した後、まず、0.01mol/LのEDTAを含有する透析液で3回透析し、次に、EDTAを含有しない透析液で3回透析し、精製酵素を得た。精製酵素を4℃の冷蔵庫に置いて使用に備えた。
【0079】
精製酵素を0~50倍希釈した後、実施例5の方法を参照して精製酵素のフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を検出した。検出結果を表4に示す。
【0080】
表4から分かるように、20倍の希釈倍数を選択した場合、最適である。20倍希釈した精製酵素のフェルラ酸エステラーゼの酵素活性を測定し、測定方法は、以下の通りである。
100mgのクーマシーブリリアントブルーG-250を秤量して50mLの90%(v/v)エタノールに溶解した後、100mLの85%(v/v)リン酸を加え、蒸留水で1Lにメスアップし、クーマシーブリリアントブルーG-250染液を得た。100mgのウシアルブミンを秤量して溶解し、蒸留水で100mLにメスアップし、標準タンパク質溶液を得た。それぞれ0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10mLの標準タンパク質溶液を吸い取って、それぞれ1.0、0.98、0.96、0.94、0.92、0.90mLの蒸留水に加えた後、それぞれ5mLのクーマシーブリリアントブルーG-250染液を加えて均一に混合し、混合液を得た。混合液を室温(25℃)で5分反応させ、反応液を得て、560nmの波長で反応液の吸光度を測定し、タンパク質濃度の標準曲線をプロットした(標準曲線を図7に示す)。
【0081】
500μLの精製酵素をとり、それに500μLの蒸留水を加えた後、更に5mLのクーマシーブリリアントブルーG-250染液を加えて均一に混合し、混合液を得た。混合液を室温(25℃)で5分反応させ、反応液を得た。595nmの波長で反応液の吸光度を測定した。測定された吸光度及びタンパク質濃度の標準曲線に基づき、精製酵素のタンパク質濃度を計算した。20倍希釈した精製酵素におけるフェルラ酸エステラーゼの酵素活性に基づき、フェルラ酸エステラーゼの比活性を計算した。
【0082】
フェルラ酸エステラーゼの比活性の計算式は、以下の通りである。
【0083】
検出した結果、20倍希釈した精製酵素のタンパク質濃度は0.15mg/mLであり、20倍希釈した精製酵素のフェルラ酸エステラーゼの比活性は2230U/mgである。
【0084】
【0085】
本発明は、好ましい実施例により上記のように開示されたが、それは本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、多様の変動や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【生物材料の寄託】
【0086】
バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)SK52.001は、その分類学上でBacillus pumilusと命名され、2020年8月14日に中国典型培養物寄託センターに寄託され、寄託番号がCCTCC NO: M 2020421であり、寄託場所が中国武漢の武漢大学である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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