(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】出力方法、出力装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240516BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240516BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2024042407
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-11654(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163163(WO,A1)
【文献】特許第7442900(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06Q 50/10
F16T 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置における出力方法であって、
前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、
前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、
対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、
前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、
前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、
前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する、
出力方法。
【請求項2】
前記複数の構造の蒸気トラップは、弁の開閉方式によって分類された複数の型式の蒸気トラップを含み、
前記対象の構造を示す情報は、前記複数の型式のうちの何れか一の型式を示す情報である、
請求項1に記載の出力方法。
【請求項3】
各型式の蒸気トラップは、復水の最大排出量によって複数のモデルの蒸気トラップに分類され、
前記対象の構造を示す情報は、更に、前記複数のモデルのうちの何れか一のモデルを示す情報を含む、
請求項2に記載の出力方法。
【請求項4】
前記性能指標は、前記対象トラップの振動の測定値である、
請求項1に記載の出力方法。
【請求項5】
更に、前記第1推移が前記第1基準推移よりも短い期間である場合、前記対象の施設とは異なる施設における前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移の中から、前記第1推移と類似している期間を含む時間的推移である第3推移を特定し、
更に、前記第3推移における前記第1推移と類似している期間以降の時間的推移を、前記第1推移に続く時間的推移として前記第1推移を補間する、
請求項1から4の何れか一項に記載の出力方法。
【請求項6】
更に、前記第1推移が前記第1基準推移よりも短い期間である場合、前記第1推移を示す近似関数を算出し、
更に、前記対象の施設とは異なる施設における前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移の中から、前記第1推移と類似している期間を含む時間的推移である第3推移を特定し、
更に、前記第3推移における前記第1推移と類似している期間以降の時間的推移と、前記近似関数によって示される前記第1推移以降の時間的推移と、を平均化した時間的推移を、前記第1推移に続く時間的推移として前記第1推移を補間する、
請求項1から4の何れか一項に記載の出力方法。
【請求項7】
複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置であって、
前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、
コンピュータを備え、
前記コンピュータが、
前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、
対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、
前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、
前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、
前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する、
出力装置。
【請求項8】
複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置のプログラムであって、
前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、
前記出力装置に、
前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、
対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、
前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、
前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、
前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する、
ように処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント及び工場等の施設では、配管系の適所に設置した蒸気トラップによって、熱交換又は放熱等により生じた復水(ドレン)を配管系の外部に排出している。経年劣化や作動不良等によって蒸気トラップの性能が劣化すると、配管系内の蒸気が蒸気トラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招く。また、過度な蒸気損失は、蒸気配管系の稼働を不用意に停止させる虞がある。このため、一年に一回等の定期的に、複数の担当者に特許文献1等に開示のような計測診断装置(以降、診断器)を持参させ、1日で約1000機の蒸気トラップの診断を分担して行っている。
【0003】
具体的には、診断器は、担当者による操作に応じて蒸気トラップの振動及び温度等を測定し、その測定値に基づいて、蒸気の漏洩量等の蒸気トラップの性能を表す指標(以降、性能指標)を算出する。このため、担当者の手作業による診断器を用いた複数の蒸気トラップの診断には多大な時間が必要になる。そこで、各蒸気トラップに測定装置を常設して、診断に必要な蒸気トラップの振動等の測定値を1日に1回等の定期的にサーバ装置に送信し、サーバ装置において各蒸気トラップを診断するシステムを採用する施設も存在する。近年では、上記サーバ装置をクラウドサーバによって実現し、複数の施設で上記システムを共用する形態も登場している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気トラップを長期間使用すると、蒸気トラップ内に流入する蒸気や復水等にスケールや錆等の不純物が含まれるようになる。不純物の含有量は、各施設における蒸気配管系に使用する工業用水の水質及び配管の材質等によって異なる。また、不純物の含有量は、各施設における圧力及び温度等の蒸気トラップの使用条件によっても異なる。不純物の含有量が多くなる程、蒸気トラップに生じる偏摩耗の度合が大きくなり、蒸気トラップの性能の劣化度合も大きくなる。不純物の含有量が一定であっても、弁の開閉方式や復水の最大排出量等の蒸気トラップの構造に応じて蒸気トラップに生じる偏摩耗の度合が異なる。このように、蒸気トラップの性能の劣化度合は、施設及び蒸気トラップの構造毎に異なる。
【0006】
したがって、無駄な蒸気損失及び蒸気配管系の不用意な稼働の停止機会を長期的に低減するには、施設毎に、各構造の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画する必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、対象の施設において対象の構造の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援可能な出力方法、出力装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る出力方法は、複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置における出力方法であって、前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する。
【0009】
本構成によれば、出力された第1情報を参照することで、第1推移が示す、対象の施設における対象の構造の対象トラップの性能指標の時間的推移を、第1基準推移が示す、複数の施設において一般的な対象トラップの性能指標の時間的推移と比較することができる。これにより、対象の施設において、対象トラップの性能が一般的な施設と比べてどの程度早く又は遅く劣化するのかを把握することができる。
【0010】
また、本構成によれば、出力された第2情報を参照することで、第2推移が示す、対象の施設における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的推移を、第2基準推移が示す、複数の施設において一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的推移と比較することができる。これにより、対象の施設において、どの程度の台数の対象トラップが一般的な施設と比べてどの程度早い又は遅い時期に不良状態になるのかを把握することができる。
【0011】
また、本構成によれば、出力された第1情報及び第2情報を比較することで、対象トラップの性能がどのような時間的推移で変化するときに、不良状態と診断される対象トラップの台数がどのような時間的推移で増減するのかを把握することができる。
【0012】
このように、本構成によれば、対象の施設における対象の構造の蒸気トラップの性能及び不良状態と診断される台数の時間的推移に関する種々の情報を把握することができるので、対象の施設において対象の構造の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【0013】
上記の出力方法において、前記複数の構造の蒸気トラップは、弁の開閉方式によって分類された複数の型式の蒸気トラップを含み、前記対象の構造を示す情報は、前記複数の型式のうちの何れか一の型式を示す情報であってもよい。
【0014】
本構成によれば、対象の施設において対象の弁の開閉方式の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【0015】
上記の出力方法において、各型式の蒸気トラップは、復水の最大排出量によって複数のモデルの蒸気トラップに分類され、前記対象の構造を示す情報は、更に、前記複数のモデルのうちの何れか一のモデルを示す情報を含んでもよい。
【0016】
本構成によれば、対象の施設において対象の弁の開閉方式及び対象の復水の最大排出量の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【0017】
上記の出力方法において、前記性能指標は、前記対象トラップの振動の測定値であってもよい。
【0018】
本構成によれば、出力された第1情報及び第2情報を比較することで、対象トラップの振動の測定値がどのような時間的推移で変化するときに、不良状態と診断される対象トラップの台数がどのような時間的推移で増減するのかを把握することができる。
【0019】
上記の出力方法において、更に、前記第1推移が前記第1基準推移よりも短い期間である場合、前記対象の施設とは異なる施設における前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移の中から、前記第1推移と類似している期間を含む時間的推移である第3推移を特定し、更に、前記第3推移における前記第1推移と類似している期間以降の時間的推移を、前記第1推移に続く時間的推移として前記第1推移を補間してもよい。
【0020】
本構成によれば、一般的な施設と比べて対象トラップの使用期間が短い施設が対象の施設として選択された場合であっても、出力された第1情報を参照することで、補間後の第1推移と第1基準推移とを比較することができる。これにより、将来、対象の施設において、対象トラップの性能が一般的な施設と比べてどの程度早く又は遅く劣化するのかを把握することができる。
【0021】
上記の出力方法において、更に、前記第1推移が前記第1基準推移よりも短い期間である場合、前記第1推移を示す近似関数を算出し、更に、前記対象の施設とは異なる施設における前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移の中から、前記第1推移と類似している期間を含む時間的推移である第3推移を特定し、更に、前記第3推移における前記第1推移と類似している期間以降の時間的推移と、前記近似関数によって示される前記第1推移以降の時間的推移と、を平均化した時間的推移を、前記第1推移に続く時間的推移として前記第1推移を補間してもよい。
【0022】
本構成によれば、一般的な施設と比べて対象トラップの使用期間が短い施設が対象の施設として選択された場合であっても、出力された第1情報を参照することで、補間後の第1推移と第1基準推移とを比較することができる。これにより、将来、対象の施設において、対象トラップの性能が一般的な施設と比べてどの程度早く又は遅く劣化するのかを適切に把握することができる。
【0023】
本発明の別の一態様に係る出力装置は、複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置であって、前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、コンピュータを備え、前記コンピュータが、前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する。
【0024】
本構成によれば、上記出力方法と同様の作用効果が得られる。
【0025】
本発明の別の一態様に係るプログラムは、複数の施設に設けられた複数の蒸気トラップに関する情報を出力する出力装置のプログラムであって、前記複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類され、前記出力装置に、前記複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、前記履歴情報に基づいて、前記対象の施設における前記対象の構造の蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移と、前記対象の施設における不良状態と診断された前記対象トラップの台数の時間的推移である第2推移と、前記複数の施設において一般的な前記対象トラップの前記性能指標の時間的推移である第1基準推移と、を生成し、前記第1推移と前記第1基準推移との差異及び前記第2推移に基づいて、前記複数の施設において一般的な前記不良状態と診断される前記対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定し、前記第1推移及び前記第1基準推移を含む第1情報と、前記第2推移及び前記第2基準推移を含む第2情報と、を出力する、ように処理を実行させる。
【0026】
本構成によれば、上記出力方法と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、対象の施設において対象の構造の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】蒸気トラップ管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】サーバの出力処理について説明するためのフローチャートである。
【
図3】第1情報及び第2情報の一例を示す図である。
【
図4】第1情報及び第2情報の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。尚、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0030】
<システムの構成>
図1は、本開示の実施の形態における蒸気トラップ管理システム1000の全体構成を示す図である。
図1に示す蒸気トラップ管理システム1000は、複数の測定装置1、情報端末3、及びサーバ2(出力装置)を備える。
【0031】
蒸気配管系を備えるプラント又は工場等の複数の施設100のそれぞれには、蒸気配管系の適所に複数の蒸気トラップが設けられている。測定装置1は、施設100に設けられた蒸気トラップに常設されている。測定装置1は、通信部11、制御部12、メモリ13、及び測定部14を備える。
【0032】
測定部14は、例えば、測定装置1の設置先の蒸気トラップの振動及び温度等を検知するセンサである。測定部14は、例えば一日に一回等の定期的に、設置先の蒸気トラップの振動及び温度を測定する。測定部14は、設置先の蒸気トラップの振動及び温度を測定した日時(以降、測定日時)と、設置先の蒸気トラップの振動及び温度の測定値と、を対応付けてメモリ13に記憶する。
【0033】
メモリ13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。メモリ13は、測定部14による蒸気トラップの振動及び温度の測定日時及び測定値を順次記憶する。
【0034】
制御部12は、例えば、CPU等を備えたマイクロコントローラーであり、例えば一日に一回等の定期的に、複数の測定日時及び測定値をメモリ13から読み出し、読み出した複数の測定日時及び測定値のそれぞれを含む複数の測定情報を作成する。各測定情報は、測定装置1の設置先の蒸気トラップを備える施設100を識別するための施設IDと、当該蒸気トラップを識別するためのトラップIDと、読み出した各測定日時及び測定値と、を含む。制御部12は、作成した複数の測定情報を通信部11に出力する。
【0035】
通信部11は、例えば、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路である。通信部11は、1日に1回等の定期的に、制御部12が作成した複数の測定情報を、ネットワーク4を介してサーバ2へ送信する。ネットワーク4は、例えば、インターネットである。
【0036】
情報端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又はパーソナルコンピュータであり、サーバ2にアクセス可能な権限を有する蒸気トラップ管理システム1000の管理者(以降、管理者)によって使用される。情報端末3は、通信部31、メモリ33、表示部34、操作部35、及び制御部32を備える。
【0037】
通信部31は、例えば、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路である。通信部31は、制御部32から指示された種々の情報をサーバ2に送信する。通信部31は、サーバ2から受信した種々の情報を制御部32に出力する。メモリ33は、例えば、RAM、SSD、HDD、又はフラッシュメモリ等の種々の情報を記憶可能な記憶装置である。
【0038】
表示部34は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置であり、制御部32による制御の下、通信部31がサーバ2から受信した情報を表示する。これにより、管理者は、情報端末3において、サーバ2が管理している種々の情報を閲覧等することが可能となっている。
【0039】
操作部35は、例えば、管理者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等の入力装置である。管理者が操作部35を用いて入力した情報は、制御部32に出力される。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、表示部34と操作部35とが一体的に構成されてもよい。
【0040】
制御部32は、例えば、CPU等を備えたマイクロコントローラーである。制御部32は、通信部31によって受信された情報を表示するように表示部34を制御する。また、制御部32は、管理者が操作部35を用いて入力した処理対象情報をサーバ2に送信するように、通信部31を制御する。
【0041】
複数の施設100に設けられた複数の蒸気トラップは、複数の構造の蒸気トラップに分類される。複数の構造の蒸気トラップは、弁の開閉方式によって分類された複数の型式の蒸気トラップを含む。各型式の蒸気トラップは、復水の最大排出量によって複数のモデルの蒸気トラップに分類される。処理対象情報は、複数の施設100のうちの何れか一つの施設100、複数の型式のうちの何れか一つの型式、及び複数のモデルのうちの何れか一つのモデルを、処理の対象の施設100、型式及びモデルとして受け付けることを、サーバ2に指示する情報である。
【0042】
具体的には、処理対象情報には、処理の対象の施設100としてサーバ2に受け付けさせる施設100を識別するための施設ID、処理の対象の型式としてサーバ2に受け付けさせる型式を識別するための型式ID、処理の対象のモデルとしてサーバ2に受け付けさせるモデルを識別するためのモデルIDが含まれる。これにより、処理対象情報を受信したサーバ2は、処理対象情報に含まれる施設ID、型式ID及びモデルIDによって識別される施設100、型式及びモデルを、処理の対象の施設100、型式及びモデルとして受け付けることができる。
【0043】
サーバ2は、例えば、クラウドサーバ又はサーバ装置であり、ネットワーク4を介して複数の測定装置1及び情報端末3と通信可能に接続されている。サーバ2は、通信部21、メモリ23及び制御部22を備える。
【0044】
通信部21は、例えば、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路であり、測定装置1によって送信された複数の測定情報を受信する。通信部21は、複数の測定装置1から受信した複数の測定情報を制御部22へ出力する。通信部21は、情報端末3から受信した処理対象情報を制御部22へ出力する。通信部21は、制御部22による制御の下、後述の第1情報及び第2情報を情報端末3に送信する。
【0045】
メモリ23は、例えば、RAM、SSD、HDD(Hard Disk Drive)、又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。
【0046】
メモリ23は、蒸気トラップ管理システム1000が備える複数の測定装置1の設置先の複数の蒸気トラップに関する情報を定めた機器テーブルを予め記憶している。機器テーブルは、蒸気トラップを識別するためのトラップIDと、当該蒸気トラップが設置されている施設100を識別するための施設IDと、当該蒸気トラップの構造を示す構造情報と、を対応付けたテーブルである。構造情報は、蒸気トラップの型式を識別するための型式ID及び当該蒸気トラップのモデルを識別するためのモデルIDを含む。
【0047】
制御部22は、例えば、所定の処理を実行する不図示のCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラム(プログラム)が記憶されたEEPROM等の不図示の不揮発性メモリと、データを一時的に記憶するための不図示のRAM(Random Access Memory)と、これらの周辺回路と、を備えたマイクロコントローラー(コンピュータ)である。制御部22は、前記CPUが前記不揮発性メモリに記憶されている制御プログラムを実行することで所定の処理を実行する。
【0048】
具体的には、制御部22は、通信部21が受信した各測定情報に含まれる振動及び温度の測定値に基づき、各測定情報に対応する蒸気トラップの性能を診断する。測定情報に対応する蒸気トラップとは、測定情報に含まれるトラップIDによって識別される蒸気トラップである。
【0049】
例えば、制御部22は、蒸気トラップの性能の診断において、測定情報に含まれる振動の測定値を、所定の変換式を用いて蒸気トラップの蒸気の漏洩量に変換する。また、制御部22は、蒸気トラップの性能の診断において、測定情報に含まれる振動の測定値が所定の閾値以上であるか否かによって、蒸気トラップが不良状態であるか否かを判定する。尚、上記の変換式及び閾値は、蒸気トラップの型式及びモデル毎に予め定められ、メモリ23に予め記憶されている。制御部22は、蒸気トラップの診断を行う場合、メモリ23に記憶されている機器テーブルを参照し、当該蒸気トラップの型式及びモデルに対応する変換式及び閾値をメモリ23から取得する。
【0050】
制御部22は、各測定情報に対応する蒸気トラップの性能を診断すると、当該蒸気トラップの性能の診断結果を示す診断結果情報を作成する。診断結果情報は、蒸気トラップの性能の診断に用いた測定情報、及び蒸気トラップの性能の診断で得られた蒸気トラップの性能を表す指標(以降、性能指標)を含む。蒸気トラップの性能指標には、例えば、蒸気トラップの診断に用いられた蒸気トラップの振動の測定値、蒸気トラップの蒸気の漏洩量、及び蒸気トラップが不良状態であるか否かの判定結果が含まれる。
【0051】
制御部22は、作成した各診断結果情報をメモリ23に出力する。メモリ23は、制御部22から取得した各診断結果情報を記憶する。
【0052】
制御部22は、通信部21が情報端末3から処理対象情報を受信した場合、当該処理対象情報に含まれる施設ID、型式ID及びモデルIDに対応する施設100、蒸気トラップの型式及び蒸気トラップのモデルを、処理の対象の施設100、型式及びモデルとして受け付ける。以降、処理の対象の施設100を対象施設と記載し、処理の対象の型式を対象型式と記載し、処理の対象のモデルを対象モデルと記載する。
【0053】
制御部22は、メモリ23に記憶されている複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す複数の診断結果情報(以降、履歴情報)に基づいて、対象施設における対象型式及び対象モデルの蒸気トラップの性能指標の時間的推移である第1推移を生成する。以降、対象型式及び対象モデルの蒸気トラップを対象トラップと記載する。
【0054】
具体的には、制御部22は、メモリ23に記憶されている機器テーブルを参照して、履歴情報から、対象施設に設けられた対象トラップの性能を診断した結果を示す複数の診断結果情報を取得する。制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に、対象トラップの性能指標(例えば、振動の測定値)の平均値を算出する。制御部22は、算出した平均値を測定日時順に並べたものを第1推移として生成する。
【0055】
尚、制御部22による第1推移の生成方法はこれに限らない。例えば、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に対象トラップの性能指標の中間値を取得し、取得した中間値を測定日時順に並べたものを第1推移として生成してもよい。又は、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に対象トラップの性能指標の最大値又は最小値を取得し、取得した最大値又は最小値を測定日時順に並べたものを第1推移として生成してもよい。又は、制御部22は、測定日時毎に、対象トラップの性能指標の平均値又は中間値及び最大値又は最小値を算出(取得)し、算出(取得)した平均値又は中間値及び最大値又は最小値のそれぞれを、測定日時順に並べたものを、第1推移として生成してもよい。
【0056】
制御部22は、履歴情報に基づいて、対象施設における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的推移である第2推移を生成する。
【0057】
具体的には、制御部22は、メモリ23に記憶されている機器テーブルを参照して、履歴情報から、対象施設に設けられた対象トラップの性能を診断した結果を示す複数の診断結果情報を取得する。制御部22は、取得した複数の診断結果情報に含まれる測定情報を参照し、測定日時毎に、対象トラップが不良状態であることを示す判定結果を含む診断結果情報を取得する。制御部22は、取得した診断結果情報に対応する対象トラップの台数をカウントする。診断結果情報に対応する対象トラップとは、当該診断結果情報によって性能の診断の結果が示される対象トラップである。制御部22は、カウントした対象トラップの台数を、測定日時順に並べたものを第2推移として生成する。
【0058】
尚、制御部22は、対象トラップの台数をカウントする際に、同一の対象トラップを1台としてカウントする。また、制御部22は、一度ある測定日時についての対象トラップの台数のカウント時にカウントした対象トラップと同一の対象トラップを、他の測定日時における診断結果情報に対応する対象トラップとしてカウントしない。
【0059】
ただし、これに限らず、制御部22が、一度ある測定日時についての対象トラップの台数のカウント時にカウントした対象トラップと同一の対象トラップを、他の測定日時においても、診断結果情報に対応する対象トラップとしてカウントするようにしてもよい。この場合、第2推移は、対象施設における不良状態と診断された対象トラップの累計台数の時間的推移を示すものとなる。
【0060】
制御部22は、履歴情報に基づいて、複数の施設100において一般的な対象トラップの性能指標の時間的推移である第1基準推移を生成する。
【0061】
具体的には、制御部22は、メモリ23に記憶されている機器テーブルを参照して、履歴情報から、複数の施設100に設けられた対象トラップの性能を診断した結果を示す複数の診断結果情報を取得する。ここで、複数の施設100とは、蒸気トラップ管理システム1000が備える複数の測定装置1が設置されている全ての施設100である。
【0062】
制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に、対象トラップの性能指標(例えば、振動の測定値)の平均値を算出する。制御部22は、算出した平均値を測定日時順に並べたものを第1基準推移として生成する。
【0063】
尚、制御部22による第1基準推移の生成方法はこれに限らない。例えば、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に対象トラップの性能指標の中間値を取得し、取得した中間値を測定日時順に並べたものを第1基準推移として生成してもよい。
【0064】
尚、制御部22による第1基準推移の生成方法はこれに限らない。例えば、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に対象トラップの性能指標の中間値を取得し、取得した中間値を測定日時順に並べたものを第1基準推移として生成してもよい。又は、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に対象トラップの性能指標の最大値又は最小値を取得し、取得した最大値又は最小値を測定日時順に並べたものを第1基準推移として生成してもよい。
【0065】
又は、制御部22は、取得した複数の診断結果情報を参照し、測定日時毎に、対象トラップの性能指標の平均値又は中間値及び最大値又は最小値を取得又は算出し、取得又は算出した対象トラップの性能指標の平均値又は中間値及び最大値又は最小値のそれぞれを測定日時順に並べたものを、第1基準推移として生成してもよい。
【0066】
制御部22は、第1推移と第1基準推移との差異及び第2推移に基づいて、複数の施設100において一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定する。
【0067】
具体的には、制御部22は、第1推移が示す対象トラップの性能指標が所定値であるときの測定日時と、第1基準推移が示す対象トラップの性能指標が前記所定値であるときの測定日時と、の差分の時間(以降、差分時間)を、第1推移と第1基準推移との差異として算出する。
【0068】
第1推移及び第1基準推移が、時間の経過とともに対象トラップの性能指標が増大することを示す場合、所定値は、例えば、第1基準推移が示す対象トラップの性能指標の最大値及び第1推移が示す対象トラップの性能指標の最大値のうちの小さい方の値に定めることができる。一方、第1推移及び第1基準推移が、時間の経過とともに対象トラップの性能指標が減少することを示す場合、所定値は、例えば、第1基準推移が示す対象トラップの性能指標の最小値及び第1推移が示す対象トラップの性能指標の最小値のうちの大きい方の値に定めることができる。
【0069】
尚、第1推移が示す対象トラップの性能指標が所定値であるときの測定日時が複数存在する場合、例えば、最も遅い測定日時を用いて差分時間を算出すればよい。同様に、第1基準推移が示す対象トラップの性能指標が所定値であるときの測定日時が複数存在する場合、例えば、最も遅い測定日時を用いて差分時間を算出すればよい。
【0070】
制御部22は、第2推移における各測定日時を差分時間だけスライドさせた時間的推移を、第2基準推移として推定する。
【0071】
尚、処理対象情報にモデルIDを含まないようにしてもよい。これにより、制御部22が、処理対象情報に含まれる施設ID及び型式IDによって識別される施設100及び型式を、対象施設及び対象型式として選択するようにしてもよい。そして、制御部22が、対象施設における対象型式の蒸気トラップを対象トラップとして、第1推移、第2推移及び第1基準推移を生成し、第2基準推移を推定し、第1平均推移及び第2平均推移を生成するようにしてもよい。
【0072】
制御部22は、通信部21を制御して、第1推移及び第1基準推移を含む第1情報と、第2推移及び第2基準推移を含む第2情報と、を、情報端末3に送信する。
【0073】
尚、本実施の形態における蒸気トラップ管理システム1000は、複数の測定装置1、サーバ2、及び情報端末3を備えているが、本開示はこれに限定されない。蒸気トラップ管理システム1000は、サーバ2を備えず、複数の測定装置1及び情報端末3を備えてもよい。この場合、情報端末3は、サーバ2の機能を備える。
【0074】
続いて、本開示の実施の形態におけるサーバ2の出力処理について説明する。
図2は、サーバ2の出力処理について説明するためのフローチャートである。
【0075】
まず、ステップS10において、通信部21は、測定装置1が送信した測定情報を受信する度に、受信した測定情報を制御部22へ出力する。
【0076】
次に、ステップS11において、制御部22は、通信部21が受信した各測定情報に含まれる振動及び温度の測定値に基づき、各測定情報に対応する蒸気トラップの性能を診断する。
【0077】
次に、ステップS12において、制御部22は、各測定情報に対応する蒸気トラップの性能の診断結果を示す診断結果情報を作成し、作成した各診断結果情報をメモリ23に出力する。メモリ23は、制御部22から取得した各診断結果情報を記憶する。
【0078】
次に、ステップS13において、制御部22は、通信部21が情報端末3から処理対象情報を受信したか否かを判定する。制御部22は、通信部21が情報端末3から処理対象情報を受信したと判定した場合(ステップS13でYES)、処理をステップS14に移行する。一方、制御部22は、通信部21が情報端末3から処理対象情報を受信したと判定しなかったときは(ステップS13でNO)、処理をステップS10に移行する。
【0079】
ステップS14において、制御部22は、通信部21が情報端末3から受信した処理対象情報に含まれる施設ID、型式ID及びモデルIDに対応する施設100、蒸気トラップの型式及び蒸気トラップのモデルを、処理の対象の施設100(対象施設)、処理の対象の型式(対象型式)及び処理の対象のモデル(対象モデル)として受け付ける。
【0080】
次に、ステップS15において、制御部22は、メモリ23に記憶されている履歴情報に基づいて、対象施設における、対象型式及び対象モデルの蒸気トラップである対象トラップの性能指標の時間的推移である第1推移を生成する。
【0081】
次に、ステップS16において、制御部22は、履歴情報に基づいて、対象施設における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的推移である第2推移を生成する。
【0082】
次に、ステップS17において、制御部22は、履歴情報に基づいて、複数の施設100において一般的な対象トラップの性能指標の時間的推移である第1基準推移を生成する。
【0083】
次に、ステップS18において、制御部22は、第1推移と第1基準推移との差異及び第2推移に基づいて、複数の施設100において一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的推移である第2基準推移を推定する。
【0084】
次に、ステップS19において、制御部22は、通信部21を制御して、第1推移及び第1基準推移を含む第1情報と、第2推移及び第2基準推移を含む第2情報と、を、情報端末3に送信し、処理をステップS10に移行する。情報端末3では、通信部31がサーバ2から第1情報及び第2情報を受信すると、表示部34は、制御部32による制御の下、通信部31がサーバ2から受信した第1情報及び第2情報を含む画像(以降、レポート画像)を表示する。
【0085】
図3は、第1情報F1及び第2情報F2の一例を示す図である。
図3は、情報端末3から、施設ID「工場A」、型式ID「I」及びモデルID「M1」を含む処理対象情報がサーバ2に送信された後、通信部31がサーバ2から第1情報F1及び第2情報F2を受信したときに、表示部34が第1情報F1及び第2情報F2を含むレポート画像R1を表示した例を示している。
【0086】
第1情報F1には、第1情報F1のタイトルを示す領域T11と、第1情報F1に含まれる第1推移G11、及び第1基準推移G10を示すグラフを表示する領域A11と、当該グラフの凡例を表示する領域A12と、が含まれている。
【0087】
第1推移G11は、対象施設「工場A」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの性能指標である振動の測定値(「振動値」)の時間的推移を示している。第1基準推移G10は、複数の施設100において一般的な施設100における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの性能指標である振動の測定値の時間的推移を示している。
【0088】
第2情報F2には、第2情報F2のタイトルを示す領域T21と、第2情報F2に含まれる第2推移G21、及び第2基準推移G20を示すグラフを表示する領域A21と、当該グラフの凡例を表示する領域A22と、が含まれている。
【0089】
第2推移G21は、対象施設「工場A」における不良状態と診断された対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの台数の時間的推移を示している。第2基準推移G20は、第1推移G11及び第1基準推移G10がそれぞれ所定値P1になる測定日時の差分の時間である差分時間D1「12(=36-24)か月」だけ、第2推移G21における測定日時をスライドさせた時間的推移を示している。
【0090】
この場合、管理者は、第1情報F1を参照することで、第1推移G11が示す、対象施設「工場A」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの振動の測定値の時間的推移を、第1基準推移G10が示す、複数の施設100において一般的な対象トラップの振動の測定値の時間的推移と比較することができる。これにより、対象施設「工場A」において対象トラップの性能が一般的な施設100と比べてどの程度早く劣化するのかを把握することができる。
【0091】
また、第2情報F2を参照することで、第2推移G21が示す、対象施設「工場A」における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的推移を、第2基準推移G20が示す、複数の施設100において一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的推移と比較することができる。これにより、対象施設「工場A」において、どの程度の台数の対象トラップが一般的な施設100と比べてどの程度早い時期に不良状態になるのかを把握することができる。
【0092】
また、第1情報F1及び第2情報F2を比較することで、対象トラップの振動の測定値がどのような時間的推移で変化するときに、不良状態と診断される対象トラップの台数がどのような時間的推移で増減するのかを把握することができる。
【0093】
このように、本表示例では、対象施設「工場A」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の蒸気トラップの性能及び不良状態と診断される台数の時間的推移に関する種々の情報を把握することができる。このため、本表示例は、対象施設「工場A」において対象型式「I」及び対象モデル「M1」の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【0094】
図4は、第1情報F1及び第2情報F2の他の一例を示す図である。
図4は、情報端末3から、施設ID「工場B」、型式ID「I」及びモデルID「M1」を含む処理対象情報がサーバ2に送信された後、通信部31がサーバ2から第1情報F1及び第2情報F2を受信したときに、表示部34がレポート画像R1を表示した例を示している。
【0095】
本表示例では、第1情報F1の領域A11には、第1推移G31、及び
図3に示したものと同じ第1基準推移G10を示すグラフが表示されている。
【0096】
第1推移G31は、対象施設「工場B」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの性能指標である振動の測定値の時間的推移を示している。
【0097】
第2情報F2の領域A21には、第2推移G41、及び第2基準推移G40を示すグラフが表示されている。
【0098】
第2推移G41は、対象施設「工場B」における不良状態と診断された対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの台数の時間的推移を示している。第2基準推移G40は、第1推移G31及び第1基準推移G10がそれぞれ所定値P1になる測定日時の差分の時間である差分時間D2「-12(=36-48)か月」だけ、第2推移G41における測定日時をスライドさせた時間的推移を示している。
【0099】
この場合、管理者は、第1情報F1を参照することで、第1推移G31が示す、対象施設「工場B」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の対象トラップの振動の測定値の時間的推移を、第1基準推移G10が示す、複数の施設100において一般的な対象トラップの振動の測定値の時間的推移と比較することができる。これにより、対象施設「工場B」において、対象トラップの性能が一般的な施設100と比べてどの程度遅く劣化するのかを把握することができる。
【0100】
また、第2情報F2を参照することで、第2推移G41が示す、対象施設「工場B」における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的推移を、第2基準推移G40が示す、複数の施設100において一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的推移と比較することができる。これにより、対象施設「工場B」において、どの程度の台数の対象トラップが一般的な施設100と比べてどの程度遅い時期に不良状態になるのかを把握することができる。
【0101】
また、第1情報F1及び第2情報F2を比較することで、対象トラップの振動の測定値がどのような時間的推移で変化するときに、不良状態と診断される対象トラップの台数がどのような時間的推移で増減するのかを把握することができる。
【0102】
このように、本表示例では、対象施設「工場B」における対象型式「I」及び対象モデル「M1」の蒸気トラップの性能及び不良状態と診断される台数の時間的推移に関する種々の情報を把握することができる。このため、本表示例は、対象施設「工場B」において対象型式「I」及び対象モデル「M1」の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援することができる。
【0103】
尚、例えば新設された施設100等、蒸気配管系の稼働期間が短いために、第1推移が第1基準推移よりも短い期間を示す場合がある。この場合、制御部22が、以下のようにして、第1推移を補間するようにしてもよい。
【0104】
図5は、変形例の第1情報F1aを示す図である。例えば、
図5に示すように、制御部22が、24か月の対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移を示す第1推移G51を生成し、約36か月の対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移を示す第1基準推移G50を生成したとする。
【0105】
この場合、制御部22は、第1推移G51を示す近似関数を算出する。具体的には、制御部22は、第1推移G51が示す測定日時を説明変数とし、第1推移G51が示す対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」を目的変数とした多項式近似によって、これらの関係を示す二次関数を、第1推移G51を示す近似関数として算出する。
【0106】
尚、第1推移G51を示す近似関数の算出方法は、これに限らない。例えば、制御部22は、第1推移G51が示す測定日時を説明変数とし、第1推移G51が示す対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」を目的変数とした線形近似によって、これらの関係を示す一次関数を、第1推移G51を示す近似関数として算出してもよい。
【0107】
そして、制御部22は、第1基準推移G50と同様にして、メモリ23から取得した履歴情報を参照し、対象施設とは異なる施設100における対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移を取得する。制御部22は、取得した時間的推移の中から、第1推移G51と類似している期間を含む対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移(以降、第3推移)を取得する。
【0108】
具体的には、制御部22は、対象施設とは異なる施設100における対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移の中から、第1推移G51と同じ長さの期間「24か月」における性能指標「蒸気の漏洩量」の増大量が、第1推移G51が示す「24か月」における性能指標「蒸気の漏洩量」の増大量に最も近い対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移を、第3推移として取得する。
【0109】
尚、制御部22による第3推移の生成方法はこれに限らない。例えば、制御部22は、ディープラーニング等の機械学習によって生成されたモデルを用いて、第3推移を取得するようにしてもよい。
【0110】
具体的には、下記の第1時間的推移と、下記の複数の第2時間的推移と、下記の第3時間的推移と、の関係を機械学習したモデルを、メモリ23に予め記憶するようにしてもよい。第1時間的推移は、ある蒸気トラップ(以降、第1蒸気トラップ)の直近の第1推移G51と同じ長さの期間(以降、第1期間)における性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移である。複数の第2時間的推移は、第1蒸気トラップが設置されている施設100とは異なる施設100に設置されている、第1蒸気トラップと同じ型式及びモデルの複数の蒸気トラップのそれぞれについての第1期間よりも長い期間における性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移である。第3時間的推移は、複数の第2時間的推移のうち、第1期間と同じ長さの期間における性能指標「蒸気の漏洩量」の増大量が、第1時間的推移が示す第1期間における性能指標「蒸気の漏洩量」の増大量に最も近い時間的推移である。
【0111】
この場合、制御部22が、メモリ23から上記モデルを取得し、当該モデルに第1推移G51と、履歴情報から生成した対象施設とは異なる施設100における対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移と、を入力することによって、当該モデルが出力する性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移を、第3推移として取得するようにしてもよい。
【0112】
そして、制御部22は、第3推移における第1推移G51と類似している期間「24か月」以降の対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移G53を取得する。
【0113】
制御部22は、取得した対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移G53と、近似関数によって示される第1推移G51以降の対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移G54と、を平均化した時間的推移G55を、第1推移G51に続く時間的推移として第1推移G51を補間する。
【0114】
又は、制御部22が、第3推移における第1推移G51と類似している期間「24か月」以降の対象トラップの性能指標「蒸気の漏洩量」の時間的推移G53を、第1推移に続く性能指標の時間的推移として第1推移G51を補間するようにしてもよい。
【0115】
これらの場合、一般的な施設100と比べて対象トラップの使用期間が短い施設100が対象施設として選択された場合であっても、出力された第1情報F1aを参照することで、補間後の第1推移G51、G55(G51、G53)と、第1基準推移G50とを比較することができる。これにより、将来、当該対象施設において対象トラップの性能が一般的な施設100と比べてどの程度早く又は遅く劣化するのかを把握することができる。
【符号の説明】
【0116】
2:サーバ(出力装置)
22:制御部(コンピュータ)
100:施設
F1、F1a:第1情報
F2:第2情報
G10、G50:第1基準推移
G11、G31、G51:第1推移
G20、G40:第2基準推移
G21、G41:第2推移
G53:第3推移における第1期間と類似している期間以降の時間的推移
G54:近似関数によって示される第1推移以降の時間的推移
G55:第3推移における第1期間と類似している期間以降の時間的推移と、近似関数によって示される第1推移以降の時間的推移と、を平均化した時間的推移
【要約】
【課題】対象の施設において対象の構造の蒸気トラップの交換時期及び交換台数を適切に計画することを支援する。
【解決手段】出力方法は、複数の蒸気トラップそれぞれの性能の診断結果の履歴を示す履歴情報を取得し、対象の施設及び対象の構造を示す情報を受け付け、履歴情報に基づいて、対象の施設における対象の構造の対象トラップの性能指標の時間的な第1推移と、対象の施設における不良状態と診断された対象トラップの台数の時間的な第2推移と、一般的な対象トラップの性能指標の時間的な第1基準推移と、を生成し、第1推移と第1基準推移との差異及び第2推移に基づいて、一般的な不良状態と診断される対象トラップの台数の時間的な第2基準推移を推定し、第1推移及び第1基準推移を含む第1情報と、第2推移及び第2基準推移を含む第2情報と、を出力する。
【選択図】
図2