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特許7489163長距離ネットワークと短距離ネットワークの両方で動作する無線装置間の協働
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】長距離ネットワークと短距離ネットワークの両方で動作する無線装置間の協働
(51)【国際特許分類】
   H04W 88/04 20090101AFI20240516BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20240516BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240516BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240516BHJP
【FI】
H04W88/04
H04W48/18 110
H04W88/06
H04W84/10 110
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000584
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2020113980
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/790,032
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】イーガル、ビトラン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ、セメル
(72)【発明者】
【氏名】ディマ、フェルドマン
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541284(JP,A)
【文献】特表2018-534854(JP,A)
【文献】特表2018-503327(JP,A)
【文献】特開2017-208697(JP,A)
【文献】特表2018-503992(JP,A)
【文献】特開2013-021515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって:
セルラーネットワークのベースステーション(BS)と無線で通信するように構成された長距離送受信機と;
短距離ネットワーク上で1つ以上のピア通信装置と無線通信するように構成された短距離送受信機と;そして
プロセッサであって、前記短距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信し、前記長距離送受信機を介して前記BSと通信し、それにより前記通信装置と前記1つ以上のピア通信装置または前記セルラーネットワークとの間でリソースを共有し、通信サービスを提供するように構成されたプロセッサと;
を有し、
前記プロセッサは:
1つの信号であって、データビットを運び、そして前記BSへの送信のため、1つの前記ピア通信装置の長距離送受信機により部分的または完全な送信処理を受けた信号、を前記1つのピア通信装置から前記短距離送受信機を介して受信し;そして
前記データビットを運ぶ1つの送信信号を生成するため、当該通信装置の前記長距離送受信機により前記信号の処理を完了し、そして当該1つのピア通信装置に代わって前記BSへ前記送信信号を送信する;
ように構成され、
ここで前記セルラーネットワークは、前記信号の処理が前記通信装置により完了されたものであり、当該1つのピア通信装置により完了されたものではない、ことを知らない、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記長距離送受信機を介した前記BSと、前記短距離送受信機を介した前記1つ以上のピア通信装置と、の間のメッセージ通信を協働で仲介するための、1つ以上のゲートウェイ装置を選択する際に、前記近距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信する、ように構成されることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記BSとの通信条件、バッテリーレベルまたは前記バッテリーが消耗するまでの残り時間、長距離ネットワークへの接続コスト、移動体仮想ネットワークオペレータ(MVNO)により提供される接続パフォーマンスのレベル、前記短距離ネットワーク内のルーティングホップの数、アプリケーションの考慮事項、および装置機能、を含む基準リストから選択される基準に基づいて、前記ゲートウェイ装置を、前記1つ以上のピア通信装置と相互に選択するように構成される、ことを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置および前記1つ以上のピア通信装置は、それぞれセキュア要素(SE)を備え、前記プロセッサは、前記SEを使用して、前記短距離ネットワーク上で前記1つ以上のピア通信装置とのセキュア通信を確立するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記セルラーネットワークにアクセスするために前記1つのピア通信装置によって使用された、1つまたはそれ以上のアイデンティティおよび1つまたはそれ以上のキーを、セキュア通信を使用して、前記短距離送受信機を介して、前記1つのピア通信装置から、受信し、そして
受信した前記アイデンティティと前記キーを使用して、前記1つのピア通信装置の代わりに、前記セルラーネットワークにアクセスする、
ように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記長距離送受信機を介して前記BSからダウンリンクメッセージを受信し、前記短距離送受信機を介して前記ダウンリンクメッセージを前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置に送信するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記長距離送受信機は、アイドルモードから周期的に起動するように構成され、起動期間中、前記プロセッサは、前記長距離送受信機を介して前記BSにより送信された1つの制御メッセージを受信し、チャネル品質と隣接セルに関連する測定値を生成し、そして前記短距離送受信機を介して前記1つのピア通信装置に前記制御メッセージと前記測定値を送信する、ように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記長距離送受信機は、
アイドルモードのままである前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置に代わって、当該1つのピア通信装置宛てのページングメッセージを検出するために定期的に起動し、
起動期間中、前記BSから前記1つ以上のピア通信装置の前記1つのピア通信装置宛ての1つのページングメッセージを検知し、
そして前記1つのページングメッセージを前記プロセッサに送信する、
ように構成され、
ここにおいて前記プロセッサは、前記1つのページングメッセージを前記短距離送受信機経由で前記1つ以上のピア通信装置の前記1つのピア通信装置に送信するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置から、前記近距離送受信機を介して、時間ギャップであって、当該時間ギャップの間前記セルラーネットワーク上で無線通信が発生しない、時間ギャップに関する情報を受信し、そして前記時間ギャップの間に、前記短距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記プロセッサは前記セルラーネットワークの1つの時間ベースに同期し、前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置も当該時間ベースに同期し、そして前記プロセッサは、前記時間ベースに従って、前記通信装置と前記1つ以上のピア通信装置の前記1つのピア通信装置との間で同期探索を実行する、ように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、局所的物理属性を測定し、そして前記短距離送受信機を介して測定された前記物理属性を前記1つ以上のピア通信装置と共有するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記1つ以上のピア通信装置からそれぞれの局所的に測定された属性を受信し、1つ以上の前記属性から1つの共通属性を導出し、そして前記共通属性を、前記BSに結合されるサーバに前記長距離送受信機を介して報告する、ように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記通信装置は、1つのターゲット通信装置を宛先とする1つのファームウェアイメージの異なる各部分、または前記ファームウェアイメージの全体を前記BSから受信する、1つ以上の通信装置を含む1つのグループに属し、ここにおいて前記プロセッサは、前記BSから前記ファームウェアイメージの各部分または前記ファームウェアイメージの全体を受信し、そして受信した前記ファームウェアイメージの前記部分または前記ファームウェアイメージの全体を前記短距離ネットワーク上で前記ターゲット通信装置に送信するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記セルラーネットワークにおいてアクティブ化されていない、またはオンボードされていない前記1つ以上のピア通信装置に代わって、前記長距離送受信機を介して前記BSとメッセージを通信するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項15】
通信の方法であって、
セルラーネットワークの基地局(BS)と無線通信するための長距離送受信機を備え、短距離ネットワーク上で1つ以上のピア通信装置と無線通信するための短距離送受信機をさらに備える通信装置において、
前記短距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信し、前記長距離送受信機を介して前記BSと通信し、それにより前記通信装置と前記1つ以上のピア通信装置または前記セルラーネットワークとの間でリソースを共有して、通信サービスを提供するステップを有し、
前記通信サービスを提供するステップは:
1つの信号であって、データビットを運び、そして前記BSへの送信のため、1つの前記ピア通信装置の前記長距離送受信機により部分的または完全な送信処理を受けた信号、を当該1つのピア通信装置から前記短距離送受信機を介して受信するステップと;そして
前記データビットを運ぶ1つの送信信号を生成するため、当該通信装置の前記長距離送受信機により前記信号の処理を完了し、そして当該1つのピア通信装置に代わって前記BSへ前記送信信号を送信するステップと;
を有し、
ここで前記セルラーネットワークは、前記信号の処理が前記通信装置により完了されたものであり、当該1つのピア通信装置により完了されたものではない、ことを知らない、
ことを特徴とする通信の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のピア通信装置と通信するステップは、前記長距離送受信機を介した前記BSと、前記短距離送受信機を介した前記1つ以上のピア通信装置と、の間のメッセージ通信を協働で仲介するための、1つ以上のゲートウェイ装置を相互に選択する際に、前記近距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信するステップを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記BSとの通信条件、バッテリーレベルまたは前記バッテリーが消耗するまでの残り時間、長距離ネットワークへの接続コスト、移動体仮想ネットワークオペレータ(MVNO)により提供される接続パフォーマンスのレベル、前記短距離ネットワーク内のルーティングホップの数、アプリケーションの考慮事項、および装置機能、を含む基準リストから選択される基準に基づいて、前記1つ以上のピア通信装置と前記ゲートウェイ装置を相互に選択するステップを有する、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記通信装置および前記1つ以上のピア通信装置は、それぞれセキュア要素(SE)を備え、前記1つ以上のピア通信装置と通信するステップは、前記SEを使用して、前記短距離ネットワーク上で前記ピア通信装置とのセキュア通信を確立するステップを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記セルラーネットワークにアクセスするために前記1つのピア通信装置によって使用される1つまたはそれ以上のアイデンティティおよび1つまたはそれ以上のキーを、セキュア通信を使用して、前記短距離送受信機を介して、前記1つのピア通信装置から、受信するステップと、そして
受信した前記アイデンティティと前記キーを使用して、前記1つのピア通信装置の代わりに、前記セルラーネットワークにアクセスするステップと、
を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記長距離送受信機を介して前記BSからダウンリンクメッセージを受信するステップと、そして前記短距離送受信機を介して前記ダウンリンクメッセージを前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置に送信するステップとを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記長距離送受信機により、アイドルモードから周期的に起動するステップと、起動期間中、前記長距離送受信機を介して前記BSにより送信された1つの制御メッセージを受信するステップと、チャネル品質と隣接セルに関連する測定値を生成するステップと、そして前記短距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置に前記制御メッセージと前記測定値を送信するステップを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記長距離送受信機により、アイドルモードのままである前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置に代わって、当該1つのピア通信装置宛てのページングメッセージを検出するために定期的に起動するステップと、
起動期間中、前記BSから当該1つのピア通信装置宛ての1つのページングメッセージを検知するステップと、
前記1つのページングメッセージを前記プロセッサに送信するステップと、そして
前記1つのページングメッセージを前記短距離送受信機経由で当該1つのピア通信装置に送信するステップと、
を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ピア通信装置と通信するステップは、前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置から、前記近距離送受信機を介して、時間ギャップに関する情報を受信するステップであって、前記時間ギャップの間は前記セルラーネットワーク上で無線通信が発生しない、ステップと、そして前記時間ギャップの間に、前記短距離送受信機を介して前記1つ以上のピア通信装置と通信するステップとを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上のピア通信装置の1つのピア通信装置も同期する、前記セルラーネットワークの1つの時間ベースに同期するステップと、そして前記時間ベースに従って、前記通信装置と当該1つのピア通信装置との間で同期探索を実行するステップとを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項25】
局所的物理属性を測定するステップと、そして前記短距離送受信機を介して前記測定された物理属性を前記1つ以上のピア通信装置と共有するステップと、を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上のピア通信装置と通信するステップは、前記1つ以上のピア通信装置からそれぞれの局所的に測定された属性を受信するステップと、1つ以上の前記属性から1つの共通属性を導出するステップと、そして前記共通属性を、前記BSに結合されるサーバに前記長距離送受信機を介して報告するステップと、を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記通信装置は、1つのターゲット通信装置を宛先とする1つのファームウェアイメージの異なる各部分、または前記ファームウェアイメージの全体を前記BSから受信する、1つ以上の通信装置を含む1つのグループに属し、そして、前記方法は前記BSから前記ファームウェアイメージの各部分または前記ファームウェアイメージの全体を受信するステップと、そして受信した前記ファームウェアイメージの前記部分または前記ファームウェアイメージの全体を前記短距離ネットワーク上で前記ターゲット通信装置に送信するステップと、を有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記セルラーネットワークにおいてアクティブ化されていない、またはオンボードされていない前記1つ以上のピア通信装置に代わって、前記長距離送受信機を介して前記BSとメッセージを通信するステップを有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する実施形態は、一般に無線通信に関し、特に、長距離ネットワークと短距離ネットワークの両方で動作する無線装置間の協働のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2019年1月9日に出願された米国暫定特許出願62/790,032の利益を主張し、当該出願は参照により本明細書に取り入れられる。
【0003】
携帯電話ネットワークは通常、複数の基地局を使用して広い地理的エリアをカバーすることにより、長距離無線通信を提供する。セルラー通信システムの例には、3GPP Long-Term Evolution(LTE)および5G通信システムが含まれる。短距離無線通信では、無線装置は、通常数センチメートルから数十メートルの短距離で互いに通信する。短距離無線通信システムには、たとえば、ブルートゥース(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)、Wi-Fi、およびZigBeeが含まれる(以下を参照)。
【0004】
一部の短距離通信ネットワークは、産業用、科学用および医療用無線(ISM)帯域で動作するが、ライセンスは不要である。ISM帯域には、2.4GHz帯域の一部と1GHz未満の特定の周波数が含まれる。ISM規格は国によって異なる場合がある。
【0005】
LTE メディアアクセス制御(MAC)層および物理層の側面は、たとえば、「Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);メディアアクセス制御(MAC)プロトコル仕様」というタイトルの3GPP技術仕様36.321(3GPP TS 36.321、バージョン15.7.0、リリース15)2019年9月、および「Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);物理チャネルと変調」というタイトルの3GPP技術仕様36.211(3GPP TS 36.211、バージョン15.7.0、リリース15)、2019年3月に記載されている。
【0006】
ブルートゥース(登録商標)は、短距離において無線装置間でデータを交換し、そして無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)を作成するために使用される、無線技術標準である。 ブルートゥース(登録商標)は、たとえば、「ブルートゥース(登録商標)コア規格」v5.1、2019年1月21日で規定されている。
【0007】
ZigBeeは、ホームオートメーション、医療機器、データ収集などの低電力低帯域幅アプリケーションをサポートするパーソナルエリアネットワーク(PAN)に適用可能なIEEE 802.15.4ベースの標準である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国暫定特許出願62/790,032
【発明の概要】
【0009】
本明細書で説明される実施形態は、長距離送受信機と、短距離送受信機と、そしてプロセッサとを有する通信装置が提供される。長距離送受信機はセルラーネットワークのベースステーション(BS)と無線で通信するように構成される。短距離送受信機は短距離ネットワーク上で1つ以上のピア通信装置と無線通信するように構成される。プロセッサは、短距離送受信機を介して1つ以上のピア通信装置と通信し、長距離送受信機を介してBSと通信し、それにより通信装置と1つ以上のピア通信装置またはセルラーネットワークとの間でリソースを共有し、通信サービスを提供するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、1つのピア通信装置から短距離送受信機を介して、1つの信号であって、データビットを運び、そしてBSへの送信のため、1つのピア通信装置の長距離送受信機による部分的または完全な送信処理を受ける信号、を受信し、データビットを運ぶ1つの送信信号を生成するため、長距離送受信機により信号の処理を完了し、そして1つのピア通信装置に代わってBSへ送信信号を送信する、ように構成される。さらに他の実施形態では、プロセッサは、長距離送受信機を介したBSと、短距離送受信機を介した1つ以上のピア通信装置と、の間のメッセージ通信を協働で仲介するための、1つ以上のゲートウェイ装置を選択する際に、近距離送受信機を介して1つ以上のピア通信装置と通信するように構成される。さらに他の実施形態ではプロセッサは、BSとの通信条件、バッテリーレベルまたはバッテリーが消耗するまでの残り時間、長距離ネットワークへの接続コスト、移動体仮想ネットワークオペレータ(MVNO)により提供される接続パフォーマンスのレベル、短距離ネットワーク内のルーティングホップの数、アプリケーションの考慮事項、および装置機能、を含む基準リストから選択される基準に基づいて、ゲートウェイ装置を、1つ以上のピア通信装置と相互に選択するように構成される。
【0011】
一実施形態では、通信装置および1つ以上のピア通信装置は、それぞれセキュア要素(SE)を備え、プロセッサは、SEを使用して、短距離ネットワーク上で1つ以上のピア通信装置とのセキュア通信を確立するように構成される。他の実施形態ではプロセッサは、セルラーネットワークにアクセスするために1つのピア通信装置によって使用された、1つまたはそれ以上のアイデンティティおよび1つまたはそれ以上のキーを、セキュア通信を使用して、短距離送受信機を介して、1つのピア通信装置から、受信し、そして受信したアイデンティティとキーを使用して、1つのピア通信装置の代わりに、セルラーネットワークにアクセスする、ように構成される。さらに他の実施形態ではプロセッサは、長距離送受信機を介してBSからダウンリンクメッセージを受信し、短距離送受信機を介してダウンリンクメッセージを1つのピア通信装置に送信するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、長距離送受信機は、アイドルモードから周期的に起動するように構成され、起動期間中、プロセッサは、長距離送受信機を介してBSにより送信された1つの制御メッセージを受信し、チャネル品質と隣接セルに関連する測定値を生成し、そして短距離送受信機を介して1つのピア通信装置に制御メッセージと測定値を送信する、ように構成される。他の実施形態では長距離送受信機は、アイドルモードのままである1つのピア通信装置に代わって、当該1つのピア通信装置宛てのページングメッセージを検出するために定期的に起動し、起動期間中、BSから1つのピア通信装置宛ての1つのページングメッセージを検知し、そして1つのページングメッセージをプロセッサに送信する、ように構成され、ここにおいてプロセッサは、1つのページングメッセージを短距離送受信機経由で1つのピア通信装置に送信するように構成される。さらに他の実施形態ではプロセッサは、1つのピア通信装置から、近距離送受信機を介して、時間ギャップであって、当該時間ギャップの間セルラーネットワーク上で無線通信が発生しない、時間ギャップに関する情報を受信し、そして時間ギャップの間に、短距離送受信機を介して1つ以上のピア通信装置と通信するように構成される。
【0013】
一実施形態では、プロセッサはセルラーネットワークの1つの時間ベースに同期し、1つのピア通信装置も当該時間ベースに同期し、そしてプロセッサは、時間ベースに従って、通信装置と1つのピア通信装置との間で同期探索を実行する、ように構成される。他の実施形態ではプロセッサは、局所的物理属性を測定し、そして短距離送受信機を介して測定された物理属性を1つ以上のピア通信装置と共有するように構成される。さらに他の実施形態ではプロセッサは、1つ以上のピア通信装置からそれぞれの局所的物理属性を受信し、1つ以上の属性から1つの共通属性を導出し、そして共通属性をBSに結合されるサーバに長距離送受信機を介して報告する、ように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、通信装置は、1つのターゲット通信装置を宛先とする1つのファームウェアイメージの異なる各部分、またはファームウェアイメージの全体をBSから受信する、1つ以上の通信装置を含む1つのグループに属し、ここにおいてプロセッサは、BSからファームウェアイメージの各部分またはファームウェアイメージの全体を受信し、そして受信したファームウェアイメージの部分またはファームウェアイメージの全体を短距離ネットワーク上でターゲット通信装置に送信するように構成される。他の実施形態ではプロセッサは、セルラーネットワークにおいてアクティブ化されていない、またはオンボードされていない1つ以上のピア通信装置に代わって、長距離送受信機を介してBSとメッセージを通信するように構成される。
【0015】
本明細書に記載される実施形態によれば、さらに通信の方法であって、セルラーネットワークの基地局(BS)と無線通信するための長距離送受信機を備え、短距離ネットワーク上で1つ以上のピア通信装置と無線通信するための短距離送受信機をさらに備える通信装置において、短距離送受信機を介して1つ以上のピア通信装置と通信し、長距離送受信機を介してBSと通信し、それにより通信装置と1つ以上のピア通信装置またはセルラーネットワークとの間でリソースを共有して、通信サービスを提供するステップを有する、ことを特徴とする通信の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これらおよび他の実施形態は、図面と併せて、その実施形態の以下の詳細な記載からより完全に理解されるであろう:
図1】本明細書に記載される一実施形態による、無線装置が長距離(LR)ネットワーク上で通信する際に短距離(SR)ネットワーク上で協働する通信システムを概略的に示すブロック図である。
図2】本明細書に記載される実施形態による、LRネットワークにアクセスする際にLR送受信機リソースを共有するために、SRネットワーク上で協働する無線装置を概略的に示す図である。
図3】本明細書に記載される一実施形態による、アップリンク送信においてLR送受信機リソースを共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】本明細書に記載される一実施形態による、ダウンリンク送信においてLR送受信機リソースを共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
図5】本明細書に記載される一実施形態による、協働ページングの方法を概略的に示すフローチャートである。
図6】本明細書に記載される一実施形態による、SRネットワーク上で測定値、BS制御メッセージ、および他のセル(再)選択情報、を共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
図7】本明細書に記載される一実施形態による、LRネットワーク時間ベースに同期することによる効率的なSR装置探索のための方法を概略的に示すフローチャートである。
図8】本明細書に記載される一実施形態による、SRネットワーク上で位置および他の物理情報を共有する方法を概略的に示すフローチャートである。そして
図9】本明細書に記載される一実施形態による、干渉を回避するためのSRネットワークおよびLRネットワーク上の時間調整通信のための方法を概略的に示すフローチャートである。
【0017】
本明細書で記載される実施形態は、長距離ネットワークと短距離ネットワークの両方で動作する無線装置間での協働およびリソース共有のための方法およびシステムを提供する。
【0018】
記載された実施形態では、無線装置は、例えばLTEなどの長距離セルラーネットワーク標準に従った通信のための長距離送受信機、およびたとえば、ブルートゥ―ス(登録商標)、Wi-Fi、ZigBeeなどの短距離ネットワーク標準に従った通信のための短距離送受信機を装備している。
【0019】
原則として、無線装置は、他の近隣無線装置とは無関係に、長距離ネットワーク上で通信できる。しかし、以下で詳細に説明するように、短距離ネットワーク上での協働により、無線装置はリソースを共有して、セルラーネットワークのカバレッジ、無線装置のバッテリー使用、セルラーネットワークの利用および通信コストの削減などのさまざまな側面でパフォーマンスを向上させることができる。複数の無線装置が協働し、そしてリソースを共有する実施形態の例が以下に記載される。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の無線装置は、アップリンクおよびダウンリンク送信で送受信機リソースを共有するために短距離ネットワーク上で協働する。これらの実施形態では、無線装置は、1つ以上のピア無線装置の長距離送受信機リソースを使用する。ピア無線装置は、無線装置に代わって、セルラーネットワークとの間でデータを送受信するゲートウェイ装置として機能する。これは、たとえば、無線装置がBS(基地局)と低品質のチャネルを持っているか、または、たとえばバッテリーレベルが低いために無線装置の電力消費を減らすため、または通信コストを削減するためにセルラーネットワークに接続できない場合に有用である。
【0021】
アップリンク方向では、無線装置は複数のビットと、短距離ネットワーク上でゲートウェイ装置にビットを送信するための長距離送受信機パラメータを指定するメタデータと、を送信する。ゲートウェイ装置は、長距離送受信機にビットを注入し、メタデータ内のパラメータを適用することにより、無線装置に代わって、ビットをセルラーネットワークに送信する。別の実施形態では、無線装置の長距離送受信機のベースバンドモジュールは、複数のビットを処理して変調ビットを生成する。無線装置は、短距離ネットワーク上でゲートウェイ装置に変調ビットを送信し、ゲートウェイ装置は、無線装置に代わって、セルラーネットワークへの送信用に、長距離送受信機の処理チェーン内の関連ポイントに変調ビットを注入する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ベースバンド処理は、任意の適切な方法で無線装置とゲートウェイ装置との間で分割され得る。そのような実施形態では、無線装置は、ベースバンド処理チェーン内の特定のポイントまで入力ビットを処理し、短距離ネットワーク上でゲートウェイ装置に処理されたビットを送信する。ゲートウェイ装置は、ベースバンド処理を完了してビットに対応するシンボルを生成し、そのシンボルをセルラーネットワークに送信する。セルラーネットワークの構成要素は、無線装置とゲートウェイ装置の間でベースバンドおよびその他の長距離処理を分割していることを認識していない。
【0023】
ダウンリンク方向では、ゲートウェイ装置として機能する1つ以上のピア無線装置が、無線装置宛てのダウンリンクメッセージをセルラーネットワークから同時に受信する。次いで、各ゲートウェイ装置は、例えば、無線装置によって事前に提供される、必要な復号化を指定するメタデータに基づいて、受信したダウンリンクメッセージを復号化し、短距離ネットワーク上で無線装置に復号されたメッセージを送信する。無線装置は、復号されたメッセージを組み合わせて、ダウンリンクメッセージを高い信頼性で復元する。代替実施形態では、ゲートウェイ装置は、復号化することなくダウンリンクメッセージを無線装置に送信する。
【0024】
いくつかの実施形態では、ゲートウェイ装置を介したデータの受信は、複数の無線装置のファームウェアイメージの更新に使用される。ファームウェアの更新タスクは通常、かなりの電力を消費し、大量のセルラーネットワークリソースを消費し、通信コストが高くなる。これらの実施形態では、ゲートウェイ装置は、セルラーネットワークから更新されたファームウェアイメージを受信し、短距離ネットワーク上でピア無線装置にファームウェアイメージを配布し、したがって、ピア無線装置のバッテリー電力消費を節約する。いくつかの実施形態では、複数のゲートウェイ装置がファームウェアイメージの異なる部分をダウンロードする。ゲートウェイ装置は、ファームウェアイメージの部分を交換して完全なファームウェアイメージを回復し、回復したファームウェアイメージを、短距離ネットワーク上で無線装置に送信する。あるいは、ゲートウェイ装置は、短距離ネットワーク上でファームウェアイメージの部分を無線装置に送信し、無線装置はファームウェアイメージの部分からファームウェアイメージを復元する。
【0025】
いくつかの実施形態では、無線装置は、複数のゲートウェイ装置を介してセルラーネットワークのアップリンクおよびダウンリンクメッセージと通信し、(i)全体の送信電力を増加させ、(ii)アンテナダイバーシティを増加させることによりパフォーマンスを改善する。
【0026】
いくつかの実施形態では、複数の無線装置のグループが1つまたは複数のゲートウェイ装置を相互に選択するため、短距離ネットワーク上で通信する。ゲートウェイ装置の選択は、たとえば、BS(基地局)のチャネル品質、バッテリーレベル、セルラーネットワークでの通信コスト、アプリケーションの考慮事項など、さまざまな基準に依存する場合がある。アプリケーションの考慮事項とは、送信用のデータを持っている無線装置が他の無線装置と協働してデータを送信することを意味する。たとえば、ゲートウェイ装置は、LRネットワークへの接続確立に起因する送信パケットヘッダーの数とオーバーヘッドを削減するために、1つまたは複数のピア無線装置から短距離ネットワーク経由で受信した複数のパケットを送信のために集約できる。
【0027】
いくつかの実施形態では、相互認証を実行し、セキュアな短距離通信を確立するために、複数の無線装置が短距離ネットワーク上で通信する。この目的のために、無線装置は、長距離へのアクセスに必要なルートオブトラスト長距離キーに加えて、それぞれが短距離通信を保護するためのルートオブトラスト短距離キーをそれぞれ秘密に保管するそれぞれのセキュア要素を備えている。無線装置は、セキュアな短距離ネットワーク上で通信して、データおよび制御メッセージをセキュアに交換できる。いくつかの実施形態では、無線装置は、セキュアな短距離ネットワーク上で、1つまたは複数のアイデンティティ(ID)および1つまたは複数の長距離キーをピア無線装置と共有する。ピア無線装置は、共有されたIDと長距離キーを使用して、無線装置に代わってセルラーネットワークにアクセスする。
【0028】
一実施形態では、複数の無線装置が協働ページングを実行する。この実施形態では、1つ以上のピア無線装置は、バッテリー電力を低減するためにアイドルモードのままである別の無線装置宛てのページングメッセージを聞く。ピア無線装置は定期的に起動し、他の無線装置宛てのページングメッセージを検出すると、短距離ネットワーク上で無線装置にページングメッセージを送信する。いくつかの実施形態では、起動すると、ピア無線装置は、他の無線装置に代わって、チャネル品質測定、隣接セル測定、ブロードキャストメッセージ受信、およびセル(再)選択タスクを実行する。ピア無線装置は、短距離ネットワーク上で他の無線装置に、上記のタスクに関連する更新された情報を送信する。
【0029】
いくつかの実施形態では、2つ以上の無線装置は、セルラーネットワークの時間ベースに同期する(例えば、LTEではシステムフレーム番号-SFNに)。一実施形態では、無線装置は、共通の時間ベースを使用して、同期された近隣探索で使用される時間期間を決定する。この実施形態では、時間ベースに従って、ある無線装置が所定のタイムスロットでビーコン信号を送信し、別の無線装置が同じ時間帯にビーコン信号をスキャンすることにより、電力消費と探索待ち時間を削減する。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数の無線装置が協働して、短距離ネットワークとセルラーネットワークの両方を介した同時通信によって引き起こされる干渉を低減する。これらの実施形態では、セルラーネットワーク上で通信が期待されない時間ギャップの情報は、無線装置間の短距離ネットワーク上で配信される。その後、無線装置は、短距離ネットワークでの送信を、報告された時間ギャップに制限する。別の実施形態では、無線装置は、ゲートウェイ装置が短距離ネットワーク上で通信できない(長距離伝送のため)ことを通知(または推測)し、低電力「リスニング」モードに入る。ゲートウェイ装置は、長距離送信内のアイドル期間を使用して、短距離ネットワーク上で無線装置と通信する。
【0031】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の無線装置は、それぞれの地理的位置、および場合によっては温度や湿度などの他の環境物理情報を測定するように構成される。これらの実施形態では、無線装置のグループは、グループ全体に代わって、位置情報および環境属性を取得するための1つまたは複数の無線装置を、短距離ネットワーク上で、相互に選択する。選択された無線装置は、位置情報と環境属性を取得し、それらを短距離ネットワーク上でグループ内の他の無線装置と共有する。グループ内の1つ以上の無線装置は、セルラーネットワーク上で遠隔サーバに位置情報と環境属性を報告できる。いくつかの実施形態では、選択された無線装置は、推定精度を高めるために組み合わされる位置情報と環境属性を共有する。
【0032】
開示された技術では、無線装置は、セルラーネットワークの要素との明示的な調整なしに、ハードウェアリソースとセルラーネットワークリソースを共有するために協働する。さらに、無線装置間の協働は、無線装置のエンドユーザが関与することなく自動的に行われる。協働とリソース共有は、セルラーネットワークのカバレッジと使用、バッテリー電力と寿命、無線ネットワーク間の干渉の低減、短距離装置検出レイテンシ、通信コスト、および位置や環境属性などの取得されたメトリックの改善の点で有利である。
【0033】
(システムの記述)
図1は、本明細書で記載される実施形態による、無線装置が長距離(LR)ネットワーク上で通信する際に短距離(SR)ネットワーク上で協働する通信システム20を概略的に示すブロック図である。
【0034】
通信システム20において、無線装置24は、SR通信ネットワーク28上で互いに通信し、LR通信ネットワーク32上で遠隔要素と通信する。SRネットワークは、例えば、ブルートゥース(登録商標)、Wi-FiまたはZigBee標準に従って動作する。LRネットワークは、例えば、3GPPロングタームエボリューション(LTE)または5G標準に従って動作するセルラー通信ネットワークからなる。無線装置24は、「ユーザ機器」(UE)とも呼ばれ、これは、一般的にエンドユーザ装置用のLTEで使用される用語である。以下の説明では、「無線装置」と「UE」という用語は同じ意味で使用される。
【0035】
図1の例では、UE1・・・UE5で示される無線装置24は、SRネットワーク上で互いに通信できるように、小さな地理的エリア内にあると想定されている。SRネットワークのカバレッジエリアは、点線28で示されている。SRネットワークを介した2つのUE間の通信リンクは、本明細書では「SRリンク」または「直接リンク」とも呼ばれる。
【0036】
無線装置24は、例えば、ポイントツーポイント、ポイントツーマルチポイントおよびホップバイホップ送信などの任意の適切な接続方法を使用して、SRネットワーク上で他の無線装置と通信できることに留意されたい。短距離ネットワークは、たとえば、メッシュ、スター、およびクラスターツリートポロジなどの適切なトポロジで構成されうる。
【0037】
LRネットワークは通常、BS36などの複数の基地局(BS)で構成され、これらが一緒になって広い地理的エリアをカバーする。図1の例では、UE1とUE2はBS36のカバレッジエリア(点線32で表示)内にあるため、BS36を介してセルラーネットワークにアクセスできる。対照的に、UE3・・・UE5はBSのカバレッジエリア外にある。以下で詳細に説明するように、UE3・・・UE5などの無線装置は、セルラーネットワークへのゲートウェイ装置として機能するUE1および/またはUE2を使用して、セルラーネットワークに間接的にアクセスできる。
【0038】
通信システム20は、サーバ44およびBS36が結合されるパケットネットワーク40をさらに備える。カバレッジ内の無線装置は、BS36のものであり、例えば、UE1は、BS36と無線で通信し、パケットネットワーク40上でサーバ44と通信することができる。パケットネットワーク40は、任意の適切なプロトコルを使用して動作する任意の適切なパケットネットワーク、例えば、イーサネット(登録商標)またはIPネットワーク、を含むことができる。いくつかの実施形態では、パケットネットワーク40はインターネットへのアクセスを提供する。以下の説明では一般的に、パケットネットワーク40は、セルラーネットワークのコアネットワークおよびインターネットの両方を含むと仮定されている。
【0039】
通信システム20は、さまざまなアプリケーションで使用できる。例えば、無線装置24は、モノのインターネット(IoT)装置などの低コスト装置を含むことができ、これは、計量、物流、スマートホーム、交通管理、スマートグリッド、および他の多くの産業および商業アプリケーションなどの用途で使用され得る。
【0040】
図1の差込図48は、無線装置(UE)24の例示的な内部構造のブロック図を示す。この例では、無線装置24は、BS36と通信するための長距離(LR)送受信機52および、SRネットワーク28上で近くの他の無線装置24と通信するための短距離(SR)送受信機56からなる。
【0041】
無線装置24は、1つまたは複数のソフトウェアプログラムおよび/またはアプリケーションプログラム62を実行するプロセッサ60、メモリ64、およびセキュア要素(SE)68をさらに備える。プロセッサ60は、メモリ64、SE68、LR送受信機52およびSR送受信機56に結合される。あるいは、プロセッサ60は、専用インタフェース(不図示)を使用してLR送受信機52およびSR送受信機56に結合されてもよい。メモリ64は、通常、プログラムコードおよび、例えばアプリケーションプログラム62によって使用される一時情報などのプロセッサ60に関する情報を格納する。いくつかの実施形態では、メモリ64は、LR送受信機52およびSR送受信機56に関する情報をさらに格納する。
【0042】
セキュア要素(SE)68は、無線装置24のさまざまなセキュリティタスクを処理する。たとえば、SE68は、LRネットワーク32にアクセスしてサービスを提供されるために必要な、資格情報と識別情報を格納できる。幾つかの実施形態では、SE68は暗号化エンジン(不図示)を有し、それをプロセッサ60が、暗号化/復号化およびキー生成のために、同様のSEを備えた他のUEを認証するためのコプロセッサとして使用してもよい。一部の実施形態では、SE68は、機密アプリケーションをセキュアに実行するプロセッサ(不図示)を含む。SE68のプロセッサは、SRネットワークを介したセキュアな通信の確立に参加することができる。いくつかの実施形態では、SE68は、無線装置24の加入者認証モジュール(SIM)カード内に埋め込まれている。SIMカードの機能は、LRネットワークにアクセスするために必要である。いくつかの実施形態では、物理的SIMカードはSE68の外部に存在し、SE68にSIMカード機能を提供する。あるいは、SE68は、少なくともプロセッサ60とメモリ64を含むシステムオンチップ(SOC)の一部である。以下に詳細に説明するように、SE68はLRネットワーク(つまり、SE68がSIMカードの機能を実行する)とSRネットワーク上の無線装置(認証とセキュリティに依存する)の両方に接続するために使用できる。
【0043】
LR送受信機52は、ベースバンド(BB)モジュール76、デジタルフロントエンド(FE)78、およびアンテナ82(または複数のアンテナ82)に結合された無線周波数-フロントエンド(RF-FE)モジュール80を含む。いくつかの実施形態では、BB76は、媒体アクセス制御(MAC)層および物理(PHY)層を実装する。一実施形態では、BB76は、「無線リンク制御」(RLC)層または「無線リソース制御」(RRC)層などの上位層(MACおよびPHY層よりも上位)も実装する。他のタスクの中でも、MAC層は、LRネットワークの時間および周波数リソースを効率的に利用するために、物理的伝送媒体へのアクセスを制御する。PHY層は通常、受信機でのエラー訂正のコード化/復号、ビットとシンボル間の変調/復調、信号の等化と同期などを処理する。
【0044】
アップリンク方向では、BB76はバス72を介してプロセッサ60から送信用のビットを受信する。BB76はビットを処理および変調して、いくつかの変調方式に従ってそれぞれのシンボルを生成する。デジタルFE78は、変調されたシンボルをサンプリングされた時間信号に変換し、送信のために時間信号をフィルタリングおよび整形する。D/Aコンバーター(DAC-不図示)は、時間信号をアナログ信号に変換する。DACは、デジタルFEとRF-FEの間のアナログフロントエンド(AFE)モジュールに含めることができる。
【0045】
RF-FE80は、別々のRFおよびFEモジュールを使用して実装できる。RFモジュールは、アナログ信号をLRネットワーク用に指定された関連RF帯域にアップコンバートし、アップコンバートされた信号を増幅する(たとえば、パワーアンプを使用して(不図示))。FEモジュールは、アンテナ82を介してBS36に送信するために増幅信号をインタフェースする。ダウンリンク方向では、FEモジュールRF-FE80は、アンテナ36を介してBS36からRF信号を受信し、RF信号をRFモジュールにインタフェースする。RFモジュールは、たとえば低雑音増幅器(LNA)(不図示)を使用してRF信号を増幅し、RF信号をベースバンドにダウンコンバートする。受信したRF信号は、シンボルに変調されたビットを搬送する。アナログ-デジタルコンバーター(ADC-不図示)は、ダウンコンバートされた信号をデジタルサンプリング信号に変換し、デジタルFE78はデジタル信号をフィルター処理してシンボルを復元する。BB76は、基礎となる変調方式に従ってシンボルを復調してビットを回復し、エラー訂正復号化技術を適用して受信メッセージ内の誤りビットを訂正し、バス72を介して復号化されたメッセージをプロセッサ60に送信する。
【0046】
SR送受信機56は、基礎となるSRネットワーク規格、例えばブルートゥース(登録商標)に従って動作する。送信方向において、SR送受信機56は、バス72を介してプロセッサ60から送信用のビットを受信し、デジタルおよびアナログ領域のビットを処理してビットを運ぶRF信号を生成し、アンテナ84を介してRF信号を送信する。SR送受信機56は、アンテナ84を介して、近隣の無線装置のSR送受信機によって送信されたRF信号を受信する。SR送受信機56は、アナログおよびデジタル領域で受信されたRF信号を処理して、隣接する無線装置によって送信されたビットを回復し、バス72を介して回復されたビットをプロセッサ60に送信する。一実施形態では、回復されたビットは直接LR送受信機52に送られうる。
【0047】
図1のSRネットワーク28、LRネットワーク32、および無線装置24を含む通信システム20の構成は、例として与えられており、これらは純粋に概念を明確にするために選択されている。代替実施形態では、他の適切な通信システム、SRネットワーク、LRネットワーク、および無線装置の構成も使用することができる。
【0048】
プロセッサ60と、LR送受信機52およびSR送受信機56のデジタル部分との間の機能の分割は、図1に示す分割とは異なる場合がある。例えば、プロセッサ60は、BB76、デジタルFE78および/またはSR送受信機56のデジタル部分の少なくとも一部を実装できる。
【0049】
BB60、デジタルFE78、およびRF-FE80を含むプロセッサ60、SR送受信機56、およびLR送受信機52などの無線装置24のいくつかの要素は、ハードウェア、たとえば1つまたは複数のRFIC、アプリケーション特定集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に実装されてもよい。追加または代替として、無線装置24のいくつかの要素は、ソフトウェアを使用して、またはハードウェア要素とソフトウェア要素の組み合わせを使用して実装することができる。
【0050】
図1に示される例示的な無線装置構成では、プロセッサ60、メモリ64、SE68、LR送受信機52およびSR送受信機56は、別個の集積回路(IC)として実装される。しかしながら、代替実施形態では、プロセッサ60、メモリ64、SE68、LR送受信機52およびSR送受信機56は、単一のマルチチップパッケージ(MCP)またはシステムオンチップ(SoC)内の別個の半導体ダイに統合されてもよく、そして内部バス72によって相互接続されうる。あるいは、プロセッサ60、メモリ64、SE68、LR送受信機52およびSR送受信機56のICへの他の分配も使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、無線装置24の機能のいくつかは、汎用プロセッサ、たとえばプロセッサ60、BB76などのLR送受信機52のデジタル部分およびデジタルFE78の一部を実装するプロセッサ、および/またはSR送受信機56のデジタル部分を実装するプロセッサ、によって実行されてもよい。プロセッサは、本明細書に記載される機能を実行するためにソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、たとえばネットワーク上で電子形式で関連するプロセッサにダウンロードするか、または代替的または追加的に、磁気、光学、または電子メモリなどの非一過性有形媒体に提供および/または保管することができる。
【0052】
メモリ64は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体、または異なるそれぞれの技術の2つ以上のメモリ装置の組み合わせなど、任意の適切なタイプのメモリを備えてもよい。
【0053】
さまざまなインタフェース、アドレス指定回路、タイミングおよび順序付け回路、およびデバッグ回路など、本開示の原理を理解するために必要ではない要素は、明確化のため図から省略されている。
【0054】
(短距離ネットワーク上のピア無線機器の送受信機を介した長距離ネットワークへのアクセス)
図2は、本明細書に記載される実施形態による、LRネットワーク32にアクセスする際にLR送受信機リソースを共有するために、SRネットワーク28上で協働する無線装置24を概略的に示す図である。
【0055】
図2では、UE2・・・UEnで示される複数の無線装置24は、UE1で示される別の無線装置とLR送受信機リソースを共有する。UE1・・・ UEnは、SRネットワーク28上で互いに通信できるように、小さな地理的エリア内にあると想定される。図2の例では、UE1はSRネットワーク上でUE2・・・UEnのいずれかと直接通信できる(マルチホップ通信とは対照的)。
【0056】
以下で記載される実施形態では、SRネットワークを介したUEの通信はプロセッサ60によって実行される。しかし、これは必須ではなく、代替実施形態では、UEの他の要素がSR通信を処理してもよい。例えば、各ベースバンド(BB)モジュール76は、他のタスクの中でもとりわけSR通信を処理するプロセッサを備えてもよい。本文脈および特許請求の範囲において、「プロセッサ」という用語は、SR通信を処理するプロセッサ60、SR通信を処理するBB76内のプロセッサ、またはプロセッサ60とBB76内のプロセッサ間のSR通信の適切な分割を意味する。
【0057】
本例では、UE1は複数のビットをBS36に送信する必要がある。複数のビットは、パケットまたは任意の他の適切なデータユニットを含み得る。ビットは、例えば、UE1のプロセッサ60A上で実行されるアプリケーションプログラム62Aにより発生し得る。いくつかの実施形態では、UE1は、自身のLR送受信機52Aを介してパケットビットを送信する代わりに、UE2・・・UEnの中の別の無線装置のLR送受信機(または各無線装置の複数のLR送受信機)を介して送信するためにSRネットワーク上でパケットビットを送信する。
【0058】
いくつかの実施形態では、異なるそれぞれのUEのプロセッサ60は、SRネットワーク28上で互いに通信する。例えば、UE1のプロセッサ60Aは、SR送受信機56Aを使用して、UE2のSR送受信機56Bを介して、UE2のプロセッサ60Bと通信し、そしてUEnのSR送受信機56Nを介してUEnのプロセッサ60Nと通信し得る。
【0059】
図2の点線90、92、および94は、本明細書で説明するように、UE1・・・UEnがSRネットワーク上で情報を交換する際に使用できる論理パスを表す。
【0060】
点線90は、SRネットワーク28上のUE1・・・UEn間のセキュアな通信を表す。いくつかの実施形態では、各無線装置UE1・・・UEnのプロセッサ60A・・・60Nは、それぞれのSE68A・・・68Nを使用して、任意の適切な方法とプロトコルを適用することにより、SRネットワーク上の相互セキュア通信を確立することができる。他の実施形態では、あるUEのプロセッサ、例えば、UE1のプロセッサ60Aは、他の無線装置の1つ以上のプロセッサ60(例えば、UE2・・・UEnのプロセッサ60B・・・60N)と、それぞれのSE 68B・・・68Nを使用してSRネットワーク上でセキュアな通信を確立する。
【0061】
点線92は、UE1のプロセッサ60Aがパケットビットなどの情報をSRネットワーク上で送信し、それぞれの無線装置UE2・・・UEnの1つまたは複数のLR送受信機52B・・・52Nを使用して送信するために使用できる経路を表す。そのような実施形態では、ピア無線装置UE2・・・UEnのプロセッサ60B・・・60Nの中の1つのプロセッサは、SRネットワーク上、例えばUE2のプロセッサ60Bで、UE1からのパケットビットを受信し、パケットビットをLR送受信機52BのBB 76Bに注入することにより、UE1に代わってBS36にパケットビットを送信する。一実施形態では、UE1のプロセッサ60Aは、パケットビットとともに、ピアUEのLR送受信機がUE1のパケットビットを送信する際に使用すべきセットアップパラメータを指定するメタデータを、SRネットワーク上で送信する。メタデータは、変調および符号化方式(MCS)、周波数、タイミング、および/またはピアUEのLR送受信機を使用してパケットビットを送信するために必要なその他の適切な情報などの情報を含みうる。
【0062】
点線94は、UE1のプロセッサ60AがSRネットワーク上で変調ビット(たとえば、パケットビットからBB 76Aによって生成されたシンボル)を送信し、それぞれのピア無線装置UE2・・・UEnのLR送受信機52B・・・52Nの1つまたは複数を使用して送信するために使用できる経路を表す。そのような実施形態では、ピア無線装置UE2・・・UEnのプロセッサ60B・・・60Nのうちの1つのプロセッサ、例えばUE2のプロセッサ60Bは、UE1から変調ビットを受信し、UE2のLR送受信機52BのデジタルFE 78Bへ変調ビットを注入することにより、UE1に代わってBS36に変調ビットを送信する。この場合、UE1のBB 76Aは変調ビットを生成し、ピアUE2のBB 76Bでの処理はスキップされる。UE1は、ピアUEのSR送受信機に適用する送信時間、周波数、ゲインなどのパラメータを指定する、メタデータをSRネットワーク上で送信できる。
【0063】
UE1がBS36を介してセルラーネットワークに接続されている場合、BB 76AはBS36から送信パラメータを指定する情報を受信する。この場合、UE1のプロセッサ60Aは、SRネットワーク28上で、関連するメタデータを含むパケットビットをピア無線装置UE2・・・UEn(これらはLRネットワークに識別されない)に送信する。代替的にUE1のBB 76Aは変調ビットを生成し、そしてプロセッサ60AはSRネットワーク上で変調されたビットをピアUEに送信する。UE1はセルラーネットワークに対して識別されるため、BS36は、UE1のパケットビット(または変調ビット)を、1つのピアUEのLR送受信機を介して受信することを知らない。
【0064】
いくつかの実施形態では、UE1のプロセッサ60Aは、セキュアなSRネットワーク28上で、1つのピアUEのプロセッサ、例えばUE2のプロセッサ60Bと、機密情報(LRネットワークに関する)を共有する。一実施形態では、そのピアUEは、UE1に代わってBS36に接続するためにUE1の機密情報を使用する。たとえば、UE1がBSに接続すると、UE1は一時的なIDとキー(たとえば、LTEのキーアクセスセキュリティ管理エントリ(KASME)およびTMSI)をセキュアなSRネットワーク28上で1つのピアUEに送信できる。一時的なIDは、UE1のSIMカードによって始められたキー派生プロセスによって一般的に得られる。あるいは、UE1がBS36を介してセルラーネットワークに接続していない場合、別の無線装置、例えばUE2からの要求に応じて、UE1はピアUEのキーを生成し、それをセキュアSRネットワーク28上で送信する。この実施形態では、そのピアUEは、UE1に代わってセルラーネットワークを識別する。
【0065】
BSが送受信機リソースの共有を認識していないのと同様に、ここでもBSはUE1に代わってセルラーネットワークに識別されているピアUEを認識していない。
【0066】
一実施形態では、UE2は、UE1のIDおよびキーを使用して、UE1に代わってBS36に接続する。この実施形態では、UE1のプロセッサ60Aは、セキュアなSRネットワーク28上でUE2のプロセッサ60Bにパケットビットを送信し、UE2のプロセッサ60Bは、UE1に代わってLRネットワーク32上でBS36にパケットビットを送信する。BS36は、UE1のIDを使用して、UE1に代わってセルラーネットワークに接続するUE2を知らない。
【0067】
図2の例では、UE1は、BB 76Aによって生成されたパケットビットまたは変調ビットを、送信のために他のUEに送信する。代替実施形態では、ベースバンド処理は、例えば、UE1とUE2のBBモジュール間で分割されてもよい。この場合、UE1のBB 76Aは、シンボルを生成する前の特定の段階まで、パケットビットに対して部分ベースバンド処理を実行することにより、パケットビットを伝達する信号を生成する。UE2はSRネットワーク上でUE1から信号を受信し、BB処理を完了して(BB 76Bを使用して)シンボルを生成し、シンボルから送信信号を生成し、UE1に代わって送信信号をBSに送信する。
【0068】
UEが1つまたは複数の他のUEのLR送受信機リソースを使用してセルラーネットワークにアクセスする実施形態は、様々なシナリオで有利であり得る。例えば、BS36とのUE1の通信品質は、ピア無線装置UE2・・・UEnと比較して劣るかもしれず、またはUE1はセルラーネットワークへの接続に失敗するかもしれない。別の例として、UE1のバッテリーレベルが低い場合、UE1は、他のUEの送受信機リソースを使用してLRネットワークで通信することにより、電力消費を削減できる。さらに別の例として、UE1は通信コストを節約するために他のUEの送受信機リソースを使用できる(たとえば、UE1がLRネットワークオペレータにおいてアクティブ化されているが、しかしオンボードされていないままである場合、またはUE1がLRネットワークオペレータにおいてアクティブ化されていない場合)。
【0069】
図3は、本明細書に記載される一実施形態による、アップリンク送信でLR送受信機リソースを共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0070】
方法は、セキュアな通信確立ステップ100において、UE1・・・UEnで示される複数の無線装置24が、SRネットワーク28上で相互信頼通信を確立するステップで始まる。この目的のため、いくつかの実施形態では、各UE1・・・UEnのSE68は、本明細書では「ルートオブトラスト」または「ルートキー」と呼ばれる機密情報を保持する。SE68は、通常、SR通信をセキュアにするための短距離キーと、LRネットワークにアクセスするための別個の長距離キーを格納する。それぞれの無線装置UE1・・・UEnのプロセッサ60A・・・60Nは、初期のセキュアでないSRネットワーク28上で、適切なプロトコルに従ってメッセージを互いに通信し、短距離キーに基づいて相互信頼を確立する。ステップ100が終了すると、UE1・・・UEnは、今やセキュアなSRネットワークと考えられているSRネットワーク28上で互いにセキュアに通信することができる。UE1・・・UEnの中の所定の1つの無線装置の観点から見ると、その無線装置のプロセッサは、SRネットワーク上でのピア無線装置とのセキュアな通信を、各無線装置のSEを使用して確立するように構成される。
【0071】
ゲートウェイ選択ステップ104で、UE1・・・UEnは、BS36を介したLRネットワークへのゲートウェイ装置として機能する1つ以上のUEを、UE1・・・UEnの中から相互に選択するために、セキュアなSRネットワーク上で通信する。UE1・・・UEnの中の所定の1つのUEの観点から見ると、その所定のUEのプロセッサは、セルラーネットワークへのゲートウェイ装置として機能する所定のUEを相互に選択するため、ピアUEと、そのSR送受信機を介して通信するように構成される。ゲートウェイ装置を選択するプロセスは、例えば、アップリンク送信毎に1回、複数のアップリンク送信ごとに1回、または他の適切な時機に、時々実行され得る。
【0072】
本文脈では、「ゲートウェイ装置」という用語は、LRネットワーク上で通信し、そして、SRネットワーク上でそのゲートウェイ装置と通信する他の無線装置に対し、LRネットワークへのアクセスを提供する無線装置(たとえば、UE)を指す。ゲートウェイ装置を選択するための例示的な実施形態を以下に記載する。
【0073】
ゲートウェイへの送信ステップ108では、所定のUE(通常はゲートウェイ装置の1つではない)が、ステップ104で選択された1つ以上のゲートウェイ装置に、セキュアSRネットワーク上で、LRネットワークへの送信用のパケットビットと、図2を参照して上記で説明したLR送受信機セットアップの関連パラメータを特定するメタデータを送信する。
【0074】
送信ステップ112で、SRネットワーク上でパケットビットとメタデータを受信したゲートウェイ装置は、メタデータに基づいて適切な送信時間を決定し、メタデータに含まれるセットアップパラメータをそれぞれのLR送受信機52に適用することにより、所定のUEに代わってパケットビットをLRネットワークに送信する。ステップ112に続いて、方法は終了する。
【0075】
上記のステップ104で、UE1・・・UEnは任意の適切な基準を使用してゲートウェイ装置を選択できる。個別または組み合わせて使用できる選択基準の例を以下に示す:
・ラウンドロビン方式または適切な事前定義された順序などを使用して、決定論的順序で複数のUEからゲートウェイ装置を選択する。
・バッテリーレベル-バッテリーレベルが高いUEまたはバッテリーが充電されているUEは、ゲートウェイ装置として機能するのに適した候補である。
・カバレッジ条件-ゲートウェイ装置の選択は、BSとの通信品質に関連する基準に基づいている。このような基準の例には、受信信号強度インジケータ(RSSI)、基準信号受信電力(RSRP)、信号対干渉雑音比(SINR)、チャネル品質インジケータ(CQI)、またはBSチャネル品質の他の適切なインジケータが含まれる。
・データ接続性プラン-LRネットワークへの接続コストに基づいてゲートウェイ装置を選択する。
・モバイル(仮想)ネットワークオペレータM(V)NO-他のネットワークオペレータよりも高いレベルの接続パフォーマンスを提供するネットワークオペレータに関係するゲートウェイ装置を選択する(たとえば、選択したネットワークオペレータのネットワーク構成により高品質の通信が可能)。
・SRネットワークルーティングに関する考慮事項-SRリンク上での宛先無線装置へのホップ数に基づいてゲートウェイ装置を選択する。例えば無線装置間のSRリンクの変更などに応じて、ゲートウェイの再選択が必要になる場合があることに注意する必要がある。
・装置能力-候補ゲートウェイ装置の中で処理能力および/またはメモリの制約に基づいてゲートウェイ装置を選択する。
【0076】
いくつかの実施形態では、遠隔サーバ(例えば、サーバ44)は、上記の基準を使用してゲートウェイ装置を選択することに参加する。
【0077】
図3の方法を使用すると、所定のUEは、1つのゲートウェイ装置を介して、または複数のゲートウェイ装置を介して同時にLRネットワークにデータを送信できる。複数のゲートウェイ装置を介して同じデータを送信すると、アンテナダイバーシティにより全体の送信電力が増加するため、受信機側(BS36内の受信機など)での受信品質が向上する。
【0078】
複数のゲートウェイ装置が別のUEのアップリンク送信用に選択される実施形態では、マルチインマルチアウト(MIMO)通信で時々使用される巡回遅延ダイバーシティ(CDD)などの技術も使用できる。CCDを使用する場合、BS36は、複数のゲートウェイ装置からの送信の受信を認識しない場合がある。
【0079】
ダウンリンク方向では、一実施形態では、1つまたは複数のゲートウェイ装置は、BS36を介してLRネットワークから、所定のUE宛てのメッセージを受信し、SRネットワーク上で所定のUEにメッセージを送信する。以下で詳細を説明する。
【0080】
図4は、本明細書で説明される実施形態による、ダウンリンク送信においてLR送受信機リソースを共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0081】
この方法は、セキュアな通信確立ステップ120で、UE1・・・UEnがSRネットワーク28上で相互信頼通信を確立するステップで始まる。ステップ120は、本質的に上記図3のステップ100と同様である。
【0082】
ゲートウェイ選択ステップ124において、UE2・・・UEnは、セキュアなSRネットワーク上で通信することにより、UE2・・・UEnの中からUE1のゲートウェイ装置として機能する1つ以上のUEを相互に選択する。一部の実施形態では、ステップ124は、上記の図3のステップ104と同様であってもよい。識別子共有ステップ128で、UE1は1つまたは複数のIDと1つまたは複数のキー(LRネットワークへのアクセスに必要)を、セキュアなSRネットワーク経由で、選択されたゲートウェイ装置とセキュアに共有する。ゲートウェイ装置は、BSからUE1宛てのLRネットワーク制御メッセージを復号するためにUE1の識別子を使用する。例えば、LTEでは、そのような識別子は、とりわけ、一時的ID-一時的モバイル加入者ID(TMSI)および一時的キー(KASME-キーアクセスセキュリティ管理エントリ)を含むことができる。以下に説明するいくつかの実施形態では、BSによって送信される制御メッセージは、例えば、ページングメッセージ、およびシステム情報ブロードキャストメッセージを含み得る。
【0083】
受信ステップ132で、選択された複数のゲートウェイ装置は、UE1をターゲットとするダウンリンクメッセージをBS36から同時に受信する。メッセージ復号ステップ136で、ゲートウェイ装置のそれぞれ(またはいくつか)は、UE1の識別子を使用してダウンリンクメッセージをローカルで処理し、処理されたメッセージをセキュアなSRネットワーク上でUE1に送信する。いくつかの実施形態では、UE1は、SRネットワーク上で、ダウンリンクメッセージの必要な処理を指定するメタデータをゲートウェイ装置に提供する。メッセージ組合せステップ138で、UE1は、ゲートウェイ装置から受信した処理済みメッセージを組み合わせて、ダウンリンクメッセージを回復する。UE1は、エラーメッセージの確率を減らす適切な方法を使用して、処理されたメッセージを組み合わせることができる。たとえば、UE1は、複数の処理済みメッセージにソフト組合せまたは平均化方法を適用したり、複数の処理済みメッセージにビット単位の多数決を適用したりできる。ステップ138に続いて、方法は終了する。
【0084】
図4の方法では、ダウンリンクメッセージをUE1に中継するために複数のゲートウェイ装置が選択されると、アンテナダイバーシティと組合せ操作により、ダウンリンクメッセージが高い信頼性で回復される。1つのゲートウェイ装置の観点から見ると、そのゲートウェイ装置のプロセッサは、LR送受信機を介してBSからダウンリンクメッセージを受信し、SR送受信機を介してピア無線装置にダウンリンクメッセージを送信するように構成されている。代替実施形態では、図4の方法は、ダウンリンクメッセージをUE1に中継するための単一のゲートウェイ装置を選択することで実行され得る。
【0085】
一部の実施形態では、各UEは(LRネットワークにアクセスするために使用されるID(単数または複数)とは異なる)一意のアイデンティティ(ID)を有する。この一意のIDは、サーバとの間で転送されるメッセージ(適切なヘッダーフィールドなど)に埋め込まれる。LRネットワーク経由で受信したメッセージを復号できるゲートウェイ装置は、メッセージ内のIDフィールドを読み取り、メッセージが自分自身または別のターゲットUEのどちらに宛てられているかを確認する。後者の場合、ゲートウェイ装置はメッセージをSRネットワーク上でターゲットUEに送信する。
【0086】
図3図4の方法においては、アップリンクとダウンリンクの通信を別々に記載したが、いくつかの実装では、ゲートウェイ装置がアップリンクとダウンリンクの両方を処理する。そのような実施形態では、所定のUEは、LRネットワーク上のBSとSRネットワーク上のピア通信装置との間のメッセージの通信を協働で仲介するための1つ以上のゲートウェイ装置を、相互に選択する際に、SRネットワーク上でピアUEと通信する。
【0087】
(LRネットワークのページングとセル測定におけるリソースの共有)
LTEネットワークなどのいくつかのセルラーネットワークでは、電力消費を削減するために、無線装置がスリープモードまたはアイドルモードに入り、そして定期的に起動してBSからのページングメッセージをチェックする。いくつかの実施形態では、無線装置は、そのアイデンティティ(ID)に応じた時間間隔で定期的に起動する。たとえば、LTEでは、起動タイムスロットは、無線装置の国際移動体加入者識別番号(IMSI)またはセルラーネットワークによって無線装置に一時的に割り当てられた一時的移動体加入者識別番号(TMSI)に依存する。定期的な起動機能は通常、LR送受信機52のBB76内で動作する「無線リソース制御」(RRC)層により実装される。LTEでは、アイドルモードパラメータを決定するRRC層によってスリープモードが決定される。スリープモードは「不連続受信」(DRX)とも呼ばれる。
【0088】
無線装置は通常、スリープモードに比べて起動期間中にはるかに多くの電力を消費するため、セルラーネットワークがその無線装置宛てのページングメッセージを実際に受信する場合にのみ無線装置を起動することが有利である。いくつかの実施形態では、不必要な起動イベントを回避するために、1つ以上のUEは、スリープモードのままである他のUEに代わってページングメッセージを聞く。これらの実施形態では、ページングチャネルを聞くように選択されたUEは、これらのUE宛てのページングメッセージを検出した場合にのみページングメッセージを他のUEに報告する。
【0089】
図5は、本明細書で説明される実施形態による、協働ページングの方法を概略的に示すフローチャートである。
【0090】
方法は、アイデンティティ(ID)共有ステップ140で、UE1がセキュアなSRネットワーク上でそのアイデンティティ(たとえばLTEのIMSIまたはTMSI)をピア無線装置UE2・・・UEnとセキュアに共有するステップで始まる。さらにステップ140で、UE1はページングメッセージをチェックするために起動することを出来なくされ、スリープモードのままに留まる。起動ステップ132で、UE2・・・UEnはUE1宛てのページングメッセージをチェックするために定期的に起動する。一実施形態では、UE24のLR送受信機は、例えば、PHY/MAC/RRC層処理の一部として、周期的な起動機能を実施する。いくつかの実施形態では、UE2・・・UEnの中の無線装置は、それ自体のアイデンティティに依存する時間期間、およびUE1のアイデンティティに依存する時間期間に起動する。
【0091】
ページング受信ステップ144で、UE2・・・UEnが同時に起動する(UE1のために)。UE2・・・UEnのLR送受信機による、起動期間中のUE1宛てのページングメッセージの検出に応答して、LR送受信機はページングメッセージをそれぞれのプロセッサ60に送信する。ページング通知ステップ148で、各無線装置UE2・・・UEnのプロセッサ60は、SRネットワーク28上で、ページングメッセージをUE1のプロセッサ60に通知する。ページングメッセージを受信するUE1のプロセッサは、その起動期間に必要なタスクを実行するUE1のLR送受信機をまるでそれがそれ自体で目覚めたかのように起動する。ステップ148に続いて、方法は終了する。上記のダウンリンクメッセージを受信するのと同様に、ページングメッセージを受信する際の信頼性を向上させるために、アンテナダイバーシティおよび組合せ方法を使用してUEが連携する場合があることに注意されたい。
【0092】
いくつかの実施形態では、サーバ(例えば、サーバ44)は、UEのグループを同時にページングすることが要求される。そのような実施形態では、サーバは、グループ全体に代わってページングメッセージを聞くUEのサブグループを選択する。サブグループに属していないUEは、スリープモードのままである。定期的に起動してページングメッセージを検出するサブグループ内のUEは、ページングメッセージをグループ内の他のUEに通知する。
【0093】
いくつかの実施形態では、起動期間中に、無線装置24は様々な測定を実行し、場合によってはセルの選択および再選択に関連する決定を行うことができる。無線装置は、BS36でチャネル品質を監視し、他の隣接セルの送信電力を測定し、特定の条件(ネットワークで定義)が満たされたときにセル(再)選択手順を実行する。たとえば、隣接BSの信号強度が現在稼働中のセルの信号強度よりも事前に定義されたdB単位の数だけ高い場合、セルの再選択を決定する。
【0094】
セル再選択では、無線装置は通常、候補隣接セルからブロードキャスト情報、たとえば、マスター情報ブロック(MIB)およびシステム情報ブロック(SIB)メッセージを受信する。無線装置が、現在のセルのトラッキングエリア(TA)とは異なるTAに属する隣接セルを再選択する場合、それに応じて無線装置のTAを変更する必要がある。
【0095】
いくつかの実施形態では、以下で説明するように、複数の無線装置が測定を実行する際に協働し、メッセージの受信およびセル再選択手順を制御する。
【0096】
図6は、本明細書で説明する実施形態による、SRネットワーク上で測定値、BS制御メッセージ、および他のセル(再)選択情報を共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0097】
ページング受信のために起動するUEは、オプションで測定を実行し、BSからブロードキャスト制御メッセージを受信し、その起動期間にセル(再)選択を実行することに注意されたい。言い換えれば、通常、複数のUEの一部のみが起動し、測定、ブロードキャスト制御メッセージの受信、およびセル(再)選択を実行する。
【0098】
この方法は、サブグループ選択ステップ150で、UE1・・・UEnで示される無線装置のグループが、定期的に起動するこれらのUEのサブグループを相互に選択するためにSRネットワーク上で通信するステップで始まる。ステップ150で選択されなかったUE1・・・UEnの中のUEはスリープモードのままである。UE1・・・UEnは、さまざまな方法で、たとえばUE1・・・UEnのバッテリーレベルに基づいて、サブグループ内のUEを選択できるため、バッテリーレベルが高い、またはバッテリーの消耗までの時間が長いUEを他のUEよりも高い優先度で選択できる。あるいは、周期的に起動するUEの選択は、BSとのチャネル条件に基づいてもよく、または、例えばラウンドロビンアプローチを使用して、UEを連続的に選択してもよい。本方法のステップ150は、上記の図5の方法のステップ140の前に、予備ステップとして実行され得ることに留意されたい。図5の例では、UE2・・・UEnがすでに選択されていると仮定している。
【0099】
起動ステップ154で、サブグループ内の所定のUE(またはサブグループ内の複数のUE)が起動し、上述のように、測定、ブロードキャスト制御メッセージ受信、およびセル(再)選択手順を実行する。
【0100】
条件付き報告ステップ158では、更新された情報の取得に応答して、所定のUEは更新された情報をSRネットワーク上でUE1・・・UEn内の他のUEに送信する。例えば、所定のUEは、ステップ150でUEのサブグループで選択されなかったUE1・・・UEnのうちのUEに更新情報を送信する。更新情報は、(i)1つまたは複数の隣接セルが検知された、(ii)更新された測定値が得られた、(iii)セル(再)選択基準が満たされた、(iv)セル(再)選択が実行され、更新されたMIBおよびSIBが収集された、などの様々なイベントを示し得る。ステップ158に続いて、方法は終了する。
【0101】
図6の方法を使用すると、定期的に起動するように選択されていないUEのバッテリー使用量(バッテリーが消耗するまでの時間など)が改善される。これは、通常はかなりの量の電力を消費する測定およびセル(再)選択を実行するタスク(特にUEが移動している場合)がスキップされるためである。さらに、起動して隣接セルを検出したUEは、この情報をグループ内の他のUE(隣接セルの検出に失敗した可能性のあるUEを含む)と共有するため、隣接セルの誤検出の可能性が低くなる。図6の方法は、たとえば、参加しているUEが互いに近くにある場合(たとえば、1台のトラック内で出荷された多くのUE)、従って、同様のチャネル条件を経験し、同じセルを見る場合に有用である。
【0102】
(短距離ネットワーク上の装置の効率的な探索)
短距離通信をサポートする無線装置は、近隣探索手順を使用して相互に通信リンクを確立できる。ブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)などの低電力アドホックネットワークでは、1つの装置がビーコン信号を定期的に送信し、別の装置がビーコン信号を検出するために定期的にスキャンする探索スキームを使用できる。バッテリーの電力を節約するために、2つの装置は比較的長いデューティサイクルでビーコン信号を送信およびスキャンすることがある。これにより、検出レイテンシが増加する。
【0103】
図7は、本明細書で説明される実施形態による、LRネットワーク時間ベースに同期することによる効率的なSR装置探索のための方法を概略的に示すフローチャートである。
【0104】
この例では、LRネットワークはLTEネットワークおよび、LRネットワークの時間ベースに同期できると想定されるUE1とUE2で示される2つの無線装置を備えている。UE1とUE2は、同じLTEセルに属していても、異なるLTEセルに属していてもよい。
【0105】
この方法は、LRネットワークへの同期ステップ160で、UE1とUE2のそれぞれがLRネットワークの時間ベースに同期するステップから始まる。たとえば、UE1とUE2はBS36によってブロードキャストされるシステム情報ブロック(SIB)内のLTEシステムフレーム番号(SFN)と同期することができる。同じ時間ベースに同期することにより、UE1とUE2の両方が、以下で説明するように、装置検出のための1つの共通のタイミングパターンを決定する。一実施形態では、共通のタイミングパターンは、ビーコン信号を送信およびスキャンするための選択されたデューティサイクルの時間期間を指定する。たとえば、起動インスタンスはSFN +(時間オフセット)として決定される。UE1およびUE2は、例えば、セルIDなどのLTEネットワークのパラメータに基づいてタイミングパターンを決定してもよい。たとえば、起動インスタンスはSFN + f(セルID)で与えられる。ここで、f()はUEに既知の適切な関数である。この実施形態では、すべてのUEが同時に起動しないように、起動時間が分配される。
【0106】
変形実施形態では、LTE時間ベースに同期する代わりに、UE1およびUE2は、探索に使用される共通タイミングパターンを指定するメッセージをセルラーネットワーク経由で遠隔サーバ(たとえば、サーバ44)から受信する。
【0107】
探索ステップ164で、UE1とUE2はステップ160の共通タイミングパターンに基づいて同期探索手順を実行する。このため、共通タイミングパターンに基づいて、UE1はタイミングパターンで指定された時間間隔でビーコン信号を定期的に送信し、そしてUE2は、UE1がビーコン信号を送信するのと同じ時間間隔でビーコン信号を検出するために定期的にスキャンする。ステップ204に続いて、方法は終了する。
【0108】
いくつかの実施形態では、UE24は、近隣探索を実行するための複数の異なるタイミングパターンをサポートする。たとえば、UEは、前述のように、探索のためにセルラーネットワークの時間ベースに同期した時間期間を使用でき、さらに、短距離通信をサポートする装置を探索するためにセルラーの時間ベースに同期せずに、他の期間を使用できる。
【0109】
記載された方法を使用して、UEは、別のUEがビーコン信号を送信すると予想される期間のみビーコン信号を検出するためにスキャンする。したがって、この探索を適用するUEは、従来の非同期探索方法を使用するUEと比較して、消費電力を削減し、バッテリーを効率的に使用し、必要な探索待ち時間がより短い。
【0110】
(短距離ネットワーク上の無線装置の間の位置およびその他の情報の共有)
いくつかの実施形態では、無線装置24は、地理的位置の決定および報告をサポートする。いくつかの実施形態では、無線装置24は、地理的位置、温度および湿度などの局所的な物理的属性を測定するためのセンサー(不図示)を備える。無線装置24は、LRネットワーク32上でサーバ44にその地理的位置、および場合によっては他の測定された物理的属性を報告することができる。これは、例えば1台の車両内で一緒に出荷される物体の追跡に有用でありうる。
【0111】
本開示の文脈および特許請求の範囲において、「物理的属性」という用語は、例えば、地理的位置、温度および湿度を含む任意の適切な測定可能な物理的属性を指す。
【0112】
プロセッサ60は、様々な方法で無線装置24の地理的位置を決定してもよい。いくつかの実施形態では、無線装置は、衛星から送信された時間信号を使用して位置情報(経度、緯度、および高度)を決定し、位置情報をプロセッサ60に報告する全地球航法衛星システム(GNSS)受信機(不図示)を備える。他の実施形態では、無線装置のプロセッサは、複数の近くのWi-Fiホットスポットを含むWi-Fi測位システム(WPS)を使用してジオロケーション情報を取得する。あるいは、ブルートゥース(登録商標)v5.1仕様に従って、位置推定は、到来角(AoA)や出発角(AoD)などの方法に基づきうる。さらに他の実施形態では、観測到着時間差(OTDOA)法などのセルラーネットワークに関連する方法を使用することができる。
【0113】
図8は、本明細書で説明される実施形態による、SRネットワーク上で位置および他の物理情報を共有する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0114】
この方法は、サブグループ選択ステップ180で、UE1・・・UEnで示されるUE24のグループが、位置およびその他の物理情報を取得および追跡するために、SRネットワーク28上で、UEのサブグループを相互に選択するステップで始まる。代替的に、サーバ44はLRネットワーク上でUEに、サブグループ内の選択されたUEを指定する情報を送信する。物理情報には、温度や湿度などの環境属性が含まれる場合がある。
【0115】
サブグループ内のUEの選択は、任意の適切な方法を使用して、例えば、UEにおいて位置を測定する際の予想精度に基づいて、実行することができる。たとえば、GNSSでは、位置精度は通常、衛星から受信した信号のレベル、UEから見た衛星の数などに依存する。代替的または追加的に、バッテリーレベルなどの他の適切な選択基準も使用できる。
【0116】
共有ステップ184で、サブグループ内のUEは位置と環境情報(物理属性、たとえば温度)を取得し、これらのUEの各プロセッサ60はSRネットワーク上でUE1・・・UEnの中の他のそれぞれのUEのプロセッサ60とこの情報を共有する。報告ステップ188で、LRネットワークにアクセスするUE1・・・UEnのうちの1つ以上のUEのプロセッサ60は、BS36を介して位置および環境情報をサーバ44に報告する。ステップ184に続いて、方法は終了する。
【0117】
いくつかの実施形態では、位置推定の精度をさらに高めるために、複数のUEから収集された位置情報が組み合わされる。一実施形態では、位置情報の組合せは、UEのうちの1つによって実行される。代替的に、UEは未加工の(または部分的に処理された)位置情報を遠隔サーバに送信し、遠隔サーバは報告された複数の位置に基づいて正確な位置を決定する。
【0118】
位置情報の組合せは、同じタイプの位置テクノロジーの使用に限定されない。たとえば、BLE、OTDOA、SRネットワークおよびGNSS測定から抽出された情報から位置情報を融合し、SRネットワーク上でUEに配信できる。SRネットワーク上で抽出された情報は、例えば、UEのペア間の測定距離を含み得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、UE1・・・UEnは互いに近接して位置するため、温度や湿度などの同様の場所と同様の環境条件を持つ。たとえば、UEは1台の車両で出荷されるパッケージに取り付けられた低コストの無線装置を含む場合がある。いくつかの実施形態では、複数のUEが環境属性を局所的に測定し、複数のUEからの測定値を組合せするように協働して、上述の位置情報を組合せするのと同様に推定精度を改善する。いくつかの実施形態では、UEのグループ内のいくつかまたはすべてのUEに代わって、位置および物理属性を遠隔サーバ44に送信するために単一のUEが選択されてもよい。これは、通信コスト、ネットワーク負荷、バッテリー寿命の点で有益である。
【0120】
(協働的セキュリティ)
上述のように、無線装置24はそれぞれのSEを有し、それはSRネットワーク上で相互信頼を確立するために(例えば、無線装置24のプロセッサによって)使用可能である。上記のように、セキュアなSRネットワークは、無線装置間の短距離のセキュアな通信に役立ち得る。
【0121】
以下の説明では、LRネットワークにアクセスするために無線装置が使用するキーは「長距離キー」とも呼ばれ、SRネットワーク上でセキュアな通信を確立するために使用されるキーは「短距離キー」とも呼ばれる。
【0122】
いくつかの実施形態では、複数の無線装置24は、LRネットワークにアクセスするために無線装置によって従来使用される1つ以上のアイデンティティおよび1つ以上の長距離キー(LRネットワークに関する)をSRネットワーク上で共有する。たとえば、UE1はIDと長距離キーをセキュアSRネットワーク上でUE2に送信し、UE2はこの共有情報を使用して、UE1に代わってLRネットワーク上で通信する。LTEでは、このような共有情報にはKASMEとTMSIが含まれる場合がある。KASMEは、適切なキー派生プロセスを適用する加入者認証モジュール(SIM)カード機能によって生成されるiKキー(整合性保護に使用)およびcKキー(暗号化に使用)から派生する。
【0123】
UE1は、IDおよび長距離キーの生成を開始し、それらが必要になる前にセキュアSRネットワーク上で他のUEに送信する場合がある。あるいは、UE1は、他のUEがLRネットワークとの通信を確立する前に、例えば他のUEからIDおよび長距離キーを提供する要求を受信する。
【0124】
代替的に、UE1はSRネットワーク上で、GSM(登録商標)協会による遠隔SIMプロビジョニング(RSP)プロトコルなどの信頼できるプロトコルを使用して、LR通信のルートオブトラスト(長距離キー)とID(K、IMSIなど)を送信することができる。
【0125】
上記のようにIDと長距離キーを共有することは、さまざまな面で利点がある。たとえば、LRネットワーク上で通信するUE2は、UE1よりもBSと良好なチャネル状態を経験する可能性があるため、BS36と通信する際にUE1よりも消費電力が少なくなりうる。別の例として、UE2は、UE1のバッテリーレベルが低いか、バッテリーが消耗しそうな場合、UE1に代わってLRネットワーク上で通信する。1つのUEは、ダウンリンクブロードキャスト情報を受信するためのゲートウェイ装置として機能する複数のUEと長距離キーを共有することもできる。
【0126】
いくつかの実施形態では、無線装置24は、それぞれのSIMカードを起動することなく最初に展開される。これは、ルートオブトラスト(長距離)キーが無線装置のSIMカードとコアネットワーク、たとえばホーム加入者サーバ(HSS)の中に設定されているが、しかしSIMカードがアクティブ化されていないか、またはLRコアネットワークに搭載されていない、それは、無線装置はLRネットワークからサービスを受ける資格がないことを意味する。上記のように、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のUEは、他のUEのLRネットワークへのゲートウェイ装置として機能する。これらの実施形態では、LRネットワークにアクセスするUEのみがアクティブ化される必要がある。他のUEは非アクティブなままで、SRネットワーク上でゲートウェイ装置と通信することにより、間接的にLRネットワークにアクセスできる。一部のUEが非アクティブ化されたままなので、LRネットワーク上の接続コスト(SIMアクティブ化に関連する)が削減される。上記の選択的アクティベーションは、たとえば、スマートメーターなどの固定無線装置を展開する用途で使用できる。
【0127】
いくつかの実施形態では、無線装置24のプロセッサ60によって実行されるオペレーティングシステムまたは他の何らかのソフトウェアまたはアプリケーションを更新する必要がある。そのような更新は、LRネットワーク上で、ソフトウェアの更新されたファームウェアイメージを無線装置に送信することで実行できる。この種の更新プロセスは、「ファームウェア オーバー ザ エア」(FOTA)とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、ファームウェアイメージは、LRネットワーク上で送信される前に暗号化され、受信無線装置は、例えばセキュア要素(SE)68を使用して、インストールされるファームウェアイメージを解読する。ファームウェアイメージは、複数の無線装置に並行して送信され得る。ファームウェアイメージのサイズ(バイト単位など)が大きい場合、無線装置にイメージをダウンロードするのに長い時間がかかる場合があり、これは大量のバッテリー電力を消費する。
【0128】
いくつかの実施形態では、更新されたファームウェアイメージをダウンロードする際に複数のUEが協働する。一実施形態では、上述のように、UE1・・・UEnで示されるUE24のグループは、最初にSRネットワーク上で互いに通信して、SRネットワーク上でセキュアな通信を確立する。その後UE1・・・UEnは、セキュアなSRネットワーク上で通信し、UEのグループ全体(またはグループ内の幾つかのUE)に代わって、LRネットワーク上で更新されたファームウェアイメージを受信するためのゲートウェイ装置として機能する、そのグループ内の1つ以上のUEを相互に選択する。ゲートウェイ装置の選択は、UEのバッテリーレベルまたはUEが壁から給電されているか否か、BS36のチャネル状態、BSから受信した信号の信号対雑音比(SNR)などの任意の適切な基準に依存しうる。ゲートウェイ装置として機能するように選択されたUEは、BS36から更新されたファームウェアイメージを受信し、その更新されたイメージをセキュアSRネットワーク上でグループ内の他のUEに送信する。一実施形態では、各ゲートウェイ装置は、ファームウェアイメージの一部分のみをBSから受信し、SRネットワーク上で他のUEに送信する。すべての部分を受け取ったUEは、完全なファームウェアイメージを再構築する。いくつかの実施形態では、各ゲートウェイ装置は、受信されたファームウェアイメージ(またはその一部)をローカルで解読し、信頼確立フェーズ中にUEのグループに対して導出された暗号化キーを使用して、SRネットワーク上で送信するためにそれを再暗号化する。このような再暗号化スキームで使用される暗号化キーは、通常、LRネットワーク上でのダウンロード用にファームウェアイメージを暗号化するために使用される暗号化キーとは異なりうる。
【0129】
(複数の無線ネットワークの共存に関する問題)
無線装置は、複数の異なる無線ネットワーク上の同時通信による干渉を受ける可能性がある。例えば、無線装置24では、LR送受信機52を介したアップリンク高電力送信は、同じまたは別の無線装置のSR送受信機56の受信機部分(不図示)での受信を漏洩および遮断または妨害し得る。同様に、SR送受信機56を介した送信は、同じまたは別の無線装置のLR送受信機52の受信機部分に漏れる可能性がある。
【0130】
いくつかの実施形態では、LR送受信機52およびSR送受信機56は、他の送受信機の周波数または周波数帯域の送信をフィルタリングするように設計されたフィルターを含む。ただし、特定のタイプのIoT装置などの低コストの装置では、LR送受信機52とSR送受信機56の一方が送信し、他方の送受信機が同時に受信し、近い周波数を使用する場合、このようなフィルタリングは通常不十分である。
【0131】
いくつかの実施形態では、LRネットワークとSRネットワークの両方の上の同時通信による干渉を回避するために、SRおよびLRネットワーク上の通信に異なるタイムスロットを割り当てるために、時間領域多重化(TDM)アプローチが採用されている。基礎となるLRネットワークで使用される用語に依存して、タイムスロットは「タイムウィンドウ」、「フレーム」、「サブフレーム」などと呼ばれることもある。
【0132】
以下で説明するように、TDMアプローチの実装は、SRおよびLRネットワークの1つの通信プロトコルに従って通常存在する通信のギャップを利用することに依存することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、複数のUEがLRネットワークの共通時間ベースに同期し、TDMベースの動作のタイムスロットが共通時間ベースを使用して決定される。たとえば、LTEでは、共通の時間ベースはLTE システムフレーム番号(SFN)インデックスに関連する場合がある。
【0134】
図9は、本明細書で説明する実施形態による、干渉を回避するためのSRネットワークおよびLRネットワーク上での時間調整通信の方法を概略的に示すフローチャートである。
【0135】
方法は、同期ステップ190で、UE1・・・UEnで示されるUE24のグループがLRネットワークの共通時間ベースに同期するステップで始まる。例えば、LRネットワークにアクセスするグループ内のUEは、LRネットワーク時間に同期し、そしてグループ内の他のUEにSRネットワーク上で同期情報を送信する。LTEでは、時間ベースはLTE システムフレーム番号(SFN)に関連する場合がある。
【0136】
ギャップ決定ステップ192で、基礎となるLRネットワークプロトコルに従って、セルラーネットワーク上で無線通信が発生しない時間ギャップに関する情報が、SRネットワーク上のUE1・・・UEnに配信される。したがって、LR送受信機52によるこれらの時間ギャップ中の受信は予期されない。時間ギャップ情報に関する情報は、例えば、遠隔サーバ44により、またはグループ内のUEの1つにより提供され得る。たとえば、狭帯域モノのインターネット(NB-IoT)-LTE標準のサブセットに基づく低電力広域ネットワーク(LPWAN)無線技術では、いくつかのタイプのサブフレームギャップを使用できる。たとえば、I-DRXモードではスリープ時間を使用でき、C-DRXでは送信と受信の間の時間ギャップを使用できる。
【0137】
制限された送信ステップ194で、UE1・・・UEnは、ステップ192で報告された時間ギャップの間にのみSRネットワーク上で送信する。ステップ194に続いて、方法は終了する。
【0138】
いくつかの代替実施形態では、LRネットワークの時間ギャップに関する情報はUE間で配信されない。代わりに、UEはSRネットワーク上でデフォルトのリスニングモードに設定され、ゲートウェイ装置は、無線リソース制御(RRC)接続期間中に発生するLRネットワークのタイムギャップ(例えば、送信と受信の切り替えのギャップC-DRXなど)中にSRネットワーク上で他のUEと通信する。
【0139】
上記の実施形態は例として与えられており、他の適切な実施形態も使用することができる。例えば、上記の実施形態のいくつかにおいて、複数のUEは、SRネットワーク上で互いに通信することにより、例えば、相互にUEを選択するため、または他の何らかの決定を行うために協働する。代替実施形態では、UE選択または他の決定は、LRネットワーク上の遠隔サーバ(例えばサーバ44)により1つ以上のUEに提供され、SRネットワーク上の他のUEに配信される。
【0140】
上記の実施形態は例として引用されており、添付の特許請求の範囲は上記に特に示され記載されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだ当業者に想起される先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。本特許出願において参照により組み込まれた文書は、本出願の不可欠な部分とみなされるべきであり、また、これらの組み込まれた文書における用語の定義が本明細書において明示的または暗示的になされた定義と矛盾する場合は、本明細書の定義が優先される。
図1
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図9