(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2019059157
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-10-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】松川 直樹
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509044(JP,A)
【文献】特開平7-169592(JP,A)
【文献】特開2004-47172(JP,A)
【文献】特表2018-530893(JP,A)
【文献】特開平5-217693(JP,A)
【文献】特開2007-129268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H1/46
H05H1/30
H01L21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料ガスが導入され、内部にプラズマを発生するプラズマ管を備えるプラズマ発生装置であって、
前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、
前記プラズマ管には、外周面の全周に該プラズマ管の材料よりも熱伝導率の高い材料を含む伝熱膜が形成されており、
前記伝熱膜は、導電性を有する第1伝熱膜と、非導電性を有する第2伝熱膜とを備え、前記プラズマ管の外周面の全長に形成されており、
前記第2伝熱膜は、前記プラズマ管の前記コイルが巻回される部分に形成されている
プラズマ発生装置。
【請求項2】
材料ガスが導入され、内部にプラズマを発生するプラズマ管を備えるプラズマ発生装置であって、
前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、
前記プラズマ管の端部
の先端から前記コイルが巻回される部分までの間のみには、外周面の全周に前記プラズマ管の材料よりも熱伝導率の高い材料を含む伝熱膜が形成されている
プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記プラズマ管は、前記伝熱膜の外周に配設されたシール部材を備え、
前記伝熱膜は、前記シール部材の配設位置を含んで形成されている
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記プラズマ管の端部には冷却器が周設され、
前記伝熱膜は、前記冷却器の周設位置の少なくとも一部を含んで形成されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記第1伝熱膜には、周方向の一部に、長手方向に延びるスリットが形成されている
請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記プラズマ管の端部
の先端には、耐熱性および絶縁性を有する保護膜が、前記伝熱膜を周方向に覆うように形成されている
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプラズマ発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、プラズマを用いた半導体ウェハの成膜処理、エッチング処理等が行われている。プラズマは、例えば、材料ガスが導入され、内部にプラズマを発生するプラズマ管を備えるプラズマ発生装置を用いて生成される。プラズマ発生時、プラズマ管の内部は高温になる。そのため、プラズマ管の冷却が必要である。特許文献1には、プラズマ管に空冷用の金属線を螺旋状に巻付けることで冷却効果を高めたプラズマ発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ管の材料としては一般に石英が用いられるが、石英は熱伝導率が低い。このため、特許文献1のようにプラズマ管に金属線を巻付けて冷却する場合にあっては、金属線がプラズマ管に接触している部分の放熱は良好に行われるが、その他の部分の放熱は良好には行われない。従って、プラズマ管の全体を良好に冷却することができない。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プラズマ管全体を良好に冷却することができるプラズマ発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るプラズマ発生装置は、材料ガスが導入され、内部にプラズマを発生するプラズマ管を備えるプラズマ発生装置であって、前記プラズマ管の一部または全部には、外周面の全周に該プラズマ管の材料よりも熱伝導率の高い材料を含む伝熱膜が形成されている。
【0007】
本開示にあっては、プラズマ管の外周面に、プラズマ管よりも熱伝導率の高い材料製の伝熱膜が形成される。従って、プラズマ管の熱が、伝熱膜と周りの空気との熱交換によって放熱される。
【0008】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、前記伝熱膜の外周に配設されたシール部材を備え、前記伝熱膜は、前記シール部材の配設位置を含んで形成されている。
【0009】
本開示にあっては、プラズマ管はシール部材を備え、伝熱膜はプラズマ管とシール部材との間に形成されている。従って、シール部材が直接プラズマ管に接触せず、シール部材に熱が集中しない。
【0010】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管の端部には冷却器が周設され、前記伝熱膜は、前記冷却器の周設位置の少なくとも一部を含んで形成されている。
【0011】
本開示にあっては、プラズマ管の端部に冷却器を備え、伝熱膜は少なくとも冷却器に一部が接触する部分に形成されている。従って、プラズマ管の端部が、伝熱膜を通じて冷却される。
【0012】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、前記伝熱膜は、前記プラズマ管の端部から前記コイルが巻回される部分までの間に形成されている。
【0013】
本開示にあっては、伝熱膜が、プラズマ管の端部からコイルに接触しない部分までに形成されている。従って、プラズマ管の端部の熱が伝熱膜を通じて放熱される。また、コイルが巻回された部分には伝熱膜が形成されていない。従って、コイルと伝熱膜との間で放電がおこることを抑制する。
【0014】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、前記伝熱膜は、導電性を有し、前記プラズマ管の外周面の全長に形成されており、該プラズマ管の前記コイルが巻回される部分には、前記伝熱膜を覆う絶縁膜が形成されている。
【0015】
本開示にあっては、導電性を有する伝熱膜がプラズマ管の外周面の全長に形成されている。従って、コイルと冷却器との両方によりプラズマ管の全体が冷却される。さらに、プラズマ管のコイルが巻回される部分には、伝熱膜を覆う絶縁膜が形成されている。従って、コイルと伝熱膜との間で放電がおこることを抑制する。
【0016】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、前記伝熱膜は、導電性を有する第1伝熱膜と、非導電性を有する第2伝熱膜とを備え、前記プラズマ管の外周面の全長に形成されており、前記第2伝熱膜は、前記プラズマ管の前記コイルが巻回される部分に形成されている。
【0017】
本開示にあっては、導電性を有する伝熱膜と、非導電性を有する伝熱膜とが、プラズマ管の外周面の全長に形成されている。従って、コイルと冷却器との両方によりプラズマ管の全体が冷却される。さらに、プラズマ管のコイルが巻回される部分に形成されている伝熱膜は非導電部である。従って、コイルと伝熱膜の間で放電がおこることを抑制する。
【0018】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、前記伝熱膜は導電性を有し、該伝熱膜には、周方向の一部に、長手方向に延びるスリットが形成されている。
【0019】
本開示にあっては、プラズマ管の外周面に形成された導電性を有する伝熱膜の一部に、スリットを形成してある。従って、プラズマ管の周方向に伝熱膜が連続しない。
【0020】
本開示に係るプラズマ発生装置は、前記プラズマ管は、外周に巻回され、該プラズマ管の内部に磁界を形成するコイルを備え、該プラズマ管の端部には、耐熱性および絶縁性を有する保護膜が、前記伝熱膜を周方向に覆うように形成されている。
【0021】
本開示にあっては、プラズマ管の端部の伝熱膜を覆うように、耐熱性および絶縁性を有する保護膜が形成されている。従って、プラズマ管の端部の伝熱膜が保護される。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、プラズマ管の熱は、外周面に形成された伝熱膜の全面と周りの空気との熱交換で放熱され、プラズマ管全体を良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係るプラズマ発生装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】プラズマ発生装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】プラズマ管及びコイルの構成を示す斜視図である。
【
図4】プラズマ管の端部の接続状態を示す側断面図である。
【
図5】実施形態2に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管の端部の構成を示す側断面図である。
【
図6】実施形態3に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管の構成を示す側断面図である。
【
図7】実施形態4に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管の構成を示す側断面図である。
【
図8】実施形態5に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管の構成を示す斜視図である。
【
図9】実施形態6に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管の端部の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係るプラズマ発生装置の構成を示すブロック図である。実施形態1に係るプラズマ発生装置は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)型のプラズマ発生装置である。プラズマ発生装置は、プラズマ管1とコイル2とを備える。プラズマ管1は、例えば石英等の非導電性材料製の管であり、長さ方向の一端部に材料ガスの導入口1aを、他端部にプラズマ化したガスを送り出す送出口1bを備えている。コイル2は、例えば銅等の導電性材料製の導線を、プラズマ管1の長さ方向中央部に適長に亘って巻回して構成されており、インピーダンス整合回路4を介して高周波電源3に接続されている。
【0025】
このようなプラズマ発生装置では、高周波電源3から供給される高周波電流が、インピーダンス整合回路4を介して、プラズマ管1に巻回されたコイル2に流れる。プラズマ管1の内部は高真空に保たれており、導入口1aから内部に材料ガスが供給される。コイル2に流れる高周波電流による誘導結合によって、内部の材料ガスがプラズマ化し、プラズマが生成される。生成されたプラズマは、送出口1bを通して例えば図示しないプラズマ処理室へと送出され、各種の処理(エッチング等)に使用される。なお、コイル2に流れる高周波電流の周波数は、例えば1~3MHz程度である。
【0026】
図2はプラズマ発生装置の構成を示す斜視図である。コイル2は、矩形の中空断面を有する導線を用いたエッジワイズコイルである。導線の中空部内には冷媒管2aが通してあり、コイル2の一端から他端へ冷媒が通流するように構成されている。
【0027】
プラズマ管1の両端部には、冷却器5が設けられている。冷却器5は、例えば金属等の高い熱伝導性を有する材料製である。冷却器5は、筒状部51と、筒状部51の一端部に周設された鍔部52とを有し、筒状部51を内側に向けてプラズマ管1に取り付けてある。筒状部51と鍔部52の境界部には、冷媒が通流する冷媒管5aが巻回されている。冷媒管5aは、筒状部51をほぼ一周し鍔部52に沿って引き出されている。筒状部51には、周方向の一部に、長手方向に延びるスリット53が形成されている。
【0028】
図3はプラズマ管1及びコイル2の構成を示す斜視図である。プラズマ管1には、両端部に小径の延長部11が設けられている。プラズマ管1の外周面には、延長部11の先端からコイル2に接触しない部分までに伝熱膜8が形成されている。伝熱膜8の形成範囲は、
図3中にハッチングを施して示してある。伝熱膜8は、プラズマ管1の材料よりも高い熱伝導率を有する材料製の膜であり、溶射、蒸着などの成膜法により形成される。プラズマ管1における伝熱膜8が形成される部分は、伝熱膜8の密着性を高めるために研磨をおこなうとよい。伝熱膜8の成膜範囲を、コイル2に接触しない部分までとするのは、伝熱膜8が導電性を有する場合に、該伝熱膜8と高周波電流が流れるコイル2との間で放電がおこることを抑制するためである。
【0029】
本実施形態に係るプラズマ発生装置においては、プラズマ管1の内部はプラズマ発生時に熱が発生する。上記の構成によれば、プラズマ管1の外周面の両端部に、プラズマ管1の材料よりも高い熱伝導率を有する材料製の伝熱膜8が形成されている。従って、プラズマ管1の熱は、端部においては、伝熱膜8の全面と周りの空気との熱交換で放熱され、プラズマ管1を良好に冷却することができる。
【0030】
また、プラズマ管1は、両端部に形成された伝熱膜8に接触する冷却器5を備える。冷却器5は放熱フィンとしての役目を担う。さらに、冷却器5に設けられた冷媒管5aの内部に冷媒を通流させることによって、冷媒との熱交換が行われるため、プラズマ管1の冷却性を向上することができる。
【0031】
更に、コイル2は、冷媒管2aの内部に冷媒を通流していることによって、冷却器としても作用する。従って、プラズマ管1の熱は、中心部分はコイル2によって、その他の部分は、伝熱膜8によって放熱されることにより、プラズマ管1全体を良好に冷却することができる。
【0032】
更に、冷却器5の筒状部51にはスリット53が形成されている。冷却器5の材料が導電性を有する場合には、該冷却器5には、コイル2が形成する磁場によって誘導された渦電流が流れる虞がある。筒状部51に設けたスリット53は電流の経路を遮断し、渦電流が流れるのを防止することができる。
【0033】
以上の如く構成されたプラズマ管1は、一側においてプラズマ処理室に、他側において材料ガスの導入部に夫々接続される。
図4はプラズマ管1の端部の接続状態を示す側断面図である。冷却器5の鍔部52は、接続用のフランジとして利用され、プラズマ管1とプラズマ処理室(図示せず)とは、該プラズマ処理室に設けられた取り合いのフランジ6に、鍔部52を合わせて接続される。
【0034】
この接続部にはシール部材7が巻装されている。シール部材7は、例えばOリングであり、延長部11に巻装され、該延長部11の基端側の段差部と、フランジ6の内周縁に設けた凹溝とに弾接し、鍔部52とフランジ6との間を気密に封止している。シール部材7は、ゴム等の弾性材料製であり、過熱により硬化又は変形し、封止機能が損なわれることがある。シール部材7が接する延長部11の外周及び段差部には、伝熱膜8が形成されており、プラズマ管1の内部の発生熱は、前述のように伝熱膜8の形成域に分散して放熱されるから、シール部材7の過熱を抑え、封止機能の低下を防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態1では両端部に冷却器5を備える例を説明したが、冷却器5は一端部にのみ備えられていてもよく、または端部に冷却器5を備えない構成であってもよい。また、冷却器5の形状も例示であって特に限定されるものではない。
【0036】
また、コイル2として、矩形断面の導線により構成されたエッジワイズコイルを例示したが、コイル2を構成する導線の断面形状は特に限定されるものではなく、他の任意の形状であってもよい。また、本実施の形態においては、コイル2の誘導結合を利用するICP型のプラズマ発生装置を例示したが、プラズマ発生装置は、その他の形態の装置であってもよい。
【0037】
(実施形態2)
実施形態2に係るプラズマ発生装置は、実施形態1と伝熱膜8の形成態様が異なる。
図5は実施形態2に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管1の端部の構成を示す側断面図である。実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0038】
実施形態2に係るプラズマ発生装置は、プラズマ管1の延長部11の外周面に伝熱膜8が形成されている。上記の構成によれば、プラズマ管1の熱は、端部においては伝熱膜8により放熱され、中心部においてはコイル2により放熱されることで、プラズマ管1全体を良好に冷却することができる。また、シール部材7が直接プラズマ管1に接触しないため、シール部材7の劣化や損傷を防ぐことができる。
【0039】
(実施形態3)
実施形態3に係るプラズマ発生装置は、実施形態1と伝熱膜8の形成態様が異なる。
図6は実施形態3に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管1の構成を示す側断面図である。実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
実施形態3に係るプラズマ発生装置は、プラズマ管1の外周面に全長に亘って形成される伝熱膜8を備える。伝熱膜8は、例えば銅、アルミニウム等の導電性の材料製である。さらに、プラズマ管1のコイル2が巻回される部分には、伝熱膜8を覆うように、絶縁膜9が全周に形成されている。絶縁膜9の材料は、例えばセラミック、アルミナ(酸化アルミニウム)等である。
【0041】
上記の構成によれば、プラズマ管1の熱は、外周面の全長に亘って放熱される。さらに、伝熱膜8によって、コイル2及び冷却器5の冷却作用がプラズマ管1の全体に伝わるため、プラズマ管1全体を良好に冷却することができる。また、コイル2の巻回される部分に絶縁膜9が形成されることにより、コイル2と伝熱膜8との間で放電がおこることを抑制することができる。
【0042】
(実施形態4)
実施形態4に係るプラズマ発生装置は、実施形態1と伝熱膜8の形成態様が異なる。
図7は、実施形態4に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管1の構成を示す側断面図である。実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
実施形態4に係るプラズマ発生装置は、プラズマ管1の外周面に全長に亘って形成される伝熱膜8を備える。伝熱膜8は、導電性材料製の第1伝熱膜81と、例えばアルミナなどの非導電性材料製の第2伝熱膜82とを備える。第1伝熱膜81は、プラズマ管1の両端部からコイル2が巻回される部分までに全周に形成されている。第2伝熱膜82は、プラズマ管1のコイル2が巻回される部分に全周に形成されている。
【0044】
上記の構成によれば、プラズマ管1の熱は、外周面の全長に亘って放熱される。さらに、伝熱膜8によって、コイル2及び冷却器5の冷却作用がプラズマ管1の全体に伝わるため、プラズマ管1全体を良好に冷却することができる。また、コイル2の巻回される部分に位置する第2伝熱膜82は非導電性であり、導電性の第1伝熱膜81との間には距離があるため、コイル2と第1伝熱膜81との間で放電がおこることを抑制することができる。なお、プラズマ管1の外周面の全長に、非導電性材料製の第2伝熱膜82が形成されてもよいが、実施形態1のように導電性材料により伝熱膜8を形成する方が、熱伝導率が高い。
【0045】
(実施形態5)
実施形態5に係るプラズマ発生装置は、伝熱膜8の一部にスリット83が形成されている。
図8は実施形態5に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管1の構成を示す斜視図である。実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
伝熱膜8には、プラズマ管1の周方向の一部に、長手方向に延びるスリット83が形成されている。伝熱膜8の材料が導電性を有する場合には、該伝熱膜8には、コイル2が形成する磁場によって誘導された渦電流が流れる虞がある。上記の構成によれば、伝熱膜8に設けたスリット83は電流の経路を遮断し、渦電流が流れるのを防止することができる。
【0047】
冷却器5にスリット53が形成されている場合であって、伝熱膜8が冷却器5とプラズマ管1の間に形成されているときには、冷却器5のスリット53と伝熱膜8のスリット83を周方向において一致させるとよい。
【0048】
(実施形態6)
実施形態6に係るプラズマ発生装置は、伝熱膜8の一部にさらに保護膜10が形成されている。
図9は、実施形態6に係るプラズマ発生装置が備えるプラズマ管1の端部の構成を示す側断面図である。実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
実施形態6に係るプラズマ発生装置は、伝熱膜8の外周に保護膜10が形成されている。保護膜10は、プラズマ管1の端部に、伝熱膜8を覆う狭幅に設けられている。保護膜10は、プラズマ管1の端面を覆うように形成されてもよい。保護膜10は、例えばアルミナなどの、耐熱性および絶縁性に優れた材料製である。
【0050】
プラズマ管1の端部においては、材料ガスの流入時及びプラズマガスの流出時に、ガスが延長部11の外周側に回り込み、該延長部11の外周に形成された伝熱膜8に接触することがある。特にガス流出口側では、プラズマ化したガスの粒子は非常に細かいため、延長部11の外周側に回り込んでくるおそれが高い。上記の構成によれば、端部に保護膜10が形成されているため、伝熱膜8の損傷を防ぐことができる。
【0051】
上記の各実施形態において、プラズマ管1のコイル2が巻回される部分には、コイル2とプラズマとの静電結合の度合いを弱めるために、ファラデーシールド膜を形成するのが望ましい。さらにファラデーシールド膜を形成した場合において、コイル2とファラデーシールド膜間との放電を抑制するための絶縁膜を形成してもよい。
【0052】
また、上記の各実施形態において、導電性材料に非導電性材料が接触する場合には、異種接合になり、広い範囲で皮膜を形成することが困難になる可能性がある。そのような場合には、導電性材料と非導電性材料との中間的物性を有する傾斜機能材料からなる中間層を、導電性材料と非導電性材料間にそれぞれ形成するのが望ましい。
【0053】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 プラズマ管
2 コイル
5 冷却器
7 シール部材
8 伝熱膜
9 絶縁膜
10 保護膜
81 第1伝熱膜
82 第2伝熱膜
83 スリット