(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】紫外線照射装置、紫外線照射方法及び家電製品
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240516BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240516BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20240516BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20240516BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61L2/10
G01N21/17 Z
G01N21/17 A
F24F1/0007 361Z
F24F1/02 371Z
C12M1/12
C12M1/38 Z
(21)【出願番号】P 2019116696
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】王 玉亭
(72)【発明者】
【氏名】岸 寛之
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0028700(US,A1)
【文献】特開平08-257104(JP,A)
【文献】特開2010-198824(JP,A)
【文献】特開2015-171440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060104(US,A1)
【文献】国際公開第2015/015734(WO,A1)
【文献】特開2010-214039(JP,A)
【文献】特開2017-133700(JP,A)
【文献】特開2018-155466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
G01N 21/17
F24F 13/22
C12M 1/12
C12M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深紫外領域の照射光を照射領域に照射する光源と、
前記照射領域におけるカビの繁殖状況を検出するカビ検出部と、
当該カビ検出部で検出した前記カビの繁殖状況に基づいて前記光源を駆動制御する駆動部と、を備え、
前記照射領域は、光透過性部材の一方の面であり、
前記カビ検出部は、
前記光透過性部材の他方の面に設けられ当該他方の面側から前記照射領域に可視光を照射する光源部と、
前記照射領域を透過した、前記光源部から照射された前記可視光の透過光を受光する受光部と、
前記受光部における前記透過光の受光量の差異に基づいて前記カビの繁殖状況を推測する推測部と、
を備える紫外線照射装置。
【請求項2】
深紫外領域の照射光を照射領域に照射する光源と、
前記照射領域におけるカビの繁殖状況を検出するカビ検出部と、
当該カビ検出部で検出した前記カビの繁殖状況に基づいて前記光源を駆動制御する駆動部と、を備え、
前記カビ検出部は、
前記照射領域を撮像する撮像装置と、
当該撮像装置の撮像画像から前記カビの繁殖状況を推測する推測部と、
を有し、
前記推測部は、現時点での前記撮像画像と記憶している判定用の撮像画像との差異に基づいて前記カビの繁殖状況を推測し、
前記判定用の撮像画像は、前回紫外線照射を行った直後の時点における前記照射領域の撮像画像である紫外線照射装置。
【請求項3】
前記光源は、UVC-LEDである請求項1
又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記照射光のピーク波長は、220nm以上300nm以下の範囲内の値である請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
照射領域に対し、光源から深紫外領域の照射光を照射する紫外線照射方法であって、
前記照射領域は、光透過性部材の一方の面であり、
可視光を照射する光源部を前記光透過性部材の他方の面に設けて、前記他方の面側から前記可視光を前記照射領域に照射し、
前記照射領域を透過した、前記光源部から照射された前記可視光の透過光を受光部で受光し、
前記受光部における前記透過光の受光量の差異に基づいてカビの繁殖状況を推測して、前記照射領域における前記カビの繁殖状況を監視し、
前記カビがしきい値を超えて繁殖したときにのみ、前記光源から前記照射光を照射する紫外線照射方法。
【請求項6】
照射領域に対し、光源から深紫外領域の照射光を照射する紫外線照射方法であって、
前記照射領域を撮像し、現時点での撮像画像と記憶している前回紫外線照射を行った直後の時点における撮像画像との差異に基づいてカビの繁殖状況を推測して、前記照射領域におけるカビの繁殖状況を監視し、
前記カビがしきい値を超えて繁殖したときにのみ、前記照射光を照射する紫外線照射方法。
【請求項7】
前記照射領域は、家電製品に含まれる部品の表面である請求項
5又は請求項6に記載の紫外線照射方法。
【請求項8】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の紫外線照射装置を備えた家電製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置、紫外線照射方法及び家電製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエアコンディショナー等の家電製品においては、微細な埃等が、ドレンパン等に付着して堆積すると、カビやバクテリア等の微生物の繁殖が避けられず、このような埃の堆積や微生物の繁殖は、調和済み空気の異臭の原因にもなる。そのため、ドレンパン等カビやバクテリア等の微生物が繁殖しやすい箇所を、定期的に洗浄する必要があった。また、このような微生物の繁殖を防止する方法として水銀ランプによって紫外線を照射する方法(例えば、特許文献1参照)、また、オゾン処理する方法(例えば、特許文献2参照。)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-111076号公報
【文献】特許第4396688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようにカビ等が繁殖しやすい箇所を定期的に洗浄する方法にあっては、例えばエアコンディショナーのドレンパンの場合には、ドレンパンをエアコンディショナー本体から取り外したり、ドレンパンを洗浄しやすいように本体の一部を分解したりする必要がある。
また、オゾン処理によって、カビの繁殖を防止する方法にあっては、オゾンは人間にとって有害であるため、扱いに注意が必要となる。
【0005】
さらに、水銀ランプによって紫外線照射を行うことでカビの繁殖を抑制する方法にあっては、防カビ効果はあるものの、殺胞子により防カビを行っているため、数千mJ/cm2のドーズ量を照射する必要がある。また、このような強い紫外線はカビ以外の周囲の筐体の劣化を促進させてしまい、さらに水銀ランプはサイズが大きいため、被照射エリアを制御することも難しい。
そのため、カビの繁殖を容易に防止することができると共に、このカビの繁殖を防止することに伴い生じる劣化を抑制することの可能な紫外線照射装置が望まれていた。
【0006】
そこで、この発明は従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、劣化を抑制しつつカビの繁殖を防止することの可能な紫外線照射装置、紫外線照射方法及び家電製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置は、深紫外領域の照射光を照射領域に照射する光源と、前記照射領域におけるカビの繁殖状況を検出するカビ検出部と、当該カビ検出部で検出した前記カビの繁殖状況に基づいて前記光源を駆動制御する駆動部と、を備え、前記照射領域は、光透過性部材の一方の面であり、前記カビ検出部は、前記光透過性部材の他方の面に設けられ当該他方の面側から前記照射領域に可視光を照射する光源部と、前記照射領域を透過した、前記光源部から照射された前記可視光の透過光を受光する受光部と、前記受光部における前記透過光の受光量の差異に基づいて前記カビの繁殖状況を推測する推測部と、を備えることを特徴としている。
さらに、本発明の他の実施形態に係る紫外線照射装置は、深紫外領域の照射光を照射領域に照射する光源と、前記照射領域におけるカビの繁殖状況を検出するカビ検出部と、当該カビ検出部で検出した前記カビの繁殖状況に基づいて前記光源を駆動制御する駆動部と、を備え、前記カビ検出部は、前記照射領域を撮像する撮像装置と、当該撮像装置の撮像画像から前記カビの繁殖状況を推測する推測部と、を有し、前記推測部は、現時点での前記撮像画像と記憶している判定用の撮像画像との差異に基づいて前記カビの繁殖状況を推測し、前記判定用の撮像画像は、前回紫外線照射を行った直後の時点における前記照射領域の撮像画像であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の実施形態に係る紫外線照射方法は、照射領域に対し、光源から深紫外領域の照射光を照射する紫外線照射方法であって、前記照射領域は、光透過性部材の一方の面であり、可視光を照射する光源部を前記光透過性部材の他方の面に設けて、前記他方の面側から前記可視光を前記照射領域に照射し、前記照射領域を透過した、前記光源部から照射された前記可視光の透過光を受光部で受光し、前記受光部における前記透過光の受光量の差異に基づいてカビの繁殖状況を推測して、前記照射領域における前記カビの繁殖状況を監視し、前記カビがしきい値を超えて繁殖したときにのみ、前記光源から前記照射光を照射することを特徴としている。
さらに、本発明の他の実施形態に係る紫外線照射方法は、照射領域に対し、光源から深紫外領域の照射光を照射する紫外線照射方法であって、前記照射領域を撮像し、現時点での撮像画像と記憶している前回紫外線照射を行った直後の時点における撮像画像との差異に基づいてカビの繁殖状況を推測して、前記照射領域におけるカビの繁殖状況を監視し、前記カビがしきい値を超えて繁殖したときにのみ、前記照射光を照射することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の他の実施形態に係る家電製品は、上記形態の紫外線照射装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、紫外線被照による劣化を防止しつつカビの繁殖を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示す外観図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【
図2】光源の配置状況を説明するための説明図である。
【
図3】光源の駆動処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第二実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示す外観図である。
【
図5】第二実施形態における光源の駆動処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第三実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る紫外線照射装置1の一例を示す概略構成図であって、(a)は正面図、(b)は上面図である。なお、
図1(b)の上面図は、分かり易くするために後述の基板3を除いて実線で記載している。
この紫外線照射装置1は、カビの繁殖を防止するために紫外線照射を行うものである。ここでは、紫外線照射装置1によって、エアコンディショナー等の家電製品に生じるカビの繁殖を防止する場合について説明する。紫外線照射装置1は、家電製品に設けられたドレンパン20近傍の、ドレンパン20に向けて紫外線照射可能な位置に配置される。なお、
図1(a)では、ドレンパン20を模式的に記載している。
【0014】
図1に示すように、紫外線照射装置1は、深紫外領域の光を発光するUVC-LEDからなる光源2と、一方の面に光源2が搭載された基板(PCB)3と、基板3の、光源2が搭載された面とは逆側の面に設けられたヒートシンク4と、ヒートシンク4の、基板3とは逆側に設けられた冷却ファン5とを備える。冷却ファン5の、ヒートシンク4とは逆側に設けた抑え板6を、ネジ6aによりヒートシンク4に固定することによって、冷却ファン5はヒートシンク4に固定されている。光源2が照射する紫外線は、殺菌力が比較的高い265nmの波長の紫外線であることが好ましく、比較的殺菌力が高い、ピーク波長が220nm以上300nmの範囲内の値であってもよく、より好ましくは、ピーク波長は250nm以上285nm以下の範囲内の波長である。
【0015】
また、基板3には、光源2を駆動制御する制御回路7と、紫外線照射対象であるドレンパン20における照射領域を撮影する撮像装置8とが設けられ、制御回路7は、撮像装置8で撮影したドレンパン20の照射領域の撮像画像をもとに、紫外線照射を行う必要があるか否かを判定し、判定結果に応じて光源2のオンオフ制御を行う。なお、制御回路7及び撮像装置8は、基板3とは別の基板(PCB)に実装されて紫外線照射装置1本体に設けられていてもよく、紫外線照射装置1本体とは別体として設けられていてもよい。例えば、制御回路7を、紫外線照射装置1本体とは別体として設ける場合には、紫外線照射装置1と制御回路7との間の情報授受を無線通信により行うようにし、紫外線照射装置1を、紫外線照射装置1が搭載された家電製品の外部から制御するようにしてもよい。
【0016】
撮像装置8は、例えば、カビの繁殖状況を撮影することの可能な性能を有するカメラ又は、カビの繁殖状況を観察するための顕微鏡用カメラを備えた顕微鏡等で構成され、ドレンパン20の照射領域に繁殖するカビを撮影することの可能な位置に配置される。なお、撮像装置8は、紫外線照射装置1本体に設けられていなくともよく、家電製品本体(図示せず)側のドレンパン20の照射領域に繁殖するカビを撮影することの可能な位置に配置されていてもよい。撮像装置8は、制御回路7により駆動制御され、撮影した画像データを制御回路7に出力する。
紫外線照射装置1は、比較的湿度が高くカビの繁殖に適した箇所に配置されることが多いため、基板3、制御回路7、及び撮像装置8は防水仕様であることが好ましい。
【0017】
なお、
図1において、光源2は、上面視で紫外線照射装置1本体の中央に配置されているが、光源2の配置位置は任意に設定することができ、ドレンパン20の、所望の照射領域に対して紫外線照射を行うことの可能な位置に配置すればよい。
また、
図1に示す紫外線照射装置1は、一つの光源2を備える1灯照射装置であるが、
図2に示すように複数の光源2を備える多灯照射装置であってもよい。多灯照射装置の場合には、
図2(a)に示すように、複数の光源2を直線上に一列に配置してもよく、また、
図2(b)に示すように縦方向及び横方向に複数並べて配置してもよい。光源2は、紫外線照射を行うべき照射領域の形状に応じて、必要とする数だけ配置すればよい。また、ヒートシンク4は、配置する光源2の数に応じて十分な放熱効果を得ることのできる性能を有するヒートシンクを用いればよい。
【0018】
また、
図1では、紫外線照射装置1は、ヒートシンク4と冷却ファン5とを備えているが、光源2の駆動電流の大きさや、家電製品本体内における紫外線照射装置1の配置スペース等に応じて、変更することが可能である。例えば光源2の駆動電流が比較的小さく光源2による発熱量が少ないと予測されるときには、ヒートシンク4や冷却ファン5として、光源2による予測される発熱量を十分に放熱することの可能な大きさのヒートシンクや、予測される発熱量を十分に放熱することの可能な冷却性能を有する冷却ファンを用いればよい。また、必ずしもヒートシンク4と冷却ファン5とを両方設ける必要はなく、光源2による発熱量を十分に放熱することができれば、冷却ファン5は設けずに、ヒートシンク4と基板3とにより放熱を図るようにしてもよく、さらにヒートシンク4も設けずに基板3のみにより放熱を図るようにしてもよい。
【0019】
次に、制御回路7での光源2の駆動制御方法について説明する。
図3は、制御回路7で実行される光源2の駆動処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御回路7では、
図3に示す駆動処理を予め設定した所定周期(例えば、12時間周期等)で実行する。
制御回路7では、まず、撮像装置8により照射領域を撮影させ、撮像装置8から、撮影された画像データを読み込む(ステップS1)。
続いて、ステップS2に移行し、ステップS1で読み込んだ画像データから得られる撮像画像と、予め記憶している判定用の撮像画像とを比較し、変化があるエリアの割合を判定値として算出する。判定用の撮像画像は、例えば、カビが繁殖していない状況で照射領域を撮影したときの撮像画像が適用される。つまり、撮像装置8から取得した撮像画像から、カビが繁殖したと予測されるエリアの割合を判定値とする。
【0020】
そして、判定値が予め設定したしきい値よりも大きいときには(ステップS3)、ステップS4に移行し、予め設定した所定時間、光源2を動作させ、紫外線照射を行う。一方、ステップS3で、判定値がしきい値以下であるときには、光源2を動作させずに処理を終了する。紫外線照射を行う所定時間は、繁殖しているカビを殺菌するのに十分であると予測されるドーズ量となるように、光源2の駆動電流と照射時間とを考慮して設定すればよい。
なお、制御回路7で実行されるステップS1からステップS3の処理が推測部に対応し、制御回路7で実行されるステップS1からステップS3の処理及び撮像装置8がカビ検出部に対応し、ステップS4の処理が駆動部に対応している。
【0021】
判定値のしきい値は、カビが繁殖しており、殺菌が必要とみなすことの可能な値に設定される。例えば、しきい値として10%を設定すれば、撮像画像において、変化があるエリアが10%以上であるときに殺菌が必要とみなして、紫外線照射を行う。つまり、撮像画像からカビが繁殖していると予測されるときには紫外線照射を行って殺菌を行い、カビが繁殖していないと予測されるときには紫外線照射を行わない。
このように、照射領域の撮像画像から、現在のカビの繁殖状況を検出し、カビの繁殖状況に応じて紫外線照射を行うようにしている。そのため、紫外線照射を行う必要があるときにのみ紫外線照射を行うことができ、その結果、紫外線被照による劣化を防止することができる。つまり、カビの繁殖の防止と紫外線被照による劣化防止とを容易に実現することができる。
【0022】
また、UVC-LEDは、比較的消費電力が少ないため、省エネ効果を得ることができる。また、光源2としてUVC-LEDを用いることによって、紫外線照射範囲を制御しやすいため、必要以外の場所に対して紫外線照射を行うことを回避することができ、例えば家電製品内部の他の部品に対する劣化を抑制することができる。
また、UVC-LEDは比較的小型の光源であるため、紫外線照射装置の小型化を図ることができる。そのため、エアコンディショナーといった家電製品等、比較的設置可能な場所が狭い箇所であっても、紫外線照射装置1を配置することができる。
【0023】
なお、上記実施形態においては、照射領域の撮像画像の変化率を判定値として、カビの繁殖状況を検出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、照射領域の撮像画像と、判定用の撮像画像とを比較し、両者に差があるときに、カビが繁殖していると判定するように構成してもよい。また、例えば、撮像装置8として、菌糸長さを測長可能な撮像画像を取得し得る性能を有する撮像装置を用いる。そして、取得した撮像画像から菌糸長さを測長し、測長した菌糸長さを判定値として、予め設定したしきい値と比較する。そして、判定値がしきい値よりも長いときに光源2を動作させて紫外線照射を行い、判定値がしきい値以下であるときには光源2を動作させないようにしてもよい。菌糸長さのしきい値は、例えば、50μmに設定される。
【0024】
また、上記実施形態では、照射領域の撮像画像から、照射領域のうちカビが繁殖している領域を特定することができる。したがって、例えば、
図2に示すように、光源2として複数の光源を備える場合には、複数の光源のうち、カビが繁殖している領域に対して紫外線照射を行う光源のみを動作させ、照射領域全体ではなく、カビが繁殖している領域についてのみ紫外線照射を行うようにしてもよい。
また、照射領域の撮像画像から、カビの繁殖状況を検出し、カビの繁殖状況に応じて紫外線の照射量を調整するようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施形態においては、判定用の撮像画像として、カビが繁殖していない状況で照射領域を撮影したときの撮像画像を用いる場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、紫外線照射した直後の時点における照射領域の撮像画像を判定用の撮像画像として更新設定するようにしてもよい。つまり、紫外線照射を行うと、カビの死骸が撮像画像に写る可能性がある。この場合、実際にはカビは死滅しているもののカビの死骸が存在するため、現時点での撮像画像とカビが繁殖していないときの撮像画像とに変化があると誤判断され、紫外線照射が行われる可能性がある。そのため、紫外線照射した直後の撮像画像を判定用の撮像画像として用いることによって、次の周期で、撮像画像を取得した場合には、カビの死骸を含む撮像画像と、比較することになり、紫外線照射直後の時点以後に繁殖したカビの繁殖状況を推測することができ、紫外線照射の必要の有無を的確に判断することができる。
【0026】
<第二実施形態>
次に、本発明に係る紫外線照射装置の第二実施形態を説明する。
図4は、第二実施形態に係る紫外線照射装置1aの一例を示す概略構成図である。
図4に示すように、第二実施形態に係る紫外線照射装置1aは、撮像装置8に代えて、光検出装置9を設けたものである。第一実施形態に係る紫外線照射装置1と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
光検出装置9は、可視光を照射する光源部9aと、光源部9aから照射された可視光を受光する受光部9bと、を備える。
図4に示すように、光源部9aはドレンパン20の照射領域に設けられ、受光部9bは基板3の光源部9aから照射された可視光を受光することの可能な位置に配置される。受光部9bは、光源部9aから照射された可視光を受光し、受光量を制御回路7に出力する。
【0027】
制御回路7は、カビが繁殖していないときの受光部9bでの受光量を、受光量の初期値として所定の記憶領域に記憶しておく。制御回路7では、受光量の初期値と、入力した受光量との変化率を算出し、変化率を判定値とする。そして、判定値と予め設定したしきい値とを比較し、判定値がしきい値より小さい場合は光源2を動作させ、所定時間紫外線照射を行う。一方、判定値がしきい値以上である場合は光源2を動作させずにそのまま処理を終了する。変化率のしきい値は、受光量の変化率から、照射領域にカビが繁殖したとみなすことの可能な値に設定される。
【0028】
つまり、受光量の変化率がしきい値(例えば5%程度)よりも大きい場合は、光源部9aからの照射光の進路がカビにより妨げられたとみなすことができ、すなわち照射領域にカビが生じていると予測される。そのため、光源2を動作させ、紫外線照射を行うことで殺菌を図る。一方、受光量の変化率がしきい値以下であるときには、光源部9aからの照射光の進路は妨げられておらず、照射領域にはそれほどカビは生じていないと予測されることから、紫外線照射は不要として光源2は動作させない。
【0029】
図5は、制御回路7での処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御回路7は、予め設定した所定周期(例えば12時間周期)で
図5に示す処理を実行する。
制御回路7では、まず、光検出装置9を動作させ、光源部9aが照射した可視光を受光部9bで受光させる。そして、受光部9bから受光量を読み込む(ステップS11)。
次いで、受光部9bからの受光量と受光量の初期値とから、受光量の初期値からの変化率を演算し、求めた変化率を判定値とする(ステップS12)。次に判定値がしきい値よりも小さいか否かを判定する。受光量の変化率は、「受光部9bからの受光量」を「受光量の初期値」で割り算した値である。
【0030】
判定値がしきい値よりも大きい場合は(ステップS13)、ステップS14に移行し、予め設定した所定時間、光源2を動作させ紫外線照射を行う。
一方、判定値がしきい値以下である場合は光源2を動作させずにそのまま処理を終了する。
なお、制御回路7で実行されるステップS11からステップS13の処理が推測部に対応し、ステップS14の処理が駆動部に対応している。
このように、受光量の変化率から、現在のカビの繁殖状況を推測し、推測結果に応じて紫外線照射を行うため、この場合も、ある程度カビが繁殖していると判定されるときにのみ、紫外線照射を行うことができ、上記第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、第二実施形態においては、
図4に示すように、ドレンパン20に光源部9aを設けた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図6(a)に示すように、ドレンパン20を光透過性の素材で構成し、光源部9aをドレンパン20の照射領域とは逆側の面に、ドレンパン20の底部に向けて照射するように配置する。そして、ドレンパン20を透過した照射光の光量を受光部9bで測定するようにしてもよい。光源部9aをドレンパン20の照射領域と同じ面に設けた場合には、光源部9aに対して防水等の十分な対策を行う必要がある。光源部9aを、ドレンパン20の照射領域とは逆側の面に設けた場合には、照射領域と同じ面に設ける場合に比較して簡易な防水対策ですむ。
【0032】
また、
図6(b)に示すように、光源部9a及び受光部9bを共に基板3に設け、光源部9aを、照射領域を照射するように配置し、受光部9bを、照射領域で反射した光源部9aからの照射光を受光することの可能な位置に配置する。そして、ドレンパン20の照射領域で反射された、光源部9aからの照射光の反射光の受光量を検出し、受光量の変化率を判定値として、上記と同様の手順で光源2を駆動制御するようにしてもよい。
また、第二実施形態においては、受光量の変化率を判定値として、カビの繁殖状況を検出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、検出した受光量と、受光量の初期値とを比較し、両者に差があるときに、カビが繁殖していると判定するように構成してもよい。
【0033】
<第三実施形態>
次に、本発明に係る紫外線照射装置の第三実施形態を説明する。
図7は、第三実施形態に係る紫外線照射装置1bの一例を示す概略構成図である。
図7に示すように、第三実施形態に係る紫外線照射装置1bは、光検出装置9に代えて、ドレンパン20近傍の温度及び湿度を検出する温湿度センサ10を設けたものである。温湿度センサ10で測定した温度及び湿度は制御回路7に入力される。
制御回路7は、温湿度センサ10で検出された温度及び湿度をもとにカビの成長係数を算出し、算出した成長係数を判定値とする。カビの成長係数とは、カビの成長しやすさを表すものである。カビの成長係数は、環境温度と湿度との組み合わせから決定される。表1に、算出したカビ成長係数の一例を示す。
【0034】
【0035】
制御回路7は、判定値(カビ成長係数)がしきい値よりも大きい場合は、光源2を動作させ所定時間紫外線照射を行う。一方、判定値がしきい値以下である場合は光源2を動作させずにそのまま処理を終了する。
成長係数の判定値がしきい値(例えば「しきい値=1」)よりも大きい場合は、カビの成長が比較的速く、カビが成長することから、この時点で紫外線照射を行って殺菌を行う。逆に成長係数の判定値がしきい値以下の場合には、カビの成長がほぼ停止していることから、この時点では殺菌を行う必要はないとして紫外線照射は行わない。また、カビの成長係数に合わせて、紫外線照射の頻度及び照射量を調整してもよい。例えば、成長係数が4以上であるときには、一日2回紫外線照射を行う。成長係数が3であるときには、二日間に1回紫外線照射を行う。成長係数が2であるときには、1週間に1回紫外線照射を行う。
【0036】
成長係数のしきい値は、異なる環境温度、環境湿度でのカビ培養試験の結果に基づいて設定される。
したがって、この場合も、必要なときにのみ紫外線照射を行うことができ、上記第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
なお、カビの繁殖状況の検出は、上記各実施形態におけるカビの繁殖状況の検出方法のうちの複数の検出方法を組み合わせて検出するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、エアコンディショナー等の家電製品のドレンパンに生じるカビの繁殖を抑制する場合について説明したが、ドレンパンに限らず、洗濯機の洗濯槽の裏側、空気清浄機、加湿器の貯水タンク、熱交換器、冷蔵庫の冷蔵室の表面等、カビが繁殖しやすい箇所におけるカビの繁殖を抑制するようにしてもよい。
【0037】
また、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0038】
1 紫外線照射装置
2 光源
3 基板
4 ヒートシンク
5 冷却ファン
7 制御回路
8 撮像装置
9 光検出装置
10 温湿度センサ