(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240516BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240516BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/12 C
B60C11/13 A
B60C11/13 B
(21)【出願番号】P 2019216891
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 暢之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-278413(JP,A)
【文献】特開2019-156177(JP,A)
【文献】特開2010-260471(JP,A)
【文献】特開2016-137763(JP,A)
【文献】特開2014-177237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝を含むトレッド部を備え、
前記トレッド部が、前記一対の周方向主溝で区画された中央陸部領域と、前記一対の周方向主溝の一方の周方向主溝とトレッド端とで区画された前記中央陸部領域のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー陸部領域を含み、
前記中央陸部領域
内の前記タイヤ周方向に沿って延びる
周方向溝に関しては主溝が形成され
ずに前記周方向主溝のそれぞれの溝幅よりも溝幅が狭い中央周方向細溝が形成されて、前記中央陸部領域内でタイヤ幅方向に隣接するブロック又はリブが前記中央周方向細溝を隔てて前記タイヤ幅方向において互いに支えあう状態となるように近接して設けられることで、前記中央陸部領域が凝集構造を形成しており、
前記ショルダー陸部領域は、
前記タイヤ幅方向に横断する複数のショルダー幅方向溝によって区画された
ショルダーブロックを含み、
前記
ショルダーブロックには、
前記タイヤ幅方向に延びて一端が前記一方の周方向主溝に連通するサイプが形成されており、
前記一方の周方向主溝と前記複数のショルダー幅方向溝に含まれる第一ショルダー幅方向溝とが交差して形成された前記
ショルダーブロックの角部分における、前記一方の周方向主溝の第一溝壁に、タイヤ幅方向内側に突出する凸部が形成され
、
前記凸部が形成された前記
ショルダーブロックのタイヤ周方向位置には前記サイプが形成されておらず、
前記一方の周方向主溝の第二溝壁における、前記凸部が形成された前記タイヤ周方向位置に対向するタイヤ周方向位置には、タイヤ幅方向内側に凹む凹部が形成されており、
前記第二溝壁と前記タイヤ幅方向に延びる前記サイプの延長線との交点が、前記凹部のタイヤ周方向端を含む前記凹部内に位置するタイヤ。
【請求項2】
前記
ショルダーブロックには前記一対の周方向主溝のそれぞれの溝幅よりも溝幅が狭い
ショルダー周方向細溝が形成され、
前記サイプの他端が前記
ショルダー周方向細溝に連通する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記凸部が形成された前記
ショルダーブロックの角部分における、前記第一ショルダー幅方向溝の溝壁が、前記タイヤ周方向に突出する凸形状を含む請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記サイプは、三次元サイプである請求項1~3の何れか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、特に転がり抵抗を低減化しつつ氷上性能、雪上性能を向上させたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレッド部に複数の直線状の周方向溝と複数の横溝とが形成され、ショルダー陸部領域が複数のショルダーブロックに区画され、該ショルダーブロックに三次元サイプが形成されたタイヤが記載されている。このタイヤによれば、氷上性能および雪上性能が向上し得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のタイヤにおいて、サイプから氷上路面における接地面の排水を主に担う周方向主溝への排水は、周方向主溝内を流れる水流によって抑制される恐れがあった。このため、従来のタイヤは、踏面におけるサイプによる排水が不十分になる恐れがあり、排水性能に更なる改善の余地があった。
【0005】
また、トレッド部に形成された複数の周方向主溝や複数の横溝によって区画されたブロックには、タイヤの接地圧による変形を抑制することによる、更なる転がり抵抗低減化の余地があった。
【0006】
本実施の形態は、タイヤの転がり抵抗を低減しつつ、サイプから周方向主溝への排水性を向上させて氷上性能を向上させ得るタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤは、タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝を含むトレッド部を備える。前記トレッド部は、前記一対の周方向主溝で区画された中央陸部領域と、前記一対の周方向主溝の一方の周方向主溝とトレッド端とで区画された前記中央陸部領域のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー陸部領域を含む。前記中央陸部領域内のタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝に関しては主溝が形成されずに前記周方向主溝のそれぞれの溝幅よりも溝幅が狭い中央周方向細溝が形成されて、前記中央陸部領域内でタイヤ幅方向に隣接するブロック又はリブが前記中央周方向細溝を隔てて前記タイヤ幅方向において互いに支えあう状態となるように近接して設けられることで、前記中央陸部領域が凝集構造を形成している。前記ショルダー陸部領域は、前記タイヤ幅方向に横断する複数のショルダー幅方向溝によって区画されたショルダーブロックを含む。前記ショルダーブロックには、前記タイヤ幅方向に延びて一端が前記一方の周方向主溝に連通するサイプが形成されている。前記一方の周方向主溝と前記複数のショルダー幅方向溝に含まれる第一ショルダー幅方向溝とが交差して形成された前記ショルダーブロックの角部分における、前記一方の周方向主溝の第一溝壁に、タイヤ幅方向内側に突出する凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、タイヤの転がり抵抗を低減しつつ、サイプから周方向主溝への排水性を向上させて氷上性能を向上させ得るタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、トレッド部10のトレッドパターンを示す一部平面展開図である。
【
図2】
図2は、周方向主溝20を含むショルダー陸部領域SRの一部拡大平面図である。
【
図3】
図3(a)は、ショルダー幅方向溝30を形成する一方の溝壁31の傾斜面32を含む一部を拡大した斜視図である。
図3(b)は、溝壁31の傾斜面32のタイヤ幅方向
TW内側位置における一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
図3(c)は、溝壁31の傾斜面32のタイヤ幅方向
TW外側位置における一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
【
図4】
図4(a)は、変形例に係る溝壁31の傾斜面32Aを含む一部を拡大した斜視図であり、
図4(b)~
図4(c)は、溝壁31の傾斜面32Aの変形例に係る一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るタイヤのトレッド部10のトレッドパターンを示す一部平面展開図である。
図2は、周方向主溝20を含むショルダー陸部領域SRの一部拡大平面図である。
図3(a)は、ショルダー幅方向溝30を形成する一方の溝壁31の傾斜面32を含む一部を拡大した斜視図である。
図3(b)は、溝壁31の傾斜面32のタイヤ幅方向内側位置における一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
図3(c)は、溝壁31の傾斜面32のタイヤ幅方向外側位置における一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
図4(a)~
図4(c)は、溝壁31の傾斜面32Aの変形例に係る一部を拡大したタイヤ軸方向TAに垂直な端面図である。
【0012】
トレッド部10には、タイヤに対する要求性能に応じたトレッドパターンが形成される。本実施形態では、タイヤは、トラック・バス(TB)に好適に用い得るスタッドレスタイヤである。なお、スタッドレスタイヤは、スノータイヤまたはウインタータイヤなどと呼ばれてもよい。或いは、タイヤは、冬期に限らず、四季を通じて利用可能ないわゆるオールシーズンタイヤであっても構わない。
【0013】
また、タイヤは、必ずしもトラック・バス用ではなく、他の車種、例えば、乗用自動車、バン・小型トラックに用いられても構わない。
【0014】
本実施形態に係るタイヤは、タイヤ周方向TCに延びる一対の周方向主溝20を含むトレッド部10を備る。該トレッド部10は、一対の周方向主溝20で区画された中央陸部領域CRと、一対の周方向主溝20の一方の周方向主溝20とトレッド端TEとで区画された中央陸部領域CRのタイヤ幅方向TW外側に位置するショルダー陸部領域SRを含む。中央陸部領域CRは、タイヤ周方向TCに沿って延びる主溝が形成されない凝集構造を形成している。ショルダー陸部領域SRは、タイヤ幅方向TWに横断する複数のショルダー幅方向溝30によって区画されたショルダーブロック40を含む。ショルダーブロック40には、タイヤ幅方向TWに延びて一端が周方向主溝20に連通するサイプ50が形成されている。周方向主溝20と複数のショルダー幅方向溝30に含まれる第一ショルダー幅方向溝30とが交差して形成されたショルダーブロック40の角部分41における周方向主溝20の第一溝壁21には、タイヤ幅方向TW内側に突出する凸部43が形成されている。本実施形態に係るタイヤの構成の詳細について、以下で説明する。
【0015】
図1に示すように、トレッド部10には、タイヤ周方向TCに沿って延びる一対の周方向主溝20が形成されている。本実施形態では、一対の周方向主溝20が直線状である。但し、ただし、一対の周方向主溝20は、タイヤ幅方向に多少惰行するなど、必ずしも直線状でなくても構わない。
【0016】
トレッド部10は、タイヤ幅方向TWがこの一対の周方向主溝20で区画された中央陸部領域CRと、中央陸部領域CRのタイヤ幅方向TW外側にあり、一対の周方向主溝20の一方の周方向主溝20とトレッド端TEとで区画されたショルダー陸部領域SRとに区画されている。
【0017】
本実施形態では、中央陸部領域CRには、周方向主溝20の溝幅と同程度或いは周方向主溝20の溝幅よりも広い溝幅を有する周方向溝が形成されていない。
【0018】
つまり、中央陸部領域CRには、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20より溝幅が狭い中央周方向細溝200のみが形成される。このため、中央陸部領域CRでは、タイヤ幅方向TWに隣接する陸部ブロック間の距離(間隔、空隙と呼んでもよい)が狭く、この種の一般的なタイヤよりも複数の陸部ブロックが凝集した凝集構造を形成している。
【0019】
なお、本実施形態では、周方向主溝20の溝幅が4.0~10.0mm程度、中央周方向細溝200の溝幅が1.5~4.0mm程度である。
【0020】
少なくとも一方のショルダー陸部領域SRには、周方向主溝20からトレッド端TEまでタイヤ幅方向TWに横断するショルダー幅方向溝30が形成されている。本実施形態では、ショルダー陸部領域SRに複数のショルダー幅方向溝30が形成されており、ショルダー陸部領域SRがこの複数のショルダー幅方向溝30で複数のショルダーブロック40に区画されている。
【0021】
ショルダー陸部領域SRの各ショルダーブロック40には、タイヤ幅方向TWに延びて周方向主溝20に連通するサイプ50が形成されている。ここでサイプとは、タイヤ接地時に接地面内で閉じる溝幅(例えば0.1mm~1.5mm程度の溝幅)に形成された細溝である。なお、本実施形態において、サイプ50は複数屈曲したいわゆる三次元サイプである。
【0022】
図2に示すように、各
ショルダーブロック40の周方向主溝20の第一溝壁21を構成する面における、ショルダー幅方向溝30と交差した角部分41には、タイヤ幅方向TW内側に突出する凸部43が形成されている。
【0023】
本実施形態では、各ショルダーブロック40の凸部43が形成されたタイヤ周方向位置に三次元サイプ50が形成されていない。なお、タイヤ幅方向TW端部の周方向主溝20側が凸部43で開口しないサイプであれば、各ショルダーブロック40の凸部43が形成されたタイヤ周方向位置に形成されていてもよい。
【0024】
各ショルダーブロック40には、タイヤ周方向TCに延び、周方向主溝20の溝幅よりも溝幅が狭いショルダー周方向細溝210が形成されている。なお、ショルダー陸部領域SRに形成されたショルダー周方向細溝210の溝幅は、上限が中央陸部領域CRに形成された中央周方向細溝200の溝幅と同様であり、下限がサイプの溝幅と同様であるように、0.1~4.0mm程度である。
【0025】
また、
図2に示すように、三次元サイプ50のタイヤ幅方向TW外側端は、この
ショルダー周方向細溝210に連通してもよい。
ショルダー周方向細溝210の溝深さは、
図3(a)に示すように、ショルダー幅方向溝30の溝深さよりも浅くてもよい。
【0026】
図2に示すように、凸部43が形成された
ショルダーブロック40の角部分41のショルダー幅方向溝30側の溝壁31は、タイヤ周方向TCに突出した凸形状に形成されてもよい。つまり、タイヤ周方向TCに突出した凸形状を含む
ショルダーブロック40の角部分41は、周方向主溝20及びショルダー幅方向溝30の溝壁に対して、タイヤ幅方向TW内側及びタイヤ周方向TC側に突出した形状になっていてもよい。本実施形態では、ショルダー幅方向溝30の一方の溝壁のみが、タイヤ周方向TCに突出した凸形状を含むように形成されている。
【0027】
図2に示すように、周方向主溝20の第二溝壁23には、凸部43が形成されたタイヤ周方向位置に対向する位置に、タイヤ幅方向TW内側に凹む凹部25が形成されている。第二溝壁23と
図2中に破線で示されたタイヤ幅方向TWに延びる三次元サイプ50の延長線との交点Pは、凹部25のタイヤ周方向TC端を含む凹部25内に位置している。
【0028】
図3(a)~3(c)に示すように、ショルダー陸部領域SRを複数の
ショルダーブロック40に区画するショルダー幅方向溝30の溝壁31は、タイヤ軸方向
TA(図1参照)に垂直な断面における溝底33からトレッド部10の表面35までのタイヤ径方向TRに対する傾斜角度θがタイヤ幅方向TW内側からタイヤ幅方向TW外側にかけて徐々に大きくなる、曲面状の傾斜面32を含んでいる。
【0029】
例えば、
図3(b)に示される、曲面状の傾斜面32のタイヤ幅方向TW内側端における傾斜角度θ
1は、5°以上10°以下である。
図3(c)に示される、曲面状の傾斜面32のタイヤ幅方向TW外側端における傾斜角度θ
2は、5°以上20°以下である
。ただし、曲面状の傾斜面32の傾斜角度θは、タイヤ幅方向TW内側端における傾斜角度θ
1からタイヤ幅方向TW外側端における傾斜角度θ
2にかけて徐々に大きくなる条件を満たす範囲で選択される。
【0030】
実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0031】
本実施形態の
図3(b),3(c)に示すタイヤ軸方向に垂直な断面では、傾斜面32が溝壁31の溝底33からトレッド部10の表面35まで直線状に傾斜している。しかし、曲面状の傾斜面32は、溝底33からトレッド部10の表面35までが傾斜した面であれば、
図3(a)~3(c)に示される実施形態に限定されるものでない。例えば、
図4(a)~4(c)に示す変形例のように、曲面状の傾斜面32Aは、タイヤ軸方向に垂直な断面が、溝壁31の溝底33からトレッド部10の表面35まで下に凸に湾曲して傾斜した面であってもよい。
【0032】
また、
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤのトレッド部10に形成されたトレッドパターンは、駆動時に効果が顕著に発揮されるように、タイヤ回転方向が指定されたパターンになっている。しかし、トレッドパターンはこれに限定されるものでない。例えば、駆動時と制動時とにバランスよく効果を発揮する構成が望ましい場合、タイヤ赤道線CLを境に反転させたパターンとしてもよい。
【0033】
なお、トレッド部10に用いられるゴムには、雪上性能及び耐摩耗性などを考慮し、適宜適切な材料が用いられればよく、特に限定されない。但し、タイヤの転がり抵抗(RR)の低減に貢献する材料が用いられてよい。具体的には、転がり抵抗係数(RRC)は、7.5以下であることが望ましい。
【0034】
(作用・効果)
本実施形態では、
図1に示すように、トレッド部10の中央陸部領域CRには複数の陸部ブロックが凝集した凝集構造が形成される。この構成では、中央陸部領域CR内が
中央周方向細溝200で区画される構造であるため、
中央周方向細溝200で区画されたブロック或いはリブは、変形時に
タイヤ幅方向
TWで互いに支えあい、タイヤ幅方向TWへの変形が抑制される。このため、中央陸部領域CRにおける耐偏摩耗性が向上し得る。さらに、タイヤの転がり抵抗も低減し得る。
【0035】
また、中央陸部領域CRが複数の陸部ブロックがタイヤ幅方向TWに凝集した凝集構造である場合、中央陸部領域CRのタイヤ幅方向TWへの変形が抑制されるため、ショルダー陸部領域SRにおける接地圧が相対的に高まる。これにより、ショルダー陸部領域SRの変形量が大きくなる。このため、中央陸部領域CRが複数の陸部ブロックが凝集した凝集構造であるタイヤでは、ショルダー陸部領域SRに接する氷上路面から生じた水を排水する性能の向上が、タイヤの氷上性能向上のために重要になる。
【0036】
本実施形態では、
図1、
図2に示すように、ショルダー陸部領域SRに形成された
ショルダーブロック40に、タイヤ幅方向TWに延びて一端が周方向主溝20に連通する三次元サイプ50が形成されており、周方向主溝20とショルダー幅方向溝30とが交差する
ショルダーブロック40の角部分41における周方向主溝20の第一溝壁21に、タイヤ幅方向TW内側に突出する凸部43が形成されている。
【0037】
この構成によれば、三次元サイプ50が氷上路面から生じた水を吸収する。そして、三次元サイプ50が吸収した水が周方向主溝20に排水される。ただし、三次元サイプ50が形成された場合でも、周方向主溝20内の水流が速い場合、三次元サイプ50から周方向主溝20への排水が不十分になる恐れがあった。これに対して、本実施形態では、ショルダーブロック40の角部分41における周方向主溝20の第一溝壁21に凸部43が形成されているため、周方向主溝20内の水流が緩やかになり、三次元サイプ50から周方向主溝20への排水性が十分確保される。
【0038】
このように、本実施形態では、タイヤの転がり抵抗を低減しつつ、耐摩耗性、耐偏摩耗性を向上させることができ、さらに、タイヤの氷上性能を向上させることができる。
【0039】
なお、本実施形態において、サイプ50は、三次元サイプである。サイプ50が三次元サイプである場合、サイプの吸水性能が向上するため、ショルダー陸部領域SRと路面との間に生じた水をより速やかに吸水することができる。
【0040】
また、
図2に示すように、本実施形態に係るタイヤにおいて、凸部43が形成された
ショルダーブロック40のタイヤ周方向位置には三次元サイプ50が形成されていない。つまり、凸部43には、周方向主溝20に開口するサイプが形成されていない。この構成によれば、凸部43の剛性が確保され、より確実に周方向主溝20の水流が緩やかにすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、第一溝壁21に凸部43が形成されたタイヤ周方向位置に対向する、周方向主溝20の第二溝壁23のタイヤ周方向位置には、タイヤ幅方向TW内側に凹む凹部25が形成されている。そして、第二溝壁23とタイヤ幅方向TWに延びる三次元サイプ50の延長線との交点Pが、凹部25のタイヤ周方向TC端を含む凹部25内に位置している。
【0042】
この構成によれば、周方向主溝20を流れる水量を低減することなく、周方向主溝20の水流を緩やかにすることができ、排水性能をさらに向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ショルダーブロック40にタイヤ周方向TCに延びるショルダー周方向細溝210が形成されており、三次元サイプ50の他端がショルダー周方向細溝210に連通している。ショルダー周方向細溝210が形成された場合、ショルダーブロック40のタイヤ周方向への変形が可能になるため、タイヤの耐偏摩耗性を向上し得る。さらに、三次元サイプ50の他端からショルダー幅方向溝30への排水が可能になり排水性能がさらに向上する。
【0044】
また、本実施形態では、凸部43が形成されたショルダーブロック40の角部分41におけるショルダー幅方向溝30の溝壁が、タイヤ周方向TCに突出する凸形状を含む。この構成によれば、周方向主溝20からショルダー幅方向溝30への水の侵入が抑制され、周方向主溝20側からトレッド端TE側に排水されるショルダー幅方向溝30内の水流を緩やかにすることができるため、ショルダー周方向細溝210からショルダー幅方向溝30への排水性が確保される。
【0045】
以上のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0046】
10 トレッド部
20 周方向主溝
21 周方向主溝の第一溝壁
23 周方向主溝の第二溝壁
25 凹部
30 ショルダー幅方向溝(幅方向溝)
31 ショルダー幅方向溝の一方の溝壁
32 曲面状の傾斜面
33 溝底
35 トレッド部の表面
40 ショルダーブロック
41 角部分
43 凸部
50 三次元サイプ(サイプ)
200 中央周方向細溝
210 ショルダー周方向細溝
CL タイヤ赤道線
CR 中央陸部領域
SR ショルダー陸部領域
θ 傾斜角度
TE トレッド端
TA タイヤ軸方向
TW タイヤ軸方向
P 三次元サイプの延長線と第二溝壁との交点