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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】捩りバネを備える椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/60 20060101AFI20240516BHJP
   A47C 3/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A47C7/60
A47C3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019217614
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021083995
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田上 友絵
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特許第6527623(JP,B1)
【文献】実開昭63-163662(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0119047(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/60
A47C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と背もたれを有する座体を上面に備えた座受カバーと、当該座受カバーが捩りバネと該捩りバネを外嵌し同軸上の長さ方向の中央部で支持する支持軸を介して床と略平行な倒伏姿勢から所望角度の起立姿勢の間で回転可能に連結されるブラケットと、前記ブラケットと倒伏姿勢の前記受座カバーを支える支持部を設けた横メンバを含む脚部とを備えるネスティングできる椅子であって、
前記捩りバネは、その反発力を、前記座受カバーを含む座体の不使用時の起立角度と使用時の倒伏角度の間の中間における前記座体が前記捩りバネに作用する荷重に平衡するように調整した捩りバネであることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記座受カバーを含む座体は、起立角度と倒伏角度の間の中間において、前記座体に手を添えて起立方向に押すと起立し、倒伏方向に押すと前記捩りバネの反発力に打ち勝つ前記座体の自重で倒伏するように前記捩りバネの反発力を調整した請求項1の椅子。
【請求項3】
前記座受カバーと前記支持部は、当該座受カバー又はその座受カバーが当接する前記支持部に当接保持部材を設けて、前記座受カバーを含む座体の倒伏回転の終端において前記座受カバーが前記支持部に当接した状態を、前記当接保持部材に維持させる請求項1又は2の椅子。
【請求項4】
前記支持部は磁性を有する材料で形成し、前記座受カバーは前記支持部に当接する部位に磁石を前記当接保持部材として備える請求項1~3のいずれかの椅子。
【請求項5】
前記磁石は、前記支持部に非接触状態で前記座受カバーに設ける請求項4の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座面と背もたれを備える座体を、捩りバネの反発力(以下、バネ力ともいう。)を利用して床面に略平行な着座姿勢(使用時の姿勢)から起立姿勢(不使用時の姿勢)に姿勢を変え、床面上で前後方向において積層(以下、ネスティングともいう)できる捩りバネを備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不使用時には上下方向で積層(スタッキング)したり、或は前後方向で積層(ネスティング)することにより、不使用時の占有面積を減じ、収納するときのスペース効率を高めることができるようにした椅子がある。
【0003】
ネスティング椅子においては、バネ力を利用して座体を起立させるために捩りバネ備えた椅子が特許文献1~3などにより公知である。
【0004】
公知の椅子の捩りバネの利用態様は、バネ力だけで座体を起立させている椅子では使用時に座体を床に略平行な倒伏姿勢に保持するため、倒伏姿勢の座体のロック機構が必須であった。公知の椅子には使用者の着座で座体の倒伏姿勢を保持するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3321727号公報
【文献】実公昭64-128号公報
【文献】特許第6527623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、捩りバネのバネ力を利用して座体を起立させる椅子において、座体の倒伏姿勢の保持にロック機構を用いず、また着座者に倒伏姿勢を保持させることもないようにした捩りバネを備えるネスティング椅子を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の捩りバネを備えた椅子の構成は、
座面と背もたれを有する座体を上面に備えた座受カバーと、前記座受カバーが捩りバネと支持軸を介して床と略平行な倒伏姿勢から所望角度の起立姿勢の間で回転可能に連結されるブラケットと、前記ブラケットと倒伏姿勢の前記受座カバーを支える支持部を設けた横メンバを含む脚部とを備える捩りバネを備えた椅子であって、前記捩りバネが、その反発力を、前記座受カバーを含む座体の不使用時の起立角度と使用時の倒伏角度の間の中間とその前後を含む位置(以下、中間位置という)における前記座体が前記捩りバネに作用する荷重に略平衡するように調整したものであることを特徴とする。
【0008】
前記座受カバーを含む座体は、起立角度と倒伏角度の間の略中間地点の角度において、前記座体に手を添えて起立方向に押すと起立し、倒伏方向に押すと前記捩りバネの反発力に打ち勝つ前記座体の自重で倒伏するから、起立終端、及び倒伏終端で衝撃を伴うことはなく緩やかな動作をする。
【0009】
上記椅子は、座受カバーが、略皿状体の上面前端部に、前記ブラケットの前端側が入る挿入穴と、この挿入穴の脇に立設した前記ブラケットに作用して当該座受カバーの起立方向の回転を前記座体に設定した起立角度で阻止し且つ軸穴を設けたストッパ壁とを備え、 前記挿入穴に入るブラケットが、先端部に前記ストッパ壁の軸穴と同軸上に軸受を備え、 前記座受カバーとブラケットが、前記捩りバネを支持する支持軸を前記軸穴と軸受に通して連結され、前記座受カバーが倒伏姿勢から起立側の回転するとき、前記ストッパ壁が前記ブラケットに当接して前記座受カバーの起立回転を前記座体に設定した起立角度で阻止する回転規制機構を備えたものである。
【0010】
前記座受カバーと前記支持部は、当該座受カバー又はその座受カバーが当接する前記支持部に当接保持部材を設けて、前記座受カバーを含む座体の倒伏回転の終端において前記座受カバーが前記支持部に当接した状態の維持を、前記当接保持部材に補わせることができる。
【0011】
本発明では、前記支持部を鋼材で形成し、前記座受カバーは前記支持部に当接する部位に磁石を当接保持部材として備えた構成とすることができる。前記磁石は、前記支持部に非接触状態で前記座受カバーに設け、当接時に金属音がしたり支持部に磁石が当たって塗膜を傷つけたりしないようにできる。
【0012】
前記回転規制機構は、連結される座受カバー自体とブラケット自体の構成によって形成するから、個別独立した専用部品を要しない。従って回転規制機構の構成が簡潔で組立やすく故障も生じにくい。なお、上記椅子における脚フレームは、正面から見て左右幅が異なる2つの脚フレームを、側面視略逆V状を呈するように前記横メンバにおいて結合した形態にできる。
【0013】
前記座受カバーと前記ブラケットは、前記ストッパ壁又はそのストッパ壁が当接する前記座受カバーと前記支持部に、当該座受カバー又はその座受カバーが当接する前記支持部に当接支持部材を設けて、前記座受カバーを含む座体の倒伏回転の終端において前記座受カバーが前記支持部に当接した状態を、前記当接保持部材が維持するようにできる。
【0014】
また前記座体の起立回転の終端における前記受座カバーのストッパ壁が前記ブラケットに当接した状態は、座受カバーに弾発的に係合するクリック部材を前記ブラケットに設けることにより、前記クリック部材が座受カバーに弾発的に係合して座受カバーの終端をクリック感を伴って知得でき終端位置に保持することができる。
【0015】
前記ブラケットは、結合された横メンバに設置され、その設置位置は、前記捩りバネを支持する支持軸の両端部が対応する位置であって前記横メンバの中央寄りの2箇所に設けられる。これにより座受カバーとの連結部位は横メンバの略中央部に位置する。また前記ブラケットは、先端部が離間した2枚立壁を有する管体によって形成され、前記2枚立壁に前記支持軸の軸受が設けられている。前記ブラケットの管体は、その上壁が起立回転するストッパ壁の規制壁として作用する。
【0016】
前記座受カバーに設ける支持壁は、前記座受カバーに設けたブラケットの挿入穴の左右に立設し、前記挿入穴に下から挿入されるブラケットの先端部を挟む位置にある。前記座受カバーのストッパ壁は、前記ブラケットの先端部の2枚立壁に挟まれた位置に設けられる。
【0017】
前記捩りバネは、そのコイル部に挿入した支持軸が、前記座受カバーに設けた支持壁及びストッパ壁の軸穴と前記ブラケットの軸受とに貫通して設けられているから高い安定度で座受カバーに設置される。またこの捩りバネは、その一端側を前記ブラケットを含む前記脚部の固定系に着脱可能に固定し、他端側を前記座受カバーの可動系に着脱可能に固定している。捩りバネのバネ力(反発力)は、前記固定系の固定位置を支持軸の回りに関して変更し座体に対し作用するバネ力(反発力)を調整できる。前記捩りバネの支持軸は、複数組の軸穴と軸受に支持されるから、座受カバーとブラケットの支持軸と捩りバネを介した連結を、高強度で安定度の高いものにしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、捩りバネのバネ力が、起立姿勢(起立角度)と倒伏姿勢(倒伏角度)の中間姿勢(起立角度と倒伏角度の間の中間位置)で捩りバネに作用する座体の荷重と平衡するように調整されているから、前記座体は、中間姿勢から起立終端側に向けては、起立するに連れて姿勢が変わる座体1のバネ力に対する荷重が徐々に小さくなりつつ前記バネ力で起立終端に到達し、一方、バネ力と座体の荷重が平衡している中間位置から倒伏終端に向けては、座体が水平側に倒れて行くにつれバネ力に対する荷重が徐々に大きくなるから、座体は前記バネ力の緩衝作用を受けつつ自重により倒伏終端に至る。本発明では座体の起伏範囲の中間における座体の荷重と捩りバネのバネ力が平衡するようにそのバネ力を調整しているから、座体は急激な動作をすることなく前記バネ力に支えられて緩やかな起伏動作をする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のネスティングできる椅子の一例の斜視図。
図2図1の椅子の正面図。
図3図1の椅子の背面図。
図4図1の椅子の右側面図。
図5図1の椅子の底面図。
図6図1図5の椅子の座体を起立させた右側面図。
図7】ネスティング時の座受カバーの支持部と緩衝部材の関係を示す側面図。
図8図6のA部を拡大した断面図。
図9図1図5の椅子の座体を取り外して座受カバーを見せた拡大平面図。
図10図9の座受カバーの底面図。
図11】座体を取り外して座受カバーの拡大斜視図。
図12図11の座受けカバーを分解した斜視図。
図13】座受カバーとブラケットの連結機構のストッパ壁とブラケットの関係を模式的に示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明椅子の実施の形態側について図を参照して説明する。
図において、1は座面1aと背もたれ1bを備えた座体で、図の側では底面1aと背もたれ1bが合成樹脂成形体により構成されている。座体1の構成は座面1aと背もたれ1bが一体化されているものであれば、図の例に限られず他の形態のものであってもよい。
【0021】
2は、前記座体1を上面に着脱可能に設置した略皿状を呈する浅底の皿状体により形成した座受カバーである。座受カバー2は、図7に平面状態を、図8に底面状態を示すように、前端部の中央寄りに後述するブラケット3が下から入る平面視略長方形の2つの挿入穴2aが設けられている。この座受けカバー2の上面には、夫々の挿入穴2aを左右から挟む2枚の支持壁2bと、前記2枚の支持壁2bに挟まれて2枚のストッパ壁2cとが設けられている。前記支持壁2bとストッパ壁2cは、座受カバー2と一体成形されたものである。この支持壁2bとストッパ壁2cには、後述する支持軸7が通る軸穴Shが設けられ、この軸穴Shの同軸上にはブラケット3の先端部に設ける軸受Sbが対応している。2eは座体1又は背もたれとは別体の座面(図示せず)の通付用のボルト穴などによる取付部で座受カバーの外周近くの4箇所に設けられている。なお椅子の座体1を外して座受カバー2の内部の回転機構等のメンテナンスをするとき、ボルト穴2eを利用する必要があるため、座受カバー2は倒伏姿勢に保持する必要がある。そこで座受カバー2を倒伏姿勢に保持するため2つのジグ穴2fを座面カバー2の前部に設けている。このジグ穴2fにピン状のジグ部材(図示せず)を差し込むと、座面カバー2が起立しようとしても前記ジグ部材が後述する横メンバ4bに設けた緩衝部材9に当って座受カバー2の起立回転を阻止するから、座面カバー2を略水平姿勢に保持してメンテナンス作業を行える。
【0022】
座受カバー2とブラケット3の上記構成により、座体1を起伏させる座受カバー2とブラケット3の連結部を構成する部材は、座受カバー2の上面と座体1の下面が形成する空間内にすべて収まり、前記連結機構や回転規制機構を外部に露出させない。
【0023】
4,5は、床に略平行な横メンバ4a、5aを左右の縦メンバ4b,5bの上に有する正面視略門型をなす2つの脚フレームで、手前側(前方)の脚フレーム4の左右の縦メンバ4bを正面から見た左右幅が、向こう側(後方)の脚フレーム5の左右の縦メンバ5bの左右幅よりも大きく形成されている。2つの脚フレーム4,5は、その横メンバ4a、5aが前後方向で重複する形で一体化されて脚部を形成する。
【0024】
合体された前後の脚フレーム4,5は、その縦メンバ4b、5bが側面視略逆V状に形成されている。この構成により使用時の本発明椅子を人の立姿勢の視点で見ると、前後の脚フレーム4,5のみが、座受カバー2の下面の一箇所から斜め下方に延出しているように見えこれがデザイン上の特徴になる。
【0025】
前記脚フレーム4,5の一体化された横メンバ4a,5aの中央部寄りには、座受カバー2の前方に向けて2つのブラケット3,3が平行姿勢で突出して設けられていると共に、前記ブラケット3と反対方向に向けて平面視略U状の支持部6が設けられている。支持部6は座体1の倒伏姿勢を下から支持する部材である。前記横メンバ4a,5aには、ネスティング時に、前の椅子の支持部6に当接する緩衝部材9が設けられている。この緩衝部材9の設置位置は、横メンバ4a,5aに代え、図示しないが支持部6の中央部や座受カバー2の下面に配置することができる。緩衝部材9が支持部6や座受カバー2の下面に設けられたときは、ネスティングされる後ろの椅子の先端部を緩衝する。座受カバー2の緩衝部材9は座受カバー2が樹脂成型品の場合一体成型される。なお、4c、5cは脚フレーム4,5の下端部に設けたキャスタである。
【0026】
前記座受カバー2とブラケット3は、座受カバー2の上に一体成型された前記支持壁2bとストッパ壁2cに同軸上の軸穴Shを有し、また座受けカバー2の2つの挿入穴2aから座受カバー2の上面側に露出した左右のブラケット3には前記軸穴Shと同軸上に軸受Sbを有する。前記軸穴Shと軸受Sbを貫通して支持軸7が配置されると、座受カバー2とブラケット3が回転自在に連結される。
【0027】
前記支持軸7は捩りバネ8のコイル部に嵌挿されるから捩りバネ8は支持軸7と一緒に座受カバー2の前端部に配置される。配置された捩りバネ8は、その一端8aが座受カバー2による可動系に固定され、他端8bがブラケット3を含む脚フレーム4,5の固定系に固定される。81aは前記一端8aを座受カバー2に固定するための固定部材である。なお、固定部材81aは、捩りバネ8の一端8aを座受カバー2の下面に押付けてネジ81bで取り付けられるため、固定部材81aの押え込みとネジ81bの締込みを一人で行うことは事実上不可能である。しかし固定部材81aの前端辺を、座面カバー2に設けた係止部(図示せず)に引掛けて支持できるようにすると、固定部材81aの前端辺を係止部に引掛けて片方の手で固定部材81aを押え込み、もう一方の手でネジ81bの締込みを行うことができるため、より組立てが容易になる。支持軸7によって回転可能に連結されたブラケット3と座受カバー2に対し、前記捩りバネ8が座受カバー2を起立させる側に付勢する。
【0028】
本発明では、座体1の起立角度を、一例として60度~30度、好ましくは45度~35度程度の範囲で設定する。この設定において前記捩りバネ8の反撥力(バネ力)は、座体1の倒伏角度と起立角度の間の中間位置における座体1が、前記捩りバネ8に作用する荷重と略平衡するように調整している。バネ力を前記座体1の前記略中間地点での荷重と略平衡させると、座体1が倒伏姿勢(床と略平行)になるとき、捩りバネ8のバネ力は、この捩りバネ8に作用する座体1の荷重よりも小さくなる(倒伏側に回転する座体1の荷重とバネ力の平衡が崩れる)ため、座体1は自重で倒伏側に回転し倒伏終端に至るから、ロック機構を要せず倒伏姿勢を保持できる。
【0029】
本発明では、座体1の起立角度と倒伏角度の中間位置の角度において捩りバネ8に作用する座体1の荷重と捩りバネ8の反発力を平衡させている。このため座体1には中間位置から起立終端に至る起立動作中に前記バネ力に対する荷重が徐々に小さくなって座体1は緩やかに起立する。起立終端は座受カバー2に設けたストッパ壁2cの上面22cがブラケット3の内面の上壁3aに当接することにより知得でき、その位置にバネ力で保持される。一方、座体1の倒伏は、前記中間位置以降の座体1のバネ力に対する荷重が徐々に大きくなるから座体1は緩やかに倒伏動作をする。倒伏終端は、座受カバー2の下面2dに設けた当接部21が脚フレーム4,5に設けた支持部6の上面6aに当接することにより知得でき、その位置に座体1の自重で保持される。
【0030】
本発明椅子では、捩りバネ8のバネ力が、起立姿勢(起立角度)と倒伏姿勢(倒伏角度)の中間姿勢(起立角度と倒伏角度の間の中間位置における角度)で捩りバネ8に作用する座体1の荷重と平衡するように調整されている。これにより座体1は、中間姿勢から起立終端側に向けては、起立するに連れて姿勢が変わる座体1のバネ力に対する荷重が徐々に小さくなるから、前記バネ力で起立終端に到達する。一方、バネ力と座耐1の荷重が平衡している中間位置から倒伏終端に向けては、座体1が水平側に倒れてバネ力に対する荷重が徐々に大きくなるから座体1は前記バネ力の緩衝作用を受けつつ自重により倒伏終端に至る。このように座体1は、その起伏範囲の中間位置における座体の荷重と平衡するようにバネ力を調整しているから緩やかな起伏動作をする。
【0031】
上記のように緩やかに起立する座体1の起立終端は、ストッパ壁2cとブラケット3の当接(ストッパ壁2cの上面22cがブラケット3の上壁3aに当接すること)によって知得できる。一例として図11に模式的に示すように前記ブラケット3に、起立終端姿勢の座受カバー2に弾発的に係合する凸部33bを有するクリック部材3bを配置しておくと、前記凸部33bが座体1の起立終端に座受カバー2と弾発的に係合するから、これによってクリック感を伴って前記当接を知得できる。図11では、ブラケット3に弾発性の凸部33bを有する駒状のクリック部材3bを配置し、座受カバー2が起立終端側に回転すると、起立する座受カバー2の凹みの縁23cが凸部33bを弾いてクリック部材3bと係合するから、この一連の動作で座体1の起立終端のクリック感を伴う知得と起立終端の姿勢の保持ができる。
【0032】
座体1の倒伏終端は、座受カバー2の下面2dが支持部6の上面6aに当接することによって知得でき、座受カバー2を含む座体1の自重で当接状態を保持できる。この倒伏終端を、クリック感を伴って知得するには、例えば、支持部6の上面6aに対面する座受カバー2の下面2dに、当接保持部材として磁石21aを有する合成樹脂製の当接部21を設けておくとよい。そうすると座体1の倒伏終端を座受カバー2の当接部21が支持部6に当接するとき、磁石21aが支持部6を吸着するから、磁力の吸着感で倒伏終端を、クリック感を伴って知ることができ、座体1をその位置に保持できる。なお、磁石21aは、当接部21の表面や内部に設けるほか、当接部21自体を磁石で形成してもよい。また前記磁石21aは支持部6の側に設けることもできる。また支持部6と座受カバー2の間に、摩擦による係合力で両部材2,6の当接を保持する部材を、前記磁石に代えて設けることもできる。なお、磁石21aは吸着する相手側に非接触で設けることが望ましい。このため図8に示す例では、磁石21aの表面を露出させて当接部21に埋設している。
【0033】
本発明のネスティング椅子では、座体の起伏回転範囲の中間において捩りバネにかかる座体の荷重と捩りバネのバネ力を平衡させているから、バネ力は中間位置から起立終端側に向かう回転に付勢力として作用し、中間から倒伏終端側への回転では緩衝力として作用するから、座体の起伏動作を緩やかに行わせることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 座体
2 座受カバー
3 ブラケット
4,5 脚フレーム
6 支持部
7 支持軸
8 捩りバネ
9 緩衝部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13