(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】制御装置、圧入ユニット、圧入システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B23P 19/02 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B23P19/02 B
(21)【出願番号】P 2020037628
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】安井 良平
(72)【発明者】
【氏名】河合 聡志
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 光男
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-190137(JP,A)
【文献】特開2000-158244(JP,A)
【文献】特開2005-131777(JP,A)
【文献】特開平09-277122(JP,A)
【文献】特開平03-239435(JP,A)
【文献】米国特許第06085604(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入材を軸線方向に加圧することにより被圧入材に圧入する圧入軸が前記圧入材に接触する接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサから、前記接触面の軸線方向の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサから前記接触面にかかる圧の情報を取得する圧情報取得部と、
前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得部により前記圧入軸が前記圧入材に当
接したことを示す所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材に当
接したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める演算部と、
前記演算部により演算された前記圧入軸が前記圧入材に当
接したときの前記圧入材の軸線方向の位置と、予め記憶された前記圧入材が前記被圧入材に圧入される基準位置との差が、所定値以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が所定値以上であると判定した場合に、前記圧入軸を加圧方向に駆動する駆動制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記圧入材を前記被圧入材に圧入する際の加圧が解除された後、前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得部が所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の位置に基づき、前記圧入材の軸線方向の位置を演算する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記圧入軸が減圧方向に駆動され、前記圧情報取得部により前記圧入軸が前記圧入材と離間したことを示す所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材と離間したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記演算部が演算する前記圧入材の位置と、前記基準位置との差分を算出し、
前記駆動制御部は、前記判定部が算出する差分に基づき、差分が存在する場合には前記圧入軸を加圧方向に駆動することにより、先の圧入により不足した差分の圧入を後の圧入により補い、差分が存在しない場合には前記圧入軸を加圧方向に駆動しない
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記判定部が算出する差分に基づき、差分が存在する場合には前記基準位置の情報が記憶された記憶部を更新し、差分が存在しない場合には前記基準位置の情報が記憶された記憶部を更新しない更新部を更に備える
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記圧入軸が減圧方向に駆動され、前記圧情報取得部が取得する前記接触面にかかる圧の情報が閾値と一致又は閾値以下となったときに前記接触面と前記圧入材とが離間していると判定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサと、
前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサと、
前記圧入軸を軸線方向に駆動する駆動部と
を備える圧入ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の圧入ユニットと、
前記圧入ユニットから次工程の作業スペースへ、前記圧入材と前記被圧入材とを搬送する搬送ユニットと
を備える圧入システム。
【請求項9】
圧入材を軸線方向に加圧することにより被圧入材に圧入する圧入軸が前記圧入材に接触する接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサから、前記接触面の軸線方向の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサから前記接触面にかかる圧の情報を取得する圧情報取得工程と、
前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得工程により前記圧入軸が前記圧入材に当
接したことを示す所定の圧が取得されたときに前記位置情報取得工程により取得された前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材に当
接したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める演算工程と、
前記演算工程により演算された前記圧入軸が前記圧入材に当
接したときの前記圧入材の軸線方向の位置と、予め記憶された前記圧入材が前記被圧入材に圧入される基準位置との差が、所定値以上であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により所定値以上であると判定された場合に、前記圧入軸を加圧方向にさらに駆動する駆動制御工程と
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、圧入ユニット、圧入システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧入技術において、複数回にわたり圧入材を加圧することにより、被圧入材に対する圧入材の位置(以下、圧入位置と記載する。)を、目標とする圧入位置まで圧入する技術が知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来技術によると、圧入軸と圧入材とが離隔する際に被圧入材が振動することにより、圧入位置が正確に測定できないといった問題が生じていた。圧入位置が正確に測定できないことにより、実際の圧入位置と目標とする圧入位置との間に差が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、被圧入材の振動による影響を受けることなく圧入材の圧入位置を測定可能な制御装置、圧入ユニット、圧入システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る制御装置は、圧入材を軸線方向に加圧することにより被圧入材に圧入する圧入軸が前記圧入材に接触する接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサから、前記接触面の軸線方向の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサから前記接触面にかかる圧の情報を取得する圧情報取得部と、前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得部により前記圧入軸が前記圧入材に当接したことを示す所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材に当接したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める演算部と、前記演算部により演算された前記圧入軸が前記圧入材に当接したときの前記圧入材の軸線方向の位置と、予め記憶された前記圧入材が前記被圧入材に圧入される基準位置との差が、所定値以上であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が所定値以上であると判定した場合に、前記圧入軸を加圧方向に駆動する駆動制御部とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る制御装置において、前記演算部は、前記圧入材を前記被圧入材に圧入する際の加圧が解除された後、前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得部が所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の位置に基づき、前記圧入材の軸線方向の位置を演算する。
また、本発明の一態様に係る制御装置において、前記演算部は、前記圧入軸が減圧方向に駆動され、前記圧情報取得部により前記圧入軸が前記圧入材と離間したことを示す所定の圧を取得したときに前記位置情報取得部が取得する前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材と離間したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める。
【0008】
また、本発明の一態様に係る制御装置において、前記判定部は、前記演算部が演算する前記圧入材の位置と、前記基準位置との差分を算出し、前記駆動制御部は、前記判定部が算出する差分に基づき、差分が存在する場合には前記圧入軸を加圧方向に駆動することにより、先の圧入により不足した差分の圧入を後の圧入により補い、差分が存在しない場合には前記圧入軸を加圧方向に駆動しない。
【0009】
また、本発明の一態様に係る制御装置は、前記判定部が算出する差分に基づき、差分が存在する場合には前記基準位置の情報が記憶された記憶部を更新し、差分が存在しない場合には前記基準位置の情報が記憶された記憶部を更新しない更新部を更に備える。
また、本発明の一態様に係る制御装置において、前記判定部は、前記圧入軸が減圧方向に駆動され、前記圧情報取得部が取得する前記接触面にかかる圧の情報が閾値と一致又は閾値以下となったときに前記接触面と前記圧入材とが離間していると判定する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る圧入ユニットは、上述した制御装置と、前記接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサと、前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサと、前記圧入軸を軸線方向に駆動する駆動部とを備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る圧入システムは、上述した圧入ユニットと、前記圧入ユニットから次工程の作業スペースへ、前記圧入材と前記被圧入材とを搬送する搬送ユニットとを備える。
【0012】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、圧入材を軸線方向に加圧することにより被圧入材に圧入する圧入軸が前記圧入材に接触する接触面の軸線方向の位置を検出する位置センサから、前記接触面の軸線方向の位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記接触面にかかる圧を検出する圧力センサから前記接触面にかかる圧の情報を取得する圧情報取得工程と、前記圧入軸が加圧方向に駆動され、前記圧情報取得工程により前記圧入軸が前記圧入材に当接したことを示す所定の圧が取得されたときに前記位置情報取得工程により取得された前記接触面の軸線方向の位置を、前記圧入軸が前記圧入材に当接したときの前記圧入材の軸線方向の位置として求める演算工程と、前記演算工程により演算された前記圧入軸が前記圧入材に当接したときの前記圧入材の軸線方向の位置と、予め記憶された前記圧入材が前記被圧入材に圧入される基準位置との差が、所定値以上であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程により所定値以上であると判定された場合に、前記圧入軸を加圧方向にさらに駆動する駆動制御工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被圧入材の振動による影響を受けることなく圧入材の圧入位置を測定可能な制御装置、圧入ユニット、圧入システム及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る圧入システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る圧入システムの動作の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る圧入ユニットが備える圧入制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る加圧時における被圧入材のたわみについて説明するための図である。
【
図5】本実施形態に係る加圧時及び減圧時における圧入反力について説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る圧入ユニットの動作の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る圧入材の位置が所定の範囲内にある場合の動作の一例を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る圧入材の位置が所定の範囲内にない場合の動作の一例を説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る圧入ユニットが差分算出部を備える場合の機能構成の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る圧入ユニットが更新部を備える場合の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[圧入システム1の構成]
図1は、本実施形態に係る圧入システム1の構成の一例を示す図である。同図を参照しながら圧入システム1の構成について説明する。圧入システム1は、被圧入材82に対し圧入材81を加圧することにより圧入する圧入工程から、圧入工程が行われた圧入材81及び被圧入材82を次工程の作業スペースまで搬送する一連の動作を行う。以降の説明において、圧入システム1が行う種々の動作の方向を、x軸及びy軸の直交座標系によって説明する場合がある。
【0017】
圧入システム1は、圧入ユニット10と、システム制御部50と、搬送ユニット70とを備える。
圧入ユニット10は、圧入制御部(制御装置)11と、モータ(駆動部)21と、エンコーダ(位置センサ)22と、ロードセル(圧力センサ)23とを備える。
【0018】
モータ21は、圧入軸15を軸線方向(y軸方向)に駆動する。圧入軸15は、圧入材81を軸線方向に加圧することにより、被圧入材82に圧入する。
以後、圧入軸15の圧入材81に接触する面を接触面16と記載する。軸線方向のうち、圧入材81を被圧入材82加圧する方向を加圧方向(+y軸方向)と記載し、軸線方向の加圧方向とは異なる方向を減圧方向(-y軸方向)と記載する。
【0019】
エンコーダ22は、接触面16の軸線方向の位置を検出する。
以降、位置センサがエンコーダ22である場合の一例について説明するが、本実施形態において位置センサは、接触面16の軸線方向の位置を検出可能な、その他のセンサにより構成されていてもよい。
【0020】
ロードセル23は、圧入軸15が備える接触面16にかかる圧を検出する。
以降、圧力センサがロードセル23である場合の一例について説明するが、本実施形態において圧力センサは、接触面16にかかる圧を検出可能な、その他のセンサにより構成されていてもよい。
【0021】
圧入制御部11は、エンコーダ22から接触面16の位置を取得し、ロードセル23から接触面16にかかる圧を取得する。圧入制御部11は取得した接触面16の位置と、接触面16にかかる圧とに基づき、モータ21を駆動する。
【0022】
搬送ユニット70は、圧入材81と、被圧入材82とを搬送する。具体的には、搬送ユニット70は、圧入ユニット10の作業スペースにおいて圧入ユニット10により圧入工程が行われた圧入材81及び被圧入材82を、次工程の作業スペースに搬送する。例えば、搬送ユニット70はベルトコンベアである。
【0023】
[圧入システム1の動作]
図2は、本実施形態に係る圧入システム1の動作の一例を示す図である。同図を参照しながら、圧入システム1の動作について説明する。
(ステップS11)搬送ユニット70は、圧入ユニット10の作業スペースに圧入材81及び被圧入材82を搬送する。
(ステップS12)圧入ユニット10は、圧入軸15を加圧方向に駆動させることにより、被圧入材82に対し圧入材81を圧入する。
(ステップS13)システム制御部50は、圧入ユニット10による圧入が行われた後、搬送ユニット10を制御する。搬送ユニット70は、圧入ユニット10の作業スペースから次工程の作業スペースへ、圧入材81及び被圧入材82を搬送する。
【0024】
[圧入ユニット10の機能構成]
図3は、本実施形態に係る圧入ユニット10が備える圧入制御部11の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、圧入制御部11の機能構成について説明する。
圧入制御部11は、位置情報取得部111と、圧情報取得部112と、演算部113と、判定部114と、駆動制御部115とを備える。
【0025】
位置情報取得部111は、エンコーダ22から、圧入軸15が備える接触面16の軸線方向の位置情報(位置情報I1)を取得する。位置情報取得部111は、取得した位置情報I1を演算部113に提供する。
【0026】
圧情報取得部112は、ロードセル23から、圧入軸15が備える接触面16にかかる圧の情報(圧情報I2)を取得する。圧情報取得部112は、取得した圧情報I2を演算部113に提供する。
【0027】
演算部113は、位置情報取得部111から位置情報I1を取得し、圧情報取得部112から圧情報I2を取得する。演算部113は、取得した位置情報I1と、圧情報I2とに基づき、圧入材81の軸線方向の位置を演算する。具体的には、演算部113は、圧入軸15が加圧方向に駆動され、圧情報取得部112が所定の圧を取得したとき(つまり、圧入軸15が圧入材81に当接したとき)の接触面16の位置に基づき、圧入材81の軸線方向の位置を演算する。演算部113は、演算した結果である圧入材81の位置情報(圧入材位置情報I3)を判定部114に提供する。
【0028】
判定部114は、演算部113から圧入材位置情報I3を取得する。判定部114は、圧入材位置情報I3に示される圧入材81の位置と、圧入材81が被圧入材82に圧入される基準位置との差が所定値以上であるか否かを判定する。
例えば、判定部114は、基準位置記憶部(記憶部)12から基準位置を示す情報(基準位置情報I4)を取得する。判定部114は、取得した基準位置情報I4に示される基準位置と、圧入材位置情報I3に示される圧入材81の位置とを比較し、その差が所定値以上であるか否かを判定する。
判定部114は、判定した結果を判定情報I5として駆動制御部115に提供する。
【0029】
駆動制御部115は、判定部114が判定した結果に基づき、モータ21を駆動する。具体的には、駆動制御部115は判定部114から判定情報I5を取得し、取得した判定情報I5に基づき、モータ21を駆動する。例えば、駆動制御部115は、判定部114により、圧入材位置情報I3に示される圧入材81の位置情報と基準位置情報I4に示される基準位置との差が所定値以上であると判定された場合に、モータ21を駆動することにより圧入軸15を加圧方向に駆動する。駆動制御部115は、圧入軸15を加圧方向に駆動することにより、圧入材81の位置が、基準位置情報I4に示される基準位置に近づくよう、更に圧入する。
【0030】
図4は、本実施形態に係る加圧時における被圧入材82のたわみについて説明するための図である。同図を参照しながら、被圧入材82のたわみについて説明する。同図は、圧入ユニット10の作業スペースにおいて、圧入ユニット10が被圧入材82に対し圧入材81を圧入する場合の、圧入ユニット10、圧入材81及び被圧入材82のx-y平面における断面図である。
【0031】
図4(A)は、加圧前の状態を示す図である。この一例において、被圧入材82は、符号L1の厚さと符号L2の幅とを有する被加圧部811と、符号L3の幅と符号L4の高さとを有する支部812とを有する。同図に示すように構成される被圧入材82には、圧入軸15により圧入材81が加圧されることにより、たわみが生じる場合がある。
【0032】
図4(B)は、加圧中の状態を示す図である。同図に示す一例において、圧入材81は、圧入軸15により被圧入材82に圧入されている。ここで、被圧入材82の被加圧部811の厚さL1と幅L2とにより、たわみが発生する場合がある。具体的には、L1:L2=1:1~5の場合において、たわみが発生する場合がある。なお、圧入材81の材質、はめ合い等によりたわみの発生しやすさは変動する。
図4(B)に示す一例では、被圧入材82には符号L5のたわみが生じている。
【0033】
図4(C)は、減圧後の状態を示す図である。圧入軸15による加圧が解除された後、被圧入材82と、圧入軸15が備える接触面16とは離隔する。
図4(B)に示したたわみが弾性変形によるものである場合、被圧入材82の被加圧部811には復元変形(スプリングバック)が生じる。このように被圧入材82の被加圧部811に弾性変形が生じることにより、符号L6に示す圧入不足が生じる。
【0034】
圧入軸15の減圧時において、圧入軸15が軸線方向に駆動される速さによっては、圧入軸15が圧入材81から離隔する際に、復元変形により被圧入材82の被加圧部811に振動が生じる場合がある。
例えば、圧入軸15が備える接触面16と圧入材81とが離隔する際に接触面16の軸線方向の位置を測定する場合、被圧入材82の被加圧部811に振動が生じているため、測定結果と実際の値との間に差が生じる場合がある。したがって本実施形態において、圧入ユニット10は、接触面16と圧入材81とが当接する際に、接触面16の軸線方向の位置を測定する。
【0035】
図5は、本実施形態に係る加圧時及び減圧時における圧入反力について説明するための図である。
図5(A)には、圧入軸15、圧入材81及び被圧入材82のx-y平面における断面図を示す。
図5(B)には、圧入軸15が備える接触面16にかかる圧入反力の時間毎の変化を示す。
図5(C)には、圧入軸15が備える接触面16の軸線方向の位置(座標)の時間毎の変化を示す。
【0036】
図5(A-1)は時刻t11以前における状態を示す図である。
時刻t11以前において、圧入軸15は圧入材81と離隔した状態で停止している。圧入軸15は圧入材81と離隔しているため、圧入反力はゼロである。
圧入軸15の停止位置の座標をゼロとする。時刻t11以前において、座標はゼロである。時刻t11において、圧入軸15は加圧方向に駆動される。
【0037】
図5(A-2)は時刻t12における状態を示す図である。時刻t12において、接触面16と圧入材81とは当接する。すなわち、時刻t12において圧入反力が発生する。圧入制御部11は、圧入制御部11が取得する接触面16の圧が、閾値Pthと一致した場合又は閾値Pthを超えた場合には、接触面16と圧入材81とは当接していると判定する。
【0038】
時刻t12から時刻t13において、圧入軸15は加圧方向に駆動される。時刻t12から時刻t13において、座標の変化に伴い、圧入反力は変化する。
時刻t13から時刻t14において、圧入軸15は加圧状態を保持したまま制止される。
【0039】
時刻t14において、圧入軸15は減圧方向に駆動される。時刻t14から時刻t15において、座標の変化に伴い、圧入反力は変化する。時刻t15において、接触面16と圧入材81とは離隔する。すなわち、時刻t15において圧入反力は消失する。圧入制御部11は、圧入制御部11が取得する接触面16の圧が、閾値Pthと一致した場合又は閾値Pth以下になった場合には、接触面16と圧入材81とは離隔していると判定する。
【0040】
図5(A-3)は時刻t16以降における状態を示す図である。時刻t16以降において、圧入軸15は圧入材81と離隔した状態で停止している。圧入軸15は圧入材81と離隔しているため、圧入反力はゼロである。
【0041】
図6は、本実施形態に係る圧入ユニット10の動作の一例を示す図である。同図を参照しながら、圧入ユニット10の一連の動作について説明する。
(ステップS21)駆動制御部115は、圧入材81を被圧入材82に特定量圧入する。例えば特定量とは、不図示の記憶部に記憶された値である。駆動制御部115は、特定量の圧入を行うと、処理をステップS22に進める。
【0042】
(ステップS22)演算部113は、ステップS21による圧入材81を被圧入材82に圧入する際の加圧が解除された後、圧入材81の軸線方向の位置を演算する。駆動制御部115は圧入軸15の接触面16を軸線方向に駆動し、圧情報取得部112は接触面16にかかる圧の情報を取得する。演算部113は、接触面16の圧が、所定の閾値と一致した場合又は閾値Pthを超えた場合には、接触面16と圧入材81とは当接していると判定する。演算部113は、接触面16と圧入材81とが当接した状態における接触面16の位置情報を、圧入材81の軸線方向の位置として算出する。
【0043】
(ステップS23)判定部114は、演算部113が算出した圧入材81の軸線方向の位置と、基準位置情報とを比較し、圧入材81の位置が所定の範囲内にあるか否かを判定する。圧入材81が所定の範囲内にある場合(すなわち、ステップS23;YES)には、処理をステップS25に進める。圧入材81が所定の範囲内にない場合(すなわち、ステップS23;NO)には、処理をステップS24に進める。
【0044】
(ステップS24)駆動制御部115は、圧入軸15を駆動することにより、圧入材81を更に被圧入材82に圧入する。駆動制御部115は、更に圧入を行った後、処理をステップS22に進める。
【0045】
(ステップS25)搬送ユニット70は、圧入材81及び被圧入材82を、圧入ユニット10の作業スペースから、次工程の作業スペースに移動させる。搬送ユニット70は搬送を行った後、処理を終了する。
【0046】
図7は、本実施形態に係る圧入材81の位置が所定の範囲内にある場合の動作の一例を説明するための図である。
図7(A)には、圧入軸15が備える接触面16にかかる圧入反力の時間毎の変化を示す。
図7(B)には、圧入軸15が備える接触面16の軸線方向の位置(座標)の時間毎の変化を示す。
【0047】
時刻t21以前において、圧入軸15は停止位置で、圧入材81と離隔した状態で停止している。圧入軸15は圧入材81と離隔しているため、圧入反力はゼロである。時刻t21において、圧入軸15は加圧方向に駆動される。時刻t22において、接触面16と圧入材81とは、座標z21で当接する。すなわち、被圧入材82には、時刻t22において圧入反力が発生する。圧入軸15は、時刻t22から時刻t23において加圧方向に駆動され、時刻t23から時刻t24において加圧状態を保持したまま制止される。接触面16が加圧状態を保持したまま制止される場合の座標は、座標z22であり、接触面16が加圧状態を保持したまま制止しているときの圧入反力は圧入反力f21である。
【0048】
時刻t24から時刻t26において、圧入軸15は減圧方向に駆動される。時刻t25において、接触面16と圧入材81とは座標z23で離隔する。圧入材81は、被圧入材82に圧入されているため、加圧方向(+y軸方向)において、座標z23は、座標z21より大きい。
【0049】
圧入軸15は、時刻t27において、加圧方向に駆動される。時刻t28において接触面16と圧入材81とは座標z24で当接する。この一例において、座標z24は所定の範囲内であるため、圧入軸15は更に加圧を行わず、減圧方向に駆動される。圧入材81と被圧入材82とは、搬送ユニット70により次工程の作業スペースに搬送される。
【0050】
図8は、本実施形態に係る圧入材81の位置が所定の範囲内にない場合の動作の一例を説明するための図である。
図7(A)には、圧入軸15が備える接触面16にかかる圧入反力の時間毎の変化を示す。
図7(B)には、圧入軸15が備える接触面16の軸線方向の位置(座標)の時間毎の変化を示す。
同図における一例では、圧入材81の位置が所定の範囲内にない場合である点において
図7と異なる。
図7と同じタイミングについては、同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。
【0051】
圧入軸15は、時刻t31において、加圧方向に駆動される。時刻t32において接触面16と圧入材81とは座標z31で当接する。この一例において、座標z31は所定の範囲内でないため、圧入軸15は加圧方向に更に駆動される。
圧入軸15は、時刻t32から時刻t33において加圧方向に更に駆動され、時刻t33において座標z33で制止される。圧入軸15は、時刻t33から時刻t34において加圧状態を保持したまま制止される。
【0052】
時刻t34から時刻t36において、圧入軸15は減圧方向に駆動される。時刻t35において、接触面16と圧入材81とは座標z32で離隔する。この場合、1回目の圧入工程より更に圧入されているため、座標z32は、座標z23より大きい。
【0053】
次に、
図7にて説明したように、圧入軸15は、時刻t27において、加圧方向に駆動される。時刻t28において接触面16と圧入材81とは座標z24で当接する。この一例において、座標z24は所定の範囲内であるため、圧入軸15は更に加圧を行わず、減圧方向に駆動される。圧入材81と被圧入材82とは、搬送ユニット70により次工程の作業スペースに搬送される。
【0054】
このように、本実施形態に係る圧入ユニット10の圧入制御部11は、演算部113が算出した圧入材81の軸線方向の位置と、基準位置情報とを比較し、圧入材81の位置が所定の範囲内にあるか否かを判定する判定部114と、判定部114が所定値以上であると判定した場合に、圧入軸15を加圧方向に駆動する駆動制御部115とを備える。
【0055】
[差分算出部116]
図9は、本実施形態に係る圧入ユニット10Aの圧入制御部11Aが差分算出部116を備える場合の機能構成の一例を示す図である。圧入ユニット10Aは、差分算出部116を備える点において、圧入ユニット10とは異なる。圧入ユニット10と同様の構成については、
図3と同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0056】
この一例において、圧入制御部11Aの判定部114Aは差分算出部116を備える。圧入制御部11A及び判定部114Aは、それぞれ、圧入制御部11及び判定部114の一例である。差分算出部116は、圧入材位置情報I3に示される圧入材81の位置と、基準位置情報I4に示される基準位置を示す情報との差分を算出する。判定部114Aは、差分算出部116が算出した差分を、差分情報I7とし、判定情報I5と共に駆動制御部115に提供する。
この場合、駆動制御部115は、差分情報I7に示される差分に基づいて、圧入軸15を加圧方向に駆動する。
【0057】
[更新部117]
図10は、本実施形態に係る圧入ユニット10Bの圧入制御部11Bが更新部117を備える場合の機能構成の一例を示す図である。圧入ユニット10Bは、更新部117を備える点において、圧入ユニット10Aとは異なる。圧入ユニット10Aと同様の構成については、
図9と同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0058】
この一例において、圧入制御部11Bは更新部117を備える。圧入制御部11Bは、圧入制御部11の一例である。更新部117は、差分算出部116が算出した差分情報I7を取得する。更新部117は、差分情報I7に基づいて、基準位置記憶部12を更新する。
すなわち、更新部117は、圧入材位置情報I3に示される圧入材81の位置と、基準位置情報I4に示される基準位置を示す情報との間に差分がある場合には、その差分を補正するよう更新部117により基準位置情報I4を更新する。
【0059】
[実施形態の効果のまとめ]
以上説明したように、圧入ユニット10は、エンコーダ22が検出した接触面16の軸線方向の位置と、ロードセル23が検出した接触面16にかかる圧とに基づき、圧入材81の位置を検出する。具体的には、圧入軸15が加圧方向に駆動され、接触面16と圧入材81とが当接したときの接触面16の位置に基づき、圧入材81の軸線方向の位置を検出する。圧入ユニット10は、検出した圧入材81の位置が所定の範囲内にない場合、更に圧入を行う。
したがって、圧入ユニット10が測定する圧入材81の位置は、被圧入材82の弾性変形による振動の影響を受けない。よって、圧入ユニット10は、被圧入材82の振動による影響を受けることなく圧入材81の圧入位置を測定することができる。
【0060】
また、上述した実施形態によれば、圧入ユニット10は、加圧が解除された後、圧入軸15が圧入材81に当接したときの位置情報に基づき、圧入材81の軸線方向の位置を算出する。したがって、圧入ユニット10は、圧入を行った後、圧入後の圧入材81の軸線方向の位置を、被圧入材82の振動による影響を受けることなく検出することができる。
【0061】
また、上述した実施形態によれば、圧入ユニット10は、演算部113が算出する圧入材81の軸線方向の位置と、基準位置との差を算出し、算出された差分に基づき圧入軸15を駆動する。したがって、圧入ユニット10は、先の圧入により不足した差分の圧入を、後の圧入により補うことができる。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、圧入ユニット10は、基準位置記憶部12に記憶された基準位置情報I4を更新する更新部117を更に備える。更新部117は、差分算出部116が算出した差分に基づき、基準位置記憶部12に記憶された基準位置情報I4を更新する。したがって、圧入ユニット10は、検出された圧入材81の軸線方向の位置と、基準位置との差がある場合には、基準位置の情報を更新することにより、圧入による誤差の発生を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【0064】
本実施例において、駆動部としてモータ21を使用した例を挙げたが、圧入材81の軸線方向の位置を被圧入材82に対して調整可能なアクチュエータであればよい。例えば、比較的大きな圧入材では油圧シリンダ等を用い、比較的小さな圧入材ではピエゾアクチュエータ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…圧入システム、10…圧入ユニット、50…システム制御部、70…搬送ユニット、81…圧入材、82…被圧入材、11…圧入制御部、15…圧入軸、16…接触面、21…モータ、22…エンコーダ、23…ロードセル、111…位置情報取得部、112…圧情報取得部、113…演算部、114…判定部、115…駆動制御部、12…基準位置記憶部、I1…位置情報、I2…圧情報、I3…圧入材位置情報、I4…基準位置情報、I5…判定情報、I6…駆動情報