(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】配車制御装置、配車制御システム、及び配車制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20240516BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2020073441
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】棒谷 英法
(72)【発明者】
【氏名】平林 知己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政康
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/123
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配車リクエストを受信し、少なくとも1つの配車リクエストを選択するコントローラを備える配車制御装置であって、
前記コントローラは、
前記配車リクエストを選択する前に車両内の忘れ物を検出した場合、少なくとも降車地が含まれる前記複数の配車リクエストごとに走行ルート候補を算出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに所定範囲内にある前記忘れ物を預ける施設を抽出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに抽出した前記施設を経由する経由ルートを算出し、
算出した前記経由ルートごとに、前記走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出し、
算出した前記配車に関する損失に基づいて、算出した前記経由ルートの中から走行ルートを設定し、
設定した前記走行ルート上の降車地を含む配車リクエストを選択する
ことを特徴とする配車制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記経由ルートを複数算出した場合、算出した前記配車に関する損失がもっとも小さい経由ルートを前記走行ルートとして設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の配車制御装置。
【請求項3】
前記配車に関する損失は、前記車両が前記経由ルートに沿って走行した場合の前記走行ルート候補に対する、前記降車地に到着するまでの時間または距離に関する損失である
ことを特徴とする請求項2に記載の配車制御装置。
【請求項4】
前記配車に関する損失は、前記忘れ物をしたユーザの現在地から前記施設までの距離に関する損失である
ことを特徴とする請求項2に記載の配車制御装置。
【請求項5】
前記配車に関する損失は、前記車両が前記経由ルートに沿って走行した場合の前記走行ルート候補に対する、前記降車地に到着するまでの時間及び距離に関する損失と、前記忘れ物をしたユーザの現在地から前記施設までの距離に関する損失との合計である
ことを特徴とする請求項2に記載の配車制御装置。
【請求項6】
前記配車リクエストには、前記配車リクエストを行ったユーザを乗車させる乗車地が含まれ、
前記配車に関する損失は、前記車両が前記経由ルートに沿って走行した場合の前記走行ルート候補に対する、前記乗車地に到着するまでの空車時間に関する損失である
ことを特徴とする請求項2に記載の配車制御装置。
【請求項7】
前記所定範囲は、前記走行ルート候補から所定距離の範囲、あるいは、前記走行ルート候補を基準として所定時間内に到着可能な施設が含まれる範囲である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項8】
前記配車リクエストには、前記配車リクエストを行ったユーザが希望する降車地への希望到着時間が含まれ、
前記所定範囲は、前記希望到着時間に間に合うように前記走行ルート候補を変更可能な範囲である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記配車リクエストを選択した際に、少なくとも設定した前記走行ルートをユーザが所持する端末装置に送信する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記忘れ物をしたユーザが所持する端末装置から忘れ物探索を希望する信号を受信した場合に、前記車両に対して前記忘れ物を検出するための信号を送信する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項11】
前記コントローラは、設定した前記走行ルート上の施設の位置情報及び前記車両が前記施設に到着する時間を、前記忘れ物をしたユーザが所持する端末装置に送信する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項12】
前記コントローラは、設定した前記走行ルート上の施設に設置された端末装置に前記車両が到着する時間を送信する
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の配車制御装置。
【請求項13】
車両と、前記車両と通信可能であり、複数の配車リクエストを受信し、少なくとも1つの配車リクエストを選択する配車制御装置と、を備える配車制御システムであって、
前記配車制御装置は、
前記配車リクエストを選択する前に前記車両内の忘れ物を検出した場合、少なくとも降車地が含まれる前記複数の配車リクエストごとに走行ルート候補を算出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに所定範囲内にある前記忘れ物を預ける施設を抽出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに抽出した前記施設を経由する経由ルートを算出し、
算出した前記経由ルートごとに、前記走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出し、
算出した前記配車に関する損失に基づいて、算出した前記経由ルートの中から走行ルートを設定し、
設定した前記走行ルート上の降車地を含む配車リクエストを選択する
ことを特徴とする配車制御システム。
【請求項14】
複数の配車リクエストの中から少なくとも1つの配車リクエストを
コントローラにより選択する配車制御方法であって、
前記コントローラは、
前記配車リクエストを選択する前に車両内の忘れ物を検出した場合、少なくとも降車地が含まれる前記複数の配車リクエストごとに走行ルート候補を算出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに所定範囲内にある前記忘れ物を預ける施設を抽出し、
算出した前記走行ルート候補ごとに抽出した前記施設を経由する経由ルートを算出し、
算出した前記経由ルートごとに、前記走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出し、
算出した前記配車に関する損失に基づいて、算出した前記経由ルートの中から走行ルートを設定し、
設定した前記走行ルート上の降車地を含む配車リクエストを選択する
ことを特徴とする配車制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配車制御装置、配車制御システム、及び配車制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に忘れ物をしたユーザに対して、その忘れ物を届ける発明が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、忘れ物をしたユーザを特定し、ユーザの端末装置の位置情報に基づいて忘れ物を届ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明のように忘れ物をしたユーザに忘れ物を届けてしまうと、配車に関する損失が発生することになる。このような配車に関する損失は低減させることが求められるが、特許文献1にはそのような記載がない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、配車に関する損失を低減させることが可能な配車制御装置、配車制御システム、及び配車制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る配車制御装置は、配車リクエストを選択する前に車両内の忘れ物を検出した場合、少なくとも降車地が含まれる複数の配車リクエストごとに走行ルート候補を算出し、算出した走行ルート候補ごとに所定範囲内にある忘れ物を預ける施設を抽出し、算出した走行ルート候補ごとに抽出した施設を経由する経由ルートを算出し、算出した経由ルートごとに、走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出し、算出した配車に関する損失に基づいて、算出した経由ルートの中から走行ルートを設定し、設定した走行ルート上の降車地を含む配車リクエストを選択する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配車に関する損失を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る配車制御システム10の全体概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るコンピュータ20、車両40、及び端末装置60の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る走行ルート候補の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る施設の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る経由ルートの一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る配車制御システム10の一動作例を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の変形例1に係るユーザ73の損失を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(配車制御システムの構成例)
【0011】
図1~2を参照して、本実施形態に係る配車制御システム10の構成例を説明する。
図1に示すように、配車制御システム10は、コンピュータ20と、通信ネットワーク30と、車両40と、ユーザ70~ユーザ73と、ユーザ70~73が所持する端末装置60~63とを含む。
【0012】
コンピュータ20(配車制御装置)は、通信ネットワーク30を介して車両40及び端末装置60~63と通信する。コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリ22と、通信I/F23と、記憶装置24とを備え、これらの構成要素が図示しないバスなどを介して電気的に接続されている。コンピュータ20の設置場所は特に限定されないが、例えばコンピュータ20は車両40を運用する事業者の管理センタに設置される。
【0013】
CPU21は、記憶装置24などに記憶されている様々なプログラムをメモリ22に読み込んで、プログラムに含まれる各種の命令を実行する。メモリ22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。記憶装置24は、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。なお、以下で説明するコンピュータ20の機能を含む配車制御システム10の一部(または全部)は、通信ネットワーク30上に配置されたアプリケーション(Software as a Service(SaaS)など)によって提供されてもよい。また、コンピュータ20は、サーバであってもよい。
【0014】
通信I/F23は、ネットワークアダプタなどのハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、及びこれらの組み合わせとして実装され、通信ネットワーク30などを介した有線または無線の通信を実現できるように構成されている。
【0015】
通信ネットワーク30は、無線または有線の何れかの方式、あるいは両方の方式によって構成されてもよく、通信ネットワーク30には、インターネットが含まれてもよい。本実施形態では、コンピュータ20、車両40、及び端末装置60~63は、無線通信方式によって通信ネットワーク30と接続する。
【0016】
車両40は、運転者が存在する車両でもよく、運転者が存在しない自動運転車両でもよい。本実施形態では、車両40は、運転者が存在しない自動運転車両として説明する。車両40は特に限定されないが例えばタクシーである。
【0017】
ユーザ70は、端末装置60を用いて車両をリクエストする。端末装置60には、車両のリクエストに用いられる配車アプリケーション(以下単に配車アプリと称する)がインストールされており、ユーザ70は、配車アプリを用いて車両をリクエストする。同様に、ユーザ71,72も端末装置61,62を用いて車両をリクエストする。
【0018】
ユーザ73は、車両40を利用した際に、車両40に忘れ物をした。忘れ物をしたことに気づいたユーザ73は、端末装置63にインストールされた専用のアプリケーションを用いて忘れ物探索を希望する。なお、忘れ物を探索するためのアプリケーションは専用のアプリケーションに限定されず、配車アプリの機能の一部として組み込まれてもよい。
【0019】
次に、
図2を参照して、コンピュータ20、車両40、端末装置60~63の詳細について説明する。
【0020】
端末装置60は、通信I/F601と、配車アプリ602と、GPS受信機603と、を備える。通信I/F601は、通信I/F23(
図1参照)と同様の構成を備えており、通信ネットワーク30を介してコンピュータ20と通信する。端末装置60は、例えば、スマートフォン、タブレットなどである。また、端末装置60は、ウェアラブル型の装置であってもよい。なお、図示は省略するが、端末装置60もコンピュータ20と同様に、CPU、メモリ、記憶装置などを備える。
【0021】
配車アプリ602は、上述したように車両のリクエストに用いられる。配車アプリ602は、ユーザ70が車両をリクエストする際のユーザインタフェースとして機能する。配車アプリ602は、端末装置60に設けられたCPUが、端末装置60に設けられた記憶装置から、専用のアプリケーションプログラムを読み出して実行することで実現する。ユーザ70が車両をリクエストする際、ユーザ70は希望する乗車地、希望する待合せ時間、希望する降車地、降車地への希望到着時間などを配車アプリ602に入力し、車両をリクエストする。端末装置60は、ユーザ70の入力に従って、コンピュータ20に配車リクエストを送信する。また、端末装置60は、配車リクエストに対してコンピュータ20から返信される信号に含まれる各種情報(配車リクエスト受領、到着予定時間、走行ルートなど)を、端末装置60が備えるディスプレイに表示する。ただし、配車アプリ602の実現方法は、これに限定されない。例えば、端末装置60が、配車アプリ602の機能を提供するサーバにアクセスして機能提供を受け、サーバから送信される機能の実行結果をブラウザに表示するようにしてもよい。
【0022】
GPS受信機603によって取得された端末装置60の位置情報は、任意のタイミングでコンピュータ20に送信される。
【0023】
図示は省略するが、端末装置61~63も端末装置60と同様に、通信I/F、配車アプリ、GPS受信機などを備える。
【0024】
コンピュータ20のCPU21(コントローラ)は、
図2に示すように、複数の機能の一例として、リクエスト受信部211と、位置取得部212と、車両検出部213と、忘れ物検出部214と、走行ルート算出部215と、施設抽出部216と、経由ルート算出部217と、損失算出部218と、リクエスト選択部219とを備える。コンピュータ20の記憶装置24には、地図データベース241と、顧客データベース242とが格納されている。
【0025】
地図データベース241には、道路情報、施設情報などルート案内に必要となる地図情報が記憶されている。道路情報には、道路の車線数、道路境界線、車線の接続関係、速度制限、一方通行などを示す道路標識などが含まれる。
【0026】
顧客データベース242には、ユーザ70~73のIDなどのアカウント情報、車両の利用履歴などが格納されている。利用履歴には、車両No、乗車日時、乗車区間、料金などが含まれる。IDと利用履歴は紐付けられて格納される。
【0027】
リクエスト受信部211は、端末装置60~62から送信されるユーザ70~72の配車リクエストを受信する。リクエスト受信部211は、受信した配車リクエストに応じた処理を行うための信号を位置取得部212、車両検出部213、及び走行ルート算出部215に出力する。
【0028】
位置取得部212は、端末装置60~63からユーザ70~73の位置情報を取得し、車両40から車両40の位置情報を取得する。ユーザ70~73の位置情報とは、ユーザ70~73が所持する端末装置60~63の位置情報を意味する。
【0029】
車両検出部213は、リクエスト受信部211によって受信された配車リクエストに基づいて、ユーザ70~72に割り当てる車両を検出する。配車リクエストを行ったユーザは3人であるため、すべての配車リクエストを満たすためには車両は3台必要である。ここで本実施形態では、ユーザ70~72が希望する乗車地の近くには、車両が1台のみ存在する場合について説明する。車両検出部213は、ユーザ70~72が希望する乗車地の位置情報を参照して、これらの乗車地の近くを走行している空車の車両を検出する。本実施形態では、車両40が車両検出部213によって検出された車両として説明する。車両検出部213は、車両40から位置情報を取得しているため、ユーザ70~72が希望する乗車地の位置情報と、車両40の位置情報とを参照することにより、車両40を検出することができる。なお、ユーザ70~72が希望する乗車地の近くとは、例えばユーザ70~72が希望する乗車地からの距離が、所定距離以下であることを意味する。
【0030】
忘れ物検出部214は、ユーザ73から忘れ物探索を希望することを示す信号を受信し、忘れ物を検出する。忘れ物検出部214は、忘れ物探索を希望することを示す信号に含まれるユーザ73のIDと、顧客データベース242とを突き合わせることにより、ユーザ73が最後に乗車した車両を特定する。忘れ物検出部214は、車両を特定した後、特定した車両に対し、忘れ物を検出するための信号を送信する。
【0031】
走行ルート算出部215は、地図データベース241を参照して車両40の現在地からユーザが希望する乗車地までの走行ルート候補を算出する。また、走行ルート算出部215は、ユーザが希望する乗車地からユーザが希望する降車地(目的地)までの走行ルート候補も算出する。走行ルート算出部215が算出する走行ルート候補は、例えば、車両40の現在地からユーザが希望する乗車地を経由して、ユーザが希望する降車地に到着するまでの時間がもっとも短い走行ルートである。配車リクエストを行ったユーザ数に応じて走行ルート候補が算出される。本実施形態では、配車リクエストを行ったユーザは3人(ユーザ70~72)であるため、走行ルート候補は3つ算出される。
【0032】
施設抽出部216は、走行ルート候補ごとに所定範囲内にある、忘れ物を預ける施設を抽出する。施設抽出部216は、地図データベース241を参照して施設を抽出する。
【0033】
経由ルート算出部217は、走行ルート候補ごとに施設を経由する経由ルートを算出する。本実施形態では走行ルート候補は3つあるため、経由ルートは3つ算出される。
【0034】
損失算出部218は、経由ルート算出部217によって算出された経由ルートごとに、走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出する。
【0035】
リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出された損失に基づいて、複数の配車リクエストから少なくとも1つの配車リクエストを選択する。
【0036】
車両40は、通信I/F401と車両ECU(Electronic Control Unit)402と、GPS受信機403と、カメラ404と、コントローラ405とを備える。通信I/F401は、通信I/F23及び通信I/F601と同様の構成を備えており、通信ネットワーク30を介してコンピュータ20と通信する。車両ECU402は、車両40の走行を制御するためのコンピュータである。車両ECU402は、配車制御システム10からの指令に基づいて各種のアクチュエータ(ブレーキアクチュエータ、アクセルアクチュエータ、ステアリングアクチュエータなど)を制御する。GPS受信機403によって取得された車両40の位置情報は、任意のタイミングでコンピュータ20に送信される。
【0037】
コントローラ405は、忘れ物検出部214から忘れ物を検出するための信号を受信したとき、カメラ404を用いて車両40の車室内を撮影する。コントローラ405は、所定の画像処理を用いてカメラ画像を解析する。この解析によりユーザ73の忘れ物が検出される。コントローラ405は、忘れ物を検出したことを示す信号をコンピュータ20に送信する。
【0038】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る配車制御システム10の一動作例について説明する。
【0039】
図3に示すシーンにおいて、ユーザ70~72は、端末装置60~62を用いて車両をリクエストする。配車リクエストを行ったユーザは3人であるため、すべての配車リクエストを満たすためには車両は3台必要である。ただし、上述したように、ユーザ70~72が希望する乗車地の近くには1台の車両(車両40)のみが検出される。
図3に示すAは、ユーザ70が希望する乗車地である。
図3に示すBは、ユーザ71が希望する乗車地である。
図3に示すCは、ユーザ72が希望する乗車地である。乗車地A,B,Cの近くとは、乗車地A,B,Cからの距離が、所定距離以下であることを意味する。
【0040】
配車リクエストを受信したリクエスト受信部211は、走行ルート候補を算出するための信号を走行ルート算出部215に出力する。リクエスト受信部211から信号を受信した走行ルート算出部215は、地図データベース241を参照して車両40の現在地からユーザ70~72が希望する乗車地を経由して、降車地に到着する走行ルート候補を算出する。
図3に示す80は、車両40の現在地からユーザ70が希望する乗車地Aを経由して、ユーザ70が希望する降車地G1(目的地)に到着する走行ルート候補である。同様に
図3に示す81は、車両40の現在地からユーザ71が希望する乗車地Bを経由して、ユーザ71が希望する降車地G2(目的地)に到着する走行ルート候補である。同様に
図3に示す82は、車両40の現在地からユーザ72が希望する乗車地Cを経由して、ユーザ72が希望する降車地G3(目的地)に到着する走行ルート候補である。配車リクエストを行ったユーザは3人(ユーザ70~72)であるため、走行ルート候補は3つ算出される。
【0041】
上述したように、ユーザ73は車両40を利用した際に、車両40に忘れ物をした。忘れ物をしたことに気づいたユーザ73は、専用のアプリケーションを用いて忘れ物探索を希望する。これにより、忘れ物探索を希望することを示す信号(以下、信号S1という)が、忘れ物検出部214に送信される。信号S1には、ユーザ73のID、忘れ物の具体的な内容(ここでは財布)、車両を利用した日時などが含まれる。
【0042】
ユーザ73から信号S1を受信した忘れ物検出部214は、顧客データベース242を参照して、ユーザ73が最後に乗車した車両を特定する。上述したように、顧客データベース242には、ユーザID、車両No、乗車日時、乗車区間、料金などが格納されている。忘れ物検出部214は、信号S1に含まれるユーザ73のIDと、顧客データベース242とを突き合わせることにより、ユーザ73が最後に乗車した車両を特定する。
図3に示す例において、車両40が特定された車両とする。忘れ物検出部214は、特定した車両40に対し、忘れ物を検出するための信号(以下、信号S2という)を送信する。
【0043】
車両40に搭載されたコントローラ405は、忘れ物検出部214から信号S2を受信した場合、カメラ404を用いて車両40の車室内を撮影する。コントローラ405は、所定の画像処理を用いてカメラ画像を解析する。この解析によりユーザ73の忘れ物(財布)が検出される。コントローラ405は、忘れ物を検出したことを示す信号(以下、信号S3という)をコンピュータ20に送信する。
【0044】
車両内に忘れ物がある場合、ユーザ73は困っているため、速やかにユーザ73に忘れ物を届けることが考えられるが、ユーザ73がすぐに忘れ物を受け取るができないケースがある。このようなケースにおいて忘れ物を預けるための施設に忘れ物を届けることが考えられる。しかし、忘れ物を施設に届けるために配車サービスを中止することは損失の発生を招く。このような損失を低減するため、忘れ物を施設に届けると同時に、配車サービスを継続することが好ましい。ここで、コンピュータ20は、忘れ物をしたユーザ73とは異なるユーザ70~72の配車リクエストを受信しているが、どの配車リクエストを受け付けるか、その選択は行っていない。換言すれば、本実施形態では、コンピュータ20が配車リクエストを選択する前に、信号S1を受信したことが前提となる。
【0045】
配車リクエストの選択の際に、忘れ物を施設に届けるために配車に関する損失の低減が求められる。配車に関する損失とは一例として時間の損失、エネルギー(ガソリン、水素、電気など)の損失などを指す。なお、エネルギーの損失は、距離の損失と表現されてもよい。以下、配車に関する損失を、単に損失と表現する場合がある。
【0046】
配車に関する損失を低減するため、以下の処理が実施される。まず、施設抽出部216は、走行ルート候補ごとに所定範囲内にある、忘れ物を預ける施設を抽出する。具体的には、
図4に示すように、施設抽出部216は、地図データベース241を参照して走行ルート候補80に基づく所定範囲90内にある、忘れ物を預ける施設93を抽出する。同様に施設抽出部216は、走行ルート候補81に基づく所定範囲91内にある、忘れ物を預ける施設94を抽出する。同様に施設抽出部216は、走行ルート候補82に基づく所定範囲92内にある、忘れ物を預ける施設95を抽出する。施設93~95は、例えば、コンビニエンスストア、警察署である。なお、施設抽出部216によって抽出される施設は、一例としてユーザ73が徒歩で行くことが可能な場所であるが、これに限定されない。抽出される施設は、ユーザ73が自転車で行くことが可能な場所でもよく、ユーザ73が車両で行くことが可能な場所でもよい。
【0047】
走行ルート候補80に基づく所定範囲90は、一例として、走行ルート候補80から所定距離の範囲として設定される。あるいは、走行ルート候補80に基づく所定範囲90は、走行ルート候補80を基準として所定時間内に到着可能な施設が含まれる範囲として設定されてもよい。所定時間は、例えば10分である。ただし、この時間は適宜変更可能である。
【0048】
また、走行ルート候補80に基づく所定範囲90は、ユーザ70が希望する降車地G1への希望到着時間に間に合うように走行ルート候補を変更可能な範囲として設定されてもよい。上述したように、配車リクエストには、ユーザ70の希望到着時間が含まれる。走行ルート候補を変更した場合であっても希望到着時間内に降車地G1に到着するならば、走行ルート候補の変更はユーザ70にとって不利益ではないと考えられる。よって、所定範囲90は、その範囲内で走行ルート候補を変更した場合でもあっても、ユーザ70の希望到着時間内に降車地G1に到着可能な範囲として設定されてもよい。所定範囲91,92についても所定範囲90と同様である。
【0049】
施設抽出部216によって施設が抽出されたことを示す信号を受信した経由ルート算出部217は、走行ルート候補ごとに施設を経由する経由ルートを算出する。具体的には、
図5に示すように経由ルート算出部217は、走行ルート候補80に対し、施設93を経由する経由ルート83を算出する。経由ルート83は、車両40の現在地から施設93を経由し、その後乗車地Aを経由し、降車地G1に到着するルートである。同様に経由ルート算出部217は、走行ルート候補81に対し、施設94を経由する経由ルート84を算出する。経由ルート84は、車両40の現在地から施設94を経由し、その後乗車地Bを経由し、降車地G2に到着するルートである。同様に経由ルート算出部217は、走行ルート候補82に対し、施設95を経由する経由ルート85を算出する。経由ルート85は、車両40の現在地から施設95を経由し、その後乗車地Cを経由し、降車地G3に到着するルートである。
【0050】
なお、施設93は、ユーザ70を乗車させる前に車両40が忘れ物を預ける施設として説明したが、これに限定されない。施設93は、ユーザ70を乗車させた後に車両40が忘れ物を預ける施設であってもよい。施設94,95についても同様である。
【0051】
経由ルート83,84,85のいずれであっても、車両40はユーザ73の忘れ物を預けることができ、かつ、車両40はユーザ70,71,72の希望到着時間内に降車地G1,G2,G3に到着することができる。ただし、経由ルート83,84,85によっては、配車に関する損失が異なる。
【0052】
経由ルート算出部217によって経由ルートが算出されたことを示す信号を受信した損失算出部218は、経由ルートごとに、走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出する。具体的には、損失算出部218は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する損失、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する損失、及び車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する損失を算出する。損失の算出例として、時間または距離が用いられる。
【0053】
時間を用いた場合の損失式は、下記の式(1)~(3)で表現される。式(1)は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する時間の損失を示し、式(2)は、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する時間の損失を示し、式(3)は、車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する時間の損失を示す。
(T1-T1’)×α・・・(1)
(T2-T2’)×α・・・(2)
(T3-T3’)×α・・・(3)
【0054】
T1は、車両40が走行ルート候補80に沿って走行した場合に、降車地G1に到着するまでに要する時間である。T1’は、車両40が施設93を経由する経由ルート83に沿って走行した場合に、降車地G1に到着するまでに要する時間である。同様に、T2は、車両40が走行ルート候補81に沿って走行した場合に、降車地G2に到着するまでに要する時間である。T2’は、車両40が施設94を経由する経由ルート84に沿って走行した場合に、降車地G2に到着するまでに要する時間である。同様に、T3は、車両40が走行ルート候補82に沿って走行した場合に、降車地G3に到着するまでに要する時間である。T3’は、車両40が施設95を経由する経由ルート85に沿って走行した場合に、降車地G3に到着するまでに要する時間である。αは、時間に対する重みであり、任意の値が設定される。走行ルート候補と比較して、経由ルートを走行した場合の走行時間が長ければ、損失は大きくなる。
【0055】
損失算出部218は、式(1)~(3)を用いて、経由ルートごとに、走行ルート候補に対する時間の損失を算出する。リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出された時間の損失がもっとも小さい経由ルートを、車両40が実際に走行する走行ルートに設定する。ここで、経由ルート83,84,85のうち、時間の損失がもっとも小さいルートが経由ルート83であったと仮定する。この場合、リクエスト選択部219は、車両40が実際に走行する走行ルートを走行ルート候補80から経由ルート83に変更する。経由ルート83上の降車地G1はユーザ70の配車リクエストに含まれているため、リクエスト選択部219はユーザ70の配車リクエストを選択する。
【0056】
続いてリクエスト選択部219は、経由ルート83に沿って走行するように車両40に対して指令を送信する。指令を受信した車両40は、ユーザ70を乗車させる前に、施設93に寄ってユーザ71の忘れ物を預ける。これによりユーザ73は施設93で忘れ物を受け取ることができる。また、車両40がユーザ73の現在地Dに向かう場合と比較して、配車に関する損失は低減する。また、ユーザ70にとって、走行ルート候補80が経由ルート83に変更されたことは、降車地G1への到着時間が少し遅れることを意味するものの、降車地G1への到着時間はユーザ70の希望到着時間内であるため、不利益はない。
【0057】
リクエスト選択部219は、ユーザ70の配車リクエストを選択した際に、ユーザ70の配車リクエストを受け付けた旨、乗車地A及び降車地G1の到着予定時間、走行ルート(経由ルート83)などを端末装置60に通知する。また、車両40が施設93に到着する前に、コンピュータ20は施設93に設置された端末装置に車両40が到着する時間を通知する。これにより、施設93で働く従業者は、いつ忘れ物が届くのかを把握することができる。また、コンピュータ20は、施設93の名称、施設93の位置情報、施設93に忘れ物を預けた時間などをユーザ73に通知する。この通知を端末装置63で受信したユーザ73は、施設93で忘れ物を受け取ることが可能になる。
【0058】
距離を用いた場合の損失式は、下記の式(4)~(6)で表現される。式(4)は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する距離の損失を示し、式(5)は、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する距離の損失を示し、式(6)は、車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する距離の損失を示す。
(D1-D1’)×β・・・(4)
(D2-D2’)×β・・・(5)
(D3-D3’)×β・・・(6)
【0059】
D1は、車両40が走行ルート候補80に沿って走行した場合に、降車地G1に到着するまでに要する距離である。D1’は、車両40が施設93を経由する経由ルート83に沿って走行した場合に、降車地G1に到着するまでに要する距離である。同様に、D2は、車両40が走行ルート候補81に沿って走行した場合に、降車地G2に到着するまでに要する距離である。D2’は、車両40が施設94を経由する経由ルート84に沿って走行した場合に、降車地G2に到着するまでに要する距離である。同様に、D3は、車両40が走行ルート候補82に沿って走行した場合に、降車地G3に到着するまでに要する距離である。D3’は、車両40が施設95を経由する経由ルート85に沿って走行した場合に、降車地G3に到着するまでに要する距離である。βは、距離に対する重みであり、任意の値が設定される。走行ルート候補と比較して、経由ルートを走行した場合の走行距離が長ければ、損失は大きくなる。
【0060】
損失算出部218は、式(4)~(6)を用いて、経由ルートごとに、走行ルート候補に対する距離の損失を算出する。リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出された距離の損失がもっとも小さい経由ルートを、車両40が実際に走行する走行ルートに設定する。ここで、経由ルート83,84,85のうち、距離の損失がもっとも小さいルートが経由ルート83であったと仮定する。この場合、リクエスト選択部219は、車両40が実際に走行する走行ルートを走行ルート候補80から経由ルート83に変更する。経由ルート83上の降車地G1はユーザ70の配車リクエストに含まれているため、リクエスト選択部219はユーザ70の配車リクエストを選択する。
【0061】
なお、上述では、時間、距離の損失を分けて説明したが、これに限定されない。損失算出部218は、時間と距離の両方を用いて時間と距離の合計の損失を算出してもよい。時間と距離の両方を用いた場合の損失式は、下記の式(7)~(9)で表現される。式(7)は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する時間と距離との合計の損失を示し、式(8)は、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する時間と距離との合計の損失を示し、式(9)は、車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する時間と距離との合計の損失を示す。
(T1-T1’)×α+(D1-D1’)×β・・・(7)
(T2-T2’)×α+(D2-D2’)×β・・・(8)
(T3-T3’)×α+(D3-D3’)×β・・・(9)
【0062】
リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出された時間と距離との合計の損失がもっとも小さい経由ルートを、車両40が実際に走行する走行ルートに設定してもよい。
【0063】
なお、
図3~5に示す例では、車両内に忘れ物が検出された場合を説明したが、必ずしも忘れ物が検出されるとは限られない。ユーザ73が忘れ物をした場所は、車両40とは限られないからである。コントローラ405は、忘れ物が検出されない場合、忘れ物がないことを示す信号をコンピュータ20に送信する。
【0064】
次に、
図6のフローチャートを参照して、配車制御システム10の一動作例を説明する。
【0065】
ステップS101において、リクエスト受信部211は、端末装置60~62に入力されたユーザ70~72の配車リクエストを受信する。配車リクエストを受信したリクエスト受信部211は、走行ルート候補を算出するための信号を走行ルート算出部215に出力する。
【0066】
処理はステップS103に進み、リクエスト受信部211から信号を受信した走行ルート算出部215は、地図データベース241を参照して車両40の現在地からユーザ70~72が希望する乗車地A~Cを経由して、降車地G1~G3に到着する走行ルート候補80~82を算出する(
図3参照)。
【0067】
リクエスト選択部219が配車リクエストを選択する前に、忘れ物検出部214がユーザ73から忘れ物探索を希望することを示す信号(信号S1)を受信した場合(ステップS105でYES)、処理はステップS107に進む。
【0068】
ステップS107において、ユーザ73から信号S1を受信した忘れ物検出部214は、顧客データベース242を参照して、ユーザ73が最後に乗車した車両(車両40)を特定する。忘れ物検出部214は、特定した車両40に対し、忘れ物を検出するための信号(信号S2)を送信する。信号S2を受信したコントローラ405は、カメラ404を用いて車両40の車室内を撮影する。コントローラ405は、所定の画像処理を用いてカメラ画像を解析して、忘れ物を検出する。忘れ物が検出された場合(ステップS107でYES)、コントローラ405は、忘れ物を検出したことを示す信号(信号S3)をコンピュータ20に送信する。一方、忘れ物が検出されない場合(ステップS107でNO)、コントローラ405は、忘れ物がないことを示す信号をコンピュータ20に送信する。
【0069】
ステップS109において、コンピュータ20は、車両40には忘れ物がないことをユーザ71に通知する。
【0070】
ステップS111において、施設抽出部216は、走行ルート候補ごとに所定範囲内にある、忘れ物を預ける施設を抽出する。抽出される施設は、施設93~95である(
図4参照)。
【0071】
処理はステップS113に進み、施設抽出部216によって施設が抽出されたことを示す信号を受信した経由ルート算出部217は、走行ルート候補ごとに施設を経由する経由ルートを算出する。算出される経由ルートは、経由ルート83~85である(
図5参照)。
【0072】
処理はステップS115に進み、経由ルート算出部217によって経由ルートが算出されたことを示す信号を受信した損失算出部218は、経由ルートごとに、走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出する。
【0073】
処理はステップS117に進み、リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出された損失がもっとも小さい経由ルート(ここでは経由ルート83)を、車両40が実際に走行する走行ルートに設定する。
【0074】
処理はステップS119に進み、経由ルート83上の降車地G1はユーザ70の配車リクエストに含まれているため、リクエスト選択部219はユーザ70の配車リクエストを選択する。続いてリクエスト選択部219は、経由ルート83に沿って走行するように車両40に対して指令を送信する。
【0075】
処理はステップS121に進み、コンピュータ20は施設93に設置された端末装置に車両40が到着する時間を通知する。
【0076】
処理はステップS123に進み、コンピュータ20は、施設93の名称、施設93の位置情報、施設93に忘れ物を届ける時間などをユーザ73に通知する。
【0077】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0078】
コンピュータ20は、配車リクエストを選択する前に車両内の忘れ物を検出した場合、少なくとも降車地が含まれる複数の配車リクエストごとに走行ルート候補(走行ルート候補80~82)を算出する。コンピュータ20は、算出した走行ルート候補ごとに所定範囲内にある忘れ物を預ける施設(施設93~95)を抽出する。コンピュータ20は、算出した走行ルート候補ごとに抽出した施設を経由する経由ルート(経由ルート83~85)を算出する。コンピュータ20は、算出した経由ルートごとに、走行ルート候補に対する配車に関する損失を算出する。コンピュータ20は、算出した配車に関する損失に基づいて、算出した経由ルートの中から実際に車両40が走行する走行ルートを設定する。コンピュータ20は、設定した走行ルート上の降車地を含む配車リクエストを選択する。
【0079】
コンピュータ20は、経由ルートを複数算出した場合、算出した配車に関する損失がもっとも小さい経由ルートを走行ルートとして設定する。
【0080】
ユーザ70の配車リクエストが選択されたと仮定すると、コンピュータ20は、経由ルート83に沿って走行するように車両40に対して指令を送信する。指令を受信した車両40は、ユーザ70を乗車させる前に、施設93に寄ってユーザ71の忘れ物を預ける。これによりユーザ73は施設93で忘れ物を受け取ることができる。また、車両40がユーザ73の現在地Dに向かう場合と比較して、配車に関する損失は低減する。
【0081】
配車に関する損失は、一例として、車両40が経由ルートに沿って走行した場合の走行ルート候補に対する、降車地に到着するまでの時間または距離に関する損失である。このような時間または距離に関する損失がもっとも小さい経由ルートを、車両40が実際に走行する走行ルートに設定することにより、配車に関する損失は低減する。
【0082】
所定範囲90は、走行ルート候補80から所定距離の範囲、あるいは、走行ルート候補80を基準として所定時間内に到着可能な施設が含まれる範囲として設定される。このように設定された範囲内で施設が抽出されるため、適切な施設の抽出が可能となる。
【0083】
配車リクエストには、配車リクエストを行ったユーザ70~72が希望する降車地G1~G3への希望到着時間が含まれる。所定範囲90~92(
図4参照)は、希望到着時間に間に合うように走行ルート候補80~82を変更可能な範囲として設定される。このように設定された範囲内で経由ルート83~85が算出される。ユーザ70の配車リクエストが選択されたと仮定すると、ユーザ70にとって、走行ルート候補80が経由ルート83に変更されたことは、降車地G1への到着時間が少し遅れることを意味するものの、降車地G1への到着時間はユーザ70の希望到着時間内であるため、不利益はない。
【0084】
コンピュータ20は、配車リクエストを選択した際に、少なくとも設定した走行ルートを含む情報を配車リクエストを行ったユーザが所持する端末装置に送信する。ユーザ70の配車リクエストが選択されたと仮定すると、ユーザ70は自身の配車リクエストが受け付けられたことを知ることができる。走行ルートを含む情報には、乗車地A及び降車地G1の到着予定時間などが含まれてもよい。
【0085】
コンピュータ20は、忘れ物をしたユーザ73が所持する端末装置63から忘れ物探索を希望する信号を受信した場合に、車両40に対して忘れ物を検出するための信号を送信する。これにより、コンピュータ20は、車両内の忘れ物を検出することができる。
【0086】
コンピュータ20は、設定した走行ルート上の施設の位置情報及び車両40が施設に到着する時間を、忘れ物をしたユーザ73が所持する端末装置63に送信する。これによりユーザ73は、施設93に忘れ物が届くことを知ることができ、施設93で忘れ物を受け取ることが可能になる。
【0087】
コンピュータ20は、設定した走行ルート上の施設に設置された端末装置に車両40が到着する時間を送信する。これにより、施設93で働く従業者は、いつ忘れ物が届くのかを把握することができる。
【0088】
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1について説明する。配車に関する損失について、時間の損失、距離の損失が含まれると説明したが、これに限定されない。配車に関する損失には、忘れ物をしたユーザ73の損失が含まれてもよい。
【0089】
ユーザ73の損失とは、ユーザ73の現在地から施設までの距離である。ユーザ73の現在地から施設までの距離が遠いほど、ユーザ73の損失は大きくなる。理由は、忘れ物を受け取るために要する時間が増えるからである。
【0090】
図7を参照して、変形例1に係る配車制御システム10の一動作例について説明する。
【0091】
図7に示す距離L1は、ユーザ73の現在地Dから施設93までの距離である。
図7に示す距離L2は、ユーザ73の現在地Dから施設94までの距離である。
図7に示す距離L3は、ユーザ73の現在地Dから施設95までの距離である。ユーザ73にとって、施設までの距離が短いほど、忘れ物を受け取るために必要なコストは小さい。よって、ユーザ73にとって、施設までの距離が短いほど、利便性が向上する。そこで、損失算出部218は、ユーザ73の位置情報と、施設93~95の位置情報を取得し、ユーザ73の現在地Dから施設93~95までの距離L1~L3を算出する。
図7において、距離L1~L3のうち、もっとも短い距離はL2である。損失算出部218は、ユーザ73の損失がもっとも小さい距離はL2であると判定する。損失算出部218による判定結果を受信したリクエスト選択部219は、ユーザ73の現在地Dから距離L2の位置に存在する施設94を経由する経由ルート84を、車両40が実際に走行する走行ルートに設定する。
【0092】
続いてリクエスト選択部219は、経由ルート84に沿って走行するように車両40に対して指令を送信する。これによりユーザ73は、もっとも利便性が高い施設94で忘れ物を受け取ることができる。
【0093】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2について説明する。配車に関する損失には、時間の損失、距離の損失、及び忘れ物をしたユーザ73の損失の合計の損失が含まれてもよい。
【0094】
損失算出部218は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を算出する。同様に、損失算出部218は、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を算出する。同様に、損失算出部218は、車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を算出する。
【0095】
損失式は、下記の式(10)~(12)で表現される。式(10)は、車両40が経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を示す。式(11)は、車両40が経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を示す。式(12)は、車両40が経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する時間及び距離の損失と、ユーザ73の損失との合計の損失を示す。
(T-T1)×α+(D-D1)×β+L1×γ・・・(10)
(T-T2)×α+(D-D2)×β+L2×γ・・・(11)
(T-T3)×α+(D-D3)×β+L3×γ・・・(12)
【0096】
γは、ユーザ73の現在地Dから施設までの距離に対する重みであり、任意の値が設定される。式(10)~(12)のどれがもっとも小さいかは、α,β,γの設定に依存する。車両40の損失に重きを置く場合、α,βを大きく設定し、γを小さく設定すればよい(例えば、α=1,β=1,γ=0)。一方、ユーザ73の損失に重きを置く場合、α,βを小さく設定し、γを大きく設定すればよい(例えば、α=0,β=0,γ=1)。車両40の損失に重きを置けば、車両を運用する事業者の損失は低減する。一方で、ユーザ73の損失に重きを置けば、ユーザ73はより短い時間で忘れ物を受け取ることが可能となり、ユーザ73の利便性が向上する。いずれにしても、配車に関する損失は低減する。
【0097】
(変形例3)
次に、本実施形態の変形例3について説明する。配車に関する損失には、車両40の空車時間が含まれてもよい。
【0098】
空車時間とは、ユーザを降車させてから、次のユーザを乗車させるまでの時間である。空車時間が短いほど、車両の損失が小さいことを意味する。損失算出部218は、経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する空車時間の長さ、経由ルート84に沿って走行した場合の走行ルート候補81に対する空車時間の長さ、及び経由ルート85に沿って走行した場合の走行ルート候補82に対する空車時間の長さを算出する。経由ルート83に沿って走行した場合の走行ルート候補80に対する空車時間の長さとは、走行ルート候補80に沿って走行した場合の空車時間が10分、経由ルート83に沿って走行した場合の空車時間が15分と仮定すると、15分から10分を引いて5分となる。
【0099】
リクエスト選択部219は、損失算出部218によって算出されたそれぞれの空車時間の長さがもっとも短い経由ルートを、車両40が実際に走行する走行ルートに設定してもよい。これにより、配車に関する損失は低減する。
【0100】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0101】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0102】
上述の実施形態では1つの配車リクエストが選択されたが、選択される配車リクエストは1つに限定されない。例えば、
図3に示す例において、ユーザ70,71が相乗りを許可した場合、ユーザ70の配車リクエスト、及びユーザ71の配車リクエストの合計2つの配車リクエストを選択する(配車リクエストを受け付ける)ことが可能となる。
【0103】
上述の実施形態では、コンピュータ20が配車リクエストを選択する前に、信号S1を受信したことが前提となる、と説明した。ただし、配車リクエストを受信するタイミングについては、信号S1を受信する前でもあってもよく、信号S1を受信した後でもあってもよい。
【0104】
忘れ物をしたユーザ73にとって、忘れ物を早く受け取りたい場合がある。この要求を満たすため、専用のアプリケーションに忘れ物を早く受け取るための機能を実装してもよい。ユーザ73がこの機能を用いて、忘れ物を早く受け取りたいと要求した場合、コンピュータ20は車両40の現在地からもっとも早く到着可能な施設を経由する経由ルートを算出してもよい。そしてコンピュータ20はこの経由ルートを実際に車両40が走行する走行ルートとして設定してもよい。
【0105】
また、ユーザ73にとって、忘れ物を受け取るエリアを指定したい場合がある。この要求を満たすため、専用のアプリケーションに忘れ物を受け取るエリアを指定するための機能を実装してもよい。ユーザ73がこの機能を用いて、忘れ物を受け取るエリアを指定した場合、コンピュータ20は車両40の現在地から指定されたエリアにもっとも近い施設を経由する経由ルートを算出してもよい。
【0106】
また、ユーザ73にとって、忘れ物を受け取る時間を指定したい場合がある。この要求を満たすため、専用のアプリケーションに忘れ物を受け取る時間を指定するための機能を実装してもよい。ユーザ73がこの機能を用いて、忘れ物を受け取る時間を指定した場合、コンピュータ20は指定された時間に施設を経由する経由ルートを算出してもよい。そしてコンピュータ20はこの経由ルートを実際に車両40が走行する走行ルートとして設定してもよい。ただし、この経由ルートは、配車リクエストを行ったユーザが希望する降車地への希望到着時間に間に合うルートである必要がある。
【符号の説明】
【0107】
10 配車制御システム
20 コンピュータ
211 リクエスト受信部
212 位置取得部
213 車両検出部
214 忘れ物検出部
215 走行ルート算出部
216 施設抽出部
217 経由ルート算出部
218 損失算出部
219 リクエスト選択部