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特許7489228SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシド断片および該断片を用いて抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法およびキット
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  • 特許-SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシド断片および該断片を用いて抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法およびキット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシド断片および該断片を用いて抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/165 20060101AFI20240516BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240516BHJP
   G01N 33/535 20060101ALI20240516BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20240516BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20240516BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C07K14/165 ZNA
G01N33/53 N
G01N33/535
G01N33/532 B
G01N33/533
G01N33/543 541Z
G01N33/543 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020080597
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172642
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、感染症実用化研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】梁 明秀
(72)【発明者】
【氏名】山岡 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】相澤 大輔
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111024954(CN,A)
【文献】特開2017-145246(JP,A)
【文献】Accession No.P0DTC9,Database UniProt [online],2020年04月22日,Internet, <URL:https:// www.uniprot.org/uniprot/P0DTC9.txt?version=1>, [retrieved on 2021.5.21]
【文献】J. Immunol. Methods,2019年,Vol.466,pp.41-46
【文献】Nature,2020年02月03日,Vol.579,pp.265-269 and Supporting information
【文献】Avian Pathol.,2019年,Vol.48,pp.528-536
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12Q
C12M
C12N
G01N 33/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片であって、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、健常者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応を示さないが、SARS-CoV-2感染患者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対しては抗原抗体反応を示す、前記断片。
【請求項2】
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の断片。
【請求項3】
抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法であって、ヒト由来の血液、血漿および/または血清を請求項1または2に記載の断片と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の断片および/または、IgM抗体またはIgG抗体と結合する抗体またはその抗原結合断片が標識物質により標識された、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標識物質が、酵素、化学発光物質、蛍光発光物質、色素、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、およびセルロース粒子から選択される1以上のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗SARS-CoV-2抗体が、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEから選択される1以上のものである、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抗SARS-CoV-2抗体が、ELISA法および/またはイムノクロマト法の抗原抗体反応に基づいた方法によって検出される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の断片を含む、抗SARS-CoV-2抗体を検出するためのキット。
【請求項9】
イムノクロマトストリップの形態である、請求項8に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片、該断片を用いて抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法およびキット等に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスはエンベロープを有する直径60~220nmの一本鎖(+)RNAウイルスであり、ヒトに感染すると呼吸器症状を引き起こすことが知られている。コロナウイルスとして高病原性であるSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスおよびMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス、低病原性であるヒトコロナウイルスNL63、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43およびヒトコロナウイルスHKU1等が知られ、またコロナウイルスは風邪の原因ウイルスであることも知られている。
コロナウイルスの検出方法としてはPCR法等により、ウイルス中の複数の領域を標的とした遺伝子検査法が知られている。また、コロナウイルスのヌクレオカプシド(以下、「NP」と記す場合がある)を標的として、抗体を用いたウイルス抗原タンパク質の検出や、感染した患者に産生される抗ウイルス抗体を調べる抗体検出による2種類の免疫学的検査法も知られている(特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
2019新型コロナウイルス(以下、「SARS-CoV-2」と記す場合がある)は、中国武漢市付近で2019年に発生が初めて確認された、SARS関連コロナウイルスに属するコロナウイルスである。ヒトに対して病原性があり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす。
現在、SARS-CoV-2の感染拡大について、WHOがパンデミック(世界的流行)相当との認識を示している。しかしながら、SARS-CoV-2感染患者の治療法は確立されていない。したがって、適切な感染拡大防止策を講じるために、迅速な検査法によりSARS-CoV-2感染患者を発見するとともに、免疫学的検査を用いて血清中の抗体保有率を調べることで、感染率や感染経路を調査することは極めて重要である。
【0004】
SARS-CoV-2の検出方法としては、採取した鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、喀痰等を検体とするリアルタイム逆転写PCR法等の遺伝子検査が主に使用されている(非特許文献2および3)。これによってSARS-CoV-2感染の有無を判断することが可能である。他方、前記遺伝子検査では、SARS-CoV-2に感染しているにも関わらず検体の採取場所、採取時期、保管方法等の影響で前記検体からSARS-CoV-2が検出されない事例(偽陰性)が多発しており、これはSARS-CoV-2が感染拡大する一因となっている。また、遺伝子検査にはPCR中リアルタイムで蛍光を検出する特殊で特別な装置が必要となり、また結果を得るためには数時間を要することから、感染現場および防疫現場等の設備が十分とはいえない場所における早期発見において実用性に課題が残る。そこで、正確性、迅速性および簡便性を兼ね備えた検査方法として、抗原抗体反応を利用した免疫学的検査法が求められている。免疫学検査には、抗原検出と抗体検出の2種類の方法が知られているが、現在、SARS-CoV-2に関しては、検体の採取が容易であり、他の生化学検査と並行して実施可能な血液/血漿/血清を用いた抗体検査法の開発と検討が進められている。
【0005】
例えば、非特許文献4には、市販の抗SARS-CoV-2抗体検出キットを用いて、SARS-CoV-2感染患者の発症後日数ごとの抗体陽性率を調べたことが報告されている。発症後日数が1-6日では陽性率が7.1%、7-8日では25.0%、9-12日では52.4%、13日以降では96.9%であり、また、非特異反応を否定できない抗体の陽性例があったことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-145246号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Yu et al., Clin. Vaccine Immunol., 14, 146-149 (2007)
【文献】2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル(国立感染症研究所、2020年2月28日)
【文献】病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.7(国立感染症研究所、2020年2月25日)
【文献】迅速簡易検出法(イムノクロマト法)による血中抗SARS-CoV-2抗体の評価(国立感染症研究所、2020年4月1日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出するための手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、SARS-CoV-2由来NPと他のコロナウイルス由来NPとを分析した結果、SARS-CoV-2由来NPのアミノ酸配列と他のコロナウイルス由来NPのアミノ酸配列との間で同一性が低い領域を見出した。そして上記課題を鑑み、該領域に対応するSARS-CoV-2由来NPの断片を作製することによって、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片であって、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、前記断片。
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる、[1]の断片。
[3]抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法であって、ヒト由来の血液、血漿および/または血清を[1]または[2]の断片と接触させる工程を含む、前記方法。
[4][1]または[2]の断片および/または抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片が標識物質により標識された、[3]の方法。
[5]標識物質が、酵素、化学発光物質、蛍光発光物質、色素、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、セルロース粒子等から選択される1以上のものである、[4]の方法。
[6]抗SARS-CoV-2抗体が、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEから選択される1以上のものである、[3]~[5]のいずれかの方法。
[7]抗SARS-CoV-2抗体が、ELISA法および/またはイムノクロマト法等の抗原抗体反応に基づいた方法によって検出される、[3]~[6]のいずれかの方法。
[8][1]または[2]の断片を含む、抗SARS-CoV-2抗体を検出するためのキット。
[9]イムノクロマトストリップの形態である、[8]のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明のSARS-CoV-2由来NPの断片、該断片を用いて抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法およびキット等により、正確、簡便、かつ迅速にSARS-CoV-2の感染の有無、あるいは既往歴を検出することが可能である。これは、一般にヒトは風邪の原因である低病原性コロナウイルスに対する抗体を有しているところ、本発明のSARS-CoV-2由来NPの断片は、SARS-CoV-2由来NPのアミノ酸配列と他のコロナウイルス由来NPのアミノ酸配列との間で同一性が低い領域から構成されることから、該断片に対する抗体を、ヒト由来の血液、血漿および/または血清から特異的に検出することが可能であるためである。
【0012】
また、本発明のSARS-CoV-2由来NPの断片等をリアルタイム逆転写PCR法等の遺伝子検査と併用することにより、該遺伝子検査で偽陰性と判断された検体を改めて正確に検査することができ、偽陰性が生じる事例を減少させることが可能である。そして、医療従事者が、SARS-CoV-2感染患者と直接対面して鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、喀痰等の検体を採取する必要がないことから、医療従事者自身へのSARS-CoV-2感染を防ぐことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、SARS-CoV-2由来NPと他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、およびHCoV-229E)由来NPとの間のアミノ酸配列の同一性およびSARS-CoV-2由来NPのB細胞エピトープ予測によるエピトープ、およびSARS-CoV感染者のエピトープに基づく抗原性を示す。本発明では、SARS-CoV-2由来NPの中で抗原性が高く、他のコロナウイルス由来NPと共通するモチーフを除いたSARS-CoV-2由来NPの断片(配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域)を抗原とする。
図2図2は、SARS-CoV-2由来NPの断片の調製の結果を示す。図2Aは、SARS-CoV-2由来NPの断片の発現を確認した結果を示す。図2BはSARS-CoV-2由来NPの断片を精製した結果を示す。
図3図3は、ウエスタンブロット法による抗SARS-CoV-2抗体のヒト血清からの検出を示す。
図4図4は、ELISA法による抗SARS-CoV-2抗体のヒト血清からの検出を示す。図4Aは、SARS-CoV-2由来NPの断片をELISAプレートに固定化しない反応系の結果を示す。図4Bは、SARS-CoV-2由来NPの断片をELISAプレートに固定化した反応系の結果を示す。図4Cは、図4Aの吸光度をNとし、図4Bの吸光度をSとした場合のS/N比を縦軸としたグラフを示す。
図5図5は、イムノクロマト法による抗SARS-CoV-2抗体のヒト血清からの検出を示す。図5Aは、作製したイムノクロマトストリップおよびイムノクロマト法による抗SARS-CoV-2抗体のヒト血清からの検出の概要を示す。図5Bは、イムノクロマトストリップにおけるSARS-CoV-2由来NPの断片と血清中のIgG抗体との抗原抗体反応(赤いライン)の有無を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において別様に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願および他の出版物や情報は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0015】
[SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片]
本発明の一側面は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片(以下、「本発明の断片」と記す場合がある)に関する。
【0016】
本発明において、「SARS-CoV-2」は、中国武漢市付近で2019年に発生が初めて確認された、SARS関連コロナウイルスに属するコロナウイルスを指し、「2019新型コロナウイルス」と互換的に用いられる。SARS-CoV-2は、ヒトに対して病原性があり、急性呼吸器疾患(COVID-19)を引き起こす。SARS-CoV-2は、他のコロナウイルスと同様に、スパイク、ヌクレオ、内在性膜タンパク質、エンベロープタンパク質、およびRNAより構成されている。このうちヌクレオがRNAと結合してNPを形成し、脂質と結合したスパイク、内在性膜タンパク質、エンベロープタンパク質がその周りを取り囲んでエンベロープを形成する。なお、SARS-CoV-2のゲノム配列はGenBankアクセッション番号MN908947.3で公開されている。
【0017】
本発明において、「SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシド」は、SARS-CoV-2のヌクレオおよびRNAからなる複合体を指し、「SARS-CoV-2由来NP」と互換的に用いられる。SARS-CoV-2由来NPのアミノ酸配列は配列番号1で表される。
本発明において、「SARS-CoV-2由来ヌクレオカプシドの断片」は、SARS-CoV-2由来NPのアミノ酸配列(配列番号1)における、SARS-CoV-2由来NPのアミノ酸配列と他のコロナウイルス由来NPのアミノ酸配列との間で同一性が低い領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域)からなるタンパク質の断片を指す。SARS-CoV-2由来NPの断片は、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して、90%以上の配列同一性を有する。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、SARS-CoV-2由来NPの断片は、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して、95%以上の配列同一性を有することが好ましく、98%以上の配列同一性を有することが特に好ましく、100%の配列同一性を有することがさらに好ましい。一態様において、SARS-CoV-2由来NPの断片は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるものである。
【0018】
[抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法]
本発明の別の側面は、ヒト由来の血液、血漿および/または血清を本発明の断片と接触させる工程を含む、抗SARS-CoV-2抗体をヒト由来の血液、血漿および/または血清から検出する方法(以下、「本発明の方法」と記す場合がある)に関する。一態様において、本発明の方法は、本発明の断片と抗SARS-CoV-2抗体との間で抗原抗体反応を行う工程、および/または、抗SARS-CoV-2抗体と抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片との間で抗原抗体反応を行う工程をさらに含む。一態様において、本発明の断片および/または抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片は、標識物質により標識されている。
【0019】
本発明において、「ヒト由来の血液、血漿および/または血清」は、任意の健常者および/またはSARS-CoV-2感染患者から採取された血液、血漿および/または血清を指す。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、ヒト由来の血漿および/または血清を使用することが好ましく、ヒト由来の血清を使用することが特に好ましい。
急性期において、正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、ヒト由来の血液、血漿および/または血清は、発病後7日以内に採取されたものが好ましく、発病後3日以内に採取されたものが特に好ましく、発病後1日以内に採取されたものがさらに好ましい。また、回復期において、正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、ヒト由来の血液、血漿および/または血清は、発病後14~28日以内に採取されたものが好ましく、発病後14~25日以内に採取されたものが特に好ましく、発病後14~20日以内に採取されたものがさらに好ましい。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、採取したヒト由来の血液、血漿および/または血清を、-20℃以下の温度で保存するのが好ましく、-80℃以下の温度で保存するのが特に好ましい。
【0020】
ヒト由来の血液、血漿および/または血清は常法に従い分離することができる。
例えば、血清は、非特許文献2に記載のとおり、分離後の血清を密栓できるプラスティックチューブに1~2ml入れ、蓋をした後、パラフィルムでシールする。凝固剤が入っていてもよく、血清分離剤入りの採血管を用いた場合は、遠心後の血清1~2mlをプラスチックチューブ(滅菌チューブが望ましい)に移し蓋をした後、パラフィルムでシールする。
また、例えば、全血は、非特許文献2に記載のとおり、血液凝固阻止剤(EDTA-NaまたK)入りの採血管に採取し、1~2mlを密栓できるプラスティックチューブに分注し、蓋をした後、パラフィルムでシールする。可能であれば、血球分離し、末梢血単核球を細胞保存液に懸濁して凍結保存する。末梢血単核球の分離はBDバキュテイナ(登録商標)CPT(商標)単核球分離用採血管を使うと簡便である。また、採血後の分注や血球分離ができない場合は、PAXgene(登録商標)RNA採血管を用いて採血し、そのまま凍結保存しておいてもよい。
【0021】
本発明において、「標識物質」は、SARS-CoV-2由来NPの断片、または抗体を標識する任意の物質を指し、抗原抗体反応を検出できるものであれば特に限定されない。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、標識物質は、酵素、化学発光物質、蛍光発光物質、色素、金属コロイド粒子、ラテックス粒子、セルロース粒子等から選択される1以上のものであることが好ましい。
本発明において、「抗SARS-CoV-2抗体」は、SARS-CoV-2の感染による免疫応答の結果生じた生体由来の抗体を指し、ヒト由来の血液、血漿および/または血清において存在する。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、抗SARS-CoV-2抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEからなる群から選択される1以上のものであることが好ましく、IgGおよび/またはIgMであることが特に好ましく、IgGであることがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、「抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片」は、抗SARS-CoV-2抗体に特異的に結合し得る抗体またはその断片を指す。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEからなる群から選択される1以上のものであることが好ましく、IgGおよび/またはIgMであることが特に好ましく、IgGであることがさらに好ましい。抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体の断片は、FabフラグメントまたはV-、VH-またはCDR-領域等の免疫グロブリン分子の部分を含むが、当該断片も、抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体と同程度に抗SARS-CoV-2抗体に特異的に結合し得るものである。さらに、抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体は、キメラのおよびヒト化した抗体のような、修飾および/または変化した抗体を含む。抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体は、修飾または変化したモノクローナルまたはポリクローナル抗体、ならびに、組み換えもしくは合成的に産生したまたは合成した抗体も含む。抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体の断片は、抗体フラグメント、ならびに、分離した軽鎖および重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)等の、それらの部分も含む。抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体は、二機能性抗体のような抗体派生物、および、単鎖Fvs(scFv)、二重特異性scFvsまたは抗体融合タンパク質のような抗体構築物も含む。
【0023】
本発明において、抗SARS-CoV-2抗体は、本発明の断片と抗体との抗原抗体反応を検出できる任意の免疫学検査によって検出される。免疫学検査は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、化学発光免疫測定法(CIA、LIA)、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法(イムノクロマト法)、フィルター抗原アッセイ法、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、赤血球凝集反応法、または粒子凝集反応法等を含む。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点から、抗SARS-CoV-2抗体は、ELISA法および/またはイムノクロマト法によって検出されることが好ましい。また、所定量の本発明の断片と抗体との抗原抗体反応から検量線を作成し、測定値を検量線に内挿することによって抗体を定量することもできる。
【0024】
[抗SARS-CoV-2抗体を検出するためのキット]
本発明の別の側面は、本発明の断片を含む、抗SARS-CoV-2抗体を検出するためのキット(以下、「本発明のキット」と記す場合がある)に関する。正確、簡便、かつ迅速に抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点、医療従事者が感染現場および防疫現場等の設備が十分とはいえない場所で抗SARS-CoV-2抗体を検出する観点、疫学調査をする観点等から、本発明のキットは、イムノクロマトストリップの形態であることが好ましい。
【0025】
[抗SARS-CoV-2抗体を検出するための組成物]
本発明の別の側面は、本発明の断片を含む、抗SARS-CoV-2抗体を検出するための組成物(以下、「本発明の組成物」と記す場合がある)に関する。
[SARS-CoV-2感染の診断方法]
本発明の別の側面は、ヒト由来の血液、血漿および/または血清を本発明の断片と接触させる工程を含む、SARS-CoV-2感染の診断方法(以下、「本発明の診断方法」と記す場合がある)に関する。一態様において、本発明の診断方法は、本発明の断片と抗SARS-CoV-2抗体との間で抗原抗体反応を行う工程、および/または、抗SARS-CoV-2抗体と抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片との間で抗原抗体反応を行う工程をさらに含む。一態様において、本発明の断片および/または抗SARS-CoV-2抗体を認識する抗体またはその断片は、標識物質により標識されている。
【実施例
【0026】
例1 SARS-CoV-2由来NPの断片の調製
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるSARS-CoV-2由来NPの断片を以下の方法により調製した。なお、SARS-CoV-2由来NPは配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列に対応するRNA配列は配列番号3で表され、該RNA配列に対応するDNA配列は配列番号4で表される。なお、該DNA配列は、アミノ酸配列に基づき真核細胞でのタンパク質合成用にコドン最適化させている。
【0027】
[SARS-CoV-2由来NPの断片の無細胞タンパク質合成]
まず、配列番号4で表されるDNA配列を用いて、該DNA配列を鋳型とするPCR法により、配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域(図1)に対応する配列番号4で表されるDNA配列の361~1260番目の領域をPCR法により増幅し、セルフリーサイエンス社のWEPRO7240キットの使用説明書に従って、Hisタグが付加されたSARS-CoV-2由来NPの断片(配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域(図1))を小麦胚芽抽出液により無細胞タンパク質合成した。
【0028】
[SARS-CoV-2由来NPの断片の発現の確認]
SARS-CoV-2由来NPの断片の発現を、ウエスタンブロット法によって確認した。まず、Hisタグが付加されたSARS-CoV-2由来NPの断片を2×SDSサンプル緩衝液(125mM Tris-HCl、4%SDS、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー、および10%2-メルカプトエタノール)と混合して熱処理し、ポリアクリルアミドゲルに供して電気泳動した。次に、電気泳動後のゲルをPVDFメンブレンに転写した。メンブレンを2%スキムミルク溶液でブロッキングした後、ペルオキシダーゼ標識された抗Hisタグ抗体と反応させた。その後、HRP標識二次抗体と反応した後に、ペルオキシダーゼ基質溶液を加えて発光させ、化学発光撮影装置を用いて検出した。
その結果、Hisタグが付加されたSARS-CoV-2由来NPの断片の分子量は33.7kDaであるところ、該分子量に対応する位置にバンドが確認されたことから(図2A)、SARS-CoV-2由来NPの断片の発現を確認することができた。
【0029】
[SARS-CoV-2由来NPの断片の精製]
無細胞タンパク質合成の反応液からNiカラムを用いてHisタグが付加されたSARS-CoV-2由来NPの断片を精製した。転写、無細胞タンパク質合成、および精製の一連の工程は、自動合成装置(セルフリーサイエンス社)を使用して行った。Hisタグが付加されたSARS-CoV-2由来NPの断片を3回にわたって精製し、1~3回目の精製画分をそれぞれE1~E3とした。E1~E3を2×SDSサンプル緩衝液(125mM Tris-HCl、4%SDS、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー、および10%2-メルカプトエタノール)と混合して熱処理し、ポリアクリルアミドゲルに供して電気泳動し、Rapid CBB KANTO 3S(関東化学株式会社)によって染色した。
その結果、精製前の溶液(S:可溶性画分)と比較してE1~E3では夾雑タンパク質の存在量が低減されたことから(図2B)、SARS-CoV-2由来NPの断片が精製されたことを確認することができた。
【0030】
例2 ウエスタンブロット法によるSARS-CoV-2の検出
例1で得たSARS-CoV-2由来NPの断片を使用するウエスタンブロット法によってSARS-CoV-2のヒト血清からの検出が可能であるか否かを検討した。具体的には、SARS-CoV-2由来NPの断片が、SARS-CoV-2感染患者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対して抗原抗体反応を示すか否かをウエスタンブロット法によって評価した。また、比較のために、SARS-CoV-2由来NPの断片の代わりに、SARS-CoV-2由来NPおよび他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1、および229E)由来NPを使用した。
【0031】
[各NPの無細胞タンパク質合成]
まず、SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1、および229E由来NPをコードする各DNA配列を合成した(ジーンウィズ社に委託)(それぞれ配列番号5、6、7、および8で表される)。なお、各DNA配列は、アミノ酸配列に基づき真核細胞でのタンパク質合成用にコドン最適化させている。
次に、SARS-CoV-2由来NPおよび他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1、および229E)由来NPを、それぞれ例1に記載の方法と同様な手順で無細胞タンパク質合成し、精製した。
【0032】
[ウエスタンブロット法による抗原抗体反応の確認]
まず、SARS-CoV-2由来NPの断片およびSARS-CoV-2由来NPおよび他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1、および229E)由来NPを2×SDSサンプル緩衝液(125mM Tris-HCl、4%SDS、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー、および10%2-メルカプトエタノール)と混合して熱処理し、ポリアクリルアミドゲルに供して電気泳動した。次に、電気泳動後のゲルをPVDFメンブレンに転写した。メンブレンを2%スキムミルク溶液でブロッキングした後、健常者血清または患者血清と反応させた。そして、さらにペルオキシダーゼ標識された抗IgM抗体または抗IgG抗体(HRPヤギ抗ヒトIgM抗体またはIgG抗体)と反応させ、その後、ペルオキシダーゼ基質溶液(1-Step(商標)Ultra TMB-ELISA Substrate Solution、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を加えて発色させ、波長450nmでの吸光度を測定した。なお、健常者血清および患者血清は、56℃で30分間加熱し、等量の2%NP-40/PBSを加え、室温で15分間静置したものを使用した。
【0033】
その結果、健常者血清を加えた反応系では、SARS-CoV-2由来NPおよび他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1、および229E)由来NPについてIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応が見られたのに対して、SARS-CoV-2由来NPの断片についてはIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応が見られなかった。他方、患者血清を加えた反応系では、SARS-CoV-2由来NPの断片についてIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応が見られた(図3)。
【0034】
よって、SARS-CoV-2由来NPの断片は、健常者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応を示さないが、SARS-CoV-2感染患者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体しては抗原抗体反応を示すことがわかった。これは、SARS-CoV-2由来NPの断片(配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域)に対するIgM抗体およびIgG抗体が健常者血清には存在しないが、SARS-CoV-2感染患者血清には存在するためであると考えられる。すなわち、血清中に含まれる抗体とSARS-CoV-2由来NPの断片との抗原抗体反応をウエスタンブロット法で評価することにより、SARS-CoV-2感染について陽性であるか陰性であるかの判断をすることが可能であると考えられる。
以上から、ウエスタンブロット法によるSARS-CoV-2のヒト血清からの検出が可能であることが示された。
【0035】
例3 ELISA法によるSARS-CoV-2の検出
例1で得たSARS-CoV-2由来NPの断片を使用するELISA法によってSARS-CoV-2のヒト血清からの検出が可能であるか否かを検討した。具体的には、SARS-CoV-2由来NPの断片が、SARS-CoV-2感染患者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対して抗原抗体反応を示すか否かをELISA法によって評価した。
【0036】
PBS中のSARS-CoV-2由来NPの断片を100ng/ウェルでELISAプレート(MaxiSorp(商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に加えて固定化し(4℃、終夜)、3%スキムミルク溶液(PBS)でブロッキングした(室温、2時間)。プレートをPBS-T(0.05% Tween20)で3回洗浄後、1%スキムミルク(PBS-T)で25倍から2倍ずつ段階希釈した健常者血清(A、18959、18427、18340、18816、および18576)または患者血清(1、E、H、Ma、Mi、N、S1、T、およびS2)をそれぞれウェルに分注して室温で1時間反応させた。プレートをPBS-T(0.05% Tween20)で3回洗浄した後に、ペルオキシダーゼ標識された抗IgM抗体または抗IgG抗体(HRPヤギ抗ヒトIgM抗体またはIgG抗体)と室温で1時間反応させた。プレートをPBS-T(0.05% Tween20)で3回洗浄した後に、ペルオキシダーゼ基質溶液(1-Step(商標)Ultra TMB-ELISA Substrate Solution、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を加えて発色させ、波長450nmでの吸光度を測定した。なお、健常者血清および患者血清は、56℃で30分間加熱し、等量の1%NP-40/PBSを加え、室温で15分間静置したものを使用した。また、比較のために、SARS-CoV-2由来NPの断片をELISAプレートに固定化しない反応系を使用した。
【0037】
その結果、SARS-CoV-2由来NPの断片をELISAプレートに固定化しない反応系では、健常者血清および患者血清のいずれの反応系においても抗原抗体反応がほとんど見られなかったのに対して(図4A)、SARS-CoV-2由来NPの断片をELISAプレートに固定化した反応系では、患者血清の反応系において用量依存的な抗原抗体反応が見られた(図4B)。図4Aの吸光度をNとし、図4Bの吸光度をSとした場合のS/N比を縦軸としたグラフを図4Cに示す。
【0038】
よって、SARS-CoV-2由来NPの断片は、健常者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対する抗原抗体反応を示さないが、SARS-CoV-2感染患者血清に含まれるIgM抗体およびIgG抗体に対しては抗原抗体反応を示すことがわかった。これは、SARS-CoV-2由来NPの断片(配列番号1で表されるアミノ酸配列の121~419番目の領域)に対するIgM抗体およびIgG抗体が健常者血清には存在しないが、SARS-CoV-2感染患者血清には存在するためであると考えられる。すなわち、血清中に含まれる抗体とSARS-CoV-2由来NPの断片との抗原抗体反応をELISA法で評価することにより、SARS-CoV-2感染について陽性であるか陰性であるかを高感度に判断することが可能であると考えられる。
以上から、ELISA法によるSARS-CoV-2のヒト血清からの検出が可能であることが示された。
【0039】
例4 イムノクロマト法による抗SARS-CoV-2抗体の検出
例1で得たSARS-CoV-2由来NPの断片を使用するイムノクロマト法によって、抗SARS-CoV-2抗体(IgG)をヒト血清から検出可能であるか否かを検討した。
【0040】
まず、50mmol/Lのリン酸緩衝液(pH8.0)を用いて、SARS-CoV-2由来NPの断片の濃度を1.75mg/mLに調製した。次に、ニトロセルロースメンブレンに対して、試験ライン用にSARS-CoV-2由来NPの断片を、対照ライン用に 抗ヤギIgG抗体を、塗布装置(武蔵エンジニアリング社)により線上に塗布した。ニトロセルロースメンブレンをカゼインでブロッキングした後、純水で洗浄して乾燥させ、これをイムノクロマトストリップとした(図5A)。
【0041】
次に、50μLの健常者血清または患者血清と50μLの金コロイド標識抗ヒトIgGヤギ抗体(OD530= 2.0)を混合し、直ちに前記イムノクロマトストリップの試料パッドに滴下した。滴下(反応開始)から15分後、30分後に試験ラインにおける呈色を目視で観察した。なお、健常者血清および患者血清は、56℃で30分間加熱し、等量の1%NP-40/PBSを加え、室温で15分間静置したものを使用した。
【0042】
その結果、健常者血清を加えた反応系では、抗SARS-CoV-2抗体(IgG)の存在を示す試験ラインが出現しなかったのに対し、患者血清を加えた反応系では、抗SARS-CoV-2抗体(IgG抗体)の存在を示す試験ラインが出現した(図5B)。
よって、当該イムノクロマト法によって、ヒト血清中からSARS-CoV-2感染を示す抗SARS-CoV-2抗体を検出可能であることが示された。
【0043】
本明細書に記載された本発明の種々の特徴は様々に組み合わせることができ、そのような組み合せにより得られる態様は、本明細書に具体的に記載されていない組み合せも含め、すべて本発明の範囲内である。また、当業者は、本発明の精神から逸脱しない多数の様々な改変が可能であることを理解しており、かかる改変を含む均等物も本発明の範囲に含まれる。したがって、本明細書に記載された態様は例示にすぎず、これらが本発明の範囲を制限する意図をもって記載されたものではないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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