(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】織られたプロテーゼ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20240516BHJP
【FI】
A61F2/06
(21)【出願番号】P 2020088072
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2019071311の分割
【原出願日】2011-12-22
【審査請求日】2020-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2010-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512300883
【氏名又は名称】マッケ カーディオバスキュラー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ディーユー,ジョージ
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-532246(JP,A)
【文献】特表平11-505296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
D03D13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋入可能な医療プロテーゼを製造するための方法であって、前記医療プロテーゼは第1の端及び第2の端を備え、前記方法は、
たて糸の組及び少なくとも1つのよこ糸通過から織られたベースを織るステップであって、前記たて糸の組は、ベースたて糸として織られるたて糸及び非ベースたて糸として織られるたて糸を備え、前記ベースたて糸及び前記よこ糸通過はベース織パターンに織られ、前記非ベースたて糸は
、より少ない交絡の頻度をもって前記少なくとも1つのよこ糸通過と共に織られるステップと、
前記ベースたて糸の長手方向に沿う前記少なくとも1つのよこ糸通過の下を通過する前記非ベースたて糸の交絡の頻度における増加を通じて、前記織られたベースの中に前記非ベースたて糸のうちの1つ以上を組み込むステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記非ベースたて糸は、複数の前記よこ糸通過の上を通過す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記織られたベースは、より小直径の部分及びより大直径の部分を達成するように構成され、前記より大直径の部分は、前記より小直径の部分よりも大きい直径を達成することができ、前記より大直径の部分のより大きい直径は、前記織られたベースの中に1つ以上の
非ベースたて糸を組み込むステップによって達成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医療プロテーゼの多様な直径外形を提供するために、前記織るステップの最中に可変リードが動かされる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ベースたて糸の長手方向に沿う前記非ベースたて糸の交絡の頻度における増加を通じて、前記織られたベースの中に前記非ベースたて糸のうちの1つ以上を組み込むステップにおいて、前記非ベースたて糸は前記ベース織パターンを呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の端と前記第2の端との間において、前記ベースたて糸及び前記非ベースたて糸は切断されていない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
適用せず。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用せず。
【背景技術】
【0003】
本発明は、埋入可能な織られたプロテーゼ及びその製造方法に関する。例示的な実施形態では、プロテーゼは、その長さに沿って直径が変化する管状のグラフトである。プロテーゼは、例えば、上行大動脈及び大動脈基部のすべて又は一部を含むがこれに限定されない心血管系の部分を修復するために血管又は心血管外科医によって用いられる場合がある。例示的な実施形態では、本発明はまた、弁温存及びベントール型手術に適用できる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
損傷した又は疾患のある身体の管腔を置換又は修復するために、軟組織に埋入可能なプロテーゼに管状の織布が用いられている。心臓胸部外科の分野では、弱くなった又はそれ以外で損傷した血管の区域を血流及び圧力が破らないようにするために、脈管系に例えばエンドプロテーゼが用いられる。こうした管腔内の導管は、デバイスを定位置に固定するのに役立つステント、フック、縫合糸、又は他の機構によって血管の中の特定の場所に取り付けられる場合がある。管腔内の管状デバイス又は導管はまた、食道領域及び結腸領域のような身体の他の管腔の中で用いられることがある。
【0005】
1つの専門分野である、大動脈弁及び/又は上行大動脈、特にバルサルバ洞の置換又は修復は、専門化された時間のかかる外科手術を含む。これらの手術は、直線形の織られたグラフトで伝統的に行われている。手術は直線形のグラフトプロテーゼで行われることがあるが、血管グラフトがヒトの血管構造の自然な形状及び外形を模倣するのに膨らみ又は球状部分を組み込むことが有益な場合があるという高まる認識が外科界に存在する。他のものによってこうしたグラフトを製作する試みは、製作、外科的有用性、及び/又は術後の開存性の分野のうちの1つ又はすべてにおいて典型的に問題を引き起こした。
【0006】
例えば、幾つかの製作の試みは、結果的に波形の拡大可能な中央区域を備えるグラフトをもたらすような様態で波形布の切断区域を一緒に縫うこと、縫合すること、又はシーム形成することのような織った後の処理を含むものであった。こうしたグラフトは、付加的な費用のかかる製造ステップを必要とする。さらに、結果として得られるグラフトは、球状部分上で吻合を行うのに十分に平坦且つ平滑な表面が提供されないので、外科的有用性及び外科医の使いやすさを損なうことがある。こうした欠陥は、吻合手術を複雑にする。
【0007】
加えて、複数の構成部品が一緒に合わされる「シーム」又は「接合部」は、グラフトの他の部分では見受けられないグラフト剛性、強度、及び多孔度変化の局部的部分をもたらす。結果として得られる基礎をなすグラフトの一様でない性質は、埋入前及び/又は吻合前、並びに埋入中及び/又は吻合中に、外科医にグラフトの配向を考えさせる。外科医に必要とされるこの余計な用心は、手術の他の態様から彼又は彼女の気をそらせる可能性がある。
【0008】
さらに、波形球状区域をもつグラフトにかかる生体内動脈圧は、手術中に通常生じるこうしたプロテーゼの加圧されていない状態と比べたときに、結果的に大いに異なる拡大された形状及び寸法をもたらす可能性がある。したがって、こうしたプロテーゼでは、外科医は、弁尖とプロテーゼの内側壁とのクリアランス又は係合に関してのプロテーゼの生体内性能を予測することができないであろう。したがって、外科医は、こうしたグラフトが生体内でどのように機能することになるかが十分に分からない場合があり、プロテーゼの長期の外科的成功についての如何なる予測も有さない場合があり、これにより、外科手術の意図された有効性が脅かされる可能性がある。
【0009】
上行大動脈及びバルサルバ洞に関係する問題に対処するためのプロテーゼを製作する他の例は、よこ糸の収縮を通じてグラフトのより小直径の部分が生じるように制御された様態で糸の収縮特徴を用いることを試みるものである。こうした手術を通じてテーパを形成することができる可能性があるが、縫合保持強度、並びに布構造体の一様でない多孔度及び糸間隔に関係する懸念が、上行大動脈の部分を修復するのに用いられるときに外科医及び/又はプロテーゼの長期耐久性に問題を引き起こすことがある。加えて、こうしたプロテーゼの製作業者は、バルサルバ洞を模倣するのに必要とされる十分なテーパの幾何学的構造を設計することを、糸の収縮係数を通じて制限されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例となる実施形態に係る埋入可能なプロテーゼは、よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、織られたベースと、より小直径の部分とより大直径の部分との両方の一部を形成する1つ又は複数のベロア糸とを備える。より大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つは、織られたベースの中に組み込まれ、織られたベースと一致する織パターンを呈する。
【0011】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分内で、1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つは、織られたベースの中に組み込まれず、織られたベースと一致する織パターンを呈さない。
【0012】
例となる実施形態によれば、ベースたて糸間の間隔は、より小直径の部分にある以上に付加的なたて糸をより大直径の部分に追加することなく、より小直径の部分及びより大直径の部分においてほぼ同じに維持される。
【0013】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分からより大直径に移行するプロテーゼの直径の増加が、プロテーゼを織っている間にベースたて糸間の間隔を増加させることによってもたらされる。
【0014】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分の織られたベースの中に組み込まれる1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つによって、より大直径の部分の直径を減少させずに、より大直径の部分におけるベースたて糸間の間隔をより小さくすることができる。
【0015】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、概して管状のグラフトであり、より大直径の部分は、グラフトの長手方向の軸線に沿って直径が変化するグラフトの部分内にあり、より小直径の部分は、概して一様な直径を有するグラフトの部分内にある。
【0016】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、概して管状のグラフトであり、より大直径の部分及びより小直径の部分は、グラフトの長手方向の軸線に沿った直径におけるプロテーゼの部分内にある。
【0017】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数のベロア糸は、より大直径の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する。
【0018】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分におけるベースたて糸間の間隔は、より大直径の部分における間隔のサイズの30%以内である。
【0019】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分におけるベースたて糸間の間隔は、より大直径の部分における間隔のサイズの15%以内である。
【0020】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分におけるベースたて糸間の間隔は、より大直径の部分における間隔のサイズの10%以内である。
【0021】
例となる実施形態によれば、プロテーゼが備えるベースたて糸及びベロア糸の量は、より大直径の部分においてより小直径の部分と同じであり、ベースたて糸及びベロアたて糸は、より小直径の部分とより大直径の部分との間で連続して織られる。
【0022】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、より小直径の部分及びより大直径の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた層を備え、第2の層を形成する糸の一部は、より大きい部分のベース層の中に組み込まれる。
【0023】
本発明の例となる実施形態に係る埋入可能なプロテーゼは、(i)よこ糸通過と織り合わされるたて糸を含み、たて糸のすべて又は一部がよこ糸通過と一緒に織られて、織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体を含み、(ii)織られた構造体の第1の部分はたて糸の第1の組と共に織られ、よこ糸通過と織り合わされるたて糸の第1の組の第1のサブセットは、第1の部分における織られたベースを形成し、第1の部分の第1のサブセットにおけるたて糸のうちの2つは、プロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ離間され、第1の距離は、プロテーゼの表面に沿った第1の部分の第1のサブセットにおけるたて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、(iii)織られた構造体の第2の部分はたて糸の第1の組と共に織られ、よこ糸通過と織り合わされるたて糸の第1の組の第2のサブセットは、第2の部分における織られたベースを形成し、第2の部分の第1のサブセットにおけるたて糸のうちの2つは、プロテーゼの表面に沿って互いから第2の距離だけ離間され、第2の距離は、プロテーゼの表面に沿った第2の部分の第1のサブセットにおけるたて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きい。第2の距離は、第1の距離よりも大きく、第1のサブセットにおけるたて糸の数は、第2のサブセットにおけるたて糸の数よりも少ない。
【0024】
例となる実施形態によれば、よこ糸通過と織り合わされ且つ織られたベースの中に配置されるたて糸の部分はベース織パターンで構成され、織られたベースの中に配置されないたて糸の別の部分はベロアたて糸である。
【0025】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、概して管状のグラフトであり、第1の部分はグラフトの長手方向の軸線に沿った第1の直径を有し、第2の部分は第1の直径よりも大きい長手方向の軸線に沿った第2の直径を有する。
【0026】
例となる実施形態によれば、織られたベースを形成する第1のサブセットの中にないたて糸の第1の部分は、第2の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する。
【0027】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、第1の端及び第2の端を有し、本質的にすべてのたて糸が第1の端と第2の端との間で連続的に織られる。
【0028】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、第1の部分及び第2の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた構造体を備え、第2の織られた構造体を形成する糸の一部は、第2の部分の織られたベースの中に組み込まれる。
【0029】
本発明に係るプロテーゼを作製する例となる方法は、(i)たて糸の組と少なくとも1つのよこ糸通過から織られたベースを織るステップであり、たて糸の組が、ベースたて糸として織られるたて糸及び非ベースたて糸として織られるたて糸を含み、ベースたて糸及びよこ糸通過がベース織パターンに織られ、非ベースたて糸がベース織パターンに織られないときに少なくとも1つのよこ糸通過と共に織られる、織られたベースを織るステップと、(ii)織られたベースの中に非ベースたて糸のうちの1つ又は複数を組み込むステップであり、1つ又は複数の非ベースたて糸がベース織パターンのすべて又は一部と一致する織パターンをとる、組み込むステップと、を含む。
【0030】
例となる実施形態によれば、非ベースたて糸はベロア糸である。
【0031】
例となる実施形態によれば、織られたベースは、より小直径の部分及びより大直径の部分を達成するように構成され、より大直径の部分は、より小直径の部分よりも大きい直径を達成することができる。より大直径の部分のより大きい直径は、織られたベースの中に1つ又は複数のベロア糸を組み込むステップによって達成される。
【0032】
グラフトを作製する例となる方法は、織られたベースの中に1つ又は複数のベロア糸を組み込むステップが、ベース織パターンの中に組み込まれる前にベロアとして用いられるベロア糸のみを用いることをさらに含んでもよい。
【0033】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、より小直径の部分に関するベースたて糸密度の30%の許容差内のベースたて糸密度を有する。
【0034】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、より小直径の部分に関するベースたて糸密度の15%の許容差内のベースたて糸密度を有する。
【0035】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、より小直径の部分に関するベースたて糸密度の10%の許容差内のベースたて糸密度を有する。
【0036】
例となる実施形態によれば、医療プロテーゼの多様な直径外形を提供するために、織るステップ中に可変リードが動かされる。
【0037】
本発明に係るプロテーゼを作製する例となる方法は、よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースを織るステップであり、ベースがより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成し、1つ又は複数のベロア糸がより小直径の部分とより大直径の部分との両方の一部を形成する、織られたベースを織るステップを含む。プロテーゼを作製する例となる方法は、より大直径の部分の少なくとも一部において、織られたベースと一致する織パターンを呈するように1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つを織られたベースの中に織るステップをさらに含んでもよい。
【0038】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分の織られたベースの中に織られ、且つ織られたベースと一致する織パターンを呈する、1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つは、より小直径の部分のベースの中に織られない。
【0039】
本発明に係るプロテーゼを作製する例となる方法は、(i)グラフトの少なくとも一部上にベロア層を有する可変直径グラフトを織るステップであり、たて糸が織パターンをとり且つグラフトのより大直径の部分のベース層の一部を形成するように、グラフトのより小直径の部分におけるベロア層を形成するのに用いられるたて糸の織パターンを変化させるステップを含む。
【0040】
プロテーゼを作製する例となる方法は、より大直径の部分よりも直径が小さい第2のより小直径の部分の少なくとも一部上にベロア層が形成されるように、より大直径の部分から第2のより小直径の部分に遷移する際にたて糸の織パターンを変化させるステップをさらに含んでもよい。
【0041】
プロテーゼを作製する例となる方法は、より大直径の部分における隣接するたて糸間の間隔が増加するように、より小直径の部分のベース層を形成するのに用いられた少なくとも一対の隣接するたて糸をシフトさせるステップをさらに含んでもよい。
【0042】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分を形成するのに用いられるベースたて糸間の間隔は、より大直径の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの30%以内である。
【0043】
例となる実施形態によれば、より小直径の部分を形成するのに用いられるベースたて糸間の間隔は、より大直径の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの15%以内である。
【0044】
本発明に係るプロテーゼを作製する例となる方法は、(i)ベースたて糸、ベロアたて糸、及び1つ又は複数のよこ糸通過を織り合わせることによってプロテーゼの第1の部分を形成するステップと、(ii)少なくとも一対の隣接するベースたて糸をそれらの間の間隔が増加又は減少するようにシフトさせるステップと、(iii)ベロアたて糸のうちの1つ又は複数と一緒に少なくとも一対のシフトされたベースたて糸と共に1つ又は複数のよこ糸通過を織ることによってプロテーゼの第2の部分のベース層を形成するステップとを含む。
【0045】
例となる実施形態によれば、ベロアたて糸は、第1の部分において浮きを呈し、第2の部分において浮かない又はより小さく浮く。
【0046】
例となる実施形態によれば、シフトは、たて糸案内デバイスを用いて達成される。
【0047】
例となる実施形態によれば、たて糸は、たて糸案内デバイスにおけるギャップを通過し、該スペースは、プロテーゼの第1の部分におけるたて糸間の間隔よりも大きい距離だけ離間される。
【0048】
例となる実施形態によれば、医療プロテーゼは、概して管状のグラフトであり、グラフトの第2の部分は、グラフトの第1の部分よりも大きい直径を有する。
【0049】
例となる実施形態によれば、シフトは、プロテーゼの直径の変化をもたらすようにグラフトの長手方向の軸線に沿って徐々に増加又は減少する。
【0050】
例となる実施形態によれば、第1の部分におけるベースたて糸間の間隔は、第2の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの30%以内である。
【0051】
グラフトを作製する例となる方法は、第2の部分における第1の部分からのベースたて糸のうちの少なくとも1つを第2の部分のベース層の一部としてではなくベロアたて糸として用いるステップをさらに含んでもよい。
【0052】
例となる実施形態によれば、ベースたて糸及びベロアたて糸の量は、第1の部分と第2の部分との両方に関して同じである。
【0053】
例となる実施形態によれば、ベースたて糸及びベロアたて糸の量は、医療プロテーゼの全体を通して一定している。
【0054】
本発明に係るプロテーゼを織る例となる方法は、(i)よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を含む織られたベースを織るステップであり、ベースがプロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成し、1つ又は複数のベロア糸がより小直径の部分とより大直径の部分との両方の一部を形成する、織られたベースを織るステップと、(ii)より大直径の部分の少なくとも一部において、織られたベースと一致する織パターンを呈するように1つ又は複数のベロア糸のうちの少なくとも1つを織られたベースの中に組み込むステップとを含む。例となる実施形態によれば、ステップ(ii)における組み込みは、より小直径の部分における組み込みではなくてもよい。
【0055】
プロテーゼを織る例となる方法は、より大直径の部分における隣接するたて糸間の間隔が増加するように、より小直径の部分のベース層を形成するのに用いられた少なくとも一対の隣接するたて糸をシフトさせるステップをさらに含んでもよい。
【0056】
よこ糸通過と織り合わされるたて糸を備え、たて糸のすべて又は一部がよこ糸通過と一緒に織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体を含む本発明に係る埋入可能な医療プロテーゼを作製する例となる方法は、(i)たて糸の第1の組と共に織られた構造体の第1の部分を織るステップであり、よこ糸通過と織り合わされるたて糸の第1の組の第1のサブセットが第1の部分における織られたベースを形成し、第1の部分の第1の組におけるたて糸のうちの2つがプロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ離間され、第1の距離が、プロテーゼの表面に沿った第1の部分の第1の組におけるたて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きい、織られた構造体の第1の部分を織るステップと、(ii)たて糸の第1の組と共に織られた構造体の第2の部分を織るステップであり、よこ糸通過と織り合わされるたて糸の第1の組の第2のサブセットが第2の部分における織られたベースを形成し、第2の部分の第1の組におけるたて糸のうちの2つがプロテーゼの表面に沿って第2の距離だけ互いから離間され、第2の距離が、プロテーゼの表面に沿った第2の部分の第1の組におけるたて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きい、織られた構造体の第2の部分を織るステップと、を含む。
【0057】
本発明の例となる実施形態に係る埋入可能なプロテーゼは、(i)よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、ベースと、(ii)より小直径の部分とより大直径の部分との両方の一部を形成する1つ又は複数の付加的なたて糸とを備える。より小直径の部分ではなくより大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の付加的なたて糸のうちの少なくとも1つは、織られたベースの中に組み込まれ、且つ織られたベースと一致する織パターンを呈する。
【0058】
本発明の例となる実施形態に係る埋入可能なプロテーゼは、織られたベースを備え、ベースが、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の側壁のすべて又は一部を形成し、より大直径の部分が最大直径を備え、最大直径が近位管状部分内の測定された直径よりも4ミリメートル以上長く、より大直径の部分が、近位管状部分内の測定された直径の75パーセントから150パーセントまでの間の長さを有し、近位管状部分とより大直径の部分が、織られたベース内のよこ糸通過と共に織られるたて糸に関する織られたベース内の糸間隔と実質的に一様な糸を有する、プロテーゼを含む。
【0059】
例となる実施形態によれば、よこ糸通過は、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の全体を通して同じ糸材料特性及び収縮特性で織られる。収縮特性は、幾つかの収縮係数を含む。
【0060】
例となる実施形態によれば、よこ糸通過は、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の全体を通して同じよこ糸と共に織られる。
【0061】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、近位管状部分及び遠位管状部分とシームレスに織られる。
【0062】
例となる実施形態によれば、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分を形成するのに同じ量のたて糸が用いられる。
【0063】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定であるように構成される。
【0064】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、120ミリメートルマーキュリーの流体加圧条件下でその直径を維持するように構成される。
【0065】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分の最大直径での織られたベースは、波形、プリーツ、及び捲縮のうちの少なくとも1つをもたない。
【0066】
例となる実施形態によれば、より大直径の部分は、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定である。
【0067】
例となる実施形態によれば、プロテーゼは、少なくとも1つの直径遷移参照インジケータを有する。
【0068】
例となる実施形態によれば、直径遷移参照インジケータは、プロテーゼの他の部分とは異なる色のよこ糸通過からなる。
【0069】
例となる実施形態によれば、直径遷移参照インジケータは、プロテーゼの残りの部分から区別可能な色を有する1つ又は複数のよこ糸通過から形成される。
【0070】
本発明の埋入可能な医療プロテーゼを作製する例となる方法は、管状プロテーゼを少なくとも1つのよこ糸と複数のたて糸で織るステップを含み、たて糸のすべて又は一部は、ベースたて糸、ベロアたて糸、又はベロアたて糸とベースたて糸との両方として織られ、織るステップは、ベロアたて糸密度が減少する一方で平均ベースたて糸密度を所定の範囲内に維持する状態で、より小直径の部分からより大直径の部分に長手方向に行われる。
【0071】
例となる実施形態によれば、たて糸の量は、織るステップ中に、一定に維持される。
【0072】
例となる実施形態によれば、織るステップ中に、総たて糸密度が減少する。
【0073】
例となる実施形態によれば、所定の範囲は、プロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度のプラス又はマイナス30%、好ましくはプロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の20%、より好ましくはプロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の10%、及び最も好ましくはプロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の5%の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明の例となる実施形態に係る血管グラフトの斜視図である。
【
図4A】
図2のグラフトの一部の部分断面図である。
【
図4B】
図3のグラフトの一部の部分断面図である。
【
図5】
図1のグラフト表面の一部の拡大上面図である。
【
図8】本発明の例となる実施形態に係る血管グラフトの立面図である。
【
図9】
図8のグラフトの球状部分及び隣接する部分の拡大図である。
【
図10】
図8及び
図9に示す場合のグラフトの一部をとりあげた拡大図である。
【
図13A】第1の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図13B】第2の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図13C】第3の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図14A】第1の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図14B】第2の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図14C】第3の位置にある扇形リードの立面図である。
【
図16A】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの斜視図である。
【
図17A】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの斜視図である。
【
図19A】本発明の例となる実施形態に係る織りステーションの上から見た図である。
【
図20】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの立面図である。
【
図21】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの立面図である。
【
図22】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの立面図である。
【
図23】本発明の例となる実施形態に係るグラフトの立面図である。
【
図24A】本発明の例となる実施形態に係る血管グラフトの立面図である。
【
図25A】本発明の例となる実施形態に係る血管グラフトの立面図である。
【
図26】本発明の例となる実施形態に係る可能性のあるパラメータの表である。
【
図27】本発明の別の例となる実施形態に係る可能性のあるパラメータの表である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下の説明の目的上、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「横」、「長手方向」、「軸方向」という言葉、及び同様の用語は、用いられる場合、図面で配向されている場合の本発明に関するものとする。適切なときには、「近位」という用語は、ヒトの心臓のような心臓の方に向けられたプロテーゼの態様の相対的場所を指すものとし、遠位という用語は、心臓から遠い方向のプロテーゼの態様の相対的場所を指すものとする。本発明は、逆に明記される場合を除いて、多くの代替的変形及び実施形態をとってもよいことが理解される。付属の図面で例証され及び本明細書で説明される特定のデバイス及び実施形態は、本発明の単なる例となる実施形態であることも理解される。
【0076】
図1は、例えば、大動脈基部又は上行大動脈の置換として構成される本発明の例となる実施形態に係る可変直径プロテーゼ10を例証する。プロテーゼ10は、第1の織られた管状部分12、第2の織られた球状部分14、及び第3の織られた管状部分16を含む。プロテーゼ10は、近位端18、遠位端20、及びそれらの間に配置される側壁30をさらに備える。側壁30は、たて糸を端間でばらばらに切断する又は一緒に溶着させる必要なしに、近位端18及び遠位端20のような織られた構造体の端間で連続したたて糸を用いることで連続的に織られる。プロテーゼ10の他の例となる構成が、
図8、
図16A、
図16B、
図17A、
図17B、
図20~
図23、
図24A、
図24B、
図25A、及び
図25Bで例証される。
【0077】
図1に示されるプロテーゼ10の側壁30は、所定のレベルの血液の漏れに抵抗するように構成される。漏れ速度は、例えば、織パターン、糸間隔、糸デニール、及び/又は糸の締まりを調節することで側壁30の多孔度を調節することによって制御されてもよい。側壁30のこうした特性は、組織の内部成長を提供し、なおかつ漏れを引き起こさない又は促進しないようにするのに十分なだけ一様な多孔度を提供するであろう。側壁30の多孔度は、随意的なコーティングの適用前及び/又は適用後にプロテーゼ10の全体を通して概して一様とすることができる。製作業者による所望の構成に応じて、コラーゲン又はゲルコーティングを含むコーティングの適用が採用されてもよい。望ましくは、コーティングステップ後の側壁30の多孔度は、120mmHgで毎分5mL/cm
2未満であってもよい。これは、Wesolowski法を用いて測定されてもよい。
【0078】
種々の織パターンが採用されてもよい。本開示のたて糸が連続したよこ糸通過と係合するとき、これは通常、平織パターンとして知られている。さらに、たて糸が複数のよこ糸通過(ベースの中で用いられるスキップよりも大きい)にわたってスキップする、ジャンプする、又は浮くとき、これらのたて糸はベロアたて糸と呼ばれ、織パターンはベロア織パターンと呼ばれる。それらのたて糸がベースの中にないたて糸パターンのような、ベース並びにベース以外の部分の両方に関する種々の織パターンが選ばれてもよい。非ベースたて糸パターンの例は、ベースの中にないたて糸に関するベロア織パターンを含む。ベロア織パターンは、シングルベロア、ダブルベロア、及び他のものを含んでもよい。一般に、よこ糸通過の交絡の頻度は、ベロア層のような非ベース層の中にあるときのたて糸に関するよりもベースの中にあるときのたて糸に関して大きい。
【0079】
プロテーゼ10は、概して細長く、たて糸が
図1に示される軸線34と概して平行に配置された状態で織られる。第1の管状部分12及び第2の管状部分16は、直線形の管状部分として示され、管状部分12及び16間に配置される球状部分14と連続的に織り合わされる。
図1、
図8、
図16A、
図16B、
図17A、
図17B、
図20~
図23、
図34A、
図24B、
図25A、及び
図25Bに描かれるプロテーゼ10、10’、10’’、10’’’、310、410、510、610、910、及び960は、本発明の幾つかの技術を用いて生産することができる複雑な形状にされた血管プロテーゼ構造体の世界のほんの幾つかの例を表わし、特許請求される発明の範囲内の他の変形が考慮される。
【0080】
図2は、
図1の線2-2の付近で見た非常に概略的な断面を例証する。線2-2でのプロテーゼ10の直径は、参照番号32を用いて表される。さらに後述するように、
図2で例証される場合のプロテーゼ10は、この実質的に自立構成を維持できるようにするために幾つかの処理ステップをすでに受けている。この処理の前のプロテーゼは、生機では一般的なより平らな外形を有する。
【0081】
図3は、
図1の線3-3の付近で見た非常に概略的な断面を例証する。線3-3でのプロテーゼの直径10は、参照番号33で表される。線3-3は、線2-2よりも大直径でプロテーゼ10と交差し、したがって、直径33は直径32よりも大きさにおいて大きい。
【0082】
図4Aは、
図2に示されるプロテーゼ10の周縁区域35の拡大図である。例証されるのは、合計15本のたて糸40と2つのよこ糸通過52を含む側壁の断面である。たて糸の第1の組(15本として例証される)が示され、そのうちの10本がよこ糸通過52の第1の組(2つのよこ糸として示される)と織り合わされ、第1の組又はベース層60の第1のサブセットを構成する。「ベース」という用語は、「ベース層」、「基」、「地」、又は「地層」という用語と交換可能に用いられることを意図される。残りのたて糸は、たて糸の第2の組をなし、ベース層60の外部の、ベロア層62のような非ベース層の中に位置決めされる。この第2の組は、5本の非ベースたて糸のうち、糸27’、29’、及び31’を含む。この実施形態では、非ベースベロア層は、緩い織り(ベース層60に対して)を提供し、血管導管としての使用中にプロテーゼ10への組織の内部成長を可能にし、したがって、ベロア層として機能する。
【0083】
図4Aと同様に、
図4Bは、区域35と同じ円孤の付近で見た
図3に示されるプロテーゼ10の周縁区域37の拡大図を表す。例証されるのは、合計13本のたて糸40と2つのよこ糸通過52を含む側壁の断面である。たて糸40の第1の組(13本として例証される)が示され、そのうちの10本がよこ糸通過52の第1の組(2つのよこ糸として示される)と織り合わされ、第1の組又はベース層60の第1のサブセットを構成する。第1の組の第1のサブセットの2つのたて糸は、たて糸27’’及び31’’であり、これらは
図4Aで例証されるたて糸27’及び31’と同じであるが、この
図4Bではよこ糸通過52と織り合わされ及びベース層60の中にあるものとして位置決めされる。2つのたて糸27及び31は、したがって、
図4Aで(たて糸27’及び31’として)例証される非ベース層(ベロア層62)における第1の位置から、
図4Bで(たて糸27’’及び31’’として)例証されるベース層60にシフトされている。
【0084】
図2と
図3との間の直径の増加にもかかわらず、
図4A及び
図4Bの両方における隣接するたて糸40間の中心間距離又は間隔3は同じ又はほぼ同じであることに注目されたい。球状部分14における拡大された直径は、したがって、この部分14における増加したプロテーゼ多孔度を代償とせずして生じず、これは血液の漏れを引き起こすとともに、吻合のような手術中の縫合の完全性を低下させることがある。代わりに、プロテーゼ10を織っている間に非ベース層62におけるたて糸27’及び31’をベース層60の中にシフトさせることで、この部分14における糸密度、したがってプロテーゼ10の多孔度を依然として維持しながら、第2の織られた部分14における直径の増加が可能となる。他の介入なく、たて糸40を離れるようにシフトさせることは、球状部分14におけるプロテーゼ10の糸密度を必然的に減少させる。
【0085】
例示的な実施形態では、両方の糸27’及び31’をベース層60の中にシフトさせるのではなく、糸27’及び31’のうちの1つだけをベース層の中にシフトさせてもよい。この場合、隣接するたて糸間の間隔は、
図4A及び
図4Bに示す間隔と比べて増加するであろう。例えば、血液の漏れを許すレベルを上回る多孔度を依然として維持しながら、第1の織られた管状部分12に比べて第2の球状部分14において減少した多孔度が望まれるならば、これは望ましい場合がある。
【0086】
図4A及び
図4Bを含む本開示の全体を通して、たて糸がプロテーゼのベース層に位置し、且つベース層と一致する織パターン又は第1の織パターンをとったときに、ベース層60の中にあるときのたて糸は総称してベースたて糸と呼ばれる。さらに、たて糸がベース層60の中になく、且つベース層60の織パターンをとらなかった又は第1の織パターンとは異なる第2の織パターンをとったときに、たて糸は、本開示の中で限定はされないがベロアたて糸のような非ベースたて糸と呼ばれる場合がある。幾つかのたて糸は、本明細書で説明されるプロテーゼ構造体のすべて又はほんの一部にわたるベースたて糸として位置決めされ及び/又は織られてもよい。幾つかのたて糸は、本明細書で説明されるプロテーゼ構造体のすべて又はそのほんの一部にわたるベロアたて糸として位置決めされ及び/又は織られてもよい。さらに、幾つかのたて糸は、ベロアたて糸とベースたて糸との両方として役立つ可能性があり、織パターン又は交絡の頻度における遷移又は調節によって2つの状態間で遷移してもよい。
【0087】
図5は、
図1に示す場合のプロテーゼ10の外面28の部分46(単なる参考のために点線で囲まれる)の拡大図である。3つのたて糸(概してたて糸40として参照される)が複数のよこ糸通過52と共に織られた状態で示される。たて糸は、矢印48と関連付けられる方向に延び、一方、よこ糸通過52は、矢印50と関連付けられる方向に延びる。本発明の精神から逸脱することなく他の方向が採用されてもよく、示される方向は単なる例証である。矢印48は
図1の軸線34と概して一致する。
【0088】
図5で例証されるたて糸40の、たて糸40のうちの2つは、図面全体にわたるベースたて糸42であり、たて糸44のうちの1つは、たて糸42のようなベースたて糸並びにベロアたて糸のような非ベースたて糸の両方の挙動を呈する。非ベースたて糸44は、第1の織パターン、すなわち5/1ベロアパターンと、第2の織パターン、すなわち、1/1平織パターンとの両方を呈する。5/1ベロアパターンでは、たて糸44(単に例証する目的で斜線掛けで示される)は、最初のよこ糸通過52(
図5の左から1つ目)の下を通り、最後の一番右から3つ目のよこ糸通過52の下を通る前に5つの後続するよこ糸通過52の上に浮く。最後の一番右から3つ目のよこ糸通過52の下を通った後で、たて糸44は、残りのよこ糸通過52に関して繰り返す上及び下1/1平織パターンをとることによってベースたて糸に遷移する。
【0089】
上記と一致して、ベースたて糸42a及び42bは、左から右へ9つの後続するよこ糸通過52のそれぞれと係合する。具体的には、ベースたて糸42aは、第1のよこ糸通過の下に位置決めされ、一方、ベースたて糸42bは、第1のよこ糸通過の上に位置決めされる。このパターンは、
図5に示される9つのよこ糸通過のすべてが第1のベースたて糸42a及び第2のベースたて糸42bと織り合わされるように繰り返される。
【0090】
たて糸44がベース60の中に織られ/組み込まれ、且つベースと一致する織パターン(ベースたて糸42a、42bに関して示される1/1織パターンのような)をとる、部分46の一番右側で、隣接するベースたて糸40が、ベース層60において互いから離れるようにシフトされ、この組み込みに適応する。例証される場合のベース層60におけるベースたて糸40のこの相対シフトは、織パターンにおける遷移の前に起こるが、織パターンにおける遷移時に又は遷移後にも起こる可能性がある。以下で詳述するように、たて糸40間の間隔を調節するために、扇形リードのようなたて糸案内デバイス(
図13A~
図13C及び
図14A~
図14C)が用いられてもよい。たて糸44がベース層60の中に移動されるときに、たて糸44は、ベースたて糸42a、42bの一方又は両方と同じ織パターンをとる。たて糸44は、ベース層60の中にあるとき、ベースたて糸42aと位相が合っており、ベースたて糸42bと位相が合っていない。
【0091】
第1のたて糸間隔56は、ベースたて糸42a、42bと織パターンが一致する状態でベースたて糸42a、42b間に付加的なたて糸が織り合わされないときの、ベース層60における隣接するベースたて糸42a、42b間のスペースを表わす。第2のたて糸間隔59は、糸42a、42bが離れるようにシフトされている、部分46の右のベース層60における隣接するたて糸42a、42b間のより大きい中心間距離を表わす。
【0092】
図6は、
図5の線6-6を通して見た外面28の部分46の側面図を例証する。
図6は、どのようにたて糸44がベロアたて糸として5つのよこ糸通過52の上に浮き、付加的なよこ糸通過(左から6つ目)と係合して、すなわち、その下を通って、連続したよこ糸通過の上及び下に浮くことによってベース織パターンをとるように織パターンを変化させるかを例証する。
図6は、たて糸44がベース層60の中にないときのたて糸44とベースたて糸42との間のギャップ又は間隔65を実証するが、たて糸44は、スペース又はギャップが存在しないような様態で織られてもよい。また、
図5は、表面28(プロテーゼ10の外面)のみから突き出るたて糸44を例証するが、ベロアたて糸44は、プロテーゼの内面のみから、又は随意的に内面26と外面28との両方から突き出るように反転されてもよい。さらに、5つのよこ糸通過の上の浮きが例証されるが、他の浮きが同様に用いられてもよい。
【0093】
図7は、
図6の線7-7を通して見た断面図を例証する。第1のベースたて糸42a及び第2のベースたて糸42bは、それらの間に配置されるよこ糸通過とは異なる高度を有するように示されるが、それらは同じ高度となるように配置されてもよい。点線の下方のベース層60と点線の上方の非ベース層62とを見分けるために、例証する目的で
図7に点線が含まれる。
【0094】
上記のように、ベースたて糸42a、42bと、それらの間におかれるよこ糸通過52が、
図7でさらに例証されるベース層60を形成し、横方向距離56は、第1のたて糸42aと第2のたて糸42bとの間の中心間距離を表す。この隣接するたて糸のベースたて糸間の距離56(
図5も参照)は、例えば、ベース層60の中に組み込まれることになる1つ又は複数のベロアたて糸のためのスペースをつくり、且つベース層60と一致する織パターンをとるように調節されてもよい。望ましい範囲に、例えば、多孔度、縫合保持強度、又はプロテーゼの血液透過性を制御するために、距離56はまた、ベースたて糸がベース層60の外に移動し、且つベロア織パターンのような非ベース織パターンと一致する織パターンをとるときに減少されてもよい。
【0095】
たて糸は、非ベース層62における第1の位置、したがって織られた構造体のベース層60の外側から、ベース層60内の第2の位置に整然と移動されてもよい。第1の位置において、たて糸は、それらがよこ糸通過と係合する様態で織られ、例えば、複数のよこ糸通過の上に浮き、ベロア織パターンのような非ベース62織パターンをとる、ベロア型の様態で織られてもよい。代替的に、第1の位置において、たて糸は、ベースの中にではなく多層化又は三次元布構造体のような層の中に織られてもよく、この場合、ベースは幾つかの層のうちの1つを含み、他の層(単数又は複数)は非ベース層62を含んでもよい。第2の位置において、たて糸は、好ましくはたて糸がベース60の織パターンをとる又はもつような様態でベース層60の中に織られる。
【0096】
織られた構造体のベースの中にたて糸が移動されるときに、幾つかの又はすべてのベースたて糸は、ベースの中に運ばれるたて糸がベースと一致する織パターンをとるのに十分なスペースを有し、且つまた制御されたベースたて糸密度(例えば、一定したたて糸密度)を提供するように互いに対して横方向に移動されてもよい。たて糸密度は、典型的に、布の所与の単位長さあたりのたて糸で測定される。明快にするために、本開示では、織られた糸密度は、例えば概してピンと張った、すなわち、緩みを除くのに十分なだけきつく引っ張られた状態で測定することができる、織られた構造体の所与の長さに関係するであろう。密度は、所与の単位長さあたりの糸の量として測定される。
【0097】
図8は、本発明の織られたプロテーゼ10’の例となる実施形態を例証する。
図1と同様に、プロテーゼ10’は、第1の管状部分12’、第2の球状部分14’、及び第3の部分16’を有するものとして例証される。第2の管状部分16、16’は、捲縮した表面17、17’を有するが、捲縮していなくてもよい。捲縮した表面17、17’は、環状に捲縮する、螺旋状に捲縮する、又はそれらの組み合わせで構成することができる。
【0098】
図9は、点線枠線240の付近で見た
図8のプロテーゼ10’の部分の拡大図である。
図9で分かるように、周方向に間隔をおいて配置されたベロアたて糸44’がプロテーゼ10’の中に織られ、プロテーゼ10’に沿って長手方向に延びる。ベロアたて糸44’の周方向の中心間の間隔は調節可能である。同じく調節可能なのは、ベロアたて糸44’がベース層60の内外に長手方向に遷移されるパターン、順序、又は割合(
図12A~
図12C)である。
【0099】
ベロアたて糸(250、254、258、262、266、及び270)の複数のグループが
図9に示される。各グループは、たて糸のグループの位置決めに関係する特徴を共有する複数のたて糸の代表的なものである。例えば
図9に示されるのは、そのうちの3つがベロアたて糸250、254、258、262、266、及び270のグループに関する添え字a~cを伴って例証される複数のグループである。ベロアたて糸250の第1のグループは、ベロアたて糸(又はベロアたて糸の組)250a、250b、及び250cによって表される。これらの糸は、織るプロセス中に同じ又は同様の時点でベースの中に運ばれ、且つベースと一致する織パターンをとってもよい。ベースの中に移動されるベロアたて糸250a、250b、及び250cに後続して、ベロアたて糸254a、254b、及び254cからなるたて糸254の第2のグループのような付加的なベロアたて糸がベースの中に運ばれてもよい。ベロアたて糸の1つ又は複数のグループをベースの中に移動するプロセスは、リード120の垂直方向の位置決めと関連するように意図的に配置することができ、且つベースたて糸密度を維持し、直径を増加させること又は減少させることのようなプロテーゼの直径の制御に用いることができる。ベロアたて糸250及び254のグループに適用される場合のこのプロセスは、その後、258、262、266、及び270のような付加的なグループに適合させることができる。このプロセスは、したがって、織られたプロテーゼの直径を制御可能に拡大させるのに用いることができる。
【0100】
図10は、例証する目的で破線枠線242によって囲まれる
図9に示される球状区域14’の部分の拡大図である。破線枠線242によって囲まれる部分は、プロテーゼ10’の中に間隔をおいて配置され及び織られる多くのベロアたて糸44’のうちの1つを含む。
図10の拡大図では、枠線242によって囲まれる部分は、実際には密接して配置される2つのベロアたて糸272b’、272b’’を含む場合があることが分かる。さらに明快にするために、
図11は、
図10の破線枠線244によって囲まれるプロテーゼ10’の部分の拡大図である。
【0101】
図12A、
図12B、
図12Cは、それぞれ
図10に示される線12A-12A、12B-12B、及び12C-12Cに沿って見た断面図である。例証を明快にするために、よこ糸は図示されない。プロテーゼ10’が織られる際に、以下にさらに詳述されるように、ベロアたて糸272b’、272b’’は、例えば、たて糸84、88、90、92の第1の組によって画定される幅108’、108’’、108’’’が増加し、一方、ベース層60のたて糸密度は維持されるように、ベロア層62’、62’’、62’’’からベース層60’、60’’、60’’’の中に次第にシフトされる。大直径の球状部分(
図1及び
図8で例証される球状部分14、14’のような)をもたらすとともに、プロテーゼの多孔度、たて糸密度、又は他の特性を管理するために、このパターン又は技術は、プロテーゼの全体を通して繰り返し用いることができる。この技術はまた、
図20~
図23、
図24A、及び
図25Aで例証されるような他の形状及び幾何学的構造の様々な直径の実施形態を構築するのに用いられてもよい。
【0102】
図12Aに示されるのは、6つのたて糸が組になっているたて糸の第1の組112’であるが、しかしながら他の量が可能である。たて糸の第1の組112’は、ベース60’の中に複数のベースたて糸84、88、90、92を有し、これにより第1のサブセット106’を画定する。ベロア層62’のような非ベース層に付加的に示されるのは、1つ又は複数のベロアたて糸272b’、272b’’である。枠線112’内のたて糸の第1の組の各側部の傍にある又は隣接するのは、付加的なベースたて糸100、102である。枠線106’によって囲まれるたて糸の第1のサブセット内の2つのたて糸は、互いから第1の距離108’だけ離間され、距離は、枠線106’によって囲まれる第1のサブセットにおけるベースたて糸のあらゆる他の対の距離よりも大きい。
【0103】
図12Aのたて糸に関係して、扇形リード120’のようなたて糸案内デバイスがたて糸間隔を制御するのに用いられてもよい。
図14Aに示すように、扇形リード120’は、織っている間の間隔を制御するために、たて糸がリード120’と交差する3つの位置(例えば、122、124、及び126)を有する。
図14Aに配置されたたて糸に関連して、扇形リード120’の位置は、
図12Aの織パターンを達成する一助として用いられ、リード120’が低い場所126でたて糸と係合するように「高」位置にあるように示される。リード120’は、ベロアたて糸272b’、272b’’がベース層60’、60’’、60’’’の中に組み込まれるためのスペースをつくるのにベースたて糸84、88、90、92を離れるようにシフトさせるために次第に下げられる(又はその配向に応じて上げられる)。
【0104】
図12Bに示されるのは、異なる配置をもち、破線枠線112’’によって囲まれる、
図12Aからのたて糸の第1の組である。
図12Bにおけるたて糸の第1の組は、ベロアたて糸272b’が第1のサブセット106’’又はベース層60’’の中にシフトされているという点で
図12Aのものとは異なる。したがって、破線枠線112’’によって囲まれるたて糸の第1の組の第1のサブセット106’’には、4つではなく5つのベースたて糸が存在する。リード120’’は、ベロアたて糸272b’をベース層60’’の中に収めるのに十分なだけベースたて糸をシフトさせるために中位置にシフトされてもよい。
【0105】
リード120’’’は、
図12Cで例証されるようにベロア糸272b’’がベース層60’’’の中に組み込まれることを可能にするために、
図14Cで例証される低位置にさらにシフトされてもよい。この状態で、破線106’’’によって囲まれるベース層60’’’は6つのベースたて糸を保持する。
【0106】
図12Cに示される距離108’’’は、それぞれ
図12A及び
図12Bに示される距離108’及び108’’よりも大きく増加している。距離108’’’が増加していても、ベース層106’’’のたて糸密度は、
図12A及び
図12Bに描かれる配置の一方又は両方のたて糸密度と比較的一致して維持される。加えて、所与の長さあたりのベロアたて糸に関するベロアたて糸密度は、
図12A及び
図12Bの一方又は両方と比較したときに
図12Cでは減少している、すなわち、ゼロの大きさに減少している)。たて糸272b’’は、
図12Cに描かれる枠線106’’’によって囲まれるベースたて糸の織パターンをとる。
【0107】
たて糸は、プロテーゼ10’’の織られた幅(又は直径)に影響を及ぼすのに用いられるリード内の種々の間隔(又は凹部)を通してリード120によって案内される。
図18で例証されるように、間隔は、場所800、802、804、806、808、810、及び812と関連し、それぞれの場所は、リード120上の基準814からそれぞれ異なるオフセット(816、818、820、822、824、826、及び828)を有する。例えば、たて糸グループ250は、最初に(
図9の下端又は遠位端20’から)ベース層に入るように示されるので、グループ250がベースの中に移動される前の織られたプロテーゼの部分は、リード上の基準814から距離816だけ離間された扇形リード120の場所800に関係する。たて糸グループ250がベース層の中に移動するときに、扇形リードは、第2の位置に移動し、たて糸を、リード上の基準814から距離818だけ離間された扇形リード120上の第2の場所に係合させる。この関係性は、
図9の球状外形230’の部分を制御可能に及び繰り返し可能に形成することができるように、残りのグループ254、258、262、266、及び270に関して続いてもよい。
【0108】
フレアとテーパとの両方を達成するために、直径を拡大させるために上記で説明されたプロセスは、依然として同じたて糸方向に織りながら逆にすることができる。したがって、たて糸は、テーパが望まれるときには、ベース層からベロア層のような非ベース層にシフトされる。扇形リードは、したがって反対方向に移動し、プロテーゼ10’の球状部分14’の直径を減少させ、これにより、
図9で例証される輪郭232’を制御可能に形成するように制御されるであろう。
【0109】
図12A~
図12Cは、織られた導管のような多くの異なる織られた構造体に適用可能なたて糸の組の特定の挙動を例証するが、
図12A~
図12Cで例証される原理は、例えば、複雑且つ様々な直径又は輪郭が望まれる血管プロテーゼとして用いられるように構成される織られた構造体を含む織られた構造体の部分の全体を通して再現されてもよい。円筒形導管を含む輪郭にされた形状は、ヒト及び哺乳動物の血管構造の自然な幾何学的構造及び形状を表わすように形成され及び構成されてもよい。これは、収縮係数を含む収縮特性のような異なる材料特性の糸を用いずに達成することができる。幾つかの代替的実施形態では、しかしながら、異なる収縮係数の糸が用いられてもよい。
【0110】
図8のプロテーゼ10’は、12から30センチメートルまでの間の長さ220を有するが、意図された使用に応じて他の長さが適する場合がある。第2の管状部分16’は、10センチメートル、好ましくは15センチメートルよりも大きい第1の長さ218を有するが、他の長さが用いられてもよい。第1の管状部分12’は第1の管状直径222及び長さ212を有し、第2の管状部分16’は第2の管状直径224を有する。最大直径226は、第1の管状部分12’及び第2の管状部分16’のそれぞれの直径よりも大きく、球状部分14’内に位置する。最大直径226は、直径222及び224よりも4から16ミリメートル、好ましくは6~10ミリメートル、最も好ましくは約8ミリメートルだけ大きいが、この差は変えられてもよい。
【0111】
図8でさらに例証されるように、球状部分14’の最大直径226は、第2の遷移領域24’よりも第1の遷移領域22’の近くに、したがって第1の遷移領域22’よりも第2の遷移領域24’から遠くに位置してもよい。例えば、最大直径226は、距離216が球状部分14’の長さ214の50%から75%までの間、又は60%から70%までの間、又は65%から70%までの間であるように第2の遷移領域24’から距離216に位置してもよい。球状部分14’の織られた長さ214は、プラス又はマイナス2ミリメートル、好ましくは1ミリメートルの許容差内の直径224に近づくように構成される。第1の管状部分12’は、第1の遷移領域22’から近位端18’にかけて測定される1センチメートル以上の長さ212を有するように構成される。これらの寸法のすべては例として提供され、それらは変化してもよく、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0112】
第1の遷移領域22’は、第1の管状部分12’から球状部分14’への遷移を表し、一方、第2の遷移領域24’は、球状部分14’から第2の管状部分16’ への遷移を表す。球状部分14’は、上行大動脈に関係する心臓胸部外科の大動脈基部の自然な解剖学的構造、形状、寸法、及び意図された血流力学を模倣するために、多様な直径外形を有するように織られ、様々な度合いのフレア及びテーパを有するように構成可能である。
【0113】
図9は、
図8の枠線240の付近で見た本開示の要素を代表する織られたプロテーゼ10’の実施形態の部分図を例証する。
図9で例証されるのは、球状部分14’と、それに隣接する部分である第1の管状部分12’及び第2の管状部分16’である。好ましくは、第1の管状部分12’及び第2の管状部分16’は、球状部分14’の全体を通して第1の管状部分12’及び第2の管状部分16’のうちの1つに、好ましくは両方に連続的に織られたたて糸を有する。第1の遷移領域22’及び第2の遷移領域24’のような他の要素が同様に例証される。第2の遷移領域24’は、上行大動脈の解剖学では一般的な上行大動脈移行部(sinotubular junction)と関連付けられてもよい。
【0114】
随意的に、第1の遷移領域22’と第2の遷移領域24’との両方は、直径遷移参照インジケータ27’、29’の使用を通じてプロテーゼの他の領域から視覚的に区別されてもよい。直径遷移参照インジケータは、プロテーゼの他の領域で用いられるよこ糸の色とは異なる色のよこ糸の使用を含んでもよい。例えば、プロテーゼ全体を、異なる色の2つ以上のよこ糸と共に織ることができ、この場合、遷移領域(例えば、
図9の22’及び24’の一方又は両方)のすべて又は一部に用いられるよこ糸の色は、第1の色となるように選ばれてもよく、一方、他の領域に用いられるよこ糸は、第2の色から選ばれてもよい。例となる実施形態では、第1の色は暗色であり、好ましくは緑、青、又はさらには黒色であり、一方、第2の色は暗色よりも明るく、随意的に白色である。第2のよこ糸は、遷移参照インジケータを形成するために第1のよこ糸に加えて又はその代わりに織ることができる。第2のよこ糸は、上及び下(1/1)交絡を有することができ、又は随意的に複数のたて糸の上に浮いてもよい。変形例が
図9に29’(1/1交絡の2つのよこ糸通過を有する)及び27’(複数の浮きを伴う1つのよこ糸通過を有する)として示される。他の配置がもちろん可能であり、例えば
図16A、
図16B、
図17A、及び
図17Bに参照番号27’’及び29’’として示される。直径遷移参照インジケータは、
図1、
図20~
図23、
図24A、
図24B、
図25A、及び
図25Bの実施形態を含む、本願の中で示されるすべての実施形態に用いることができる。
【0115】
図9の実施形態10’では、ベロアたて糸密度(織布の所与の長さあたりのベロアたて糸の量)は、球状部分14’の最大直径部分の方に及び第1の遷移領域22’又は第2の遷移領域24’のいずれかから離れる方に移動するときに減少するように示される。
【0116】
図9に付加的に示される、第2の管状部分16’は、捲縮した表面17’を有する。これは、
図8に示される枠線19の付近で見た
図15により詳細に示される。捲縮した表面は、環状に又は螺旋状に捲縮することができる。
【0117】
何本のたて糸がベースの中に移動するかを制御することによって、並びに扇形リード120の動き及び調整を制御することによって、
図9で例証される形状の変形を作製することができる。さらに、扇形リード120が動いている又は静止している間に幾つのよこ糸通過がたて糸と共に織られることになるかを制御することによって変形を作製することができる。
【0118】
図11は、
図10の枠線244によって囲まれるベロアたて糸272b’及び272b’’の挙動を例証する。ベロアたて糸272b’及び272b’’は、部分780において5/1織パターンをとるように示される。ベロアたて糸272b’及び272b’’は、複数のよこ糸通過752(
図11の左から右に延びる糸として描かれる)の上に浮く。よこ糸通過765の上に及びよこ糸通過766の下に浮いた後で、ベロアたて糸272b’は、この例では1/1織パターンとして表される場合があるベース層60’’、60’’’の織パターンをとるように示される。その後、ベロアたて糸272b’は、よこ糸通過769~773のそれぞれと係合する。扇形リード120は、部分780を織っている間の
図13Aで例証される第1の位置121’から、遷移点786(破線水平線で例証される)の又はこの付近の部分を織っている間の
図13Bで例証される第2の位置121’’に調節される。リード121’が上位置に動かされている第1の位置(
図13A)において、たて糸は、リードの下部136でリードと係合し、第2の位置121’’(
図13B)において、リードは、たて糸がリード121’’の中央部134でリードと係合する、中位置に動かされている。したがって、ベロアたて糸272b’がベース織パターン60’’、60’’’をとるときに、ベース層60’’、60’’’におけるたて糸間隔を維持することができる。
【0119】
図11でさらに例証されるベロアたて糸272b’’は、最初に部分780及び部分781の一部において5/1織パターンをとり、次いで、部分782においてベース織パターンと一致する織パターンをとるように示される。この挙動は、ベロアたて糸272b’の挙動と同様であるが、異なるよこ糸通過で始まる。よこ糸通過766の上に及びよこ糸通過767の下に浮いた後で、ベロアたて糸272b’’は、この例では1/1織パターンとして表される場合があるベース層60’’’の織パターンをとるように示される。ベロアたて糸272b’と同様に、ベロアたて糸272b’’は、よこ糸通過769~773のぞれぞれと係合する。扇形リード120は、
図13Bで例証される第2の位置121’’から、遷移点788(破線水平線で例証される)の又はこの付近の
図13Cで例証される第3の位置121’’’に調節される。リード121’’が中位置に動かされている第2の位置121’’(
図13B)では、たて糸は、リードの中央部134でリードと係合し、第3の位置121’’’(
図13C)では、リード121’’’は、たて糸がリード121’’’の上部132でリード121’’’と係合する、下位置に動かされている。したがって、ベロアたて糸272b’’がベース織パターンをとるときに、ベース層60’’’におけるたて糸間隔を維持することができ、部分780からの同じ量のたて糸によって達成される全幅は、部分781及び782を次第に広げるために増加されている。
【0120】
枠線244によって囲まれる織られた部分は、ほぼ一定したたて糸密度を維持しながら、2つの最も外側のベースたて糸100(左端の)及び92(右端の)間の距離が部分781において増加し、782において再び増加する。
【0121】
図20は、本発明の別の例となる実施形態を例証する。プロテーゼ310は、好ましくは織るプロセスを通じて構築された近位端318、遠位端320、及びそれらの間に配置される側壁330を備える。側壁330は、
図12A~
図12Cの例によって例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ310を提供するのに用いられる。
【0122】
プロテーゼ310は、プロテーゼ10’の球状部分に準じたサイズ及び形状を有するように構成される。プロテーゼ10’とは異なり、プロテーゼ310は、第1の管状部分12’及び第2の管状部分16’を有さない。プロテーゼ310は、プロテーゼ10’と概して一致する様態で織られてもよい。プロテーゼ310は、例えば、プロテーゼ10’から球状部分14’を切断し、織られた球状部分だけを用いることによって形成されてもよい。
【0123】
図21は、好ましくは織るプロセスを通じて構築された近位端418、遠位端420、及びそれらの間に配置される側壁430を含むプロテーゼ410を例証する。側壁430は、
図12A~
図12Cの例によって例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ410を提供するのに用いられる。
【0124】
プロテーゼ410は、プロテーゼ10’の球状部分並びにプロテーゼ10’の第1の管状部分12’に準じたサイズ及び形状を有するように構成される。プロテーゼ10’とは異なり、プロテーゼ410は、第2の管状部分16’を有さない。プロテーゼ410は、プロテーゼ10’と概して一致する様態で織られてもよい。プロテーゼ410は、例えば、プロテーゼ10’から第2の管状部分16’を切断により除去し、除去されないプロテーゼ10’の残りの部分を用いることによって形成されてもよい。
【0125】
図22は、好ましくは織るプロセスを通じて構築された近位端518、遠位端520、及びそれらの間に配置される側壁530を備えるプロテーゼ510を例証する。側壁530は、
図12A~
図12Cの例によって例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ510を提供するのに用いられる。
【0126】
プロテーゼ510は、プロテーゼ10’並びにプロテーゼ10’の第1の管状部分12’の球状部分に準じたサイズ及び形状を有するように構成される。プロテーゼ10’とは異なり、プロテーゼ510は、第2の管状部分16’を有さない。プロテーゼ510は、プロテーゼ10’と概して一致する様態で織られてもよい。プロテーゼ510は、例えば、プロテーゼ10’から第2の管状部分16’を切断により除去し、除去されないプロテーゼ10’の残りの部分を用いることによって形成されてもよい。
【0127】
図23は、好ましくは織るプロセスを通じて構築された近位端618、遠位端620、及びそれらの間に配置される側壁630を備えるプロテーゼ610を例証する。側壁630は、
図12A~
図12Cの例によって例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ610を提供するのに用いられる。
【0128】
プロテーゼ610は、プロテーゼ10’の球状部分14’並びにプロテーゼ10’の第2の管状部分16’の一部に準じたサイズ及び形状を有するように構成される。プロテーゼ10’とは異なり、プロテーゼ610は、第1の管状部分12’を有さず、プロテーゼ10’の球状部分14’の近位部分も有さない。したがって、プロテーゼ610の球状部分は、第2の管状部分616から近位部分618の方にフレアする「フレアした」様態のような増加する直径構成で外方にのみ広がる。プロテーゼ610は、プロテーゼ10’と概して一致する様態で織られてもよい。プロテーゼ610は、例えば球状部分14’の近位部分を、例えばプロテーゼ10’の最大直径226(
図8)の場所で切断することでプロテーゼ10’の第1の管状部分12’とともに除去し、除去されないプロテーゼ10’の残りの部分を用いることによって形成されてもよい。
【0129】
図24A及び
図24Bは、好ましくは織るプロセスを通じて構築された近位端918、遠位端920、及びそれらの間に配置される側壁を備えるプロテーゼ910を例証する。側壁は、例えば
図12A~
図12Cで例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ910を提供するのに用いられる。
【0130】
プロテーゼ910は、近位端でのより小直径938から遠位端920でのより大直径に広がるフレアした形状を有するように構成される。
図24Aで例証されるように、プロテーゼ910のフレアした形状は、長さ930の全体を通して連続的にフレアしない。代わりに、プロテーゼ910は、近位領域912、遠位領域916、及びフレア領域914を有する。フレア領域914は、本明細書の全体を通して開示される織る技術を使用し、遠位端920の方によりも近位端918の方にベロアたて糸としてより多くのたて糸を組み込む。フレア領域914内の単位長さあたりのベロア密度変化は、1つ又は複数の隣接する領域912、916よりも大きい。例えば、近位領域912は、その長さ932の全体を通して概して一定した直径938を有するように示される。同様に、遠位領域916は、その長さ936の全体を通して概して一定した直径940を有してもよい。近位領域912は、近位遷移域922でフレア領域914に遷移し、一方、フレア領域926は、遠位遷移域924で遠位領域916に遷移する。近位遷移域922及び遠位遷移域924において、ベースたて糸に及びこの逆に遷移するベロアたて糸の増加率及び減少率が最大である。フレア領域926において、ベースたて糸に遷移するベロア糸の変化率は、一定のゼロでない値であり、一方、近位領域912及び遠位領域916において、変化率は、一定のゼロ値であってもよい(ベロアたて糸からベースたて糸への変化がないことを表わす)。
【0131】
図25A及び
図25Bは、プロテーゼ910の実施形態と同様のプロテーゼ960を例証するが、代わりに、プロテーゼ960は、その近位端964と遠位端966との間に概して又は実質的に一定のフレアを有する。プロテーゼ960の側壁は、例えば
図12A~
図12Cで例証される場合のベース層及びベロア層で織られてもよい。こうした織るプロセスは、本明細書で説明されるプロテーゼ10’及び910の部分の織りと一致していてもよいプロテーゼ960を製作するのに用いられる。
【0132】
プロテーゼ960は、近位端でのより小直径970から遠位端966でのより大直径972に広がるフレアした形状を有するように構成される。
図25Aで例証されるように、プロテーゼ910のフレアした形状は、長さ970の全体を通して連続的にフレアする。フレア領域962は、本明細書の全体を通して開示される織る技術を使用し、遠位端966の方によりも近位端964の方にベロアたて糸としてたて糸の総量のうちのより多くを組み込む。ベロア密度は、したがって、フレア領域962内で着実に減少する。長手方向に沿ったプロテーゼの全体にわたり、ベースたて糸に遷移するベロア糸の変化率は、一定のゼロでない値であってもよい。
【0133】
よこ糸方向に沿った織られた構造体の又は管状構造体に関する幅の変化、関係する直径の変化を達成するために、
図12A~
図12Cに関連した例によって既に説明された、及び例えば
図1、
図8、
図9、
図20~
図23、
図24A、
図24B、
図25A、及び
図25Bで例証される完成したプロテーゼに適用可能な、ベロアたて糸からベースたて糸への織パターン調節の幾つかの原理が例証され及びさらに説明されるであろう。
【0134】
本発明の幾つかの実施形態は、ベース層から出現してベロアたて糸として戻る前に、例えば
図16A及び
図16Bにおけるプロテーゼ10’’に関して例証されるようにベース層へのすべてのベロアたて糸の移動を含む可能性があることに留意されたい。
図17A及び
図17Bで例証されるプロテーゼ10’’’のような他の実施形態では、すべてよりも少ないベロアたて糸がベースの中に移動される。
【0135】
織パターンの多くの並べ換えが、本発明を実施するのに使用されてもよいことにも留意されたい。例えば、ベースの中にないたて糸は、ベースの近くの又はこれに隣接する三次元布の層の中に存在していてもよく、次いで、ベースの中に運ばれてもよい。代替的に、ベースの中にないたて糸は、シングルベロアたて糸及びダブルベロアたて糸のような多くの種類のベロアたて糸であってもよい。シングルベロアたて糸又はダブルベロアたて糸は、ベースの中に運ばれ、ベースの中にないときよりもベースの中にあるときにより高頻度の交絡を含む織パターンをとってもよい。これは、ベロアたて糸が限定はされないが5/1ベロア織パターンのようなベロア織パターンをとる第1の位置から、限定はされないが1/1、6/4、又は6/3織パターンを含むベースと一致する織パターンのような第2の織パターンに調節されるベロアたて糸の移動によって十分に又は部分的に達成されてもよい。ベースに適した他の織パターンは、例えば、3/1織パターン、2/1織パターン、1/3織パターン、並びに1/4織パターンを含む。
【0136】
さらに、どこでベロア糸がベースの中に遷移するかを調節することで、織られた構造体の幅の拡大率又は縮小率が制御可能となり、異なる形状及び幾何学的構造を製作できるようになることに注目されたい。
【0137】
製造及び製作方法
本発明の幾つかの実施形態の製造方法と一致する及びそれらから結果的に得られるプロテーゼは、種々の特定の方法で構築されてもよい。或る実施形態では、本発明の例は、(i)平織ステップ、(ii)切断ステップ、(iii)ヒートセットステップ、及び(iv)滅菌ステップを含む4つのステップで製造される場合がある。ヒートセットステップは、2段階の様態、すなわち、プロテーゼの幾つかの部分の表面の或る部分を捲縮させ及び波形にするために捲縮マンドレルを通じて熱を適用することを含む第1のステップ、並びに、プロテーゼに熱が適用され、プロテーゼの所望の最終形状と一致する形状を提供するように構成される伸張可能なブラダーの使用を通じてプロテーゼが伸張された状態で「セット」又は「形状記憶」されるシェイピングステップで達成される場合がある。さらに、直径遷移領域で1つ又は複数の基準線を挿入する随意的なステップ(v)を採用することができる可能性がある。こうしたステップは、こうした遷移の視覚的識別を強化するための直径遷移領域でのよこ糸通過の色の変化を通じて区別されてもよい。こうしたステップは、第1のよこ糸に関して選ばれた糸とは異なる色の第2のよこ糸が視覚的に異なり(別の色、好ましくはより暗い色にされる)、且つ第1のよこ糸と併せて又はこの代わりに用いられる、多色よこ糸挿入機構の使用を通じて行われてもよい。
【0138】
プロテーゼ10、10’’、10’’’、910、及び960を含む本発明に係る例となるプロテーゼは、織機、例えば、ジャカード型織機136、及びたて糸案内デバイス、例えば、
図18、
図19A、及び
図19Bに示す場合の扇形リード120で織られてもよい。たて糸又はスレッド(すなわち、長手方向に延びる糸)と、1つ又は複数のよこ糸又はフィルヤーン(fill yarn)又はスレッド(すなわち、織られることになる部分の長手方向を概して横断する方向に延びる糸)が、1つの又は複数の所定の織りパターンで相互に交絡される。本発明の種々の実施形態において採用される場合の導管を織機の織りステーションで織るときに、たて糸は、4つ以上のシャフトのうちの1つ上で長手方向を横断する方向に位置合わせされる綜絖を通して個別に送られる。シャフトの上向き及び下向き移動が、予め選択されたパターンのたて糸を上に、次いで下に移動させる。このような配置では、シャフトのうちの2つは、管状導管の上面を形成するためにたて糸を移動させ、シャフトのうちの2つは、管状導管の下面を形成するためにたて糸を移動させる。1つのシャフト上のたて糸が上向きに引かれ、且つ別のシャフト上のたて糸が下向きに引かれる際に、よこ糸が、管状導管の上面を織るためにそれらのたて糸のグループ間を第1の方向に往復し、これにより、マシンピックとしても知られているよこ糸のよこ糸通過を提供する。よこ糸は、次いで、管状導管の下面を織るために上向きに及び下向きに引かれたたて糸の別のグループ間を逆方向に往復し、これにより、さらなるよこ糸通過又はマシンピックをもたらす。次いで、シャフトの位置、したがってたて糸の位置が逆にされ、よこ糸がたて糸のグループ間を再び往復して複数のよこ糸通過をもたらし、この場合、プロセスは、結果的に織られた管状の形状を生じ続ける。
【0139】
それらが織りステーションに近づく際に、たて糸は、扇形リード120のフィンガ間に送られ、扇形リード120のフィンガは、織るために糸を位置合わせし、したがって織られた物品の最終形状を決定する。これにより、実質的に一定の直径を有する管状物品の織りが、従来のフロントリードを用いて行われ、これは、定位置に固定され、たて糸間の一定の間隔をもたらすのに用いられる均等に離間されたフィンガを有し、様々な間隔をもつリードが、本発明を実施するのに有益となる可能性があるが、必須ではない。こうしたリードの一例は、第1の端又は下端において狭く、上端の方に徐々に増加するフィンガ間の間隔を有する。従来のリードとは対照的に、扇形リード120は、固定位置に保持されないが、代わりに、織られている物品のすべて又は一部における糸間隔に糸を変化させるために、たて糸に対して上向きに又は下向きに動かされる。例えば、
図14A~
図14Cに示す場合の扇形リード120’、120’’、120’’’を上向き及び下向きに動かして、たて糸を、すべてが基準134に対してのものである
図18の寸法816~828によって表される複数の高度で、扇形リード120’、120’’、120’’’と係合させてもよい。扇形リードがその最上位置にあるときに、たて糸は、
図18の場所800によって表されるような低い位置でリードと係合する。同様に、扇形リードがその最下位置にあるときに、たて糸は、
図18の場所812によって表されるような高い場所でリードと係合する。本開示の或る実施形態と一致する管状物品を製作することとの関連において、扇形リード120の移動が、調節可能な直径を提供する。
【0140】
たて糸の特定の操作又は係合に合わせてプログラムされるときに、たて糸の間隔は、1つ又は複数のベロアたて糸がベースの中に運ばれ、ベースの一部として織られ、これによりベースと一致する織パターンをとることができるように、十分なスペースを提供するように調節することができる。本発明は、これにより、ベース層内のたて糸の仕上がり間隔の調節を必要とせずに、織られた管状導管の直径を選択的に調節できるように、ベースたて糸密度が或る範囲内に保たれること又は他の方法で管理されることを可能にする。十分な量のベロアたて糸をベースの中に運ぶことができれば、織られた管状導管のすべて又は一部の制御されたフレア及びテーパが提供される可能性がある。
【0141】
管状導管の織りが進むのに伴ってリード120が上向きに徐々に動かされるときに、たて糸間の間隔、したがって、織られている管状物品(例えば、
図19Aにおける生機130参照)の直径が徐々に減少することになる。同様に、管状導管の織りが進むのに伴ってリード120が徐々に下向きに動かされるときに、織られている管状物品の直径が増加する際にたて糸間の間隔が増加することになる。リード120の移動速度が、織られている物品のテーパを決定するであろう。リードがより速く動けばテーパ角度がより大きくなり、リードがより遅く動けばテーパ角度がより小さくなる。リードを一定の速度で動かすことは、一定のテーパ角度をもたらすであろう。しかしながら、リードの移動速度の変化は、湾曲した又は変化するテーパ角度をもつ管状物品が形成されることを可能にする。たて糸間の間隔が、プロテーゼのベース層の中への非ベースたて糸、例えばベロアたて糸のシフトに適応するのに十分なだけ既に大きい可能性があるので、リードの使用は必須ではないことに注目されたい。
【0142】
可動リード120を用いるときに、これは、実質的に一様な直径の管状導管を織るために、固定のより下の位置に最初に保持される。管状導管の所望の長さに達したときに、リード120は、ベロア層における第1の位置からベース層における第2の位置に付加的なたて糸を移動させることができるように或るたて糸間の付加的な間隔を提供する増分だけ下向きに引かれる。これは、たて糸がベース層の中に運ばれ、例えば
図12B~
図12Cで例証される場合のベース層と一致する織パターンをとるときに、結果として得られる、付加的なたて糸に隣接するたて糸間の間隔が増加するようにして行われる。ベースの中に運ばれることになる付加的なたて糸に各変化があるならば、所望のテーパ角度をもたらすことになるような速度で十分な間隔を提供するのに調節が必要かどうかを確認するために、リード120の移動を評価しなければならないであろう。フロントリードは、例えば
図19A及び
図19Bに表される生機130として所望の管状構成を有する織布が形成されるまで、織るプロセスが続く際に下向きに引かれ続ける。
【0143】
本発明の幾つかの実施形態を製作するのに用いられる織るステップは、織られた構造体の所与の長さにわたって行われてもよい。本発明の幾つかの実施形態によれば、複数の球状部分が、
図19A及び
図19Bに示される生機130の中に織られてもよい。織られた構造体をプロテーゼの所望の意図された使用と一致する長さに区分するために、
図19Aに点線で示される切断場所132で第2の切断ステップが用いられてもよい。
【0144】
プロテーゼのさらなる処理中に、本発明のプロテーゼのすべて又は一部は、仕上がったプロテーゼの「自立」品質を提供し及び管状プロテーゼに剛性を付加するために捲縮されてもよく、この場合、導管を通して血液が確実に流れるのに適正な断面積を保証するために強度が必要とされる。引用により本明細書に組み込まれる米国特許第3,945,052号における例によって幾つかの例が開示される。そのすべての図面で例証されるように、球状部分及びカラー又は第1の織られた部分12、12’のいずれも捲縮されないが、それらは他の実施形態では捲縮される場合がある。これらの区域を捲縮させないことの利点は、例えば、吻合及び縫合に有益な局部的に平坦な又は僅かに湾曲した表面を外科医に提供できることを含む。球状部分14、14’及び/又はカラーに捲縮、プリーツ、又は波形を有する表面を提供することで、例えば、近位の織られた管状部分12、12’は、一様でない、捲縮した、プリーツをもつ、又は波形にされた表面よりも平坦な又は僅かに湾曲した表面上で縫合し及び近位吻合を行う方がより便利であるように理解される場合の縫合手術及び吻合手術を複雑にする可能性がある。
【0145】
織布又はプロテーゼ10、10’、10’’、10’’’、910、960は、シーリングする目的でプロテーゼの全長にわたって適用されるコラーゲン又はゲルコーティングで被覆されてもよい。したがって、ベース層(たて糸、よこ糸、及びそれらの織り合わされた組み合わせの間)において達成することができる一様な織物構造体の多孔度に加えて、織布の流体透過性に影響する一様な機能的多孔度が付加的に達成されてもよい。
【0146】
プロテーゼ10、10’、10’’、10’’’、910、960は、当業者には通常公知のガンマ線照射又はコバルト60照射、エチレンオキシドガス、又は電子線照射を含む、織られたグラフトに適した滅菌プロセスのいずれかから滅菌されてもよい。
【0147】
本発明の幾つかの実施形態を形成するのに有用な材料は、織物製品、例えば、合成ポリマーのような合成材料を含む。本発明に用いるのに適した合成糸は、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(本明細書ではPETと呼ばれる)を含むポリエステル、ポリプロピレン(本明細書ではPPと呼ばれる)、ポリエチレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレン(本明細書ではPTFEと呼ばれる)を含むがこれらに限定されない。糸は、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績型、又はそれらの組み合わせであってもよい。糸はまた、フラットヤーン、撚糸、又はフィラメント加工糸であってもよく、高い、低い、又は中程度の収縮特性を有してもよい。こうした糸材料、例えばPETは、Dacronの商標名でDuPontから入手可能である。糸は、例えば、15~300の範囲内又は100~200の範囲内の総デニールを有してもよく、また、約140デニールであってもよいが、他のサイズを同様に有することができる。糸は単一プライ又は多プライからなってもよい。本発明に従って用いられてもよい例となる糸は、それぞれが70デニールを有する2プライを含み、140の総デニールを有する糸である、フィラメント加工糸及びPETベースの糸であってもよい。
【0148】
以下の4つの実施例は、本発明に関係する幾つかの実施形態の例証となる。最初の2つは、それぞれ
図1及び
図8に示されるプロテーゼ10、10’と一致する球状プロテーゼの形成に関係する。次の2つは、小直径端からより大直径端に概してテーパするプロテーゼの形成に関係する。別途記載のない限り、以下の実施例のすべての血管プロテーゼは、電子ジャカード織機と扇形リードのような可変リードを用いて平織プロセスを通じて製作され、管状構成を達成するように構成された。
【0149】
実施例1
本発明の第1の実施例では、大動脈プロテーゼは、およそ32ミリメートルの小直径及びおよそ40ミリメートルの最大直径を有するように構築される。プロテーゼは、例えば
図1及び
図8で表される要素に準じて構築される。
【0150】
本実施例に関して選ばれるよこ糸材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、1プライにつき70デニールの2プライから構成され、これにより140の最終デニールを有する。本実施例に関して選ばれるたて糸材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、1プライにつき70デニールの2プライから構成され、これにより140の最終デニールを有する。よこ糸材料及びたて糸材料のいずれか又は両方は、フィラメント加工されていてもよいし又はフィラメント加工されていなくてもよい。ベース織パターンは、平織パターンとなるように選ばれる。ベロア層はベース層の外側に織られることになることが分かる。ベロア層に関して選ばれる織パターンは5/1パターンである。
【0151】
一定のよこ糸間隔が、プロテーゼのすべての織られる部分を織るのに用いられるように選ばれる。具体的には、66本/インチ(よこ糸26本/センチメートル)の平均よこ糸間隔(又は密度)がプロテーゼのすべての織られた部分に用いられることが決定される。66本/インチの目標間隔が選ばれるが、織られたプロテーゼの全体を通して幾つかの許容差が期待される可能性があることが理解されるであろう。好ましくはこうした間隔は、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%の範囲内となるであろう。
【0152】
たて糸の総量は、所望のたて糸密度、位置決め、及び織られた物品の最大直径部分を含む仕上がり直径に基づいて選ばれる。単なる例として、合計703本のたて糸が選ばれている。
【0153】
第1の部分12、12’及び第3の部分16、16’(それぞれカラー区域と捲縮した/波形区域との両方)を織るときに、リード120の位置は、およそ32mm(又は平置き幅50.3mm)の織布管状直径を達成するためにその最も狭い幅に設定され、合計703本のたて糸が以下のように2つのグループに分けられる。第1のグループは、ベース層を形成するために469本のたて糸を含み、第2のグループは、第1の部分のベロア層を形成するために234本のたて糸を含む。したがって、32ミリメートルの意図された管状直径を達成するために、直径32ミリメートルの部分が織られることになるときのベース層に関するたて糸間隔は、118本/インチ(46本/センチメートル)であり、ベロア層に関してはベロアたて糸59本/インチ(23本/センチメートル)である。ベロアたて糸とベースたて糸との両方を含む平均布たて糸間隔は、両方の層の合計、すなわち177本/インチ(70本/センチメートル)である。第1の管状部分12、12’は、第1の管状部分12、12’を確立するためにベースたて糸とベロアたて糸との両方として作用するたて糸と共に織られる。
【0154】
扇形リード120は、球状部分14、14’の所望の外形を達成するために、織るプロセス中の幾つかのステップにおいて徐々に再位置決めされる。これは、所望の最大直径が達成されるまでベロアたて糸のベースたて糸への変換と組み合わせて行われる。
【0155】
最大直径部分に達するときに、リード120は、40mm(又は平置き幅(flat width)62.8mm)の最大布管状直径を製作するのを助けるためにその最大幅にあり、合計703本のたて糸は、このとき584本の糸が布ベース層(例えば、内面)を形成し、119本の糸が1つ又は複数のベロア層を形成するように、2つのグループに分けられる。結果として、地層60、60’に関するたて糸間隔は118本/インチ(46)として維持され、一方、ベロア層は、ベロア層62、62’’に関する24本/インチ(9本/センチメートル)に減少される。
【0156】
実施例2
本発明の第2の実施例では、大動脈プロテーゼは、およそ24ミリメートルの小直径及びおよそ32ミリメートルの最大直径を有するように構築される。プロテーゼは、例えば
図1及び
図8で表される要素に準じて構築される。
【0157】
本実施例に関して選ばれるよこ糸材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、1プライにつき70デニールの2プライから構成され、これにより140の最終デニールを有する。本実施例に関して選ばれるたて糸材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、1プライにつき70デニールの2プライから構成され、これにより140の最終デニールを有する。よこ糸材料及びたて糸材料のいずれか又は両方は、フィラメント加工されていてもよいし又はフィラメント加工されていなくてもよい。ベース織パターンは、平織パターンとなるように選ばれる。ベロア層62、62’’は、ベース層の外側60、60’に織ることができる。ベロア層に関して選ばれる織パターンは5/1パターンである。
【0158】
一定のよこ糸間隔が、プロテーゼ10、10’のすべての織られる部分を織るのに用いられるように選ばれる。具体的には、66本/インチ(よこ糸26本/センチメートル)のよこ糸間隔(又は密度)がプロテーゼのすべての織られた部分10、10’に用いられることが決定される。66本/インチの目標間隔が選ばれるが、織られたプロテーゼの全体を通して幾つかの許容差が期待される可能性があることが理解されるであろう。好ましくはこうした間隔は、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%の範囲内となるであろう。
【0159】
たて糸の総量は、所望のたて糸密度、位置決め、及び織られた物品の最大直径部分を含む仕上がり直径に基づいて選ばれる。単なる例として、合計550本のたて糸が選ばれている。
【0160】
第1の部分12、12’及び第3の部分16、16’(波形にされた部分とカラー部分との両方)を織るときに、リード120の位置は、およそ24mm(又は平置き幅37.7mm)の織布管状直径を達成するために最も狭い幅に設定され、合計550本のたて糸が以下のように2つのグループに分けられる。第1のグループは、ベース層60、60’を形成するために367本のたて糸を含み、第2のグループは、第1の部分12、12’のベロア層62、62’を形成するために183本のたて糸を含む。したがって、24ミリメートルの意図された管状直径を達成するために、直径24ミリメートルの部分が織られることになるときのベース層60、60’に関するたて糸間隔は、124本/インチ(49本/センチメートル)であり、ベロア層62、62’に関してはベロアたて糸62本/インチ(24本/センチメートル)である。ベロアたて糸とベースたて糸との両方を含む平均布たて糸間隔は、両方の層の合計である(すなわち、177本/インチ、又は70本/センチメートル)。第1の管状部分12、12’は、第1の管状部分12、12’を確立するためにベースたて糸とベロアたて糸との両方として作用するたて糸と共に織られる。また、リード120は、球状部分14、14’の所望の外形を達成するために、織るプロセス中の幾つかのステップにおいて徐々に再位置決めされる。これは、所望の最大直径が達成されるまでベロアたて糸のベースたて糸への変換と組み合わせて行われる。
【0161】
最大直径部分に達するときに、リード120は、32mm(又は平置き幅50.3mm)の最大布管状直径を達成するのを助けるためにその最大幅にあり、合計550本のたて糸は、このとき491本の糸が布ベース層60、60’(例えば、内面)を形成し、59本の糸がベロア層又は層62、62’を形成するように、2つのグループに分けられる。結果として、地層60、60’に関するたて糸間隔が124本/インチ(49本/センチメートル)として維持され、一方、ベロア層62、62’’は、ベロア層に関する15本/インチ(6本/センチメートル)に減少される。
【0162】
所望の最大直径が達成された後で、プロテーゼの直径10、10’は、増加した直径をもたらすのに用いられる幾つかのステップを逆にすることによって意図的に減少され又はテーパされる。具体的には、このときプロテーゼ10、10’のベース60、60’の中にあるたて糸が、ベロアたて糸としてふるまう及び作用するようにベース60、60’の外に調節され及び移動される。依然としてベース60、60’内にあるベースたて糸の間隔は、ベース60、60’内のたて糸間隔に顕著に影響することなくベース層60、60’からベロア層62、62’へのたて糸の移行に適応するように調節される。
【0163】
実施例3
本発明の第3の実施例では、大動脈プロテーゼは、およそ12ミリメートルの小直径及びおよそ36ミリメートルの最大直径を有するように構築される。プロテーゼは、例えば
図24A及び
図24Bで表される幾つかの実施形態に準じて構築される。
【0164】
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる1インチにつき5つの撚りをもつ40デニール/27フィラメントのフラットヤーンが、本実施例のよこ糸及びたて糸の両方に関して選ばれる。よこ糸材料及びたて糸材料のいずれか又は両方は、フィラメント加工されていてもよいし又はフィラメント加工されていなくてもよい。ベース織パターンは、平織パターンとなるように選ばれる。2つのベロア層がベース層の両側に織られることになることがわかる。ベロア層のうちの一方は内側ベロア層となり、他方は外側ベロア層となるであろう。ベロア層に関して選ばれる織パターンは5/1パターンである。
【0165】
概して一定のよこ糸間隔が、プロテーゼのすべての織られる部分を織るのに用いられるように選ばれる。具体的には、160本/インチ(よこ糸63本/センチメートル)のよこ糸間隔がプロテーゼのすべての織られた部分に用いられることが決定される。160本/インチの目標間隔が選ばれるが、織られたプロテーゼの全体を通して幾つかの許容差が期待される可能性があることが理解されるであろう。好ましくはこうした間隔は、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%の範囲内となるであろう。
【0166】
プロテーゼの全体にわたって連続的に織られることになるたて糸の総量は、所望のたて糸密度、位置決め、及び織られた物品の最大直径部分を含む仕上がり直径に基づいて選ばれる。単なる例として、合計890本のたて糸(端)が選ばれている。
【0167】
合計890本のたて糸が以下のように3つのグループに分けられる。3つのグループは、ベース層(例えば、296本のたて糸)、内側ベロア層(例えば、297本のたて糸)、及び外側ベロア層(例えば、297本のたて糸)に対応する。小直径領域912での、ベース層、内側層、及び外側層のそれぞれに関するたて糸間隔は、200本/インチ(79本/センチメートル)となるように選ばれる。すべてのベロアたて糸及びベースたて糸(すなわち、総たて糸密度)を含む平均布たて糸間隔は、3つの層の合計、すなわち600本/インチ(236本/センチメートル)である。200本/インチの目標間隔が開始ベース層及びベロア層に関して選ばれ、織られたプロテーゼの全体を通して幾つかの許容差が期待される可能性があることが理解されるであろう。好ましくはこうした間隔は、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%の範囲内となるであろう。
【0168】
第1の近位部分912を織るときに、リード120の位置は、およそ12mm(又は平置き幅19.4mm)の織布管状直径を達成するためにその最も狭い幅(最高高度)に設定される。第1の近位管状部分912は、およそ10センチメートルの長さ932にわたって織られる。第1の区域912が織られた後で、直径をフレア領域914に調節するために近位遷移領域で織りが調節される。これを達成するために、内側ベロア層又は外側ベロア層のいずれか若しくは好ましくはこの両方におけるこのベロアたて糸が、ベース層の中に徐々に遷移される。これは、ベースの中に織られることになるベロア糸のためのスペースを提供し、したがってベース織パターンをとるためにベースたて糸の増加した間隔を達成することができるように、緩やかな様態で並びにリード120の緩やかな動き及び再位置決めと連動して達成される。織機は、ベース層内のたて糸密度が概して一定にとどまり、一方、内側ベロア層及び外側ベロア層の一方又は両方におけるベロアたて糸密度が徐々に減少するようにプログラムされる。これは、遠位遷移領域の遠位924で最大直径940が達成されるまでおよそ5センチメートルの長さにわたって行われる。その後、概して一定の直径の領域916が形成されることになる。
【0169】
直径940が最大である遠位端966に達するときに、リード120は、36mm(又は平置き幅56mm)の最大布管状直径を達成するのを助けるためにその最大幅にあり、合計890本のたて糸は、もはやベロア層からベース層に移動される必要はない。すべてのベロアたて糸がベース層の中に移動されていると仮定すると、ベロアたて糸密度はゼロとなり、一方、ベースたて糸密度は200本/インチとなるであろう。遠位部916は、10センチメートルの長さ936にわたって織ることができ、これにより、プロテーゼ全体にわたる25センチメートルの仕上がり長さをもたらす。
【0170】
この第3の実施例は、したがって、実質的に円筒形の近位直径912及び遠位直径914とそれらの間におかれる遷移又はフレア領域914とを有するフレアした織られたプロテーゼをもたらすことができる。すべての領域の全体を通して、ベース層たて糸密度は、概して一定に及び前述の許容差(すなわち、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%)内に維持することができる。それらが
図24Aの参照基準a~hに沿って存在する場合の、この第3の実施例に関連した幾つかのパラメータのサンプルリストが、
図26に表911として示される。
【0171】
実施例4
本発明の第4の実施例では、大動脈プロテーゼは、およそ12ミリメートルの小直径及びおよそ36ミリメートルの最大直径を有するように構築される。プロテーゼは、例えば
図25A及び
図25Bで表される幾つかの実施形態に従って構築される。
【0172】
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる1インチにつき5つの撚りをもつ40デニール/27フィラメントのフラットヤーンが、本実施例のよこ糸及びたて糸の両方に関して選ばれる。よこ糸材料及びたて糸材料のいずれか又は両方は、フィラメント加工されていてもよいし又はフィラメント加工されていなくてもよい。ベース織パターンは、平織パターンとなるように選ばれる。2つのベロア層がベース層の外側に織られることになることがわかる。ベロア層のうちの一方は内側ベロア層となり、他方は外側ベロア層となるであろう。ベロア層に関して選ばれる織パターンは5/1パターンである。
【0173】
160本/インチ(よこ糸63本/センチメートル)の概して一定のよこ糸間隔が、プロテーゼのすべての織られる部分を織るのに用いられるように選ばれる。160本/インチの目標間隔が選ばれるが、織られたプロテーゼの全体を通して幾つかの許容差が期待される可能性があることが理解されるであろう。好ましくは、こうした間隔は、目標平均のプラス又はマイナス30%、より好ましくは目標平均の20%、及び最も好ましくは目標平均の10%の範囲内となるであろう。プロテーゼの全体にわたって連続的に織られることになるたて糸の総量は、所望のたて糸密度、位置決め、及び織られた物品の最大直径部分を含む仕上がり直径に基づいて選ばれる。単なる例として、合計890本のたて糸(端)が選ばれている。
【0174】
合計890本のたて糸が以下のように3つのグループに分けられる。3つのグループは、ベース層(例えば、296本のたて糸)、内側ベロア層(例えば、297本のたて糸)、及び外側ベロア層(例えば、297本のたて糸)に対応する。近位端964で、ベース層、内側層、及び外側層のそれぞれに関するたて糸間隔は、200本/インチ(79本/センチメートル)となるように選ばれる。すべてのベロアたて糸及びベースたて糸(すなわち、総たて糸密度又は間隔)を含む平均布たて糸間隔は、3つの層の合計、すなわち、600本/インチ(236本/センチメートル)である。
【0175】
プロテーゼは、直径が近位端964から遠位端966の方に概して常に増加するフレアした構成を有する。プロテーゼはさらに、より小直径の部分968及びより大直径の部分974を有するように表わすことができる。
【0176】
織りを通じた直径の拡大を達成するために、内側ベロア層又は外側ベロア層のいずれか若しくは好ましくはこの両方におけるベロアたて糸は、リードを下げることでベースたて糸間の間隔を増加させるために、扇形リード120の緩やかな再位置決めと連動してベース層の中に徐々に遷移される。ベロア糸は、ベースの中に織られ、したがって、ベース織パターン、又はよこ糸通過に対する少なくともより高い交絡度を採用する。
【0177】
織機は、ベース層内のたて糸密度が概して一定にとどまり、一方、内側ベロア層及び外側ベロア層の一方又は両方におけるベロアたて糸密度が徐々に減少するようにプログラムされる。これは、遠位端966で最大直径972が達成されるまで全長970(およそ25センチメートル)にわたって行われる。
【0178】
直径が最大である遠位端966に達するときに、リード120は、36mm(又は平置き幅62.8mm)の最大布管状直径を製作するためのその最大幅にあり、合計890本のたて糸は、もはやベロア層からベース層に移動される必要はない。すべてのベロアたて糸がベース層の中に移動されていると仮定すると、ベロアたて糸密度はゼロとなり、一方、ベースたて糸密度は200本/インチとなるであろう。
【0179】
この実施例は、したがって、全体を通して実質的に緩やかな遷移又はフレア領域962を有するフレアした織られたプロテーゼをもたらすことができる。すべての領域の全体を通して、ベース層たて糸密度は、概して一定に及び前述の許容差内(すなわち、目標平均の30%、好ましくは目標平均の20%以内、最も好ましくは目標平均の10%以内)に維持することができる。それらが
図25Aの参照基準a~fに沿って存在する場合の、この第4の実施例に関連した幾つかのパラメータのサンプルリストが、
図27に表961として示される。
【0180】
本発明の多くの明らかに大きく異なる幾つかの実施形態をその精神及び範囲から逸脱することなく作製することができるので、本発明は付属の請求項に定義される場合を除いてその特定の実施形態に限定されないことが理解される。
【0181】
本願は以下の発明をも包含する。
(1)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、織られたベースと、
前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成する1つ又は複数のベロア糸と、
前記より大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれ、前記織られたベースと一致する織パターンを呈する、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(2)
前記より小直径の部分内で、1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれず、前記織られたベースと一致する織パターンを呈さない、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(3)
前記ベースたて糸間の間隔が、前記より小直径の部分にある以上に付加的なたて糸を前記より大直径の部分に追加することなく、前記より小直径の部分及び前記より大直径の部分においてほぼ同じに維持される、(1)~(2)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(4)
前記より小直径の部分から前記より大直径に移行する前記プロテーゼの直径の増加が、前記プロテーゼを織っている間に前記ベースたて糸間の間隔を増加させることによってもたらされる、(1)~(3)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(5)
前記より大直径の部分の織られたベースの中に組み込まれる1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つによって、前記より大直径の部分の直径を減少させずに、前記より大直径の部分における前記ベースたて糸間の間隔をより小さくすることができる、(1)~(4)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(6)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記より大直径の部分が、前記グラフトの長手方向の軸線に沿って直径が変化する前記グラフトの部分内にあり、前記より小直径の部分が、概して一様な直径を有する前記グラフトの部分内にある、(1)~(5)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(7)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記より大直径の部分及び前記より小直径の部分が、前記グラフトの長手方向の軸線に沿った直径における前記プロテーゼの部分内にある(1)~(6)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(8)
前記より小直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の前記ベロア糸が、前記より大直径の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する、(1)~(7)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(9)
前記より小直径の部分における前記ベースたて糸間の間隔が、前記より大直径の部分における間隔のサイズの30%以内、より好ましくは前記より大直径の部分における間隔のサイズの20%以内、及び最も好ましくは前記より大直径の部分における間隔のサイズの10%以内である、(1)~(8)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(10)
前記ベースたて糸及び前記ベロア糸の量が、前記より大直径の部分において前記より小直径の部分と同じであり、前記ベースたて糸及び前記ベロアたて糸が、前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との間で連続して織られる、(1)~(9)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(11)
前記プロテーゼが、前記より小直径の部分及び前記より大直径の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた層を備え、前記第2の層を形成する糸の一部が、前記より大きい部分の前記ベース層の中に組み込まれる、(1)~(10)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(12)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるたて糸を備え、前記たて糸のすべて又は一部が前記よこ糸通過と一緒に織られて、織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体、
を含み、
前記織られた構造体の第1の部分が前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第1のサブセットが前記第1の部分における前記織られたベースを形成し、前記第1の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ離間され、前記第1の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第1の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記織られた構造体の第2の部分が前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第2のサブセットが前記第2の部分における前記織られたベースを形成し、前記第2の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第2の距離だけ離間され、前記第2の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第2の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第1のサブセットにおけるたて糸の数が前記第2のサブセットにおけるたて糸の数よりも少ない、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(13)
前記よこ糸通過と織り合わされ且つ前記織られたベースの中に配置される前記たて糸の部分がベース織パターンで構成され、前記織られたベースの中に配置されない前記たて糸の別の部分がベロアたて糸である、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(14)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記第1の部分が前記グラフトの長手方向の軸線に沿った第1の直径を有し、前記第2の部分が前記第1の直径よりも大きい前記長手方向の軸線に沿った第2の直径を有する、(12)~(13)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(15)
前記織られたベースを形成する前記第1のサブセットの中にない前記たて糸の前記第1の部分が、前記第2の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する、(12)~(14)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(16)
第1の端及び第2の端をさらに備え、本質的にすべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間で連続的に織られる、(12)~(15)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(17)
前記プロテーゼが、前記第1の部分及び前記第2の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた構造体を備え、前記第2の織られた構造体を形成する糸の一部が前記第2の部分の前記織られたベースの中に組み込まれる、(12)~(16)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(18)
埋入可能な医療プロテーゼの製造方法であって、
たて糸の組と少なくとも1つのよこ糸通過から織られたベースを織るステップであり、前記たて糸の組が、ベースたて糸として織られるたて糸及び非ベースたて糸として織られるたて糸を含み、前記ベースたて糸及び前記よこ糸通過がベース織パターンに織られ、前記非ベースたて糸がベース織パターンに織られないときに少なくとも1つの前記よこ糸通過と共に織られる、織られたベースを織るステップと、
前記織られたベースの中に前記非ベースたて糸のうちの1つ又は複数を組み込むステップであり、1つ又は複数の前記非ベースたて糸が前記ベース織パターンのすべて又は一部と一致する織パターンをとる、組み込むステップと、
を含む、方法。
(19)
前記非ベースたて糸がベロア糸である、(18)に記載の方法。
(20)
前記織られたベースが、より小直径の部分及びより大直径の部分を達成するように構成され、前記より大直径の部分が、前記より小直径の部分よりも大きい直径を達成することができ、前記より大直径の部分のより大きい直径が、前記織られたベースの中に1つ又は複数の前記ベロア糸を組み込む前記ステップによって達成される、(19)に記載の方法。
(21)
前記織られたベースの中に1つ又は複数の前記ベロア糸を組み込む前記ステップが、前記織られたベースの中に組み込まれる前にベロアとして用いられるベロア糸のみを用いる(19)~(20)のいずれかに記載の方法。
(22)
前記より大直径の部分が、前記より小直径の部分に関するベースたて糸密度のプラス又はマイナス30%、より好ましくは前記より小直径の部分に関するベースたて糸密度の20%、及び最も好ましくは前記より小直径の部分に関するベースたて糸密度の10%の範囲内のベースたて糸密度を有する、(18)~(20)のいずれかに記載の方法。
(23)
前記医療プロテーゼの多様な直径外形を提供するために、前記織るステップ中に可変リードが動かされる、(19)~(22)のいずれかに記載の方法。
(24)
埋入可能な医療プロテーゼの製造方法であって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を含む織られたベースを織るステップであり、前記ベースがより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成し、1つ又は複数のベロア糸が前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成する、織られたベースを織るステップと、
前記より大直径の部分の少なくとも一部において、前記織られたベースと一致する織パターンを呈するように1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つを前記織られたベースの中に織るステップと、
を含む、方法。
(25)
前記より大直径の部分の前記織られたベースの中に織られ、且つ前記織られたベースと一致する織パターンを呈する、1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つが、前記より小直径の部分の前記ベースの中に織られない、(24)に記載の埋入可能なプロテーゼの製造方法。
(26)
グラフトの少なくとも一部上にベロア層を有する可変直径グラフトを織る方法であって、たて糸が織パターンをとり且つ前記グラフトのより大直径の部分のベース層の一部を形成するように、前記グラフトのより小直径の部分における前記ベロア層を形成するのに用いられるたて糸の織パターンを変化させるステップを含む、方法。
(27)
前記より大直径の部分よりも直径が小さい第2のより小直径の部分の少なくとも一部上にベロア層が形成されるように、前記より大直径の部分から前記第2のより小直径の部分に遷移する際にたて糸の織パターンを変化させるステップをさらに含む、(26)に記載の方法。
(28)
前記より大直径の部分における前記隣接するたて糸間の間隔が増加するように、前記より小直径の部分のベース層を形成するのに用いられた少なくとも一対の隣接するたて糸をシフトさせるステップをさらに含む、(26)から(27)のいずれかに記載の方法。
(29)
前記より小直径の部分を形成するのに用いられる前記ベースたて糸間の間隔が、前記より大直径の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの30%以内、より好ましくは前記より大直径の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの20%以内、及び最も好ましくは前記より大直径の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの10%以内である、(26)から(28)のいずれかに記載の方法。
(30)
医療プロテーゼを織る方法であって、
(i)ベースたて糸、ベロアたて糸、及び1つ又は複数のよこ糸通過を織り合わせることによってプロテーゼの第1の部分を形成するステップと、
(ii)少なくとも一対の隣接する前記ベースたて糸をそれらの間の間隔が増加又は減少するようにシフトさせるステップと、
(iii)前記ベロアたて糸のうちの1つ又は複数と一緒に少なくとも一対のシフトされた前記ベースたて糸と共に1つ又は複数の前記よこ糸通過を織ることによって前記プロテーゼの第2の部分のベース層を形成するステップと、
を含む、方法。
(31)
前記ベロアたて糸が、前記第1の部分において浮きを呈し、前記第2の部分において浮かない又はより小さく浮く、(30)に記載の方法。
(32)
前記シフトが、たて糸案内デバイスを用いて達成される、(30)から(31)のいずれかに記載の方法。
(33)
前記たて糸が、前記たて糸案内デバイスにおけるギャップを通過し、該スペースが、前記プロテーゼの前記第1の部分における前記たて糸間の間隔よりも大きい距離だけ離間される、(32)に記載の方法。
(34)
前記医療プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記グラフトの前記第2の部分が、前記グラフトの前記第1の部分よりも大きい直径を有する、(30)~(33)のいずれかに記載の方法。
(35)
前記シフトが、前記プロテーゼの直径の変化をもたらすように前記グラフトの長手方向の軸線に沿って徐々に増加又は減少する、(30)~(34)のいずれかに記載の方法。
(36)
前記第1の部分における前記ベースたて糸間の間隔が、前記第2の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズのプラス又はマイナス30%、より好ましくは第2の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの20%、及び最も好ましくは第2の部分における同じベースたて糸間の対応する間隔のサイズの10%の範囲内である(30)~(35)のいずれかに記載の方法。
(37)
前記第2の部分における前記第1の部分からの前記ベースたて糸のうちの少なくとも1つを前記第2の部分の前記ベース層の一部としてではなくベロアたて糸として用いるステップをさらに含む、(30)~(36)のいずれかに記載の方法。
(38)
前記ベースたて糸及び前記ベロアたて糸の量が前記第1の部分と前記第2の部分との両方に関して同じである、(30)~(37)のいずれかに記載の方法。
(39)
前記ベースたて糸及び前記ベロアたて糸の量が前記医療プロテーゼの全体を通して一定している、(30)~(38)のいずれかに記載の方法。
(40)
埋入可能な実質的に管状の医療プロテーゼを織る方法であって、
(i)よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を含む織られたベースを織るステップであり、前記ベースがプロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成し、1つ又は複数のベロア糸が前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成する、織られたベースを織るステップと、
(ii)前記より大直径の部分の少なくとも一部において、前記織られたベースと一致する織パターンを呈するように1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つを前記織られたベースの中に組み込むステップと、
を含む、方法。
(41)
前記ステップ(ii)における組み込みが、前記より小直径の部分における組み込みではない、(40)に記載の方法。
(42)
前記より大直径の部分における前記隣接するたて糸間の間隔が増加するように、前記より小直径の部分のベース層を形成するのに用いられた少なくとも一対の隣接するたて糸をシフトさせるステップをさらに含む、(40)~(41)のいずれかに記載の方法。
(43)
よこ糸通過と織り合わされるたて糸を備え、前記たて糸のすべて又は一部が前記よこ糸通過と一緒に織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体を含む埋入可能な医療プロテーゼを織る方法であって、
(i)たて糸の第1の組と共に織られた構造体の第1の部分を織るステップであり、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の前記第1の組の第1のサブセットが前記第1の部分における前記織られたベースを形成し、前記第1の部分の前記第1の組における前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ離間され、前記第1の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第1の部分の前記第1の組における前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きい、織られた構造体の第1の部分を織るステップと、
(ii)前記たて糸の第1の組と共に前記織られた構造体の第2の部分を織るステップであり、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の前記第1の組の第2のサブセットが前記第2の部分における前記織られたベースを形成し、前記第2の部分の前記第1の組における前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第2の距離だけ離間され、前記第2の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第2の部分の前記第1の組における前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きい、織られた構造体の第2の部分を織るステップと、
を含む、方法。
(44)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、ベースと、
前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成する1つ又は複数の付加的なたて糸と、
を備え、
前記より小直径の部分ではなく前記より大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の付加的な前記たて糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれ、且つ前記織られたベースと一致する織パターンを呈する、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(45)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
織られたベースを備え、前記ベースが、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の側壁のすべて又は一部を形成し、前記より大直径の部分が最大直径を備え、前記最大直径が前記近位管状部分内の測定された直径よりも4ミリメートル以上長く、前記より大直径の部分が、前記近位管状部分内の測定された直径の75パーセントから150パーセントまでの間の長さを有し、前記近位管状部分と前記より大直径の部分が、前記織られたベース内の前記よこ糸通過と共に織られる前記たて糸に関する前記織られたベース内の糸間隔と実質的に一様な糸を有するプロテーゼを含む、埋入可能な医療プロテーゼ。
(46)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じ糸材料特性及び収縮特性で織られる、(45)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(47)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じよこ糸と共に織られる、(45)~(46)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(48)
前記より大直径の部分が、前記近位管状部分及び前記遠位管状部分とシームレスに織られる、(1)~(11)及び(45)~(47)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(49)
前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分を形成するのに同じ量のたて糸が用いられる、(45)~(48)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(50)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定であるように構成される、(1)~(11)及び(44)~(49)までのいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(51)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの流体加圧条件下でその直径を維持するように構成される、(1)~(11)及び(44)~(50)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(52)
前記より大直径の部分の前記最大直径での前記織られたベースが、波形、プリーツ、及び捲縮のうちの少なくとも1つをもたない、(1)~(11)及び(45)~(51)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(53)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定である、(1)~(11)及び(45)~(52)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(54)
前記プロテーゼがシームレスである、(1)~(17)及び(45)~(53)のいずれかに記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(55)
埋入可能な医療プロテーゼの製造方法であって、
管状プロテーゼを少なくとも1つのよこ糸と複数のたて糸で織るステップを含み、前記たて糸のすべて又は一部が、ベースたて糸、ベロアたて糸、又はベロアたて糸とベースたて糸との両方として織られ、前記織るステップが、前記ベロアたて糸密度が減少する一方で平均ベースたて糸密度を所定の範囲内に維持する状態で、前記より小直径の部分から前記より大直径の部分に長手方向に行われる、方法。
(56)
前記たて糸の量が、前記織るステップ中に、一定に維持される、(55)に記載の方法。
(57)
前記織るステップ中に、前記総たて糸密度が減少する、(55)~(56)のいずれかに記載の方法。
(58)
前記所定の範囲が、前記プロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度のプラス又はマイナス30%、好ましくは前記プロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の20%、より好ましくは前記プロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の10%、及び最も好ましくは前記プロテーゼ全体にわたる平均ベースたて糸密度の5%の範囲内である、(55)~(57)のいずれかに記載の方法。
(59)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定である、(55)~(58)のいずれかに記載の方法。
(60)
前記プロテーゼがシームレスである、(55)~(59)のいずれかに記載の方法。
(61)
少なくとも1つの直径遷移参照インジケータをさらに備える、(1)~(17)及び(45)~(54)のいずれかに記載の医療プロテーゼ。
(62)
前記直径遷移参照インジケータが、前記プロテーゼの他の部分とは異なる色のよこ糸通過からなる、(61)に記載の医療プロテーゼ。
(63)
前記直径遷移参照インジケータが、前記プロテーゼの残りの部分から区別可能な色を有する1つ又は複数のよこ糸通過から形成される、(61)に記載の医療プロテーゼ。
【0182】
本願は以下の発明をも包含する。
(1)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、前記織られたベースの前記たて糸の少なくとも一部は、第1の交絡の頻度を有するように織られており、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、織られたベースと、
前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成し、前記第1の交絡の頻度よりも小さい第2の交絡の頻度を有するように、前記よこ糸通過と織り合わされた1つ又は複数のベロア糸と、
前記より大直径の部分の少なくとも一部において、前記第2の交絡の頻度で前記よこ糸通過と織り合わされた1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれ、前記第2の交絡の頻度より大きい交絡の頻度を有するように前記よこ糸通過と織り合わされる、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(2)
前記より小直径の部分内で、1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれず、前記織られたベースと一致する織パターンを呈さない、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(3)
前記ベースたて糸間の間隔が、前記より小直径の部分にある以上に付加的なたて糸を前記より大直径の部分に追加することなく、前記より小直径の部分及び前記より大直径の部分においてほぼ同じに維持される、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(4)
前記より小直径の部分から前記より大直径に移行する前記プロテーゼの直径の増加が、前記プロテーゼを織っている間に前記ベースたて糸間の間隔を増加させることによってもたらされる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(5)
前記より大直径の部分の織られたベースの中に組み込まれる1つ又は複数の前記ベロア糸のうちの少なくとも1つによって、前記より大直径の部分の直径を減少させずに、前記より大直径の部分における前記ベースたて糸間の間隔をより小さくすることができる、(3)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(6)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記より大直径の部分が、前記グラフトの長手方向の軸線に沿って直径が変化する前記グラフトの部分内にあり、前記より小直径の部分が、概して一様な直径を有する前記グラフトの部分内にある、(3)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(7)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記より大直径の部分及び前記より小直径の部分が、前記グラフトの長手方向の軸線に沿った直径に関して前記プロテーゼの部分内にある、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(8)
前記より小直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の前記ベロア糸が、前記より大直径の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(9)
前記より小直径の部分における前記ベースたて糸間の間隔が、前記より大直径の部分における間隔のサイズの30%以内である、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(10)
前記ベースたて糸及び前記ベロア糸の量が、前記より大直径の部分において前記より小直径の部分と同じであり、前記ベースたて糸及び前記ベロアたて糸が、前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との間で連続して織られる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(11)
前記プロテーゼが、前記より小直径の部分及び前記より大直径の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた層を備え、前記第2の層を形成する糸の一部が、前記より大きい部分の前記ベース層の中に組み込まれる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(12)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるたて糸を備え、前記たて糸のすべて又は一部が前記よこ糸通過と一緒に織られて、織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体、
を含み、
前記織られた構造体の第1の部分が前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第1のサブセットが前記第1の部分における前記織られたベースを形成し、前記第1の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ横方向に離間され、前記第1の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第1の部分の前記たて糸の第1の組の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記織られた構造体の第2の部分が、前記第1の部分に関して縦方向にオフセットされた位置において、前記医療プロテーゼ内に位置し、前記第2の部分が、前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第2のサブセットが前記第2の部分における前記織られたベースを形成し、前記第2の部分の前記たて糸の第1の組の前記第2のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第2の距離だけ横方向に離間され、前記第2の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第2の部分の前記第2のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第1のサブセットにおけるたて糸の数が前記第2のサブセットにおけるたて糸の数よりも少ない、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(13)
前記よこ糸通過と織り合わされ且つ前記織られたベースの中に配置される前記たて糸の部分がベース織パターンで構成され、前記織られたベースの中に配置されない前記たて糸の別の部分がベロアたて糸である、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(14)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記第1の部分が前記グラフトの長手方向の軸線に沿った第1の直径を有し、前記第2の部分が前記第1の直径よりも大きい前記長手方向の軸線に沿った第2の直径を有する、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(15)
前記織られたベースを形成する前記第1のサブセットの中にない前記たて糸の前記第1の部分が、前記第2の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(16)
第1の端及び第2の端をさらに備え、本質的にすべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間に延びる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(17)
前記プロテーゼが、前記第1の部分及び前記第2の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた構造体を備え、前記第2の織られた構造体を形成する糸の一部が前記第2の部分の前記織られたベースの中に組み込まれる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(18)
第1の端及び第2の端をさらに備え、本質的にすべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間で連続的に織られる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(19)
前記たて糸の第1の組は、量Nであり、前記第1のサブセットは、N-1,N-2,N-3の量であり、前記第2のサブセットは、前記第1のサブセットより多い量である、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(20)
前記Nは、6の値を有する、(19)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(21)
すべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間で前記よこ糸通過と連続的に織られる、(16)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(22)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、ベースと、
前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成し、前記よこ糸通過と織り合わされた1つ又は複数の付加的なたて糸と、
を備え、
前記より小直径の部分ではなく前記より大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の付加的な前記たて糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれ、且つ前記織られたベースと同一の交路の頻度を有する織パターンを呈する、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(23)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
織られたベースを備え、前記ベースが、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の側壁のすべて又は一部を形成し、前記より大直径の部分が最大直径を備え、前記最大直径が前記近位管状部分内の測定された直径よりも4ミリメートル以上長く、前記より大直径の部分が、前記近位管状部分内の測定された直径の75パーセントから150パーセントまでの間の長さを有し、前記近位管状部分と前記より大直径の部分が、前記織られたベース内の前記よこ糸通過と共に織られる前記たて糸に関する前記織られたベース内の糸間隔と実質的に一様な糸を有するプロテーゼを含み、
前記プロテーゼは、よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の少なくとも一部からなる、非ベース層を備え、前記非ベース層内の前記たて糸の密度は、前記より大直径の部分において、前記近位管状部分、及び前記遠位管状部分の少なくとも1つより小さい、埋入可能な医療プロテーゼ。
(24)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じ糸材料特性及び収縮特性で織られる、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(25)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じよこ糸と共に織られる、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(26)
前記より大直径の部分が、前記近位管状部分及び前記遠位管状部分とシームレスに織られる、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(27)
前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分を形成するのに同じ量のたて糸が用いられる、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(28)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定であるように構成される、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(29)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの流体加圧条件下でその直径を維持するように構成される、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(30)
前記より大直径の部分の前記最大直径での前記織られたベースが、波形、プリーツ、及び捲縮のうちの少なくとも1つをもたない、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(31)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定である、(23)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(32)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
第1の開口端と、第2の開口端と、その間に配置された側壁とを有する管状の構造と、
前記大直径部分の直径より小さい直径を有する、前記第1の開口端と、前記大直径部分との間に位置する前記管状の構造の部分と
を備え、
前記管状の構造は、(i)前記管状の構造の長手方向に沿って位置するが、前記第1の開口端において位置しておらず、(ii)第1の開口端にテーパする、大直径部分を備え、
前記管状の構造の側壁は、前記第1の開口端と、前記第2の開口端との間で、複数のよこ糸通過と連続的に織り合わされる、複数のたて糸を備え、
前記第1の開口端に向かう方向において、前記大直径部分と前記第1の開口端との間をテーパする前記管状の構造の一部は、ベース層としてより、ベロア層として織られるたて糸の増加した割合を有する、埋入可能な医療プロテーゼ。
【0183】
本願は以下の発明をも包含する。
(1)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるたて糸を備え、前記たて糸のすべて又は一部が前記よこ糸通過と一緒に織られて、織られた構造体の織られたベースを形成する、織られた構造体、
を含み、
前記織られた構造体の第1の部分が前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第1のサブセットが前記第1の部分における前記織られたベースを形成し、前記第1の部分の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第1の距離だけ横方向に離間され、前記第1の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第1の部分の前記たて糸の第1の組の前記第1のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記織られた構造体の第2の部分が、前記第1の部分に関して縦方向にオフセットされた位置において、前記医療プロテーゼ内に位置し、前記第2の部分が、前記たて糸の第1の組と共に織られ、前記よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の第1の組の第2のサブセットが前記第2の部分における前記織られたベースを形成し、前記第2の部分の前記たて糸の第1の組の前記第2のサブセットにおける前記たて糸のうちの2つが前記プロテーゼの表面に沿って互いから第2の距離だけ横方向に離間され、前記第2の距離が、前記プロテーゼの表面に沿った前記第2の部分の前記第2のサブセットにおける前記たて糸のいかなる他の対間のいかなる間隔よりも大きく、
前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第1のサブセットにおけるたて糸の数が前記第2のサブセットにおけるたて糸の数よりも少ない、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(2)
前記よこ糸通過と織り合わされ且つ前記織られたベースの中に配置される前記たて糸の部分がベース織パターンで構成され、前記織られたベースの中に配置されない前記たて糸の別の部分がベロアたて糸である、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(3)
前記プロテーゼが、概して管状のグラフトであり、前記第1の部分が前記グラフトの長手方向の軸線に沿った第1の直径を有し、前記第2の部分が前記第1の直径よりも大きい前記長手方向の軸線に沿った第2の直径を有する、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(4)
前記織られたベースを形成する前記第1のサブセットの中にない前記たて糸の前記第1の部分が、前記第2の部分には全く存在しない又はより小さく存在する浮きを呈する、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(5)
第1の端及び第2の端をさらに備え、本質的にすべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間に延びる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(6)
前記プロテーゼが、前記第1の部分及び前記第2の部分のうちの少なくとも1つの上に配置される第2の織られた構造体を備え、前記第2の織られた構造体を形成する糸の一部が前記第2の部分の前記織られたベースの中に組み込まれる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(7)
第1の端及び第2の端をさらに備え、本質的にすべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間で連続的に織られる、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(8)
前記たて糸の第1の組は、量Nであり、前記第1のサブセットは、N-1,N-2,N-3の量であり、前記第2のサブセットは、前記第1のサブセットより多い量である、(1)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(9)
前記Nは、6の値を有する、(8)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(10)
すべての前記たて糸が前記第1の端と前記第2の端との間で前記よこ糸通過と連続的に織られる、(5)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(11)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
よこ糸通過と織り合わされるベースたて糸を備える織られたベースであり、プロテーゼのより小直径の部分及びより大直径の部分を少なくとも部分的に形成する、ベースと、
前記より小直径の部分と前記より大直径の部分との両方の一部を形成し、前記よこ糸通過と織り合わされた1つ又は複数の付加的なたて糸と、
を備え、
前記より小直径の部分ではなく前記より大直径の部分の少なくとも一部において、1つ又は複数の付加的な前記たて糸のうちの少なくとも1つが、前記織られたベースの中に組み込まれ、且つ前記織られたベースと同一の交路の頻度を有する織パターンを呈する、
埋入可能な医療プロテーゼ。
(12)
埋入可能な医療プロテーゼであって、
織られたベースを備え、前記ベースが、近位管状部分、より大直径の部分、及び遠位管状部分の側壁のすべて又は一部を形成し、前記より大直径の部分が最大直径を備え、前記最大直径が前記近位管状部分内の測定された直径よりも4ミリメートル以上長く、前記より大直径の部分が、前記近位管状部分内の測定された直径の75パーセントから150パーセントまでの間の長さを有し、前記近位管状部分と前記より大直径の部分が、前記織られたベース内の前記よこ糸通過と共に織られる前記たて糸に関する前記織られたベース内の糸間隔と実質的に一様な糸を有するプロテーゼを含み、
前記プロテーゼは、よこ糸通過と織り合わされる前記たて糸の少なくとも一部からなる、非ベース層を備え、前記非ベース層内の前記たて糸の密度は、前記より大直径の部分において、前記近位管状部分、及び前記遠位管状部分の少なくとも1つより小さい、埋入可能な医療プロテーゼ。
(13)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じ糸材料特性及び収縮特性で織られる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(14)
前記よこ糸通過が、前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分の全体を通して同じよこ糸と共に織られる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(15)
前記より大直径の部分が、前記近位管状部分及び前記遠位管状部分とシームレスに織られる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(16)
前記近位管状部分、前記より大直径の部分、及び前記遠位管状部分を形成するのに同じ量のたて糸が用いられる、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(17)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定であるように構成される、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(18)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの流体加圧条件下でその直径を維持するように構成される、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(19)
前記より大直径の部分の前記最大直径での前記織られたベースが、波形、プリーツ、及び捲縮のうちの少なくとも1つをもたない、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。
(20)
前記より大直径の部分が、120ミリメートルマーキュリーの加圧条件下で寸法的に安定である、(12)に記載の埋入可能な医療プロテーゼ。