IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メディカロイドの特許一覧

<>
  • 特許-手術器具 図1
  • 特許-手術器具 図2
  • 特許-手術器具 図3
  • 特許-手術器具 図4
  • 特許-手術器具 図5
  • 特許-手術器具 図6
  • 特許-手術器具 図7
  • 特許-手術器具 図8
  • 特許-手術器具 図9
  • 特許-手術器具 図10
  • 特許-手術器具 図11
  • 特許-手術器具 図12
  • 特許-手術器具 図13
  • 特許-手術器具 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20240516BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020094073
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186229
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】戸次 翔太
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028425(JP,A)
【文献】米国特許第04530356(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 34/30
A61B 90/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの一端側に設けられたエンドエフェクタと、
前記シャフトの他端側に配置され、ロボットアームへの取付面を有するベース、および前記ベースを覆う蓋部を含むハウジングと
前記ハウジングおよび前記シャフトの内部に配置され、洗浄液を前記シャフトの内部に供給するための洗浄チューブと、を備え、
前記蓋部には、洗浄液を供給するための洗浄液供給孔が設けられており
前記洗浄チューブは、一端が前記蓋部内において前記洗浄液供給孔に連通するように取り付けられ、他端が前記シャフト内に配置されており、
記洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向への前記洗浄チューブの移動を規制する移動規制部が、前記蓋部内において前記洗浄チューブの外周面に設けられている、手術器具。
【請求項2】
前記洗浄チューブは、前記シャフトの内部を前記シャフトの軸方向に沿って延びるように設けられている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記移動規制部は、前記洗浄チューブの外周面に取り付けられる取付部材である、請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記取付部材は、前記洗浄チューブの周方向において、前記洗浄チューブを覆う筒形状を有する、請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記取付部材は、熱収縮チューブである、請求項4に記載の手術器具。
【請求項6】
前記熱収縮チューブは、加熱収縮により、前記洗浄チューブよりも硬くなった状態で、前記洗浄チューブを締め付けている、請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記熱収縮チューブにおける前記洗浄液の供給方向の長さは、前記洗浄チューブの外径以上である、請求項5または6に記載の手術器具。
【請求項8】
前記洗浄チューブは、前記洗浄液供給孔に圧入されて取り付けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項9】
前記移動規制部は、前記洗浄液供給孔における下流側に設けられた開口部の周縁部に当接している、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項10】
前記洗浄液供給孔は、
前記洗浄液を供給するための洗浄器具の先端部を挿入するための大径部と、
前記大径部の前記洗浄液の供給方向側に設けられ、前記大径部よりも小さい小径部とを有し、
前記蓋部は、前記大径部の内周面から前記洗浄液供給孔の中心部に向かって突出するとともに、前記小径部を形成する凸部を有し、
前記洗浄チューブは、前記洗浄チューブの径方向の外側に突出したフランジ部を有しており、
前記移動規制部と前記フランジ部とは、前記洗浄液の供給方向において、前記凸部を挟み込むように配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項11】
前記洗浄チューブは、前記洗浄液の供給方向において、前記フランジ部と前記凸部の上流側の面とが当接することにより、下流側への移動が規制されているとともに、前記移動規制部と前記凸部の下流側の面とが当接することにより、上流側への移動が規制されている、請求項10に記載の手術器具。
【請求項12】
前記蓋部は、
第1蓋部と、
前記第1蓋部に取り付けられ、前記シャフトの軸方向の前記シャフト側とは逆側に配置され、前記洗浄液供給孔が形成された第2蓋部とを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項13】
前記シャフトの内部に挿入され、前記エンドエフェクタを操作するためのワイヤまたはケーブルである細長要素をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術器具に関し、特に、洗浄液をシャフトの内部に供給するための洗浄チューブを備える手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄液をシャフトの内部に供給するための洗浄チューブを備える手術器具が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ツールベースとツールベースカバーとから成るハウジングと、ハウジング内部に配置され、洗浄液をシャフトの内部に供給するためのフラッシュチューブ(洗浄チューブ)とを備える手術器具が開示されている。また、手術器具は、シャフト内に通したケーブルにより操作されるエンドエフェクタを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8398634号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているような手術器具において、例えばハウジングのコンパクト化のため、フラッシュチューブの配置を変更する場合がある。ここで、本願発明者は、フラッシュチューブの配置の仕方によっては、フラッシュチューブからシャフトの内部に供給され、シャフトの先端部から基端部に向かって折り返して流れる洗浄液の圧力に起因して、シャフトの洗浄中にフラッシュチューブ(洗浄チューブ)が抜けてしまう(ハウジングの外部に飛び出してしまう)という問題に直面した。また、上記特許文献1の手術器具では、シャフト内に通したケーブルによりエンドエフェクタを操作する際、ケーブルの移動に伴って、ケーブルがフラッシュチューブに擦れることにより、エンドエフェクタの操作中にフラッシュチューブ(洗浄チューブ)が抜けてしまう虞もある。
【0006】
この発明は、手術器具の洗浄チューブが抜けることを確実に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による手術器具は、シャフトと、シャフトの一端側に設けられたエンドエフェクタと、シャフトの他端側に配置され、ロボットアームへの取付面を有するベース、およびベースを覆う蓋部を含むハウジングと、ハウジングおよびシャフトの内部に配置され、洗浄液をシャフトの内部に供給するための洗浄チューブと、を備え、蓋部には、洗浄液を供給するための洗浄液供給孔が設けられており、洗浄チューブは、一端が蓋部内において洗浄液供給孔に連通するように取り付けられ、他端がシャフト内に配置されており、洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向への洗浄チューブの移動を規制する移動規制部が、蓋部内において洗浄チューブの外周面に設けられている。
【0008】
この発明の一の局面による手術器具では、上記のように、洗浄チューブの外周面に、洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向への洗浄チューブの移動を規制する移動規制部を設ける。これにより、洗浄チューブの配置の仕方によらず、洗浄チューブからシャフトの内部に供給された洗浄液の圧力に起因する洗浄チューブの洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向への移動を移動規制部により規制することができる。また、シャフト内に通したワイヤによりエンドエフェクタを操作する際、ワイヤの移動に伴って、ワイヤが仮に洗浄チューブに擦れた場合でも、洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向への移動を移動規制部により規制することができる。その結果、洗浄チューブが抜けることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄チューブが抜けることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるロボット手術システムの概略を示した図である。
図2】一実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
図3】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられた状態を示した斜視図である。
図4】一実施形態によるベースから第1蓋部および第2蓋部を取り外した状態を示した斜視図である。
図5図3の101-101線に沿った断面図である。
図6】一実施形態による手術器具の熱収縮チューブが固定された状態の洗浄チューブを示した斜視図である。
図7】一実施形態による手術器具のシャフトに挿入された洗浄チューブの先端部分を示した断面図である。
図8】一実施形態による手術器具の熱収縮チューブ付近を示した斜視図である。
図9図5の102-102線に沿った断面図である。
図10図5のP部分の拡大図である。
図11】一実施形態による手術器具の組立方法を示したフローチャートである。
図12】一実施形態による手術器具の第2蓋部の第1洗浄液供給孔に洗浄チューブを挿入した状態を示した斜視図である。
図13】一実施形態による手術器具の洗浄チューブに熱収縮チューブを挿入した状態を示した斜視図である。
図14】一実施形態による手術器具の熱収縮チューブを加熱して収縮させた状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(ロボット手術システムの構成)
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による手術器具4を備えるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置1と、患者側装置2とを備えている。遠隔操作装置1は、患者側装置2に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置2によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者により遠隔操作装置1に入力されると、遠隔操作装置1は、動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2に送信する。そして、患者側装置2は、遠隔操作装置1から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム5bに取り付けられた内視鏡3等の医療器具、および、ロボットアーム5aに取り付けられた手術器具(surgical instrument)4を操作する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0014】
患者側装置2は、患者に対して手術を行うインターフェースを構成する。患者側装置2は、患者が横たわる手術台の傍らに配置される。患者側装置2は、複数のロボットアーム5を有し、このうち1つのロボットアーム5bに内視鏡3が取り付けられ、その他のロボットアーム5aに手術器具4が取り付けられる。複数のロボットアーム5は、プラットホーム6に共通に支持されている。複数のロボットアーム5は、複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。複数のロボットアーム5は、コントローラを介して与えられた駆動信号により複数のロボットアーム5に取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。
【0015】
プラットホーム6は、手術室の床の上に載置されたポジショナ7に支持されている。ポジショナ7は、鉛直方向に調整可能な昇降軸7aを有する柱部7bを介して、車輪を備え床面を移動可能なベース7cに連結されている。
【0016】
ロボットアーム5aには、先端部に医療器具としての手術器具4が着脱可能に取り付けられる。手術器具4は、図3に示すように、ロボット手術システム100のロボットアーム5aにアダプタ8を介して取り外し可能に接続される。手術器具4は、エンドエフェクタ4bと、一端にエンドエフェクタ4bが配置された細長形状のシャフト4aとを備えている。エンドエフェクタ4bとして、各種の処置具を適用することができる。患者側装置2を用いた手術において、ロボットアーム5aは、患者の体表に留置したカニューラ(トロッカ)を介して患者の体内に手術器具4を導入する。そして、手術器具4のエンドエフェクタ4bは、手術部位の近傍に配置される。
【0017】
図1に示すように、ロボットアーム5bには、先端部に医療器具としての内視鏡3が着脱可能に取り付けられる。内視鏡3は、患者の体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、遠隔操作装置1に対して出力される。内視鏡3として、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡若しくは2D内視鏡が用いられる。患者側装置2を用いた手術において、ロボットアーム5bは、患者に体表に留置したトロッカを介して患者の体内に内視鏡3を導入する。そして、内視鏡3が手術部位の近傍に配置される。
【0018】
遠隔操作装置1は、操作者とのインターフェースを構成する。遠隔操作装置1は、複数のロボットアーム5に取り付けられた医療器具を操作者が操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置1は、操作者によって入力された手術器具4および内視鏡3によって実行されるべき動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置1は、たとえば、マスタの操作をしながらも患者の様子がよく見えるように手術台の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置1は、例えば動作態様指令を無線で送信するようにし、手術台が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0019】
手術器具4によって実行されるべき動作態様とは、手術器具4の動作(一連の位置および姿勢)および手術器具4個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具4が把持鉗子である場合には、手術器具4によって実行されるべき動作態様とは、エンドエフェクタ4bの手首のロール回転位置およびピッチ回転位置と、ジョーの開閉を行う動作である。また、手術器具4がスネアワイヤである場合には、手術器具4によって実行されるべき動作態様とは、束縛動作および束縛状態の解放動作であり得る。
【0020】
内視鏡3によって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡3先端の位置および姿勢、またはズーム倍率の設定である。
【0021】
遠隔操作装置1は、図1および図2に示すように、操作ハンドル1aと、操作ペダル部1bと、表示部1cと、制御装置1dとを備えている。
【0022】
操作ハンドル1aは、複数のロボットアーム5に取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル1aは、医療器具(手術器具4、内視鏡3)を操作するための操作者による操作を受け付ける。操作ハンドル1aは、水平方向に沿って2つ設けられている。つまり、2つの操作ハンドル1aのうち一方の操作ハンドル1aは、操作者の右手により操作され、2つの操作ハンドル1aのうち他方の操作ハンドル1aは、操作者の左手により操作される。
【0023】
また、操作ハンドル1aは、遠隔操作装置1の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル1aは、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル1aは、上下方向、左右方向、および前後方向に動かすことができるように構成されている。
【0024】
遠隔操作装置1と患者側装置2とは、ロボットアーム5aおよびロボットアーム5bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル1aは、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム5aおよびロボットアーム5bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル1aを操作者が操作すると、操作ハンドル1aの動きをロボットアーム5aの先端部(手術器具4のエンドエフェクタ4b)またはロボットアーム5bの先端部(内視鏡3)がトレースして移動するようにロボットアーム5aまたはロボットアーム5bの動作が制御される。
【0025】
また、患者側装置2は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム5aおよびロボットアーム5bの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具4のエンドエフェクタ4bは、操作ハンドル1aの移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を正確に行うことができる。
【0026】
操作ペダル部1bは、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含んでいる。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含んでいる。また、複数のペダルは、操作者の足により操作される。
【0027】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡3の位置および姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡3の操作ハンドル1aによる操作を有効にする。つまり、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル1aにより内視鏡3の位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡3は、左右の操作ハンドル1aの両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル1aの中間点を中心に左右の操作ハンドル1aを回動させることにより、内視鏡3が回動される。また、左右の操作ハンドル1aを共に押し込むことにより、内視鏡3が奥に進む。また、左右の操作ハンドル1aを共に引っ張ることにより、内視鏡3が手前に戻る。また、左右の操作ハンドル1aを共に上下左右に移動させることにより、内視鏡3が上下左右に移動する。
【0028】
クラッチペダルは、ロボットアーム5aと、操作ハンドル1aとの操作接続を一時切断し手術器具4の動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル1aを操作しても、患者側装置2のロボットアーム5aが動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル1aが移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル1aを中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム5aと操作ハンドル1aとが再び接続され、中央付近で操作ハンドル1aの操作を再開することができる。
【0029】
表示部1cは、内視鏡3が撮像した画像を表示することができるものである。表示部1cは、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部1cである。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部1cを含む概念である。
【0030】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2のロボットアーム5bに取り付けられた内視鏡3により撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置2に設けられた内視鏡3により撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2に設けられた内視鏡3により撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0031】
図2に示すように、制御装置1dは、例えば、CPU等の演算器を有する制御部1eと、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部1fと、画像制御部1gとを含んでいる。制御装置1dは、集中制御する単独の制御装置1dにより構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置1dにより構成されてもよい。制御部1eは、操作ハンドル1aにより入力された動作態様指令を、操作ペダル部1bの切替状態に応じて、ロボットアーム5aによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡3によって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部1eは、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が手術器具4によって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、動作態様指令をロボットアーム5aに対して送信する。これによって、ロボットアーム5aが駆動され、この駆動によってロボットアーム5aに取り付けられた手術器具4の動作が制御される。
【0032】
また、制御部1eは、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が内視鏡3によって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、当該動作態様指令をロボットアーム5bに対して送信する。これによって、ロボットアーム5bが駆動され、この駆動によってロボットアーム5bに取り付けられた内視鏡3の動作が制御される。
【0033】
記憶部1fには例えば手術器具4の種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具4の種類に応じて制御部1eがこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置1の操作ハンドル1aおよび/または操作ペダル部1bの動作指令が個別の手術器具4に適合した動作をさせることができる。
【0034】
画像制御部1gは、内視鏡3が取得した画像を表示部1cに伝送する。画像制御部1gは、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0035】
図3図10を参照して、本発明の一実施形態による手術器具4の構成について説明する。
【0036】
図3に示すように、手術器具4は、ロボット手術システム100のロボットアーム5aに取り付けられる手術器具4である。ロボットアーム5aは、清潔区域において使用されるため、ドレープ9により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者を含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させるときは、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者を含む手術チームのメンバーがその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ9により覆われる。
【0037】
ドレープ9は、ロボットアーム5aと、手術器具4との間に配置される。具体的には、ドレープ9は、アダプタ8と、ロボットアーム5aとの間に配置される。アダプタ8は、ドレープ9を挟み込むようにして、ロボットアーム5aに取り付けられる。つまり、アダプタ8は、ロボットアーム5aとの間にドレープ9を挟み込むためのドレープアダプタである。これにより、アダプタ8を利用してドレープ9を取り付けることができる。また、手術器具4は、ロボットアーム5aにドレープ9を介して取り付けられたアダプタ8に取り付けられる。ロボットアーム5aは、手術器具4のエンドエフェクタ4bを駆動させるために、アダプタ8を介して手術器具4に動力を伝達する。
【0038】
ここで、手術器具4とアダプタ8とが並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうち手術器具4側をZ1方向とし、アダプタ8側をZ2方向とする。また、シャフト4aの延びる方向をX方向とし、X方向のうち、シャフト4aの先端側をX1方向とし、X1方向の逆方向をX2方向とする。また、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0039】
図4に示すように、手術器具4は、上記シャフト4aと、上記エンドエフェクタ4b(図3参照)と、ハウジング4cとを含んでいる。
【0040】
(ハウジング)
図4に示すように、ハウジング4cは、手術器具4の駆動機構を内部に収容する筐体部分を構成している。具体的には、ハウジング4cは、ベース41と、保持部材42と、複数(4つ)の被駆動部材43と、蓋部44と、洗浄チューブ45と、移動規制部46とを有している。
【0041】
ベース41は、Z2方向側にアダプタ取付面47を有している。アダプタ取付面47は、手術器具4のアダプタ8を介したロボットアーム5aへの取付面である。また、ベース41には、シャフト4aの他端部が配置されている。保持部材42は、複数の被駆動部材43を回転可能に保持している。なお、アダプタ取付面47は、特許請求の範囲の「取付面」の一例である。
【0042】
複数の被駆動部材43は、ロボットアーム5aに設けられた駆動部により、回転軸線C1回りに回転駆動される。複数の被駆動部材43は、回転軸線C1回りに回転駆動されることによりワイヤ140(細長要素14)をX1方向またはX2方向に移動させるように構成されている。また、複数の被駆動部材43は、ワイヤ140をX1方向またはX2方向に移動させることにより、エンドエフェクタ4b(図3参照)を駆動させる。具体的には、シャフト4aのX1方向側には、エンドエフェクタ4bが配置されている。ここで、エンドエフェクタ4bは、支持部材を介してシャフト4aに接続されている。シャフト4aのX2方向側は、ハウジング4cのベース41が接続されている。被駆動部材43とエンドエフェクタ4bとは、シャフト4a内に通されたワイヤ140により接続されている。
【0043】
このように、手術器具4は、シャフト4aの内部に挿入され、エンドエフェクタ4bを操作するためのワイヤ140である細長要素14を備えている。
【0044】
これにより、ワイヤ140である細長要素14を移動させることにより、エンドエフェクタ4bを操作することができるので、エンドエフェクタ4bを操作する構造を簡易な構造にすることができる。
【0045】
4つの被駆動部材43のうちの1つの被駆動部材43の回転により、シャフト4aが回転される。また、他の3つの被駆動部材43の回転により、エンドエフェクタ4bが駆動される。4つの被駆動部材43は、X方向に2つ配列され、Y方向に2つ配列されている。複数の被駆動部材43は、ハウジング4cの内部に設けられている。
【0046】
蓋部44は、ベース41をZ1方向側から覆う。蓋部44は、第1蓋部44aと、第2蓋部44bとを有している。第1蓋部44aは、ベース41に対して取り外し可能に取り付けられている。第1蓋部44aは、第2蓋部44bを配置するための切り欠き部144を有している。切り欠き部144は、第1蓋部44aのX2方向側の部分に形成されている。第2蓋部44bは、ベース41に取り外し可能に取り付けられている。第2蓋部44bは、第1蓋部44aの切り欠き部144に取り外し可能に嵌め込まれている。第2蓋部44bは、第1洗浄液供給孔441と、第2洗浄液供給孔442とを有している。なお、第1洗浄液供給孔441は、特許請求の範囲の「洗浄液供給孔」の一例である。
【0047】
図4および図5に示すように、第1洗浄液供給孔441および第2洗浄液供給孔442は、洗浄液(水など)を供給するために設けられている。第1洗浄液供給孔441および第2洗浄液供給孔442は、第2蓋部44bをX方向に貫通する貫通孔である。第1洗浄液供給孔441および第2洗浄液供給孔442は、Z方向に並んで配置されている。Z1方向側の第1洗浄液供給孔441は、シャフト4aの内部に洗浄液を供給するために設けられている。Z2方向側の第2洗浄液供給孔442は、ハウジング4cの内部に洗浄液を供給するために設けられている。第1洗浄液供給孔441は、洗浄液を供給するためのシリンジやフラッシングチューブ等の洗浄器具444の先端部を挿入(接続)するための大径部441aと、大径部441aのX1方向側(後述するF1方向側)に設けられ、大径部441aよりも小さい小径部441bとを有する。小径部441bは、大径部441aの内周面から第1洗浄液供給孔441の中心部に向かって突出した凸部443の内周面によって形成されている。凸部443は、第1洗浄液供給孔441のX1方向側の端部に設けられている。
【0048】
このように、蓋部44は、第1蓋部44aと、第1蓋部44aに取り付けられ、X方向(シャフト4aの軸方向)のシャフト4a側とは逆側(X2方向側)に配置され、第1洗浄液供給孔441が形成された第2蓋部44bとを有している。第2蓋部44bには、洗浄チューブ45が連通するように取り付けられた第1洗浄液供給孔441が形成されている。
【0049】
この構成によると、第2蓋部44bの第1洗浄液供給孔441に連通するように洗浄チューブ45を取り付けることにより、シャフト4a内に洗浄チューブ45を挿入しつつ、第2蓋部44bを第1蓋部44aに取り付けることができるので、手術器具4の組み立てを効率良く行うことができる。
【0050】
図5および図6に示すように、洗浄チューブ45は、第1洗浄液供給孔441に供給された洗浄液をシャフト4aの先端部まで流すように構成されている。
【0051】
具体的には、洗浄チューブ45は、X方向(シャフト4aの軸方向)に沿って直線状に延びるように設けられている。
【0052】
これにより、洗浄チューブ45がX方向(シャフト4aの軸方向)に沿って直線状に延びているので、洗浄チューブ45が途中で曲げられている場合と比較して、洗浄チューブ45内を流れる洗浄液の勢いを保つことができる。また、洗浄チューブ45がX方向(シャフト4aの軸方向)に沿って直線状に延びていることにより、洗浄チューブ45が途中で曲げられている場合と異なり、洗浄チューブ45を曲げた姿勢を保持するための保持部材を設ける必要がないので、手術器具4をコンパクト化することができる。
【0053】
洗浄チューブ45は、円筒形状を有している。洗浄チューブ45は、X方向に沿って延びる樹脂製のチューブである。詳細には、洗浄チューブ45は、フッ素系樹脂材により形成されている。洗浄チューブ45のX2方向側の部分は、第1洗浄液供給孔441に挿入されている。洗浄チューブ45のX1方向側の部分は、シャフト4aの内部に挿入されている。
【0054】
洗浄チューブ45は、フランジ部45aを有している。フランジ部45aは、洗浄チューブ45が第1洗浄液供給孔441からX1方向側に抜けないようにする抜け止めの機能を有している。フランジ部45aは、洗浄チューブ45の外周面45bから、洗浄チューブ45の径方向(以下、D方向とする)に向かって突出している。フランジ部45aは、洗浄チューブ45のX2方向側の端部に設けられている。
【0055】
図7に示すように、洗浄チューブ45のX1方向側の端部は、シャフト4aのX1方向側の先端近傍まで挿入されている。第1洗浄液供給孔441から供給された洗浄液は、洗浄チューブ45内を流れて洗浄チューブ45の先端部から流出する。洗浄チューブ45の先端部から流出した洗浄液は、シャフト4a内に流入し、シャフト4aのX1方向側の端部からシャフト4aのX2方向側の端部に向かって流れる。そして、洗浄液は、シャフト4aのX2方向側の端部からハウジング4c内に流出し、ハウジング4cに存在する隙間を排出孔(図示せず)としてハウジング4c外に流出する。このようにして、シャフト4a内の洗浄が行われる。
【0056】
(移動規制部)
図8および図9に示すように、本実施形態の手術器具4では、シャフト4aのX1方向側の端部からシャフト4aのX2方向側の端部に向かって流れる洗浄液の圧力に起因する洗浄チューブ45のX2方向側への移動を規制するために、移動規制部46が設けられている。すなわち、移動規制部46は、抜け止め部材としての機能を有している。具体的には、移動規制部46は、第2蓋部44bに当接することにより、洗浄チューブ45のX2方向側への移動を規制するように構成されている。
【0057】
このように、手術器具4は、シャフト4aと、シャフト4aの一端側に設けられたエンドエフェクタ4bと、シャフト4aの他端側に配置され、ロボットアーム5aへのアダプタ取付面47を有するベース41と、ベース41を覆う蓋部44とを含むハウジング4cとを備えている。蓋部44(詳細には、第2蓋部44b)には、洗浄液を供給するための第1洗浄液供給孔441が設けられている。そして、洗浄液をシャフト4aの内部に供給するための洗浄チューブ45が第1洗浄液供給孔441に連通するように取り付けられている。洗浄チューブ45の外周面45bには、洗浄チューブ45内の洗浄液の流れ方向(以下、F1方向とし、供給方向ともいう)とは逆方向(以下、F2方向とする)への洗浄チューブ45の移動を規制する移動規制部46が設けられている。ここで、F1方向およびF2方向は、上記X方向と平行な方向である。
【0058】
この構成によると、洗浄チューブ45の配置によらず、洗浄チューブ45からシャフト4aの内部に供給された洗浄液の圧力に起因する洗浄チューブ45のF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)側への移動を移動規制部46により規制することができる。また、シャフト4a内に通したワイヤ140によりエンドエフェクタ4bを操作する際、ワイヤ140の移動に伴って、ワイヤ140が洗浄チューブ45に擦れて洗浄チューブ45にF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)への力が加わった場合でも、洗浄チューブ45のF2方向への移動を移動規制部46により規制することができる。この結果、洗浄チューブ45がハウジング4cから抜けることを確実に防止することができる。
【0059】
具体的には、図9および図10に示すように、移動規制部46は、F1方向(洗浄液の供給方向)において、第2蓋部44bの第1洗浄液供給孔441における下流側に設けられた開口部441cの周縁部441dに当接している。
【0060】
この構成によると、移動規制部46が第2蓋部44bの第1洗浄液供給孔441における下流側に設けられた開口部441cの周縁部441dに当接していることにより、洗浄チューブ45のF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)への移動を確実に規制することができるので、洗浄チューブ45がハウジング4cから抜けることを確実に防止することができる。
【0061】
ここで、第1洗浄液供給孔441における下流側に設けられた開口部441cとは、第1洗浄液供給孔441のうちの凸部443により縮径された小径部441bのF1方向側の開口である。また、開口部441cの周縁部441dとは、凸部443のF1方向側の面443bのうち開口部441c近傍の部分である。
【0062】
また、洗浄チューブ45は、F2方向だけでなく、F1方向への移動も規制されている。すなわち、手術器具4は、第1洗浄液供給孔441からハウジング4c外、および、第1洗浄液供給孔441からハウジング4c内の両方に洗浄チューブ45が抜けないようにする抜け止め構造を有している。
【0063】
具体的には、第1洗浄液供給孔441は、洗浄液を供給するための洗浄器具444の先端部を挿入するための大径部441aと、大径部441aの洗浄液のF1方向(供給方向)側に設けられ、大径部441aよりも小さい小径部441bとを有している。蓋部44(詳細には、第2蓋部44b)は、大径部441aの内周面から第1洗浄液供給孔441の中心部に向かって突出すると共に、小径部441bを形成する凸部443を有している。洗浄チューブ45は、D方向(洗浄チューブ45の径方向)の外側に突出したフランジ部45aを有している。移動規制部46とフランジ部45aとは、F1方向(洗浄液の供給方向)において、凸部443を挟み込むように配置されている。
【0064】
この構成により、移動規制部46とフランジ部45aとにより凸部443を挟み込むだけで洗浄チューブ45のF1方向(洗浄液の供給方向)およびF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)の移動を規制することができるので、洗浄チューブ45のF1方向(洗浄液の供給方向)およびF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)への移動を規制する構造の複雑化を抑制することができる。
【0065】
このように、洗浄チューブ45は、F1方向(洗浄液の供給方向)において、フランジ部45aと凸部443の上流側の面443aとが当接することにより、下流側への移動が規制されている。洗浄チューブ45は、F1方向(洗浄液の供給方向)において、移動規制部46と凸部443の下流側の面443bとが当接することにより、上流側への移動が規制されている。
【0066】
この構成により、洗浄チューブ45のF1方向(洗浄液の供給方向)およびF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)の両方の移動が規制されているので、洗浄チューブ45がF1方向(洗浄液の供給方向)に移動することに起因して、洗浄チューブ45がハウジング4c内に抜けてしまうことを防止することができるとともに、洗浄チューブ45がF2方向(洗浄液の供給方向とは逆方向)に移動することに起因して、洗浄チューブ45がハウジング4c外に抜けてしまうことを防止することができる。
【0067】
移動規制部46は、洗浄チューブ45の外周面45bに取り付けられる取付部材(後述する熱収縮チューブ146)である。
【0068】
この構成により、洗浄チューブ45にD方向(洗浄チューブ45の径方向)に突出する凸部を一体的に設けるような場合と異なり、洗浄チューブ45の形状を変更することなく洗浄チューブ45の移動を規制することができるので、既存(汎用)の洗浄チューブ45をそのまま用いることができる。
【0069】
取付部材は、洗浄チューブ45の周方向(A方向(図8参照))において、洗浄チューブ45を取り囲む(覆う)ように固定された筒形状を有する。
【0070】
この構成により、洗浄チューブ45の外周面45bの全周に亘って取付部材を固定することができるので、取付部材を洗浄チューブ45に強固に固定することができる。
【0071】
取付部材は、熱収縮チューブ146である。
【0072】
この構成により、熱収縮チューブ146は、加熱されることにより収縮するので、接着剤等を用いることなく洗浄チューブ45に固定可能である。そのため、接着剤による固定を行う際に必要となる検査(バリテーション)を行う必要がない。この結果、洗浄チューブ45への熱収縮チューブ146の固定に対する検査を行わないことにより、手術器具4の組立作業の煩雑化を抑制することができる。
【0073】
熱収縮チューブ146は、X方向に沿って延びる樹脂製のチューブである。詳細には、熱収縮チューブ146は、洗浄チューブ45とは異なる材質のフッ素系樹脂材により形成されている。熱収縮チューブ146は、加熱されることにより、洗浄チューブ45よりも硬くなる材質である。なお、熱収縮チューブ146は、熱収縮をする材質であるならば他の材質であってもよい。
【0074】
熱収縮チューブ146は、D方向において厚みTcを有している。硬化した状態の熱収縮チューブ146の厚みTcは、フランジ部45aのD方向における厚みTfよりも小さい。また、硬化した状態の熱収縮チューブ146の厚みTcは、洗浄チューブ45のD方向における厚みTwよりも大きい。
【0075】
熱収縮チューブ146は、D方向において、洗浄チューブ45の外周面45bと密着している。すなわち、熱収縮チューブ146と、洗浄チューブ45とは、D方向において、接触している。また、熱収縮チューブ146では、F1方向に沿った軸線回りの周長と、F1方向における熱収縮チューブ146の長さとを掛けた面積が、洗浄チューブ45を締め付けるための接触面積になる。
【0076】
熱収縮チューブ146は、加熱収縮により、洗浄チューブ45よりも硬くなった状態で、洗浄チューブ45を締め付けている。
【0077】
この構成により、熱収縮チューブ146が洗浄チューブ45以下の硬さの場合と比較して、外部から加えられる力に起因する熱収縮チューブ146の撓みを抑制することができるので、外部から加えられる力に起因して熱収縮チューブ146が洗浄チューブ45から外れにくくすることができる。
【0078】
熱収縮チューブ146は、加熱されて縮径することによって、洗浄チューブ45を締め付けている。これにより、熱収縮チューブ146は、洗浄チューブ45の所定の位置に固定されている。ここで、熱収縮チューブ146の締め付け力は、熱収縮チューブ146の硬化後の内径N1、および、熱収縮チューブ146のF1方向の長さLにより設定される。
【0079】
硬化した状態の熱収縮チューブ146の内径N1は、洗浄チューブ45における熱収縮チューブ146が配置された部分の内径N2が他の部分の内径よりも過大に小さくならないような長さである。すなわち、D方向において、硬化した状態の熱収縮チューブ146の内径N1は、熱収縮チューブ146により締め付けられる前の洗浄チューブ45の外径Mよりも若干小さい。この構成によると、洗浄チューブ45における熱収縮チューブ146が配置された部分を通過する洗浄液の流れを妨げることなく、熱収縮チューブ146を洗浄チューブ45に確実に固定することができる。
【0080】
熱収縮チューブ146におけるF1方向(洗浄液の供給方向)の長さLは、洗浄チューブ45におけるD方向(洗浄チューブ45の径方向)の外径M以上である。
【0081】
この構成によると、熱収縮チューブ146と洗浄チューブ45との接触面積を十分に確保することができるので、熱収縮チューブ146を洗浄チューブ45に強固に固定することができる。
【0082】
また、熱収縮チューブ146におけるF1方向の長さLは、熱収縮チューブ146が被駆動部材43からシャフト4a内に挿入されるワイヤ140と干渉しない程度の長さである。具体的には、熱収縮チューブ146におけるF1方向の長さLは、第1洗浄液供給孔441のX1方向側の端部から、X2方向側に位置する2つの被駆動部材43の回転軸線C1同士を結んだ線43aまでの距離Rよりも小さい。
【0083】
このように、F1方向において、熱収縮チューブ146の第1洗浄液供給孔441側の端部は、第1洗浄液供給孔441のX1方向側の端部に配置されている。また、F1方向において、熱収縮チューブ146のシャフト4a側の端部は、X2方向側に位置する2つの被駆動部材43の回転軸線C1同士を結んだ線43aの近傍に配置されている。
【0084】
また、洗浄チューブ45は、第1洗浄液供給孔441に圧入されて取り付けられている。
【0085】
この構成により、移動規制部46だけでなく、第1洗浄液供給孔441に圧入されて取り付けられることによっても、洗浄チューブ45のF2方向への移動を規制することができるので、シャフト4aの洗浄中に洗浄チューブ45がより確実に抜けてしまわないようにすることができる。
【0086】
具体的には、洗浄チューブ45は、第2蓋部44bの凸部443により、D方向の外側から締め付けられている。
【0087】
(手術器具の組立方法)
以下に、図11図14を参照して、作業者による手術器具4の組立方法について説明する。手術器具4の組立方法は、洗浄チューブ45に熱収縮チューブ146を取り付ける作業を備えている。
【0088】
ステップS1において、作業者は、第1洗浄液供給孔441に洗浄チューブ45を挿入する(図12参照)。ここで、作業者は、洗浄チューブ45のフランジ部45aが凸部443の上流側の面443a(図10参照)に当接するまで、洗浄チューブ45を第1洗浄液供給孔441に挿入する。ステップS2において、作業者は、熱収縮チューブ146を洗浄チューブ45に挿入する(図13参照)。すなわち、作業者は、洗浄チューブ45のフランジ部45a側とは逆側の端部から熱収縮チューブ146を洗浄チューブ45に挿入する。この際、作業者は、熱収縮チューブ146が第2蓋部44bの凸部443の下流側の面443bに当接するまで、熱収縮チューブ146を洗浄チューブ45に挿入する。
【0089】
ステップS3において、作業者は、熱収縮チューブ146を加熱して収縮させる(図14参照)。これにより、熱収縮チューブ146が、第2蓋部44bに当接した状態で、洗浄チューブ45に固定される。
【0090】
ステップS4において、作業者は、手術器具4の他の部材を組み立てる。そして、ステップS5において、作業者は、シャフト4aに洗浄チューブ45を挿入しつつ、第2蓋部44bを組み付ける。これにより、手術器具4の組立作業が終了する。
【0091】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0092】
たとえば、上記実施形態では、手術器具4が、電気式ではない手術器具4の構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、手術器具は、電気式の手術器具であってもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、洗浄チューブ45は、X方向(シャフト4aの軸方向)に沿って延びるように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、洗浄チューブは、シャフトの軸方向以外の方向に曲がっていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、移動規制部46は、洗浄チューブ45とは別個に設けられており、洗浄チューブ45の外周面45bに取り付けられる取付部材である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動規制部は、洗浄チューブと一体的に設けられていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、取付部材は、洗浄チューブ45の周方向において、洗浄チューブ45を取り囲むように固定された筒形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取付部材は、例えば断面がC字形状の部材であってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、移動規制部46は、熱収縮チューブ146である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、チューブ状部材は、洗浄チューブに接着剤により固定される筒状部材であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブ146は、加熱収縮されることによって、洗浄チューブ45よりも硬くなった状態で、洗浄チューブ45を締め付けている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブは、洗浄チューブと同じ程度の硬さ、または、洗浄チューブよりも柔らかくてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブ146におけるF1方向(洗浄チューブ45内の洗浄液の供給方向)の長さLは、洗浄チューブ45におけるD方向(洗浄チューブ45内の洗浄液の供給方向に直交する方向)の外径M以上である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブにおける洗浄チューブ内の洗浄液の流れ方向の長さは、洗浄チューブにおける洗浄チューブ内の洗浄液の流れ方向に直交する方向の外径未満の長さであってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、洗浄チューブ45は、第1洗浄液供給孔441(洗浄液供給孔)に圧入されて取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、洗浄チューブは、洗浄液供給孔に圧入されて取り付けられていなくてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、移動規制部46は、F1方向(洗浄チューブ45内の洗浄液の供給方向)において、第1洗浄液供給孔441(洗浄液供給孔)における下流側に設けられた開口部441cの周縁部441dに当接している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動規制部は、洗浄液供給孔における下流側に設けられた開口部の周縁部から離れた位置に配置されていてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、蓋部44は、第1蓋部44aと、第2蓋部44bとを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、蓋部は、第1蓋部と、第2蓋部とに分割されていなくてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、第2蓋部44bには、洗浄チューブ45が連通するように取り付けられた第1洗浄液供給孔441(洗浄液供給孔)が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、洗浄液供給孔は、第1蓋部に形成されていてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、F1方向(洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向)、および、F2方向(洗浄チューブ内の洗浄液の供給方向とは逆方向)は、X方向(シャフトの軸方向)と平行な方向である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、洗浄チューブ内の洗浄液の流れる方向、および、洗浄チューブ内の洗浄液の流れる方向とは逆方向は、シャフトの軸方向と平行な方向でなくてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、エンドエフェクタ4bを駆動させるための細長要素14がワイヤ140である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、細長要素としてケーブルまたはロッドを採用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
4:手術器具、4a:シャフト、4b:エンドエフェクタ、4c:ハウジング、14:細長要素、41:ベース、44:蓋部、44a:第1蓋部、44b:第2蓋部、45:洗浄チューブ、45a:フランジ部、45b:(洗浄チューブの)外周面、46:移動規制部、47:アダプタ取付面(取付面)、140:ワイヤ、146:熱収縮チューブ(取付部材)、441:第1洗浄液供給孔(洗浄液供給孔)、441a:大径部、441b:小径部、441c:開口部、441d:周縁部、443:凸部、443a:(凸部の上流側の)面、443b:(凸部の下流側の)面、444:洗浄器具、L:(熱収縮チューブにおける洗浄チューブ内の洗浄液の流れ方向の)長さ、M:(洗浄チューブにおける洗浄チューブ内の洗浄液の流れ方向に直交する方向の)外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14