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特許7489242シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
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  • 特許-シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240516BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240516BHJP
   H10B 69/00 20230101ALI20240516BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240516BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240516BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240516BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240516BHJP
【FI】
H01L21/308 E
H01L21/306 E
H10B69/00
H01L29/78 371
H10B43/27
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020115813
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2021015970
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082942
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0117234(KR,A)
【文献】特開2018-110261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111311(US,A1)
【文献】特表2019-511842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/306
H10B 69/00
H01L 21/336
H10B 43/27
H10B 41/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸水溶液;及び、
下記化1で表される化合物;を含む、
シリコン窒化膜エッチング溶液:
[化1]
上記化1において、
Aは、1μm以下のコロイダルシリカ粒子であり、
mは、1~5の整数であり、
X及びZは、それぞれ独立して窒素、硫黄及び酸素から選択され、
Yは、水素、アミン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、及びチオエーテル基から選択され、
nは、0~5の整数であり、
及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、ハロゲン、ハロアルキル基、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、1~5の整数である。
【請求項2】
上記化1で表される化合物は、下記化2で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
[化2]
上記化2において、
nは、1~5の整数であり、
及びRは、C-C10のアルキル基であり、
A、m及びpは、上記化1に定義したとおりである。
【請求項3】
上記化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
[化3]
上記化3において、
A、m及びpは、上記化1に定義したとおりである。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物は、200~100,000ppmで含まれることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項6】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項7】
請求項1によるシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることの可能なシリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いて行われる半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜をエッチングする方法としては、様々があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常に気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所があるものの、湿式エッチング法より生産性が劣り過ぎ、高価の方式であるという点から、湿式エッチング法が広く利用されつつある。
【0004】
一般に、湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜をエッチングするために、純粋なリン酸のみ用いる場合は、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることによって、各種の不良及びパターンの異常が発生するなどの問題が生じ得るため、シリコン酸化膜に保護膜を形成して、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高温で行われるエッチング工程において、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を下げて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることの可能なシリコン窒化膜エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決しようとする手段】
【0007】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、シリコン窒化膜エッチング溶液は、リン酸水溶液及び下記の化1で表される化合物を含む。
【0008】
[化1]
【0009】
上記化1において、
Aは、1μm以下のコロイダルシリカ粒子であり、
mは、1~5の整数であり、
X及びZは、それぞれ独立して窒素、硫黄及び酸素から選択され、
Yは、水素、アミン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、及びチオエーテル基から選択され、
nは、0~5の整数であり、
及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、ハロゲン、ハロアルキル基、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、1~5の整数である。
【0010】
また、本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物を用いることによって、エッチング条件でシリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることができる。
【0012】
また、本願に用いる上記化1で表される化合物は、コロイダルシリカ粒子らの間にアミノ酸系、チオエステル系(thioester)またはエステル系基を導入することによって、シリコン系パーティクルの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を概略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0015】
以下では、本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液について詳説する。
【0016】
本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記化1で表される化合物を含むシリコン窒化膜エッチング溶液が提供される。
【0017】
[化1]
【0018】
上記化1において、
Aは、1μm以下のコロイダルシリカ粒子であり、
mは、1~5の整数であり、
X及びZは、それぞれ独立して窒素、硫黄及び酸素から選択され、
Yは、水素、アミン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、及びチオエーテル基から選択され、
nは、0~5の整数であり、
及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、ハロゲン、ハロアルキル基、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、1~5の整数である。
【0019】
本願におけるC-C作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、C-Cアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキル等を含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖または分鎖アルキルは、これの主鎖に10個以下(例えば、C-C10の直鎖、C-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0020】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルであってもよい。
【0021】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)は、他に定義されない限り、それぞれアルキルの環状構造に理解されるだろう。
【0022】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクルロヘプチル等がある。
【0023】
本願におけるアルコキシは、-O-(アルキル)基と-O-(非置換されたシクロアルキル)基を両方とも意味するものであって、一つ以上のエーテル基及び1~10個の炭素原子を有する。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を含むが、これに限定されるものではない。また、本願におけるチオール(thiol)及びチオエテール(thioether)は、有機硫黄化合物を意味し、具体的には、チオールは、-SH、チオエーテルは、-S-置換基を意味する。
【0024】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味し、ハロアルキルは、上述したハロゲンで置換されたアルキルを意味する。例えば、ハロメチルは、メチルの水素のうち少なくとも一つがハロゲンに取り替えられたメチル(-CHX、-CHX又は-CX)を意味する。
【0025】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、シリコン系パーティクルの発生を防ぐために、下記化1で表される化合物を含む。
【0026】
一般に、コロイダルシリカ粒子らは、互いに結合してシリコン系パーティクルとして成長する問題が生じる。シリコン系パーティクルは、シリコン基板に残留して、基板上に具現される素子の不良を引き起こすか、エッチング工程に用いられる装備に残留して装備の故障を引き起こし得る。
【0027】
本発明の上記化1で表される化合物のAは、大きさが1μm以下のコロイダルシリカ(colloid silica)粒子を示す。コロイダルシリカ粒子は、負電荷を帯びる非晶質シリカ(SiO)粒子が水または有機溶剤のような液体でコロイド状態を示す。
【0028】
ここで、本発明の上記化1で表される化合物は、コロイダルシリカ粒子間にアミノ酸系(amino
acid)、チオエステル系(thioester)またはエステル系(ester)基を導入することで、前記シリカ粒子らが互いに結合して凝集する現象を抑制することができる。すなわち、コロイダルシリカ粒子間をアミノ酸系、チオエステル系またはエステル系基で連結して、加水分解反応を抑制することによって、Si-O-Si結合の生成を防ぐことができる。これによって、化1で表される化合物が含まれたシリコン窒化膜エッチング溶液は、常温でコロイダルシリカ粒子の大きさが一定に維持されて、シリコン窒化膜エッチング溶液の保管性が向上することができる。
【0029】
また、本発明の上記化1で表される化合物は、高温のエッチング条件でコロイダルシリカ粒子らとアミノ酸系、チオエステル系(thioester)またはエステル系基との結合が切れることがある。これによって、上記化1で表される化合物は、再び小さいコロイダルシリカ粒子に変わり、前記シリカ粒子らは、シリコン基板と結合して保護膜を形成することで、リン酸水溶液からシリコン基板を効果よく保護することができる。
【0030】
前記コロイダルシリカ粒子らと結合することができるアミノ酸系基は、一例として、アスパラギン酸(aspartic
acid)、グルタミン酸(glutamic acid)等があり、このとき、化1で表される化合物における前記X及びZは、窒素であり、前記Yは、アミンであってもよい。
【0031】
また、一例として、化1で表される化合物は、下記化2で表される化合物であってもよい。
【0032】
[化2]
【0033】
上記化2において、
nは、1~5の整数であり、
及びRは、C-C10のアルキル基であり、
A、m及びpは、上記化1に定義したとおりである。
【0034】
ここで、上記化2で表される化合物のR及びRは、炭素数が増加するほどさらに好ましい。具体的には、一実施例による本発明の化2で表される化合物間の反応は、メカニズム1またはメカニズム2に従って行うことができる。
【0035】
[メカニズム1]
【0036】
[メカニズム2]
【0037】
上記メカニズム1の化2で表される化合物では、R及びRが水素であり、上記メカニズム2の化2で表される化合物では、R及びRがイソプロピル(iso-propyl)である。上記メカニズム1、2で示したように、化1で表される化合物におけるR及びRの体積が大きくなるほど、立体障害(steric
hinderance)の効果が増加し得る。これによって、コロイダルシリカ粒子らが互いに結合して凝集する現象をより効果よく抑制することができる。
【0038】
また、エステル系基もコロイダルシリカ粒子らと結合することができ、このとき、化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であってもよい。
【0039】
[化3]
【0040】
上記化3において、
A、m及びpは、上記化1に定義したとおりである。
【0041】
上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に200~100,000ppmで存在することが好ましい。また、上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に200~60,000ppmで存在することがさらに好ましい。ここで、添加剤の含量は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に溶解された化1で表される化合物の量であって、ppmの単位に示したものである。
【0042】
例えば、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が5,000ppmで存在するということは、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に溶解された化1で表される化合物が5,000ppmであることを意味し得る。
【0043】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が200ppm
未満で存在する場合、エッチング条件下でシリコン化合物の量が十分でなく、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比の増加効果が微弱であり得る。
【0044】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が100,000ppmを超える場合、シリコン窒化膜エッチング溶液内のシリコン添加剤の飽和濃度の増加により、多量のシリコン系パーティクルが生成される問題が生じ得る。
【0045】
シリコン基板は、少なくともシリコン酸化膜(SiO)を含むことが好ましく、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(Si)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0046】
シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類等に応じて、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate
Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization
Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO-TEOS(O-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)等に言及し得る。
【0047】
ここで、リン酸水溶液は、シリコン窒化膜をエッチングするとともに、エッチング溶液のpHを維持して、エッチング溶液内に存在する様々な形態のシリコン化合物がシリコン系パーティクルに変化することを抑える成分である。
【0048】
一実施例において、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液は、60~90重量部で含まれることが好ましい。
【0049】
シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液の含量が60重量部未満である場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下して、シリコン窒化膜が十分にエッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチング工程の効率性が低下するおそれがある。
【0050】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、リン酸水溶液の含量が90重量部を超える場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度の増加量に比べて、シリコン酸化膜のエッチング速度の増加量が大きくて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良が引き起こされうる。
【0051】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1で表される化合物を含むことによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償するとともに、全体的なエッチング工程の効率を向上させるためにフッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0052】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0053】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つである。
【0054】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0055】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも一つのアルキル基を有するアンモニウムであって、最大4つのアルキル基を有し得る。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0056】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモルホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0057】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として一般に用いられるフッ化水素、またはフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液体状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0058】
本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【0059】
本製造方法によれば、少なくともシリコン窒化膜(SI)を含むシリコン基板上で、上述したエッチング溶液を用いてシリコン窒化膜に対する選択的エッチング工程を行うことによって半導体素子を製造することが可能である。
【0060】
半導体素子の製造に用いられるシリコン基板は、シリコン窒化膜(SI)を含むか、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(SI)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0061】
本発明による半導体素子の製造方法は、NAND素子の製造工程に適用されてもよい。より具体的には、NANDを形成するための積層構造体のうち、シリコン酸化膜に対する損失なく、シリコン窒化膜の選択的な除去が要求される工程ステップにおいて、上述したエッチング溶液を用いることで行うことができる。
【0062】
一例として、図1は、本発明によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を説明するための概略的な断面図である。
【0063】
図1を参照すれば、シリコン基板10上にシリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12とが交互に積層した積層構造体20上にマスクパターン層30を形成した後、異方性エッチング工程を介してトレンチ50が形成される。
【0064】
また、図1を参照すれば、積層構造体20内に形成されたトレンチ50領域を介して本発明によるエッチング溶液が投入され、これによって、シリコン窒化膜11がエッチングされて、シリコン酸化膜12とマスクパターン層30のみ残るようになる。
【0065】
すなわち、本発明は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上したエッチング溶液を用いることで、積層構造体20内のシリコン酸化膜12のエッチングを最小化して、十分な時間の間にシリコン窒化膜11を完全かつ選択的に除去することができる。その後、シリコン窒化膜11の除去された領域にゲート電極を形成するステップが含まれた後続工程を介して半導体素子を製造することができる。
【0066】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これによって本発明が制限されてはならない。
【0067】
実施例
エッチング溶液の製造
実施例1~5では、化1で表される化合物をリン酸水溶液に添加して、初基濃度が1,000ppmになるようにエッチング溶液を製造した。
【0068】
実施例1~5及び比較例1~2によるエッチング溶液組成物は、表1のとおりである。
【0069】
[表1]
【0070】
実験例
シリカ凝集粒子の大きさ測定
実施例1~5及び比較例2のシリカ粒子を常温(25℃)で時間経過によるシリカ凝集粒子の大きさを測定した。実施例1~5及び比較例2のシリカ粒子の初期大きさは、5nmで同一であり、シリカ凝集粒子らの大きさは、PSA(particle
size analyzer)を用いて測定した。測定されたシリカ凝集粒子の大きさは、下記表2のとおりである。
【0071】
[表2]
【0072】
上記表2に示したように、実施例1~5は、比較例2に比べて、シリカ粒子らの大きさが比較的に一定して維持されることを確認することができる。
【0073】
特に、上記表2に示したように、化1で表される化合物の置換基の体積が大きいほど、シリカ粒子らが結合して凝集する現象をさらに効果よく抑制できることを確認することができる。
【0074】
シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜のエッチング速度の測定
化1で表される化合物の初基濃度が200ppmになるようにエッチング溶液を製造したことを除いては、前記実施例1~5及び比較例1~2と同様なエッチング溶液を製造した。
【0075】
前記実施例1~5及び比較例1~2によるシリコン窒化膜エッチング溶液を、175℃で500Å厚みのシリコン酸化膜(thermal oxide layer)及びシリコン窒化膜を加熱されたエッチング溶液に浸漬して、10分間エッチングした。
【0076】
エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みは、エリプソメトリー(Nano-View、SE
MG-1000;Ellippsometery)を用いて測定しており、エッチング速度は、エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みの差をエッチング時間(10分)で除して算出した数値である。
【0077】
測定済みエッチング速度は、下記表3のとおりである。
【0078】
[表3]
【0079】
上記表3に示したように、実施例1~5のシリコン窒化膜エッチング溶液は、比較例1~2のシリコン窒化膜エッチング溶液に比べて、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を下げることができ、これによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上することを確認することができる。
【0080】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれは、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から外れない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等によって本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0081】
10 シリコン基板
11 シリコン窒化膜
12 シリコン酸化膜
20 積層構造体
30 マスクパターン層
50 トレンチ
図1