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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】壁面構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20240516BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E04B2/56 622L
E04B1/58 504L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020139000
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022035003
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】523242745
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義憲
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-023096(JP,Y1)
【文献】特開2003-176585(JP,A)
【文献】特開2017-089142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/00 - 2/70
E04B 2/88 - 2/96
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の柱(21)の間を塞ぐように壁材(11乃至13)を組み込み、さらに該壁材(11乃至13)の上部に横架材(31)を配置することで二本の該柱(21)を連結する壁面構造であって、
前記柱(21)の各側面のうち前記壁材(11乃至13)と接する面には、該壁材(11乃至13)の側端部を差し込むための案内溝(24)を形成してあり、
前記横架材(31)は連結具(51または52)を介して前記柱(21)に取り付けてあり、該連結具(51または52)は、その中央に位置する前板(55)と、該前板(55)に対して直交しており且つ該前板(55)の両側端部から突出する脚板(54)と、該脚板(54)の端部に接続しており且つ該脚板(54)と段差なく同方向に突出する側板(56)と、からなるコの字状であり、
前記柱(21)の各側面のうち前記案内溝(24)がある面には、前記前板(55)および前記脚板(54)を埋め込むため、該案内溝(24)の幅よりも大径の収容穴(25)を形成してあり、該前板(55)をボルト(77)で引き寄せることで前記連結具(51または52)を該柱(21)に取り付け、また該収容穴(25)の底面は、該案内溝(24)よりも深い位置にあり、
前記横架材(31)の端部には、前記側板(56)を差し込むため二列のスリット(36)を形成してあり、該スリット(36)と交差するように差し込む固定ピン(78)によって該横架材(31)を前記連結具(51または52)に取り付け、
前記柱(21)に前記連結具(51または52)を取り付けた状態において、前記前板(55)および前記ボルト(77)は、前記案内溝(24)の底面よりも深い位置に埋め込むほか、前記脚板(54)および前記側板(56)は、該案内溝(24)よりも外側に配置してあることを特徴とする壁面構造。
【請求項2】
前記壁材(12または13)の厚さは、前記案内溝(24)の幅よりも大きく、該壁材(12または13)の側端面中央には、該案内溝(24)に差し込む突出部(14)を形成してあり、該突出部(14)よりも外側には、前記側板(56)を通すためのスリット(16)を形成してあることを特徴とする請求項1記載の壁面構造。
【請求項3】
前記壁材(13)に前記固定ピン(78)を差し込むことで二本の前記柱(21)を連結することを特徴とする請求項2記載の壁面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築などにおいて、柱と横架材で構成される格子状の枠組みに壁材を組み込んだ壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築で広く普及している軸組構法では、柱や横架材などの部材を格子状に連結して骨格を構築しているが、部材同士の連結箇所の剛性には限度があるため、水平荷重に対する強度が不足しやすく、必要に応じて筋交いなどで補強している。また近年は、耐震性のほか、断熱性や遮音性なども重要視されており、柱と横架材などで構成される格子状の枠組みの全体に壁材を組み込むことがある。この壁材は、その目的から相応の厚さを有しており、仮に壁材を柱や横架材の側面に配置したならば、占有空間の増大が避けられない。そのため壁材は、柱や横架材で構成される枠組みの内周部に組み込むことが多い。
【0003】
本発明と関連のある先行技術の例として後記の特許文献が挙げられ、そのうち特許文献1では、木造建物における板壁の施工方法が開示されている。この技術は、寺社などの伝統的な木造軸組での施工や改修を想定したもので、二本の柱の間に力貫および力板を交互に積層して板壁を形成しているが、力貫は左右に二分割してあり、左右一対の力貫を所定の位置に組み込んだ後、双方を金輪継ぎなどで接合する。また柱の側面には、力貫および力板の端部を差し込むための縦溝を形成するほか、柱の上部表面を部分的に削り込み、柱の側面と縦溝を結ぶ切込部を形成することで、切込部から縦溝に向けて力板を差し込むことができる。この発明では、力貫を左右に二分割しているほか、力板を差し込むための切込部を形成してあり、力貫や力板を柱の真上から差し込む必要がなく、大がかりな解体作業を行うことなく改修を実施することができる。
【0004】
次の特許文献2では、耐久性や耐震性を向上可能な内壁耐力面材の取り付け構造が開示されている。この構造は、間柱に内壁耐力面材を取り付けるために開発されたもので、仮に内壁耐力面材の取り付けにネジや釘を用いたならば、サビや緩みの発生が避けられない。そこでこの文献では、内壁耐力面材に蟻溝部を形成するほか、間柱の側面に蟻ホゾ部を形成し、蟻溝部に蟻ホゾ部を挿入することで間柱に内壁耐力面材を取り付けている。したがってネジや釘が不要になり、耐久性が向上する。さらに蟻溝部と蟻ホゾ部との境界には意図的に間隙を確保してあり、この間隙に差し込み部材を圧入することで、間柱と内壁耐力面材が強固に固定され、耐震性が向上する。
【0005】
そのほか特許文献3については、壁材の組み込みとは直接的な関係のない技術であり、主幹部材および結合部材と称する二部材の連結に用いる木造建築部材用連結金物が開示されている。この連結金物は、金属板をプレス加工でコの字状に変形させたもので、その中央に位置するカップ状のホゾと、このホゾを挟み込みように配置される接続片と、で構成され、主幹部材に形成したホゾ穴にホゾを差し込み、さらにボルトとナットで連結金物を主幹部材に取り付ける。また結合部材には、接続片を差し込むための係合溝を形成してあり、係合溝に接続片を差し込んだ後、結合部材のピン打ち孔に留め具を打ち込むことで、結合部材が連結金物に取り付けられる。この連結金物は、左右一対の接続片がホゾだけで一体化された簡素な構造で、製造コストを抑制できるほか、結合部材については、係合溝とピン打ち孔だけを事前に形成すればよく、従来の連結金物に対し、結合部材に施す加工が簡素化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-301542号公報
【文献】特開2004-263478号公報
【文献】特開2008-169641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
柱と横架材で構成される枠組みの内周部に壁材を組み込む場合、施工時は、まず柱と横架材を連結して枠組みを構築し、その後、釘類や金具を用いて壁材を固定することになるが、必然的に壁材の外縁に沿って多数の釘類や金具を配置することになり、施工時の作業量が増大する。そこで、あらかじめ柱に溝を加工しておき、現地で柱を据え付けた後、吊り上げた壁材を徐々に下降させ、壁材の側端部を柱の溝に差し込み、壁材の組み込みを終えた後に横架材を取り付けるならば、壁材を固定する作業を省略できる。ただしこの場合、壁材の移動を妨げないよう、壁材を組み込む前の時点では、横架材を取り付けるための準備作業を行うことが難しくなる。したがってこの点に関しては、施工時の作業量が増大することになるが、何らかの対策を講じることで、この作業量を抑制できることが望ましい。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、柱と横架材との連結構造を特定することで、施工時の作業量を抑制可能な壁面構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、二本の柱の間を塞ぐように壁材を組み込み、さらに該壁材の上部に横架材を配置することで二本の該柱を連結する壁面構造であって、前記柱の各側面のうち前記壁材と接する面には、該壁材の側端部を差し込むための案内溝を形成してあり、前記横架材は連結具を介して前記柱に取り付けてあり、該連結具は、その中央に位置する前板と、該前板に対して直交しており且つ該前板の両側端部から突出する脚板と、該脚板の端部に接続しており且つ該脚板と段差なく同方向に突出する側板と、からなるコの字状であり、前記柱の各側面のうち前記案内溝がある面には、前記前板および前記脚板を埋め込むため、該案内溝の幅よりも大径の収容穴を形成してあり、該前板をボルトで引き寄せることで前記連結具を該柱に取り付け、また該収容穴の底面は、該案内溝よりも深い位置にあり、前記横架材の端部には、前記側板を差し込むため二列のスリットを形成してあり、該スリットと交差するように差し込む固定ピンによって該横架材を前記連結具に取り付け、前記柱に前記連結具を取り付けた状態において、前記前板および前記ボルトは、前記案内溝の底面よりも深い位置に埋め込むほか、前記脚板および前記側板は、該案内溝よりも外側に配置してあることを特徴とする壁面構造である。
【0010】
本発明による壁面構造は、所定の距離を隔てて隣接する二本の柱の間を塞ぐように壁材を組み込むほか、この柱同士を横架材で連結しており、柱と横架材で構成される枠組みを壁材で補強するもので、この二本の柱の下部については、土台や基礎などで強固に据え付けられているものとする。なお柱や横架材の配置を増やすことで、壁面構造を上下方向や左右方向に連続させることもできる。また柱や横架材については、各種木材を想定しているが、壁材については、合板などの木材のほか、不燃処理が施された段ボールなどを用いることもできる。
【0011】
隣接する二本の柱の側面には、壁材の側端部を差し込むため、上下方向に伸びる案内溝を形成する。当然ながら案内溝を形成する面は、柱の各側面のうち、相手方の柱と対向する面である。そのため壁材は、柱と横架材で構成される枠組みの内周部に配置されることになる。また壁材の側端部を案内溝に差し込んだ後は、必然的に壁材が柱から離脱不能になり、別途に壁材を固定する手段は不要である。なお壁材の幅(両側端面間の距離)は、対向する案内溝の底面同士の間隔に合わせてあり、壁材は案内溝で緩みなく保持されるものとする。
【0012】
横架材は、壁材の上部に配置し、二本の柱を連結するもので、柱と横架材によって格子状の枠組みが構築される。また壁材と横架材は、隙間なく接触させることを前提としており、横架材の底面にも柱と同様に案内溝を形成し、そこに壁材の上端部を差し込むこともできる。ただし強度などに問題がなければ、横架材の案内溝を省略し、壁材の上面と横架材の底面を単純に接触させても構わない。そのほか二本の柱の間において、横架材を上下方向に複数本配置することがあり、この場合、柱と横架材は梯子状に並ぶことになる。
【0013】
連結具は、柱に横架材を取り付けるためのもので、必然的に柱の側面と横架材の端面との境界で使用される。この連結具は、前板と脚板と側板で構成されるコの字状で、中央に位置する前板を挟み込むように脚板と側板が配置される。そして前板は、柱との接続を担う部位で、その外縁は円形を基調としており、柱の側面に形成した収容穴に埋め込む。また前板の左右両側端部から脚板が突出している。脚板は、前板に対してほぼ直交しており、当然ながら左右いずれも同じ方向に突出する。なお脚板の幅(脚板の突出方向に対して直交する方向の長さ)は、前板の直径よりも小さく、前板の左右から帯状の脚板が突出した外観になる。そのほか前板は、一個の連結具に対して一箇所だけとすることもあるが、柱の長手方向に沿って複数箇所とすることも多い。
【0014】
連結具の側板は、脚板の端部に接続する板状の部位で、必然的に脚板と段差なく並ぶことになるが、脚板よりも大きく、横架材に形成したスリットに差し込まれる。そのため側板は、脚板と同様、前板を挟み込むように同形状のものが左右に二枚配置されるほか、左右の側板は、脚板と前板を介して一体化されることになる。なお一個の連結具について、前板が複数箇所になる場合、側板を介して前板同士が一体化される。また、横架材のスリットに側板を差し込んだ後、横架材の側面からスリットと交差するように固定ピンやボルトなどを差し込むと、横架材が連結具に取り付けられる。
【0015】
収容穴は、柱の側面に形成する有底の穴であり、これに連結具の前板を埋め込み、さらに前板をボルトで引き寄せることで、柱と連結具が一体化される。また収容穴は、必然的に案内溝と同じ側面に形成され、しかも双方は重なるように配置することになるが、収容穴の直径は、案内溝の幅よりも大きく、案内溝の両側が収容穴で削り取られる。加えて収容穴は、案内溝よりも深い位置に到達させる。そして連結具の前板を収容穴に埋め込むと、脚板も収容穴に入り込むが、脚板の端部は収容穴から抜け出すよう、各部の寸法を調整する。そのため側板は、収容穴に入り込むことなく、柱の側面から突出するように配置される。なお連結具を引き寄せるボルトの軸部は、収容穴の底面から伸びる連通穴に差し込まれる。
【0016】
柱に連結具を取り付けた際、対向する側板同士の隙間は、案内溝の幅と同等、もしくは案内溝の幅よりも大きくする。また連結具の前板と、連結具を引き寄せるボルトのいずれも、案内溝の底面よりも深い位置に埋め込む。このように連結具の形状や配置を考慮することで、柱に連結具を取り付けた後も、連結具やボルトが案内溝を塞ぐことを回避でき、案内溝に差し込まれた壁材の移動を妨げることもない。そのため、あらかじめ柱に連結具を取り付けておき、現地で柱を据え付けた後、柱の上方から壁材を組み込むことができ、しかも、その後の横架材の取り付けを素早く行うことができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、壁材の厚さを増大させた場合を想定したもので、壁材の厚さは、案内溝の幅よりも大きく、壁材の側端面中央には、案内溝に差し込む突出部を形成してあり、この突出部よりも外側には、側板を通すためのスリットを形成してあることを特徴とする。壁材の厚さは、柱の案内溝の幅と一致させることもあるが、建築物の性能向上などのため、この発明のように、壁材の厚さを案内溝の幅よりも大きくすることがある。この場合、壁材の側端面は単純な平面状に仕上げるのではなく、中央だけが凸状に突き出した突出部を形成する。突出部は、壁材の側端面の長手方向に沿って伸びており、突出部だけが柱の案内溝に差し込まれる。また壁材の側端面において、突出部よりも外側は、柱の側面と対向する単純な平面状になるが、この面には、連結具の側板を通すため、スリットを形成する。
【0018】
請求項3記載の発明は、壁材の厚さを増大させた場合の具体例を示すもので、壁材に固定ピンを差し込むことで二本の柱を連結することを特徴とする。壁材の厚さを増大させ、壁材と横架材の双方の厚さを一致させた場合、この発明のように、壁材が横架材の機能を兼ね備えることも可能である。その結果、横架材を省略することができ、壁材で二本の柱を連結することになる。このように壁材が横架材の機能を兼ね備える場合、壁材から連結具に向けて固定ピンを差し込み、壁材自体を連結具に取り付けることになる。なおこの壁材には、連結具の側板を差し込むため、スリットを形成する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明のように、二本の柱の間に壁材を組み込むほか、この二本の柱を横架材で連結する壁面構造において、柱の側面には、壁材の側端部を差し込む案内溝を形成するほか、柱に横架材を取り付けるための連結具は、前板と脚板と側板で構成し、前板をボルトで引き寄せる。そして、このボルトおよび連結具の前板は、案内溝よりも深い位置に埋め込むほか、連結具の脚板および側板は、案内溝よりも外側に配置することで、連結具やボルトが案内溝を塞ぐことを回避でき、案内溝に差し込まれた壁材の移動を妨げることもない。そのため、あらかじめ柱に連結具を取り付けておき、現地で柱を据え付けた後、柱の上方から壁材を組み込むことができ、しかも取り付け済みの連結具により、横架材を介して二本の柱を簡単に連結することができ、施工時の作業量を抑制可能である。
【0020】
加えて本発明では、壁材の側端部が柱の案内溝に差し込まれるため、柱と壁材が連続的に一体化し、柱や横架材で構成される枠組みが強化され、水平荷重のほか、壁面構造をねじるような荷重に対しても、強力に対抗することができる。また、壁材の側端部が案内溝に差し込まれることから、必然的に遮光性や気密性が確保され、室内環境の向上も期待できる。
【0021】
請求項2記載の発明のように、壁材の厚さを柱の案内溝の幅よりも大きくするほか、壁材の側端面中央には、案内溝に差し込むための突出部を形成することで、壁面構造の強度や断熱性などを一段と向上させることができる。なおこの壁材については、木材ではなく、不燃処理が施された段ボールなどを用いることで、軽量化やコストダウンを期待できる。
【0022】
請求項3記載の発明のように、壁材に固定ピンを差し込むことで二本の柱が連結される構造とすることで、横架材が不要になる。したがってその分のコストダウンを期待できるほか、施工時の作業量を一段と抑制できる。また壁材と横架材との境界がなくなるため、断熱性や遮音性などの向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による壁面構造の形態例を示す斜視図であり、左右に並ぶ二本の柱の間を塞ぐように壁材を組み込むほか、壁材の上部に横架材を取り付けて二本の柱を連結する。なお図の左側は、壁面構造の全体を描いてあり、図の右側は、柱と横架材との連結箇所を拡大して描いてある。
図2図1の壁面構造において、柱に連結具を取り付けた状態を示す斜視図であり、図の下方では、連結具を取り付ける過程を断面で描いてある。
図3図2の後の状態を示す斜視図であり、図の上方は壁材を組み込む途中段階で、図の下方は壁材の組み込みを終えた段階である。
図4図3の後、横架材の取り付けを終え、壁面構造が完成した最終段階を示す斜視図である。
図5図4の壁面構造を上下左右に拡張した場合を示す斜視図である。
図6】壁材の厚さを増大させた場合の壁面構造を示す斜視図である。
図7図6の壁面構造において、横架材の取り付けを終えた最終段階を示す斜視図である。
図8図6の壁面構造を一部改良し、壁材が横架材の機能を兼ね備えた場合を示す斜視図である。
図9】本発明で用いる連結具の形状例を示す斜視図であり、ここでは前板を一箇所だけとしている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による壁面構造の形態例を示し、左右に並ぶ二本の柱21の間を塞ぐように壁材11を組み込むほか、壁材11の上部に横架材31を取り付けて二本の柱21を連結する。なお図の左側は、壁面構造の全体を描いてあり、図の右側は、柱21と横架材31との連結箇所を拡大して描いてある。この図の柱21や横架材31などは、建築物の骨格を構築するもので、二本の柱21は所定の距離を隔てて直立しており、両柱21の下部は、土台41で連結されている。また壁材11の厚さは、柱21の横断面の一辺よりも小さく、壁材11の側端部は、柱21の側面に加工した案内溝24に差し込む。案内溝24は、柱21の各側面のうち、壁材11が配置される一面だけに加工してあり、柱21の長手方向に沿って全域に到達している。さらに案内溝24は、壁材11を緩みなく保持できる幅としてあるほか、壁材11の幅(両側端面間の距離)は、対向する案内溝24の底面同士の間隔に合わせてあり、壁材11の両側端部が案内溝24に差し込まれると、壁材11は柱21から離脱不能になる。
【0025】
横架材31は、二本の柱21の上部同士を連結する部材で、土台41と平行に配置され、連結具51を介して柱21に取り付けられる。そのため横架材31の長さは、二本の柱21の間隔に合わせてあり、横架材31の両端面が柱21の側面に接触する。そして、横架材31を介して柱21同士が連結されることで、土台41と柱21と横架材31による格子状の枠組みが構築される。また壁材11は、土台41と柱21と横架材31による枠組みの内周部の全域を塞ぐことを想定しており、壁材11の下部は土台41に接触し、壁材11の上部は横架材31に接触するが、土台41の上面には壁材11を差し込むための案内溝44を加工してあり、横架材31の底面にも同様の案内溝34を加工してあり、壁材11の外縁部全体が案内溝24、34、44に差し込まれる。なお横架材31に関しては、壁材11を上下両方に配置することを考慮し、その上面にも案内溝34を加工してある。
【0026】
連結具51は、柱21と横架材31との境界に配置され、柱21に横架材31を取り付ける役割を担い、鋼板を二箇所で折り曲げてコの字状に形成したものである。この連結具51は、中央に位置する前板55と、前板55の左右に並ぶ脚板54および側板56と、で構成され、個々の前板55の外縁については、その上下二箇所を円弧状に仕上げてあるほか、前板55の左右両側端部から脚板54が突出している。脚板54は前板55に対してほぼ直交しており、左右の脚板54は同じ方向に突出している。さらに前板55は、一個の連結具51について、上下二箇所に配置してある。また、前板55から突出する脚板54の端部は、側板56に接続している。側板56は、脚板54と段差なく並ぶほか、側板56は上下方向に伸びており、側板56を介して上下二箇所の前板55が一体化している。そのほか左右に並ぶ二枚の側板56は同形状であり、しかも側板56同士の隙間は、案内溝24の幅と等しくしてある。
【0027】
このように本発明で用いる連結具51は、前板55と側板56が直に接触することなく、その間に脚板54を介在させており、しかも脚板54は、前板55の上下外縁に沿う円よりも内側に配置してある。また前板55は、柱21の側面に加工した収容穴25に埋め込まれ、対する側板56は、横架材31の端部に加工したスリット36に差し込まれる。収容穴25は円断面であり、その中心は案内溝24の中央に揃えてあり、さらに収容穴25の直径は案内溝24の幅よりも大きいため、収容穴25は案内溝24よりも外側に到達しているほか、収容穴25は案内溝24よりも深い。なお収容穴25は、前板55に応じて配置するため、ここでは一本の柱21について、上下二箇所に加工してある。
【0028】
柱21の側面に連結具51を配置し、連結具51の前板55を収容穴25に埋め込むと、脚板54も収容穴25に入り込むが、側板56についてはその構成上、収容穴25や案内溝24に入り込むことがなく、柱21の側面から突出するように配置される。このように、前板55と側板56との間に脚板54を挟み込むことで、前板55を収容穴25の底面に接触させることができる。また収容穴25の直径は、前板55の上下外縁に沿う円に合わせてあり、埋め込まれた前板55の外縁は収容穴25の内周面に接触するため、連結具51の変位が規制される。
【0029】
柱21に連結具51を取り付けるため、ボルト77を用いる。ボルト77は、前板55から柱21に向けて差し込み、その先端部を柱21の反対面に到達させ、そこにワッシャ76を組み込み、さらにナット75を螺合させる。そしてボルト77を締め付けると、ボルト77の頭部が前板55を押圧するため、前板55が収容穴25の底面に密着し、柱21に連結具51が取り付けられる。なおボルト77を差し込むため、前板55の中心に固定穴57を設けてあるほか、収容穴25の底面の中心には、柱21を貫く連通穴27を加工してある。またナット75とワッシャ76を埋め込むため、収容穴25の反対面には、連通穴27と同心でザグリ26を加工してある。
【0030】
柱21に連結具51を取り付けると、その側板56は柱21の側面から突出し、これを差し込むため、横架材31の端部には二列のスリット36を加工してある。またスリット36に側板56を差し込んだ後、連結具51に横架材31を取り付けるため、横架材31の側面から固定ピン78を差し込む。この差し込まれた固定ピン78は、側板56と交差し、摩擦によって横架材31に固定される。このように固定ピン78を差し込むため、横架材31の側面には、スリット36と交差する側穴38を加工してあるほか、側板56には、ピン穴58とピン溝59を設けてある。なお、本発明と無関係の汎用の連結具では、横架材の端部に二列のスリットを加工するほか、この二列のスリットの間を部分的に削り取る必要がある。しかし本発明の連結具51では、その前板55や脚板54が柱21に埋め込まれるため、このような削り取りは不要であり、作業量が削減される。
【0031】
ボルト77を用いて柱21に連結具51を取り付けると、その側板56は柱21の側面から突出するが、側板56は案内溝24よりも外側に配置される。しかも前板55を押圧するボルト77の頭部は、案内溝24の底面より深い位置に埋め込まれる。その結果、連結具51およびボルト77が案内溝24を塞ぐことを回避でき、柱21に連結具51を取り付けた後も、案内溝24に差し込まれた壁材11の移動を妨げることはない。
【0032】
図2は、図1の壁面構造において、柱21に連結具51を取り付けた状態を示し、図の下方では、連結具51を取り付ける過程を断面で描いてある。図の下方のように、直立させた連結具51を柱21の側面に配置し、その前板55を収容穴25の底面に接触させた後、連結具51の固定穴57から柱21の連通穴27に向けてボルト77を差し込み、連通穴27を抜けたボルト77の先端部にワッシャ76を組み込み、さらにナット75を螺合させて締め付けると、前板55が収容穴25の底面に密着し、柱21に連結具51が取り付けられ、併せてワッシャ76とナット75は、ザグリ26に埋め込まれる。そして、左右それぞれの柱21に連結具51を取り付けた後、吊り上げた壁材11を柱21の上方に配置し、左右の柱21の間に壁材11を組み込んでいく。
【0033】
収容穴25は案内溝24よりも大きいため、連結具51の脚板54は案内溝24よりも外側に配置することができ、側板56についても同様である。その結果、柱21に連結具51を取り付けた際、連結具51の側板56の表裏両面のうち、裏面は柱21の案内溝24の側面と段差なく並ぶ。当然ながら左右二枚の側板56のいずれも、同様の配置となる。またボルト77の頭部は、案内溝24の底面よりの深い位置に埋め込まれる。そのため、壁材11の側端部を案内溝24に差し込んだ際も、連結具51やボルト77によって壁材11の移動が妨げられることはない。
【0034】
図3は、図2の後の状態を示し、図の上方は壁材11を組み込む途中段階で、図の下方は壁材11の組み込みを終えた段階である。連結具51の側板56は、案内溝24よりも外側に配置してある。そのためこの図の上方のように、壁材11の側端部を案内溝24に差し込み、壁材11を徐々に下降させる際、壁材11は二枚の側板56の間を通り抜けていく。なおこの時、側板56の裏面は壁材11と接触することもあるが、当然ながら壁材11の移動を妨げることはない。
【0035】
そしてこの図の下方のように、壁材11の組み込みを終えると、壁材11の上面は連結具51の下部に隣接しており、以降、連結具51を介して柱21に横架材31を取り付け、二本の柱21を連結する。なお横架材31の両端部にはスリット36を加工してあり、これに側板56を差し込み、横架材31の側穴38と連結具51のピン穴58を同心に揃えた後、側穴38から固定ピン78を差し込むと、横架材31の取り付けが完了する。この際、横架材31の底面中央の案内溝34には、壁材11の上端部が差し込まれる。
【0036】
図4は、図3の後、横架材31の取り付けを終え、壁面構造が完成した最終段階を示す。この図のように、柱21と横架材31との連結を終えると、土台41と柱21と横架材31によって格子状の枠組みが構築され、その内周部を壁材11で塞いでおり、枠組みの変形が抑え込まれる。なおこの状態において、壁材11の下端部は土台41の案内溝44に差し込まれ、壁材11の上端部は横架材31の案内溝34に差し込まれ、壁材11の側端部は柱21の案内溝24に差し込まれ、壁材11の外縁部全体が枠組みと強固に一体化する。そのため遮光性や気密性などに優れるほか、強度も向上する。しかも本発明では、壁材11の外縁に沿って釘類を打ち込むなど、手間の掛かる作業は不要である。
【0037】
図5は、図4の壁面構造を上下左右に拡張した場合を示す。柱21と横架材31で構成される格子状の枠組みは、柱21や横架材31を複数本配置することで、横方向にも上下方向にも拡張することができる。そのためこの図のように、柱21を三本以上配置するほか、上下に間隔を空けて複数本31の横架材31を配置し、柱21と横架材31などで構成される枠組み毎に壁材11を組み込むことも容易である。なお施工時は、まず柱21を土台41に据え付け、その後、下方の壁材11を組み込み、この壁材11の上に横架材31を取り付け、さらにこの横架材31の上に別の壁材11を組み込むことになる。
【0038】
図6は、壁材12の厚さを増大させた場合の壁面構造を示している。この図においても、柱21と連結具51は、先の図1と全く同じもので、壁材12の厚さだけが異なる。なおこの図の柱21の横断面は正方形であり、また壁材12の厚さは、柱21の横断面の一辺と等しく、二本の柱21の間に壁材12を組み込むと、双方は段差なく並ぶ。そして壁材12の側端面は単純な平面状ではなく、その中央に突出部14が形成されている。
【0039】
突出部14は、文字通り凸状に飛び出した部位で、これが壁材12の上下方向に伸びており、突出部14だけが柱21の案内溝24に差し込まれる。また壁材12を組み込む際、その移動を妨げないよう、壁材12の側端部にはスリット16を加工してある。スリット16は突出部14を挟み込むように形成され、スリット16の内部に連結具51の側板56が入り込むことで、壁材12が連結具51を通り抜け、最終的には連結具51の下方に壁材12を配置することができる。
【0040】
この図のように、壁材12の厚さを増大させた場合、その素材として木材を用いると、重量の増大によって取り扱いが難しくなる。そこで木材ではなく、段ボールなどの中空状の素材を用いることもできる。なお段ボールの場合、波状の中芯を多数積層させて所定の厚さを確保するほか、必要に応じて不燃処理などを施す。
【0041】
図7は、図6の壁面構造において、横架材31の取り付けを終えた最終段階を示す。壁材12の側端部にはスリット16を加工してあり、この中に連結具51の側板56が入り込むことができる。そのため柱21に連結具51を取り付けた後、二本の柱21の間に壁材12を組み込むことができ、その後に横架材31を取り付けると、土台41と柱21と横架材31の各側面は、壁材12の表裏面と段差なく並び、一つの大きな平面が形成される。この際、横架材31のスリット36と壁材12のスリット16は、その用途から段差なく上下に並ぶ。なおこの図の横架材31は、案内溝34を省略してあり、壁材12の上面と横架材31の底面が単純に接触している。
【0042】
図8は、図6の壁面構造を一部改良し、壁材13が横架材31の機能を兼ね備えた場合を示す。壁材13の厚さを増大させることで強度も向上するため、壁材13自体が横架材31の機能を兼ね備えることが可能であり、この図のように横架材31を省略し、壁材13自体を柱21に取り付けることもできる。この場合、壁材13には、あらかじめ所定の位置に側穴18を加工しておく。そして、側穴18を連結具51のピン穴58などと同心に揃えた後、側穴18から固定ピン78を差し込むことで、連結具51を介して柱21に壁材13が取り付けられる。
【0043】
図9は、本発明で用いる連結具52の形状例を示しており、ここでは前板55を一箇所だけとしている。このように前板55は、一個の連結具52で一箇所だけになることもあれば、複数が並ぶこともある。また側板56は、左右二枚とも同形状とするが、ピン穴58やピン溝59の配置や個数は、自在に決めることができる。ただし前板55と側板56が直に接触することはなく、その間に脚板54が介在する点は、これまでと同じである。そのため柱21に連結具52を取り付けると、その前板55と脚板54は収容穴25に埋め込まれ、側板56が柱21の側面に配置され、壁材11は二枚の側板56の間を通り抜けることができる。
【0044】
この図の連結具52の前板55の上部および下部には、当接板65を設けてある。当接板65は、二枚の側板56の間で円弧状に湾曲しており、これが収容穴25の内周面に接触することで、連結具52の変位を規制できる。さらに当接板65が収容穴25に接触することで、柱21と連結具52との間で垂直荷重を円滑に伝達することができ、ボルト77に作用する負荷が緩和される。また前板55の中心には、メネジ67を形成してある。そのためボルト77は、案内溝24の背後から連結具52に向けて差し込み、その先端部をメネジ67に螺合させて前板55を引き寄せ、柱21に連結具52を取り付ける。そのほかこの図の横架材31は、案内溝34を省略してあり、壁材11の上面と横架材31の底面が単純に接触することになる。
【符号の説明】
【0045】
11 壁材(柱よりも薄いもの)
12 壁材(柱と同じ厚さのもの)
13 壁材(横架材の機能を兼ね備えたもの)
14 突出部
16 スリット
18 側穴
21 柱
24 案内溝
25 収容穴
26 ザグリ
27 連通穴
31 横架材
34 案内溝
36 スリット
38 側穴
41 土台
44 案内溝
51 連結具(前板が上下二箇所)
52 連結具(前板が一箇所)
54 脚板
55 前板
56 側板
57 固定穴
58 ピン穴
59 ピン溝
65 当接板
67 メネジ
75 ナット
76 ワッシャ
77 ボルト
78 固定ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9