(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】シール部材取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/33 20160101AFI20240516BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20240516BHJP
【FI】
B60J10/33
B60J10/86
(21)【出願番号】P 2020139580
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】大三 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄高
(72)【発明者】
【氏名】林 真人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】沖野 真紘
(72)【発明者】
【氏名】李 磊
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029159(JP,A)
【文献】特開平11-227470(JP,A)
【文献】特開2016-203893(JP,A)
【文献】特表平10-505561(JP,A)
【文献】特開2003-191755(JP,A)
【文献】特開2018-152966(JP,A)
【文献】特開2012-240443(JP,A)
【文献】米国特許第10661643(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第103692889(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/33
B60J 10/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に設けられた車体開口部を開閉する開閉部材と、該開閉部材の周縁に設けられて前記車体開口部の周縁と前記開閉部材との間をシールするシール部材とを備えたシール部材取付構造であって、
前記開閉部材は、第1側壁、該第1側壁に対向する第2側壁、及び前記第1側壁と前記第2側壁とをつなぐ底壁により形成された取付溝を含み、
前記第1側壁は、前記第2側壁に向かって突出する、互いに間隔を空けて複数設けられた側壁凸部を含み、
前記シール部材は、本体部と、該本体部から車外側に向かって延びる、前記開閉部材に取り付けられるための取付部と、該本体部から車体開口部の周縁に向かって延びて前記車体開口部の周縁と前記開閉部材との間をシールするシールリップとを含み、
前記取付部は、前記本体部から前記開閉部材に向かって延びて前記取付溝に挿入される第1取付足部と、前記本体部から前記第1取付足部に並行して延びて前記第1取付足部と共に前記第2側壁を挟持する第2取付足部とを含み、
前記第1取付足部は、該第1取付足部から前記第2側壁側に突出する係止リップと、該係止リップと反対側に突出して前記側壁凸部と係合する係止凸部とを含み、
前記係止リップの基端部には、該係止リップの他の部分よりも薄い薄肉部が設けられており、
前記係止リップは、前記本体部に向かう力が負荷されることによって、前記第1取付足部に弾接する方向に撓むことが可能なように構成されていることを特徴とする、シール部材取付構造。
【請求項2】
前記第1側壁の前記側壁凸部における前記係止凸部と反対側の面には、基端部から先端部に向かうに従って前記第2側壁側に傾斜する第1傾斜面が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシール部材取付構造。
【請求項3】
前記第2側壁の先端部における前記第1取付足部側の面には、該先端部に向かうに従って前記第2取付足部側に傾斜する第2傾斜面が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のシール部材取付構造。
【請求項4】
前記係止リップが前記第1取付足部に弾接された状態において、前記係止リップの厚さ、前記第1取付足部の厚さ及び前記係止凸部の厚さの合計値をAとし、前記取付溝の開口幅の長さをBとしたときに、前記開口幅の長さBは、A≦Bとなるように構成されていることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載のシール部材取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシール部材の取付構造に関し、特に自動車の車体に設けられた開口部とその開口部を塞ぐ開閉部材との間をシールするシール部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車は、車体に設けられたドア開口部や給油口又は充電口等を構成する開口部を開閉するためのドアや給油口リッド又は充電口リッド等である開閉部材を備えている。そのような開閉部材によって開口部が閉じられた状態において、開口部の周縁と開閉部材の周縁との隙間から車体内に水滴や塵埃等が侵入することを防止する必要がある。そこで、通常、開口部の周縁と開閉部材の周縁との間には、それらの間をシールするシール部材が取り付けられている。従来のシール部材として、例えば、特許文献1にはドアの窓枠において、ガーニッシュに取り付けられて該ガーニッシュとドア又はボデーとの間をシールするシール部材が開示されている。
【0003】
特許文献1に示されるシール部材は、ガーニッシュに設けられた車外側壁、車内側壁及び底壁により形成された取付溝に取り付けられている。具体的には、シール部材は、取付部を含み、取付部は、取付溝に挿入される取付足部を含み、取付足部は、車外側突起と、該車外側突起に対して車両前後方向でオーバーラップしない位置に設けられた車内側突起とを含む。一方、取付溝は、第1取付溝及び第2取付溝を含み、第1取付溝は、車外側壁に設けられた車外側係止突起と、車内側壁に設けられた車内側係止突起とを含む。車外側係止突起及び車内側係止突起は、それぞれ前記取付足部の前記車外側突起及び前記車内側突起に係合して、前記取付足部の前記取付溝からの抜け方向への移動を規制するように構成されている。このように構成することにより、ガーニッシュに設けられた取付溝にシール部材を直接に取り付けることができて、その保持力も向上することが可能となる。
【0004】
また、ドア開口部の他に、給油口又は充電口等においては、例えば、特許文献2に、開閉部材に取り付けられて、該開閉部材と充電口の周縁部分との間の隙間をシールするシール部材が開示されている。ここで、シール部材は、中空状に形成されたウェザストリップからなり、充電口の周縁部分に沿って開閉部材に接着されることによって環状に取り付けられている(特許文献2の
図7を参照)。
【0005】
また、特許文献3には、充電口の開口周縁に円形のフランジ部が形成されて該フランジ部の周縁に沿って開閉部材に装着されて取り付けられるゴム製のシール部材が開示されている(特許文献3の
図9を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-029159号公報
【文献】特開2018-152966号公報
【文献】特開2012-240443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、上記のような開口部と開閉部材との間の隙間をシールするためのシール部材の取付構造においては、シール部材を開閉部材に取り付ける際の作業性を向上することができ、また開閉部材からシール部材を取り外してシール部材を交換できるようにすることが求められている。すなわち、開閉部材に対するシール部材の保持性を維持しつつ、シール部材を開閉部材に容易に取り付け及び取り外しができるシール部材の取付構造が求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献2のようにシール部材を開閉部材に接着させて取り付ける場合、接着材を用いてシール部材を開閉部材に取り付けることが考えられるが、接着材等の追加部材を用いると製造コストや取付工程が増加してしまう。また、シール部材を開閉部材に接着させて取り付けると、開閉部材からシール部材を容易に取り外すことが困難であり、シール部材の交換に関しては考慮されていない。また、特許文献3に記載のシール部材は、明示は無いものの開閉部材に接着され又は一体成形により装着されていると考えられる。接着されている場合は上記特許文献2と同様の問題があり、一体成形の場合であっても開閉部材からシール部材を取り外すことができず、その他に、製造コスト等の問題もある。これらの特許文献では開閉部材へのシール部材の取り付け作業性及び開閉部材に対するシール部材の保持性を向上することを目的にはしておらず、保持性を維持しつつシール部材を容易に開閉部材に取り付けるのに有利なシール部材の取付構造等について何ら開示されていない。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体に設けられた開口部の周縁と開閉部材の周縁との間の隙間をシールする互いに別体であるシール部材の開閉部材への取り付けの作業性を容易にすること、及び開閉部材に対するシール部材の保持性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明では開閉部材の取付溝に挿入されるシール部材の第1取付足部に係止リップ及び係止凸部を設けた。
【0011】
具体的に、本発明に係るシール部材の取付構造は、自動車の車体に設けられた車体開口部を開閉する開閉部材と、該開閉部材の周縁に設けられて前記車体開口部の周縁と前記開閉部材との間をシールするシール部材とを備えたシール部材取付構造であって、前記開閉部材は、第1側壁、該第1側壁に対向する第2側壁、及び前記第1側壁と前記第2側壁とをつなぐ底壁により形成された取付溝を含み、前記第1側壁は、前記第2側壁に向かって突出する、互いに間隔を空けて複数設けられた側壁凸部を含み、前記シール部材は、本体部と、該本体部から車外側に向かって延びる、前記開閉部材に取り付けられるための取付部と、該本体部から前記車体開口部の周縁に向かって延びて前記車体開口部の周縁と前記開閉部材との間をシールするシールリップとを含み、前記取付部は、前記本体部から車外側に向かって延びて前記取付溝に挿入される第1取付足部と、前記本体部から前記第1取付足部に並行して延びて前記第1取付足部と共に前記第2側壁を挟持する第2取付足部とを含み、前記第1取付足部は、該第1取付足部から前記第2側壁側に突出する係止リップと、該係止リップと反対側に突出して前記側壁凸部と係合する係止凸部とを含み、前記係止リップは、前記本体部に向かう力が負荷されることによって、前記第1取付足部に弾接する方向に撓むことが可能なように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るシール部材取付構造によると、開閉部材に設けられた取付溝に直接シール部材を取り付けることが可能であるため、接着材等の追加部材や一体成形等を必要とせず、シール部材の開閉部材への取付作業性を向上することができる。また、本発明に係るシール部材取付構造では、第1取付足部に該第1取付足部から第2側壁側に突出する係止リップが設けられている。当該係止リップは、本体部に向かう力が負荷されることによって第1取付足部に弾接する方向に撓むことが可能であるため、第1取付足部の取付溝への挿入時に、係止リップは弾接する第2側壁からの本体部方向への圧力を受けることとなり、第1取付足部に弾接する方向に撓む。これにより、挿入時にシール部材に掛かる抵抗力を低減できて、狭い開口幅の取付溝に対して小さい圧力であっても第1取付足部を取付溝に容易に挿入することができ、取付作業性を向上することができる。さらに、第1取付足部には、係止リップと反対側に突出して側壁凸部と係合する係止凸部が設けられている。従って、第1取付足部が取付溝に挿入された状態において、上記係止リップと第2側壁との弾接に加えて係止凸部が側壁凸部と係合することで、第1取付足部の取付溝からの抜け方向への移動を規制することができ、その結果、互いに別体である開閉部材に対するシール部材の保持性を向上することができる。
【0013】
本発明に係るシール部材取付構造において、前記第1側壁の前記側壁凸部における前記係止凸部と反対側の面には、基端部から先端部に向かうに従って前記第2側壁側に傾斜する第1傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0014】
このようにすると、第1取付足部の取付溝への挿入時に、第1傾斜面が第1取付足部の取付溝への挿入時の係止凸部の側壁凸部への乗り越え易さを向上させることができる。
【0015】
本発明に係るシール部材取付構造において、前記第2側壁の先端部における前記第1取付足部側の面には、該先端部に向かうに従って前記第2取付足部側に傾斜する第2傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0016】
このようにすると、第1取付足部が取付溝へ挿入される際に、第2傾斜面が、係止リップが撓むようにガイドすることができる。
【0017】
本発明に係るシール部材取付構造において、前記係止リップの基端部には、該係止リップの他の部分よりも薄い薄肉部が設けられていることが好ましい。
【0018】
このようにすると、係止リップが第2側壁からの本体部方向への圧力を受けた際に、係止リップの撓みの支点となる基端部に薄肉部が設けられていることで、狭い開口幅の取付溝に対してより小さい圧力であっても係止リップの第1取付足部に弾接する方向への撓みを促すことができる。
【0019】
本発明に係るシール部材取付構造において、前記係止リップが前記第1取付足部に弾接された状態において、前記係止リップの厚さ、前記第1取付足部の厚さ及び前記係止凸部の厚さの合計値をAとし、前記取付溝の開口幅の長さをBとしたときに、前記開口幅の長さBは、A≦Bとなるように構成されていることが好ましい。
【0020】
このようにすると、狭い開口幅の取付溝に対してより小さい圧力であっても係止リップを第1取付足部に弾接する方向に撓ませることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るシール部材取付構造によると、互いに別体である開閉部材に対するシール部材の保持性を維持しつつ、シール部材の開閉部材への取り付けの作業性を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】充電口を備える自動車の左側側面を示す図である。
【
図2】
図1に示す自動車の充電口の構造を説明するための斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る充電口リッドの上縁部の構造を示す
図2の一点鎖線で囲む領域における正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るシール部材取付構造の断面図であり、
図3のIV-IV線における断面を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るシール部材取付構造の断面図であり、
図3のV-V線における断面を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るシール部材取付構造の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法又はその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1に示す自動車において、1は電気自動車であり、2は車体、3はフロントドア、4はリヤドア、5は車体を構成するアウタパネル、10は車体開口部であり、ここでは具体的に自動車の充電口開口部を示す。また、20は当該充電口開口部10を開閉するための開閉部材である充電口リッドである。
【0025】
図2に示すように、
図1に示す自動車のリヤドア4よりも後方のアウタパネル5には、車外側に開口する略四角形状の充電口開口部10が設けられている。充電口開口部10には、インレットボックス11が収容されており、車体2を構成するアウタパネル5に対して、ビス等の固定手段により、取付られている(図示省略)。また、インレットボックス11は交流電力用の充電インレット12と、直流電力用の充電インレット13とを含んで構成される。インレットボックス11が収容された充電口開口部10には、充電口開口部10と略同一形状で該充電口開口部10を開閉する充電口リッド20がヒンジ部14を介して連結されている。充電口リッド20の外側は、車体2のアウタパネル5と同様の金属製のパネル部材である、充電口リッドアウター30からなり、充電口開口部10が閉じられた状態では車体2のアウタパネル5の外面と、充電口リッドアウター30の外面とは面一となるように構成されている(
図4及び
図5を参照)。一方、充電口リッドアウター30の内側には、樹脂製の充電口リッドインナー40が設けられており、充電口リッドインナー40は充電口リッドアウター30と共に開閉動作し、開閉部材としての充電口リッド20を構成するものである。充電口リッドインナー40の上縁部には、充電口開口部10と充電口リッドアウター30の間の隙間からの水滴や埃等の侵入を防止するために、充電口リッド20の上縁部とインレットボックス11の上縁部11aとの間をシールするシール部材50が取り付けられている。ここで本実施形態では、インレットボックス11は車体2ではなく、車体2に取付けられている一部材であるものの、充電口リッド20のように開閉する部材ではないため、インレットボックス11の上縁部11aは、車体2の充電口開口部10の周縁11aとみなして、説明する。なお、本実施形態では、充電口開口部10はリヤドア4よりも後方のアウタパネル5に設けられているが、これに限らず、リヤドア4よりも前方のアウタパネル5に設けられてもよい。また、充電口開口部10の形状も特に限定はされない。
【0026】
以下に、本発明の一実施形態に係るシール部材50の取付構造について詳細に説明する。まず、シール部材50の取付構造のうち、本発明の一実施形態に係る充電口リッドインナー40について
図3~
図5を参照しながら説明する。なお、
図3は、本発明の一実施形態に係る充電口リッド20の上縁部の構造を示す図であり、
図2の一点鎖線で囲む領域における正面図である。また、
図4は
図3のIV-IV線における断面を示し、
図5は
図3のV-V線における断面を示している。
図3に示すように、本実施形態に係る充電口リッドインナー40は、充電口リッドアウター30の内側に取り付けられている。特に、充電口リッドインナー40の上縁部には、シール部材50を取り付けるための取付溝41が形成されている。
【0027】
本実施形態に係る充電口リッドインナー40の取付溝41は、第1側壁41aと該第1側壁41aに対向する第2側壁41bとそれらをつなぐ底壁41cとにより形成されている。当該取付溝41は、
図3に示すように、第1取付溝42及び第2取付溝43の2種の取付溝が充電口リッドインナー40の上縁部に沿って交互に配置されてなる。第1取付溝42は、
図4に示すように、第1側壁41aと該第1側壁41aに対向する第2側壁41bとそれらをつなぐ底壁41cとにより形成されている。第2取付溝43は、
図5に示すように、第1側壁41aと該第1側壁41aに対向する第2側壁41bのみで形成されており、第2取付溝43では、第1側壁41aの先端部から第2側壁41bの付根部に亘って貫通孔が設けられている。また、第2取付溝43において、第1側壁41aにおける上記貫通孔に隣接する端部には第2側壁41bに向かって突出する側壁凸部43aが設けられている。
【0028】
次に、本実施形態に係る充電口リッドインナー40に取り付けられるシール部材50について
図4~
図6を参照しながら説明する。
図4~
図6に示すように、本実施形態に係るシール部材50は、本体部51と、該本体部51からインレットボックス11の上縁部11aに向かって延びてインレットボックス11の上縁部11aと充電口リッドインナー40の上縁部との間をシールするシールリップ52と、本体部51から車外側に向かって延びて充電口リッドインナー40に取り付けられるための取付部53とによって形成されている。取付部53は、本体部51から車外側に向かって延びて取付溝41に挿入される第1取付足部54と、本体部51から第1取付足部54に並行して延びて第1取付足部54とともに第2側壁41bを挟持する第2取付足部55とを有する。第1取付足部54は、該第1取付足部54から第2側壁41b側に突出して第2側壁41bと弾接する係止リップ54aと、該係止リップ54aと反対側に突出して第1側壁41aの側壁凸部43aと係合する係止凸部54bとを含む。係止リップ54aは、後に説明するようにシール部材50の充電口リッドインナー40への取付時に、係止リップ54aが第1取付足部54に弾接する方向に撓むことが可能に構成されている。
【0029】
本実施形態に係るシール部材50は、非発泡材料によって形成されている。ただし、シール部材50の材料としては、ゴム様弾性材料であれば、特に限定はされないが、ゴム材料としては、例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)を用いることができる。また、樹脂材料としては、例えばTPE(熱可塑性エストラマー)を用いることができる。さらに、シール部材50は、断面形状の全体が、非発泡材料の場合を例示したが、断面形状の部位ごとに、必要に応じて、発泡材料を使用してもよい。
【0030】
次に、本実施形態に係る充電口リッドインナー40にシール部材50が取り付けられた取付構造について説明する。
図4~
図6に示すように、シール部材50は、第1取付足部54が充電口リッドインナー40の取付溝41に挿入されることで充電口リッドインナー40に取り付けられる。取付溝41は、上述のように、第1取付溝42及び第2取付溝43の2種の異なる形状の取付溝を有しており、取付部53との係合の形態は互いに異なる。
【0031】
図4に示すように、第1取付溝42において、第1取付足部54が第1取付溝42に挿入された状態において、係止リップ54aは第2側壁41bに弾接されており、第1取付足部54と第2取付足部55とによって第2側壁41bを挟持する。
【0032】
一方、
図5に示すように、第2取付溝43において、上述の通り第1側壁41aには第2側壁41bに向かって突出する側壁凸部43aが設けられている。係止リップ54aと反対側に突出する係止凸部54bは、第2取付溝43の側壁凸部43aと係合して、第1取付足部54の第2取付溝43からの抜け方向への移動を規制する。これにより、第2取付溝43に対する第1取付足部54の取付保持性を向上することができる。また、第1取付足部54の第1取付溝42及び第2取付溝43への挿入時に、係止リップ54aは、第2側壁41bに弾接して該第2側壁41bからの本体部51に向かう力が負荷されることとなり、その基端部を支点として第1取付足部54に弾接する方向に撓む。これにより、第1取付足部54が第1取付溝42及び第2取付溝43に挿入し易くなり、シール部材50の充電口リッドインナー40への取り付けの作業性を容易にすることができる。さらに、係止リップ54aは、上記第1取付溝42の場合と同様に、第1取付足部54が第2取付溝43に挿入された状態において、第2側壁41bにも弾接して第1取付足部54と第2取付足部55とによって第2側壁41bを挟持する。これにより、第1取付足部54を第2取付溝43に安定的に保持することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るシール部材50の取付構造によると、上述の通り、充電口リッドインナー40に設けられた取付溝41に直接にシール部材50を取り付けることが可能であるため、接着材等の追加部材や一体成形を必要とせず、充電口リッドインナー40に対するシール部材50の取付作業性を向上することができる。また、本実施形態に係るシール部材50の取付構造において、シール部材50の挿入時では、係止リップ54aが本体部51に向かう力が負荷されることによって第1取付足部54に弾接する方向に撓む。従って、狭い開口幅の取付溝に対して小さい圧力であっても容易に挿入することができ、これにより、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付作業性を向上することができる。一方、シール部材50が挿入された状態では、第1取付溝42及び第2取付溝43内において、係止リップ54aは第2側壁41bに弾接している。また、第2取付溝43内では、係止凸部54bが側壁凸部43aと係合している。従って、上記係止リップ54aと第2側壁41bとの弾接に加えて、第1取付足部54の係止凸部54bと第1側壁41aの側壁凸部43aとの係合により、取付溝41内において第1取付足部54のがたつきを防ぐとともに、第1取付足部54の取付溝41からの抜け方向への移動を規制することができる。これにより、充電口リッドインナー40に対するシール部材50の取付保持性を向上することができる。
【0034】
本実施形態では、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時において、係止リップ54aが第2側壁41bからの本体部51方向への圧力を受けた際、係止リップ54aは狭い開口幅の取付溝に対してより小さい圧力であっても第1取付足部54に弾接する方向に撓みを促されることが好ましく、このために、
図6に示すように係止リップ54aの撓みの支点となる基端部に薄肉部54cが設けられていることが好ましい。
【0035】
本実施形態では、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時において、第1取付足部54の取付溝41への挿入時の係止凸部54bの側壁凸部43aへの乗り越え易さを向上することが好ましいため、
図6に示すように、側壁凸部43aにおける係止凸部54bと反対側の面には、基端部から先端部に向かうに従って第2側壁41b側に傾斜する第1傾斜面43a1が設けられていることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時において、
図6に示すように、第2側壁41bの先端部における第1取付足部54側の面には、該先端部に向かうに従って第2取付足部55側に傾斜する第2傾斜面41b1が設けられていることが好ましい。このようにすると、第2傾斜面41b1が第1取付足部54の取付溝41への挿入をガイドすることができ、挿入し易くなる。
【0037】
本実施形態では、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時において、本体部51の厚さ(X)は、第1側壁41aと第2側壁41bの車内外方向段差量(Y)以上の長さとなるように構成されていることが好ましい。ここで、本体部51の厚さとは、
図5に示すように、第2側壁41bの先端部と弾接する車外側の面からその反対の車内側の面までの厚さ(X)をいう。一方、第1側壁41aと第2側壁41bの車内外方向段差量(Y)とは、
図5に示すように、本体部51と弾接する第2側壁41bの先端部から取付溝41の開口縁における第1側壁41aの車内側の面までの長さ(Y)をいう。本体部51の厚さ(X)が第1側壁41aと第2側壁41bの車内外方向段差量(Y)以上の長さとすることによって、充電口リッドインナー40よりも本体部51が車内側に突出することとなり、シール部材50の本体部51を押し込み易くなり、より挿入し易くなる。
【0038】
本実施形態では、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時において、
図6に示すように、本体部51における車外側の面には、第1傾斜面43a1の傾斜方向に添うように本体傾斜面51aを設けることが好ましい。このようにすると、本体部51と第1傾斜面43a1とが干渉することなく、係止凸部54bを十分に押し込むことができ、確実に側壁凸部43aと係合することができる。
【0039】
本実施形態に係るシール部材50の取付構造では、係止リップ54aが第1取付足部54に弾接された状態において、係止リップ54aの厚さ、第1取付足部54の厚さ及び係止凸部54bの厚さの合計値をAとし、前記取付溝41の開口幅の長さをBとしたとき、A≦Bとなるように構成されていることが好ましい。ここで、合計値Aとは、
図6に示すように、係止リップ54aが第1取付足部54に弾接された状態における、取付方向から見たときの係止リップ54aの上端から係止凸部54bの下端までの厚さ(A)をいう。一方、開口幅の長さBとは、
図6に示すように、第2側壁41bの下側(第1側壁41a側)の面から側壁凸部43aの先端部までの長さ(B)をいう。取付溝41の開口幅の長さBをA≦Bとすることによって、シール部材50の充電口リッドインナー40への取付時に、狭い開口幅の取付溝に対してより小さい圧力であっても係止リップ54aを第1取付足部54に弾接する方向に撓ませることができ、挿入性を向上することができる。本実施形態において、さらに好ましくは、前記開口幅の長さBがA<Bである。
【0040】
本実施形態に係るシール部材50の取付構造において、取付部53の取付溝41への取付方向において、係止凸部54bの長さをCとしたときに、係止凸部54bの長さCは、第1傾斜面43a1と本体傾斜面51aとの間に、隙間ができる程度に、短く形成されていることが好ましい。そうすることによって、取付溝41の深さを浅くすることができ、充電口リッドインナー40を小型化することができるとともに、シール部材50の取付溝41への取付時におけるストローク量を小さくすることができる。
【0041】
本実施形態では、充電口リッドの上縁部に設けられた充電口リッドインナーにおけるシール部材取付構造を例示して説明したが、本発明はこれに限定はされず、車体に設けられた車体開口部を開閉する開閉部材におけるシール部材取付構造であればよく、例えばリヤドアの前端側に取り付けられたガーニッシュや給油口リッドにおけるシール部材取付構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 自動車
2 車体
3 フロントドア
4 リヤドア
5 アウタパネル
10 充電口開口部
40 充電口リッドインナー
41 取付溝
42 第1取付溝
43 第2取付溝
43a 側壁凸部
50 シール部材
52 シールリップ
53 取付部
54 第1取付足部
54a 係止リップ
54b 係止凸部
55 第2取付足部