(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】骨固定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/76 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
A61B17/76
(21)【出願番号】P 2020141513
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・フィッシャー
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024135(JP,A)
【文献】特開2015-058361(JP,A)
【文献】米国特許第05882350(US,A)
【文献】特開2012-125565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨に固定するためのシャンク(2)と、ヘッド(3)とを有する固定要素(1)と、
受け部(5,500)とを備え、前記受け部は、前記シャンクが前記受け部に対して複数の角度位置を取ることができるように回動可能な態様で前記固定要素の前記ヘッドを収容するように構成されており、前記受け部は中心軸(C)を規定する通路(51,510)を有しており、前記骨固定装置はさらに、
前記通路に配置された加圧部材(6,600,6000)を備え、前記加圧部材は、前記ヘッドを前記受け部内でロックするために前記ヘッドに圧力を加えるように構成されており、前記骨固定装置はさらに、
前記加圧部材に少なくとも部分的に配置された挿入部材(7,7′,7",700)を備え、前記挿入部材は、調整可能な圧力を前記ヘッドに加えるように前記加圧部材に対して相対的に移動可能であ
り、
前記加圧部材(6,600,6000)および前記挿入部材(7,7′,7",700)は、前進構造を通じて連結され、前記前進構造はねじである、骨固定装置。
【請求項2】
前記加圧部材(6,600,6000)は前記中心軸と同軸のボア(66,660,666)を備え、前記挿入部材は少なくとも部分的に前記ボアに設けられる、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記加圧部材(6,600,6000)は前記通路(51,510)において軸方向に変位可能であり、前記受け部(5,500)は、前記挿入部材(7,700)が前記ヘッドを押圧したときに反力をもたらすように構成された、前記加圧部材のための当接部(57)を備える、請求項1
または2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
工具と係合するための工具係合凹部(73)が前記挿入部材(7,700)の上端部(7a)に設けられ、前記加圧部材(6,600,6000)は、ロッドのための支持面(61)を備え、アクセス開口部(60,660)が前記支持面に設けられることで、ロッド(100)が前記受け部(5,500)に挿入されていないときに前記挿入部材(7,700)の
前記工具係合凹部(73)と前記工具との係合を可能にする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記挿入部材(7,700)はヘッド接触面(72,720)を備え、前記ヘッド接触面は、前記シャンク(2)が複数の角度位置を取ることができるように前記ヘッド(3)が前記挿入部材に対して相対的に回動することを可能にするように構成されている、請求項1から
4のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項6】
前記挿入部材(7,700)が前記ヘッド(3)に第1の圧力を加えると、前記ヘッドは、或る角度位置で仮保持されるとともに、摩擦力に打ち勝つことによって別の角度位置に回動させることができ、前記挿入部材が前記ヘッドに前記第1の圧力よりも大きい第2の圧力を加えると、前記ヘッドは、前記或る角度位置で仮ロックされる、請求項
5に記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記挿入部材(7′,7")はヘッド接触面(72,74)を備え、前記ヘッド接触面は、前記シャンクが単一の角度位置
で保持されるように、前記ヘッド(3)と互いに形状がぴったりと合った状態で接続するように構成された形状を有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記単一の角度位置は、前記受け部の前記中心軸に対してゼロ角度の位置である、請求項7に記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記挿入部材(700)はヘッド接触面(720,7b)を備え、前記ヘッド接触面は、前記ヘッドに圧力を加えるだけで前記受け部の前記中心軸に対して或る角度位置
で前記シャンクを保持するように、前記ヘッド(3)との接続をもたらすように構成された形状を有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項10】
前記或る角度位置は、前記受け部の前記中心軸に対してゼロ角度の位置である、請求項9に記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記挿入部材(700)はヘッド接触面を備え、前記ヘッド接触面は
、前記ヘッドが前記受け部に対して前記シャンクのゼロ角度位置へと回動したときおよび/または前記ゼロ角度位置から外れるように回動したときにフィードバックを与えるための端縁(7b)を備える形状を有して
いる、請求項1から
10のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項12】
前記端縁は、前記挿入部材のうち、前記ヘッドの自由端面と接触するように構成された下端部である、請求項11に記載の骨固定装置。
【請求項13】
前記加圧部材(600)は、付勢力が前記ヘッドに作用するように前記受け部の一部分(55a)によって弾力的に圧縮されるように構成された複数の可撓性脚部(640)を有する、請求項1から
12のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項14】
前記挿入部材(7)が挿入済みヘッド(3)から離れる方向に前記加圧部材(6)に対して相対的に移動するのを制限するための止め部(67a)が前記加圧部材に設けられる、請求項1から
13のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項15】
前記受け部(5)は、前
記固定要素が前記受け部(5)の上端部(5a)から挿入可能となるように適合されており、前記加圧部材(6,600)は、前記ヘッドの上側から前記ヘッドに圧力を加えるように構成されているか、または、前記受け部(500)は、前
記固定要素が前記受け部の底端部(5b)から挿入可能となるように適合されており、前記加圧部材(6000)は、前記ヘッドを囲む可撓性部分(690)を備えており、圧力は前記ヘッドに対して横方向に加えられる、請求項1から
13のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項16】
前記ヘッドに対して付加的な力をもたらすために、前記加圧部材に対して直接または挿入済みロッド(100)を介して作用するように構成されたロック部材(8)が設けられている、請求項1から
15のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項17】
前記ヘッドの多軸運動を可能にするヘッド接触面(72)を有する第1の挿入部材(7)と、前記ヘッドを単軸位置に保持することを可能にするヘッド接触面(72,74)を有する第2の挿入部材(7′,7")とを備え、第1の挿入部材および第2の挿入部材は互いに置換え可能に用いることができる、請求項1から
16のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを挿入することなくシャンクの角度位置を仮にクランプおよび/またはロックすることを可能にする多軸型の骨固定装置に関する。骨固定装置は、脊椎手術に特に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
最終ロック前に固定ねじのヘッドを一時的にクランプすることを可能にする椎弓根ねじが当該技術分野において公知である。状況によってはいくつかの段階で固定ねじに対して骨固定装置の受け部の位置を補正する必要があるので、脊椎ロッドを受け部に収容せずにこのような補正ステップを実行することが望ましい。
【0003】
US5,443,467には、多軸骨ねじの形状の骨固定装置が開示されている。当該骨固定装置はねじ部材を備える。ねじ部材のヘッドは、受け部材に回動可能に収容される。ヘッドに向けて受け部材にねじ込むことができるヘッドロックナットが設けられている。骨ねじと接続されることとなっているロッドを収容するために受け部材の位置が調整されると、ヘッドロックナットは、ねじ部材が受け部材に堅く接続される程度にまで締付けられる。その後、ロッドが受け部材のU字形凹部に挿入されると、ロッドロックナットを挿入して締付けることによってロッドの位置がロックされる。
【0004】
US9,839,446B2は、ロッドを骨固定要素に連結するための連結装置を開示している。連結装置は、骨固定要素のヘッドを収容するための収容空間を規定する受け部を含む。さらに、連結装置は、内部に挿入されたヘッドをクランプするために可撓性部分を備えた圧力要素と、圧力要素とヘッドとの間の摩擦力を高めるために圧力要素に圧縮力を加えるように構成されたクランプ要素とを含む。ヘッドに対する圧縮力は、ロッドを挿入する前に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US5,443,467
【文献】US9,839,446B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基となる目的は、骨固定要素のシャンクに対する受け部の位置を調整することと、ロッドを受け部に挿入せずに、このような調整された位置を仮に保持することとを可能にする、改善された骨固定装置または代替的な骨固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該目的は、請求項1に記載の骨固定装置によって解決される。さらなる展開例が従属請求項において提供される。
【0008】
加圧部材とは別個に作動可能な挿入部材を当該加圧部材に組込むことにより、ロッドが受け部に挿入されていないときに受け部に対するシャンクの角度位置を一時的にまたは仮にロックすることができる。また、仮のロックを解除して、さらなる位置補正を行うことができる。
【0009】
仮ロックの強度は、挿入部材の軸方向位置を変化させて骨固定要素のヘッドに対して調整可能な圧力をもたらすことによって調整することができる。したがって、挿入部材は、ヘッドが摩擦によって或る角度位置で保持されるとともに摩擦力に打ち勝つことによって回動可能となるような力をヘッドに加えることができる。挿入部材によって加えられる力を大きくすると、ヘッドを仮ロックすることができる。
【0010】
加圧部材に対して直接またはロッドを介して作用する別個のロック部材の支援により、骨固定装置は、仮ロックの場合と比べて強いロック力で最終的にロックされ得る。
【0011】
多軸骨固定装置は、骨固定要素が受け部の上端部を通って挿入されるトップローディング型であってもよい。または、多軸骨固定装置は、骨固定要素がその底端部から受け部内に挿入されるボトムローディング型であってもよい。
【0012】
さらなる実施形態に従うと、挿入部材のヘッド接触面部分は、骨固定要素が受け部に対して単一の角度位置(たとえばゼロ角度位置)を取ることができるように、形状がぴったりと合った態様でヘッドと協働する形状を有し得る。このようにして、単軸骨固定装置を提供することができる。
【0013】
さらに別の実施形態に従うと、骨固定要素が単一の角度位置(たとえばゼロ角度位置)において挿入部材によってヘッドに加えられる圧縮力によって保持されるような態様で骨固定要素のヘッドと協働する形状を、挿入部材のヘッド接触面部分が有し得ることで、単軸骨固定装置を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態においては、挿入部材は、受け部に対する骨固定要素の特定の角度位置が表示および/または確認され得るような態様でヘッドと協働するヘッド接触面を有する。特定の角度位置が達成されるかまたは特定の角度位置から離れているときにフィードバックがユーザに与えられてもよい。これは、高角度のシャンクが必要な場合に特に有用であり得る。
【0015】
さらに別の実施形態に従うと、多軸骨固定装置および少なくとも2つの挿入部材の一式は、受け部および骨固定要素、さらには、加圧部材および少なくとも2つの挿入部材を備える。少なくとも2つの挿入部材は互いに置換え可能に加圧部材と接続され得る。一方の挿入部材は、骨固定要素のヘッドと協働してヘッドの回動を可能にするように構成されてもよい。他方の挿入部材は、ヘッドと協働して単軸骨固定装置をもたらすように構成されてもよい。こうして、1つの加圧部材と組合わせることができるさまざまな挿入部材をモジュール式システムに設けることによって、外科医にとって容易に利用可能な在庫を増やすことができる。
【0016】
一般に、多軸骨固定装置は、多様な調整可能ロック機能を提供するので適用範囲が大幅に広がる。
【0017】
さらなる特徴および利点が、添付の図面によって実施形態の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に従った骨固定装置をロッドおよびロック部材とともに示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の骨固定装置を、ロッドおよびロック部材と組立てられた状態で示す斜視図である。
【
図3】受け部の中心を通るとともに挿入済みロッドに対して垂直に延在する面に沿った、
図1および
図2の骨固定装置の断面図である。
【
図4】
図1~
図3の骨固定装置の受け部を上から見た斜視図である。
【
図7】
図6の線A-Aに沿った受け部の断面図である。
【
図8】
図1~
図3の第1の実施形態に従った骨固定装置の加圧部材を上から見た斜視図である。
【
図12】
図1から
図11の加圧部材に少なくとも部分的に設けられた挿入部材を上から見た斜視図である。
【
図17a】第1の実施形態に従った骨固定装置を組立てるステップおよび当該骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図17b】第1の実施形態に従った骨固定装置を組立てるステップおよび当該骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図17c】第1の実施形態に従った骨固定装置を組立てるステップおよび当該骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図17d】第1の実施形態に従った骨固定装置を組立てるステップおよび当該骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図17e】第1の実施形態に従った骨固定装置を組立てるステップおよび当該骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図18a】受け部が骨固定要素のシャンクに対して自由に回動可能となる構成で、第1の実施形態の骨固定装置を示す断面図である。
【
図19a】挿入部材がヘッドに圧力を加えている構成で、第1の実施形態に従った骨固定装置を示す断面図である。
【
図20】多軸骨固定装置の第2の実施形態の加圧部材を上から見た斜視図である。
【
図24】多軸骨固定装置の第2の実施形態の挿入部材を上から見た斜視図である。
【
図28a】予め規定されたシャンク位置を示すために第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す断面図である。
【
図28b】予め規定されたシャンク位置を示すために第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す断面図である。
【
図28c】予め規定されたシャンク位置を示すために第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す断面図である。
【
図29a】第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を単軸骨固定装置として使用するステップを示す断面図である。
【
図29b】第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を単軸骨固定装置として使用するステップを示す断面図である。
【
図29c】第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を単軸骨固定装置として使用するステップを示す断面図である。
【
図30a】シャンクの角度位置を仮ロックするために第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す断面図である。
【
図30b】シャンクの角度位置を仮ロックするために第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す断面図である。
【
図31】第3の実施形態に従った多軸骨固定装置をロッドおよびロック部材とともに示す分解斜視図である。
【
図32】
図31の多軸骨固定装置を、ロッドおよびロック部材と組立てられた状態で示す斜視図である。
【
図33】受け部の中心を通るとともに挿入済みロッドに対して垂直に延在する面に沿った、
図1および
図2の多軸骨固定装置の断面図である。
【
図34】第3の実施形態に従った多軸骨固定装置の受け部を上から見た斜視図である。
【
図38】第3の実施形態に従った多軸骨固定装置の加圧部材を上から見た斜視図である。
【
図42a】第3の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【
図42b】第3の実施形態に従った多軸骨固定装置を使用するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図3に概略的に示される第1の実施形態に従った多軸骨固定装置は、少なくとも部分的にねじ切りされたシャンク2と、ヘッド3とを有するねじ部材の形状をした骨固定要素1を含む。ヘッド3は球状の外面部分を有する。より詳細には、本実施形態においては、ヘッド3は、実質的に平坦な端面3aを備えた球状セグメントとして形成されている。この端面3aには、工具と係合させるための凹部4が設けられていてもよい。骨固定装置はさらに、骨固定要素1をロッド100に接続するための受け部5を含む。受け部5には、ヘッド3に圧力を加えるように構成された加圧部材6が挿入され得る。挿入部材7は、少なくとも部分的に、加圧部材6においてヘッド3に面する側に配置されている。挿入部材7は、ヘッド3と接触してヘッド3に直接圧力を加えるように構成されている。ロッド100を受け部5に固定し、ヘッド3に圧力を加えてヘッド3を最終ロックするために、受け部5と協働する、たとえば止めねじ状のロック部材8を付加的に設けてもよい。ロック部材8は工具係合凹部8aを有していてもよい。
【0020】
特に
図3~
図7に示されるように、受け部5は実質的に円筒形であり、第1の端部または上端部5aと、第2の端部または底端部5bと、上端部5aから底端部5bに向かって延在して長手方向の中心軸Cを規定する通路51とを有する。底端部5bには、ヘッド3を収容するための座部52が形成されている。座部52は、玉継手と同様に、ヘッド3が当該座部52内で回動することを可能にするように構成されており、ヘッド3の球形状に対応する球形状であってもよく、または、ヘッドが回動することを可能にする他の任意の形状、たとえば円錐状の先細形状などを有してもよい。座部52はさらに、通路51と連通しており、骨固定要素1のシャンク2が貫通し得る開口部52bを有している。開口部52bの内径はヘッドの最大直径よりも小さく、このため、骨固定要素1は上端部5aからしか受け部5内に挿入することができない。このように、第1の実施形態は、トップローディング型の多軸骨固定装置を示す。通路51は中央区域51aを有する。この中央区域51aは、加圧部材6および挿入部材7のための空間を設けるために、ヘッドの最大外径よりも大きい内側幅を有する。さらに、通路51は、狭窄部分51bにおいて座部に向かって狭くなっている。中央区域51aの上方には、わずかにより幅広で直径が大きい区域51cが存在していてもよい。
【0021】
実質的にU字形の凹部53は、上端部5aから或る距離まで延在している。実質的にU字形の凹部53は、受け部5の上方部分を2つの自由脚部54に分割し、ロッド100を収容するためのチャネルを形成している。雌ねじ55、たとえば角ねじが、ロック部材8との協働のために受け部5において上端部5aに隣接して設けられている。雌ねじの端部にはアンダーカット55bが設けられていてもよい。円周方向から見て脚部54の中心には、貫通孔56が、中心軸Cに対して垂直であり得る長手方向軸を有する脚部の壁を貫通している。貫通孔56は、装着状態時には通路51内に延在するピン57を収容して、以下により詳細に説明されるように当接部を形成する役割を果たす。貫通孔56は、雌ねじ55の下方であってU字形の凹部53の底部の上方に位置していてもよい。
【0022】
任意には、切欠き58が受け部5において脚部4の両側に形成されていてもよく、これはサイズを小さくするのに寄与し得る。最後に、任意には、脚部54の外壁に設けられた円周溝などの工具係合部分59は、受け部5を工具と係合させることを可能にする。
【0023】
次に、
図1~
図3および
図8~
図11を参照して加圧部材6を説明する。加圧部材6は、実質的に円筒形の外形を有する別個の一体型部分であってもよく、第1の端部または上端部6aと、反対側の第2の端部または底端部6bとを有する。同軸の通路60が上端部6aから底端部6bにまで延在しており、これは、上端部5aに隣接する第1の区域においてねじ切りされていないボアとして形成されてもよい。加圧部材6は、底端部6bがヘッド3側に面するような態様で受け部5に装着される。上端部6aから底端部6bに向かって或る距離まで延在する凹部61が形成されている。凹部61は、加圧部材6の円筒軸Cに対して垂直な長手方向軸Lを有する。長手方向軸Lは、装着状態では受け部5の中心軸Cと重なり合う。凹部61は略V字形の外形を有する。これにより、さまざまな直径のロッド100を当該凹部61内に収容することが可能となる。
【0024】
略V字形の凹部61の側端縁61aおよび底部62は丸みを帯びていてもよい。さらに、直立した脚部64が略V字形の凹部61によって形成されており、任意には、脚部64の幅が円周方向に短くなるように側方の切欠き63が設けられていてもよい。脚部64の高さ、または言換えれば、略V字形の凹部61の深さは、略V字形の凹部61内に安全に収容され得るロッド直径であればいずれの場合も挿入済みロッド100の表面の最高点よりも下に加圧部材の上端部6aが位置するように設定され得る。各々の脚部64の円周方向中央には横方向の貫通孔65が設けられている。貫通孔65は、長手方向軸Lに対して垂直かつ加圧部材6の円筒軸Cに対して垂直に脚部64を貫通している。貫通孔65は、ピン57を収容することができるような幅を有する。貫通孔65の幅は、円筒軸Cに対して平行な軸方向においてピン57の直径よりも広くなっており、このため、ピンは、貫通孔65内を軸方向にいくらか移動可能である。したがって、加圧部材6の軸Cに対して平行な軸方向において、各貫通孔の下端部65aはピン57のための第1の当接部を形成しており、各々の貫通孔56の上端部65bはピン57のための第2の当接部を形成している。
【0025】
V字形凹部の底部62と底端部6bとの略中間において、通路60は、挿入部材7を収容してこれと係合するように構成された雌ねじ区域66を備える。ねじ山は、挿入部材7を調整可能に前進させることを可能にする前進構造を形成する。雌ねじ区域66の内径は通路60の上方部分の内径以下であってもよく、これにより、挿入部材は、加圧部材6に全体がねじ込まれたときに通路60の上方部分内に延在することができる(たとえば、
図17b、
図18a、
図18bに図示)。加圧部材6には、底端部6bに隣接して円筒形凹部67が形成されており、その内径は、挿入部材7の一部分のための当接肩部67aが形成されるように雌ねじ区域66の内径よりも大きくなっている。
図3に最もよく示されるように、加圧部材6の外径は通路51の内径よりもごくわずかだけ小さい。これにより、加圧部材6は、受け部5の通路51内を軸方向に摺動または変位することができる。円筒軸Cに沿った加圧部材の軸方向長さは、
図3に見られるように、加圧部材6が受け部5に装着されて貫通孔65内にピン57を収容したときに挿入部材7がヘッド3に接触するように前進したりヘッド3から離れるように後退したりすることができるように設定されている。
【0026】
図1~
図3および
図12~
図15を参照して、挿入部材7をより詳細に説明する。挿入部材7は、実質的に止めねじ状の部材であり、第1の端部または上端部7aと第2の端部または底端部7bとを有する。挿入部材7が加圧部材6とともに組立てられると、挿入部材の上端部7aは加圧部材6の上端部6aの方に向く。底端部7bには、円周方向に延びる径方向突起71が形成されている。この径方向突起71は、組立てられた状態では加圧部材6の円筒形凹部67に嵌合する。これにより、突起71の上面が当接する肩部67aが、加圧部材6において挿入部材7のための止め部を形成する。これにより、加圧部材6の上端部6aを通って挿入部材が外れるのが防止される。挿入部材6のうち径方向突起71の上方にある外面はねじ切りされている。さらに、底端部7bには、ヘッド3の球状外面部分の形状と一致する球状凹部72が形成されている。球状凹部72は、加圧部材6および挿入部材7が受け部5内においてそれぞれの最低位置にあるときにヘッド3の球状外面部分の少なくとも一部を覆うように構成された大きさを有している。最後に、工具係合凹部73が上端部7aに設けられている。工具係合凹部73は、挿入部材7を軸方向に完全に貫通している。このため、ヘッド3が大きな角度で回動したときに当該ヘッド3の一部がその中に延在し得る。工具係合凹部73は、多角形またはトルクス形または星形などの、工具との係合に適していれば如何なる形状を有していてもよい。
【0027】
ここで
図16aおよび
図16bを参照すると、結果的に挿入部材7′とヘッド3とが互いに形状がぴったりと合った状態で接続されることとなる挿入部材7′の変形例が示される。
図16aでは、球状凹部72は端縁74aを備えた平坦なカバー部分74へと連なっており、このため、平坦なカバー部分74および球状凹部72がヘッド3の端面3aおよび球状表面部分と互いに形状がぴったりと合った態様で協働することとなる。したがって、挿入部材7′は、受け部5の中心軸Cと重なり合う挿入部材7′のねじ軸に対してシャンク2がゼロ角度をなすような態様でヘッド3と協働するように構成されている。
【0028】
図16bには、さらに変形された挿入部材7″が示される。挿入部材7″は、平坦なカバー部分74に加えて、当該カバー部分74から延在する1つ以上の環状突起74bを有する。1つ以上の環状突起74bは、ヘッド3(図示せず)の対応する溝と協働して互いに形状がぴったりと合った接続を強化することができる。
【0029】
骨固定装置の部品および部分は、任意の材料から作製されてもよいが、好ましくは、チタンもしくはステンレス鋼、または任意の生体適合性金属もしくは金属合金もしくはプラスチック材料から作製されてもよい。生体適合性合金として、NiTi合金、たとえばニチノール(Nitinol)が用いられてもよい。他の材料は、マグネシウムまたはマグネシウム合金であり得る。使用される生体適合性プラスチック材料は、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone:PEEK)またはポリ-L-ラクチド酸(poly-L-lactide acid:PLLA)であってもよい。部品は、互いに同じ材料または異なる材料で作ることができる。
【0030】
図17a~
図17eは、第1の実施形態に従った多軸骨固定装置を組立てるステップおよび当該多軸骨固定装置を使用するステップを示す。
図17aでは、骨固定要素1は、シャンク2が下方開口部52bを通って延在するとともにヘッド3が座部52に乗るように、受け部5の上端部5aから挿入される。
図17bでは、挿入部材7を有する予め組立てられた加圧部材は、上端部5aから受け部5内に取付けられる。挿入部材7は径方向突起71で加圧部材6の端縁67aに当接する(より詳細には、
図18aおよび
図18bを参照)。挿入部材7の上端部7aは、加圧部材6の通路60の上方部分内に延在している。
図17cでは、加圧部材6のV字形凹部61が受け部5のU字形凹部53と位置合わせされるように、ピン57が、受け部5の貫通孔56を通って加圧部材6の貫通孔65内に延在している。これにより、加圧部材6が回転可能に固定される。
図17dでは、挿入部材は、工具係合凹部73を工具(図示せず)と係合させることによって下方向にねじ込まれている。結果として、ヘッド3の外側球面部分が挿入部材7の球状凹部72の内壁と接触する。
図17eでは、加圧部材6および挿入部材7のアセンブリを有する受け部5は、ヘッド3の一方側が挿入部材7の球状凹部72内により深くまで入り込むように、ヘッド3に対して回動させられる。
【0031】
臨床用途では、少なくとも2つの骨固定装置が骨部分または椎骨に固定される。シャンクは、たとえば、準備されたコア穴に挿入される。次いで、受け部5が、ロッド100の挿入のために補正された向きまたは所望の向きとなるように位置合わせされる。
【0032】
図18a~
図19bは、挿入部材7の機能をより詳細に示す。
図18aおよび
図18bでは、ピン57は貫通孔65の上端部65bに係合し、挿入部材7は加圧部材6に完全にねじ込まれている。この構成では、シャンク2およびヘッド3は、座部52内で自由に回動可能である。
図19aおよび
図19bでは、挿入部材7は、ヘッド3に向かって下方向にねじ込まれる。これは、加圧部材6の通路60によって設けられるアクセス開口部を通じて工具係合凹部73を工具と係合させることによって達成することができる。挿入部材7の球状凹部72の内面がヘッド3に接触すると直ちに、複数の貫通孔65の下端部65aがそれぞれのピン57に当接するまで加圧部材6を受け部5の上端部5aに向かってわずかに移動させる反力が発生する。ピン自体が、挿入部材およびヘッドに対して作用し返す反力を発生させる。これにより、挿入部材7がヘッド3に向かってどれだけ締付けられるかに応じて、調整可能な圧力を挿入部材7によってヘッド3に加えることができる。したがって、ヘッド3を摩擦嵌合で保持することが可能となる。これは、ヘッド3が摩擦力によって調整可能な角度位置に保持されていることを意味する。この位置は、摩擦力に打ち勝つように、たとえば手動で、受け部5をヘッドに対して相対的に移動させることによって変更することができる。挿入部材7がヘッド3に対して完全に締付けられると、ヘッド3を所望の角度位置で仮ロックすることができるような強度をもつ摩擦力となる。
【0033】
挿入部材7を逆方向に加圧部材6にねじ込むことにより、摩擦嵌合によるヘッド3の保持またはヘッド3の仮ロックを解除することができる。摩擦嵌合によるヘッドの保持および/またはヘッドの仮ロックの実施および解除は、ロッドを受け部および圧力要素に収容することなく、すなわち、ロッド収容凹部がふさがれていないときに、実施することができる。摩擦嵌合および/または仮ロックをもたらすステップは、複数回実行することができる。したがって、複数の調整ステップを容易に実行することができる。
【0034】
受け部と、加圧部材と、挿入部材のうちの少なくとも2つとを備えるモジュール式システムを提供することができる。この場合、挿入部材のうち1つの挿入部材は、上述のようにヘッドの回動を可能にし、別の挿入部材は、当該挿入部材がヘッドに係合するとシャンクのゼロ角度位置をロックするように構成されている。
【0035】
最後に、ロッド100が挿入され得るとともにロック部材8が挿入され得ると、さらに、当該ロック部材8は、ロッド100に圧力を加えて当該ロッド100がさらに加圧部材6に圧力を加えるまで締付けることができ、こうして、ヘッド3が最終的に受け部5内でロックされることとなる。ロック部材を介して最終ロックすることにより、装置を持続的にロックするのに好適であり得る高いロック力を達成することができる。
【0036】
図20から
図30bを付加的に参照して骨固定装置の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の骨固定装置は、加圧部材および挿入部材の設計が第1の実施形態の骨固定装置とは異なっている。なお、第1の実施形態と同一またはほぼ同様の部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。第2の実施形態の加圧部材600は、第1の実施形態と比較してわずかに長い直立する脚部640を備える。各々の脚部640は、上端部6aにおいて、円周方向および径方向外向きに延在する突起641を備える。突起は、各々の脚部640の側端縁から或る距離にまで、円周方向に延在していてもよい。突起641は上方傾斜面641aを有する。この上方傾斜面641aは、受け部5のアンダーカット55bの上端縁55aの形状をした当接部55aに当接するように構成されている(
図28a~
図30b)。脚部640は、それらの形状および大きさにより、径方向内側に曲げることができるとともにそれらの直線位置に跳ね返ってくることができるように、わずかに可撓性がある。受け部における通路の幅広部分51cは脚部のための追加の空間をもたらす。貫通孔650は、受け部5内で加圧部材600をずらすための軸方向自由度をわずかに高めるように円筒軸Cに対して平行な軸方向に細長に延在している。
図28aに最もよく示されているように、脚部640は、挿入部材700が組付けられている加圧部材600が受け部5内にあってピン57が貫通孔650の上端部65bに当接するときにアンダーカット55bの上端縁55aに接触するような長さを有する。径方向突起641はアンダーカット55b内に延在し得る。この位置では、ヘッド3は自由に回動可能である。
【0037】
加圧部材600はさらに、第2の端部6bに円錐形の凹部670を含む。円錐形の凹部670は第2の端部6bに向かって広がっている。通路600のねじ区域660の内径は、ヘッド3の平坦な端面3aの直径と同じであるか、または、好ましくはそれよりも小さい。したがって、通路のねじ区域660の寸法および幅広凹部670の寸法は、ヘッド3が幅広凹部670に入り込むがねじ区域660には入り込まないような寸法である。
【0038】
ここで
図24~
図27を参照すると、挿入部材700は、加圧部材600のねじ区域660にねじ込まれるように構成された止めねじであって、加圧部材600のねじ区域660の軸方向長さに実質的に対応する軸方向長さを有していてもよい。下端部における球状凹部720は、ヘッド3が凹部720内に入り込んだときにヘッド3上に嵌まるような大きさを有する。挿入部材700の底端部7bは、外径がより小さいので、挿入部材700がゼロ角度位置でヘッド3と接触したときにヘッド3の平坦な端面3a上に載るように構成されている。
【0039】
図28a~
図28cは、第2の実施形態の多軸骨固定装置のシャンク位置表示機能を示す。
図28aでは、挿入部材700とともに予め組立てられた加圧部材600は、ヘッド3が座部52内に位置した状態で受け部5内に挿入されている。加圧部材600は、貫通孔650の上端部65bがピン57上に載った状態である。挿入部材700は全体が加圧部材600内に挿入されている。その寸法は、ヘッド3の球状外面部分の周りに円を描いた場合に球状凹部720がヘッド3の仮想外側輪郭に一致するように、挿入部材700が少なくとも軸方向高さ位置にくるような寸法である。この構成においては、ヘッド3は、座部52において自由に回動可能であり、回動中に凹部720に入り込むことができる。したがって、シャンク2はさまざまな角度位置を取ることができる。突起641の傾斜上面641aはアンダーカット55bの上端縁55aに接する。
【0040】
図28bは、シャンク2が中心軸Cに対してゼロ角度位置にあるときに挿入部材700がヘッド3の端面3aに当接するまでねじ込まれている構成を示す。この位置では、ヘッド3はゼロ角度位置でわずかにクランプされている。ゼロ角度位置でヘッドをわずかにクランプすることによりゼロ角度位置の表示がもたらされる。
【0041】
図28cは、受け部5を骨固定要素1に対して回動させるステップを示す。ヘッド3が回動すると、挿入部材700とともに加圧部材600がわずかに押上げられてずらされることで、ヘッド3が球状凹部720内に入り込むことができる。脚部640は、突起641の傾斜上面641aで端縁55aに当接するとともに、内側に弾力的に押込まれる。弾力的な脚部640によって加えられる反力により、加圧部材600は、ヘッド3に摩擦力を加えるようにわずかに押下げられる。結果として、ヘッド3が挿入部材700と座部52との間で摩擦クランプされる。ヘッドが球状凹部720に入り込むと、シャンク2がゼロ角度位置を離れたことを示す触覚フィードバックがもたらされ得る。ヘッド3が弾力的な脚部640を用いてクランプされているので、シャンクがゼロ位置にあるかどうかを示すために触覚フィードバックがもたらされるたびに、ゼロ角度位置と他の角度位置との間で変化してさらにゼロ角度位置に戻ることが、数回、可能である。
【0042】
次に、
図29a~
図29cを参照して、第2の実施形態に従った多軸骨固定装置を単軸骨固定装置として使用する機能について説明する。
図29aでは、骨固定要素1は自由に回動可能である。
図29bでは、挿入部材700は、ヘッド3がゼロ角度位置にあるときに挿入部材700の底端部7bがヘッド3の端面3aに接触するまで、ヘッド3に向かって下方にねじ込まれる。
図29cに示すように、挿入部材700をヘッド3に対して締付けると、結果として、加圧部材600がピン57に当接するまで上方に移動することとなる。挿入部材700が締付けられると、骨固定要素1は、受け部に対してシャンク2のゼロ角度位置にロックされる(矢印で図示)。こうして、骨固定装置は単軸骨固定装置として機能する。
【0043】
図30aおよび
図30bを参照すると、第2の実施形態の多軸骨固定装置の仮ロック機能が示される。
図30aの構成では、骨固定要素1を回動させている。これにより、端縁55aによって突起641の傾斜面641aに作用する強い圧力によって(矢印により図示)可撓性アーム640が内側に押し込まれるまで加圧部材が僅かに押し上げられる。挿入部材700が加える摩擦力によって、ヘッド3が回動位置に保持される。
図30bに示す構成では、挿入部材700がヘッド3をしっかりと押圧するように挿入部材700をさらに下方にねじ込むことによって、骨固定要素1の回動位置が仮ロックされる(矢印により図示)。
【0044】
最後に、ロッドを挿入することができ、ロック部材を挿入して締付けることで、構造全体の最終ロックを達成することができる。
【0045】
図31から
図42bを参照して、骨固定装置の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態の骨固定装置は、第2の実施形態の骨固定装置と同じ挿入部材700を備える。第3の実施形態の加圧部材および受け部は、骨固定装置がボトムローディング型となるように変更された設計を有する。なお、第1および第2の実施形態と同一またはほぼ同様の部品および部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。
【0046】
図31~
図37により詳細に示されるように、受け部500は、第2の端部5bに向かって先細になる、たとえば円錐形状の狭窄座部520を備える。これにより、加圧部材6000のうち当該加圧部材6000が狭窄座部520内に延在している部分に対して圧縮力を発生させることができる。狭窄座部520に隣接して、通路510の幅広部分510cが形成されている。この幅広部分510cは、加圧部材6000の拡張のための空間をもたらすために、受け部500の内壁に形成されている。段差510bが、通路510の直径変化によって形成されてもよく、加圧部材6000の挿入のための止め部として機能し得る。受け部500の下方開口部520dは、ヘッド3を底端部6bから挿入できるように、ヘッド3の最大幅よりも広い幅を有している。
【0047】
加圧部材6000は、ロッド100用の実質的にV字形の凹部61を備えた上方部分と、ヘッド収容凹部690を備えた下方部分とを有する。下方部分は実質的に円筒形であり、当該下方部分と上方部分との間に段差6cが形成され得るように上方部分と比べてわずかに狭い外幅を有していてもよい。底端部6bに隣接して、先細の外面部分680が形成されている。この先細の外面部分680は、受け部500における狭窄座部520と協働するように構成されている。ヘッド収容凹部690は、下端部6bに隣接して第1の球状区域691を有する。第1の球状区域691は、そこでヘッド3を回動させるための座部として機能する。さらに、ヘッド収容凹部690は、円筒形または他の形状であり得る第2の部分692を備える。第2の部分692は、ヘッドの回動時にヘッドの上端縁のための空間をもたらすように機能する。最後に、第3の狭窄区域693は、ねじ穴666に向かって狭くなっている。ねじ穴666は挿入部材700を内部に収容するように構成されている。ねじ山は狭窄区域693内に延在していてもよい。ねじ穴666は、V字形凹部61の底部62上の位置にまで軸方向に延在していてもよい。
【0048】
ヘッド収容凹部690は、下端部6bに向かって開いたスリット695によって隔てられている複数の可撓性壁区域694を備える。スリット695は、上方ヘッド収容区域692にまで延在してもよく、挿入済みヘッド3を圧縮するためのある程度の可撓性をもたらすように幅広の閉鎖端695aを有していてもよい。ねじ穴666のねじ山は、凹部61の底部の上方に延在していてもよく、貫通孔650の下方においてわずかな距離だけ延びて終端していてもよい。
【0049】
加圧部材6000および挿入部材700は、挿入部材の球状凹部720が加圧部材の下端部6bの方向に向くように予め組立てられていてもよい。予め組立てられた加圧部材6000および挿入部材700は、受け部500内に挿入されて、貫通孔650内に延在するピン57によって回転可能に位置合わせされる。挿入部材700は、挿入済みロッドに接触することなく、実質的にV字形の凹部61の底部62のわずか上方に延在する位置にあってもよい(たとえば、
図33を参照)。ヘッド3が挿入されていないときに加圧部材6000が下方開口部520bを通って外れることを防ぐために、加圧部材6000は、その上方部分と下方部分との間に形成された段差6cで、受け部の通路510における段差510bと当接してもよい。加圧部材の下方部分が狭窄座部520内に延在すると、ヘッド3が下方開口部を通って外れることが防止される。
【0050】
第1の使用態様では、骨固定要素1をまず骨内に挿入し、その後、圧力要素6000と挿入部材700とのアセンブリを備えた受け部をヘッド3上に取付ける。取付けのために、ヘッド3は、受け部の下方開口部520dを通ってヘッド収容凹部690内に入り込み、これにより、内壁区域694同士が互いから広がってヘッド3上に嵌まる。別の使用態様では、骨固定要素1は、骨に埋込まれる前に受け部および加圧部材に既に挿入されている。
【0051】
ここで
図42aおよび
図42bを参照して骨固定装置の機能を説明する。
図42aの構成では、挿入部材700は、ヘッド3が回動してヘッド収容凹部720内に入り込み得るような高さにある。加圧部材6000は貫通孔650の下端部65aでピン57に当接する。挿入部材700を締付けることで、摩擦によってヘッド3を保持する摩擦力を発生させるが、ヘッド3は依然として回動可能である。さらに締付けると、結果として、ロッドを挿入しなくてもヘッド3が仮ロックされる。
【0052】
図42bの構成では、骨固定要素1は、中心軸Cに対してシャンク2のゼロ角度位置にあり、挿入部材700の底端部7bがヘッドの自由端面3aに当接するまで挿入部材700をヘッドに向かってねじ込むことによってゼロ角度位置で保持される。これにより、骨固定要素はゼロ角度位置に保持され、ロッドを挿入しなくても単軸ねじとして機能する。
【0053】
他の実施形態と同様に、最終的に、ロッドを挿入することができ、ロック部材を用いて、仮ロックの場合と比べて大きなロック力を構造全体に与えることができる。
【0054】
上述の実施形態の変形例が想到可能である。一実施形態の特徴を他の実施形態の特徴と組合わせて、さまざまなさらなる実施形態を提供することができる。それらの部品は、当該実施形態において説明される詳細な形状に限定されない。受け部における加圧部材の当接部はピンとして示されているが、他の当接部も想到可能である。また、ピンは1つだけでも十分である。加圧部材と挿入部材との間の前進構造は、別の構造であってもよく、または、加圧部材に対して挿入部材を連続的にまたは徐々に移動させることを可能にする、加圧部材と挿入部材との間の摩擦嵌合による協働であってもよい。挿入部材のヘッド被覆面の他の変形例として、挿入部材に対するヘッドの回動運動を制限するのに適した挿入部材とするような他の変形例も想到可能である。ロック部材として、他の公知のロック部材、たとえば、ヘッドとロッドとを別々にロックすることを可能にする2部品ロック部材が用いられてもよい。この場合、加圧部材はロッドの表面上方に延在する脚部を有する。
【符号の説明】
【0055】
1 固定要素、2 シャンク、3 ヘッド、5 受け部、6 加圧部材、7 挿入部材、51 通路。