(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240516BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240516BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20240516BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20240516BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 C
F24F11/77
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2020156995
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊能 利郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 優貴奈
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120922(JP,A)
【文献】特開2009-186127(JP,A)
【文献】特開2006-105473(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109253520(CN,A)
【文献】特開2011-094930(JP,A)
【文献】特開2018-151114(JP,A)
【文献】特開2008-170132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 11/77
F24F 110/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象空間(S1)と第2対象空間(S2)とを連通する第1連通路(21,24)と、
前記第1連通路(21,24)を開閉する第1開閉機構(22,26)と、
前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給する給気装置(8)と、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する排気装置(9)とを含む換気装置(7)と、
前記第1開閉機構(22,26)を閉じ、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給し、かつ前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する第1動作と、前記第1開閉機構(22,26)を開け、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)に空気を供給し、前記第1連通路(21,24)を介して前記第1対象空間(S1)から前記第2対象空間(S2)に空気を流入させ、かつ前記第2対象空間から空気を排出する第2動作とを実行させる制御部(40)とを備え
、
前記第2対象空間(S2)の空気の汚染度合いを示す指標が、所定値以上になると、前記制御部(40)は、前記第2動作を行うことを特徴とする換気システム。
【請求項2】
請求項
1において、
前記第1対象空間(S1)と前記第2対象空間(S2)との湿度差に基づく所定の条件が成立すると、前記制御部(40)は、前記第2動作を行うことを特徴とする換気システム。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記第1対象空間(S1)と外部空間とを連通する第2連通路(23,24,27)と、
前記第2連通路(23,24,27)を開閉する第2開閉機構(25,26,28)とを有し、
前記第1動作は、
前記第1開閉機構(22,26)および前記第2開閉機構(25,26,28)を閉じ、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給し、かつ、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する動作であり、
前記制御部(40)が、
前記第1開閉機構(22,26)を閉じ、前記第2開閉機構(25,26,28)を開け、かつ前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)に空気を供給し、かつ前記第2連通路(23,24,27)を介して前記第1対象空間(S1)の空気を外部空間へ流出させる第3動作を行うことを特徴とする換気システム。
【請求項4】
請求項
3において、
前記第2対象空間(S2)よりも前記第1対象空間(S1)の空気清浄度の基準が高く設定されている場合において、前記第1対象空間(S1)の空気の汚染度合いを示す指標が所定値以上となると、前記制御部(40)は、前記第3動作を行うことを特徴とする換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学薬品や微生物などを扱うクリーンルーム等において、室圧調整は重要である。例えば、クリーンルーム内を陰圧に調整することによって、室外への微生物の拡散を抑制する。特許文献1には、給気ファンの給気風量と、排気ファンの排気風量とを調節することにより、室圧を目標室圧にする給排気ファンの制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クリーンルーム内での作業中に空気が汚染されると、作業者を保護するために速やかに該クリーンルーム内の空気を排出する必要がある。給気ファンによる給気風量と排気ファンによる排気風量とを増大させることにより、クリーンルーム内の空気の排出を促すことができる。しかし、給気風量と排気風量とを増大させるだけでは、該クリーンルームの換気が十分ではないおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、対象空間の状態に応じて、換気の動作を切り換えることができる換気システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
第1対象空間(S1)と第2対象空間(S2)とを連通する第1連通路(21,24)と、
前記第1連通路(21,24)を開閉する第1開閉機構(22,26)と、
前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給する給気装置(8)と、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する排気装置(9)とを含む換気装置(7)と、
前記第1開閉機構(22,26)を閉じ、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給し、かつ前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する第1動作と、前記第1開閉機構(22,26)を開け、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)に空気を供給し、前記第1連通路(21,24)を介して前記第1対象空間(S1)から前記第2対象空間(S2)に空気を流入させ、かつ前記第2対象空間から空気を排出する第2動作とを実行させる制御部(40)とを備える換気システムである。
【0007】
第1の態様では、第1動作により、給気装置(8)は第1対象空間(S1)と第2対象空間(S2)とに空気を供給する。第2動作により、第1対象空間(S1)に給気された空気が第1連通路(21,24)を介して第2対象空間(S2)へ流れる。第1動作から第2動作に切り換えることにより、第2対象空間(S2)へ供給される空気の流量が増大する。このように、対象空間(S)の状態に応じて換気動作を切り換えることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記第2対象空間(S2)の空気の汚染度合いを示す指標が、所定値以上になると、前記制御部(40)は、前記第2動作を行う。
【0009】
第2の態様では、第2対象空間(S2)の空気が汚染されたとき、第2動作を行う。そのことによって、第2対象空間(S2)の汚染物質を空気と共に比較的に速やかに排出できる。その結果、汚染物質による第2対象空間(S2)にいる人への影響を抑えることができる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記第1対象空間(S1)と前記第2対象空間(S2)との湿度差に基づく所定の条件が成立すると、前記制御部(40)は、前記第2動作を行う。
【0011】
第3の態様では、第1対象空間(S1)と第2対象空間(S2)との湿度差に基づいて、所定の条件が成立すると一方の空間を加湿または除湿できる。
【0012】
第4の態様は、
第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1対象空間(S1)と、外部空間とを連通する第2連通路(23,24,27)と、
前記第2連通路(23,24,27)を開閉する第2開閉機構(25,26,28)とを有し、
前記第1動作は、
前記第1開閉機構(22,26)および前記第2開閉機構(25,26,28)を閉じ、前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)に空気を供給し、かつ、前記第1対象空間(S1)および前記第2対象空間(S2)から空気を排出する動作であり、
前記制御部(40)は、
前記第1開閉機構(22,26)を閉じ、前記第2開閉機構(25,26,28)を開け、かつ前記換気装置(7)を制御して、前記第1対象空間(S1)に空気を供給し、かつ前記第2連通路(23,24,27)を介して前記第1対象空間(S1)の空気を外部空間へ流出させる第3動作を行う。
【0013】
第4の態様では、第1動作から第3動作に切り換えることにより第1対象空間(S1)の空気を比較的速やかに換気できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、
前記第2対象空間(S2)よりも前記第1対象空間(S1)の空気清浄度の基準が高く設定されている場合において、前記第1対象空間(S1)の空気の汚染度合いを示す指標が所定値以上となると、前記制御部(40)は、前記第3動作を行う。
【0015】
第5の態様では、第1動作から第3動作に切り換えることにより、第1対象空間(S1)の空気は少なくとも第2連通路(23,24,27)を介して外部空間へ排出される。その結果、第1対象空間(S1)を比較的に速やかに換気できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る換気システムが適用される対象空間の概略の全体構成図である。
【
図3】
図3は、換気システムの換気動作の前後に亘る、室内空間の汚染度を示す指標の変化を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、バックアップ運転時の空気の流れを模式的に示した図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係る換気システムが適用される対象空間の概略の全体構成図である。
【
図6】
図6は、フレッシュアップ運転時の空気の流れを模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、変形例2に係る換気システムが適用される対象空間の概略の全体構成図である。
【
図8】
図8は、バックアップ運転時の空気の流れを模式的に示した図である。
【
図9】
図9は、フレッシュアップ運転時の空気の流れを模式的に示した図である。
【
図10】
図10は、バックアップ運転時およびフレッシュアップ運転時の空気の流れを模式的に示した図である。
【
図11】その他の実施形態に係る排気装置の概略の構成図である。
【
図12】その他の実施形態に係る給気装置の概略の構成図である。
【
図13】その他の実施形態に係る給気装置の概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
図4、
図6、および
図8~
図10の太線矢印は空気の流れを示す。
【0018】
《実施形態》
図1に示すように、実施形態1の換気システム(1)は、隣り合う2つの室内空間(R1,R2)の換気を制御する。換気システム(1)は、室内空間(R1,R2)の空気の汚染度を示す指標に基づいて、該指標が高い方の室内空間(R1,R2)の空気の排出を促す。
【0019】
室内空間(R1,R2)は、例えば、医薬品製造施設や、微生物やウイルスなどを扱う実験施設などにあるクリーンルームである。クリーンルームは、比較的高い空気清浄度が要求される。室内空間(R1,R2)に汚染性物質が拡散されると空気の汚染度が上昇する。汚染性物質は、例えば人体に影響を及ぼし得る微粒子である。微粒子は、微生物やガスなどの粒子状物質を含む。
【0020】
室内空間(R1,R2)には、空気の管理基準が設定される。空気の管理基準が高い室内空間(R1,R2)ほど、高い清浄度が求められる。以下では、室内空間(R1,R2)の空気の管理基準の高さをグレードで表す。例えば、無菌操作が要求される室内空間(R1,R2)では、コンタミネーションリスクを抑えるために空気の管理基準は比較的高く設定される。一方、資材を保管するような室内空間(R1,R2)は、空気の管理基準は比較的低く設定される。
【0021】
グレードは、例えば3段階(A~C)で示される。ここでは、グレードAが最も高く、グレードCが最も低い。グレードBは、グレードCよりも高くグレードAよりも低い。本実施形態では、隣り合う2つの室内空間(R1,R2)である第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)には、グレードBが設定される。
【0022】
室内空間(S)は、天井面、床面、および壁面(4)に区画される。各室内空間(R1,R2)の壁面(4)には、給気口(5)と排気口(6)とが形成される。給気口(5)から室内空間(R1,R2)に空気が供給される。排気口(6)から室内空間(R1,R2)の空気が排出される。換気システム(1)は、室内空間(R1,R2)を換気する換気装置(7)を有する。
【0023】
〈換気装置〉
換気装置(7)は、給気装置(8)と排気装置(9)とを有する。給気装置(8)は、給気口(5)を介して室内空間(R1,R2)に空気を供給する。排気装置(9)は、排気口(6)を介して各室内空間(S)の空気を排気する。
【0024】
給気装置(8)は、給気路(12)、給気ファン(11)、および給気ダンパ(15)を有する。
【0025】
給気路(12)は、主給気路(12a)と、主給気路(12a)から分岐する第1分岐給気路(12b)および第2分岐給気路(12c)とを有する。主給気路(12a)には、給気ファン(11)が接続される。給気ファン(11)は、室外の空気を主給気路(12a)に搬送する。給気ファン(11)は、後述する制御部(40)によって制御される。第1分岐給気路(12b)は、第1室内空間(R1)の給気口(5)に接続する。第2分岐給気路(12c)は、第2室内空間(R2)の給気口(5)に接続する。
【0026】
給気ダンパ(15)は、第1給気ダンパ(15a)および第2給気ダンパ(15b)を有する。第1給気ダンパ(15a)は、第1分岐給気路(12b)に接続する。第1給気ダンパ(15a)は、第1分岐給気路(12b)の開度を調節する。第1給気ダンパ(15a)により、第1室内空間(R1)へ供給される空気流量が調節される。第1給気ダンパ(15a)は、後述する制御部(40)によって制御される。
【0027】
第2給気ダンパ(15b)は、第2分岐給気路(12c)に接続する。第2給気ダンパ(15b)は、第2分岐給気路(12c)の開度を調節する。第2給気ダンパ(15b)により、第2室内空間(R2)へ供給される空気流量が調節される。第2給気ダンパ(15b)は、後述する制御部(40)によって制御される。
【0028】
排気装置(9)は、第1排気路(14a)、第2排気路(14b)、および排気ファン(13)を有する。
【0029】
第1排気路(14a)の一端は、第1室内空間(R1)の排気口(6)に接続される。第1排気路(14a)の他端は、室外空間に連通する。第2排気路(14b)の一端は、第2室内空間(R2)の排気口(6)に接続される。第2排気路(14b)の他端は、室外空間に連通する。
【0030】
排気ファン(13)は、第1排気ファン(13a)および第2排気ファン(13b)を有する。第1排気ファン(13a)は、第1排気路(14a)に接続する。第1排気ファン(13a)は、第1室内空間(R1)の空気を第1排気路(14a)に搬送する。第1排気ファン(13a)により、第1室内空間(R1)から排気される空気流量が調節される。第1排気ファン(13a)は、後述する制御部(40)によって制御される。
【0031】
第2排気ファン(13b)は、第2排気路(14b)に接続する。第2排気ファン(13b)は、第2室内空間(R2)の空気を第2排気路(14b)に搬送する。第2排気ファン(13b)により、第2室内空間(R2)から排気される空気流量が調節される。第2排気ファン(13b)は、後述する制御部(40)によって制御される。
【0032】
以下では、室内空間(R1,R2)に供給される空気流量を給気流量という。また、室内空間(R1,R2)から排出される空気流量を排気流量という。
【0033】
〈ダクトおよびダンパ〉
空調システム(1)は、第1ダクト(21)および第1ダンパ(22)を有する。第1ダクト(21)は、本開示の第1連通路(21)である。第1ダクト(21)は第1室内空間(R1)と第2室内空間(R2)とを連通する。第1ダンパ(22)は、本開示の第1開閉機構(22)である。第1ダンパ(22)は、第1ダクト(21)に接続される。第1ダンパ(22)は、第1ダクト(21)を開閉する。第1ダンパ(22)は、後述する制御部(40)によって制御される。
【0034】
〈センサ〉
換気システム(1)は、粒子検出センサ(31)を有する。粒子検出センサ(31)は、室内空間(R1,R2)の空気中に浮遊する微粒子を検出する。室内空間(R1,R2)における粒子濃度は、該室内空間(S)の空気の汚染度合いを示す指標を表す。粒子検出センサ(31)のセンサ部(図示省略)は、各室内空間(R1,R2)内に配置される。粒子検出センサ(31)が検出する室内空間(R1,R2)内の粒子濃度が高いほど、室内空間(R1,R2)の汚染度は高い。
【0035】
〈制御部〉
換気システム(1)は、制御部(40)を有する。制御部(40)は、各室内空間(S)の粒子濃度に基づいて、換気装置(7)、および第1ダンパ(22)を制御する。制御部(40)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。
【0036】
図2に示すように、制御部(40)は、入力部(42)、出力部(43)、記憶部(44)、演算部(45)、および判定部(46)を有する。
【0037】
入力部(42)には、粒子検出センサ(31)が検出した室内空間(R1,R2)の粒子数が入力される。入力部(42)には、各室内空間(S)の空間容積が入力されてもよい。
【0038】
記憶部(44)には、入力された室内空間(S)の粒子数や空間容積は、記憶部(44)に記憶される。記憶部(44)は、粒子濃度の閾値が記憶される。粒子濃度の閾値は、本開示の所定値である。閾値は予め設定される。閾値は変更可能である。記憶部(44)には、目標室圧が記憶される。目標室圧は、室内空間(R1,R2)の粒子濃度の閾値に応じて決定される各室内空間(S)の室圧である。目標室圧は変更可能である。目標室圧は予め設定される。
【0039】
演算部(45)は、記憶部(44)に記憶された室内空間(R1,R2)の粒子数および空間容積に基づいて、室内空間(R1,R2)の空気の粒子濃度を求める。
【0040】
判定部(46)は、室内空間(R1,R2)の粒子濃度が、閾値に達したかを判定する。判定部(46)は、後述するバックアップ運転およびフレッシュアップ運転において、各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧になったかを判定する。
【0041】
出力部(43)は、各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧となるように、各給気ダンパ(15)、および各排気ファン(13)を制御する制御信号を出力する。出力部(43)は、第1ダンパ(22)を制御する制御信号を出力する。
【0042】
-室圧制御-
制御部(40)は、換気装置(7)を制御することによって、室内空間(R1,R2)の室圧を調節する。室内空間(R1,R2)の室圧は、給気流量と排気流量とに基づいて調節される。具体的に、制御部(40)は、給気装置(8)および換気装置(7)の少なくとも一方を制御することによって、室内空間(R1,R2)の室圧を調節する。
【0043】
例えば、室内空間(R1,R2)の室圧を増大させるとき、制御部(40)は、給気流量を一定にして、排気流量を減少させるか、排気流量を一定にして、給気流量を増大させるか、または、給気流量を増大させ、排気流量を減少させる。
【0044】
-運転動作-
換気システム(1)の運転動作について、
図3および
図4を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
時点t0において、操作者の操作により換気装置(7)の運転開始信号が入力されると、制御部(40)は換気装置(7)をONする。換気装置(7)がONされると、制御部(40)は、通常運転を開始する。通常運転は、本開示の第1動作である。
【0046】
具体的に、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じる。制御部(40)は、給気ファン(11)を駆動させて第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)に空気を供給する。制御部(40)は、排気ファン(13)を駆動させて、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)の空気を排気する。制御部(40)は、各室内空間(R1,R2)が所定の室圧となるように給気装置(8)および排気装置(9)を制御する。
【0047】
時点t1において、汚染物質である粒子が第2室内空間(R2)内で発生したとする。第1室内空間(R1)における該粒子の濃度が上昇し、時点t2で粒子濃度が閾値X[m-3]以上になると、制御部(40)は、バックアップ運転を実行する。本例のバックアップ運転では、第1室内空間(R1)が、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)が、本開示の第2対象空間(S2)となる。バックアップ運転は、本開示の第2動作である。
【0048】
バックアップ運転では、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開放し、換気装置(7)を制御する。換気装置(7)は、第1室内空間(R1)に空気を供給する。換気装置(7)は、第1ダクト(21)を介して第1室内空間(R1)から第2室内空間(R2)に空気を流入させる。換気装置(7)は、第2室内空間(R2)から空気を排出する。
【0049】
バックアップ運転について、以下詳細に説明する。第2室内空間(R2)内の粒子濃度が閾値X[m-3]以上となると、制御部(40)は、各室内空間(S)の室圧が目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。目標室圧は、第2室内空間(R2)の室圧の方が第1室内空間(R1)の室圧よりも低い室圧である。好ましくは、目標室圧は、第1室内空間(R1)が陽圧であり、かつ、第2室内空間(R2)が陰圧である。
【0050】
制御部(40)は、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)へ供給される空気流量が同じになるように、各給気ダンパ(15)を同じ開度にする。制御部(40)は、第2室内空間(R2)からの排気流量が、第1室内空間(R1)からの排気流量よりも高くなるように第1排気ファン(13a)と第2排気ファン(13b)とを制御する。
【0051】
各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧となると、制御部(40)は第1ダンパ(22)を開放する。制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開放すると同時に、第1排気ファン(13a)の運転を停止させ、かつ、第2排気ファン(13b)の風量を増大させる。第1ダンパ(22)が開くと、第1ダクト(21)を介して第1室内空間(R1)の空気が第2室内空間(R2)へ流入する。第2室内空間(R2)には、給気口(5)と第1ダクト(21)とから空気が供給される。第2室内空間(R2)に供給された空気は、排気口(6)を介して排出される。
【0052】
バックアップ運転により、時点t3において、第2室内空間(R2)の粒子濃度が閾値X[m-3]より低くなると、制御部(40)は通常運転を行う。制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じる。制御部(40)は、第1室内空間(R1)と第2室内空間(R2)の室圧が所定の室圧となるように第1排気ファン(13a)と第2排気ファン(13b)の風量を調節する。
【0053】
〈実施形態の効果〉
制御部(40)は、通常運転(第1動作)とバックアップ運転(第2動作)とを実行する。通常運転では、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じ、換気装置(7)を制御する。換気装置(7)が制御されることによって、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)に空気が供給され、かつ、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)から空気が排出される。バックアップ運転では、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開け、換気装置(7)を制御する。換気装置(7)が制御されることによって、第1室内空間(R1)に空気が供給され、第1ダクト(21)を介して第1室内空間(R1)から第2室内空間(R2)に空気が流入する。さらに、第2室内空間(R2)から空気が排出される。
【0054】
通常運転からバックアップ運転に切り換えることにより第2室内空間(R2)への給気流量を増大させることができる。さらに、第2室内空間(R2)の排気流量を増大させることで、第2室内空間(R2)の空気を速やかに排出できる。このように、換気システム(1)により、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)の状態に応じて換気動作を切り換えることができる。
【0055】
第2室内空間(R2)の空気の汚染度合いを示す指標が、所定値以上になると、制御部(40)は、バックアップ運転を行う。このことにより、第2室内空間(R2)の空気が汚染されても、バックアップ運転を行うことにより、第2室内空間(R2)の汚染物質を空気と共に比較的に速やかに排出できる。その結果、第2室内空間(R2)にいる人への汚染物質による影響を抑えることができる。
【0056】
《変形例1》
図5に示すように、本変形例の換気システム(1)は、第2ダクト(23)および第3ダクト(24)を有する。第2ダクト(23)は、第1室内空間(R1)と外部空間とを連通する。外部空間は室外である。第2ダクト(23)は第1室内空間(R1)の壁に設けられる。第3ダクト(24)は、第2室内空間(R2)と外部空間とを連通する。第3ダクト(24)は第2室内空間(R2)の壁に設けられる。
【0057】
本変形例の換気システム(1)は、第2ダンパ(25)および第3ダンパ(26)を有する。第2ダンパ(25)は、第2ダクト(23)に設けられる。第2ダンパ(25)は、第2ダクト(23)を開閉する。第3ダンパ(26)は、第3ダクト(24)に設けられる。第3ダンパ(26)は、第3ダクト(24)を開閉する。第2ダンパ(25)および第3ダンパ(26)は制御部(40)によって個別に制御される。
【0058】
本変形例の換気システム(1)では、通常運転中に室内空間(S)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上となると、該室内空間(S)のフレッシュアップ運転が行われる。フレッシュアップ運転は、室内空間(S)の空気を、第2連通路(23,24)を介して外部空間へ排出する運転である。フレッシュアップ運転は、本開示の第3動作である。
【0059】
フレッシュアップ運転は、例えば、バックアップ運転できない場合に行われる。バックアップ運転できない場合とは、例えば、第1室内空間(R1)のグレードが第2室内空間(R2)のグレードよりも高い場合である。グレードの低い室内空間(S)からグレードの高い室内空間(S)へ空気を流入させることは好ましくない。そのため、第1室内空間(R1)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上となっても、第2室内空間(R2)の空気を第1室内空間(R1)へ流入させることは好ましくない。
【0060】
以下、本変形例の換気システム(1)の運転動作について、
図3および
図6を用いて詳細に説明する。以下では、第1室内空間(R1)のフレッシュアップ運転について説明する。
【0061】
時点t0において、換気装置(7)がONされると、制御部(40)は、通常運転を開始する。具体的に、制御部(40)は、第1ダンパ(22)、第2ダンパ(25)、および第3ダンパ(26)を閉じ、換気装置(7)を制御する。換気装置(7)は、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)に空気を供給する。換気装置(7)は、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)の空気を排出する。
【0062】
時点t1において、汚染物である粒子が第1室内空間(R1)内で発生したとする。第1室内空間(R1)における粒子濃度が上昇し、時点t2で粒子濃度が閾値X[m-3]以上となると、制御部(40)は、フレッシュアップ運転を実行する。本例のフレッシュアップ運転では、第1室内空間(R1)が本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)が本開示の第2対象空間(S2)となる。また、第2ダクト(23)が、本開示の第2連通路(23)となり、第2ダンパ(25)が、本開示の第2開閉機構(25)となる。
【0063】
フレッシュアップ運転では、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じた状態で、第2ダンパ(25)を開け、換気装置(7)を制御する。換気装置(7)は、第1室内空間(R1)に空気を供給し、第2ダクト(23)を介して第1室内空間(R1)の空気を外部空間へ流出させる。換気装置(7)はまた、第1室内空間(R1)の空気を排気口(6)から排出させる。
【0064】
フレッシュアップ運転について以下詳細に説明する。第1室内空間(R1)内の粒子濃度が所定値X[m-3]以上となると、制御部(40)は、第1室内空間(R1)が目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。目標室圧は陽圧である。この場合、制御部(40)は、第1室内空間(R1)の給気流量が排気流量よりも大きくなるように換気装置(7)を制御する。例えば、制御部(40)は、第1排気ファン(13a)の風量を一定にしたままで、第1給気ダンパ(15a)の開度を大きくする。または、制御部(40)は、第1給気ダンパ(15a)の開度を一定にしたままで、第1排気ファン(13a)の風量を減少させる。第1室内空間(R1)の室圧が目標室圧に達したとき、制御部(40)は、第2ダンパ(25)を開放する。第1室内空間(R1)内の空気は、第2ダンパ(25)を介して外部空間へ排出されると共に、排気口(6)からも排出される。
【0065】
時点t3において、第1室内空間(R1)の粒子濃度が閾値X[m-3]より低くなると、制御部(40)はフレッシュアップ運転を停止して、再び通常運転を実行する。制御部(40)は、第2ダンパ(25)を閉じる。制御部(40)は、第1室内空間(R1)を所定の室圧となるように、換気装置(7)を制御する。
【0066】
変形例1によると、通常運転からフレッシュアップ運転に切り換えることにより、第1対象空間(S1)の空気は第2ダクト(23)および排気路(14)を介して排出される。フレッシュアップ運転において、第1室内空間(R1)を陽圧にしてから第2ダンパ(25)を開放することで、第1室内空間(R1)からの排気流量は増大する。その結果、第1室内空間(R1)を比較的速やかに換気できる。
【0067】
《変形例2》
図7に示すように、変形例2の換気システム(1)は3つの室内空間(R1,R2,R3)に適用される。3つの室内空間(R1,R2,R3)は、第1室内空間(R1)、第2室内空間(R2)および第3室内空間(R3)が順に並んで配置される。
【0068】
本変形例の給気装置(8)では、上記変形例1の給気装置(8)にさらに第3分岐給気路(12d)と第3給気ダンパ(15c)とが設けられる。第3分岐給気路(12d)は、主給気路(12a)から分岐し第3室内空間(R3)の給気口(5)に接続する。第3分岐給気路(12d)には、第3給気ダンパ(15c)が接続される。第3給気ダンパ(15c)は、第3分岐給気路(12d)の開度を調節する。第3給気ダンパ(15c)により、第3室内空間(R3)へ供給される空気流量が調節される。第3給気ダンパ(15c)は、制御部(40)により制御される。
【0069】
本変形例の排気装置(9)では、上記変形例1の排気装置(9)にさらに第3排気路(14c)と第3排気ファン(13c)とが設けられる。第3排気路(14c)の一端は、第3室内空間(R3)の排気口(6)に接続される。第3排気路(14c)の他端は、室外に連通する。第3排気路(14c)には、第3排気ファン(13c)が接続される。第3排気ファン(13c)は、第3室内空間(R3)の空気を第3排気路(14c)に搬送する。第3排気ファン(13c)により、第3室内空間(R3)から排気される空気流量が調節される。第3排気ファン(13c)は、制御部(40)によって制御される。
【0070】
本変形例の換気システム(1)では、上記変形例1の換気システム(1)にさらに第4ダクト(27)と、第4ダンパ(28)とが設けられる。第4ダクト(27)は、第3室内空間(R3)と外部空間とを連通する。第4ダクト(27)には第4ダンパ(28)が接続される。第4ダンパ(28)は、第4ダクト(27)を開閉する。第4ダンパ(28)は制御部(40)に制御される。
【0071】
本変形例の換気システム(1)では、第3ダクト(24)は第2室内空間(R2)と第3室内空間(R3)とを連通する。第1ダクト(21)および第3ダクト(24)は、本開示の第1連通路(21,24)である。第1ダンパ(22)および第3ダンパ(26)は、本開示の第1開閉機構(22,26)である。第2ダクト(23)および第4ダクト(27)は、本開示の第2連通路(23,27)である。第2ダンパ(25)および第4ダンパ(28)は、本開示の第2開閉機構(25,28)である。
【0072】
本変形例では、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)のグレードをAとし、第2室内空間(R2)のグレードをBとする。
【0073】
〈バックアップ運転〉
本変形例におけるバックアップ運転の一例について
図3および
図8を用いて説明する。時点t0で制御部(40)は、換気装置(7)をONして通常運転を行う。通常運転では、制御部(40)は、第1~第4ダンパ(28)を閉じる。制御部(40)は、各室内空間(S)の室圧が所定の室圧となるように換気装置(7)を制御する。
【0074】
時点t1で第2室内空間(R2)に汚染物質が発生したとする。時点t2において、汚染物質の粒子濃度が所定値X[m-3]以上となったとき、制御部(40)は、バックアップ運転を行う。バックアップ運転では、第2室内空間(R2)の空気の排出が促される。本例のバックアップ運転では、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)が、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)が本開示の第2対象空間(S2)となる。
【0075】
具体的に、制御部(40)は、各室内空間(S)の室圧を各目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。目標室圧は、第2室内空間(R2)の室圧が、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)の室圧よりも低くなる室圧である。好ましくは、目標室圧は、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)が陽圧であり、かつ、第2室内空間(R2)が陰圧である。制御部(40)は、第1~第3室内空間(R1~R3)の給気流量が同じになるように、各給気ダンパ(15)の開度を調節する。制御部(40)は、第2室内空間(R2)からの排気流量が、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)からの排気流量よりも多くなるように第1~第3排気ファン(13a~13c)を制御する。
【0076】
各室内空間(S)の室圧が目標室圧となると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)および第3ダンパ(26)を開く。制御部(40)は、第1排気ファン(13a)および第3排気ファン(13c)の運転を停止させ、かつ、第2排気ファン(13b)の風量を増大させる。制御部(40)が、第1ダンパ(22)および第3ダンパ(26)を開放すると、第1室内空間(R1)の空気および第3室内空間(R3)の空気が、第2室内空間(R2)に流入する。第2室内空間(R2)には、第2室内空間(R2)の給気口(5)、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)から空気が供給されると共に、第2排気路(14b)を介して空気が排出される。
【0077】
第2室内空間(R2)の粒子濃度が閾値X[m-3]より低くなると、制御部(40)は、バックアップ運転から通常運転に切り換える。制御部(40)は、第1ダンパ(22)および第3ダンパ(26)を閉じる。制御部(40)は、各室内空間(R1~R3)を所定の室圧となるように、換気装置(7)を制御する。
【0078】
このように、バックアップ運転により、第2室内空間(R2)には、第1室内空間(R1)と第3室内空間(R3)と給気口(5)とから空気が供給される。そのため、第2室内空間(R2)の給気流量を増大できる。さらに、第2排気ファン(13b)の風量を増大させることにより、第2室内空間(R2)の排気流量を増大できる。その結果、第2室内空間(R2)の粒子濃度を速やかに低下させることができる。
【0079】
〈フレッシュアップ運転〉
次に、本変形例におけるフレッシュアップ運転の一例について
図3および
図9を用いて説明する。通常運転中に、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)の粒子濃度が閾値X[m
-3]以上になったとする。この場合、バックアップ運転を行うと、グレードBの第2室内空間(R2)からグレードAの第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)へ空気が流入することになる。そのため、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)について、フレッシュアップ運転を行うことが好ましい。本例のフレッシュアップ運転では、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)が、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)が、本開示の第2対象空間(S2)となる。
【0080】
制御部(40)は、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)の室圧が目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。各目標室圧は、陽圧に設定される。各室内空間(R1~R3)の室圧が目標室圧となると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)および第3ダンパ(26)を閉じた状態で、第2ダンパ(25)および第4ダンパ(28)を開放する。第1室内空間(R1)内の空気は、第2ダクト(23)を介して外部空間へ排出されると共に、第1排気路(14a)へ排出される。第3室内空間(R3)内の空気は、第4ダクト(27)を介して外部空間へ排出されると共に、第3排気路(14c)へ排出される。
【0081】
フレッシュアップ運転により、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)の粒子濃度が閾値X[m-3]より低くなると、制御部(40)はフレッシュアップ運転から通常運転に切り換える。制御部(40)は、第2ダンパ(25)および第4ダンパ(28)を開じる。制御部(40)は、各室内空間(S)を所定の室圧となるように換気装置(7)を制御する。
【0082】
このように、複数の室内空間(R1,R3)においてフレッシュアップ運転を同時に行うことができる。ひいては汚染された室内空間(R1,R3)の空気を比較的速やかに排出できる。
【0083】
〈バックアップ運転およびフレッシュアップ運転〉
次に、本変形例におけるバックアップ運転とフレッシュアップ運転とを同時に行う一例について
図3および
図10を用いて説明する。通常運転中に第2室内空間(R2)および第3室内空間(R3)の粒子濃度が閾値X[m
-3]以上となった場合について説明する。この場合、上述したように各室内空間(S)のグレードの関係に基づくと、第2室内空間(R2)についてはバックアップ運転を行い、第3室内空間(R3)についてはフレッシュアップ運転を行うのが好ましい。本例のバックアップ運転およびフレッシュアップ運転では、第1室内空間(R1)および第3室内空間(R3)が、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)は、本開示の第2対象空間(S2)となる。
【0084】
通常運転中に第2室内空間(R2)および第3室内空間(R3)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上となると、制御部(40)は、各室内空間(S)の室圧を各目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。第1室内空間(R1)の目標室圧は、第1室内空間(R1)より低くなる室圧である。好ましくは、第2室内空間(R2)が陰圧であり、第1室内空間(R1)が陽圧である。第3室内空間(R3)の目標室圧は陽圧である。
【0085】
制御部(40)は、第1~第2室内空間(S1~S2)へ供給される空気流量が同じになるように、第1給気ダンパ(15a)および第2給気ダンパ(15b)の開度を調節する。制御部(40)は、第2室内空間(R2)からの排気流量が、第1室内空間(R1)からの排気流量よりも多くなるように第1排気ファン(13a)および第2排気ファン(13b)を制御する。制御部(40)は、第3室内空間(R3)の給気流量よりも排気流量が多くなるように、第3給気ダンパ(15c)および第3排気ファン(13c)を制御する。
【0086】
各室内空間(S)の室圧が目標室圧となると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)および第4ダンパ(28)を開放する。第1室内空間(R1)の空気は、第1ダクト(21)を介して第2室内空間(R2)に流入する。第2室内空間(R2)は、給気口(5)、第1室内空間(R1)から空気が供給されると共に、第2排気路(14b)を介して空気が排出される。第3室内空間(R3)の空気は、第4ダクト(27)を介して外部空間へ排出される共に、第3排気路(14c)を介して排出される。
【0087】
このように、各室内空間(S)に設定されるグレードに応じてバックアップ運転とフレッシュアップ運転とを選択することにより、汚染度が高い室内空間(S)の空気を速やかに排出することができる。
【0088】
《その他の実施形態》
上記実施形態および各変形例においては、以下のような構成としてもよい。
【0089】
換気システム(1)は、4つ以上の室内空間に適用されてもよい。
【0090】
バックアップ運転において、制御部(40)は、各対象空間(S1,S2)が目標室圧となるように各排気ファン(13)の風量を一定にして、各給気ダンパ(15)の開度を制御してもよい。
【0091】
バックアップ運転は、空気の汚染度に関わらず、一方の対象空間(S1,S2)の空気を他方の対象空間(S1,S2)に流す運転であってよい。
【0092】
バックアップ運転は、グレードの低い対象空間(S1,S2)からグレードの高い対象空間(S1,S2)へ空気を供給してもよい。例えば、上記変形例1において、グレードの低い第2室内空間(R2)からグレードの低い第1室内空間(R1)へ空気を供給してもよい。この場合、第2室内空間(R2)が第1対象空間(S1)となり、第1室内空間(R1)が第2対象空間(S2)となる。
【0093】
バックアップ運転は、第1対象空間(S1)と第2対象空間(S2)との湿度差に基づく所定の条件が成立するときに行われる運転であってもよい。例えば、上記実施形態では、通常運転中に第2室内空間(R2)の湿度が第1室内空間(R1)の湿度よりも低い状態において、第2室内空間(R2)の空気を加湿するときにバックアップ運転を行う。この場合、第1室内空間(R1)は、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)は、本開示の第2対象空間(S2)となる。制御部(40)は、第1開閉機構(22)を閉じた状態で、各室内空間(S)の室圧が目標室圧になるように換気装置(7)を制御する。目標室圧は、第2室内空間(R2)の室圧の方が第1室内空間(R1)の室圧よりも低い室圧である。各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧になると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開放する。
【0094】
第1ダンパ(22)が開くと、第1室内空間(R1)の空気が第2室内空間(R2)に流入し、第2室内空間(R2)の空気は加湿される。第2室内空間(R2)が所定の湿度になると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じる。
【0095】
また、通常運転中に第2室内空間(R2)の湿度が第1室内空間(R1)の湿度よりも低い状態において、第1室内空間(R1)の空気を除湿するときにバックアップ運転を行ってもよい。この場合、第1室内空間(R1)は、本開示の第2対象空間(S2)となり、第1室内空間(R1)は、本開示の第1対象空間(S1)となる。目標室圧は、第1室内空間(R1)の室圧の方が第2室内空間(R2)の室圧よりも低い室圧である。各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧になると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開放する。
【0096】
第1ダンパ(22)が開くと、第2室内空間(R2)の空気が第1室内空間(R1)に流入する。このことにより、第1室内空間(R1)の空気の湿度が低下する。第1室内空間(R1)が所定の湿度になると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じる。このように、バックアップ運転により、室内空間(R1,R2)の空気の湿度を調節できる。加えて、所定の湿度に調整した空気を給気装置(8)から各室内空間(R1,R2)に供給する必要がないため省コスト化できる。
【0097】
バックアップ運転における各対象空間(S1,S2)の目標室圧への調節は、第1開閉機構(22,26)が開くと同時に行われてもよいし、第1開閉機構(22,26)が開いた後に行われてもよい。例えば、上記実施形態では、各室内空間(R1,R2)の目標室圧への調節は、第1ダンパ(22)が開くと同時に行われてもよいし、第1ダンパ(22)が開いた後に行われてもよい。
【0098】
バックアップ運転において、各対象空間(S1,S2)の室圧を目標室圧に調節しなくてもよい。例えば、上記実施形態では、第1室内空間(R1)の空気が、第1ダクト(21)を介して第2室内空間(R2)に流れるように、第1ダクト(21)に接続される第1室内空間(R1)の室圧と第2室内空間(R2)の室圧との間に差圧が生じていればよい。
【0099】
バックアップ運転では、各対象空間(S1,S2)に繋がる排気ファン(13)のうち、バックアップ運転の対象となる対象空間(S1,S2)に繋がる排気ファン(13)のみが運転されてもよい。例えば、上記実施形態では、第2室内空間(R2)に繋がる第2ファン(13b)のみが運転されてもよい。
【0100】
バックアップ運転は、第2対象空間(S2)の空気の汚染度合いを示す指標が、所定値以上とならなくても実行されてもよい。
【0101】
バックアップ運転は、第1対象空間(S1)および第2対象空間(S2)の汚染度を示す指標に基づいて行われてもよい。例えば、第1対象空間(S1)の粒子濃度がY[m-3]であり、第2対象空間(S2)の粒子濃度が閾値X[m-3](0<Y<X)である場合、第1対象空間(S1)の粒子濃度Y[m-3]の高さに応じて、第2対象空間(S2)を対象するバックアップ運転を実行してもよい。
【0102】
フレッシュアップ運転は、空気の汚染度の示す指標が比較的高い室内空間(S)を対象とした運転でなくてもよい。
【0103】
フレッシュアップ運転における各対象空間(S1,S2)の目標室圧への調節は、第2開閉機構(25,26,28)が開くと同時に行われてもよいし、第2開閉機構(25,26,28)が開いた後に行われてもよい。例えば、上記変形例1では、第1室内空間(R1)の目標室圧への調節は、第2ダンパ(25)が開くと同時に行われてもよいし、第2ダンパ(25)が開いた後に行われてもよい。
【0104】
フレッシュアップ運転において、第1対象空間(S1)を目標室圧に調節しなくてもよい。例えば、上記変形例1では、第1室内空間(R1)の空気が、第2ダクト(23)を介して外部空間に流れるように、第1室内空間(R1)の室圧が陽圧になっていればよい。
【0105】
フレッシュアップ運転時において、第1対象空間(S1)の排気ファン(13)は停止してもよい。例えば、上記変形例では、フレッシュアップ運転中、第1室内空間(R1)に繋がる第1排気ファン(13a)は停止してもよい。このことにより、第1室内空間(R)の空気はすべて第2ダクト(23)を介して外部空間へ排出される。
【0106】
図11に示すように、上記実施形態の排気装置(9)は、1つの排気ファン(13)と、1つの主排気路(14d)と、2つの分岐排気路(14e,14e)とから構成されてもよい。排気ファン(13)は主排気路(14d)に接続される。分岐排気路(14e,14e)は主排気路(14d)から分岐し、各室内空間(R1,R2)の排気口(6)に接続される。この換気装置(7)では、各室内空間(R1,R2)からの排気風量は一定であるため、各給気ダンパ(15)を制御することにより、各室内空間(R1,R2)の室圧を調節できる。
【0107】
図12に示すように、給気装置(8)は、各室内空間(R1,R2)に1つずつ接続される2つの給気路(12,12)と、各給気路(12)に接続される2つの給気ファン(11,11)を有してもよい。この場合、制御部(40)は、各給気ファン(11)を個別に制御する。そのため、各給気ファンの風量を調節することにより、各室内空間(R1,R2)への給気流量を調節できる。
【0108】
図13に示すように、給気装置(8)は、各室内空間(R1,R2)に1つずつ接続される2つの給気路(12,12)と、各給気路(12)に接続される2つの空調機(32,32)を有していてもよい。この場合、制御部(40)は、各空調機(32)を制御することにより、各室内空間(R1,R2)の室圧に加え、温度および湿度を調節できる。
【0109】
また、いずれか一方の空調機(32)の内部が汚染された場合、該空調機(32)から搬送される空気は汚染されるため、該空調機(32)に繋がる室内空間(R1,R2)へは空気を供給できない。この場合、制御部(40)は、汚染された空調機(32)につながる室内空間(R1,R2)についてバックアップ運転を行う。例えば、通常運転中に、第2室内空間(R2)に空気を供給する空調機(32)が汚染されたとする。制御部(40)は、バックアップ運転を開始して汚染された空調機(32)の運転を停止する。
【0110】
この例では、第1室内空間(R1)は、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)は、本開示の第2対象空間(S2)となる。また、第1ダクト(21)は本開示の第1連通路(21)となり、第1ダンパ(22)は、本開示の第1開閉機構(22)となる。第2排気ファン(13b)は運転しているため、第2室内空間(R2)の室圧は低下する。第1室内空間(R1)が陰圧になると、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を開放する。このことにより、第1室内空間(R1)の空気が第2室内空間(R2)に流入し、第2室内空間(R2)の換気を継続することができる。ひいては第2室内空間(R2)の空気清浄度を維持できる。
【0111】
この場合、1つの空調機(32)で2つの室内空間(R1,R2)を給気する必要があるため、第1室内空間(R1)への給気流量を増大させることが好ましい。また、空調機(32)の汚染を検出するセンサを空調機(32)に設けて、該空調機(32)が汚染されたか否かの判定をしてもよい。また、空調機(32)の上流に設置されるフィルタの破損などにより空調機(32)が汚染され得る状態となった場合に、バックアップ運転を行ってもよい。
【0112】
変形例1において、通常運転中に、第2室内空間(R2)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上になると、制御部(40)は、第2室内空間(R2)のフレッシュアップ運転を実行してもよい。この場合、第2室内空間(R2)が本開示の第1対象空間(S1)となり、第1室内空間(R1)が本開示の第2対象空間(S2)となる。また、第3ダクト(24)が、本開示の第2連通路(24)となり、第3ダンパ(26)が、本開示の第2開閉機構(26)となる。制御部(40)は、第2室内空間(R2)の室圧が目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。その後、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じた状態で、第3ダンパ(26)を開放する。
【0113】
変形例1において、通常運転中に、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上になると、制御部(40)は、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)のフレッシュアップ運転を実行してもよい。この場合、第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)が本開示の第1対象空間(S1)となる。また、第2ダクト(23)および第3ダクト(24)が、本開示の第2連通路(23,24)となり、第2ダンパ(25)および第3ダンパ(26)が本開示の第2開閉機構(25,26)となる。制御部(40)は、各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧となるように換気装置(7)を制御する。その後、制御部(40)は、第1ダンパ(22)を閉じた状態で、第2ダンパ(25)および第3ダンパ(26)を開放する。
【0114】
変形例1において、通常運転中に、第2室内空間(R2)の粒子濃度が閾値X[m-3]以上になると、制御部(40)は、第2室内空間(R2)のバックアップ運転を実行してもよい。第1室内空間(R1)のグレードは、第2室内空間(R2)のグレードより高いため、第1室内空間(R1)の空気を第2室内空間(R2)に流入させてもよいからである。
【0115】
この場合、第1室内空間(R1)が、本開示の第1対象空間(S1)となり、第2室内空間(R2)が、本開示の第2対象空間(S2)となる。また、第1ダクト(21)が本開示の第1連通路(21)となり、第1ダンパ(22)が本開示の第1開閉機構(22)となる。制御部(40)は、第1室内空間(R1)と第2室内空間(R2)の室圧を目標室圧に調節する。目標室圧は、第1室内空間(R1)の室圧よりも第2室内空間(R2)の室圧の方が低い室圧である。各室内空間(R1,R2)の室圧が目標室圧になると、制御部(40)は第2ダンパ(25)および第3ダンパ(26)を閉じた状態で、第1ダンパ(22)を開放する。
【0116】
これにより、第1ダクト(21)を介して第1室内空間(R1)の空気が第2室内空間(R2)へ流入し、第2室内空間(R2)の給気量が増大する。その結果、第2室内空間(R2)の空気の排出を比較的速やかに行うことができる。
【0117】
このように、変形例1において、各室内空間(R1,R2)に設定されるグレードに基づいて、バックアップ運転を実行するか、フレッシュアップ運転を実行するか選択してもよい。
【0118】
室内空間(R1,R2)の汚染度を示す指標は、室内空間(R1,R2)に発生するガス濃度であってもよい。この場合、ガス検出センサ(図示省略)が各室内空間(R1,R2)に配置される。
【0119】
第1室内空間(R1)および第2室内空間(R2)は、第1連通路(21,24)により互いに接続されていればよく、隣り合うように配置されていなくてもよい。
【0120】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、本開示は、換気システムについて有用である。
【符号の説明】
【0122】
S1 第1対象空間
S2 第2対象空間
R1 第1室内空間
R2 第2室内空間
1 換気システム
7 換気装置
8 給気装置
9 排気装置
21 第1ダクト(第1連通路)
22 第1ダンパ(第1開閉機構)
23 第2ダクト(第2連通路)
24 第3ダクト(第1連通路、第2連通路)
25 第2ダンパ(第2開閉機構)
26 第3ダンパ(第1開閉機構、第2開閉機構)
27 第4ダクト(第2連通路)
28 第4ダンパ(第2開閉機構)
40 制御部