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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/407 20060101AFI20240516BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N27/407
G01N27/409
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020168888
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061111
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】松山 大介
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 優人
(72)【発明者】
【氏名】岡井 正名
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181769(JP,A)
【文献】特開2014-199247(JP,A)
【文献】特開2019-045260(JP,A)
【文献】特開2018-021768(JP,A)
【文献】特開2014-202663(JP,A)
【文献】特開2012-225741(JP,A)
【文献】特開2006-337096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/407
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びると共に、対向する主面を有する板状をなし、少なくとも一方の主面の後端側に幅方向に2つ以上離間して電極パッドを有するセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側に配置される絶縁材料からなるセパレータと、
前記セパレータに保持されると共に、前記電極パッドに対向して配置される端子金具であり、軸線方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に繋がって前記電極パッドに接続される先端部と、を備え、前記セパレータによって互いに絶縁されている複数の端子金具と、
を備えるガスセンサであって、
前記セパレータには、前記セパレータの先端向き面から後端側に向かって凹むか又は前記軸線方向に貫通する素子収容部が設けられ、
前記素子収容部は、先端側の第1収容空間と、後端側の第2収容空間と、を有し、
前記第2収容空間は、前記第1収容空間よりも前記センサ素子と前記セパレータとの間の相対的な回動可能角度が小さくなるような回動規制壁を備え、
前記センサ素子の後端側が前記第2収容空間内に収容されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第2収容空間における前記回動可能角度が90度以下である請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記回動可能角度が20度以下である請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記素子収容部が前記センサ素子と離間している請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出するセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の酸素やNOxの濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質を用いたセンサ素子を有するものが知られている。
この種のガスセンサとして、板状のセンサ素子の後端側に複数の電極パッドを設けつつ、センサ素子の後端側の径方向外側を取り囲むように絶縁性のセパレータを配置し、このセパレータに端子金具を保持したものが用いられている(特許文献1、2)。
端子金具は電極パッドに電気的に接続されると共に、端子金具の後端側がリード線にカシメ接続され、センサ素子からのセンサ出力信号がリード線を介して外部に取り出されようになっている。なお、リード線は、ガスセンサの後端側に配置されたゴム製のグロメットを挿通して外部に引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-337096号公報(図4
【文献】特開2013-181769号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図11に示すように、特許文献2に記載のセパレータ500の収容空間500h内にセンサ素子520を挿入してガスセンサを組み付けると、当初はセンサ素子520が設計位置520Rに近い位置に保持される。この設計位置520Rでは、センサ素子520の電極パッドが端子金具510とほぼ平行に接するので接触面積が最大となり、接続状態が良好となる。
しかしながら、ガスセンサの使用に伴い、例えば車両の走行中の振動によってセパレータ500が設計位置520Rから周方向に回動してしまうことがある。
そして、このような回動が起きると、図12に示すように、端子金具510とセンサ素子520の電極パッド520pとが近くなり過ぎ、接触部Cにて斜めに(片当たりに)接触して接触不良となるおそれがある。又、電極パッド520pに対して端子金具510が遠過ぎると、端子金具510が部位Eのように伸び切ってしまい、電極パッド520pとの接圧が低下して接触不良となる。
【0005】
一方、図13に示すような特許文献1に記載のセパレータ600の場合、先端向き面600a側から後端側(図13の矢印の方向)に向かって収容空間600hをストレート状にしている。換言すれば、収容空間600hの外縁を先端から後端に向かって同一寸法としている。
そして、例えば収容空間600hに径方向内側に向かって突出する突出部600p等を設けることで、走行振動等によるセパレータ600の周方向の回動を抑制し、センサ素子520を設計位置520Rの近傍に保持し続けることができる。
しかしながら、この場合、収容空間600hとセンサ素子520とのクリアランスが小さいため、センサ素子520をセパレータ600に挿入し難く、生産性が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、センサ素子の電極パッドと端子金具との接続の信頼性を向上させると共に、センサ素子をセパレータに挿入する際の生産性を向上させたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、対向する主面を有する板状をなし、少なくとも一方の主面の後端側に幅方向に2つ以上離間して電極パッドを有するセンサ素子と、前記センサ素子の後端側に配置される絶縁材料からなるセパレータと、前記セパレータに保持されると共に、前記電極パッドに対向して配置される端子金具であり、軸線方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に繋がって前記電極パッドに接続される先端部と、を備え、前記セパレータによって互いに絶縁されている複数の端子金具と、を備えるガスセンサであって、前記セパレータには、前記セパレータの先端向き面から後端側に向かって凹むか又は前記軸線方向に貫通する素子収容部が設けられ、前記素子収容部は、先端側の第1収容空間と、後端側の第2収容空間と、を有し、前記第2収容空間は、前記第1収容空間よりも前記センサ素子と前記セパレータとの間の相対的な回動可能角度が小さくなるような回動規制壁を備え、前記センサ素子の後端側が前記第2収容空間内に収容されていることを特徴とする。
【0008】
このガスセンサによれば、第1収容空間の回動可能角度が第2収容空間の回動可能角度よりも大きい。このため、セパレータの第1収容空間内にセンサ素子を挿入してガスセンサを組み付ける際、センサ素子が周方向にずれて挿入されても、第1収容空間とセンサ素子とのクリアランスが大きいので、センサ素子をセパレータに容易に挿入することができ、生産性が向上する。
一方、センサ素子の後端側は、第1収容空間よりも回動可能角度が小さい第2収容空間内に収容される。このため、例えば車両の走行中の振動によってセパレータに周方向に回動しようとする力が掛かっても、第2収容空間内に保持されたセンサ素子に対する相対的な回動角度は小さく(2θ内に)なる。その結果、センサ素子の各電極と、対応する端子金具(の各先端部)との距離が近くなり過ぎて両者が斜めに(片当たりに)接触することや、両者の距離が遠過ぎて接圧が低下することが抑制され、接触不良を低減して電極パッドと端子金具との接続の信頼性を向上させることができる。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記第2収容空間における前記回動可能角度が90度以下であってもよい。
回動可能角度が90度を超えると、対応するすべての電極パッドと、端子金具(先端部)を接続させることが困難となり、接点が取れない端子金具が生じる場合がある。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記回動可能角度が20度以下であると、接触不良をさらに低減して電極パッドと端子金具との接続の信頼性をより一層向上させることができる。
【0011】
本発明のガスセンサにおいて、前記素子収容部が前記センサ素子と離間していてもよい。
このガスセンサによれば、走行中の振動等で素子収容部(特に第2収容空間)にセンサ素子が接触して破損することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、センサ素子の電極パッドと端子金具との接続の信頼性を向上させると共に、センサ素子をセパレータに挿入する際の生産性を向上させたガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
図2】センサ素子の斜視図である。
図3】先端側から見たセパレータの底面斜視図である。
図4図3のA-A線に沿う断面図である。
図5図3にて端子金具を保持したセパレータの底面斜視図である。
図6】素子収容部およびセンサ素子の回動可能角度を示す、先端側から見たセパレータの底面図である。
図7】センサ素子の電極パッドと端子金具との接続状態を示すセパレータの底面図である。
図8】先端側から見た変形例のセパレータの底面斜視図である。
図9】先端側から見たさらに別の変形例のセパレータの底面斜視図である。
図10図9のB-B線に沿う断面図である。
図11】従来のガスセンサにおいて、セパレータにセンサ素子を挿入したとき、センサ素子が設計位置に保持された状態を示す底面斜視図である。
図12】従来のガスセンサにおいて、使用中の振動によりセパレータが設計位置から回動した状態を示す底面斜視図である。
図13】従来の別のガスセンサにおいて、セパレータにセンサ素子を挿入した状態を示す底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)200の長手方向に沿う全体断面図、図2はセンサ素子10の斜視図、図3は先端側から見たセパレータ166の底面斜視図、図4図3のA-A線に沿う断面図、図5図3にて端子金具21a、21b、22a、22bを保持したセパレータ166の底面斜視図、図6は素子収容部168およびセンサ素子の回動可能角度2θを示す先端側から見たセパレータ166の底面図、図7はセンサ素子の電極パッドと端子金具との接続状態を示すセパレータ166の底面図、図8は先端側から見た変形例のセパレータの底面斜視図である。
このガスセンサ200は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
【0015】
図1において、ガスセンサ200は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(ガスセンサ200の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、センサ素子10の後端部の周囲を取り囲む状態で配置されるセラミック製のセパレータ166と、センサ素子10とセパレータ166との間に配置される4個の端子金具21a、21b、22a、22b(図1では、2個のみを図示)と、を備えている。
又、センサ素子10の先端のガス検出部10aは、アルミナ等の多孔質保護層20で覆われている。
【0016】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この貫通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が配置されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0017】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層156(以下、滑石リング156ともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0018】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重のプロテクタである、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0019】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、センサ素子10の4個の端子金具21a、21b、22a、22b(図1では、2個のみを表示)とそれぞれ電気的に接続される4本のリード線146(図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔(図示せず)が形成された、ゴム製のグロメット170が配置されている。
さらに、グロメット170の軸線O方向中心には基準雰囲気となる大気を導入するための貫通孔170hが形成され、この貫通孔170hには図示しないフィルタ金具及び撥水性フィルタが保持され、貫通孔170hを介してガスセンサ200の内外に大気を導入可能になっている。
【0020】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、セパレータ166が配置される。なお、このセパレータ166は、センサ素子10の後端側の主面に形成される合計4個の電極パッド(図2参照。図1では2個の電極パッド11a、12aのみを表示)の周囲に配置される。このセパレータ166は、後述する素子収容部168を有する筒状形状に形成されると共に、外表面から径方向外側に突出する鍔部167が備えられている。セパレータ166は、鍔部167が保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に保持される。
【0021】
図2に示すようにセンサ素子10は、軸線O方向に延びる板状をなし、先端部10sが酸素濃度を検出するガス検出部10aとなっていて、ガス検出部10aは多孔質保護層20で覆われている。なお、センサ素子10自身は公知の構成であり、図示はしないが酸素イオン透過性の固体電解質体と1対の電極とを有するガス検出部と、ガス検出部を加熱して一定温度に保持するヒータ部とを備えている。
そして、センサ素子10の一方の主面10Aの後端10E側には、幅W方向に2つの電極パッド11a、11bが並び、ガス検出部10aからのセンサ出力信号がリード部(図示せず)を介してこれら電極パッド11a、11bから出力される。又、主面10Aに対向するように設けられた他方の主面10Bの後端側には、幅W方向に2つの電極パッド12a、12bが並び、リード部(図示せず)を介してヒータ部に電力を供給するようになっている。
【0022】
なお、本発明においては、主面10A、10Bのうち少なくとも一方において、幅W方向に電極パッドが2つ以上離間して並んでいればよい。
各電極パッド11a、11b、12a、12bは、軸線O方向に長い矩形状になっていて、例えばPtを主体とする焼結体として形成することができる。
【0023】
端子金具21aは、軸線O方向に延びる板状の本体部21a1と、本体部21a1の先端縁から後端に向かって折り返された先端部21a2と、本体部21a1の後端に接続する圧着端子部21a3とを一体に備えている。
又、本実施形態では、4本の端子金具21a、21b、22a、22bはいずれも同一形状であるので端子金具21aについてのみ説明したが、他の端子金具21b、22a、22bの構成も同様である。各端子金具21a~22bに接続される各電極パッド11a、11b、12a、12bも同様である。
【0024】
圧着端子部21a3は公知の筒状をなし、この筒内に被覆を向いて導線を露出させたリード線146を挿入して圧着することで、リード線146が電気的に接続される。
先端部21a2の先端縁は後端に向かって折り返されて自由端を形成している。先端部21a2は電極パッド11aと(電気的に)接続する。
各端子金具21a~22bは、例えば1枚の金属板(インコネル(登録商標)等)を打ち抜いた後、先端部21a2等を折り曲げて製造することができるが、これに限定されない。
【0025】
次に、セパレータ166について説明する。
図3は先端側から見たセパレータ166の底面斜視図、図4図3のA-A線に沿う断面図、図5図3にて端子金具21a、21b、22a、22bを保持したセパレータ166の底面斜視図を示す。
セパレータ166の中心には、セパレータ166の先端向き面166aから後端側に向かって凹む素子収容部168が設けられている。そして、素子収容部168の径方向外側には、矩形孔からなる端子収納穴166hが2個ずつ(合計4個)並び、各端子収納穴166hは、素子収容部168の第1収容空間168a(図4参照)に連通するように軸線方向に貫通している。
さらに、図4に示すように、素子収容部168は、先端側の第1収容空間168aと、後端側の第2収容空間168bとを有し、第2収容空間168bは後述する2つの回動規制壁168wを備えている。
【0026】
より詳しくは先端側から見て、第1収容空間168aはH字状の輪郭で形成され、第2収容空間168bは第1収容空間168aの底面168sの中央部に配置されている。そして、第2収容空間168bの輪郭は、第1収容空間168aの輪郭よりも小さな矩形状をなし、当該矩形の長辺がH字の横棒に沿っている。
又、第2収容空間168bは第1収容空間168aの底面168sから後端側に凹む空間として形成され、2つの回動規制壁168wは、第2収容空間168bの輪郭における長辺を示す側壁(軸線O方向に沿う壁)をなしている。
そして、図4に示すように、センサ素子10の後端10E側が第2収容空間168b内に収容されている。なお、図4において、センサ素子10の厚み方向に沿う面が見えている。
【0027】
一方、図5に示すように、端子金具21a、21b、22a、22bが、互いに接触しないよう隔離された状態でセパレータ166の各端子収納穴166h内に保持されると共に、素子収容部168(第1収容空間168a)に臨んでいる。
なお、センサ素子10が素子収容部168に収容されていない状態では、それぞれ対向する各端子金具21a、22aの各先端部21a2、22a2、及び各端子金具21b、22bの各先端部21b2、22b2は、弾性により互いに接している。
【0028】
次に、図6図7を参照し、回動可能角度2θ、2φ及びそれによる作用効果について説明する。なお、図6では、見やすくするため、端子金具21a、21b、22a、22bのうち端子金具21aのみを破線で図示し、他の端子金具の図示を省略している。
まず、図6の設計位置10Rは、セパレータ166内のセンサ素子10の理想的な(設計上の)配置位置である。設計位置10Rでは、センサ素子10の各電極パッド11a~12bが対応する端子金具21a~22b(の各先端部21a2~22b2)とほぼ平行に接するので接触面積が最大となり、接続状態が良好となる。又、各電極パッド11a~12bと対応する端子金具21a~22bとの距離もほぼ同じとなるので、片当たりや接圧の低下を抑制し、この点でも接続状態が良好となる。
【0029】
これに対し、第1収容空間168aの輪郭は第2収容空間168b(ひいては設計位置10R)の輪郭よりも大きい。このため、セパレータ166の第1収容空間168a内にセンサ素子10を挿入してガスセンサを組み付ける際、センサ素子10が設計位置10Rより周方向にずれて挿入されても(図6のセンサ素子10y)、第1収容空間168aとセンサ素子10とのクリアランスが大きいので、センサ素子10をセパレータ166に容易に挿入することができ、生産性が向上する。
例えば、図6の例では、第1収容空間168a内でセンサ素子10は、第1収容空間168aの輪郭を構成し径方向内側に向かって突出する突出部166pに当接するまで、軸線Oを中心に周方向に回動することができる。このとき、第1収容空間168a内でセンサ素子10が軸線Oを中心に回動することができる最大角度をφとすると、2φを「第1収容空間168aにおける回動可能角度」とする。
これは、第1収容空間168a内で、センサ素子10は図6の上側にも回動でき、又、図6の左右の線に線対称に図6の下側にも回動できるから、φを2倍する。
【0030】
一方、第2収容空間168bの輪郭は第1収容空間168aの輪郭よりも小さい。これにより、センサ素子10の後端10E側が第2収容空間168b内に収容されると(図1図4参照)、第1収容空間168aにおける回動可能角度2θは2φよりも小さくなる。
例えば、図6の例では、第2収容空間168b内でセンサ素子10は、第2収容空間168bの輪郭を構成する回動規制壁168wに当接するまで、軸線Oを中心に回動することができる(図6のセンサ素子10x)。
ここで、第2収容空間168b内でセンサ素子10が軸線Oを中心に回動することができる最大角度をθとする。又、2φの場合と同様に、2θを「第2収容空間168bにおける回動可能角度」とする。
なお、本例では、設計位置10Rのうち、センサ素子10の主面10A,10B(図2参照)に沿う方向が回動規制壁168wの延びる方向に平行である。又、第2収容空間168bの輪郭は設計位置10Rの外側に位置するが、なるべく設計位置10Rに近付けるのが好ましい。
【0031】
以上のように、センサ素子10の後端10E側は、第1収容空間168aよりも回動可能角度が小さい(2θ<2φである)第2収容空間168b内に収容される。このため、例えば車両の走行中の振動によってセパレータ166に周方向に回動しようとする力が掛かっても、第2収容空間168b内に保持されたセンサ素子10の回動角度は小さく(2θ内に)なる。
その結果、図7に示すように、センサ素子10の各電極パッド11a~12bと、対応する端子金具21a~22b(の各先端部21a2~22b2)との距離が近くなり過ぎて両者が斜めに(片当たりに)接触することや、両者の距離が遠過ぎて接圧が低下することが抑制され、接触不良を低減して電極パッドと端子金具との接続の信頼性を向上させることができる。
【0032】
ここで、図7において、つまりセンサ素子10の後端10E側が第2収容空間168b内に収容されている状態で、対応するすべての電極パッド11a~12bと、端子金具21a~22b(先端部)とが接続している。換言すれば、対応するすべての電極パッド11a~12bと、端子金具21a~22b(先端部)が接続するように、2θが設定されている。
【0033】
一方、センサ素子10が周方向にずれて挿入されたときにセンサ素子10の後端10E側が第1収容空間168aと第2収容空間168bとの間の部位(例えば、図4の底面168s)に当接した場合は、センサ素子10の後端10E側が第2収容空間168b内に収容されないことになり、製造不良として排除される。
この製造不良は、例えばセパレータ166へのセンサ素子10の挿入荷重や、挿入深さ等で検出することができる。
【0034】
第2収容空間168bにおける回動可能角度2θが90度以下であることが好ましい。2θが90度を超えると、対応するすべての電極パッド11a~12bと、端子金具21a~22b(先端部)を接続させることが困難な場合がある。回動可能角度2θが20度以下であるとより好ましい。
素子収容部168がセンサ素子10と離間していると、走行中の振動等で素子収容部168(特に第2収容空間168b)にセンサ素子10が接触して破損することを抑制できる。
【0035】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、図8に示すように、セパレータ266の素子収容部268が軸線O方向に貫通する孔であってもよい。なお、図8の例では、第2収容空間268bが矩形の貫通孔となっていて、この貫通孔の2つの側壁(第2収容空間168bの輪郭における長辺を示す側壁)が回動規制壁268を構成する。
【0036】
又、回動規制壁の構成も限定されず、例えば、図9に示すような一対の突部を回動規制壁368wとしてもよい。
ここで、図9のセパレータ366において素子収容部368は凹部であり、第1収容空間168aと同様なH字状の輪郭の第1収容空間368aが形成されている。そして、第1収容空間368aの底面368sから先端側へ向かい、センサ素子10の厚み方向(短辺側)に沿う一対の側壁から軸心O(中心)に向かってそれぞれ突出するように回動規制壁368wが形成されている。
【0037】
この場合、センサ素子10の後端10E側が底面368s近傍まで挿入されると、センサ素子10が軸線Oの周りに回動しても、センサ素子10の短辺側が回動規制壁368wに当接した時点で回動が阻止される。その結果、2θ<2φとなる。
ここで、図9の断面図である図10に示すように、2つの回動規制壁368wで挟まれた領域が第2収容空間368bとなる。なお、図10において、センサ素子10の主面が見えている。
【0038】
セパレータ、端子金具、電極パッドの構成も限定されない。
さらに、ガスセンサの種類としては、酸素センサの他、全領域空燃比センサ、及びNOxセンサ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0039】
10 センサ素子
10A センサ素子の一方の主面
10B センサ素子の他方の主面
11a、11b、12a、12b 電極パッド
21a、21b、22a、22b 端子金具
21a1、21b1、22a1、22b1 本体部
21a2、21b2、22a2、22b2 先端部
166、266、366 セパレータ
166a 先端向き面
168、268、368 素子収容部
168a、268a、368a 第1収容空間
168b、268b、368b 第2収容空間
168w、268w、368w 回動規制壁
200 ガスセンサ
O 軸線
2φ 第1収容空間における回動可能角度
2θ 第2収容空間における回動可能角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13