(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240516BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2020168922
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】野間 啓二
(72)【発明者】
【氏名】與那嶺 操
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075278(JP,A)
【文献】特開2005-184957(JP,A)
【文献】特開2020-061874(JP,A)
【文献】国際公開第2014/174579(WO,A1)
【文献】特開2006-238553(JP,A)
【文献】特開2009-225519(JP,A)
【文献】特開2012-075208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の軸方向に前記回転子鉄心を貫通するシャフト挿入孔と、
前記回転子鉄心の軸方向に対して直交する前記回転子鉄心の断面において、前記回転子鉄心の外周に沿って配列され、前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心に設けられた複数の磁石挿入孔と、
前記複数の磁石挿入孔のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの磁石挿入孔の間に1つずつ位置するように前記回転子鉄心に設けられた複数の第1ブリッジ部と、
前記複数の第1ブリッジ部のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置し、前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心に設けられ、前記回転子鉄心の周方向における幅が前記複数の第1ブリッジ部より広い複数の第1緩衝孔と、
前記複数の磁石挿入孔のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置
し、前記回転子鉄心の横断面における形状が前記回転子鉄心の周方向に沿った環状扇形の長孔である複数の第2緩衝孔とを備え、
前記複数の第1ブリッジ部のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの第1ブリッジ部の間には、前記複数の磁石挿入孔のうち1つの磁石挿入孔が配置されており、他のブリッジ部は存在せず、
前記複数の第1緩衝孔と前記複数の第2緩衝孔とは、前記回転子鉄心を中心とする同一円の周上に第1緩衝孔と第2緩衝孔が交互に表れるように配列されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1緩衝孔は、前記回転子鉄心の径方向における幅より前記回転子鉄心の周方向における幅が広いことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1緩衝孔の前記回転子鉄心の周方向における端部の内側面が、平面により構成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1緩衝孔の前記回転子鉄心の径方向における位置が、前記シャフト挿入孔より前記第1ブリッジ部に近いことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機において、
前記回転子鉄心の横断面における前記第1緩衝孔の形状は、長方形であることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1緩衝孔が、前記回転子鉄心の径方向に複数設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の軸方向に前記回転子鉄心を貫通するシャフト挿入孔と、
前記回転子鉄心の軸方向に対して直交する前記回転子鉄心の断面において、前記回転子鉄心の外周に沿って配列され、前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心に設けられた複数の磁石挿入孔と、
前記複数の磁石挿入孔のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの磁石挿入孔の間に1つずつ位置するように前記回転子鉄心に設けられた複数の第1ブリッジ部と、
前記複数の第1ブリッジ部のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置し、前記回転子鉄心の周方向における幅が前記複数の第1ブリッジ部より広い複数の第1緩衝孔と、
前記複数の磁石挿入孔のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置
し、前記回転子鉄心の横断面における形状が前記回転子鉄心の周方向に沿った環状扇形の長孔である複数の第2緩衝孔とを備え、
前記複数の第1ブリッジ部のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの第1ブリッジ部の間には、前記複数の磁石挿入孔のうち1つの磁石挿入孔が配置されており、他のブリッジ部は存在せず
前記複数の第1緩衝孔と前記複数の第2緩衝孔とは、前記回転子鉄心を中心とする同一円の周上に第1緩衝孔と第2緩衝孔が交互に表れるように配列されていることを特徴とする回転子。
【請求項8】
請求項7に記載の回転子において、
前記第1緩衝孔は、前記回転子鉄心の径方向における幅より前記回転子鉄心の周方向における幅が広いことを特徴とする回転子。
【請求項9】
請求項7に記載の回転子において、
前記第1緩衝孔の前記回転子鉄心の周方向における端部の内側面が、平面により構成されていることを特徴とする回転子。
【請求項10】
請求項7に記載の回転子において、
前記第1緩衝孔の前記回転子鉄心の径方向における位置が、前記シャフト挿入孔より前記第1ブリッジ部に近いことを特徴とする回転子。
【請求項11】
請求項7に記載の回転子において、
前記回転子鉄心の横断面における前記第1緩衝孔の形状は、長方形であることを特徴とする回転子。
【請求項12】
請求項7に記載の回転子において、
前記第1緩衝孔が、前記回転子鉄心の径方向に複数設けられていることを特徴とする回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転子鉄心に複数の磁石挿入孔を設けて複数の永久磁石を回転子鉄心に埋め込んだ回転子を備える埋込磁石型の回転電機(例えば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
埋込磁石型の回転電機では、回転子鉄心に複数の永久磁石を回転子鉄心の周方向に均等に埋め込むため、複数の磁石挿入孔の各々は、回転子の周方向に均等に設けられ、回転子鉄心を軸方向に貫通する。そのため、複数の磁石挿入孔の回転子鉄心の周方向に隣合う2つの磁石挿入孔の間のブリッジ部に応力が集中して機械強度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ブリッジ部の応力集中を緩和させ、回転子鉄心の機械強度の低下を抑制できる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回転子鉄心と、前記回転子鉄心の軸方向に前記回転子鉄心を貫通するシャフト挿入孔と、前記回転子鉄心の軸方向に対して直交する前記回転子鉄心の断面において、前記回転子鉄心の外周に沿って配列され、前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心に設けられた複数の磁石挿入孔と、前記複数の磁石挿入孔のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの磁石挿入孔の間に1つずつ位置するように前記回転子鉄心に設けられた複数の第1ブリッジ部と、前記複数の第1ブリッジ部のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置し、前記回転子鉄心の軸方向に沿って前記回転子鉄心に設けられ、前記回転子鉄心の周方向における幅が前記複数の第1ブリッジ部より広い複数の第1緩衝孔と、前記複数の磁石挿入孔のそれぞれと前記シャフト挿入孔との間に位置し前記回転子鉄心の横断面における形状が前記回転子鉄心の周方向に沿った環状扇形の長孔である複数の第2緩衝孔とを備え、前記複数の第1ブリッジ部のうち、前記回転子鉄心の周方向において隣合う2つの第1ブリッジ部の間には、前記複数の磁石挿入孔のうち1つの磁石挿入孔が配置されており、他のブリッジ部は存在せず、前記複数の第1緩衝孔と前記複数の第2緩衝孔とは、前記回転子鉄心を中心とする同一円の周上に第1緩衝孔と第2緩衝孔が交互に表れるように配列されていることとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブリッジ部の応力集中を緩和させ、回転子の機械強度の低下を抑制できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態による永久磁石回転電機の片側断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態による他の回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態による他の回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態による他の回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【
図13】本発明の第7の実施形態による回転子鉄心の軸方向に対して直交する回転子鉄心の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第7の実施形態による永久磁石回転電機の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による永久磁石回転電機の片側断面図である。本発明の第1の実施形態による永久磁石回転電機10は、磁石埋込構造(IPM:Interior Permanent Magnet)を有する永久磁石回転電機である。
【0011】
図1に示すように、永久磁石回転電機10は、固定子1と、回転子2と、シャフト3と、軸受4と、負荷側エンドブラケット5aと、反負荷側エンドブラケット5bと、ファン6と、エンドカバー7と、ハウジング8とを備える。
【0012】
固定子1は電機子で、固定子鉄心11を備える。固定子鉄心11は電磁鋼板を積層した円筒状の鉄心で、内周には複数のティース(図示せず)が設けられ、この複数のティースにコイル12が巻回されている。固定子鉄心11の外周は、円筒状のハウジング8に覆われ、固定子1はハウジング8に固定されている。
【0013】
回転子2は界磁で、固定子1の内部空間内に挿入され、固定子1に対して所定の隙間を介して回転自在に取り付けられる。回転子2は回転子鉄心21を備えている。回転子鉄心21は、鋼板を積層した円筒状の鉄心である。回転子鉄心21には、回転子鉄心21の軸方向に沿って複数の磁石挿入孔21aが回転子鉄心21の周方向に設けられている。複数の磁石挿入孔21aの各々には、永久磁石22が挿入されている。
【0014】
回転子鉄心21の両端には、永久磁石22を回転子鉄心21の内部に保持する保持部材23が取り付けられ、締結孔21bに挿入された締結部材24により固定される。そのため、永久磁石22は保持部材23により挟まれ、回転子鉄心21の内部に保持される。なお、永久磁石22は接着剤等により磁石挿入孔21aに固定してもよい。
【0015】
回転子鉄心21の中心軸に設けられた貫通孔であるシャフト孔21cにはシャフト3が挿入され、圧入や焼嵌め等のしまりばめにより回転子鉄心21はシャフト3に結合されている。シャフト3は、2つの軸受4により回転可能に支持され、回転子鉄心21とともに回転する。
【0016】
シャフト3は、永久磁石回転電機10を電動機として使用する場合には出力軸となり、永久磁石回転電機10を発電機として使用する場合には入力軸となる。
【0017】
2つの軸受4は負荷側エンドブラケット5aと反負荷側エンドブラケット5bの各々に固定されている。本実施形態では軸受4として玉軸受を用いているが、ころ軸受でも構わない。負荷側エンドブラケット5aと反負荷側エンドブラケット5bは円盤状の部品で、ハウジング8の端部に取り付けられ、ハウジング8の開口を塞いでいる。
【0018】
ファン6は、永久磁石回転電機10を冷却するための部品で、シャフト3の反負荷側の端部に取り付けられ、エンドカバー7により覆われている。
【0019】
このように構成された永久磁石回転電機10は、固定子1に電力を供給することによりシャフト3からトルクを出力する電動機となり、シャフト3に回転動力を入力することにより固定子1から電力を出力する発電機となる。
【0020】
図2は本発明の第1の実施形態による回転子鉄心21の軸方向に対して直交する回転子鉄心21の断面図で、
図3は
図2のA-O-B線断面図である。回転子鉄心21は、複数(本実施形態では6個)の磁石挿入孔21aと複数(本実施形態では6個)の締結孔21bと1つのシャフト孔21cと複数(本実施形態では6個)の第1緩衝孔21dを備える。
【0021】
複数の磁石挿入孔21aは、回転子鉄心21の軸方向に対して直交する回転子鉄心21の断面(以下、「回転子鉄心21の横断面」という。)において回転子鉄心21の外周に沿って配列され、回転子鉄心21の軸方向に沿って回転子鉄心21に設けられている。また、回転子鉄心21の横断面における複数の磁石挿入孔21aの各々の形状は、回転子鉄心21の径方向が短い長方形となっている。
【0022】
なお、複数の磁石挿入孔21aの各々は貫通孔であること好ましい。なぜならば、回転子鉄心21は通常、打抜かれた鋼板を積層することにより製造される。そのため、複数の磁石挿入孔21aの各々は、鋼板を積層した後に加工することは難しく、積層される前の鋼板に打抜き加工される。したがって、複数の磁石挿入孔21aの各々を貫通孔とすれば、複数の磁石挿入孔21aの各々を打抜き加工した鋼板を積層すればよく、製造コストを抑制することできる。
【0023】
回転子鉄心21の横断面において、磁石挿入孔21aは、径方向の幅W1より周方向の幅W2が広い。また、複数の磁石挿入孔21aの各々は、多角形H(本実施形態では正六角形)の各辺上に位置する。
【0024】
そして、複数の磁石挿入孔21aの回転子鉄心21の周方向において隣合う2つの磁石挿入孔21aの間には第1ブリッジ部21eが設けられている。即ち、回転子鉄心21には複数の第1ブリッジ部21eが設けられている。回転子鉄心21の周方向に配列された複数の磁石挿入孔21aにより分けられる回転子鉄心21の内径部211と外径部212は、第1ブリッジ部21eにより結合されている。また、第1ブリッジ部21eの回転子鉄心21の周方向における幅W3は、磁石挿入孔21aの回転子鉄心21の周方向における幅W2と相関関係にある。
【0025】
締結孔21bは、第1ブリッジ部21eと第1緩衝孔21dの間に設けられた貫通孔である。締結孔21bには、保持部材23を固定する締結部材24が挿入される。なお、保持部材23と締結部材24に代えて接着剤等により、永久磁石22を磁石挿入孔21aに固定することもできる。この場合、締結孔21bを回転子鉄心21に設ける必要はない(
図4、5参照)。
【0026】
シャフト孔21cは、上記のとおり、回転子鉄心21の中心軸に設けられた貫通孔である。しまりばめにより回転子鉄心21をシャフト3に結合させるため、シャフト孔21cの内径は、シャフト3の外径より小さくなっている。そのため、シャフト孔21cの内周面には、シャフト3の外径とシャフト孔21cの内径の寸法差(締め代)に応じた圧力がシャフト3の外周面からかかっている。したがって、回転子鉄心21の内部には、回転子鉄心21の径方向に締め代に応じた圧力による応力(以下、締め代応力という。)が発生している。
【0027】
第1緩衝孔21dは、複数の第1ブリッジ部21eのいずれか1つと、シャフト孔21cとの間に位置し、回転子鉄心21の軸方向に沿って回転子鉄心21に設けられている。
【0028】
また、複数の第1緩衝孔21dの各々の横断面における形状は、回転子鉄心21の周方向に沿った環状扇形(annular sector)となっている。
【0029】
また、第1緩衝孔21dは貫通孔であることが好ましい。その理由は、磁石挿入孔21aと同様に製造コスト抑制できるだけでなく、回転子2の冷却に効果があるためである。
【0030】
第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における幅W4は、第1ブリッジ部21eの回転子鉄心21の周方向における幅W3より広くなっている。また、第1緩衝孔21dは、回転子鉄心21の径方向における幅W5より回転子鉄心の周方向における幅W4が広くなっている。
【0031】
第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における端部の内側面21g,21hは平面により構成されている。また、第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の径方向に対向する内側面21i,21jは、回転子鉄心21の周方向に沿う曲面により構成されている。
【0032】
第1緩衝孔21dは、回転子鉄心21の周方向に複数配列されている。即ち、回転子鉄心21には複数の第1緩衝孔21dが設けられている。また、複数の第1緩衝孔21dの隣合う2つの第1緩衝孔21dの間の各々には第2ブリッジ部21fが設けられている。
【0033】
第2ブリッジ部21fは、回転子鉄心21の複数の第1緩衝孔21dにおける内側部分と外側部分を繋ぐ部分である。第2ブリッジ部21fの回転子鉄心21の外径側には、磁石挿入孔21aが位置している。また、第2ブリッジ部21fの回転子鉄心21の周方向おける幅W6は、第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の径方向における幅W4と相関関係にある。
【0034】
本発明において回転子鉄心21に第1緩衝孔21dを設ける理由を以下に示す。永久磁石回転電機の特性は、永久磁石の大きさと配置により変化する。そのため、永久磁石回転電機を設計するうえで、回転子鉄心に設ける磁石挿入孔の形状や配置は重要な要素となっている。一方で磁石挿入孔の形状や配置による回転子鉄心の強度に対する影響についても考慮する必要がある。
【0035】
回転子鉄心の強度に対する影響要因としては、回転子鉄心に作用する外力と、回転子鉄心を形成する積層鋼板の各々を打ち抜いた時に鋼板に残留する応力等がある。回転子鉄心に作用する外力には、シャフト3の外周面からの圧力や回転子の回転時に回転子鉄心に発生する遠心力等がある。これらの外力により回転子鉄心の内部には応力が発生する。
【0036】
回転子鉄心の内部には複数の磁石挿入孔が回転子鉄心の周方向に設けられている。このように構成された回転子鉄心では、複数の磁石挿入孔の回転子鉄心の周方向において隣合う2つの磁石挿入孔の間に位置する第1ブリッジ部で局所的に応力が増大し、応力集中を生ずる。
【0037】
応力集中が発生した第1ブリッジ部では、疲労強度が低下し、回転子の寿命が短くなる可能性がある。したがって、第1ブリッジ部21eの応力集中を緩和させ、疲労強度の低下を抑制することが課題となる。
【0038】
この課題を解決するため、本実施形態による永久磁石回転電機10と回転子鉄心21は、シャフト孔21cと第1ブリッジ部21eの間に位置し、回転子鉄心21の周方向における幅W4が第1ブリッジ部21eの幅W3より広い第1緩衝孔21dを備えることとした。
【0039】
第1緩衝孔21dを設けたことにより応力集中部である第1ブリッジ部21eには、応力度分布が変化する現象(干渉効果)が作用し、第1ブリッジ部21eの最大応力が小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を緩和でき、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。
【0040】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、第1緩衝孔21dを設けた回転子鉄心21のモデルにおける第1ブリッジ部21eの最大応力は、第1緩衝孔を設けない回転子鉄心のモデルにおける第1ブリッジ部の最大応力に対して約1割小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心21において第1緩衝孔21dを設けた効果が確認された。
【0041】
特に、回転子鉄心21は、磁石挿入孔21aの回転子鉄心の周方向における両端に空隙を設けることにより、漏れ磁束や永久磁石の減磁を抑制できる。しかし、第1ブリッジ部の幅W3がさらに狭くなる。このことにより、第1ブリッジ部では応力集中がさらに増加する。そのため、第1ブリッジ部の疲労強度はさらに低下し、回転子の寿命をさらに短くする可能性がある。
【0042】
しかし、第1緩衝孔21dを設けることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果が作用し、第1ブリッジ部21eの最大応力が小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を緩和でき、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。よって、磁石挿入孔21aの回転子鉄心の周方向における両端に空隙を設けることによる第1ブリッジ部21eの応力集中を緩和でき、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。
【0043】
また、第1緩衝孔21dは、回転子鉄心21の径方向における幅W5より回転子鉄心の周方向における幅W4が広い。このような構成とすることにより、回転子鉄心21の複数の磁石挿入孔21aの内径側の磁路を確保することができる。
【0044】
また、第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における両端部の内側面21g,21hが、平面により構成されている。このような構成とすることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果が第1実施形態より広く作用し、第1ブリッジ部21eの最大応力がさらに小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中をさらに緩和でき、回転子2の機械強度の低下をさらに抑制できる。
【0045】
この効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、内側面21g,21hを平面にした回転子鉄心21のモデルにおける第1ブリッジ部21eの最大応力は、内側面21g,21hを曲面にした回転子鉄心のモデルにおける第1ブリッジ部の最大応力によりも小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心21の第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における両端部の内側面21g,21hを平面により構成する効果が確認された。
【0046】
なお、複数の第1緩衝孔21dの各々の横断面における形状は、
図6に示すように長方形(四角)としても良い。
【0047】
また、第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における幅W4は任意に選択できる。例えば、
図7に示すように、回転子鉄心21に備わる第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の周方向における幅W4を
図4に示す実施形態より狭くし、第2ブリッジ部21fの回転子鉄心21の周方向における幅W6を
図4に示す実施形態より広くして、第2ブリッジ部21fの強度を強化することもできる。
【0048】
このような構成とすることにより、第1ブリッジ部21eとともに第2ブリッジ部21fの最大応力を下げることができる。そのため、本実施形態による回転子鉄心21は、第1ブリッジ部21eと第2ブリッジ部21fに発生する応力集中を緩和でき、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。
【0049】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態による回転子鉄心221の軸方向に対して直交する回転子鉄心221の断面図である。
【0050】
本実施形態による回転子鉄心221は第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。即ち、本実施形態による回転子鉄心221の内径部2211に備わる第1緩衝孔221dと第2ブリッジ部221fの回転子鉄心221の径方向における位置は、第1実施形態による回転子鉄心21の内径部211に備わる第1緩衝孔21dと第2ブリッジ部21fの回転子鉄心21の径方向における位置に比べて、シャフト孔21cよりも第1ブリッジ部21eに近くなっている。
【0051】
このような構成とすることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果がさらに作用し、第1ブリッジ部21eの最大応力が第1実施形態より小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を第1実施形態より緩和でき、回転子2の機械強度の低下を第1実施形態より抑制できる。
【0052】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態による回転子鉄心221のモデルにおける第1ブリッジ部21eの最大応力は、第1実施形態による回転子鉄心21のモデルにおける第1ブリッジ部の最大応力に対して約5%小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心221の特徴による効果が確認された。
【0053】
一方、第1緩衝孔221dと第2ブリッジ部221fの回転子鉄心221の内径部2211の径方向における位置を、第1実施形態による回転子鉄心21の内径部211に備わる第1緩衝孔21dと第2ブリッジ部21fの回転子鉄心21の径方向における位置に比べて、シャフト孔21cよりも第1ブリッジ部21eに近くすると、磁石挿入孔21aに第1緩衝孔221dと第2ブリッジ部221fが近づく。
【0054】
この場合、永久磁石22の近くに空隙である第1緩衝孔221dが形成されるため、回転子鉄心21は磁気抵抗が増大し、磁束が流れにくくなる。
【0055】
そのため、第1緩衝孔221dと第2ブリッジ部221fの回転子鉄心221の内径部2211の径方向における位置は、永久磁石回転電機の特性と回転子鉄心の強度を加味し、任意に選択することが好ましい。
【0056】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態による回転子鉄心321の軸方向に対して直交する回転子鉄心321の断面図である。
【0057】
本実施形態による回転子鉄心321は第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。即ち、本実施形態による回転子鉄心321に設けられた磁石挿入孔321aには、間仕切り部321kが設けられている。間仕切り部321kは、磁石挿入孔321aの長手方向において磁石挿入孔321aを分割するために、回転子鉄心321の内径部3211と外径部3212とを結合する部分である。
【0058】
このような構成とすることにより、磁石挿入孔321aの周囲の回転子鉄心321を補強することができる。そのため、第1ブリッジ部21eに生ずる応力集中を第1実施形態より緩和することができる。したがって、本実施形態は第1実施形態より、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。
【0059】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態による回転子鉄心321のモデルの第1ブリッジ部21eにおける最大応力は、第1実施形態による回転子鉄心21のモデルの第1ブリッジ部における最大応力に対して約3割小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心321の特徴による効果が確認された。
【0060】
なお、本実施形態による回転子鉄心321では、磁石挿入孔321aに1つの間仕切り部321kを設ける実施形態を示した。しかし、これは例示であり。磁石挿入孔321aに複数の間仕切り部321kを設けて、複数の磁石挿入孔321aにより分けられる回転子鉄心321の内径部3211と外径部3212を複数の間仕切り部321kにより結合してもよい。
【0061】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態による回転子鉄心421の軸方向に対して直交する回転子鉄心421の断面図である。本実施形態による回転子鉄心421は第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。
【0062】
即ち、第1実施形態による回転子鉄心21では、シャフト孔21cと第1ブリッジ部21eの間に位置する第1緩衝孔21dが、回転子鉄心21の径方向に1つだけ設けられている。それに対し、本実施形態による回転子鉄心421では、シャフト孔21cと第1ブリッジ部21eの間に位置する第1緩衝孔が、回転子鉄心21の径方向に複数(
図10においては第1緩衝孔21d,221dの2つ)設けられている。そのため、本実施形態による回転子鉄心421には、複数の第1緩衝孔の回転子鉄心21の周方向に隣合う2つの第1緩衝孔の間の各々に設けられた第2ブリッジ部が、回転子鉄心21の径方向に複数(
図10においては第2ブリッジ部21f,221fの2つ)設けられている。
【0063】
このような構成とすることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果が第1実施形態より広く作用し、応力集中係数がさらに第1実施形態より低減させることができる。そのため、第1ブリッジ部21eの最大応力が第1実施形態より小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を第1実施形態より緩和でき、回転子2の機械強度の低下を第1実施形態より抑制できる。
【0064】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態による回転子鉄心421のモデルの第1ブリッジ部21eにおける最大応力は、第1実施形態による回転子鉄心21のモデルの第1ブリッジ部における最大応力に対して約3%小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心421の特徴による効果が確認された。
【0065】
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態による回転子鉄心521の軸方向に対して直交する回転子鉄心521の断面図である。本実施形態による回転子鉄心521は第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。
【0066】
即ち、本実施形態による回転子鉄心521には第2緩衝孔521lが設けられている。第2緩衝孔521lは、第1実施形態による第1緩衝孔21dと同様に、回転子鉄心21の軸方向に回転子鉄心21を貫通し、横断面における形状が環状扇形の長孔である。一方、第2緩衝孔521lは、第1実施形態による第1緩衝孔21dと異なり、複数の磁石挿入孔21aのいずれか1つとシャフト孔21cとの間に設けられている。
【0067】
また、本実施形態による回転子鉄心521では、第1緩衝孔521dの回転子鉄心521の径方向における幅W54が、第1実施形態の第1緩衝孔21dの回転子鉄心21の径方向における幅W4より狭くなっている。
【0068】
そして、第2緩衝孔521lは、本実施形態の複数(本実施形態では6つ)の第1緩衝孔521dの隣合う2つの第1緩衝孔521dの間の各々に設けられている。即ち、回転子鉄心521には複数(本実施形態では6つ)の第2緩衝孔521lが設けられている。さらに、複数の第1緩衝孔521dと複数の第2緩衝孔521lの各々は、回転子鉄心521の同一周上に交互に配列されている。
【0069】
また、第1実施形態による回転子鉄心21には、複数の第1緩衝孔21dの隣合う2つの第1緩衝孔21dの間に第2ブリッジ部21fが設けられている。それに対し、本実施形態による回転子鉄心521には、複数の第1緩衝孔521dと複数の第2緩衝孔521lのうち、回転子鉄心521の周方向に隣合う第1緩衝孔521dと第2緩衝孔521lの間の各々に2ブリッジ部521fが設けられている。このことにより、本実施形態の第2ブリッジ部521fの数は、第1実施形態の第2ブリッジ部21fの数(6つ)に対して2倍(12個)となっている。
【0070】
このような構成とすることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果が働き、応力集中係数が低減される。そのため、第1ブリッジ部21eの最大応力が小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を緩和でき、回転子2の機械強度の低下を抑制できる。
【0071】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、第1緩衝孔521dと第2緩衝孔521lとを設けた回転子鉄心521のモデルにおける第1ブリッジ部21eの最大応力は、第1緩衝孔521dと第2緩衝孔521lとを設けない回転子鉄心のモデルにおける第1ブリッジ部の最大応力に対して約2%小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心521において、第1緩衝孔521dと第2緩衝孔521lとを設けた効果が確認された。
【0072】
また、上記のような構成とすることにより、シャフト孔21cの内周面の応力集中部には干渉効果が第1実施形態より広く作用し、シャフト孔21cの応力集中部の最大応力が第1実施形態より小さくなる。したがって、シャフト孔21cの内周面に発生する応力集中を第1実施形態より緩和でき、回転子2の機械強度の低下を第1実施形態より抑制できる。
【0073】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態の回転子鉄心521のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力は、第1実施形態の回転子鉄心21のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力に対して約15%小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心521において、第1緩衝孔521dと第2ブリッジ部521fとを設けた効果が確認された。
【0074】
(第6の実施形態)
図12は、本発明の第6の実施形態による回転子鉄心621の軸方向に対して直交する回転子鉄心621の断面図である。
【0075】
本実施形態による回転子鉄心621は、第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。即ち、第6実施形態による回転子鉄心621では、複数の磁石挿入孔21aのいずれか1つとシャフト孔21cとの間に、第2緩衝孔621lが設けられている。そして、第2緩衝孔621lは、回転子鉄心621の周方向に配列された複数の第1緩衝孔21dのうち隣合う2つの第1緩衝孔21dの間に設けられた第2ブリッジ部21fと、第2ブリッジ部21fの回転子鉄心621の外径側に位置する磁石挿入孔21aとの間に設けられている。そして、複数の第2緩衝孔621lの隣合う2つの第2緩衝孔621lの間の各々には第3ブリッジ部621mが設けられている。
【0076】
このような構成とすることにより、応力集中部である第1ブリッジ部21eには干渉効果が第1実施形態より広く作用し、第1ブリッジ部21eの最大応力が第1実施形態より小さくなる。したがって、第1ブリッジ部21eに発生する応力集中を第1実施形態より緩和でき、回転子2の機械強度の低下を第1実施形態より抑制できる。
【0077】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態による回転子鉄心621のモデルの第1ブリッジ部21eにおける最大応力は、第1実施形態による回転子鉄心21のモデルの第1ブリッジ部21eにおける最大応力に対して約1割小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心621の特徴による効果が確認された。
【0078】
また、本実施形態による回転子鉄心621では、第2ブリッジ部21fの回転子鉄心621の外径側に第2緩衝孔621lが設けられている。このような構成とすることにより、シャフト孔21cの内周面の応力集中部には干渉効果が第1実施形態より広く作用し、シャフト孔21cの応力集中部の最大応力が第1実施形態より小さくなる。したがって、シャフト孔21cの内周面に発生する応力集中を第1実施形態より緩和でき、回転子2の機械強度の低下を第1実施形態より抑制できる。
【0079】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、第6実施形態による回転子鉄心621のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力は、第1実施形態の回転子鉄心21のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力に対して約6%小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心621において、第2緩衝孔621lと第3ブリッジ部621mとを設けた効果が確認された。
【0080】
(第7の実施形態)
図13は、本発明の第7の実施形態による回転子鉄心721の軸方向に対して直交する回転子鉄心721の断面図である。
【0081】
本実施形態による回転子鉄心721は、第1実施形態による回転子鉄心21と以下の点で異なる。即ち、本実施形態による回転子鉄心721には、第3の実施形態と同様に間仕切り部321kの設けられた磁石挿入孔321aが設けられている。そのため、本実施形態による回転子鉄心721は、第3実施形態の回転子鉄心321と同様の効果を奏する。
【0082】
また、本実施形態による回転子鉄心721には、第5実施形態と同様に複数の第1緩衝孔521dと複数の第2緩衝孔521lの各々が、回転子鉄心521の同一周上に交互に配列されている。そのため、本実施形態による回転子鉄心721は、第5実施形態の回転子鉄心521と同様の効果も奏する。
【0083】
上記の効果を確認するため、回転子鉄心の応力分布の数値解析を所定の条件の下に行った。そうしたところ、本実施形態による回転子鉄心721のモデルの第1ブリッジ部21eにおける最大応力は、第1実施形態による回転子鉄心21のモデルの第1ブリッジ部における最大応力に対して約2割小さくなった。また、本実施形態の回転子鉄心721のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力は、第1実施形態の回転子鉄心21のモデルにおけるシャフト孔21cの内周面の最大応力に対して約2割小さくなった。したがって、本実施形態による回転子鉄心721の特徴による効果が確認された。
【0084】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0085】
なお、本発明の実施形態は、極数が6極で、複数の磁石挿入孔21aの各々が、回転子鉄心21の横断面において、正六角形の各辺を基準として配置されている実施形態を示した。しかし、本発明はこれに限定されず、多極(極数n)で、複数の磁石挿入孔21aの各々が、回転子鉄心21の横断面において、正n角形の各辺を基準として配置される。
【符号の説明】
【0086】
1…固定子、2…回転子、21,221,321,421,521,621,721…回転子鉄心、21a,321a…磁石挿入孔、21c…シャフト孔、21d,221d,521d…第1緩衝孔、21e…第1ブリッジ部、21f,521f…第2ブリッジ部、521l,621l…第2緩衝孔、321k…間仕切り部、10…永久磁石回転電機、W3…第1ブリッジ部の回転子鉄心の周方向における幅、W4…第1緩衝孔の回転子鉄心の周方向における幅、W5…第1緩衝孔の回転子鉄心の径方向における幅、W6…第2ブリッジ部の回転子鉄心の周方向における幅