(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20240516BHJP
E05F 15/603 20150101ALI20240516BHJP
F16G 11/00 20060101ALI20240516BHJP
F16G 11/10 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F16H19/04 Z
E05F15/603
F16G11/00 L
F16G11/00 R
F16G11/10 Z
(21)【出願番号】P 2020170698
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 博稔
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-126436(JP,A)
【文献】特開平05-187159(JP,A)
【文献】特開昭62-141274(JP,A)
【文献】特開2005-273898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
E05F 15/603
F16G 11/00
F16G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力によって、前記ケーシング内を所定の移動方向に沿って移動するスライダと、
前記スライダを一方向に付勢するコイルバネと、
前記スライダに直接または間接的に取り付けられたケーブルエンドを有するケーブルと
を備えた駆動装置であって、
前記スライダが、
前記ケーブルエンドが直接または間接的に取り付けられる係合部と、
前記コイルバネの一部を収容する、前記移動方向に沿って延びるバネ収容部と
を備え、
前記スライダは、
前記駆動部の駆動力によって前記スライダが前記移動方向の一方に移動するときは、前記ケーブルと連動して移動し、前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときは、前記ケーブルに対して相対移動し、
前記バネ収容部に収容された前記コイルバネと、前記ケーブルとは、前記スライダの前記移動方向に沿って同軸上に配置され、
前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときに、前記コイルバネは、前記コイルバネの内周の内側となる内部空洞に前記ケーブルのケーブルエンドを収容した状態で伸長するように構成され
、
前記ケーシングは、前記スライダが摺動する摺動面を有し、
前記スライダの前記バネ収容部は、前記摺動面に対向する位置において、前記スライダの移動方向に沿って延びる開口部を有し、
前記ケーシングが、前記摺動面と、前記摺動面に対して略垂直かつ前記スライダの移動方向に沿って延びる一対の案内壁とを備え、
前記駆動部が、前記スライダと係合するピニオンギヤを有し、
前記スライダが、
前記一対の案内壁に対向して延びる板状の一対の被案内面と、
前記一対の被案内面を繋ぎ、前記ピニオンギヤと係合するラック部を有し、
前記バネ収容部が、前記ラック部および前記一対の被案内面によって画定され、
前記開口部は、前記ピニオンギヤと前記ラック部とが対向する方向で、前記ラック部と反対側に形成されている、駆動装置。
【請求項2】
前記スライダの前記バネ収容部が、前記コイルバネの外周の形状に沿って湾曲した内面を有し、前記内面が、前記コイルバネの外周と周方向で部分的に接触して、前記コイルバネをガイドする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
ケーシングと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力によって、前記ケーシング内を所定の移動方向に沿って移動するスライダと、
前記スライダを一方向に付勢するコイルバネと、
前記スライダに直接または間接的に取り付けられたケーブルエンドを有するケーブルと
を備えた駆動装置であって、
前記スライダが、
前記ケーブルエンドが直接または間接的に取り付けられる係合部と、
前記コイルバネの一部を収容する、前記移動方向に沿って延びるバネ収容部と
を備え、
前記スライダは、
前記駆動部の駆動力によって前記スライダが前記移動方向の一方に移動するときは、前記ケーブルと連動して移動し、前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときは、前記ケーブルに対して相対移動し、
前記バネ収容部に収容された前記コイルバネと、前記ケーブルとは、前記スライダの前記移動方向に沿って同軸上に配置され、
前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときに、前記コイルバネは、前記コイルバネの内周の内側となる内部空洞に前記ケーブルのケーブルエンドを収容した状態で伸長するように構成され、
前記駆動装置が、前記スライダに直接または間接的に取り付けられた第2ケーブルエンドを有する第2ケーブルをさらに備え、
前記スライダが、前記駆動部の駆動力が伝達されて前記移動方向に移動し、前記バネ収容部を有するスライダ本体と、前記スライダ本体に対して、前記移動方向に相対移動可能に設けられた補助スライダとを備え、
前記補助スライダの一端に、前記ケーブルのケーブルエンドが直接または間接的に取り付けられる係合部が設けられ、前記補助スライダの他端に、前記第2ケーブルの第2ケーブルエンドが直接または間接的に取り付けられる第2係合部が設けられ、
前記コイルバネは、前記スライダ本体および前記補助スライダのうち、前記スライダ本体のみを付勢している
、駆動装置。
【請求項4】
前記補助スライダは、前記スライダ本体の前記バネ収容部において、前記コイルバネの前記内部空洞内を移動できるように構成され、
前記補助スライダは、駆動部の駆動力が加わっていない初期状態において、前記移動方向で他方側となる前記補助スライダの一端が、前記スライダ本体の前記移動方向で他方側の端部に位置しており、
前記第2ケーブルが、前記移動方向で一方側に操作されると、前記補助スライダが前記スライダ本体に対して、前記移動方向で一方側に相対移動して、前記補助スライダを介して前記ケーブルが操作される、請求項
3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ケーブルは、駆動部の駆動力によって操作される電動操作用のケーブルであり、
前記第2ケーブルは、手動操作用のケーブルである、請求項
4に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動部の駆動力により、ケーシングに収容されたスライダを移動させて、スライダに接続されたケーブルを駆動するアクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアクチュエータは、ケーシングと、ケーシング内に摺動可能に設けられ、一対のケーブルの端部のそれぞれが係合して接続されるラックプレート(スライダ)とを備えている。このアクチュエータでは、モータの駆動力が伝達された出力ギアの回転力が、ラックプレートのラック部に伝達されて、ラックプレートがケーシング内を往復動作し、ラックプレートの動作方向に応じて、一対のケーブルのそれぞれに操作力が加えられる。
【0003】
ラックプレートがモータの駆動力によって移動して、一方のケーブルがケーシング内に引き込まれて、ケーブルが操作された後、ラックプレートはコイルバネの付勢力によってラックプレートが初期位置に戻る。このラックプレートが初期位置に戻る際、ケーブルがラックプレートと連動して移動すると、ラックプレートによってケーブルが軸方向に押された際に座屈する可能性がある。そのため、特許文献1では、ラックプレートが初期位置に戻るときにはラックプレートと連動せずに、ラックプレートがケーブルの端部に対して相対移動できるように、ラックプレートの移動方向に延びる係止溝を有している。モータの駆動力によってラックプレートが一方向に移動すると、一方のケーブルの端部と係止溝の端部とが係合して、ケーブルの端部がラックプレートとともに一方向に移動して、ケーブルがケーシング内に引き込まれる。モータが停止してラックプレートがコイルバネの付勢力によって初期位置に戻るように移動を開始した時点では、ケーブルの端部はほぼ移動しない。このとき、ラックプレートの移動によって、ケーブルの端部はラックプレートに形成された係止溝内で、ラックプレートに対して相対的に移動する。なお、ケーブルは、ケーブルの操作対象側の端部(ラックプレートに係合する端部とは反対側の端部)に設けられたバネ等の付勢部材によって、初期位置に戻るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1のアクチュエータでは、ラックプレート(スライダ)に、コイルバネを収容する凹部に加えて、ケーブルの端部を係止する係止溝を設ける必要があるため、ラックプレートが大型化してしまう。そのため、ラックプレートを収容するケーシングおよび装置全体が大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、駆動部の駆動力によってケーブルと連動して一方向に移動し、コイルバネの付勢力によって他方向に移動し、他方向への移動の際にケーブルに対して相対移動するスライダを有する駆動装置において、スライダを小型化し、装置全体を小型化することが可能となる駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動装置は、ケーシングと、駆動部と、前記駆動部の駆動力によって、前記ケーシング内を所定の移動方向に沿って移動するスライダと、前記スライダを一方向に付勢するコイルバネと、前記スライダに直接または間接的に取り付けられたケーブルエンドを有するケーブルとを備えた駆動装置であって、前記スライダが、前記ケーブルエンドが直接または間接的に取り付けられる係合部と、前記コイルバネの一部を収容する、前記移動方向に沿って延びるバネ収容部とを備え、前記スライダは、前記駆動部の駆動力によって前記スライダが前記移動方向の一方に移動するときは、前記ケーブルと連動して移動し、前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときは、前記ケーブルに対して相対移動し、前記バネ収容部に収容された前記コイルバネと、前記ケーブルとは、前記スライダの前記移動方向に沿って同軸上に配置され、前記コイルバネの付勢力によって前記スライダが前記移動方向の他方に移動するときに、前記コイルバネは、前記コイルバネの内周の内側となる内部空洞に前記ケーブルのケーブルエンドを収容した状態で伸長するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の駆動装置によれば、駆動部の駆動力によってケーブルと連動して一方向に移動し、コイルバネの付勢力によって他方向へと移動し、他方向への移動の際にケーブルに対して相対移動するスライダを有する駆動装置において、スライダを小型化し、装置全体を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の駆動装置の初期状態を示す上面図である。
【
図2】
図1の駆動装置の一部を示す概略側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ってスライダを切断した、駆動装置の部分断面図である。
【
図4】
図1の駆動装置のスライダを底面側から見た概略図である。
【
図5】
図2に示される状態から駆動部が駆動され、スライダが第1移動方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【
図6】
図5に示される状態からスライダがコイルバネの付勢力によって第2移動方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の駆動装置の初期状態を示す上面図である。
【
図8】
図7に示される駆動装置のスライダのラック部を取り除き、駆動部が省略された概略上面図である。
【
図9】
図8に示される状態から駆動部が駆動され、スライダが第1移動方向に移動した状態を示す概略上面図である。
【
図10】
図9に示される状態からスライダがコイルバネの付勢力によって第2移動方向に移動した状態を示す概略上面図である。
【
図11】
図8に示される状態から第2ケーブルが操作され、補助スライダが第1移動方向に移動した状態を示す概略上面図である。
【
図12】バネケースの貫通孔から補助スライダが突出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の駆動装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の駆動装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<第1実施形態>
図1に示されるように、本実施形態の駆動装置1は、ケーシング2と、駆動部3と、駆動部3の駆動力によって、ケーシング2内を所定の移動方向D1に沿って移動するスライダ4と、スライダ4を一方向に付勢するコイルバネ5と、スライダ4に直接または間接的に取り付けられたケーブルエンド6aを有するケーブル6とを備えている。
【0012】
駆動装置1は、駆動部3の駆動力によってスライダ4を移動方向D1に移動させて、スライダ4に直接または間接的に接続されたケーブル6を移動させる。本実施形態では、駆動装置1は、ケーブル6に接続された作動対象OPを作動させるように構成されている。より具体的には、後述するように、駆動部3の駆動力によってスライダ4が移動方向D1で一方の方向となる第1移動方向D11に移動して、ケーブル6が第1移動方向D11に引き操作された場合(
図5参照)には、ケーブル6によって作動対象OPが操作される。一方、駆動部3の駆動力が解除されると、スライダ4は、コイルバネ5の付勢力によって、第1移動方向D11と反対の方向となる第2移動方向D12に移動して、スライダ4が
図1に示される初期位置に戻される。なお、本実施形態では、駆動装置1には、コイルバネ5およびケーブル6がそれぞれ1つのみ設けられているが、駆動装置1に設けられるコイルバネおよびケーブルの数は、特に限定されない。例えば、後述する実施形態のように、駆動装置1には、手動用のケーブルと電動用のケーブルなど、2つのケーブルが設けられていてもよい。
【0013】
駆動装置1の用途は、駆動部3の駆動力によってスライダ4を移動させて、スライダ4に接続されたケーブル6を移動させることができれば、特に限定されない。具体的には、駆動装置1は、例えば、作動対象OPが車両のシートのリクライニング機構のロック装置や、フューエルリッドのロック装置である場合など、ロック装置のロックを解除するロック解除用の駆動装置とすることができる。
【0014】
なお、本明細書において、スライダ4が移動する方向を移動方向D1と呼び、移動方向D1に垂直な一の方向、特に、スライダ4が摺動する底面(摺動面)21a(
図2参照)に対して垂直な方向を高さ方向D2と呼び、移動方向D1および高さ方向D2の両方に垂直な方向を幅方向D3と呼ぶ。
【0015】
ケーブル6は、スライダ4に接続されて、スライダ4の移動によって操作される。ケーブル6は、本実施形態では、
図1に示されるように、ケーブル6の一端側に設けられたケーブルエンド6aと、ケーブル6の他端側に設けられたケーブルエンド6bと、ケーブル本体6cとを有している。本実施形態では、ケーブル6のケーブルエンド6aはスライダ4に接続され、ケーブル6の他端側のケーブルエンド6bは作動対象OPに接続されている。ケーブル6は、本実施形態では、コントロールケーブルのインナーケーブルであり、ケーブル6は、コントロールケーブルのアウターケーシングOCに挿通されている。ケーブル6は、アウターケーシングOCによって、車体等の取付対象において、所定の配索経路で配索される。なお、本実施形態では、ケーブル6は1本のみで構成されているが、後述する実施形態のように、2本のケーブルが設けられていてもよい。また、後述する実施形態とは異なり、コイルバネの本数や配置を変更することで、ケーブル6以外に、スライダ4の移動によって操作される他のケーブルが設けられていてもよい。
【0016】
ケーシング2は、駆動装置1の構成部品の一部を収容する。具体的には、ケーシング2は、
図1に示されるように、駆動部3、スライダ4およびコイルバネ5を収容している。ケーシング2は、本実施形態では、
図1に示されるように、スライダ4を摺動可能に収容するスライダ収容部21と、駆動部3を収容する駆動部収容部22とを備えている。また、ケーシング2は、移動方向D1でスライダ収容部21の一方側(第2移動方向D12側)に、ケーブル6をケーシング2の内部へと導入するケーブル導入部23を備えている。なお、本実施形態では、ケーシング2は、互いに対して開閉可能な第1ケーシング部材2Aと第2ケーシング部材2B(
図2参照)とを有しており、第1ケーシング部材2Aに対して第2ケーシング部材2Bを閉鎖することによって、各部材を内部に収容するように構成されている。しかし、ケーシング2の全体形状や構造は特に限定されない。
【0017】
ケーシング2は、スライダ4が摺動する摺動面21aを有している。より具体的には、ケーシング2(スライダ収容部21)は、
図1および
図3に示されるように、摺動面21aと、摺動面21aに対して略垂直かつスライダ4の移動方向D1に沿って延びる一対の案内壁21c、21d(
図1および
図3参照)とを備えている。本実施形態では、摺動面21aおよび一対の案内壁21c、21dは、スライダ収容部21に設けられている。スライダ収容部21は、スライダ4が移動方向D1に所定のストロークで摺動可能となる内部空間を有している。本実施形態では、スライダ収容部21の内部空間は、略直方体状の空間であり、スライダ4の摺動面21aとなる底面(以下、底面21aとも呼ぶ)と、底面21aに対向する上面21b(
図2参照)と、スライダ4の幅方向D3で両側に設けられた、一対の案内壁21c、21dとなる側壁(
図3参照。以下、側壁21c、21dとも呼ぶ)と、スライダ4の移動方向D1で両側に設けられた端壁21e、21f(
図1参照)によって画定されている。本実施形態では、底面21aは平坦面として形成されているが、底面21aはスライダ4が摺動可能であれば、平坦面である必要はない。また、側壁21c、21dは、幅方向D3でスライダ4の幅に対応した幅で離間している。これにより、側壁21c、21dは、スライダ4を移動方向D1に沿って安定して移動させるガイド部として機能する。なお、本実施形態では、摺動面は、ケーシング2の底面21aとして示されているが、摺動面は、底面21a以外の面であってもよい。
【0018】
ケーブル導入部23は、ケーブル6のケーブルエンド6aをスライダ4に接続できるように、ケーブル6をケーシング2の外部からケーシング2の内部へと導入する部位である。具体的には、ケーブル導入部23は、移動方向D1でスライダ収容部21の一方側(第2移動方向D12側)に設けられている。ケーブル導入部23は、ケーシング2の外部と、スライダ収容部21の内部空間とを連通させる導入開口23aを有している。ケーブル導入部23の導入開口23aから、ケーブル6がスライダ収容部21内に導入される。本実施形態では、ケーブル導入部23は、アウターケーシングOCの一端と係合して、アウターケーシングOCを取り付け可能に構成されている(
図1および
図2参照)。
【0019】
駆動部収容部22は、
図1に示されるように、駆動部3を収容する。具体的には、駆動部収容部22は、スライダ収容部21に幅方向D3で隣接した位置に設けられ、スライダ収容部21と連通している。本実施形態では、駆動部収容部22は、後述するように、駆動部3のモータ31と複数の伝動部材32a、32b、32c、32dを収容できるように構成されている。
【0020】
駆動部3は、スライダ4を移動させる駆動力を発生させる。本実施形態では、駆動部3は、
図1に示されるように、モータ31と、1または複数の伝動部材32a、32b、32c、32dとを有している。モータ31は、モータ31の回転力によって、伝動部材32a、32b、32c、32dを介して、スライダ4を移動方向D1に移動させる。伝動部材32a、32b、32c、32dは、本実施形態では、モータ31により生じる回転力をスライダ4へ向かって伝達可能に構成されたギヤである。具体的には、駆動部3は、
図1に示されるように、後述するようにラック部(動力伝達部)44を有するスライダ4と係合するピニオンギヤPを有しており、駆動部3の駆動力をスライダ4に伝達する。より具体的には、モータ31の出力軸および各伝動部材32a、32b、32c、32dは、幅方向D3に延びる回転軸を中心に回転するように構成されており、伝動部材32dのピニオンギヤPがスライダ4のラック部44に係合して、スライダ4を移動させるように構成されている。なお、駆動部3の構造は、スライダ4を移動させる駆動力を発生させることができれば、図示する構造に限定されない。例えば、本実施形態では、駆動部3はスライダ4に回転駆動力を伝達するように構成されているが、駆動部3はスライダ4に直線駆動力を伝達するように構成されていてもよい。
【0021】
スライダ4は、駆動部3の駆動力によって移動方向D1(第1移動方向D11)に移動可能であり、スライダ4に連結されたケーブル6を操作する。本実施形態では、スライダ4は、
図1および
図2に示されるように、ケーブルエンド6aが直接または間接的に取り付けられる係合部41と、コイルバネ6の一部を収容する、移動方向D1に沿って延びるバネ収容部42とを備えている。また、本実施形態では、スライダ4は、ケーシング2の摺動面21aに沿って摺動する摺動部43(
図2および
図3参照)と、駆動部3と接続され、駆動部3の駆動力が伝達される動力伝達部44(
図2参照)とを有している。より具体的には、スライダ4は、
図1および
図3に示されるように、一対の案内壁21c、21dに対向して延びる板状の一対の被案内面45a、45bと、一対の被案内面45a、45bを繋ぎ、ピニオンギヤPと係合するラック部44を有している。
【0022】
スライダ4の形状および構造は、駆動部3の駆動力によってスライダ4が移動方向D1に移動可能であり、スライダ4に連結されたケーブル6を操作することができれば、特に限定されない。本実施形態では、スライダ4は、
図1および
図2に示されるように、移動方向D1に所定の長さを有し、移動方向D1に垂直な断面が略U字状(
図3参照)となる形状を有している。より具体的には、スライダ4は、
図3に示されるように、幅方向D3に離間し、被案内面45a、45bを有する一対の側壁W1、W2と、一対の側壁W1、W2を幅方向D3に繋ぎ、ラック部44を有する上壁W3とを有している。スライダ4は、側壁W1、W2の高さ方向D2で上壁W3の反対側に、摺動部43が設けられた底壁W4を有している。一対の側壁W1、W2は、互いに平行に摺動面21aに略垂直に、移動方向D1に沿って延びている。
図1に示されるように、スライダ4の移動方向D1の一端側(第2移動方向D12側)には係合部41が設けられ、スライダ4は、係合部41に取り付けられたケーブル6のケーブル本体6cが通るケーブル挿通部46を有している。また、スライダ4の移動方向D1の他端側(第1移動方向D11側)は、コイルバネ5を移動方向D1でスライダ4のバネ収容部42に挿入できるように開口している。
【0023】
係合部41は、ケーブル6のケーブルエンド6aが直接または間接的に取り付けられる部位である。係合部41が設けられる位置は特に限定されないが、本実施形態では、係合部41は、スライダ4の移動方向D1の端部に設けられている。具体的には、係合部41は、
図1に示されるように、スライダ4の上壁W3側からケーブルエンド6aを取り付け可能に構成されている。本実施形態では、ケーブルエンド6aはスライダ4の係合部41に係合してスライダ4に直接取り付けられている。しかし、ケーブルエンド6aは、スライダ4の移動に伴ってケーブル6が操作されるように構成されていれば、スライダ4に他部材を介して間接的に取り付けられていてもよい。
【0024】
係合部41は、本実施形態では、ケーブル6のケーブルエンド6aが移動方向D1で係合できるように構成されている。本実施形態では、ケーブルエンド6aは、係合部41と移動方向D1の一方で係合しているが、移動方向D1の他方では係合していない。具体的には、ケーブルエンド6aの後端(ケーブル本体6c側)が係合部41に設けられた壁部411に移動方向D1で係合し、ケーブル6aの先端は、係合部41と移動方向D1で係合していない。これにより、例えば、スライダ4が第1移動方向D11に移動したときは、ケーブル6のケーブルエンド6aが係合部41に係合した状態で第1移動方向D11に引き操作される(
図5参照)。一方、ケーブル6が第1移動方向D11に移動した後、スライダ4がコイルバネ6の付勢力により第2移動方向D12に移動する際には、ケーブル6のケーブルエンド6aはスライダ4と共に移動せずにその場に取り残され、スライダ4が先行して第2移動方向D12に移動する(
図6参照)。なお、ケーブル6は、
図6に示される状態から、作動対象OP側に設けられた付勢部材(図示せず)によって、
図2に示される初期位置に向かって第2移動方向D12に移動する。
【0025】
動力伝達部44は、駆動部3の駆動力をスライダ4に伝達可能に構成された部位である。本実施形態では、駆動部3の回転運動がスライダ4の動力伝達部(ラック部)44に伝達されて、スライダ4の直線運動に変換されている。しかし、駆動部3が直線運動をするように構成されて、駆動部3の直線運動が動力伝達部に伝達されて、スライダ4が直線運動をするように構成されていてもよい。本実施形態では、動力伝達部44は、
図2に示されるように、駆動部3の伝動部材32dのピニオンギヤPが係合するラック部(以下、ラック部44と呼ぶ)である。具体的には、ラック部44は、スライダ4のうち、高さ方向D2で、摺動面21aと対向する摺動部43とは反対側となる面に設けられている。ラック部44は、高さ方向D2に凹凸を形成する歯と溝とが、移動方向D1に交互に形成された歯列を有している。伝動部材32dのピニオンギヤPが回転することにより、ピニオンギヤPの歯とラック部44の歯列とが噛み合って、スライダ4が移動方向D1に移動する。なお、動力伝達部は、必ずしもラック部である必要はなく、駆動部3の構造に応じて変更可能である。
【0026】
被案内面45a、45bは、
図3に示されるように、一対の案内壁21c、21dに対向して延びている。被案内面45a、45bは、ケーシング2内で一対の案内壁21c、21dに案内されて、スライダ4をケーシング2内で安定して移動させる。一対の被案内面45a、45bおよび一対の案内壁21c、21dの形状および構造は、スライダ4をケーシング2内で安定して移動方向D1に移動させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、被案内面45a、45bは、スライダ4の幅方向D3に互いに平行かつ対向して設けられている。一対の被案内面45a、45bは、本実施形態では、平坦面として形成された案内壁21c、21dに対してそれぞれ面接触する平坦面として形成されている。しかし、一対の被案内面は、例えば一対の案内壁が湾曲面である場合、その湾曲面に沿って移動方向D1に案内可能な湾曲面であってもよい。また、被案内面は、スライダ4が移動方向D1に安定して移動するようにガイドされていれば、案内壁21c、21dに設けられたガイド突起またはガイド溝に係合する、ガイド溝またはガイド突起などを有していてもよい。
【0027】
摺動部43は、スライダ4が移動方向D1に移動する際に、ケーシング2の摺動面21aに対して摺動する。摺動部43は、スライダ4が移動方向D1に円滑に移動することができれば、平坦面であってもよいし、摺動面21aに設けられたガイド突起やガイド溝に係合して移動方向D1に案内されるように構成されていてもよい。本実施形態では、スライダ4のバネ収容部42が、
図3および
図4に示されるように、摺動面21aに対向する位置において、スライダ4の移動方向D1に沿って延びる開口部Aを有している。摺動部43は、スライダ4の、摺動面21aに対向する部位(本実施形態では底壁W4)のうち、幅方向D3で開口部Aを挟むように、開口部Aの両側に移動方向D1に沿って延びる部位である。この場合、摺動部43は、ケーシング2の摺動面21aとの接触面積が減り、スライダ4の摺動抵抗を減らすことができる。また、この開口部Aが設けられていることにより、詳細は後述するが、スライダ4をコンパクトにすることができる。また、開口部Aが設けられていることにより、スライダ4とコイルバネ5との接続状態など、スライダ4の内部空間内の状態を容易に確認することができる。
【0028】
バネ収容部42は、コイルバネ5の一部を収容可能な内部空間を有するスライダ4の部位である。バネ収容部42は、スライダ4において移動方向D1に沿って延びている。バネ収容部42の形状は、移動方向D1に沿って延び、コイルバネ5の一部を収容可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、バネ収容部42は、側壁W1、W2および上壁W3によってバネ収容部42の内部空間が画定されている。バネ収容部42は、スライダ4の係合部41が設けられている端部とは反対側の端部から、係合部41が設けられた部位まで移動方向D1に延びている。
【0029】
本実施形態では、
図3に示されるように、バネ収容部42は、コイルバネ5の外周の形状に沿って湾曲した内面ISを有している。内面ISは、コイルバネ5の外周と周方向で部分的に接触して、コイルバネ5をガイドする。これにより、バネ収容部42の内面ISがコイルバネ5の外周をガイドすることによって、コイルバネ5を安定して伸縮させることができる。
【0030】
バネ収容部42に一部が収容されるコイルバネ5は、本実施形態では、移動方向D1に伸縮軸を有する圧縮コイルバネである。
図1に示される初期状態において、コイルバネ5の移動方向D1の一部は、バネ収容部42に収容され、他の部位はスライダ4から露出している。コイルバネ5の一端は、バネ収容部42の係合部41側の端部に設けられたバネ座SS(
図2参照)に支持され、コイルバネ5の他端は、ケーシング2の端壁21eに支持されている。スライダ4が第1移動方向D11に移動するときにコイルバネ5は収縮し(
図5参照)、スライダ4が第2移動方向D12に移動するときに、コイルバネ5は伸長する(
図1参照)。なお、コイルバネ5は後述する実施形態のように、円筒状のバネケースSCに収容されていてもよい(
図7および
図12参照)。
【0031】
本実施形態では、スライダ4は、
図2および
図5に示されるように、駆動部3の駆動力によってスライダ4が移動方向D1の一方(第1移動方向D11)に移動するときは、ケーブル6と連動して移動する。また、スライダ4は、
図5および
図6に示されるように、コイルバネ5の付勢力によってスライダ4が移動方向D1の他方(第2移動方向D12)に移動するときは、ケーブル6に対して相対移動する。より具体的には、駆動部3が駆動されると、駆動部3の駆動力によって、
図1および
図2に示される初期状態から、第2移動方向D12へとスライダ4を付勢するコイルバネ5の付勢力に抗して、スライダ4が第1移動方向D11に移動する(
図5参照)。スライダ4が第1移動方向D11に移動すると、ケーブルエンド6aが係合部41に係合したケーブル6は、スライダ4とともに第1移動方向D11へと移動する。駆動部3の駆動力が解除されると、スライダ4は、
図5に示される状態からコイルバネ5の付勢力によって第2移動方向D12に移動する(
図6参照)。なお、このとき、伝動部材32a、32b、32c、32dは、コイルバネ5の付勢力によって第2移動方向D12に移動するスライダ4から加わる力によって、スライダ4が第1移動方向D11に移動したときの回転方向とは逆方向に回転する。スライダ4が、
図5に示される状態から第2移動方向D12に移動するとき、ケーブル6のケーブルエンド6aはスライダ4の移動に伴って第2移動方向D12に移動するように係合していないので、スライダ4がケーブルエンド6aに対して相対移動して、ケーブルエンド6aはその場に取り残される(
図6参照)。なお、本実施形態では、ケーブルエンド6aは、上述したように、スライダ4の第2移動方向D12への移動に遅れて、作動対象OP側に設けられた付勢部材によって、第2移動方向D12へ移動する。
【0032】
ここで、バネ収容部42に収容されたコイルバネ5と、ケーブル6とは、
図1~
図3に示されるように、スライダ4の移動方向D1に沿って同軸上に配置されている。したがって、コイルバネ5の付勢力によってスライダ4が移動方向D1の他方(第2移動方向D12)に移動するときに、コイルバネ5は、コイルバネ5の内周の内側となる内部空洞にケーブル6のケーブルエンド6aを収容した状態で伸長するように構成されている(
図6参照)。言い換えると、ケーブル6のケーブルエンド6aは、コイルバネ5の内部空洞内をコイルバネ5に対して、移動方向D1に相対移動可能となっている。これにより、コイルバネ5とケーブルエンド6aとが移動方向D1でオーバーラップして動作する駆動装置1において、ケーブルエンド6aがコイルバネ5の内部空洞内でコイルバネ5に対して相対移動できる。したがって、本実施形態の駆動装置1は、特許文献1のように、コイルバネ用の移動スペースと、ケーブルエンド用の移動スペースとが、厚さ方向にずらしてスライダに別々に設けられている構造とは異なり、スライダ4を小型化することができる。これにより、駆動装置1全体の小型化が可能となる。また、コイルバネ5の伸長軸と、ケーブル6の軸とが同軸となるので、スライダ4がコイルバネ5の付勢力によって動作する際またはコイルバネ5の付勢力に抗して動作する際に、スライダ4に移動方向D1に対して傾斜する力が加わりにくく、スライダ4を安定して移動させることができる。
【0033】
また、上述したように、本実施形態では、スライダ4のバネ収容部42は、摺動面21aに対向する位置において、
図3および
図4に示されるように、スライダ4の移動方向D1に沿って延びる開口部Aを有している。開口部Aは、移動方向D1でコイルバネ5が設けられた範囲に亘って形成されている。この開口部Aが設けられていることにより、スライダ4の摺動抵抗を低減させるだけでなく、コイルバネ5の径方向でのスライダ4の寸法を小さくすることができる。具体的には、
図3に示されるように、コイルバネ5の周方向の一部(
図3におけるコイルバネ5の下端部分)が、摺動面21aには接触しない状態で開口部Aを形成する底壁W4の空間内に入り込んでいる。これにより、コイルバネ5の周方向の一部(
図3におけるコイルバネ5の下端部分)に径方向で対向する方向に、スライダ4の壁部が不要となり、省略可能な壁部(本実施形態では底壁W4)の厚さの分、コイルバネ5の径方向でのスライダ4の寸法を小さくすることができる。なお、本実施形態では、摺動面がケーシング2の底面21aであり、ケーシング2の高さ方向D2でのスライダ4の寸法を小型化できるが、例えば、摺動面が側壁W1、W2の一方(または他方)である場合、側壁W1、W2に開口部を形成して、幅方向D3でのスライダ4の寸法を小型化することもできる。
【0034】
本実施形態では、
図3に示されるように、バネ収容部42が、ラック部44(上壁W3)および一対の被案内面45a、45b(側壁W1、W2)によって画定され、開口部Aは、ピニオンギヤPとラック部44とが対向する方向(高さ方向D2)で、ラック部44と反対側に形成されている。この場合、ピニオンギヤPとラック部44とが係合していることにより、スライダ4は高さ方向D2でスライダ収容部21の摺動面(底面)21a側に押圧された状態で摺動する。本実施形態では、スライダ4は摺動面(底面)21aに押圧されるが、摺動面(底面)21aと対向する、摺動部43を有する底壁W4に開口部Aが設けられていることにより、スライダ4の摺動抵抗が低減される。したがって、スライダ4の移動方向D1での移動が円滑になる。
【0035】
<第2実施形態>
つぎに、第2実施形態の駆動装置1について、
図7~
図12を用いて説明する。なお、以下の説明において、上述した実施形態と共通する事項についての説明は省略し、相違点を中心に説明する。なお、本実施形態の構成と、第1実施形態で説明した内容とは組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施形態では、駆動装置1は、
図7に示されるように、ケーブル6に加えて、スライダ4に直接または間接的に取り付けられた第2ケーブルエンド7a(以下、単にケーブルエンド7aと呼ぶ)を有する第2ケーブル7をさらに備えている。また、本実施形態では、スライダ4は、
図7および
図8に示されるように、駆動部3の駆動力が伝達されて移動方向D1に移動し、バネ収容部42を有するスライダ本体4Aと、スライダ本体4Aに対して、移動方向D1に相対移動可能に設けられた補助スライダ4Bとを備えている。
【0037】
本実施形態の駆動装置1は、2本のケーブル(ケーブル6および第2ケーブル7)を有している。2本のケーブル6、第2ケーブル7のそれぞれの用途は特に限定されないが、本実施形態では、ケーブル6(以下、第1ケーブル6と呼ぶ)は、駆動部3の駆動力によって操作される電動操作用のケーブルであり、第2ケーブル7は、手動操作用のケーブルである。具体的には、本実施形態の駆動装置1は、駆動部3の駆動力によって第1ケーブル6を操作可能であるとともに、第2ケーブル7の手動操作によっても第1ケーブル6を操作可能となっている。この場合、例えば、駆動部3が故障などにより動作しない場合や、選択的に手動での操作を可能にしたい場合に、第2ケーブル7の操作により、作動対象OPを作動させることができる。このように、本実施形態の駆動装置1は、駆動部3による電動操作および第2ケーブル7による手動操作のいずれかで第1ケーブル6を操作することができる。
【0038】
第1ケーブル6は、スライダ4に接続されて、スライダ4の移動によって操作される。本実施形態では、第1ケーブル6のケーブルエンド6aはスライダ4に接続されている。より具体的には、ケーブルエンド6aは、
図7および
図8に示されるように、スライダ4の補助スライダ4Bの移動方向D1での一端(第2移動方向D12側の端部)に設けられた第1係合部41aに接続されている。第1ケーブル6の他端側のケーブルエンド6bは、
図7および
図8に示されるように、作動対象OPに接続されている。第1ケーブル6は、アウターケーシングOCに挿通され、アウターケーシングOCによって、車体等の取付対象において所定の配索経路で配索される。
【0039】
第2ケーブル7は、スライダ4の補助スライダ4Bに接続されて、第2ケーブル7が操作されることによって、第2ケーブル7が接続された補助スライダ4Bを移動方向D1に移動させる。第2ケーブル7が補助スライダ4Bを移動方向D1に移動させることにより、補助スライダ4Bに接続された第1ケーブル6が引き操作される。第2ケーブル7は、
図7に示されるように、第2ケーブル7の一端側に設けられたケーブルエンド7aと、第2ケーブル7の他端側に設けられたケーブルエンド7bと、ケーブル本体7cとを有している。本実施形態では、第2ケーブル7のケーブルエンド7aは、
図7および
図8に示されるように、スライダ4の補助スライダ4Bの移動方向D1での他端(第1移動方向D11側の端部)に設けられた第2係合部41bに接続されている。第2ケーブル7の他端側のケーブルエンド7bは、
図7および
図8に示されるように、第2ケーブル7を操作する操作部8に接続されている。第2ケーブル7は、アウターケーシングOCに挿通され、アウターケーシングOCによって、車体等の取付対象において所定の配索経路で配索される。なお、操作部8は、手動操作が可能な操作レバー等であってもよいし、電動操作が可能な操作部であってもよい。
【0040】
本実施形態では、ケーシング2は、
図7に示されるように、スライダ4を摺動可能に収容するスライダ収容部21と、駆動部3を収容する駆動部収容部22と、移動方向D1でスライダ収容部21の一方側(第2移動方向D12側)に設けられ、第1ケーブル6をケーシング2の内部へと導入する第1ケーブル導入部231と、移動方向D1でスライダ収容部21の他方側(第1移動方向D11側)に設けられ、第2ケーブル7をケーシング2の内部へと導入する第2ケーブル導入部232とを有している。
【0041】
本実施形態では、スライダ収容部21には、
図7および
図8に示されるように、スライダ本体4Aおよび補助スライダ4Bを備えたスライダ4と、コイルバネ5とが設けられている。なお、本実施形態では、コイルバネ5はバネケースSCに収容されている。バネケースSCが設けられている場合、コイルバネ5がバネケースSC内で伸長軸に沿って安定して伸縮するので、コイルバネ5をスライダ収容部21に容易に組み付けることができる。コイルバネ5の外周は、上述した開口部Aの部分を除いて、バネケースSCおよびスライダ(スライダ本体4A)によって覆われている。なお、本実施形態では、バネケースSCは、
図12に示されるように、移動方向D1で一方側(第1移動方向D11側)の端部に補助スライダ4Bが通過可能な大きさに形成された貫通孔Hを有している。バネケースSCの端部に貫通孔Hが設けられている場合、補助スライダ4Bが第1移動方向D11に移動するときに補助スライダ4Bが貫通孔Hを通って移動方向D1に移動することができる。また、バネケースSCやスライダ4をスライダ収容部21に取り付けた後に、ケーブルエンド7aを補助スライダ4Bに組み付けるときに、補助スライダ4Bを貫通孔Hを通して
図12に示される位置まで移動させることによって、補助スライダ4Bの第2係合部41bをバネケースSCの外側に位置させることができる。したがって、ケーブルエンド7aを容易に補助スライダ4Bに組み付けることができる。さらに、貫通孔Hが設けられている場合、補助スライダ4Bは、バネケースSCやスライダ本体4Aなどによって、移動方向D1での移動範囲が規制されない。したがって、補助スライダ4Bの移動方向D1でのストローク設定の自由度が高まる。
【0042】
スライダ本体4Aは、駆動部3の駆動力によって移動方向D1に移動する。本実施形態では、スライダ本体4Aが駆動部3の駆動力によって第1移動方向D11に移動するときには、
図9に示されるように、スライダ本体4Aは補助スライダ4Bと係合して、補助スライダ4Bを第1移動方向D11に移動させる。これにより、補助スライダ4Bに接続された第1ケーブル6が操作される。
【0043】
スライダ本体4Aは、
図7および
図8に示されるように、バネ収容部42を備え、バネ収容部42にコイルバネ5が収容される。コイルバネ5の一端(第2移動方向D12側の端部)は、スライダ本体4Aのバネ座SSに支持され、コイルバネ5の他端(第1移動方向D11側の端部)は、バネケースSCの第1移動方向D11側の端部に支持されている。また、スライダ本体4Aは、補助スライダ4Bを移動方向D1で相対移動可能に収容している。具体的には、スライダ本体4Aは、第1移動方向D11に移動するときには補助スライダ4Bと係合して補助スライダ4Bと共に移動するように構成されている(
図9参照)。また、スライダ本体4Aは、
図9に示される状態から
図10に示される状態への移動時のように、第2移動方向D12に移動するときには、補助スライダ4Bと係合せずに、補助スライダ4Bに対して相対移動するように構成されている。スライダ本体4Aは、スライダ本体4Aの第2移動方向D12側の端部に、補助スライダ4Bの端部と移動方向D1で係合可能な係合壁部W5を有している。これにより、スライダ本体4Aが第1移動方向D11に移動したときに、スライダ本体4Aの係合壁部W5と、補助スライダ4Bの端部(第2移動方向D12側の端部)とが係合して、スライダ本体4Aと補助スライダ4Bとが共に第1移動方向D11に移動する。一方、スライダ本体4Aには、スライダ本体4Aが補助スライダ4Bに対して第2移動方向D12に相対移動するとき(スライダ本体4Aがコイルバネ5によって第2移動方向D12に移動するとき(
図10参照)、および、補助スライダ4Bがスライダ本体4Aに対して第1移動方向D11に移動するとき(
図11参照))に、補助スライダ4Bと係合する部位は設けられていない。これにより、スライダ本体4Aと補助スライダ4Bとの間の相対移動が可能になっている。
【0044】
補助スライダ4Bは、第1ケーブル6および第2ケーブル7が接続されるとともに、スライダ本体4Aに対して移動方向D1に相対移動可能に設けられている。補助スライダ4Bは移動方向D1に延びており、
図8に示されるように、補助スライダ4Bの一端(第2移動方向D12側の端部)に、第1ケーブル6のケーブルエンド6aが直接または間接的に取り付けられる第1係合部41aが設けられ、補助スライダ4Bの他端(第1移動方向D11側の端部)に、第2ケーブル7のケーブルエンド7aが直接または間接的に取り付けられる第2係合部41bが設けられている。補助スライダ4Bは、本実施形態では、
図8~
図11に示されるように、駆動装置1の動作状態に応じて、第1ケーブル6のケーブルエンド6aおよび第2ケーブル7のケーブルエンド7aが移動方向D1に移動可能な移動スペースを有している。本実施形態では、補助スライダ4Bの移動スペースは、ケーブルエンド6aおよびケーブルエンド7aが移動可能な移動方向D1に沿って延びる溝として形成されている。
【0045】
本実施形態では、補助スライダ4Bは、
図7および
図8に示されるように、スライダ本体4Aのバネ収容部42において、コイルバネ5の内部空洞内を移動できるように構成されている。より具体的には、補助スライダ4Bは、コイルバネ5の内部空洞内に入る大きさで形成され、コイルバネ5の内部空洞内で、移動方向D1に移動できるように構成されている。本実施形態では、補助スライダ4Bは、ケーブルエンド6aおよびケーブルエンド7aを収容可能な溝を有する略筒状に形成されている。
【0046】
本実施形態においても、コイルバネ5は、コイルバネ5の内周の内側となる内部空洞に、補助スライダ4Bを介して、第1ケーブル6のケーブルエンド6aおよび第2ケーブル7のケーブルエンド7aを収容した状態で伸長するように構成されている。言い換えると、ケーブルエンド6aおよびケーブルエンド7aは、コイルバネ5の内部空洞内に配置された補助スライダ4B内で、コイルバネ5に対して、移動方向D1に相対移動可能となっている。これにより、コイルバネ5と、ケーブルエンド6a、7aとが移動方向D1でオーバーラップして動作する駆動装置1において、ケーブルエンド6a、7aがコイルバネ5の内部空洞内でコイルバネ5に対して相対移動できる。したがって、本実施形態の駆動装置1は、特許文献1のように、コイルバネ用の移動スペースと、ケーブルエンド用の移動スペースとが、厚さ方向にずらしてスライダに別々に設けられている構造とは異なり、スライダ4を小型化することができる。これにより、駆動装置1全体の小型化が可能となる。また、コイルバネ5の伸長軸と、第1ケーブル6および第2ケーブル7の軸とが同軸となるので、スライダ4がコイルバネ5の付勢力によって動作する際またはコイルバネ5の付勢力に抗して動作する際に、スライダ4に移動方向D1に対して傾斜する力が加わりにくく、スライダ4を安定して移動させることができる。また、本実施形態では、コイルバネ5の内側に補助スライダ4Bが配置されていることによって、補助スライダ4Bがコイルバネ5の芯のように機能して、コイルバネ5がコイルバネ5の伸縮軸に対して径方向外側に歪むような変形をすることが抑制され、スライダ4の移動方向D1での移動がより安定する。
【0047】
本実施形態では、コイルバネ5は、
図7および
図8に示されるように、スライダ本体4Aおよび補助スライダ4Bのうち、スライダ本体4Aのみを付勢している。具体的には、コイルバネ5の一端(第2移動方向D12側の端部)は、スライダ本体4Aに設けられたバネ座SSに支持されていることにより、スライダ本体4Aは、第2移動方向D12へと付勢されている。一方、補助スライダ4Bは、コイルバネ5と係合しておらず、
図11に示されるように、補助スライダ4Bが第1移動方向D11へ移動するときには、コイルバネ5の付勢力の影響を受けない。したがって、第2ケーブル7を引き操作して補助スライダ4Bを移動方向D1(第1移動方向D11)に移動させるときに、駆動部3による操作時とは異なり、コイルバネ5の付勢力がかからない。したがって、第2ケーブル7を操作する際に、コイルバネ5の付勢力に抗する力が不要となるので、第2ケーブル7を軽い力で操作することができる。
【0048】
次に、本実施形態の駆動装置1の動作をより詳細に説明する。なお、以下の説明は、あくまで一例であり、以下の説明により、本発明の駆動装置が限定されるものではない。
【0049】
図7および
図8に示されるように、補助スライダ4Bは、駆動部3の駆動力が加わっていない初期状態において、移動方向D1で他方側(第2移動方向D12側)となる補助スライダ4Bの一端(
図8において右側の端部)が、スライダ本体4Aの移動方向D1で他方側(第2移動方向D12側)の端部(
図8において右側の端部)に位置して」いる。この駆動装置1の初期状態は、本実施形態では、作動対象OP側に設けられた付勢部材(図示せず)によって第1ケーブル6が第2移動方向D12に引かれることによって、補助スライダ4Bが第2移動方向D12に移動することで実現可能である。
【0050】
図7および
図8に示される初期状態から、駆動部3が駆動されると、駆動部3の駆動力により、伝動部材32a、32b、32c、32dを介してピニオンギヤPが回転して、スライダ本体4Aのラック部44に駆動力が伝達される。これにより、スライダ本体4Aが、第2移動方向D12にスライダ4を付勢するコイルバネ5の付勢力に抗して第1移動方向D11に移動する(
図9参照)。スライダ本体4Aが第1移動方向D11に移動すると、スライダ本体4Aと係合した補助スライダ4Bも第1移動方向D11に移動する。これにより、ケーブルエンド6aが補助スライダ4Bの第1係合部41aに係合した第1ケーブル6は、第1移動方向D11に引き操作されて、スライダ本体4Aおよび補助スライダ4Bとともに第1移動方向D11へと移動する。これにより、第1ケーブル6に接続された作動対象OPが作動する。
【0051】
駆動部3の駆動力が解除されると、スライダ本体4Aはコイルバネ5の付勢力によって第2移動方向D12に移動する(
図10参照)。このとき、伝動部材32a、32b、32c、32dは、コイルバネ5の付勢力によって第2移動方向D12に移動するスライダ本体4Aから加わる力によって、スライダ本体4Aが第1移動方向D11に移動したときの回転方向とは逆方向に回転する。スライダ本体4Aが第2移動方向D12に移動するとき、補助スライダ4Bは、上述したようにスライダ本体4Aと共に第2移動方向D12に移動するように係合していないので、スライダ本体4Aは、
図10に示されるように、補助スライダ4Bおよびケーブルエンド6a、7aに対して相対移動して、補助スライダ4Bおよびケーブルエンド6a、7aはその場に取り残される。なお、補助スライダ4Bおよびケーブルエンド6aは、本実施形態では、スライダ4の第2移動方向D12への移動に遅れて、作動対象OP側に設けられた付勢部材によって、第2移動方向D12へ移動する。
【0052】
一方、駆動部3が故障した場合や、駆動部3によらずに手動操作によって作動対象OPを作動したい場合は、
図11に示されるように、第2ケーブル7が操作される。第2ケーブル7が、移動方向D1で一方側(第1移動方向D11)に操作されると、
図9および
図11に示されるように、補助スライダ4Bがスライダ本体4Aに対して、移動方向D1で一方側(第1移動方向D11)に相対移動して、補助スライダ4Bを介して第1ケーブル6が操作される。より具体的には、第2ケーブル7が第1移動方向D11に引き操作されると、
図11に示されるように、第2ケーブル7のケーブルエンド7aが接続された補助スライダ4Bに第1移動方向D11に力が加わり、補助スライダ4Bが第1移動方向D11に移動する。補助スライダ4Bが第1移動方向D11に移動すると、補助スライダ4Bに接続された第1ケーブル6が第1移動方向D11に引き操作され、作動対象OPが作動する。このとき、スライダ本体4Aは、補助スライダ4Bが第1移動方向D11に移動するときには、補助スライダ4Bと係合せず、かつ、コイルバネ5によって第2移動方向D12に付勢されている。したがって、スライダ本体4Aは、補助スライダ4Bと共に第1移動方向D11には移動せず、その場で停止した状態となる。この際、上述したように、補助スライダ4Bが第1移動方向D11へ移動するときには、補助スライダ4Bは、コイルバネ5の第2移動方向D12への付勢力の影響を受けない。したがって、第2ケーブル7を引き操作して補助スライダ4Bを移動方向D1(第1移動方向D11)に移動させるときに、駆動部3による操作時とは異なり、コイルバネ5の付勢力がかからない。したがって、第2ケーブル7を操作する際に、コイルバネ5の付勢力に抗する力が不要となるので、第2ケーブル7を軽い力で操作することができる。第2ケーブル7により、補助スライダ4Bが操作された後、補助スライダ4Bは、作動対象OP側に設けられた付勢部材によって、第2移動方向D12へ移動して、
図7および
図8に示される初期位置に戻る。
【符号の説明】
【0053】
1 駆動装置
2 ケーシング
2A 第1ケーシング部材
2B 第2ケーシング部材
21 スライダ収容部
21a 摺動面(底面)
21b 上面
21c、21d 案内壁(側壁)
21e、21f 端壁
22 駆動部収容部
23 ケーブル導入部
23a 導入開口
231 第1ケーブル導入部
232 第2ケーブル導入部
3 駆動部
31 モータ
32a、32b、32c、32d 伝動部材
4 スライダ
4A スライダ本体
4B 補助スライダ
41 係合部
41a 第1係合部
41b 第2係合部
411 壁部
42 バネ収容部
43 摺動部
44 動力伝達部(ラック部)
45a、45b 被案内面
46 ケーブル挿通部
5 コイルバネ
6 ケーブル(第1ケーブル)
6a、6b ケーブル(第1ケーブル)のケーブルエンド
6c ケーブル本体
7 第2ケーブル
7a、7b 第2ケーブルのケーブルエンド
7c ケーブル本体
8 操作部
A 開口部
D1 移動方向
D11 第1移動方向
D12 第2移動方向
D2 高さ方向
D3 幅方向
H 貫通孔
IS 内面
OC アウターケーシング
OP 作動対象
P ピニオンギヤ
SC バネケース
SS バネ座
W1、W2 スライダの側壁
W3 スライダの上壁
W4 スライダの底壁
W5 スライダ本体の係合壁部