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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】空間構造体
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/18 20060101AFI20240516BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20240516BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240516BHJP
   F25D 23/00 20060101ALN20240516BHJP
【FI】
E06B7/18 B
E04H1/12 302Z
F16J15/10 P
F16J15/10 U
F25D23/00 302
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173823
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065318
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 孝一
(72)【発明者】
【氏名】坪野 哲明
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143720(JP,A)
【文献】特開2015-169220(JP,A)
【文献】実開昭61-005990(JP,U)
【文献】特開2011-094427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/18
E04H 1/12
F16J 15/10
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の調整用ガスが導入されることによって環境が制御される空間(S)を形成する空間構造体であって、
開口部(10)が形成された壁部(13a)と、
該壁部(13a)に設けられ、前記開口部(10)を開閉する扉(30)と、
内部に中空部分(41)を有し、前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間をシールするシール部材(40)とを備え、
前記シール部材(40)は、前記中空部分(41)が加圧されると膨らんで前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間を塞ぎ、
該シール部材(40)の前記中空部分(41)に前記所定の調整用ガスを供給する
ことを特徴とする空間構造体。
【請求項2】
請求項1の空間構造体において、
前記シール部材(40)は、前記壁部(13a)に設けられ、膨らむことによって前記扉に密着する
ことを特徴とする空間構造体。
【請求項3】
請求項1または2の空間構造体において、
前記空間(S)を囲い、気体の透過を防止または抑制する機能を有するフィルム部材(50)を有し、
前記フィルム部材(50)は、前記壁部(13a)の前記空間(S)側の表面を覆う第1フィルム(51)と、前記扉(30)の前記空間(S)側の表面を覆う第2フィルム(52)とを有する
ことを特徴とする空間構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つの空間構造体において、
前記扉が閉じた状態で、前記シール部材(40)の中空部分に前記所定の調整用ガスを導入することで前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間を塞ぐ
ことを特徴とする空間構造体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つの空間構造体において、
前記所定の調整用ガスは、窒素、酸素および二酸化炭素の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする空間構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象空間の空気の酸素濃度を大気中の酸素濃度より高濃度にする空気組成調節装置が開示されている。この装置は、対象空間へ供給される外気から酸素を分離する。分離されて生成された高酸素濃度ガスが対象空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-128862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置は、例えば、農産物等の植物の鮮度を長期間にわたって保つコンテナや、高地トレーニングを行うために高地と同じ大気成分に調整されたトレーニングルームなどに設けられる。外部から対象空間に所定のガスを供給することによって、対象空間の気体成分を所望の比率に調整できる。
【0005】
しかし、対象空間の気体が、壁を透過したり、壁と扉との隙間から漏れたりすると、対象空間の調整された気体成分の比率を維持できない。対象空間から気体が漏れても、所定のガスを供給し続けることによって対象空間の気体成分の比率を維持できる。しかし、それはコストの増大に繋がる。
【0006】
本開示の目的は、所定の気体が導入されて環境が制御される空間内の気体の漏れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、所定の調整用ガスが導入されることによって環境が制御される空間(S)を形成する空間構造体であって、
開口部(10)が形成された壁部(13a)と、
該壁部(13a)に設けられ、前記開口部(10)を開閉する扉(30)と、
内部に中空部分(41)を有し、前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間をシールするシール部材(40)とを備え、
前記シール部材(40)は、前記中空部分(41)が加圧されると膨らんで前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間を塞ぎ、
該シール部材(40)の前記中空部分(41)に前記所定の調整用ガスを供給する。
【0008】
第1の態様では、調整用ガスが中空部分(41)に供給されることによりシール部材(40)が膨らむ。そのため、シール部材(40)は、壁部(13a)と扉(30)との間の隙間を塞ぐ結果、空間(S)内のガスが外部に漏れだすことを抑制できる。また、シール部材(40)に供給される調整用ガスは空間(S)に供給される調整用ガスと同一であるため、中空部分(41)のガスがシール部材(40)を透過して空間(S)へ入ったとしても、空間(S)内の気体成分の比率が変わることを抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、
前記シール部材(40)は、前記壁部(13a)に設けられ、膨らむことによって前記扉(30)に密着する。
【0010】
第2の態様では、扉(30)が閉まった状態でシール部材(40)にガスが導入されることにより、シール部材(40)は扉(30)に密着できる。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記空間(S)を囲い、気体の透過を防止または抑制する機能を有するフィルム部材(50)を有し、
前記フィルム部材(50)は、前記壁部(13a)の前記空間(S)側の表面を覆う第1フィルム(51)と、前記扉(30)の前記空間(S)側の表面を覆う第2フィルム(52)とを有する。
【0012】
第3の態様では、第1フィルム(51)が壁部(13a)の空間(S)側の表面を覆い、第2フィルム(52)が扉(30)の空間(S)側の表面を覆うため、扉(30)を閉じるだけでフィルム部材(50)により囲まれた空間を形成できる。
【0013】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記扉が閉じた状態で、前記シール部材(40)の中空部分(41)に前記所定の調整用ガスを導入することで前記壁部(13a)と前記扉(30)の隙間を塞ぐ。
【0014】
第4の態様では、扉(30)を閉じてからシール部材(40)を膨らませるので、壁部(13a)と扉(30)との隙間を塞ぐことができる。
【0015】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記所定の調整用ガスは、窒素、酸素および二酸化炭素の少なくとも1つを含む。
【0016】
第5の態様では、空間(S)に供給するガス濃度により、空間(S)を低酸素空間にしたり、高酸素空間にしたりできる。また、空間を高二酸化炭素空間にしたりもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る空間構造体が適用される保管室の横断面を示す模式図である。
図2図2は、保管室の横断面の一部を拡大した模式図である。
図3図3は、室内から見た扉の模式図である。
図4図4は、室外から見た扉の模式図である。
図5図5は、シール部材にガスが導入される前の空間構造体の横端面の一部を拡大した模式図である。
図6図6は、シール部材にガスが導入された後の図5相当図である。
図7図7は、制御装置と各種の機器とセンサとの関係を示すブロック図である。
図8図8は、その他の実施形態に係る空間構造体の扉が開いた状態を示す図1相当図である。
図9図9は、その他の実施形態に係る空間構造体の扉が閉じた状態を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。図1に示す矢印は空気の流れを示す。
【0019】
《実施形態》
〈空間構造体の全体構成〉
図1および図2に示すように、実施形態の空間構造体(1)は、植物や植物由来の薬品原料などの試料(5)を保管する保管室(1)である。保管室(1)は、天井(11)、床(12)、および4つの壁(13)により区画される。保管室(1)の室内(S)は、所定の調整用ガスが導入されることによって環境が制御される。調整用ガスは窒素ガスである。室内(S)の気体の成分比率が、試料(5)の品質維持に適した成分比率となるように、窒素ガスが室内(S)に導入される。
【0020】
保管室(1)は、第1給気口(21)、第2給気口(22)および第1排気口(23)を有する。保管室(1)は、扉(30)、第1シール部材(40)、およびフィルム部材(50)を有する。
【0021】
第1給気口(21)は、壁(13)に設けられる。第1給気口(21)は、窒素ガスを室内(S)に供給する。第1給気口(21)は、第1配管(61)を介して室外に配置される窒素ガスボンベ(14)に繋がる。具体的に、第1配管(61)の一端は第1給気口(21)に接続され、他端は、窒素ガスボンベ(14)に接続される。第1配管(61)には、第1流量調整弁(15)が設けられる。第1流量調整弁(15)は、その開度が制御されることによって第1配管(61)に流れる窒素ガスの量を調節する。
【0022】
第2給気口(22)は、壁(13)に設けられる。第2給気口(22)は、外気を室内(S)に供給する。第2給気口(22)は、第2配管(62)を介して室外に連通する。具体的に、第2配管(62)の一端は、第2給気口(22)に接続され、他端は室外に連通する。第2配管(62)には、ファン(17)が設けられる。ファン(17)が運転することにより、外気は、第2配管(62)に吸い込まれ、第2給気口(22)から室内(S)に流入する。
【0023】
第1排気口(23)は、壁(13)に設けられる。第1排気口(23)は、室内(S)の気体を室外に排出する。第1排気口(23)は、第3配管(63)を介して室外に連通する。具体的に、第3配管(63)の一端は、第1排気口(23)に接続され、他端は室外に連通する。第3配管(63)には、第1ダンパ(18)が設けられる。
【0024】
4つ壁(13)の壁の1つである第1壁部(13a)には、開口部(10)が形成される。この第1壁部(13a)は、本開示の壁部(13a)である。開口部(10)は、人が出入りできる程度の大きさである。第1壁部(13a)の外面には、保持部材(71)が設けられる。保持部材(71)は、後述する第1シール部材(40)を保持する部材である。保持部材(71)は、長方形の枠状に形成される。保持部材(71)は、開口部(10)の周縁に沿って開口部(10)を囲うように設けられる。保持部材(71)には、凹部(72)が形成される。凹部(72)は、保持部材(71)の第1壁部(13a)の外面に接着する面と対向する面に形成される。凹部(72)は、保持部材(71)の全長にわたって形成された凹溝である。
【0025】
扉(30)は、第1壁部(13a)の外面に配置される。扉(30)は、開口部(10)を覆うように設けられる。図3および図4に示すように、扉(30)は、保持部材(71)の外周縁よりも大きな長方形平板状に形成されており、その一辺と第1壁部(13a)との間に連結部材(32)が設けられる。連結部材(32)は例えば蝶番である。この連結部材(32)を軸にして扉は開閉する。扉(30)には、ノブ(33)が設けられる。室外からは、ノブ(33)を開方向(図3および図4のaの方向)に回して該ノブ(33)を手前に引くことにより、扉(30)が開く。扉(30)を閉めた状態で、ノブ(33)を閉方向(図3および図4のbの方向)に回すことにより、ノブ(33)はロックされ、扉(30)は自然に開かないように固定される。
【0026】
扉(30)は、解錠ボタン(85)を有する。解錠ボタン(85)は、扉(30)の外面に配置される。本例の保管室(1)の室内(S)には、窒素ガスが供給されるため、試料(5)の保管中は、室内(S)の酸素は比較的低濃度に維持される。そのため、入室する際は、直前に室内(S)の酸素濃度を上昇させる必要がある。入室前に操作者により解錠ボタン(85)が押されると、後述する制御装置(100)は、室内(S)の酸素濃度を上昇させた後、ノブ(33)のロックを解除する。
【0027】
〈フィルム部材〉
図1および図2に示すように、フィルム部材(50)は、気体の透過を抑制する機能を有する。フィルム部材(50)は、いわゆる、ガスバリアフィルムである。フィルム部材(50)は、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)や、ポリビニルアルコール(PVA)などの素材を有する。
【0028】
フィルム部材(50)は、保管室(1)の室内(S)側の表面を覆う。具体的に、フィルム部材(50)は、天井(11)、床(12)および4つの壁(13)の室内(S)側の表面を覆う。壁(13)の室内(S)側の表面では、フィルム部材(50)は、第1給気口(21)、第2給気口(22)および第1排気口(23)を塞がないように設けられる。フィルム部材(50)は、例えば、天井(11)と壁(13)とのつなぎ目においてフィルム部材(50)の表面同士が接するように設けられる。このように、天井(11)と壁(13)とのつなぎ目からの室内(S)の気体の漏れを抑制する。
【0029】
第1壁部(13a)では、フィルム部材(50)は、第1フィルム(51)と第2フィルム(52)とを有する。第1フィルム(51)は、第1壁部(13a)の室内(S)側の表面を覆う。更に、第1フィルム(51)は、開口部(10)の内側面(10a)と、第1壁部(13a)の外面のうち開口部(10)の縁と保持部材(71)の間の部分(10b)とを覆う。第2フィルム(52)は、扉(30)の室内(S)側の表面の全体を覆う。
【0030】
〈シール部材〉
図5および図6に示すように、第1シール部材(40)は、内部に中空部分(41)を有し、第1壁部(13a)と扉(30)との隙間をシールする。第1シール部材(40)は、本開示のシール部材(40)である。第1シール部材(40)は、弾性素材を含む。第1シール部材(40)は、細長のチューブ状に形成されている。具体的に、第1シール部材(40)は、一体に形成された基底部(42)と膨張部(43)とを有する。基底部(42)は、膨張部(43)の底部側に形成される。基底部(42)は、保持部材(71)の凹部(72)に嵌合される。このように、第1シール部材(40)は、第1壁部(13a)の外面において開口部(10)を全周にわたって囲うように配置される。
【0031】
図6に示すように、膨張部(43)は、中空部分(41)に所定の調整用ガスが導入され、加圧されると、膨らむ。膨張部(43)が膨らむと、膨張部(43)の頂部(44)が、保持部材(71)の突端部(75)より突出して扉(30)の内面に密着する。具体的には、膨張部(43)の頂部(44)は、扉(30)の内面に設けられた第2フィルム(52)に密着する。
【0032】
図1および図2に示すように、第1シール部材(40)には、窒素ガス(調整用ガス)の注入口(73)と第2排気口(74)とが設けられる。
【0033】
注入口(73)は、窒素ガスを中空部分(41)に導入する部分である。具体的に、注入口(73)は、第4配管(64)を介して、室外に配置される窒素ガスボンベ(14)に繋がる。第4配管(64)の一端は、注入口(73)に接続され、他端は窒素ガスボンベ(14)に接続される。第4配管(64)には、第2流量調整弁(16)が設けられる。第2流量調整弁(16)は、その開度が制御されることにより、中空部分(41)に供給される窒素ガスの流量を調節する。
【0034】
第2排気口(74)は、第5配管(65)を介して、中空部分(41)の窒素ガスを排出する部分である。第5配管(65)の一端は、第2排気口(74)に接続され、一端は室外に連通する。第5配管(65)には第2ダンパ(19)が設けられる。
【0035】
〈センサ〉
図1に示すように、保管室(1)には、ガスセンサ(81)、ドアセンサ(82)および圧力センサ(83)が設けられる。
【0036】
ガスセンサ(81)は、室内(S)の気体の濃度を検出する。例えば、ガスセンサ(81)は、室内()の窒素および酸素の濃度を検出する。
【0037】
ドアセンサ(82)は、扉(30)が閉まった状態で、ノブ(33)が開方向から閉方向、および閉方向から開方向へ回ったことを検出するセンサである。
【0038】
圧力センサ(83)は、第1シール部材(40)の中空部分(41)に窒素ガスが導入されときの膨張部(43)にかかる圧力が所定の圧力になったことを検出する。
【0039】
〈制御装置〉
図7に示すように、保管室(1)は、制御装置(100)を有する。制御装置(100)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを有する。
【0040】
制御装置(100)は、各種の機器およびセンサと有線または無線で接続される。制御装置(100)は、各種のセンサおよび解錠ボタン(85)から受信した信号に基づいて、第1流量調整弁(15)、第2流量調整弁(16)、第1ダンパ(18)、第2ダンパ(19)およびファン(17)を制御する。
【0041】
制御装置(100)は、ガスセンサ(81)が検出した室内(S)の窒素濃度に基づいて、第1流量調整弁(15)を制御する。例えば、ガスセンサ(81)が検出した窒素濃度が、所定の濃度よりも低い場合は、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)の開度を大きくする。また、制御装置(100)は、第1ダンパ(18)を開け、ファン(17)の運転を停止する。このことで、室内(S)の気体が室外に排出され、窒素ガス(S)が室内(S)に供給されるため、室内(S)の窒素濃度は上昇し、室内(S)を所定の窒素濃度に調節できる。
【0042】
一方、ガスセンサ(81)が検出した窒素濃度が、所定の濃度よりも高い場合は、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)を閉じ、第1ダンパ(18)を開く。制御装置(100)は、ファン(17)を運転する。このことで、室内(S)の気体が室外に排出され、室内(S)への窒素ガスの供給が停止する。さらに、外気が室内(S)に導入されるため、室内(S)の窒素濃度は低下し、室内(S)を所定の窒素濃度に調節できる。
【0043】
制御装置(100)は、解錠ボタン(85)が押されたことを検出すると、室内(S)の酸素濃度を所定に濃度に調節する。具体的に、解錠ボタン(85)が押されたときガスセンサ(81)が検出した室内(S)の酸素濃度が所定値以下であると、制御装置(100)は、ファン(17)を運転し、第1ダンパ(18)を開く。このことで、室内(S)の気体が室外に排出されると共に、外気が室内(S)に導入されて、室内(S)の酸素濃度が上昇する。室内(S)の酸素濃度が所定値以上になると、制御装置(100)は、ノブ(33)のロックを解除する。
【0044】
制御装置(100)は、第1シール部材(40)に窒素ガスが導入され、圧力センサ(83)が所定の圧力を検出した場合、第2流量調整弁(16)を閉じる。所定の圧力とは、第1シール部材(40)の頂部(44)を扉(30)の内面の第2フィルム(52)に密着させるために必要な中空部分(41)の内圧である。
【0045】
制御装置(100)は、ノブ(33)のロックが解除され、ノブ(33)が閉方向から開方向に回ったことをドアセンサ(82)が検出したとき、第2流量調整弁(16)を閉じた状態で、第2ダンパ(19)を開く。このことで、第1シール部材(40)の中空部分(41)の窒素ガスが第2排気口(74)から排出され、膨張部(43)が収縮する。一方、制御装置(100)は、ノブ(33)が開方向から閉方向に回ったことをドアセンサ(82)が検出したとき、第2ダンパ(19)を閉じ、第2流量調整弁(16)を開く。このことで、第1シール部材(40)の中空部分(41)に窒素ガスが導入され、中空部分(41)が加圧されることにより、膨張部(43)が膨らむ。膨らんだ膨張部(43)の頂部(44)は、扉(30)の内面の第2フィルム(52)に密着する。
【0046】
-室内の環境制御-
次に、保管室(1)の室内(S)の環境の制御について説明する。以下では、比較的窒素含有量が多い気体条件下で保管することが好ましい試料(5)を保管室(1)内で保管する場合について説明する。
【0047】
扉(30)を開けて開口部(10)から入室し、保管室(1)内に試料(5)を床(12)に配置する。退出後、扉(30)を閉めて、ノブ(33)を閉方向に回すと、扉(30)は固定される。制御装置(100)は、第2流量調整弁(16)を開いて、第1シール部材(40)の中空部分(41)に窒素ガスを導入する。中空部分(41)に窒素ガスが導入されると、中空部分(41)が加圧される。中空部分(41)が加圧されると、第1シール部材(40)が膨らみ、第1壁部(13a)と扉(30)との隙間が塞がれる。
【0048】
具体的に、中空部分(41)が加圧されると、膨張部(43)が膨らむ。膨張部(43)が膨らむと、頂部(44)は、扉(30)内面の第2フィルム(52)に密着する。中空部分(41)の窒素ガスの圧力が所定の圧力に達すると、制御装置(100)は第2流量調整弁(16)を閉じる。膨張部(43)の頂部(44)は、第2フィルム(52)に密着したまま維持される。
【0049】
その後、室内(S)は、所定の窒素濃度に調整される。具体的に、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)および第1ダンパ(18)を開く。室内(S)の気体が第1排気口(23)から排出されると共に、第1給気口(21)から窒素ガスが供給され、室内(S)の窒素濃度が上昇する。
【0050】
室内(S)の窒素濃度が設定された所定の窒素濃度に達したとき、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)および第1ダンパ(18)を閉じる。室内(S)への窒素ガスの供給および室内(S)からの気体の排出が停止し、室内(S)の窒素濃度が維持される。
【0051】
再び保管室(1)に入室する場合、解錠ボタン(85)が押されたことを検出した制御装置(100)は、ファン(17)を運転し、第1ダンパ(18)を開く。このことにより、室内(S)の気体が室外に排出されると共に、外気が室内(S)に供給される。制御装置(100)は、室内(S)の酸素濃度が所定の値になったとき、ノブ(33)のロックを解錠する。ノブ(33)のロックの解錠後、ノブ(33)を開方向に回すと、制御装置(100)は、第2流量調整弁(16)を閉じた状態で、第2ダンパ(19)を開く。第2ダンパ(19)が開くと、第1シール部材(40)の第2排気口(74)から窒素ガスが排出される。
【0052】
保管室(1)から退出後、扉(30)を閉じてノブ(33)を閉方向に回すと、制御装置(100)は、ノブ(33)をロックし、扉(30)を固定する。制御装置(100)は、第2ダンパ(19)を閉じ、第2流量調整弁(16)を開く。第2流量調整弁(16)が開くと、窒素ガスが注入口(73)から第1シール部材(40)の中空部分(41)に導入される。中空部分(41)に窒素ガスが導入されると、上述したように、中空部分(41)が加圧される。中空部分(41)が加圧されると膨張部(43)が膨らんで、頂部(44)が扉(30)内面の第2フィルム(52)に密着する。
【0053】
中空部分(41)の窒素ガスの圧力が所定の圧力に達すると、制御装置(100)は第2流量調整弁(16)を閉じる。膨張部(43)の頂部(44)は、扉(30)内面の第2フィルム(52)に密着したまま維持される。
【0054】
扉(30)の開閉により、室内(S)の窒素濃度が所定の窒素濃度を下回ると、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)および第1ダンパ(18)を開く。室内(S)の気体が第1排気口(23)から排出されると共に、第1給気口(21)から窒素ガスが供給され、室内(S)の窒素濃度が上昇する。
【0055】
室内(S)の窒素濃度が所定の窒素濃度を上回ると、制御装置(100)は、第1流量調整弁(15)を閉じ、第1ダンパ(18)を開く。制御装置(100)は、ファン(17)を運転する。このことで、第2給気口(22)から外気が室内(S)に供給されると共に、室内(S)の気体が第1排気口(23)から排出されるため、室内(S)の窒素濃度は低下する。室内(S)の窒素濃度が、所定の濃度にまで低下すると、制御装置(100)は、ファン(17)の運転を停止し、第2ダンパ(19)を閉じる。
【0056】
《実施形態の効果》
実施形態の保管室(1)(空間構造体)は、所定の調整用ガスである窒素ガスが導入されることによって環境が制御される空間(S)を形成する。この保管室(1)は、内部に中空部分(41)を有し、壁部(13a)と扉(30)の隙間をシールする第1シール部材(40)を備える。この第1シール部材(40)は、中空部分(41)が加圧されると膨らんで壁部(13a)と扉(30)の隙間を塞ぐ。第1シール部材(40)の中空部分(41)には、窒素ガスが供給される。
【0057】
実施形態によると、窒素ガスが第1シール部材(40)の中空部分(41)に供給されることにより、膨張部(43)が膨らむ。その結果、壁部(13a)と扉(30)との間の隙間が塞がれるため、室内(S)内のガスが外部に漏れだすことを抑制できる。
【0058】
加えて、第1シール部材(40)に供給されるガスは、室内(S)に供給されるガスと同一であるため、中空部分(41)のガスが、第1シール部材(40)を透過して室内(S)に入ったとしても、調整された室内(S)の気体成分の比率が変わることを抑制できる。
【0059】
実施形態の第1シール部材(40)は、第1壁部(13a)に設けられ、膨らむことによって扉(30)に密着する。このことにより、壁部(13a)と扉(30)との隙間を塞ぐことができる。
【0060】
実施形態の保管室(1)は、室内(S)を囲い、気体の透過を抑制する機能を有するフィルム部材(50)を有する。フィルム部材(50)は、第1壁部(13a)の空間(S)側の表面を覆う第1フィルム(51)と、扉(30)の空間(S)側の表面を覆う第2フィルム(52)とを有する。
【0061】
このことにより、室内(S)は、フィルム部材(50)に囲まれるため、室内(S)の気体が床(12)や壁(13)を透過して外部に漏出することを抑制できる。その結果、室内(S)の窒素ガスの濃度が所定の濃度になった後は、扉(30)を開く場合を除いて、室内(S)を所定の窒素濃度に維持できる。追加的に窒素ガスを供給しなくてもよいので、コストを抑えることができる。
【0062】
加えて、第1壁部(13a)の室内(S)側の表面には、第1壁部(13a)の内面を覆う第1フィルム(51)と扉(30)の内面を覆う第2フィルム(52)とが設けられる。例えば、第1壁部(13a)の室内(S)側の表面を覆うフィルム部材(50)が、第1フィルム(51)と第2フィルム(52)とに分離されずに一体に形成されている場合では、ファスナーなどにより該フィルム部材(50)にも入口を設ける必要がある。そのような場合、入室する際に扉(30)を開け、さらにフィルム部材(50)のファスナーを開けて入室する必要がある。そのような場合に比べ、本実施形態では、扉(30)を開くだけで、フィルム部材(50)に囲まれた空間に入ることができる。また扉(30)を閉じるだけで、フィルム部材(50)により囲まれた空間を形成できる。そのため、人の入退室や物の出入庫を容易に行うことができる。
【0063】
加えて、第1フィルム(51)は開口部(10)の内側面(10a)および第1壁部(13a)の外面における開口部(10)の縁にまで設けられる。このことにより、室内(S)の気体が第1壁部(13a)に触れる部分をなくすことができる。その結果、室内(S)の気体が第1壁部(13a)を透過して外部に漏れることを抑制できる。
【0064】
空間構造体(1)は、扉(30)が閉じた状態で、第1シール部材(40)の中空部分に所定の調整用ガスを導入することで、壁部(13a)と扉(30)の隙間を塞ぐ。扉(30)は閉じた状態で、ノブ(33)を閉方向に回すことによって、ノブはロックされ、扉(30)は自然に開かないように固定される。この状態で、第1シール部材(40)が膨らむので、第1シール部材(40)の頂部(44)は、扉(30)の内面を押すように第2フィルム(52)に密着する。そのため、第1壁部(13a)と扉(30)との間から室内(S)の気体が漏れることを確実に抑制できる。
【0065】
《その他の実施形態》
上記実施形態および変形例においては、以下のような構成としてもよい。
【0066】
保管室(1)の室内(S)は、室外に配置される空調機により空調されてもよい。空調機は、例えば冷却コイルと加熱ヒータとファンとを有する。保管室(1)には、空調機に室内(S)の気体を吸い込んで空調機に送る還気口と、空調機により空調された気体を再び室内(S)に戻す供給口とが設けられる。空調機を備えることで、保管室(1)の室内(S)の温度および湿度が調節できる。
【0067】
空間構造体(1)は、コンテナのような保管庫、クリーンルーム、トレーニングルームなどあってもよい。
【0068】
所定の調整用ガスは、酸素および二酸化炭素であってもよい。所定の調整用ガスが酸素である場合、制御装置(100)は、室内(S)の酸素濃度を低くしたり高くしたりする。また、所定の調整用ガスが二酸化炭素である場合、制御装置(100)は、室内(S)の二酸化炭素濃度を低くしたり、高くしたりする。
【0069】
第1シール部材(40)に導入される調整用ガスは、室内(S)に供給される調整用ガスと同一であればよい。例えば、室内(S)に導入される調整用ガスが低濃度酸素であれば、第1シール部材(40)に導入される調整用ガスも低濃度酸素である。
【0070】
空間構造体(1)は、フィルム部材(50)を有していなくてもよい。この場合、例えば、空間構造体(1)を構成する天井(11)、床(12)、および壁(13)は、気体を透過しない金属等で構成される。
【0071】
扉(30)はスライド式であってもよい。扉(30)は、自動開閉式であってもよい。
【0072】
フィルム部材(50)は、気体の透過を防止する機能を有していてもよい。
【0073】
扉(30)は、解錠ボタン(85)を有さなくてもよい。この場合、室外から操作者の操作により入力される信号に基づいて制御装置(100)が、室内(S)の酸素濃度を調節してもよい。
【0074】
図8および図9に示すように、床(12)には、フィルム部材(50)の上にパネル(90)が敷かれていてもよい。パネル(90)は試料等が配置される板部材である。パネルは、フィルム部材(50)の上に配置した状態で、壁(13)と隙間ができる程度の大きさに形成される。パネル(90)の側面には、保持部材(71)と第2シール部材(45)とが配置される。第2シール部材(45)は、上述した第1シール部材(40)と同じ構成である。
【0075】
図8に示すように、扉(30)を開くときに、第1シール部材(40)内の調整用ガスが第2シール部材(45)に送られる。このとき、第2シール部材(45)は、パネル(90)の側面と壁(13)との隙間を塞ぐまで膨らむことにより、パネル(90)の側面が壁(13)に固定される。このことにより、作業中にパネル(90)がずれることを抑制できる。
【0076】
図9に示すように、扉を閉じるときに、第2シール部材(45)内の調整用ガスが第1シール部材(40)に送られる。このように、第1シール部材(40)と第2シール部材(45)との間で調整用ガスが流通できるようにすれば、扉(30)の開閉の度に第1シール部材(40)内のガスを排出する必要がなくなるので、コストを抑えることができる。
【0077】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本開示は、空間構造体について有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 開口部
13a 壁部
30 扉
40 シール部材
41 中空部分
50 フィルム部材
51 第1フィルム
52 第2フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9