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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】航路演算装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/20 20060101AFI20240516BHJP
   G08G 3/00 20060101ALI20240516BHJP
   G08G 3/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01C21/20
G08G3/00 A
G08G3/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020175985
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067331
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 武
(72)【発明者】
【氏名】井関 修一
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094976(JP,A)
【文献】特開昭63-066700(JP,A)
【文献】特開2020-095333(JP,A)
【文献】特開2014-025786(JP,A)
【文献】特開2019-204396(JP,A)
【文献】特開平08-235500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0264296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0207067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0321236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/87
B63C 1/00 - 15/00
B63G 1/00 - 13/02
B63H 1/00 - 25/52
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
B64U 10/00 - 80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他船舶の位置、速度および針路を求める他船舶検出装置と、
自船舶の位置を求める自船舶測定装置と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記他船舶検出装置によって位置、速度および針路が求められる1つの他船舶、または前記他船舶検出装置によって位置、速度および針路が求められる複数の他船舶のうちの1つを、ユーザの操作に基づいて目標船舶として設定し、
前記他船舶検出装置によって求められた位置から、前記他船舶検出装置によって求められた速度および針路で前記目標船舶が航行し、前記自船舶測定装置によって求められた位置から前記自船舶が航行するときに、前記自船舶および前記目標船舶が落ち合う目標位置を求めると共に、前記自船舶から前記目標位置までの航路を、前記自船舶から前記目標船舶までの航路として求めることを特徴とする航路演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航路演算装置において、
前記自船舶測定装置は、前記自船舶の位置に加えて前記自船舶の速度を求め、
前記プロセッサは、
前記他船舶検出装置によって求められた位置から、前記他船舶検出装置によって求められた速度および針路で前記目標船舶が航行し、前記自船舶測定装置によって求められた位置から、前記自船舶測定装置によって求められた速度で前記自船舶が航行するときに、前記自船舶および前記目標船舶が落ち合う位置を、前記目標位置として求めることを特徴とする航路演算装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の航路演算装置において、
前記プロセッサは、
前記他船舶検出装置によって位置が求められた他船舶が複数ある場合に、前記目標船舶として設定されていない非目標・他船舶との衝突が避けられる避航航路を、前記自船舶から前記目標船舶までの航路として求めることを特徴とする航路演算装置。
【請求項4】
請求項3に記載の航路演算装置において、
前記プロセッサは、
前記避航航路のうち、前記自船舶から前記目標船舶までの距離が最短である航路を求めることを特徴とする航路演算装置。
【請求項5】
請求項3に記載の航路演算装置において、
前記プロセッサは、
前記避航航路のうち、前記目標船舶の位置から所定の接近距離だけ離れた位置に前記自船舶が到達するまでの間に、いずれの前記非目標・他船舶からも、前記自船舶が所定値以上の距離で隔てられる航路を求めることを特徴とする航路演算装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の航路演算装置において、
前記他船舶検出装置は、
AIS装置およびTT機能を有するレーダ装置のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする航路演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航路演算装置に関し、特に、自船舶から他船舶までの航路を求める装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自船舶の目的地を入力することで、自船舶から目的地までの航路が求められるナビゲーション装置(航路演算装置)が船舶で用いられている。ナビゲーション装置では、例えば特許文献1に示されているように、海上の障害物や、水深が十分でない領域を回避するような航路が求められ、航路がディスプレイに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-8443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶には、他船舶を曳航する曳船、作業員を他船舶に輸送する通船、他船舶に燃料を供給する燃料供給船等、他船舶を目的地とするものがある。従来のナビゲーション装置では、目的地が移動する場合には、自船舶の位置と目的地の位置が時間経過と共に変化してしまうため、航路を求めることが困難な場合があった。
【0005】
本発明の目的は、自船舶から目的地としての他船舶までの航路を容易に求めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、他船舶の位置、速度および針路を求める他船舶検出装置と、自船舶の位置を求める自船舶測定装置と、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記他船舶検出装置によって位置、速度および針路が求められる1つの他船舶、または前記他船舶検出装置によって位置、速度および針路が求められる複数の他船舶のうちの1つを、ユーザの操作に基づいて目標船舶として設定し、前記他船舶検出装置によって求められた位置から、前記他船舶検出装置によって求められた速度および針路で前記目標船舶が航行し、前記自船舶測定装置によって求められた位置から前記自船舶が航行するときに、前記自船舶および前記目標船舶が落ち合う目標位置を求めると共に、前記自船舶から前記目標位置までの航路を、前記自船舶から前記目標船舶までの航路として求める。
【0007】
望ましくは、前記自船舶測定装置は、前記自船舶の位置に加えて前記自船舶の速度を求め、前記プロセッサは、前記他船舶検出装置によって求められた位置から、前記他船舶検出装置によって求められた速度および針路で前記目標船舶が航行し、前記自船舶測定装置によって求められた位置から、前記自船舶測定装置によって求められた速度で前記自船舶が航行するときに、前記自船舶および前記目標船舶が落ち合う位置を前記目標位置として求める。
【0008】
望ましくは、前記プロセッサは、前記他船舶検出装置によって位置が求められた他船舶が複数ある場合に、前記目標船舶として設定されていない非目標・他船舶との衝突が避けられる避航航路を、前記自船舶から前記目標船舶までの航路として求める。
【0009】
望ましくは、前記プロセッサは、前記避航航路のうち、前記自船舶から前記目標船舶までの距離が最短である航路を求める。
【0010】
望ましくは、前記プロセッサは、前記避航航路のうち、前記目標船舶の位置から所定の接近距離だけ離れた位置に前記自船舶が到達するまでの間に、いずれの前記非目標・他船舶からも、前記自船舶が所定値以上の距離で隔てられる航路を求める。
【0011】
望ましくは、前記他船舶検出装置は、AIS装置およびTT機能を有するレーダ装置のうち少なくともいずれかを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自船舶から目的地としての他船舶までの航路を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】航路演算装置の構成を示す図である。
図2】航路演算部が実行する航路更新処理のフローチャートである。
図3】TT/AIS合成画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各図を参照して本発明の実施形態に係る航路演算装置について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係る航路演算装置10の構成が示されている。航路演算装置10は、レーダ装置12、AIS装置14(Automatic Identification System)、測位装置16、方位センサ18、速度センサ20、プロセッサ22、表示部24、操作部26およびメモリ28を備えている。プロセッサ22は、ハードウエアで構成された演算デバイスである。プロセッサ22は、メモリ28に記憶されているプログラムを実行することで、自らの内部に航路演算部30および表示処理部32を仮想的に構成する。
【0016】
操作部26は、キーボード、マウス、回転ツマミ、レバー等を含み、ユーザの操作に基づく操作情報をプロセッサ22に出力し、プロセッサ22は操作情報に応じて動作する。表示部24は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等であってよい。また、表示部24は、操作部26と共にタッチパネルを構成してもよい。表示部24は、プロセッサ22が含む表示処理部32から出力される画像データに応じた画像を表示する。
【0017】
レーダ装置12およびAIS装置14は、他船舶の位置を時間経過と共に順次求める他船舶検出装置としての機能を有している。レーダ装置12は、自船舶に備えられたレーダアンテナから電波を送信し、目標物で反射しレーダアンテナで受信された電波に基づく受信信号を取得する。レーダアンテナの指向方向は、例えば自船舶を中心とし、船首方位を0°とした場合における方位角0~360°の範囲である。レーダ装置12は、送受信する電波のビームを自船舶を中心に回転させる。すなわち、ビームの方位角を0°から360°まで変化させる動作を繰り返し実行する。
【0018】
レーダ装置12は、検出された各目標物の像を表すレーダ画像データをビームが1周する度に生成する。レーダ装置12は、目標物が船舶である場合に、その目標物を船舶として認識し、船舶の位置、速度、および針路を求めるTT機能(Target Tracking)を有している。レーダ装置12は、他船舶の位置、速度、および針路を表すTT目標データを生成する。レーダ装置12は、レーダ画像データと共にTT目標データをプロセッサ22に出力する。プロセッサ22が含む表示処理部32は、操作部26の操作に応じてレーダ画像を表示部24に表示させてもよい。また、表示処理部32は、TT目標データに基づいて、操作部26の操作に応じて、他船舶の位置および針路をレーダ画像に重ねて表示部24に表示させてもよい。この場合、他船舶の位置および針路は、例えば、自船舶を中心とした極座標上に示されてよい。
【0019】
AIS装置14は、自船舶に備えられたAISアンテナから自船舶の位置、速度、針路、大きさ等の船舶情報を所定の時間間隔で繰り返し送信する。また、AIS装置14は、他船舶に搭載されたAIS装置から送信された船舶情報をAISアンテナを介して受信し、受信された船舶情報に基づいて他船舶の位置、速度、針路、大きさ等を示すAIS目標データを生成する。AIS装置14はAIS目標データをプロセッサ22に出力する。以下の説明では、他船舶に搭載されたAIS装置から送信された船舶情報をAIS他船舶情報という。
【0020】
AIS装置14は、時間経過と共に順次、他船舶から送信されたAIS他船舶情報を受信し、時間経過と共に順次、AIS目標データを生成し、プロセッサ22に出力する。プロセッサ22が含む表示処理部32は、操作部26における操作に応じてAIS画像を表示部24に表示させてもよい。AIS画像は、AIS目標データに基づき、他船舶の位置、速度、針路、大きさ等が図形等によって表された画像である。
【0021】
表示処理部32は、操作部26におけるユーザの操作に応じて、レーダ画像、TT目標データに基づくTT画像、およびAIS画像のうちいずれか、または、これらの画像のうち2つまたは3つが重ねられた合成画像を表示部24に表示させてもよい。
【0022】
測位装置16は、測位システムの人工衛星から送信される測位信号を受信し、自船舶の位置情報を求めプロセッサ22に出力する。測位システムには、例えば、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(GLobal NAvigation Satellite System)等がある。方位センサ18は、例えば、北向きを0°とした自船舶の船首方位を求め、船首方位をプロセッサ22に出力する。速度センサ20は、自船舶の速度を求め、プロセッサ22に出力する。
【0023】
航路演算部30は、測位装置16が時間経過と共に順次出力する位置情報に基づいて、自船舶の針路および速度を求めてもよい。航路演算部30は、測位装置16における測位信号の受信状況が良好でない場合は、方位センサ18および速度センサ20によって自船舶の針路および速度を求めてもよい。このように、測位装置16、あるいは、方位センサ18および速度センサ20は、自船舶の位置を時間経過と共に順次求め、自船舶の針路および速度を時間経過と共に順次求める自船舶測定装置としての機能を有している。
【0024】
航路演算部30は、次の第1処理~第3処理のいずれかによって、他船舶の位置を求めてよい。すなわち、航路演算部30は、第1処理~第3処理のうち、操作部26における操作によって選択された処理を実行してよい。第1処理では、AIS装置14から出力されたAIS他船舶情報に基づいて他船舶の位置を求める。第2処理では、レーダ装置12から出力されたTT目標データに基づいて他船舶の位置を求める。第3処理では、AIS他船舶情報およびTT目標データのうち少なくとも一方に基づいて、他船舶の位置を求める。
【0025】
プロセッサ22は、他船舶を目的地として、目的地とされた目標船舶までの航路を求める航路演算処理を繰り返し実行する。航路を求めるに際してプロセッサ22は、レーダ装置12またはAIS装置14によって位置が求められた他船舶が複数ある場合には、目標船舶として設定されていない他船舶との衝突が避けられる避航航路を求める。
【0026】
ユーザは、操作部26の操作によって、レーダ画像、TT画像、AIS画像、または、これらの画像のうち2つまたは3つが重ねられた合成画像のいずれを表示部24に表示させるかを選択する。表示処理部32は、操作部26におけるユーザの選択操作に従った画像を表示部24に表示させる。また、ユーザは、操作部26の操作によって目標船舶を指定する。航路演算部30は、操作部26におけるユーザの操作に従って、複数の他船舶のうち、目的地として指定された目標船舶を認識する。なお、以下の説明では、他船舶のうちの目標船舶でないものを非目標・他船舶という。
【0027】
航路演算部30は、各非目標・他船舶について得られたTT目標データあるいはAIS他船舶情報に基づいて、各非目標・他船舶についての緩衝領域を求める。緩衝領域は、非目標・他船舶との接触を回避するために設定される領域である。緩衝領域は、仮に非目標・他船舶が現在の速度および針路を維持して進み、仮に自船舶が現在の速度を維持して非目標・他船舶と落ち合う方向に進んだ場合における、非目標・他船舶と自船舶とが落ち合う位置に設定される。緩衝領域は、非目標・他船舶を水平面に投影した輪郭から所定の距離以上離れた円形、略楕円形、多角形等の形状を有する接触境界線に囲まれた形状を有してもよい。
【0028】
航路演算部30は、自船舶の位置および速度と、目標船舶の位置、速度および針路と、各非目標・他船舶の位置、速度、針路および緩衝領域に基づいて、自船舶から目標船舶までの航路を求める。
【0029】
自船舶から目標船舶までの航路は、具体的に次のように求められてよい。最初に、現時点における自船舶の位置および速度に基づいて、さらには、現時点における目標船舶の位置、速度および針路に基づいて目標位置が求められる。すなわち、現時点の位置から現時点の速度で自船舶が航行し、目標船舶が現時点における速度および針路で航行したときに、自船舶および目標船舶が落ち合う位置が目標位置として求められる。ここで、現時点とは、航路演算処理が実行される直前の時点をいう。自船舶および目標船舶が落ち合う位置は、自船舶の位置と目標船舶の位置とが一致するときの位置である。
【0030】
航路演算処理では、目標位置が求められると共に、現時点における自船舶と目標位置との間を結ぶ仮の航路が求められる。さらに、現時点における速度で仮の航路を自船舶が航行し、現時点における速度および針路で各非目標・他船舶が直進する演算モデルが設定される。
【0031】
この演算モデルにおいて、自船舶が目標位置から所定の接近距離だけ離れた位置に到達するまでの間に、直進中の各非目標・他船舶の緩衝領域に自船舶が侵入しないという非干渉条件が成立する場合には、その仮の航路が航路として求められる。ここで、接近距離とは、目標船舶に対する作業が可能となる程度に自船舶が目標船舶に接近したときにおける、自船舶と目標船舶との間の距離をいう。目標船舶に対する作業には、自船舶が曳船である場合には、ワイヤ、ロープ等のタグラインを目標船舶に接続する作業等がある。自船舶が通船である場合には、自船舶と目標船舶との間で作業員を行き来させるための作業がある。自船舶が燃料供給船である場合には、他船舶に燃料を供給する作業がある。
【0032】
上記の演算モデルについては、現時点における速度で自船舶が仮の航路を航行するという条件は、仮の航路上で速度が変化する状態で、自船舶が仮の航路を航行するという条件に置き換えられてもよい。例えば、仮の航路の前半と後半とで異なる速度で自船舶が航行するという条件の下で航路が求められてもよい。また、仮の航路を複数の区間に区切り、それぞれの区間において異なる速度で自船舶が航行するという条件の下で航路が求められてもよい。
【0033】
航路演算部30は、あらゆる避航航路のうち距離が最短である航路を求めてもよい。また、航路演算部30は、あらゆる避航航路のうち、自船舶が目標位置から接近距離だけ離れた位置に到達するまでの間の如何なるタイミングにおいても、自船舶が、いずれの非目標・他船舶からも所定値以上の距離で隔てられる航路を求めてもよい。
【0034】
表示処理部32は、このようにして求められた航路を表示部24に表示させる。航路は、レーダ画像、TT画像、AIS画像、または、これらの画像のうち2つまたは3つが重ねられた合成画像に重ねて表示されてもよい。
【0035】
航路演算部30が航路を求め、表示処理部32が航路を表示部24に表示させた後、航路演算部30は、次に取得された新たなAIS他船舶情報、または、次に取得された新たなTT目標データに基づいて以下の処理を実行する。すなわち、航路演算部30は、目標船舶の位置、速度および針路と、各非目標・他船舶の位置、速度および針路を取得し、各非目標・他船舶の緩衝領域を求める。また、航路演算部30は、自船舶に搭載された測位装置16によって、あるいは方位センサ18および速度センサ20によって、自船舶について最新の位置および速度を取得する。航路演算部30は、新たに取得した自船舶の位置および速度、目標船舶の位置、速度および針路、さらには、各非目標・他船舶の位置、速度、針路および緩衝領域に基づいて、自船舶から目標位置(目標船舶)までの航路を新たに求める。表示処理部32は、このようにして求められた航路を表示部24に表示させる。
【0036】
航路演算部30および表示処理部32は、自船舶が航行している間、自船舶から目標位置までの1つの航路を求める航路演算処理を時間経過と共に繰り返し実行する。航路演算部30および表示処理部32は、自船舶と目標船舶との間の距離が接近距離以下となったときに、航路演算処理を終了してよい。
【0037】
図2には、航路演算部30が実行する航路更新処理のフローチャートが示されている。航路更新処理では、自船舶と目標船舶との間の距離が、接近距離以下となるまで、ステップS101~S107の航路演算処理が繰り返し実行される。航路演算部30は、自船舶に搭載された測位装置16によって、あるいは方位センサ18および速度センサ20によって、自船舶の位置および速度を取得する(S101)。航路演算部30は、AIS他船舶情報またはTT目標データに基づいて、目標船舶の位置、速度および針路と、各非目標・他船舶の位置、速度および針路を取得し、各非目標・他船舶の緩衝領域を求める(S102)。航路演算部30は、自船舶と目標船舶との間の距離が、接近距離以下であるかを判定する(S103)。航路演算部30は、自船舶と目標船舶との間の距離が接近距離以下であるときは、航路更新処理を終了する。一方、自船舶と目標船舶との間の距離が接近距離を超えるときは、航路演算部30は、自船舶と目標船舶とが落ち合う位置を目標位置として求め(S104)、自船舶から目標位置までの仮の航路を求める(S105)。
【0038】
航路演算部30は、仮の航路について非干渉条件が成立するか否かを判定する(S106)。航路演算部30は、非干渉条件が成立しないときはステップS104の処理に戻り、新たな目標位置および仮の航路を求める。一方、非干渉条件が成立するときは、その仮の航路を航路として決定する(S107)。
【0039】
航路更新処理によれば、自船舶から目標船舶までの航路が、時間経過と共に順次新たに求められる。これによって、目標船舶が移動する場合であっても、目標船舶に向かう航路が容易に求められる。自船舶の乗組員は、移動する目標船舶までの航路を確実に把握することができる。
【0040】
図3には、航路演算処理が繰り返し実行されているときに、ある時刻に表示部24に表示されるTT/AIS合成画像50の例が示されている。TT/AIS合成画像50は、TT画像とAIS画像とが重ねられた画像である。自船舶52を中心に描かれている円は、自船舶52の位置を中心とした極座標における半径座標値が同一である線を示す。
【0041】
図3に示されたTT/AIS合成画像50では、レーダ装置12のTT機能によって検出された非目標・他船舶が白丸で示されている。また、AIS装置14によって検出された非目標・他船舶が三角形によって示されている。レーダ装置12のTT機能およびAIS装置14の両者によって検出された非目標・他船舶は、白丸および三角形の両者によって示されている。レーダ装置12のTT機能のみによって検出された非目標・他船舶を示す白丸から引き出された直線が伸びる方向は非目標・他船舶の針路を示す。AIS装置14によって検出された非目標・他船舶を示す三角形の1つの頂点から引き出された直線が伸びる方向は、非目標・他船舶の針路を示す。
【0042】
図3に示されている例では、目標船舶54は、AIS装置14のみによって検出されている。また、目標船舶54の予測航路66が破線によって示され、自船舶52から目標位置64までの航路58が、予測航路66よりも粗い破線によって示されている。非目標・他船舶の方位を示す直線の先端に示された黒丸は、仮に非目標・他船舶が現在の速度および針路を維持し、仮に自船舶が現在の速度でこの黒丸に向けて進んだとした場合に、自船舶が非目標・他船舶に衝突する位置を示す。したがって、黒丸で示される位置を自船舶が避けることで、自船舶と非目標・他船舶との衝突が回避される。各黒丸には、接触境界60と緩衝領域62が併せて示されている。航路58は緩衝領域62と重ならないように求められている。このような表示によって、非目標・他船舶との間に十分な距離を確保するための航路58が自船舶の操縦者に示される。
【符号の説明】
【0043】
10 航路演算装置、12 レーダ装置(他船舶検出装置)、14 AIS装置(他船舶検出装置)、16 測位装置、18 方位センサ、20 速度センサ、22 プロセッサ、24 表示部、26 操作部、28 メモリ、30 航路演算部、32 表示処理部、50 TT/AIS合成画像、52 自船舶、54 目標船舶、58 航路、60 接触境界、62 緩衝領域、64 目標位置。
図1
図2
図3