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特許7489292光無線装置および光ファイバ位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光無線装置および光ファイバ位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/11 20130101AFI20240516BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240516BHJP
【FI】
H04B10/11
G02B7/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020183745
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073629
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英治
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-233738(JP,A)
【文献】特開平08-111666(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01172949(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/11
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光用のレンズと、
前記レンズの後方に配置され、先端が前記レンズ側に向けられた光ファイバと、
前記光ファイバの先端部を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、
前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置動作と、
極大探索動作であって、
前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索する動作と、
前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索する動作と、を含む極大探索動作と、を実行し、
前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置し、
前記移動機構は、
前記極大探索動作を複数回に亘って実行し、
前記極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置することを特徴とする光無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光無線装置において、
前記光ファイバに入射する光の強度を計測し、計測値を表示する受光器を備えることを特徴とする光無線装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光無線装置において、
前記配置動作は、
前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方における焦点後方領域に前記光ファイバの先端部を配置する動作を含むことを特徴とする光無線装置。
【請求項4】
光ファイバの先端が受光用のレンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置ステップと、
極大探索ステップであって、
前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索するステップと、
前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索するステップと、を含む極大探索ステップと、
前記第2極大位置に基づく位置を前記光ファイバの先端部の受光位置として決定するステップと、
を含み、
前記極大探索ステップを複数回に亘って実行し、
前記極大探索ステップが複数回に亘って実行されることで得られた前記第2極大位置に基づく位置を前記光ファイバの先端部の受光位置として決定することを特徴とする光ファイバ位置決め方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバ位置決め方法において、
前記配置ステップは、
前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方における焦点後方領域に前記光ファイバの先端部を配置するステップを含むことを特徴とする光ファイバ位置決め方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線装置および光ファイバ位置決め方法に関し、特に、光無線装置用の光ファイバの先端部の位置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信側の装置と受信側の装置との間で光ファイバ等の通信線を用いずに通信を行う光無線通信が広く行われている。光無線通信は、例えば、非常時において河川の両岸間において行われる。河川の両岸に光無線装置が設置され、一方の光無線装置から他方の光無線装置に情報を含む光が送信される。光無線通信は、2つの建造物の間で行われることもある。光無線通信では通信線が用いられないため、設置コストが低減される。
【0003】
以下の特許文献1および2には、光無線装置が記載されている。特許文献1には、複数の電気光変換部を設けることで、複数の相手方との間で通信を行うことが記載されている。また、複数の光出射部から同じ相手方へ光ビームを送出することで光強度が高まり、より遠くへの通信が可能になることが記載されている。特許文献2には、送受信する光の方向(光軸)を調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-286705号公報
【文献】特開2015-122737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、光無線通信では、一対の光無線装置のそれぞれについて、おおよその送信方向が調整された後に受信方向が調整される。光無線装置には、受光部の姿勢を調整する調整機構によって受信方向を調整するものがある。この場合、受信方向の調整は、ユーザが受光強度を確認しながら調整機構を操作することで行われる。このような受信方向の調整に際しては、相手方の光無線装置の位置にコーナーキューブが配置される等、調整に必要な部材が増加してしまうことがある。また、光無線通信では、赤外線等、可視光でない光が用いられることがある。この場合、ユーザの目視によって受信方向を調整することには困難が伴う。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成および動作で光通信装置の受信方向を調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受光用のレンズと、前記レンズの後方に配置され、先端が前記レンズ側に向けられた光ファイバと、前記光ファイバの先端部を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置動作と、極大探索動作であって、前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索する動作と、前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索する動作と、を含む極大探索動作と、を実行し、前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置し、前記移動機構は、前記極大探索動作を複数回に亘って実行し、前記極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置することを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記光ファイバに入射する光の強度を計測し、計測値を表示する受光器を備える。
【0009】
望ましくは、前記配置動作は、前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方における焦点後方領域に前記光ファイバの先端部を配置する動作を含む
【0011】
また、本発明は、光ファイバの先端が受光用のレンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置ステップと、極大探索ステップであって、前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索するステップと、前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記光ファイバに入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索するステップと、を含む極大探索ステップと、前記第2極大位置に基づく位置を前記光ファイバの先端部の受光位置として決定するステップと、を含み、前記極大探索ステップを複数回に亘って実行し、前記極大探索ステップが複数回に亘って実行されることで得られた前記第2極大位置に基づく位置を前記光ファイバの先端部の受光位置として決定することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記配置ステップは、前記光ファイバの先端が前記レンズに向けられた状態で、前記レンズの後方における焦点後方領域に前記光ファイバの先端部を配置するステップを含む
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成および動作で光通信装置の受信方向を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光無線通信システムを模式的に示す図である。
図2】受信機の構成を示す図である。
図3】受信方向が調整される原理を示す図である。
図4】受信方向が調整される原理を示す図である。
図5】ラスタスキャン方式で光ファイバの先端部を移動させたときの光ファイバの先端部の軌跡を示す図である。
図6】渦巻きスキャン方式で光ファイバの先端部を移動させたときの光ファイバの先端部の軌跡を示す図である。
図7】第3ステップまたは第4ステップにおける光ファイバの先端部の動作の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。図1には、本発明の実施形態に係る光無線通信システム100が模式的に示されている。光無線通信システム100は、空間を挟んで配置された第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2を備えている。第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2は、例えば、河川の両岸にそれぞれ配置される。また、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2は、見通しのよい空間を隔てて建設された2棟のビルにそれぞれ配置されてもよい。
【0016】
第1光無線装置10-1と第2光無線装置10-2は同様の構成を有しており、同様の処理を実行する。第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2のそれぞれは、送信機12および受信機14を備えている。第1光無線装置10-1の送信機12は、伝送対象の情報によって変調が施された光を送信する。光は、単色光に変調が施されたものであってよく、赤外線等、可視光線よりも波長が長い電磁波であってもよい。変調方式は振幅変調であってよい。破線16で示されているように、第1光無線装置10-1の送信機12から送信される光は、発散しながら、すなわちビーム径を大きくしながら第2光無線装置10-2の受信機14に到達する。第2光無線装置10-2の受信機14は、第1光無線装置10-1の送信機12から送信された光を受信し、受信光に対して復調処理を施して伝送対象の情報を抽出する。同様の処理によって、第2光無線装置10-2の送信機12から光が送信され、第1光無線装置10-1の受信機14で光が受信される。以下の説明では、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2を、単に光無線装置10と称することがある。
【0017】
送信機12は、光の送信方向が調整自在となるように、配置の際の姿勢が調整自在となっている。受信機14は、光の受信方向が調整自在となるように、配置の際の姿勢が調整自在となっている。送信機12の筐体は、受信機14の筐体に取り付けられ、受信機14の筐体に対して送信機12の筐体の姿勢が調整自在となっていてもよい。また、受信機14の筐体が送信機12の筐体に取り付けられ、送信機12の筐体に対して受信機14の筐体の姿勢が調整自在となっていてもよい。送信機12および受信機14の姿勢を調整する機構としては、ユーザによって操作される姿勢調整機構が用いられてもよい。この姿勢調整機構には、モータによるサーボ機構が用いられてもよい。
【0018】
図2には、受信機14の構成が示されている。受信機14は、レンズ18、光ファイバ20、受光器22、制御装置24、操作デバイス26および移動機構28を備えている。受信機14は、レンズ18から入射した光を光ファイバ20に導き、受信された光に対して復調処理を施す機能と共に、受信方向を調整する機能を有している。以下の説明では、レンズ18から外部に向かう方向(図面の左方向)が、受信機14の前方向とされる。また、図2において描画面に向かう方向が受信機14の右方向とされ、描画面から離れる方向が左方向とされる。さらに、図2における上下方向が受信機14の上下方向とされる。
【0019】
レンズ18の後方には、レンズ18側に先端を向けて光ファイバ20が配置されている。光ファイバ20は、その先端から後方に向かって延びており、受信機14の後部に配置された受光器22に至っている。受光器22は、光ファイバ20によって伝送された光を取得し、その光に対して復調処理を施して、伝送対象の情報を抽出する。光ファイバ20は可撓性を有しており、受光器22に接続された後端、および後端付近が固定された状態で、先端部が移動自在となっている。ここで、先端部とは、光ファイバ20の先端の他、移動機構28によって保持され、移動機構28によって移動する先端付近の部分をいう。
【0020】
受信機14は、光を受信して伝送対象の情報を抽出する通信モードの他、光の受信方向を調整する光軸調整モードで動作する。受信機14が光軸調整モードで動作する場合、受光器22は、光ファイバ20から取得された受信光の強度を計測する。受光器22は、計測値を表示すると共に計測値を制御装置24に出力する。制御装置24は、受信光の強度の計測値に基づいて移動機構28を制御する。
【0021】
移動機構28は、制御装置24による制御に従って、光ファイバ20の先端部を移動させる。すなわち、移動機構28は、光ファイバ20の先端がレンズ18側に向けられた状態で、光ファイバ20の先端部を前後方向、および前後方向に垂直な平面内で移動させる。
【0022】
図3および図4は、光軸調整モードの動作において、受信方向が調整される原理を示す図である。図3には、受信機14のレンズ18に入射する光の光路が示されている。破線34で示されているように、前方を見て正の仰角でレンズ18に光が入射した場合、レンズ18の後方において、レンズ18の光軸38よりも下方に焦点301が形成される。一点鎖線36で示されているように、前方を見て負の仰角(正の俯角)でレンズ18に光が入射した場合、レンズ18の後方において、レンズ18の光軸38よりも上方に焦点302が形成される。レンズ18の前方から入射した光は、レンズ18の後方においてレンズ18の光軸38上に焦点300が形成される。また、図2には示されていないが、前方を見て左側からレンズ18に光が入射した場合、レンズ18の後方において、レンズ18の光軸38よりも右側に焦点が形成され、前方を見て右側からレンズ18に光が入射した場合、レンズ18の後方において、レンズ18の光軸38よりも左側に焦点が形成される。あらゆる方向からレンズ18に入射した光に対して形成される焦点の集合として、レンズ18の後方で焦点面32が定義される。焦点面32は、レンズ18の形状に応じて曲面である場合も平面である場合もある。
【0023】
図4には、一点鎖線36で示される方向からレンズ18に光が入射した場合の焦点30よりも後方の光路が示されている。レンズ18の前面の全域に、一点鎖線36で示される方向から、2本の一点鎖線36に挟まれる領域内に光が入射した場合、焦点30の後方では斜線が施された焦点後方領域40に光が分布する。本実施形態に係る光無線装置10では、焦点30の後方で光路が広がり、焦点30の後方でピントがズレることを利用して、光の受信方向が調整される。
【0024】
すなわち、光の受信方向の調整では、最初に光ファイバ20の先端をレンズ18側に向けて、光ファイバ20の先端部が焦点後方領域40に配置される。その後、光ファイバ20に入射する光の強度が極大となるように、光ファイバ20の先端が焦点30に近付けられ、または一致させられる。最初に光ファイバ20の先端を焦点後方領域40に配置することで、光ファイバ20の先端に確実に光が入射し、光ファイバ20の先端をおおよその位置に配置することが容易になる。
【0025】
第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2について、光の送信方向および受信方向を調整する手順について図1図6を参照して説明する。光の受信方向を調整する手順に先立って、以下の第1ステップおよび第2ステップに従って、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2について光の送信方向を調整する手順が実行される。
【0026】
第1ステップでは、第1光無線装置10-1の送信機12の光軸(送信光軸T)と、第2光無線装置10-2の受信機14の光軸(受信光軸R)とのズレが所定のズレ角度範囲内となるように、第1光無線装置10-1の送信機12の姿勢が調整される。この調整は、第1光無線装置10-1の送信機12が、第2光無線装置10-2の受信機14に向けて光を送信した状態で、第2光無線装置10-2の受信機14で受信された光の強度の計測値が所定値を超えるように行われてよい。
【0027】
第2ステップでは、第2光無線装置10-2の送信光軸Tと、第1光無線装置10-1の受信光軸Rとのズレが所定のズレ角度範囲内となるように、第2光無線装置10-2の送信機12の姿勢が調整される。この調整は、第2光無線装置10-2の送信機12が、第1光無線装置10-1の受信機14に向けて光を送信した状態で、第1光無線装置10-1の受信機14で受信された光の強度の計測値が所定値を超えるように行われてよい。
【0028】
第1ステップおよび第2ステップにおける送信機12の姿勢および受信機14の姿勢の調整は、受信機14における受光器22に表示された計測値をユーザが参照しながら、ユーザが姿勢調整機構を操作することで行われてよい。また、ズレ角度範囲は、例えば、-0.1°以上、+0.1°以下であってよい。
【0029】
第1ステップ1および第2ステップで送信機12の姿勢を調整し、送信光軸Tの方向を変化させる方式には、ラスタスキャン方式、渦巻きスキャン方式、十字スキャン方式等がある。ラスタスキャン方式では、左または右方向に送信光軸T上の点を移動させる動作が、上から下または下から上に、上下方向の所定の刻み幅で順に実行される。あるいは、ラスタスキャン方式では、上または下方向に送信光軸T上の点を移動させる動作が、右から左または左から右に、左右方向の所定の刻み幅で順に実行される。ここで、送信光軸T上の点は、送信機12前方の光軸上の点であり、例えば、受信側の光無線装置10における受信機14内に設定された仮想的な基準平面と、送信光軸Tとの交点であってよい。以下の説明では、送信光軸T上の点を光軸点という。
【0030】
図5には、ラスタスキャン方式で光ファイバ20の先端部を移動させたときの光軸点56の軌跡が示されている。この図に示されている方式では、光軸点56を移動させる動作が、上から下に、上下方向の刻み幅Δで順に実行される。図5に示された矢印50は右方向に移動する際の光軸点56の軌跡を示す。図5に示された破線52は、上下方向に光軸点56が移動する際の光軸点56の軌跡を示す。
【0031】
渦巻きスキャン方式では、光軸点が、初期の位置から遠ざかりながら探索平面内を周回する。あるいは、渦巻きスキャンでは、光軸点が、ある中心点に向かいながら探索平面内を周回する。図6には、渦巻きスキャン方式で光軸点56を移動させたときの光軸点56の軌跡が示されている。この図に示されている方式では、光軸点56は、初期の位置から遠ざかりながら探索平面内を時計回りに周回する。図6に示された矢印54は、光軸点56の軌跡を示す。この例では、光軸点56が探索平面内を矩形状に周回する。
【0032】
十字スキャン方式では、光軸点を横方向に移動させる横方向スキャンが実行され、その横方向スキャンにおいて計測値が極大となる位置が求められる。そして、横方向スキャンにおいて計測値が極大となった位置において、縦方向に光軸点を移動させる縦方向スキャンが実行され、その縦方向スキャンにおいて計測値が極大となる位置が求められる。
【0033】
第3ステップでは、第2光無線装置10-2の受信機14における移動機構28によって光ファイバ20の先端部を移動させながら、制御装置24が受信光の強度を計測する。制御装置24は、受信光の強度の計測値が極大となるような光ファイバ20の先端部の位置を探索する。制御装置24は、移動機構28を制御して光ファイバ20の先端部をそのような極大位置に配置する。
【0034】
ここでは、第3ステップにおける受信機14の具体的な動作について説明する。制御装置24は、移動機構28を制御して次のプロセス(a)~(b)を含む極大探索動作を実行する。
【0035】
(a)制御装置24は、光ファイバ20の先端がレンズ18に向けられた状態で、レンズ18の後方に光ファイバ20の先端部を配置する。
(b)制御装置24は、光ファイバ20の先端部をレンズ18の光軸38に平行な方向に移動させ、受光器22から出力される計測値が極大となる第1極大位置を探索し、第1極大位置に光ファイバ20の先端部を配置する。
(c)制御装置24は、第1極大位置を通り、レンズ18の光軸38に対して垂直に交わる探索平面内で光ファイバ20の先端部を移動させ、受光器22から出力される計測値が極大となる第2極大位置を探索し、第2極大位置に光ファイバ20の先端部を配置する。
【0036】
プロセス(c)において探索平面内で光ファイバ20の先端部を移動させる方式には、十字スキャン方式がある。十字スキャン方式では、光ファイバ20の先端部を横方向に移動させる横方向スキャンが実行され、その横方向スキャンにおいて計測値が極大となる位置が求められる。そして、横方向スキャンにおいて計測値が極大となった位置において、縦方向に光ファイバ20の先端部を移動させる縦方向スキャンが実行され、その縦方向スキャンにおいて計測値が極大となる位置が第2極大位置として求められる。
【0037】
第3ステップでは、光ファイバ20の先端部が第2極大値位置にあるときの計測値が、所定の閾値を超えるようになるまで、プロセス(b)および(c)が繰り返される。プロセス(a)、(b)および(c)を一通り実行したのみで第2極大値位置に対する計測値が、所定の閾値を超えたときは、プロセス(b)および(c)を複数回繰り返す必要はない。光ファイバ20の先端部が第2極大値位置にあるときの計測値が所定の閾値を超えた後、その第2極大位置に光ファイバ20の先端部が設置されることで、光ファイバ20の先端部がレンズ18の焦点30に近付けられ、または合わせられる。これによって、第1光無線装置10-1の送信光軸Tと、第2光無線装置10-2の受信光軸Rとが合わせられる。
【0038】
第4ステップでは、第3ステップと同様の動作によって、第1光無線装置10-1の受信機14における光ファイバ20の先端部が、レンズ18の焦点30に合わせられる。これによって、第2光無線装置10-2の送信光軸Tと、第1光無線装置10-1の受信光軸Rとが合わせられる。
【0039】
このように、本実施形態に係る移動機構28は、制御装置24による制御に従って、次のような配置動作および極大探索動作を実行する。配置動作は、プロセス(a)に対応する動作であり、光ファイバ20の先端がレンズ18に向けられた状態で、レンズ18の後方の焦点後方領域40に光ファイバ20の先端部を配置する動作である。極大探索動作は、プロセス(b)および(c)に対応する動作であり、光ファイバ20の先端部をレンズ18の光軸38に沿った方向に移動させ、光ファイバ20に入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索する動作を含む。また、極大探索動作は、第1極大位置を通り、レンズ18の光軸38に交わる平面内で光ファイバ20の先端部を移動させ、光ファイバ20に入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索する動作を含む。光ファイバ20の先端部は第2極大位置に基づく位置に配置されてよい。移動機構28は、制御装置24の制御に従って、極大探索動作を複数回に亘って実行し、極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された第2極大位置に基づく位置に光ファイバ20の先端部を配置してもよい。
【0040】
本実施形態によれば、最初に光ファイバ20の先端部が焦点後方領域40に配置される。これによって、光ファイバ20の先端に確実に光が入射し、光ファイバ20の先端をおおよその位置に配置することが容易になる。また、本実施形態によれば、光ファイバ20の先端部が焦点後方領域40に配置された後に極大探索動作が実行される。そのため、第1光無線装置10-1の送信光軸と第2光無線装置10-2の受信光軸とが先に合わせられた後に、第2光無線装置10-2の送信光軸と第1光無線装置10-1の受信光軸とが合わせられたとしても、先に合わせられた第1光無線装置10-1の送信光軸と第2光無線装置10-2の受信光軸とに与える影響は小さい。
【0041】
図7には、第3ステップまたは第4ステップにおける光ファイバ20の先端部の動作の例が模式的に示されている。矢印60は、第1回目のプロセス(b)によって光ファイバ20の先端部が初期の位置Aから位置Bに移動したことを示している。矢印62は、第1回目のプロセス(c)によって光ファイバ20の先端部が位置Bから位置Cに移動したことを示している。矢印64は、第2回目のプロセス(b)によって光ファイバ20の先端部が位置Cから位置Dに移動したことを示している。矢印66は、第2回目のプロセス(c)によって光ファイバ20の先端部が位置Dから位置Eに移動したことを示している。矢印68は、第3回目のプロセス(b)および(c)によって光ファイバ20の先端部が位置Eから位置F、すなわち焦点30の位置に移動したことを示している。
【0042】
光ファイバ20の先端部をレンズ18の光軸38の方向に沿って移動させた場合、受信光の強度の計測値は、焦点後方領域40と焦点後方領域40外の領域との境界で極大値となる。そのため、プロセス(b)によって探索される第1極大位置は境界付近に位置し、プロセス(b)および(c)が繰り返されることで、第1極大位置および第2極大位置はレンズ18の焦点30に収束する。したがって、プロセス(b)および(c)が繰り返されることで、受信光軸Rと送信光軸Tとが合わせられる。
【0043】
第3ステップおよび第4ステップは、ユーザの操作によって行われてもよい。この場合、ユーザは、制御装置24に接続された操作デバイス26(図2)を操作して、制御装置24に移動機構28を制御させる。操作デバイス26は、ボタン、レバー、タッチパネル等であってよい。操作デバイス26はユーザの操作に応じて制御装置24に操作指令情報を出力する。ユーザは、操作デバイス26を操作することでプロセス(a)を実行し、受光器22が表示する計測値を参照しながらプロセス(b)および(c)を実行する。
【0044】
ユーザは、次のような光ファイバ位置決め方法によって、光ファイバ20の先端部の位置を決定する。すなわち、光ファイバ位置決め方法は、光ファイバ20の先端が受光用のレンズ18に向けられた状態で、レンズ18の後方の焦点後方領域40に光ファイバ20の先端部を配置するステップと、次のような極大探索ステップとを含む。すなわち、極大探索ステップは、光ファイバ20の先端部をレンズ18の光軸38に沿った方向に移動させ、光ファイバ20に入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索するステップを含む。また、極大探索ステップは、第1極大位置を通り、レンズ18の光軸38に交わる平面内で光ファイバ20の先端部を移動させ、光ファイバ20に入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索するステップを含む。光ファイバ20の先端部は第2極大位置に基づく位置に配置されてよい。光ファイバ位置決め方法では、極大探索ステップを複数回に亘って実行し、極大探索ステップが複数回に亘って実行されることで探索された第2極大位置に基づく位置が、光ファイバ20の先端部の受光位置として決定される。
【0045】
上記の実施形態における送信機12は、伝送対象の情報によって光に変調を施し、さらに、その変調後の光に低速変調を施してもよい。低速変調は、伝送対象の情報の伝送レートよりも低いレート(周波数)の信号によって、光に振幅変調を施す変調方式である。この場合、受信機14における受光器22は、光ファイバ20によって伝送された光に対して低速復調処理(低速変調に対する逆の処理)を施して得られた信号に基づいて、受信光の強度を計測する。これによって、光無線装置10で受信される光に含まれる外乱光に基づく計測誤差が抑制される。
【0046】
また、受信機14における受光器22からは、光ファイバが受信機14の外部に引き出されてもよい。この光ファイバは、受信機14とは別に設けられた外部の受信装置に接続されてもよい。外部の受信装置は、光ファイバによって伝送された光に復調処理を施し、伝送対象の情報を抽出してもよい。この場合、受光器22は、受信光に対して復調処理を施す構成および機能を有していなくてもよい。
【0047】
上記では、第1光無線装置10-1と第2光無線装置10-2との間で、赤外線等の非可視光が伝送される実施形態が示された。第1光無線装置10-1と第2光無線装置10-2との間では可視光が伝送されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10-1 第1光無線装置、10-2 第2光無線装置、12 送信機、14 受信機、16 送信機から送信される光の光路を示す破線、18 レンズ、20 光ファイバ、22 受光器、24 制御装置、26 操作デバイス、28 移動機構、30 焦点、32 焦点面、34,36 レンズに入射する光の光路を示す破線、38 レンズの光軸、40 焦点後方領域、50,54 光軸点の軌跡を示す矢印、52 光軸点の軌跡を示す破線、56 光軸点、60,62,64,66,68 光ファイバの先端部の位置の移動を示す矢印、100 光無線通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7