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特許7489296ガラス用熱処理炉、ガラス用熱処理炉の使用方法、廃ガラス用熱処理炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ガラス用熱処理炉、ガラス用熱処理炉の使用方法、廃ガラス用熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/08 20060101AFI20240516BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C03B19/08 Z
F27B9/24 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020192040
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080771
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591114102
【氏名又は名称】大同プラント工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】川手 賢治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀哲
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智也
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-249270(JP,A)
【文献】特開2007-161567(JP,A)
【文献】特開平10-203836(JP,A)
【文献】特開2005-132714(JP,A)
【文献】特開2010-163296(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B19/06-19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材を接触させて、多孔質ガラスを得るガラス用熱処理炉であって、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記被処理材を搬送する搬送装置と、
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記ガスは、還元性ガスであり、前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされていることを特徴とするガラス用熱処理炉。
【請求項2】
前記ガス供給系は、空気を供給する空気供給系、燃料ガスを供給する燃料ガス供給系、前記空気供給系と前記燃料ガス供給系が接続されたガス発生器、及び前記ガス発生器と接続された露点調節装置を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を備えている、請求項1に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項3】
前記ガス供給系は、空気を供給する空気供給系、及び燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスの燃焼ガスである前記還元性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉本体に取り付けられて前記炉内を冷却する冷却装置と、を備えている請求項1に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記炉内に配設された熱交換式のクーリングチューブを備えている請求項3に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記炉本体に接続されて前記炉内と炉外部との間で前記ガスを循環させる循環系と、前記循環系に接続されたクーラ装置と、を備えている請求項3に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項6】
前記温度調整手段として、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を更に備えている請求項3から5のうち何れか一項に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項7】
前記搬送装置は、ベルトコンベアと、前記ベルトコンベアと前記被処理材との間に介装される介装部材と、を備えており、
前記ベルトコンベアには、クロム元素を含む耐熱材が使用されており、
前記介装部材には、クロム元素を含まない非鉄材料が使用されている請求項1から6のうち何れか一項に記載のガラス用焼成炉。
【請求項8】
前記介装部材は、シリカ系材料からなる耐熱シートである請求項7に記載のガラス用焼成炉。
【請求項9】
前記介装部材は、少なくとも1面が外部へ開放された形状とされて、内部に前記被処理材が収容される耐熱容器である請求項7に記載のガラス用焼成炉。
【請求項10】
前記介装部材は、板状とされて、表面に前記被処理材が載せられる耐熱プレートである請求項7に記載のガラス用焼成炉。
【請求項11】
前記被処理材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加された廃ガラス材である請求項1から10のうち何れか一項に記載のガラス用熱処理炉。
【請求項12】
所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材を接触させて、多孔質ガラスを得るガラス用熱処理炉の使用方法であって、
前記ガラス用熱処理炉は、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記被処理材を搬送する搬送装置と、
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記搬送装置により、前記被処理材が前記炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされ、
温度調整手段により、前記炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされ、
前記ガスは、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させて得られる還元性ガスとされ、
前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態とされることを特徴とするガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項13】
前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系、前記空気供給系と前記燃料ガス供給系が接続されたガス発生器、及び前記ガス発生器と接続された露点調節装置を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を備えており、
前記ガス発生器により、前記空気供給系から供給される前記空気と、前記燃料ガス供給系から供給される前記燃料ガスが空燃比1未満で燃焼されて前記還元性ガスが発生され、
前記露点調節装置により、前記還元性ガスの露点が10℃~60℃とされ、
前記ヒータ装置により、前記炉内で前記還元性ガスが加熱されて、前記炉内温度が800℃~950℃とされる、請求項12に記載のガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項14】
前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、及び前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスを燃焼させてその燃焼ガスである前記還元性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉本体に取り付けられて前記炉内を冷却する冷却装置と、を備えており、
前記バーナー装置における前記空気及び前記燃料ガスの燃焼が常に保持されることにより、前記還元性ガスが前記炉内に常時送り込まれ、
前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱により、又は、前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱と前記冷却装置による前記炉内の冷却により、前記炉内温度が800℃~950℃とされる、請求項12に記載のガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項15】
前記炉本体は、前記被処理材の搬送方向で、前記炉内が複数の領域に区分けされており、
前記複数の領域のうち、前記搬送方向で最上流側の領域はプレ加熱領域とされ、前記プレ加熱領域よりも前記搬送方向で下流側の領域は加熱領域とされており、
前記加熱領域における前記炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされ、
前記プレ加熱領域における前記炉内温度は、前記加熱領域の前記炉内温度よりも50℃~150℃低い温度とされる請求項12から14のうち何れか一項に記載のガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項16】
前記温度調整手段として、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を更に備えており、
前記被処理材を前記ガスと接触させる熱処理は、2段階に分けて実行され、
前記2段階のうちの前段階は、前記温度調整手段として前記ヒータ装置が使用され、
前記2段階のうちの後段階は、前記温度調整手段として前記バーナー装置及び前記冷却装置が使用される請求項14又は15に記載のガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項17】
前記被処理材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加された廃ガラス材である請求項12から16のうち何れか一項に記載のガラス用熱処理炉の使用方法。
【請求項18】
所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、廃ガラス材を接触させて、多孔質ガラスを得る廃ガラス用熱処理炉であって、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記廃ガラス材を搬送する搬送装置と、
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記廃ガラス材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加されたものであり、
前記ガスは、還元性ガスであり、
前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされていることを特徴とする廃ガラス用熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材料である被処理材を焼成して多孔質ガラスを得るためのガラス用熱処理炉、ガラス用熱処理炉の使用方法、廃ガラス用熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質ガラスは、多孔質に由来する透水性や濾過性等を生かし、水質浄化材、調湿材、揮発性有機化合物の吸着材等といった様々な用途の利用について有用視されている。多孔質ガラスは、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO)等を含む被処理材を焼成処理して製造される。多孔質ガスの製造方法として、例えば、特許文献1,2が提案されている。
被処理材を焼成処理するには、炭酸カルシウム(CaCO)の反応温度が高いことから、900℃前後の高熱が必要となる。このため、焼成処理に使用される部材には、耐熱処理部材が使用されている。
耐熱処理部材には、例えば、特許文献3に記載されているように、通常、クロム酸化物被膜などとして、クロム元素が含まれている。そして、多孔質ガラスのようなガラス類を製造する焼成処理では、耐熱処理部材に含まれるクロム元素から、極めて強い毒性を有する6価クロム(Cr6+)が生成される場合がある。そこで、6価クロムの生成を抑制するべく、ガラス(被処理材)との接触部位に、例えば、硼化(ほうか)物系サーメット溶射皮膜が設けられた特許文献4や、酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物が使用された特許文献5が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-298644号公報
【文献】WO2014/132877
【文献】特開2002-222807号公報
【文献】特開2014-181347号公報
【文献】特開2015-9992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
6価クロム(Cr6+)は、酸素の存在、反応温度と反応時間、及びカルシウム化合物の存在、の3つの要因の影響で生成されやすくなると考えられている。
ガラス類を製造する焼成処理は、900℃前後の高熱が必要であり、その高熱を得るための燃料ガスの燃焼に空気(酸素)が必要であり、更に、被処理材には酸化カルシウム(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO)等のカルシウム化合物が含まれているため、6価クロム(Cr6+)が極めて生成されやすい処理である。
また、クロム元素は、耐熱処理部材に限らず、特許文献1のようなシュレッダダストを出発材料等とする被処理材にも、塗料やめっきに用いられた単体のクロム(Cr)や3価クロム(Cr3+)として含まれている場合がある。この場合、焼成処理時の被処理材中でクロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されてしまう。
即ち、ガラス類の焼成処理は、6価クロム(Cr6+)が極めて生成されやすいことから、処理に使用される部材の材質、設備の構成や使用方法等といったあらゆる面で、6価クロム(Cr6+)の生成抑制を要請されている。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有していた問題点を解決しようとするものであり、6価クロムの生成を抑制することができるガラス用熱処理炉、ガラス用熱処理炉の使用方法、廃ガラス用熱処理炉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、請求項1に記載の発明は、所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材を接触させて、多孔質ガラスを得るガラス用熱処理炉であって、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記被処理材を搬送する搬送装置と、
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記ガスは、還元性ガスであり、前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系、前記空気供給系と前記燃料ガス供給系が接続されたガス発生器、及び前記ガス発生器と接続された露点調節装置を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を備えている、ことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、及び前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスの燃焼ガスである前記還元性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉本体に取り付けられて前記炉内を冷却する冷却装置と、を備えていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記冷却装置は、前記炉内に配設された熱交換式のクーリングチューブを備えていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記冷却装置は、前記炉本体に接続されて前記炉内と炉外部との間で前記ガスを循環させる循環系と、前記循環系に接続されたクーラ装置と、を備えていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項3から5のうち何れか一項に記載の発明において、前記温度調整手段として、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を更に備えていることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のうち何れか一項に記載の発明において、前記搬送装置は、ベルトコンベアと、前記ベルトコンベアと前記被処理材との間に介装される介装部材と、を備えており、
前記ベルトコンベアには、クロム元素を含む耐熱材が使用されており、
前記介装部材には、クロム元素を含まない非鉄材料が使用されていることを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記介装部材は、シリカ系材料からなる耐熱シートであることを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記介装部材は、少なくとも1面が外部へ開放された形状とされて、内部に前記被処理材が収容される耐熱容器であることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記介装部材は、板状とされて、表面に前記被処理材が載せられる耐熱プレートであることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のうち何れか一項に記載の発明において、前記被処理材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加された廃ガラス材であることを要旨とする。
【0007】
請求項12に記載の発明は、所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材を接触させて、多孔質ガラスを得るガラス用熱処理炉の使用方法であって、
前記ガラス用熱処理炉は、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記被処理材を搬送する搬送装置と
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記搬送装置により、前記被処理材が前記炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされ、
温度調整手段により、前記炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされ、
前記ガスは、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させて得られる還元性ガスとされ、
前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態とされることを要旨とする。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系、前記空気供給系と前記燃料ガス供給系が接続されたガス発生器、及び前記ガス発生器と接続された露点調節装置を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を備えており、
前記ガス発生器により、前記空気供給系から供給される前記空気と、前記燃料ガス供給系から供給される前記燃料ガスが空燃比1未満で燃焼されて前記還元性ガスが発生され、
前記露点調節装置により、前記還元性ガスの露点が10℃~60℃とされ、
前記ヒータ装置により、前記炉内で前記還元性ガスが加熱されて、前記炉内温度が800℃~950℃とされる、ことを要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、及び前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスを燃焼させてその燃焼ガスである前記還元性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉本体に取り付けられて前記炉内を冷却する冷却装置と、を備えており、
前記バーナー装置における前記空気及び前記燃料ガスの燃焼が常に保持されることにより、前記還元性ガスが前記炉内に常時送り込まれ、
前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱により、又は、前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱と前記冷却装置による前記炉内の冷却により、前記炉内温度が800℃~950℃とされる、ことを要旨とする。
請求項15に記載の発明は、請求項12から14のうち何れか一項に記載の発明において、前記炉本体は、前記被処理材の搬送方向で、前記炉内が複数の領域に区分けされており、
前記複数の領域のうち、前記搬送方向で最上流側の領域はプレ加熱領域とされ、前記プレ加熱領域よりも前記搬送方向で下流側の領域は加熱領域とされており、
前記加熱領域における前記炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされ、
前記プレ加熱領域における前記炉内温度は、前記加熱領域の前記炉内温度よりも50℃~150℃低い温度とされることを要旨とする。
請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の発明において、前記炉本体は、前記被処理材の搬送方向で、前記炉内が複数の領域に区分けされており、前記温度調整手段として、前記炉内に配設された熱交換式のヒータ装置を更に備えており、
前記被処理材を前記ガスと接触させる熱処理は、2段階に分けて実行され、
前記2段階のうちの前段階は、前記温度調整手段として前記ヒータ装置が使用され、
前記2段階のうちの後段階は、前記温度調整手段として前記バーナー装置及び前記冷却装置が使用されることを要旨とする。
請求項17に記載の発明は、請求項12から16のうち何れか一項に記載の発明において、前記被処理材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加された廃ガラス材であることを要旨とする。
【0008】
請求項18に記載の発明は、所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材を接触させて、多孔質ガラスを得るガラス用熱処理炉の使用方法であって、
前記ガラス用熱処理炉は、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記被処理材を搬送する搬送装置と
前記炉本体と接続されて前記炉内に前記ガスを供給するガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記搬送装置により、前記被処理材が前記炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされ、
温度調整手段により、前記炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされ、
前記ガスは、空気と燃料ガスを空燃比1以上で燃焼させて得られる酸化性ガスとされ、
前記搬送装置は、クロム元素を含まない非鉄材料が使用されている板状の耐熱プレートと、セラミックス材料が使用されている搬送ロールと、を備えており、
前記耐熱プレートの表面に前記被処理材が載せられた状態で、前記搬送ロールにより前記耐熱プレートが前記炉内を搬送されることを要旨とする。
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、及び前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスを燃焼させてその燃焼ガスである前記酸化性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉内に配設された熱交換式のクーリングチューブとを備えており、
前記バーナー装置における前記空気及び前記燃料ガスの燃焼が常に保持されることにより、前記酸化性ガスが前記炉内に常時送り込まれ、
前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱により、又は、前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱と前記クーリングチューブによる前記炉内の冷却により、前記炉内温度が800℃~950℃とされることを要旨とする。
請求項20に記載の発明は、請求項18に記載の発明において、前記ガス供給系は、前記空気を供給する空気供給系、及び前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系を少なくとも備えており、
前記温度調整手段は、前記空気供給系及び前記燃料ガス供給系と接続され、前記空気及び前記燃料ガスを燃焼させてその燃焼ガスである前記酸化性ガスを前記炉内に送り込むように、前記炉本体に取り付けられた燃焼式のバーナー装置と、前記炉本体に接続されて前記炉内と炉外部との間で前記酸化性ガスを循環させる循環系と、前記循環系に接続されたクーラ装置と、を備えており、
前記バーナー装置における前記空気及び前記燃料ガスの燃焼が常に保持されることにより、前記酸化性ガスが前記炉内に常時送り込まれ、
前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱により、又は、前記燃料ガスの供給量を調節された前記バーナー装置による前記炉内の加熱と、前記循環系における前記クーラ装置による前記酸化性ガスの冷却により、前記炉内温度が800℃~950℃とされることを要旨とする。
請求項21に記載の発明は、請求項18から20のうち何れか一項に記載の発明において、前記被処理材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加された廃ガラス材であることを要旨とする。
【0009】
請求項22に記載の発明によれば、所定の炉内温度とされた炉本体の炉内で、前記炉内をみたすガスと、廃ガラス材を接触させて、多孔質ガラスを得る廃ガラス用熱処理炉であって、
前記炉本体と、
前記炉内に配設されて前記廃ガラス材を搬送する搬送装置と
前記炉本体と接続されて前記炉内を前記ガスでみたすガス供給系と、
前記炉本体に設けられて前記炉内温度を調整する温度調整手段と、を備えており、
前記廃ガラス材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加されたものであり、
前記ガスは、還元性ガスであり、
前記炉本体の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、6価クロムの生成を抑制することができるガラス用熱処理炉、ガラス用熱処理炉の使用方法、廃ガラス用熱処理炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のガラス用熱処理炉を示す概略説明図。
図2】第1実施例のガラス用熱処理炉を示す概略説明図。
図3】第2実施例のガラス用熱処理炉を示す概略説明図。
図4】第3実施例のガラス用熱処理炉を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
[1]ガラス用熱処理炉
本発明のガラス用熱処理炉10は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材20を接触させて、多孔質ガラス30を得るガラス用熱処理炉である(図1参照)。
ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、炉内に配設されて被処理材20を搬送する搬送装置12と、炉本体11と接続されて炉内をガスでみたすガス供給系13と、炉本体11に設けられて炉内温度を調整する温度調整手段14と、を備えている。
ガラス用熱処理炉10において、炉内をみたすガスは、還元性ガスであり、炉本体11の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされている。
【0014】
(1)炉本体
炉本体11は、炉本体11の内部(以下、略して「炉内」と記載する)に空間が設けられており、その炉内で被処理材20を焼成して多孔質ガラス30を得る焼成処理を実行するためのものである(図1参照)。
炉本体11は、炉内で被処理材20を焼成することができるのであれば、大きさ、炉内容積等の構成について、特に限定されない。
炉本体11には、焼成処理時の炉内温度に耐え得るように、壁材等に耐熱処理材を使用することができる。耐熱処理材は、クロム元素を含むことの可否について、特に問わない。
【0015】
なお、クロム元素は、例えば、単体のクロム、クロム合金、クロム酸化物、クロム化合物等といった様々な形で、耐熱処理材、耐熱材、非鉄材料、セラミックス材料等の組成や成分に含まれている。
本願では、クロム元素が、単体のクロム、クロム合金、クロム酸化物、クロム化合物等の何れの形で組成や成分に含まれているかについて、特に問わない。
即ち、本願では、単体のクロム、クロム合金、クロム酸化物、クロム化合物等の何れの形であるかを問わず、組成や成分の元素としてクロム元素(Cr)が存在するものを、クロム元素を含むものとする。
また、本願において、クロム元素を含まないものとは、単体のクロム、クロム合金、クロム酸化物、クロム化合物等の何れの形であるかを問わず、組成や成分の元素としてクロム元素(Cr)が存在しないものとする。
【0016】
炉本体11は、小ロットの被処理材20を処理するバッチ式、大量の被処理材20を処理する連続式の何れかについて、特に限定されない。炉本体11は、連続式とすることで、多孔質ガラス30の生産量の向上を図ることができる。
炉本体11は、被処理材20を炉内に装入するための入口111と、被処理材20を炉内から抽出する出口112と、を有している。また、炉本体11は、これら入口111と出口112を閉塞又は開放する扉(図示略)を備えることができる。
炉本体11は、炉内雰囲気を脱酸素状態に保つことができるのであれば、焼成処理時の入口111と出口112が閉塞されていてもよく、開放されていてもよい。通常、炉本体11の入口111と出口112は、炉内雰囲気が安定するまでは閉塞され、炉内雰囲気が安定した後は開放されたままとされる。特に、炉本体11が連続式のものである場合、入口111と出口112が開放されたままとされることで、被処理材20の単位時間当たりの処理数の向上を図ることができる。
【0017】
炉本体11は、被処理材20の搬送方向で、炉内が複数の領域に区分けされた構成とすることができる。この炉内の区分けは、炉本体11の炉内に隔壁113を設けることで実現することができる。
炉内が複数の領域に区分けされた場合、炉本体11は、複数の領域のうち、例えば搬送方向で最上流側の領域をプレ加熱領域115とし、このプレ加熱領域115よりも搬送方向で下流側の領域を加熱領域116とすることができる。更に、炉本体11は、加熱領域116のうち、下流側の領域を徐冷や冷却のための領域とすることができる。
即ち、炉本体11は、炉内が複数の領域に区分けされることにより、焼成処理における被処理物20の加熱又は冷却を、段階的に効率よく実施することができる。
【0018】
炉本体11の炉内を区分けする隔壁113は、複数の領域を連通する連通口114を備えている。被処理材20は、この連通口114を介して、領域同士の間を搬送される。
隔壁113の連通口114は、扉等による閉塞又は開放について、特に限定されないが、炉本体11の全体で炉内雰囲気を一定の状態に保つ観点から、開放されたままとすることが好ましい。
即ち、隔壁113の連通口114は、開放されたままとすることで、ガスが炉内全体に均一に行き渡るため、炉内雰囲気を一定の状態に保つことができる。
【0019】
(2)搬送装置
搬送装置12は、炉本体11の炉内に配設されて、被処理材20を搬送するものである。
搬送装置12は、被処理材20を搬送することが可能であれば、その構成等について、特に限定されない。
搬送装置12の具体例としては、ベルトコンベア、ローラコンベアが挙げられる。
【0020】
搬送装置12において、ベルトコンベア121は、駆動する搬送ベルトの表面に被処理材20を載せて搬送するものである(図2図3図4参照)。
搬送ベルトは、通常、耐熱性の観点から、耐熱材によるメッシュベルトが用いられている。この耐熱材は、クロム元素を含むことの可否について、特に問わない。
被処理材20は、搬送ベルトの表面に直接的に載せることができるが、搬送ベルトとの間に介装部材122を介装させることができる。
なお、被処理材20は、粉体であることから、特に搬送ベルトにメッシュベルトが用いられている場合、搬送ベルトからの被処理材20のこぼれ落ちを抑制するため、介装部材122を用いることが好ましい。
【0021】
即ち、搬送装置12は、ベルトコンベア121と、ベルトコンベア121と被処理材20との間に介装される介装部材122と、を備え、ベルトコンベア121には、クロム元素を含む耐熱材が使用された構成とすることができる。
この構成とした場合、被処理材20と直接的に接触する介装部材122には、クロム元素を含まない非鉄材料が使用されていることが好ましい。つまり、介装部材122の非鉄材料には、単体のクロム、クロム合金、クロム酸化物、クロム化合物等を含まないものが使用されていることが好ましい。介装部材122には、クロム元素を含まない非鉄材料が使用されることで、被処理材20との接触による6価クロムの発生を防止することができる。
非鉄材料が使用された介装部材122としては、シリカ系材料からなる耐熱シート、セラミックス材料からなる耐熱容器や耐熱プレートが例示される。
耐熱容器は、例えば皿状、箱状等の少なくとも1面が外部へ開放された形状とされており、その内部に被処理材20が収容されるように構成されたものである。
耐熱プレートは、板状とされており、その表面に被処理材20が載せられるように構成されたものである。
【0022】
搬送装置12において、ローラコンベアは、回転する複数の搬送ロール123に被処理材20を載せて搬送するものである(図1参照)。
搬送ロール123は、通常、耐熱性の観点から、耐熱材が使用されている。この耐熱材は、炉本体11の炉内が還元性ガスでみたされて、炉内雰囲気が脱酸素状態に保たれる場合、クロム元素を含むことの可否について、特に問わないが、クロム元素を含まないセラミックス材料が使用されることが好ましい。
【0023】
搬送装置12がローラコンベアの場合、被処理材20は、粉体であるから、搬送ロール123同士の間からこぼれ落ちてしまう。このため、ローラコンベアの場合には、搬送ロール123上に、介装部材122である板状の耐熱プレートを配し、この耐熱プレートに被処理材20を載せて搬送する。
介装部材122である耐熱プレートは、上述したように、クロム元素を含まない非鉄材料が使用され、板状とされて、その表面に被処理材20が載せられるように構成されている。
非鉄材料は、鉄及び鉄を主成分とした合金以外の金属材料である。クロム元素を含まない非鉄材料としては、具体的に、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の化合物であるムライト、ScSiCのような金属酸化物を含有する炭化ケイ素セラミックス等が例示される。
即ち、搬送装置12は、クロム元素を含まない非鉄材料が用いられた板状の耐熱プレート(介装部材122)と、セラミックス材料が使用された搬送ロール123と、を備える構成とすることができる。
【0024】
(3)ガス供給系
ガス供給系13は、炉本体11と接続されて、炉本体11の炉内をガスでみたすものである。
ガス供給系13は、炉本体11の炉内にガスを供給できるのであれば、その構成等について、特に限定されない。
ガス供給系13は、炉本体11の炉内をみたすガスを、炉本体11の外部(以下、略して「炉外」と記載する)で発生させる構成とすることができ、あるいは、炉本体11の炉内で発生させる構成とすることができる。
【0025】
ガス供給系13は、空気を供給する空気供給系131と、燃料ガスを供給する燃料ガス供給系132を、少なくとも備えている(図2図3図4参照)。
ガスを炉外で発生させる構成のガス供給系13は、空気供給系131、燃料ガス供給系132に加え、空気供給系131と燃料ガス供給系132が接続されたガス発生器133、及びガス発生器133と接続された露点調節装置134を少なくとも備える構成とすることができる(図2参照)。
ガス発生器133は、空気供給系131から供給される空気と、燃料ガス供給系132から供給される燃料ガスとを反応させて、炉本体11の炉内に供給されるガスを発生させるものである。
露点調節装置134は、ガス発生器133で発生させたガスについて、露点温度(結露、つまり凝結が起こる温度)を調節することにより、ガスの湿度(乾燥度)を調整するものである。
【0026】
なお、露点調節装置134と、炉本体11との間には、ガス供給路135が接続されている(図2参照)。露点調節装置134で露点温度を調節されたガスは、このガス供給路135を介して、炉本体11の炉内に供給される。
また、空気供給系131、燃料ガス供給系132、ガス供給路135には、必要に応じて、供給量を調節するバルブ、空気等の気体を取り込むダクトやファン、気体を一時的に貯留するタンクなどを接続することができる。
【0027】
即ち、ガスを炉外で発生させる構成のガス供給系13は、ガス発生器133で発生させ、露点調節装置134によって露点温度が調節されたガスを、炉本体11の炉内に供給するように構成されたものである。
この構成のガス供給系13は、炉外で発生させたガスを、適宜、適量だけ炉本体11の炉内に供給することができ、炉内のガス量を一定に保つことができる。
【0028】
ガスを炉内で発生させる構成のガス供給系13は、空気供給系131、燃料ガス供給系132に加え、空気供給系131と燃料ガス供給系132が接続された燃焼式のバーナー装置142を少なくとも備える構成とすることができる(図3参照)。
バーナー装置142は、空気供給系131から供給される空気、及び、燃料ガス供給系132から供給される燃料ガスを燃焼させるものである。なお、このバーナー装置142は、温度調整手段14を構成するものでもある。
また、空気供給系131、燃料ガス供給系132には、必要に応じて、供給量を調節するバルブ、空気等の気体を取り込むダクトやファン、気体を一時的に貯留するタンクなどを接続することができる。
【0029】
即ち、ガスを炉内で発生させる構成のガス供給系13は、バーナー装置142で空気及び燃料ガスを燃焼させ、燃焼時に発生した燃焼ガスを炉本体11の炉内に送り込むことで、炉内をガス(燃焼ガス)でみたすものである。
この構成のガス供給系13は、ガス供給系13に係る構成の簡易化や、設備費、保守費に係るコストの低減化を図ることができる。
【0030】
ガス供給系13において、炉本体11の炉内に供給され、その炉内をみたすガスは、一酸化炭素(CO)、水素ガス(H)を含んでおり、フリーの酸素(O)と反応することで、その酸素(O)を奪う性質を有している。
本願では、酸素(O)を化合、付加、結合などさせる性質を有しているガスを「酸化性ガス」と称する。そして、この酸化性ガスに対するガスとして、酸素(O)と反応し、その酸素(O)を奪う性質を有するガスを「還元性ガス」と称する。
炉本体11の炉内は、還元性ガスでみたされることにより、この還元性ガスに酸素(O)が奪われ、脱酸素状態とされている。
【0031】
還元性ガスは、燃料ガスを空気と、空燃比1未満で燃焼させることで得ることができる。
燃料ガスは、還元性ガスを発生させることができるのであれば、特に限定されない。通常、燃料ガスには、プロパンガス等の炭化水素系ガスが使用される。
即ち、本願の還元性ガスは、一酸化炭素(CO)、水素ガス(H)を含み、酸素(O)と反応することで、その酸素(O)を奪う性質を有するガスであり、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させたガスである。
【0032】
なお、ガス供給系13において、炉本体11の炉内に供給され、その炉内をみたすガスは、酸化性ガスとすることもできる。
酸化性ガスは、燃料ガス(炭化水素系ガス)を空気と、空燃比1以上で燃焼させることで得ることができる。
酸化性ガスを用いる場合、搬送装置12は、6価クロムの生成を抑制するため、クロム元素を含まない非鉄材料が用いられた板状の耐熱プレート(介挿部材122)と、クロム元素を含まないセラミックス材料が使用された搬送ロール123と、を備える構成とすることが好ましい。
【0033】
(4)温度調整手段
温度調整手段14は、炉本体11に設けられて炉内温度を調整するものである。
温度調整手段14は、焼成処理に必要な高温を得ることができるとともに、炉内温度を調整、特に炉内温度が過昇時に温度を下げることができるのであれば、その構成等について、特に限定されない。
温度調整手段14としては、例えば、熱交換式のヒータ装置141、あるいは、燃焼式のバーナー装置142及び冷却装置143が挙げられる。
【0034】
ヒータ装置141は、熱交換により、炉本体11の炉内をみたすガスを加熱して、炉内温度を調整するものである(図2参照)。
ヒータ装置141としては、具体的に、ラジアントチューブバーナ、電熱器等を例示することができる。
【0035】
ヒータ装置141は、制御器を使用したON/OFF操作によって、炉内温度を調整することができる。
即ち、ヒータ装置141は、ON操作でガスを加熱して炉内温度を上昇させることができるとともに、炉内温度が過昇時にはOFF操作でガスの加熱を停止することで、特に冷却装置などを使用せずとも、炉内温度を下げることができる。
また、熱交換式のヒータ装置141は、粉体である被処理材20を、飛散させることなく加熱することができる。
【0036】
バーナー装置142は、供給される燃料ガス及び空気を燃焼させ、高温の燃焼ガスを炉本体11の炉内に噴き出すものである(図3図4参照)。
即ち、バーナー装置142は、高温の燃焼ガスを炉本体11の炉内に噴き出すことで、炉内温度を上昇させるものである。
また、バーナー装置142は、炉内に噴き出した燃焼ガスで炉内をみたすことができることから、ガス供給系13を構成するものとすることができる。
【0037】
バーナー装置142は、炉内温度が過昇時に、燃料ガス及び空気の燃焼を停止することで、炉内温度を下げることができるが、ガス供給系13を構成する場合、燃焼を停止するとガスの供給も停止されてしまう。
このため、バーナー装置142を使用する場合には、炉内温度が過昇時に、炉内温度を下げるための冷却装置143を併用することが好ましい。
冷却装置143としては、具体的に、熱交換式のクーリングチューブ144(図3参照)、循環系145及びクーラ装置146(図4参照)を例示することができる。
【0038】
クーリングチューブ144は、炉本体11の炉内に配設され、その炉内において、熱交換により炉内をみたすガスを冷却して、炉内温度を下げるものである(図3参照)。
即ち、クーリングチューブ144は、ガスを炉内で冷却する構成である。
このクーリングチューブ144は、炉の小型化、構成の簡易化を図ることができ、また粉体である被処理材20を飛散させることなく冷却することができる。
【0039】
循環系145は、炉本体11の炉外に接続されて、炉内と炉外部との間でガスを循環させるものである。クーラ装置146は、循環系145に接続されて、循環系145を循環するガスを冷却するものである(図4参照)。
即ち、循環系145及びクーラ装置146は、ガスを炉内から炉外へ一時的に取り出し、その取り出したガスを炉外で冷却する構成である。
この循環系145及びクーラ装置146は、一度に大量のガスを冷却することができ、冷却能力の向上を図ることができる。
【0040】
また、バーナー装置142は、燃焼ガスを炉内に噴き出すものであるため、焼成処理における加熱の初期段階で使用すると、粉体である被処理材20を飛散させるおそれがある。
このため、バーナー装置142を用いる場合、温度調整手段14は、炉内に配設された熱交換式のヒータ装置141を更に備えていることが好ましい。
即ち、焼成処理における加熱の初期段階では、被処理材20をヒータ装置141によって加熱して、飛散を抑制できる程度に被処理材20の表面を溶融させた後、バーナー装置142によって加熱して被処理材20の全体を溶融させる構成とすることが好ましい。
【0041】
温度調整手段14は、ガス供給系13の構成に応じた構成とすることができる。
即ち、温度調整手段14は、ガスを炉外で発生させる構成のガス供給系13である場合と(図2参照)、ガスを炉内で発生させる構成のガス供給系13である場合と(図3図4参照)、それぞれに応じた構成とすることができる。
【0042】
ガス供給系13がガスを炉外で発生させる構成である場合、温度調整手段14は、炉内に配設された熱交換式のヒータ装置141を備えている構成とすることが好ましい(図2参照)。
つまり、ガス供給系13がガスを炉外で発生させる構成である場合、炉本体11の炉外から炉内に供給されたガスは、焼成処理に要する炉内温度を満たしていない場合があり、熱交換式のヒータ装置141を炉内に配設し、炉内温度を焼成処理に足る温度とする。
【0043】
ガス供給系13がガスを炉内で発生させる構成である場合、温度調整手段14は、炉本体11に取り付けられたバーナー装置142と冷却装置143を備えている構成とすることが好ましい(図3図4参照)。
つまり、ガス供給系13がガスを炉内で発生させる構成である場合、バーナー装置142を使用し、燃焼ガスを炉内に噴き出させることで、炉本体11の炉内にガスを供給することができる。
また、炉内温度が過昇時に、バーナー装置142によるガスの供給を停止させることなく、炉内温度を下げるため、冷却装置143が使用される。
【0044】
(5)被処理材及び多孔質ガラス
被処理材20は、これを高温で焼成処理することにより、多孔質ガラス30を得るためのものである。
被処理材20は、通常、粉体の状態で使用される。この粉体について、粒径や粒子の形状は、特に限定されない。
多孔質ガラス30は、被処理材20を焼成処理して得られるものであり、微細な多数の孔を有する多孔質のものである。この多孔質ガラス30は、多孔質に由来する透水性や濾過性等を生かし、水質浄化材、調湿材、揮発性有機化合物の吸着材等といった様々な用途に利用することができる。
【0045】
被処理材20は、酸化カルシウム(CaO)及び炭酸カルシウム(CaCO)を少なくとも含むものであれば、その組成について、特に限定されない。
炭酸カルシウム(CaCO)は、主に発泡剤として機能するものである。炭酸カルシウム(CaCO)は、熱分解して、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)を生成する。この二酸化炭素(CO)が発泡ガスとして用いられることで、多孔質ガラス30は、微細な多孔質のものとされる。
酸化カルシウム(CaO)は、多孔質ガラス30の耐水性や耐久性を向上させるものである。この酸化カルシウム(CaO)の由来は、特に限定されず、炭酸カルシウム(CaCO)の熱分解によって生成されたものであってもよく、石灰やカルシア等として被処理材20に予め添加されたものであってもよい。
【0046】
なお、被処理材20は、多孔質ガラス30の主たる構造(網目構造)を作るため、二酸化ケイ素(SiO)を主成分として含んでいる。二酸化ケイ素(SiO)の融点が高いことから、被処理材20は、その融点を下げて焼成処理を行い易くするため、炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)等を含んでいてもよい。
【0047】
焼成処理時における被処理材20中の炭酸カルシウム(CaCO)の反応式は、以下(1)~(3)である。
(1)CaCO → CaO + CO
(2)CaCO + HO → Ca(OH)+ CO
(3)Ca(OH) → CaO + H
なお、上記式(1)~(3)は、平衡反応であり、反応条件(炉内雰囲気)によっては、逆反応も起こり得る。
【0048】
上記式(1)に示されるように、炭酸カルシウム(CaCO)は、熱分解によって酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)を生成する。
また、上記式(2)に示されるように、炭酸カルシウム(CaCO)は、水分(HO)と反応して水酸化カルシウム(Ca(OH))を生成する。
上記式(3)に示されるように、水酸化カルシウム(Ca(OH))は、熱分解されることにより、酸化カルシウム(CaO)と水分(HO)を生成する。
即ち、水分(HO)が多い炉内雰囲気中であれば、炭酸カルシウム(CaCO)の反応が進み、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)が生成されやすくなる。
【0049】
被処理材20の焼成処理において、クロム元素の一例として3価クロム(Cr3+)を挙げると、酸化カルシウム(CaO)は、酸素の存在下で、例えば、以下(4)に示す反応を起こし、3価クロム(Cr3+)を6価クロム(Cr6+)へ転化させる。
(4)2Cr + 4CaO + 3O → 4CaCrO
なお、上記式(4)において、Crが3価クロム(Cr3+)の酸化物であり、CaCrOが6価クロム(Cr6+)の酸化物である。
また、上記式(4)は、反応温度(炉内温度)が高くなるにつれ、あるいは反応時間(炉内における被処理材の保持時間)が長くなるにつれて、進行しやすくなる。
【0050】
即ち、クロム元素からは、以下〈1〉~〈3〉の3つの要因に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成される。
〈1〉酸素(O)の存在。
〈2〉カルシウム化合物の存在。
〈3〉反応温度(炉内温度)と反応時間(炉内における被処理材20の保持時間)。
【0051】
ガラス用熱処理炉10は、炉本体11の炉内をみたすガスが還元性ガスとされることにより、炉本体11の炉内雰囲気が脱酸素状態にされている。
即ち、還元性ガスは、酸素(O)を奪うことで、炉本体11の炉内を脱酸素状態としており、この脱酸素状態であれば、上記式(4)は進行しない。
このため、ガラス用熱処理炉10は、被処理材20中の酸化カルシウム(CaO)と耐熱処理材中のクロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))を接触させても、6価クロム(Cr6+)が生成されず、6価クロムの生成を防止することができる。
【0052】
また、還元性ガス中の一酸化炭素(CO)や水素ガス(H)が酸素(O)と反応して生成されるのは、二酸化炭素(CO)や、水(HO)である。
これら二酸化炭素(CO)や、水(HO)は、炭酸カルシウム(CaCO)に係る上記式(1)~(3)を進行させる。
このため、ガラス用熱処理炉10は、6価クロム(Cr6+)の生成を防止しながら、被処理材20を好適に焼成して、多孔質ガラス30を製造することができる。
【0053】
[2]ガラス用熱処理炉の使用方法(1)
本発明のガラス用熱処理炉10の使用方法は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材20を接触させて、多孔質ガラス30を得るガラス用熱処理炉10の使用方法である。
ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、炉内に配設されて被処理材20を搬送する搬送装置12と、炉本体11と接続されて炉内をガスでみたすガス供給系13と、炉本体11に設けられて炉内温度を調整する温度調整手段14と、を備えている。
ガラス用熱処理炉10の使用方法において、搬送装置12により、被処理材20が炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされ、温度調整手段14により、炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされる。
炉本体11の炉内をみたすガスは、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させて得られる還元性ガスとされ、炉本体11の炉内雰囲気は、脱酸素状態とされる。
【0054】
この使用方法に供されるガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
ガラス用熱処理炉10の構成、つまり炉本体11、搬送装置12、ガス供給系13、及び、温度調整手段14については、上述の「[1]ガラス用熱処理炉」の説明と共用することができる。
従って、以下文中では、特にことわりが無い限り、例えばガラス用熱処理炉10の構成等、繰り返しとなる説明を省略する。
【0055】
(1)保持時間
保持時間は、搬送装置12により、被処理材20が炉本体11の炉内に保持される時間である。
また、被処理材20は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、その炉内をみたすガスと接触され、溶融されながら、上述した炭酸カルシウム(CaCO)等の化学反応を進行させる。
このため、保持時間は、被処理材20の加熱時間、あるいは反応時間であるともいえる。
【0056】
多孔質ガラス30は、高温で溶融する被処理材20中で、炭酸カルシウム(CaCO)から発生する二酸化炭素(CO)が発泡ガスとなり、気泡を形成することにより、その気泡が微細な多数の孔となって、多孔質となる。
保持時間、つまり反応時間が過剰に短い場合には、十分な量の二酸化炭素(CO)が発生せず、発泡にばらつきが生じ、多孔質ガラス30の孔が不均一になる場合がある。
保持時間、つまり加熱時間が過剰に長い場合、溶融した被処理材20が過度に軟質となるとともに、二酸化炭素(CO)が過度に発生する発泡過多の状態となることで、発泡ガスである二酸化炭素(CO)が被処理材20中に留まらず抜け出て、多孔質ガラス30を収縮させてしまう場合がある。
このため、保持時間は、発泡にばらつきが生じない程度に短く、発泡過多の状態にならない程度に長くなる時間とされる。
【0057】
また、クロム元素からは、上述した〈1〉~〈3〉の3つの要因に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されるが、炉内における被処理材20の保持時間は、3つの要因のうち、〈3〉の要因に関わる。
即ち、クロム元素からは、反応時間に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されやすくなる。この反応時間は、焼成処理に要する時間であり、つまりは、炉内における被処理材20の保持時間である。
このため、保持時間は、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されない程度に短く、かつ被処理材20を十分に焼成することができる程度に長くなる時間とされる。
【0058】
炉内における被処理材20の保持時間は、搬送装置12による搬送時間(搬送速度)によって設定することができる。より詳細に、保持時間は、被処理材20が炉本体11の入口111を通過してから、同じ被処理材20が炉本体11の出口112を通過する迄に要する時間とする。
具体的に、保持時間は、5分~30分とされる。また、保持時間は、好ましくは7分~28分、より好ましくは9分~26分である。
【0059】
(2)炉内温度
炉内温度は、炉本体11の炉内の温度である。
また、炉本体11の炉内はガスでみたされており、この炉内温度は、炉内をみたすガスの温度、つまり雰囲気温度であるともいえる。
更に、被処理材20は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、その炉内をみたすガスと接触されて、加熱されることから、炉内温度は、被処理材20の加熱温度であるともいえる。
【0060】
多孔質ガラス30は、所定温度で加熱された被処理材20中において、炭酸カルシウム(CaCO)が上記式(1)~(3)の反応を進行させ、発生した二酸化炭素(CO)が発泡ガスとして気泡を形成することにより、その気泡が微細な多数の孔となって、多孔質となる。
炉内温度、つまり加熱温度が過剰に低い場合には、十分な量の二酸化炭素(CO)が発生せず、発泡不良となって、多孔質にならない場合がある。
保持時間、つまり加熱温度が過剰に高い場合、溶融した被処理材20が過度に軟質となるとともに、発泡過多の状態となることで、発泡ガスである二酸化炭素(CO)が被処理材20中に留まらず抜け出て、多孔質ガラス30を収縮させてしまう場合がある。
このため、炉内温度は、発泡不良が生じない程度に低く、発泡過多の状態にならない程度に高い温度とされる。
【0061】
また、クロム元素からは、上述した〈1〉~〈3〉の3つの要因に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されるが、炉内温度は、3つの要因のうち、〈3〉の要因に関わる。
即ち、クロム元素からは、反応温度に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されやすくなる。この反応温度は、焼成処理時の雰囲気温度、つまり炉内温度である。
このため、炉内温度は、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されない程度に低く、被処理材20を十分に焼成することができる程度に高い温度とされる。
【0062】
炉内温度は、例えば、炉本体11の炉内に取り付けられたセンサ、熱電対等によって測定することができ、その測定結果に基づき、上述の温度調整手段14によって調整することができる。より詳細に、炉内温度は、制御器等に入力された温度調整手段14の設定温度の下限値と上限値に応じ、下限値と上限値の間に保たれるように調整される。
具体的に、炉内温度は、800℃~950℃とされる。また、炉内温度は、好ましくは820℃~930℃である。
【0063】
温度調整手段14が熱交換式のヒータ装置141の場合、制御器等を使用したヒータ装置141のON/OFF操作により、炉内温度を調整することができる。
即ち、ヒータ装置141は、炉内温度が下限値(800℃)を下回る過降時、又は炉内温度が下限値(800℃)以上で上限値(950℃)以下の適温時にはON操作されて、炉内を加熱する。
また、ヒータ装置141は、炉内温度が上限値(950℃)を上回る過昇時に、OFF操作されて、炉内の加熱を停止する。
【0064】
温度調整手段14が燃焼式のバーナー装置142及び冷却装置143の場合、主として制御器等を使用したバーナー装置142の燃焼範囲の調節により、炉内温度を調整することができる。このバーナー装置142の燃焼範囲は、燃料ガス供給系132によるバーナー装置142への燃料ガスの供給量によって調節される。
燃料ガスの供給量は、バーナー装置142への燃料ガスの供給を停止した場合を0%、バーナー装置142へ最大量の燃料ガスを供給する場合を100%として、調節される。
但し、バーナー装置142は、燃料ガスの燃焼が常に保持されることにより、炉本体11の炉内にガス(還元性ガス)を常時送り込むためのものでもある。つまり、燃料ガスの供給量の下限は、燃料ガスの燃焼を保持できる程度の値とされ、燃料ガスの供給量の上限は、通常、100%とされる。
燃料ガスの供給量は、具体的に、20%~100%が好ましく、25%~100%がより好ましく、30%~100%がさらに好ましい。
【0065】
即ち、バーナー装置142は、炉内温度が下限値(800℃)を下回る過降時には、燃料ガスの供給量が100%、炉内温度が下限値(800℃)以上で上限値(950℃)以下の適温時には、燃料ガスの供給量が適値に調節されて、その燃料ガスを燃焼させて、炉内を加熱する。
炉内温度が上限値を上回る過昇時において、バーナー装置142は、燃料ガスの供給量が下限値(20%)に調節されることにより、炉内へのガス(還元性ガス)の供給を保つ。但し、燃料ガスの供給が続く限り、バーナー装置142による炉内の加熱は続くため、過昇時には、冷却装置143を使用して炉内を冷却し、炉内温度を上限値(950℃)以下にする。
【0066】
(3)空燃比
空燃比は、燃料ガスを空気で燃焼させる際の、空気の質量(A)と、燃料ガスの質量(F)の比(A/F)の値である。
クロム元素からは、上述した〈1〉~〈3〉の3つの要因に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されるが、この空燃比は、3つの要因のうち、〈1〉の要因に関わる。
即ち、クロム元素からは、炉内における酸素(O)の存在に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されやすくなる。
空燃比は、燃料ガスを空気で燃焼させて生成されるガスを還元性ガスとして、炉内から酸素(O)の存在を無くす、つまり炉内を脱酸素状態とするために、調整される。
【0067】
具体的に、空燃比は、制御器等に入力された設定値に応じて、燃料ガスの供給量と、空気の供給量とを調節することによって調整することができる。
燃料ガスには、通常、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス等の炭化水素系ガスが使用される。
【0068】
燃料ガスは、空気とともに、所定の空燃比で燃焼させることにより、還元性ガスを発生させる。この還元性ガスは、一酸化炭素(CO)、水素ガス(H)を含んでいる。そして、還元性ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や水素ガス(H)は、炉内に存在する又は炉外から入り込んだ酸素(O)と化学反応し、二酸化炭素(CO)や水(HO)を生成することで、炉内を脱酸素状態とする。
燃料ガスを燃焼させて還元性ガスを発生させる場合の具体的な空燃比は、1未満である。また、空燃比の下限は、異常燃焼を防止する観点で、通常、0.6以上である。空燃比は、好ましくは0.7~0.99、より好ましくは、0.8~0.97、更に好ましくは0.85~0.95である。
【0069】
(4)露点
温度調整手段14が熱交換式のヒータ装置141の場合、露点調節装置134により、ガスの露点調節を行うことができる。
この場合、露点調節を行うことで、上述した炭酸カルシウム(CaCO)の(1)~(3)の反応式において、水分(HO)や二酸化炭素(CO)の濃度を一定に保持することができ、焼成処理中における被処理材20の発泡状態を安定化させることができる。
具体的に、露点は、10℃~60℃が好ましく、12℃~58℃がより好ましく、15℃~55℃が更に好ましい。
なお、温度調整手段14が燃焼式のバーナー装置142の場合、ガスの露点は、約60℃に保たれている。
【0070】
(5)加熱方法
上述したように、炉本体11は、被処理材20の搬送方向で、炉内が複数の領域に区分けされている場合、複数の領域のうち、搬送方向で最上流側の領域はプレ加熱領域115とされ、プレ加熱領域115よりも搬送方向で下流側の領域は加熱領域116とされてもよい(図1参照)。
このプレ加熱領域115は、焼成処理の初期段階において、被処理材20を予熱するための領域である。
【0071】
即ち、焼成処理時の被処理材20は、加熱されやすい表面部分から発泡が進むが、表面部分から遅れて内奥部分で発泡が進む際、発泡が進んだ表面部分がいち早く固まってしまうと、発泡ガスである二酸化炭素(CO)の抜けが悪くなり、発泡状態が不均一になってしまう。
つまり、焼成処理時における被処理材20は、その全体における熱分布が不均一となることで、発泡状態が不均一となる。そこで、プレ加熱領域115で被処理材20を予熱し、被処理材20の全体に熱を行き渡らせ、被処理材20の全体における熱分布を略均一化することで、発泡状態を均一にすることができる。
【0072】
プレ加熱領域115における炉内温度は、発泡を進行させることなく被処理材20を予熱する観点から、加熱領域116の炉内温度よりも低い温度とされることが好ましい。
具体的に、プレ加熱領域115における炉内温度は、加熱領域116の炉内温度よりも、50℃~150℃低い温度とされることが好ましく、50℃~120℃低い温度とされることがより好ましく、50℃~100℃低い温度とされることが更に好ましい。
また、プレ加熱領域115における炉内温度は、具体的に650℃~800℃が好ましく、680℃~800℃が好ましく、700℃~800℃が更に好ましい。
【0073】
上述したように、温度調整手段14が燃焼式のバーナー装置142及び冷却装置143に加え、熱交換式のヒータ装置141を更に備えている構成の場合、被処理材20を炉内でガスと接触させる熱処理(焼成処理)は、2段階に分けて実行することができる(図1参照)。
即ち、バーナー装置142とヒータ装置141の両方を備えているガラス用熱処理炉10は、被処理材20の加熱方法として、2段階に分けた加熱方法を採用することができる。
【0074】
2段階に分けた加熱方法を採用する場合、2段階のうちの前段階116Aは、温度調整手段14としてヒータ装置141が使用され、2段階のうちの後段階116Bは、温度調整手段14としてバーナー装置142及び冷却装置143が使用されることが好ましい。
即ち、粉体の被処理材20を加熱する場合、燃焼式のバーナー装置142は、燃焼ガスを炉内に噴き出すものであるため、その燃焼ガスを噴き出す勢いで被処理材20を飛散させてしまう可能性がある。
そのため、2段階のうちの前段階116Aは、ヒータ装置141を使用し、被処理材20を溶融させる等して飛散を抑制する。
また、バーナー装置142は、ヒータ装置141に比べると、設備費、保守費等が安価であるから、被処理材20の飛散が抑制された2段階のうちの後段階116Bは、バーナー装置142を使用する。
【0075】
2段階に分けた加熱方法を採用する場合、上述のように、炉本体11の炉内を複数の領域に区分けし、複数の領域のうち上流側の領域で前段階116Aの加熱を行い、複数の領域のうち下流側の領域で後段階116Bの加熱を行うことができる。
例えば、上述のプレ加熱領域115を前段階116Aの加熱とし、上述の加熱領域116を後段階116Bの加熱とすることができる。
あるいは、上述の加熱領域116を更に複数の領域に区分けし、上流側の加熱領域を前段階116Aの加熱とし、下流側の加熱領域を後段階116Bの加熱とすることができる。
上述した炉内を複数の領域に区分けし、かつ2段階に分けて加熱を行う場合、炉本体11は、連続式のものが有用である。
【0076】
また、2段階に分けた加熱方法を採用する場合、炉本体11の炉内を複数の領域に区分けしないで、あるいは区分けされた複数の領域のうちの1つの領域内で、2段階に分けて加熱を行うこともできる。
上述した1つの炉内又は1つの領域内で2段階に分けて加熱を行う場合、炉本体11は、バッチ式のものが有用である。
【0077】
[3]ガラス用熱処理炉の使用方法(2)
本発明のガラス用熱処理炉10の使用方法は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、炉内をみたすガスと、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを少なくとも含む被処理材20を接触させて、多孔質ガラス30を得るガラス用熱処理炉10の使用方法である。
ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、炉内に配設されて被処理材20を搬送する搬送装置12と、炉本体11と接続されて炉内にガスを供給するガス供給系13と、炉本体11に設けられて炉内温度を調整する温度調整手段14と、を備えている。
ガラス用熱処理炉10の使用方法において、搬送装置12により、被処理材20が炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされ、温度調整手段14により、炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされる。
炉本体11の炉内をみたすガスは、空気と燃料ガスを空燃比1以上で燃焼させて得られる酸化性ガスとされる。
搬送装置12は、クロム元素を含まない非鉄材料が用いられた板状の耐熱プレート(介装部材122)と、セラミックス材料が使用された搬送ロール123と、を備えており、耐熱プレート(介装部材122)の表面に被処理材20が載せられた状態で、搬送ロール123により耐熱プレート(介装部材122)が炉内を搬送される。
【0078】
この使用方法に供されるガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
ガラス用熱処理炉10の構成、つまり炉本体11、搬送装置12、ガス供給系13、及び、温度調整手段14については、上述の「[1]ガラス用熱処理炉」の説明と共用することができる。
このガラス用熱処理炉10の使用方法(2)で、保持時間、炉内温度については、上述の「[2]ガラス用熱処理炉の使用方法(1)」の「(1)保持時間」、「(2)炉内温度」の説明と共用することができる。また、このガラス用熱処理炉10の使用方法(2)には、上述の「[2]ガラス用熱処理炉の使用方法(1)」の「(4)露点」、「(5)加熱方法」で説明した内容を適用することができる。
従って、以下文中では、特にことわりが無い限り、例えばガラス用熱処理炉10の構成等、繰り返しとなる説明を省略する。
【0079】
(1)空燃比
空燃比は、燃料ガスを空気で燃焼させる際の、空気の質量(A)と、燃料ガスの質量(F)の比(A/F)の値である。
具体的に、空燃比は、制御器等に入力された設定値に応じて、燃料ガスの供給量と、空気の供給量とを調節することによって調整することができる。
燃料ガスには、通常、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス等の炭化水素系ガスが使用される。
【0080】
燃料ガスは、空気とともに、所定の空燃比で燃焼させることにより、酸化性ガスを発生させる。この酸化性ガスは、酸素(O)、水蒸気(HO)、二酸化炭素(CO)を含んでいる。
酸化性ガスは、上述した炭酸カルシウム(CaCO)の(1)~(3)の反応式において、水蒸気(HO)、二酸化炭素(CO)の濃度を一定に保持することができ、焼成処理中における被処理材20の発泡状態を安定化させることができる。
燃料ガスを燃焼させて酸化性ガスを発生させる場合の具体的な空燃比は、1以上である。また、空燃比の上限は、異常燃焼を防止する観点で、通常10以下である。空燃比は、好ましくは1.05~9.5、より好ましくは、1.1~8.5である。
【0081】
(2)搬送方法
クロム元素からは、上述した〈1〉~〈3〉の3つの要因に影響されて、6価クロム(Cr6+)が生成されるが、炉本体11の炉内をみたすガスに酸化性ガスが使用される場合、3つの要因のうち、〈1〉の要因を避けることができない。
このため、搬送装置12は、クロム元素を含まない非鉄材料が用いられた板状の耐熱プレート(介装部材122)と、クロム元素を含まないセラミックス材料が使用された搬送ロール123と、を備えたものとする(図1参照)。
そして、搬送方法には、耐熱プレート(介装部材122)の表面に被処理材20が載せられた状態で、搬送ロール123により耐熱プレート(介装部材122)が炉内を搬送される方法を採用する。
この搬送方法は、3つの要因のうち、〈2〉の要因に関わる。
【0082】
即ち、被処理材20中に含まれる酸化カルシウム(CaO)等のカルシウム化合物の存在は、クロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))に影響を及ぼし、6価クロム(Cr6+)を生成させる。
上述の搬送方法について、被処理材20が載せられる耐熱プレート(介装部材122)は、クロム元素を含まない非鉄材料が用いられている。また、耐熱プレート(介装部材122)を搬送する搬送ロール123は、クロム元素を含まないセラミックス材料が使用されている。
つまり、上述の搬送方法では、被処理材20が接触する耐熱プレート(介装部材122)、被処理材20が接触する可能性のある搬送ロール123について、クロム元素を含まない材料が使用されている。
このため、酸素(O)の存在する雰囲気で、カルシウム化合物を含む被処理材20を焼成処理しても、この被処理材20とクロム元素との接触を防止することで、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されることを抑制することができる。
なお、被処理材20中にクロム元素が含まれる場合について、保持時間を5分~30分とし、炉内温度を800℃~950℃とすることで、上述したように、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されることを抑制することができる。
【0083】
[4]廃ガラス用熱処理炉
本発明の廃ガラス用熱処理炉は、所定の炉内温度とされた炉本体11の炉内で、炉内をみたすガスと、廃ガラス材を接触させて、多孔質ガラス30を得る廃ガラス用熱処理炉である。
廃ガラス用熱処理炉は、炉本体11と、炉内に配設されて廃ガラス材を搬送する搬送装置12と、炉本体11と接続されて炉内をガスでみたすガス供給系13と、炉本体11に設けられて炉内温度を調整する温度調整手段14と、を備えている。
廃ガラス材は、酸化カルシウムを含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウムを含む発泡剤が添加されたものである。
廃ガラス用熱処理炉において、炉内をみたすガスは、還元性ガスであり、炉本体11の炉内雰囲気は、脱酸素状態にされている。
【0084】
廃ガラス用熱処理炉は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
これら炉本体11、搬送装置12、ガス供給系13、及び、温度調整手段14については、上述の「[1]ガラス用熱処理炉」の説明と共用することができる。
また、上述の「[2]ガラス用熱処理炉の使用方法(1)」で説明した内容は、廃ガラス用熱処理炉にも適用することができる。
従って、以下文中では、特にことわりが無い限り、繰り返しとなる説明を省略する。
【0085】
上述のガラス用熱処理炉10において、被処理材20には、酸化カルシウム(CaO)を含む廃ガラスの粉体に、炭酸カルシウム(CaCO)を含む発泡剤が添加された廃ガラス材を用いることができる。
即ち、上述のガラス用熱処理炉10は、被処理材20に廃ガラス材を用いた場合、廃ガラス用熱処理炉として使用することができる。
【0086】
廃ガラスは、通常、破砕等して粉体とし、熱処理で溶融させ、再利用が図られている。この廃ガラスについて、例えば、緑色に着色されたガラスの組成物は、着色剤としてクロム元素、具体的には3価クロム(Cr3+)の酸化物を含んでいる。
また、廃ガラスを破砕等する作業機械には、防錆や耐食性を目的として、多くの場合、クロム元素を含むメッキ被膜が設けられている。このため、多くの廃ガラスは、作業機械から剥離したメッキ被膜が混入することで、クロム元素を含んでいる。
従って、廃ガラスを含む被処理材20の熱処理については、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されやすい。
【0087】
廃ガラス用熱処理炉とされたガラス用熱処理炉10は、炉本体11の炉内をみたすガスが還元性ガスとされることにより、炉本体11の炉内雰囲気が脱酸素状態にされている。
このため、ガラス用熱処理炉10は、被処理材20中に酸化カルシウム(CaO)とクロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))が含まれていても、脱酸素状態であり、反応に使われる酸素が存在しないため、クロム元素から6価クロム(Cr6+)が生成されず(上記式(4)参照)、6価クロムの生成を防止することができる。
【0088】
上述のガラス用熱処理炉10は、廃ガラスを含む廃ガラス材を熱処理の対象とした場合、その廃ガラス材にクロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))が含まれていても、炉内雰囲気が脱酸素状態とされて熱処理が実行されるため、クロム元素から6価クロムが生成されることを防止することができる。このため、上述のガラス用熱処理炉10は、廃ガラス用熱処理炉として有用である。
なお、廃ガラスは、発泡剤としての炭酸カルシウム(CaCO)について、通常、多孔質ガラスを得るに足る量を有していない。このため、廃ガラスには、炭酸カルシウム(CaCO)を含む発泡剤を、適宜、添加することが好ましい。
【実施例
【0089】
以下、図面を参照しつつ、本発明のガラス用熱処理炉を更に具体化した実施例について説明する。
なお、以下に示す各実施例では、各図中で炉本体11を簡略化して記載する。
【0090】
[第1実施例]
図2に示すように、ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
炉本体11は、炉内に被処理材20を焼成処理するための空間を有している。炉本体11には、炉内に被処理材20を入れるための入口111と、被処理材20を焼成して得られた多孔質ガラス30を炉内から取り出すための出口112が、設けられている。
【0091】
搬送装置12は、炉本体11の炉内で被処理材20及び多孔質ガラス30を搬送するものである。
この搬送装置12は、炉内の底部に配設されたベルトコンベア121と、ベルトコンベア121の表面に配された介装部材122とを備えている。この介装部材122は、シリカ系材料からなる耐熱シートである。
被処理材20は、介装部材122に載せられた状態で、ベルトコンベア121により、炉本体11の炉内を入口111側から出口112側へ向かって搬送される。
【0092】
ガス供給系13は、炉本体11と接続されて炉内をガスでみたすものである。
ガス供給系13は、空気供給系131、燃料ガス供給系1322、空気供給系131と燃料ガス供給系1322が接続されたガス発生器133、及びガス発生器133と接続された露点調節装置134を備えている。露点調節装置134は、ガス供給路135を介して、炉本体11と接続されている。
【0093】
空気供給系131は空気を、燃料ガス供給系132は燃料ガスを、ガス発生器133に供給している。
ガス発生器133は、供給された空気と燃料ガスを燃焼反応させてガスを発生させるとともに、そのガスを露点調節装置134へ送り込んでいる。
露点調節装置134は、ガス発生器133から送り込まれたガスの露点温度を調節したうえで、ガス供給路135を介して、そのガスを炉本体11の炉内へ供給している。
【0094】
温度調整手段14は、炉本体11の炉内温度を調整するものである。
温度調整手段14は、炉内に配設された熱交換式のヒータ装置141を備えている。
具体的に、ヒータ装置141は、ラジアントチューブバーナであり、燃焼ガス供給器141Aから供給される高温度の燃焼ガスが、略U字状のチューブヒータの内部を通過することにより、その周囲を加熱する。
【0095】
燃焼ガス供給器141Aは、制御器141Bと電気的に接続されている。
この制御器141Bには、炉本体11に取り付けられた熱電対141Cが、電気的に接続されている。
熱電対141Cは、炉本体11の炉内の温度を測定し、その情報を制御器141Bへ送る。
制御器141Bは、熱電対141Cからの情報に基づき、燃焼ガス供給器141Aからヒータ装置141への燃焼ガス供給量を調節することにより、設定された炉内温度となるように、ヒータ装置141による炉内の加熱をコントロールしている。
【0096】
ガラス用熱処理炉10において、搬送装置12により、被処理材20が炉本体11の炉内に保持される保持時間は、5分~30分とされている。この保持時間は、ベルトコンベア121の搬送速度の調節により、調整することができる。
温度調整手段14により、炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされている。この炉内温度は、制御器141Bがヒータ装置141による炉内の加熱をコントロールすることにより、調整することができる。
【0097】
ガス供給系13により、炉本体11の炉内に供給され、その炉内をみたすガスは、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させて得られる還元性ガスとされている。
空燃比は、空気供給系131と燃料ガス供給系1322による、ガス発生器133への空気と燃料ガスの供給量の調節により、調整することができる。
【0098】
炉本体11の炉内は、ガス供給系13から供給される還元性ガスでみたされている。
この還元性ガスは、一酸化炭素(CO)、水素(H)を含んでいる。炉内に残存したり、炉外から入り込んだりした酸素(O)は、還元性ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や水素(H)と反応することで、二酸化炭素(CO)や水蒸気(HO)となる。
即ち、酸素(O)が還元性ガスとの反応に使われることで、炉本体11の炉内は、脱酸素状態とされる。
【0099】
被処理材20は、主成分として二酸化ケイ素(SiO)を含むとともに、酸化カルシウム(CaO)及び炭酸カルシウム(CaCO)を少なくとも含んでいる。
炉内温度が800℃以上、950℃以下とされた炉本体11の炉内で、被処理材20は、炉内をみたす還元性ガスと接触され、溶融されて、二酸化ケイ素(SiO)が多孔質ガラス30のガラス骨格を形作る。
被処理材20中の炭酸カルシウム(CaCO)は、発泡ガスとして二酸化炭素(CO)を発生させ、この二酸化炭素(CO)が溶融された被処理材20中で微細な多数の孔を形成することにより、被処理材20から多孔質ガラス30が得られる。
【0100】
また、炭酸カルシウム(CaCO)から発生する等して、被処理材20中に含まれる酸化カルシウム(CaO)は、二酸化ケイ素(SiO)によるガラス骨格に作用する等して、多孔質ガラス30の耐久性を向上させる。
この酸化カルシウム(CaO)は、酸素(O)の存在下でクロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))と接触すると、化学反応して、6価クロム(Cr6+)を生成させる。
【0101】
ガラス用熱処理炉10は、炉本体11の炉内をみたすガスとして、還元性ガスが使用されており、炉本体11の炉内が脱酸素状態とされている。
このため、炉内にクロム元素(例えば、3価クロム(Cr3+))が存在する場合であっても、酸素(O)が存在しないため、酸化カルシウム(CaO)と、例えば3価クロム(Cr3+)の化学反応が進行することはなく、6価クロム(Cr6+)が生成されない。
その結果、上述のガラス用熱処理炉10を使用した被処理材20の焼成処理では、6価クロム(Cr6+)の発生が防止される。
【0102】
[第2実施例]
以下、第2実施例のガラス用熱処理炉10について説明するが、第2実施例については、上述した第1実施例と異なる部分を中心に説明する。
図3に示すように、ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
炉本体11及び搬送装置12は、上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
【0103】
ガス供給系13は、空気供給系131、燃料ガス供給系1322、空気供給系131と燃料ガス供給系1322が接続された燃焼式のバーナー装置142を備えている。
空気供給系131は空気を、燃料ガス供給系1322は燃料ガスを、バーナー装置142に供給している。
バーナー装置142は、供給された空気と燃料ガスを燃焼させ、その燃焼ガスを炉本体11の炉内に送り込むことにより、炉内を燃焼ガスでみたしている。
【0104】
また、空気供給系131には空気供給バルブ131Aが接続され、燃料ガス供給系1322には燃料ガス供給バルブ132Aが接続されている。
空気供給バルブ131Aは、バーナー装置142への空気の供給量を調節しており、燃料ガス供給バルブ132Aは、バーナー装置142への燃料ガスの供給量を調節している。
また、空気供給バルブ131Aと燃料ガス供給バルブ132Aは、それぞれ制御器141Bと電気的に接続されており、制御器141Bにより、空気及び燃料ガスの供給量をコントロールすることができる。
【0105】
ガス供給系13を構成するバーナー装置142により、炉本体11の炉内に供給され、その炉内をみたす燃焼ガスは、空気と燃料ガスを空燃比1未満で燃焼させて得られる還元性ガスとされている。
空燃比は、制御器141Bによるバーナー装置142への空気及び燃料ガスの供給量のコントロールにより、調整することができる。
そして、ガラス用熱処理炉10は、炉本体11の炉内を還元性ガスでみたすことにより、炉内が脱酸素状態とされており、被処理材20から多孔質ガラス30を得る焼成処理において、6価クロム(Cr6+)の発生を防止されている。
【0106】
温度調整手段14は、上述の燃焼式のバーナー装置142、及び、冷却装置143を備えている。
上述の燃焼式のバーナー装置142は、ガス供給系13を構成するものであり、かつ温度調整手段14を構成するものである。バーナー装置142は、高温の燃焼ガスを炉本体11の炉内に噴き出すことにより、炉内を加熱する、
冷却装置143は、具体的に、熱交換式のクーリングチューブ144である。このクーリングチューブ144は、冷却ファン144Aから送られる冷媒が、略U字状のチューブヒータの内部を通過することにより、その周囲を冷却する。
また、冷却ファン144Aは、制御器141Bと電気的に接続されており、制御器141Bにより、冷媒の供給量や作動をコントロールすることができる。
【0107】
温度調整手段14により、炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされている。この炉内温度は、制御器141Bがバーナー装置142による炉内の加熱と、クーリングチューブ144による炉内の冷却とをコントロールすることにより、調整することができる。
即ち、制御器141Bは、熱電対141Cからの情報に基づき、バーナー装置142への燃料ガスの供給量を調節することで、設定された炉内温度となるようにバーナー装置142の火力を調整して、炉内の加熱をコントロールする。
【0108】
炉内温度が950℃を超える過昇時において、上述のバーナー装置142は、ガス供給系13を兼ねるものであるため、その燃焼を停止させると、炉内に還元性ガスが供給されず、炉内が脱酸素状態に保たれなくなる。
このため、過昇時には、バーナー装置142の燃焼を保持したまま、クーリングチューブ144によって炉内が冷却される。
【0109】
即ち、制御器141Bは、熱電対141Cによる測定で炉内温度が過昇であることを検知した場合、冷却ファン144Aを作動させる。この冷却ファン144Aにより、クーリングチューブ144へ冷媒が送り込まれ、クーリングチューブ144が炉内を冷却する。
また、制御器141Bは、熱電対141Cによって炉内温度を測定しながら、冷却ファン144Aの回転数を調節する等して、炉内温度が過昇の状態が解消されるまで、クーリングチューブ144による炉内の冷却を続ける。
そして、制御器141Bは、炉内温度が過昇の状態が解消されると、冷却ファン144Aの作動を停止し、クーリングチューブ144による炉内の冷却を止めて、設定された炉内温度となるようにバーナー装置142の火力を調整して、炉内の加熱をコントロールする。
【0110】
[第3実施例]
以下、第3実施例のガラス用熱処理炉10について説明するが、第3実施例については、上述した第1及び第2実施例と異なる部分を中心に説明する。
図4に示すように、ガラス用熱処理炉10は、炉本体11と、搬送装置12と、ガス供給系13と、温度調整手段14と、を備えている。
炉本体11及び搬送装置12は、上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
ガス供給系13は、上述した第2実施例と同様であり、説明を省略する。
【0111】
温度調整手段14は、燃焼式のバーナー装置142、及び、冷却装置143を備えている。燃焼式のバーナー装置142は、上述した第2実施例と同様であり、説明を省略する。
冷却装置143は、具体的に、炉本体11に接続された循環系145と、循環系145に接続されたクーラ装置146と、を備えている。更に、循環系145には、循環ファン145Aと、循環バルブ145Bが接続されている。
循環系145は、循環ファン145Aの作動により、炉本体11の炉内と炉外部との間で還元性ガスを循環させるものである。
クーラ装置146は、循環系145を流れる還元性ガスを冷却するものである。
循環バルブ145Bは、循環系145による還元性ガスの循環量を調節するものである。この循環バルブ145Bは、制御器141Bと電気的に接続されており、制御器141Bにより、還元性ガスの循環量をコントロールすることができる。
【0112】
温度調整手段14により、炉内温度は、800℃以上、950℃以下とされている。この炉内温度は、制御器141Bがバーナー装置142による炉内の加熱と、循環系145及びクーラ装置146による炉内の冷却とをコントロールすることにより、調整することができる。
即ち、制御器141Bは、熱電対141Cからの情報に基づき、バーナー装置142への燃料ガスの供給量を調節することで、設定された炉内温度となるようにバーナー装置142の火力を調整して、炉内の加熱をコントロールする。
【0113】
炉内温度が950℃を超える過昇時において、上述のバーナー装置142は、ガス供給系13を兼ねるものであるため、その燃焼を停止させると、炉内に還元性ガスが供給されず、炉内が脱酸素状態に保たれなくなる。
このため、過昇時には、バーナー装置142の燃焼を保持したまま、循環系145及びクーラ装置146によって炉内が冷却される。
【0114】
即ち、制御器141Bは、熱電対141Cによる測定で炉内温度が過昇であることを検知した場合、循環バルブ145Bを開放することで、炉内で高温となっている還元性ガスを、循環系145で循環させる。
この循環系145で循環する高温の還元性ガスは、循環系145に接続されたクーラ装置146によって冷却され、低温の還元性ガスとなる。そして、循環系145を循環して炉内へ戻された低温の還元性ガスが、炉内を冷却する。
また、制御器141Bは、熱電対141Cによって炉内温度を測定しながら、循環バルブ145Bによって循環量を調節しつつ、炉内温度が過昇の状態が解消されるまで、還元性ガスの循環を続ける。
そして、制御器141Bは、炉内温度が過昇の状態が解消されると、循環バルブ145Bを閉じ、循環系145による還元性ガスの循環を止めて、設定された炉内温度となるようにバーナー装置142の火力を調整して、炉内の加熱をコントロールする。
【符号の説明】
【0115】
10;ガラス用熱処理炉、
11;炉本体、111;入口、112;出口、113;隔壁、114;連通口、115;プレ加熱領域、116;加熱領域、116A;前段階、116B;後段階、
12;搬送装置、121;ベルトコンベア、122;介装部材、123;搬送ロール、
13;ガス供給系、131;空気供給系、131A;空気供給バルブ、132;燃料ガス供給系、132A;燃料ガス供給バルブ、133;ガス発生器、134;露点調節装置、135;ガス供給路、
14;温度調整手段、141;ヒータ装置、141A;燃焼ガス供給器、141B;制御器、141C;熱電対、142;バーナー装置、143;冷却装置、144;クーリングチューブ、144A;冷却ファン、145;循環系、145A;循環ファン、145B;循環バルブ、146;クーラ装置、
20;被処理材、30;多孔質ガラス。
図1
図2
図3
図4