(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光学結像装置の製造方法及び光反射素子形成体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20240516BHJP
G02B 30/56 20200101ALI20240516BHJP
【FI】
G02B5/08 C
G02B5/08 A
G02B30/56
(21)【出願番号】P 2020194402
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6850522(JP,B1)
【文献】特開2017-161843(JP,A)
【文献】特開2006-337641(JP,A)
【文献】特開2015-83527(JP,A)
【文献】特開2018-97311(JP,A)
【文献】特開2018-128570(JP,A)
【文献】特開2017-134151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
G02B 30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視して長方形状に形成された透明板材と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが前記透明板材の短手方向の長さよりも短く、前記透明板材と同
一の厚さを有する
不透明な間隔調整板をそれぞれ複数用意し、前記透明板材と前記間隔調整板を交互に積層し、固着して、隣り合う前記透明板材と前記間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一
側を前記積層部の外側に突出させた複数の突出部とを有する積層体を形成する第1工程と、
該積層体を蒸着炉に入れて金属蒸着を行い、又は該積層体にメッキ処理を行い、少なくとも前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に光反射層を形成する第2工程と、
前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に、前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂を充填し、複数の前記突出部を前記透明樹脂で一体化して光反射素子形成部を形成する第3工程と、
該光反射素子形成部を前記透明板材の表面と直交し、該透明板材の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断し、該切断面を平面化処理して、該切断面に垂直な複数の前記光反射層が平行に配置された光反射素子を製造する第4工程と、
2枚の前記光反射素子を、該各光反射素子の前記光反射層同士が平面視して直交するように配置する第5工程とを有することを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項2】
平面視して長方形状に形成された透明板材と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが前記透明板材の短手方向の長さよりも短く、前記透明板材と同
一の厚さを有する
透明又は不透明な間隔調整板をそれぞれ複数用意し、前記透明板材と前記間隔調整板を交互に積層し、固着して、隣り合う前記透明板材と前記間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一側及
び他側を前記積層部の外側に突出させた複数の突出部とを有する積層体を形成する第1工程と、
該積層体を蒸着炉に入れて金属蒸着を行い、又は該積層体にメッキ処理を行い、少なくとも前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に光反射層を形成する第2工程と、
前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に、前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂を充填し、複数の前記突出部を前記透明樹脂で一体化して光反射素子形成部を形成する第3工程と、
該光反射素子形成部を前記透明板材の表面と直交し、該透明板材の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断し、該切断面を平面化処理して、該切断面に垂直な複数の前記光反射層が平行に配置された光反射素子を製造する第4工程と、
2枚の前記光反射素子を、該各光反射素子の前記光反射層同士が平面視して直交するように配置する第5工程とを有することを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光学結像装置の製造方法において、前記第4工程では、1つの前記光反射素子形成部から少なくとも2枚の前記光反射素子を製造することを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の光学結像装置の製造方法において、前記各光反射素子は、マルチブレードソー、マルチワイヤソー又はマルチバンドソーを用いて、1つの前記光反射素子形成部を少なくとも3箇所同時に切断することにより得られることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行に配置された複数の光反射層を有する2枚の光反射素子が、それぞれの光反射層同士が平面視して直交するように配置される光学結像装置の製造方法及び光学結像装置の製造に用いられる光反射素子を形成するための光反射素子形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1には、2枚の透明平板の内部に、透明平板の厚み方向に渡って垂直に多数かつ帯状で、金属反射面からなる平面光反射部を一定のピッチで並べて形成した2枚の光制御パネルを用い、それぞれの光制御パネルの平面光反射部同士が平面視して直交するように、2枚の光制御パネルの一面側を向かい合わせて密着させた光学結像装置が記載されている。そして、特許文献1には、一面側又は両側面に金属蒸着により金属反射面を形成した透明板(例えば、ガラス板)を接着剤を介して積層し、その積層体を短い幅(例えば、0.5~10mm)で切断して光制御パネルを製造することが記載されている。
また、特許文献2に記載の光学結像装置は、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成された透明な凹凸板材の各溝の対向する平行な側面に光反射部を形成して光制御パネルを製造し、2枚の光制御パネルの光反射部同士を平面視して直交又は交差させた状態で向い合わせて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/131128号
【文献】国際公開第2015/033645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、積層体を形成する前に、1枚又は少数枚の透明板を蒸着炉に入れて金属蒸着する作業を繰り返し行う必要があり、積層体の形成までに手間と時間がかかり、著しく量産性に欠けるという課題があった。また、1つの積層体から多数の光制御パネルを切り出して、複数の光学結像装置を製造することができるが、それぞれの光学結像装置の品質を確保して歩留りを向上させるためには、各透明板の全面に均一に金属反射面を形成する必要がある。しかし、大面積の透明板全体に、斑無く均質な金属蒸着膜を形成することは困難であるため、光学結像装置(光制御パネル)の大型化には限界があり、用途が限られるという課題もあった。
特許文献2に記載の光学結像装置においては、光制御パネルの基材となる凹凸板材をインジェクション成形によって製造する場合、型枠の寸法精度によっては、光反射部が形成される溝の側面の垂直度が悪くなり(側面が傾き)、平行な光反射部を形成することが困難となって、製品のバラツキが多くなり、品質の低下を招き易いという課題があった。特に、大面積の凹凸板材を製造しようとすると、寸法精度の低下が顕著になるため、光学結像装置(光制御パネル)の大型化にも限界があった。また、インジェクション成形時に、凹凸板材の土手の高さを高くする(即ち、溝の深さを深くする)と、脱型が困難となるため、溝のアスペクト比を大きくすることが難しく、明るい結像が得られ難いという課題もあった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な製造工程で、品質の安定した光学結像装置を比較的安価に量産することができる光学結像装置の製造方法及び加工が容易で、形状安定性に優れ、光学結像装置の大型化及び量産化に好適な光反射素子形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して長方形状に形成された複数の透明板材を該各透明板材の短手方向の一側及び他側に交互にずらして積層し、固着して、隣り合う前記透明板材が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一側及び他側を前記積層部の外側に交互に突出させた複数の突出部とを有する積層体を形成する第1工程と、
該積層体を蒸着炉に入れて金属蒸着を行い、又は該積層体にメッキ処理を行い、少なくとも前記透明板材の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に光反射層を形成する第2工程と、
前記透明板材の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に、前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂を充填し、複数の前記突出部を前記透明樹脂で一体化して光反射素子形成部を形成する第3工程と、
該光反射素子形成部を前記透明板材の表面と直交し、該透明板材の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断し、該切断面を平面化処理して、該切断面に垂直な複数の前記光反射層が平行に配置された光反射素子を製造する第4工程と、
2枚の前記光反射素子を、該各光反射素子の前記光反射層同士が平面視して直交するように配置する第5工程とを有する。
【0007】
ここで、複数の透明板材は、厚みが同一であり、長手方向及び短手方向の長さも基本的に同一である。この透明板材としては寸法精度の高いガラス板が好適に用いられるが、透明な樹脂板を用いることもできる。透明板材として樹脂板を用いる場合、第3工程で充填される透明樹脂より融点が高く、硬質の材料で形成された樹脂板を用いることにより、液状の透明樹脂を充填する際に、透明板材(樹脂板)が溶融若しくは変形することを防止して、安定した形状を維持することができる。なお、ここでの硬質とは、固体状態でその形状を自己保持できる程度の硬さを有することを意味する。(以上、第2~第4の発明において同じ)。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して長方形状に形成された透明板材と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが前記透明板材の短手方向の長さよりも短く、前記透明板材と同等の厚さを有する間隔調整板をそれぞれ複数用意し、前記透明板材と前記間隔調整板を交互に積層し、固着して、隣り合う前記透明板材と前記間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一側及び/又は他側を前記積層部の外側に突出させた複数の突出部とを有する積層体を形成する第1工程と、
該積層体を蒸着炉に入れて金属蒸着を行い、又は該積層体にメッキ処理を行い、少なくとも前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に光反射層を形成する第2工程と、
前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に、前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂を充填し、複数の前記突出部を前記透明樹脂で一体化して光反射素子形成部を形成する第3工程と、
該光反射素子形成部を前記透明板材の表面と直交し、該透明板材の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断し、該切断面を平面化処理して、該切断面に垂直な複数の前記光反射層が平行に配置された光反射素子を製造する第4工程と、
2枚の前記光反射素子を、該各光反射素子の前記光反射層同士が平面視して直交するように配置する第5工程とを有する。
【0009】
第1、第2の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記第4工程では、1つの前記光反射素子形成部から少なくとも2枚の前記光反射素子を製造することが好ましい。
【0010】
第1、第2の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記各光反射素子は、マルチブレードソー、マルチワイヤソー又はマルチバンドソーを用いて、1つの前記光反射素子形成部を少なくとも3箇所同時に切断することにより得られることが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第3の発明に係る光反射素子形成体は、平面視して長方形状に形成された複数の透明板材が、該各透明板材の短手方向の一側及び他側に交互にずらされて積層され、固着されて、隣り合う前記透明板材が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一側及び他側が前記積層部の外側に交互に突出した複数の突出部とが形成された積層体と、
少なくとも前記透明板材の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に形成された光反射層と、
前記透明板材の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂がそれぞれ充填されて固化した樹脂充填部とを備え、
複数の前記突出部と複数の前記樹脂充填部が一体化されて光反射素子形成部が形成されている。
【0012】
前記目的に沿う第4の発明に係る光反射素子形成体は、平面視して長方形状に形成された透明板材と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが前記透明板材の短手方向の長さよりも短く、前記透明板材と同等の厚さを有する間隔調整板が交互に積層され、固着されて、隣り合う前記透明板材と前記間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された前記各透明板材の短手方向の一側及び/又は他側が前記積層部の外側に突出した複数の突出部とが形成された積層体と、
少なくとも前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の対向面に形成された光反射層と、
前記透明板材と前記間隔調整板の積層方向に隣り合う前記突出部の隙間に前記透明板材の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂がそれぞれ充填されて固化した樹脂充填部とを備え、
複数の前記突出部と複数の前記樹脂充填部が一体化されて光反射素子形成部が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
第1、第2の発明に係る光学結像装置の製造方法は、透明板材同士又は透明板材と間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された各透明板材の短手方向の一側及び/又は他側を積層部の外側に突出させた複数の突出部とを有する積層体を形成し、積層体全体に対して金属蒸着又はメッキ処理を行うことにより、透明板材の積層方向に隣り合う突出部の対向面にまとめて光反射層を形成することができ、量産性に優れると共に、透明板材の積層枚数を増やすだけで、寸法のバラツキが少ない大型で高品質の光学結像装置を安価に製造することができる。
【0014】
第3、第4の発明に係る光反射素子形成体は、透明板材同士又は透明板材と間隔調整板が重なり合った積層部と、積層された各透明板材の短手方向の一側及び/又は他側を積層部の外側に突出させた複数の突出部とが形成された積層体と、透明板材の積層方向に隣り合う突出部の対向面に形成された光反射層と、透明板材の積層方向に隣り合う突出部の隙間に透明樹脂が充填されて固化した樹脂充填部とを備え、複数の突出部と複数の樹脂充填部が一体化されて光反射素子形成部が形成されているので、光反射素子形成部を透明板材の表面と直交し、透明板材の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断し、切断面を平面化処理するだけで、切断面に垂直な複数の光反射層が等間隔で平行に配置された光反射素子を形成することができ、それを用いて、歪の少ない鮮明な結像が得られる光学結像装置を安価に製造することが可能となり、光学結像装置の大型化及び高品質化を図り、量産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法で製造される光学結像装置の拡大正断面図及び拡大側断面図である。
【
図2】(A)、(B)はそれぞれ同光学結像装置の製造方法の第1工程で形成された積層体を示す平面図及び正面図である。
【
図3】(A)、(B)はそれぞれ同光学結像装置の製造方法で形成された光反射素子形成体の側面図及び正面図である。
【
図4】(A)は同光学結像装置の製造方法の第1工程で形成される積層体の接着層を示す平面図であり、(B)は同光学結像装置の製造方法の第1工程で形成される積層体の接着層の変形例を示す平面図である。
【
図5】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法で形成された光反射素子形成体の平面図及び正面図である。
【
図6】(A)、(B)はそれぞれ同光反射素子形成体の変形例を示す平面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法により製造される
図1(A)、(B)の光学結像装置10について説明する。
光学結像装置10は、平面視して正方形(長方形でもよい)の第1、第2の光反射素子11、12が、それぞれの光反射層13同士が平面視して直交するように配置された(例えば、85~95度、好ましくは88~92度の範囲で交差配置された状態を含む)ものである。第1、第2の光反射素子11、12の一辺(各辺)の長さは、例えば、500~3000mm(より好ましくは、700~2500mm、更に好ましくは1000~2000mm)程度が実用的であるが、これに限定されるものではない。ここで、第1、第2の光反射素子11、12は、基本構造が同一であるため、第1、第2の光反射素子11、12に共通の構成要素には同一の符号を付して、以下では、第1の光反射素子11の構造を中心に説明し、第2の光反射素子12の構造については、説明を一部省略する。なお、
図1(A)、(B)においては、下側に配置された第1の光反射素子11の下面を入光面11aとし、上側に配置された第2の光反射素子12の上面を出光面12aとしているが、入光面と出光面は入れ替わってもよい。
【0017】
図1(A)、(B)に示すように、第1の光反射素子11及び第2の光反射素子12には、入光面11a及び出光面12aに垂直な複数の光反射層13が平行に配置されている。具体的には、断面が矩形のガラス板で形成された複数の透明板部14が等間隔で配置され、隣り合う透明板部14の対向面15(各透明板部14の両側面)に、それぞれ光反射層13が形成されている。そして、隣り合う透明板部14と透明板部14の間には、それぞれ透明樹脂が充填されて固化(硬化)した透明樹脂部16が設けられている。
また、第1の光反射素子11と第2の光反射素子12は、透明接着剤(例えば、紫外線等の光を照射することにより硬化する光硬化型の他、熱硬化型、ホットメルト型(熱可塑性)、二液混合型又は常温硬化型等の接着剤)で接合されて一体化されているが、
図1(A)、(B)では、接着層を省略している。接着層の厚さは、5mm以下が好ましいが、これに限定されるものではない。なお、第1の光反射素子11と第2の光反射素子12は、隙間なく重ね合わされた(密着した)状態で外周が保持(固定)されていてもよい。
透明板部14(後述する透明板材20)の屈折率η1と、透明樹脂部16(後述する樹脂充填部27)及び上記の透明接着剤の屈折率η2は、同一であるか、近似していることが好ましい。具体的には、例えば、η2=(0.9~1.1)×η1の範囲、好ましくはη2=(0.95~1.05)×η1の範囲、更に好ましくはη2=(0.98~1.02)×η1の範囲を満たすものが好適に用いられる。
【0018】
以上のように構成された光学結像装置10の左下側から斜めに入光する対象物(物体の表面や画像表示装置の表示面)からの光L1、L2は、下側の第1の光反射素子11の光反射面17のP1、P2で反射し、更に上側の第2の光反射素子12の光反射面17のQ1、Q2で反射して、光学結像装置10の上側(空中)で結像する。つまり、対象物である物体の立体像や画像表示装置に表示されている画像が、空中に実像(空中像)として浮かび上がる。
なお、
図1(A)、(B)では、第1の光反射素子11及び第2の光反射素子12の各光反射層13の左側から光L1、L2が入射しているので、各光反射層13の左側の面が光反射面17として機能しているが、光反射層13は、透明板部14の対向面15に鏡面処理(例えば、金属蒸着(スパッタリング及びイオンプレーティング等を含む広い概念)又はメッキ処理)を行うことにより形成された金属膜(金属皮膜)であるため、各光反射層13の右側から入射する光に対しては、各光反射層13の右側の面を光反射面として機能させることができる。金属膜を形成する金属としては、例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Cr(クロム)等の高反射率を有する金属が用いられる。
【0019】
ここで、
図1(A)、(B)では、説明の便宜上、光反射層13の厚みを誇張して図示しているが、実際の光反射層13の厚みは、例えば、60nm以上、好ましくは80nm以上であり、上限が150nm程度であって、透明板部14の厚みt1及び透明樹脂部16の厚みt2(例えば、いずれも0.1~2mm、好ましくは、0.3~1.5mmの範囲)と比較して無視できる程に薄い。なお、光学結像装置10で斑の少ない高品質な空中像を形成するためには、第1、第2の光反射素子11、12の各光反射層13をなるべく等間隔で配置することが好ましい。よって、透明板部14の厚みt1と透明樹脂部16の厚みt2が略同等となるように第1、第2の光反射素子11、12を形成することにより、光反射層13のピッチpを透明板部14の厚みt1及び透明樹脂部16の厚みt2と略等しくして、光反射層13を略等間隔で配置することができる。また、明るい空中像を形成するためには、光反射層13の高さhと光反射層13のピッチpとの比であるアスペクト比(h/p)は、0.8~5の範囲(より好ましくは、1.5~4、更に好ましくは、2~3.5の範囲)にあることが好ましい。なお、光反射層13の高さhは、光反射層13が形成される透明板部14の高さと同一であり、透明樹脂部16の高さとも等しい。ここで、光反射層13の高さhは、例えば、0.2~10mmの範囲(より好ましくは、0.5~6mm、更に好ましくは1~3mmの範囲)にあることが実用的であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0020】
以上説明した光学結像装置10の製造に用いられる本発明の第1の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法について、
図2(A)、(B)、
図3(A)、(B)を参照しながら説明する。
図2(A)、(B)、
図3(A)、(B)に示す本発明の第1の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法は、先に説明した、歪が少なく、鮮明な結像が得られる光学結像装置10を簡素な製造工程で、比較的安価に量産することができ、光学結像装置10の大型化及び高品質化を実現するものである。
図2(A)、(B)に示すように、平面視して長方形状に形成された複数のガラス製の透明板材20を各透明板材20の短手方向の一側及び他側に交互にずらして積層し、固着して、隣り合う透明板材20が重なり合った積層部20aと、積層された各透明板材20の短手方向の一側及び他側を積層部20aの外側に交互に突出させた複数の突出部21とを有する積層体22を形成する。ここで、各透明板材20の厚みtが、前述の光学結像装置10の各透明板部14の厚みt1(
図1(A)、(B)参照)に相当し、積層体22全体(積層部20a)の高さから透明板材20の1枚分の厚みtを引いた寸法H(透明板材20の積層枚数をnとするとH=(n-1)t)及び透明板材20の長手方向の長さLが、前述の第1、第2の光反射素子11、12の一辺(各辺)の長さに相当するので、これらの関係から、透明板材20の積層枚数を適宜、決定することができる。なお、第1、第2の光反射素子11、12が平面視して正方形に形成される場合は、積層体22の積層方向の寸法Hと透明板材20の長手方向の長さLは等しい。
【0021】
積層体22を構成する各透明板材20は、
図4(A)に示すように、接着層23を挟んで積層され、固着(接合)されて一体化されるが、
図2(B)、
図3(A)、(B)では、接着層を省略している。なお、透明板材20に、液状の接着剤を塗布して接着層23を形成する場合、接着剤が積層部20aの外方(特に、透明板材20の積層方向に隣り合う突出部21の対向面15)にはみ出さないように、塗布範囲を限定することが好ましい。また、
図4(B)に示す積層体22aのように、液状の接着剤の代わりに、シート状の接着剤(例えばOCAテープ)を使用して接着層24を形成することもできる。シート状の接着剤は、予め積層部20aの面積に合わせて切断して使用することにより、積層部20aの全面に接着層24を形成することができるが、接着層は、必ずしも積層部20aの全面に形成する必要はない。なお、接着層23、24は、前述の第1、第2の光反射素子11、12の構成には含まれず、光学結像装置10の結像(第1、第2の光反射素子11、12における光の屈折)とは無関係なので、透明でも透明でなくてもよい。また、積層部20aの幅h1は、透明板材20の積層状態を維持できる範囲で適宜、選択することができる(以上、第1工程)。
【0022】
次に、積層体22を蒸着炉に入れて金属蒸着を行い、少なくとも透明板材20の積層方向に隣り合う突出部21の対向面15に光反射層13を形成する(以上、第2工程)。
次に、透明板材20の積層方向に隣り合う突出部21の隙間26に、透明板材20の屈折率の0.9~1.1倍の屈折率を有する透明樹脂をそれぞれ充填して硬化(固化)させることにより樹脂充填部27が形成される。これにより、複数の突出部21と複数の樹脂充填部27が一体化して光反射素子形成部28が形成され、光反射素子形成体30が得られる。従って、光反射素子形成体30は、平面視して長方形状に形成された複数の透明板材20が、各透明板材20の短手方向の一側及び他側に交互にずらされて積層され、固着されて、隣り合う透明板材20が重なり合った積層部20aと、積層された各透明板材20の短手方向の一側及び他側が積層部20aの外側に交互に突出した複数の突出部21とが形成された積層体22と、少なくとも透明板材20の積層方向に隣り合う突出部21の対向面15に形成された光反射層13と、透明板材20の積層方向に隣り合う突出部21の隙間26に透明板材20の屈折率η1の0.9~1.1倍の屈折率η2を有する透明樹脂がそれぞれ充填されて固化した樹脂充填部27とを備え、複数の突出部21と複数の樹脂充填部27が一体化されて光反射素子形成部28が形成されたものとなる。
ここで、隙間26への透明樹脂の充填は、例えば、透明板材20の長尺方向の両端面で積層体22を覆うように、ガラス又は樹脂等で形成された板材(カバー材)を配置し、透明樹脂が充填される隙間26を上向き(透明板材20を縦向き)にして、脱気状態で行うことにより、隙間26に確実に透明樹脂を充填することができる。なお、板材は、透明樹脂が硬化して樹脂充填部27が形成された後、除去することができる(以上、第3工程)。
【0023】
次に、
図3(B)に示すように、光反射素子形成部28を透明板材20の表面と直交し、透明板材20の長手方向に沿う切断面で所定長さに切断する。このとき、マルチブレードソー、マルチワイヤソー又はマルチバンドソーを用いて、1つの光反射素子形成部28を3箇所同時に切断し、それぞれの切断面を平面化処理することにより、1つの光反射素子形成部28から、切断面に垂直な複数の光反射層13が平行に配置された2枚の光反射素子(第1、第2の光反射素子11、12)を製造することができる。つまり、透明板材20(突出部21)及び樹脂充填部27の一部が、第1、第2の光反射素子11、12の透明板部14及び透明樹脂部16となる。ここで、先の第1工程で、突出部21の長さh2が、第1、第2の光反射素子11、12のそれぞれの光反射層13の高さh(
図1(A)、(B)参照)の2倍よりもやや長くなるように積層体22を形成しておくことにより、積層時の位置ずれの影響を受けることもなく、切断後の第1、第2の光反射素子11、12の光反射層13の高さhを確保することができる。よって、透明板材20の短手方向の長さw1は、積層部20aの幅h1と突出部21の長さh2で決定される。このように、光反射素子形成体30の1つの光反射素子形成部28を3箇所切断して第1、第2の光反射素子11、12が得られることから、先の第2工程で、突出部21の対向面15以外に金属が蒸着されていても、光学結像装置10の結像に影響を与えることはないので、積層体22にマスキング等を行う必要はない。また、1つの光反射素子形成部28を3箇所切断することにより、光反射層13の厚みが不均一となり易い突出部21の根元側及び先端側を除外して、略均一な厚みの光反射層13を有する第1、第2の光反射素子11、12を形成することができる(以上、第4工程)。
【0024】
次に、第1、第2の光反射素子11、12を、それぞれの光反射層13同士が平面視して直交するように配置し(重ね合わせ)、透明接着剤で接合して、一体化することにより、光学結像装置10が得られる。液状の透明接着剤(光硬化型、熱硬化型、二液混合型又は常温硬化型等の接着剤)を用いる場合、接合面に透明接着剤を塗布して重ね合わせた第1、第2の光反射素子11、12を脱気状態(減圧状態、更には真空状態)でプレス(押圧)することにより、硬化後の接着層の内部に気泡が残存することを防止して結像時の品質低下を防止できる。なお、第1、第2の光反射素子11、12の接合中に超音波振動等で加振して、透明接着剤の内部に発生している気泡を除去することもできる。また、シート状に形成されたホットメルト型(熱可塑性)の接着剤を用いる場合は、第1の光反射素子11と第2の光反射素子12の間にシート状の接着剤を挟み、脱気状態でプレス(押圧)しながら、少なくとも接着剤を加熱して軟化(更には溶融)させた後、冷却して硬化させる。
なお、光学結像装置10の入光面11a及び出光面12a(
図1参照)をガラス又は樹脂で形成された板状の透明カバーで覆うことにより、第1、第2の光反射素子11、12を保護してもよい。このとき、透明カバー及び透明カバーを第1、第2の光反射素子11、12に接合するための透明接着剤の屈折率は、それぞれ透明板部14(透明板材20)の屈折率η1と同一であるか、近似している(例えば、η1の0.9~1.1倍、好ましくは0.95~1.05倍、更に好ましくは0.98~1.02倍)ものが好適に用いられる(以上、第5工程)。
【0025】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図5(A)、(B)に示す第2の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法が、第1の実施の形態と異なる点は、第1工程において、平面視して長方形状に形成された透明板材20と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが透明板材20の短手方向の長さよりも短く、透明板材20と同等の厚さを有する間隔調整板33をそれぞれ複数用意し、透明板材20と間隔調整板33を交互に積層し、固着して、隣り合う透明板材20と間隔調整板33が重なり合った積層部34と、積層された各透明板材20の短手方向の一側を積層部34の外側に突出させた複数の突出部21とを有する積層体を形成している点である。これにより、第3工程で得られる光反射素子形成体35は、平面視して長方形状に形成された透明板材20と、平面視して長方形状に形成され短手方向の長さが透明板材20の短手方向の長さよりも短く、透明板材20と同等の厚さを有する間隔調整板33が交互に積層され、固着されて、隣り合う透明板材20と間隔調整板33が重なり合った積層部34と、積層された各透明板材20の短手方向の一側が積層部34の外側に突出した複数の突出部21とが形成された積層体と、少なくとも透明板材20と間隔調整板33の積層方向に隣り合う突出部21の対向面15に形成された光反射層13と、透明板材20と間隔調整板33の積層方向に隣り合う突出部21の隙間26に透明板材20の屈折率η1の0.9~1.1倍の屈折率η2を有する透明樹脂がそれぞれ充填されて固化した樹脂充填部27とを備え、複数の突出部21と複数の樹脂充填部27が一体化されて光反射素子形成部28が形成されたものとなる。
【0026】
ここで、光反射素子形成体35には、光反射素子形成部28が1箇所しか形成されないので、第4工程で製造される光反射素子の数が、光反射素子形成体30に比べて半減するが、間隔調整板33は、光反射素子の構成には含まれず、光学結像装置の結像(第1、第2の光反射素子における光の屈折)とは無関係であるため、透明でも透明でなくてもよく、材料選択の幅を広げることができる。その他の第2~第5工程は、第1の実施の形態と同様であり、製造される光反射素子及び光学結像装置も第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
なお、第1工程において、透明板材20と間隔調整板33は、第1の実施の形態と同様に接着層を介して接合されることが好ましいが、接着層は、少なくとも第3工程において、複数の突出部21と複数の樹脂充填部27が一体化されて光反射素子形成部28が形成されるまで、透明板材20と間隔調整板33との接合状態を維持できるものであればよく、第4工程で、光反射素子形成部28から光反射素子を切出した後は、透明板材20と間隔調整板33が剥離してもよい。例えば、UV照射により粘着力が低下するUV剥離テープ又は加熱により発泡して粘着力が低下する熱発泡粘着フィルム等を用いて接着層を形成すれば、透明板材20と間隔調整板33を容易に剥離することができ、間隔調整板33を繰り返し使用することができる。
【0027】
図5(A)、(B)では、透明板材20の短手方向の他側の位置と、間隔調整板33の短手方向の他側の位置を揃えることにより、積層された各透明板材20の短手方向の一側のみを利用して突出部21を形成したが、
図6(A)、(B)に示す変形例では、透明板材20の短手方向の中央部に間隔調整板33を配置することにより、積層された各透明板材20の短手方向の一側及び他側に突出部21が形成された光反射素子形成体35aを得ることができる。これにより、第1の実施の形態に係る光学結像装置の製造方法と同様の作用、効果が得られるほか、間隔調整板33の材料選択の幅を広げることや間隔調整板33を繰り返し使用することが可能となる。
【0028】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の光学結像装置の製造方法及び光反射素子形成体を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
上記実施の形態においては、第1、第2の光反射素子を構成する透明板部(透明板材)をガラスで形成した場合について説明したが、透明板部(透明板材)として、第3工程で充填される透明樹脂より融点が高く、硬質の材料で形成された透明の樹脂板を用いてもよい。また、上記実施の形態においては、1つの光反射素子形成部を3箇所同時に切断して、1つの光反射素子形成部から2枚の光反射素子を製造する場合について説明したが、光反射層及び透明樹脂部(樹脂充填部)を良好に形成できる範囲で突出部を長尺化し、1つの光反射素子形成部を4箇所以上同時に切断して、1つの光反射素子形成部から3枚以上の光反射素子を製造することもできる。
さらに、上記実施の形態においては、金属蒸着により光反射層を形成する場合について説明したが、メッキ処理により光反射層を形成することもできる。例えば、積層体をメッキ液にどぶ漬けしてメッキ処理することにより、本来、光反射層が形成される突出部の対向面以外に金属膜(金属皮膜)が形成されても、光学結像装置の結像に影響を与えることはなく、量産性に優れる。
【符号の説明】
【0029】
10:光学結像装置、11:第1の光反射素子、11a:入光面、12:第2の光反射素子、12a:出光面、13:光反射層、14:透明板部、15:対向面、16:透明樹脂部、17:光反射面、20:透明板材、20a:積層部、21:突出部、22、22a:積層体、23:接着層、24:接着層、26:隙間、27:樹脂充填部、28:光反射素子形成部、30:光反射素子形成体、33:間隔調整板、34:積層部、35、35a:光反射素子形成体