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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電動遮蔽ユニット
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20240516BHJP
   A47H 5/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E05F15/643
A47H5/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020216692
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102139
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】植本 雄司
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-185174(JP,A)
【文献】特開2010-167119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263399(US,A1)
【文献】国際公開第2014/199688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
A47H 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの長手方向の両端に設けられたプーリの一方に係合し、該一方のプーリを回すことにより前記プーリに巻き掛けられたベルトを回転させて遮蔽部材を前記レールに沿って移動させる電動モータと、
前記電動モータの駆動による回転に応じた検出信号を出力する回転検出装置と、
前記電動モータの駆動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記電動モータが過負荷状態にある場合に前記検出信号に基づいて算出した前記ベルトの伸び量に基づいて、前記遮蔽部材の目標全閉位置を設定する原点設定部と、
前記目標全閉位置に基づいて前記電動モータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記駆動信号に基づいて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、
を含むことを特徴とする電動遮蔽ユニット。
【請求項2】
前記原点設定部は、
前記電動モータの過負荷状態を判定する負荷判定部と、
前記電動モータの過負荷状態において、前記モータ駆動回路が前記電動モータの駆動を停止した後、前記回転検出装置の回転位置を第1回転位置として算出し、該第1回転位置算出後であって所定の時間経過後にさらに前記回転検出装置の回転位置を第2回転位置として算出する回転位置算出部と、
前記第1回転位置と前記第2回転位置とに基づいて前記ベルトの前記伸び量を算出するベルト伸び量取得部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項3】
前記原点設定部は、前記回転検出装置の回転位置と前記伸び量と基づいて前記目標全閉位置を算出する原点算出部をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項4】
前記原点設定部は、
既存の目標全閉位置の補正が必要になった場合、前記電動モータが過負荷状態に至り前記モータ駆動回路が前記電動モータの駆動を停止した後、前記回転検出装置の回転位置を第3回転位置として算出し、
前記第3回転位置から前記伸び量だけ前記電動モータを逆回転させて前記遮蔽部材を開方向に移動させるように前記モータ駆動回路に指示し、
前記モータ駆動回路は、
前記原点設定部から前記電動モータを逆回転させる指示を受けて、前記遮蔽部材を開方向に戻すように前記電動モータを駆動する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項5】
前記原点設定部は、前記モータ駆動回路が前記電動モータを前記伸び量だけ開方向に駆動した後に算出された前記回転検出装置の回転位置を前記目標全閉位置として設定することを特徴とする請求項4に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項6】
前記原点設定部は、前記モータ駆動回路が前記電動モータを前記伸び量だけ開方向に駆動した後に算出された前記回転検出装置の回転位置からさらに開方向の側の回転位置を前記目標全閉位置として設定することを特徴とする請求項4に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項7】
前記原点設定部は、所定の条件が満たされたことを監視する設定条件監視部を有し、該設定条件監視部が前記所定の条件が満たされたことを判断した場合、前記原点設定部は、前記目標全閉位置の設定を行うことを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項8】
前記検出信号は、互いに90°位相がずれた2相のパルス信号であり、各パルスのエッジに基づいて前記伸び量を算出しかつ前記目標全閉位置を設定することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の電動遮蔽ユニット。
【請求項9】
カーテンレールと、遮蔽部材と、請求項1から8までのいずれか一項に記載の電動遮蔽ユニットと、を備えることを特徴とする電動カーテンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動遮蔽ユニットに関し、例えばカーテン等の遮蔽部材を電動で開閉駆動する電動遮蔽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータと、電動モータの駆動によりカーテンレールを走行するベルトと、ベルトに取り付けられてカーテンを支持する複数のランナーと、を備える、カーテンの開閉を電動制御する電動カーテンの制御装置(電動遮蔽ユニット)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電動遮蔽ユニットにおいては、スイッチやリモコンにより開閉操作を指示すると、電動モータの制御部に操作信号が送信される。電動モータは、受信した操作信号に基づいて回転駆動される。電動モータの駆動中に、複数のランナーのうち閉方向において先頭に位置する先頭ランナーが停止位置に到達した場合、電動モータは停止する。電動カーテンの電動遮蔽ユニットを初めて駆動させた場合(初期動作時)、この電動モータが停止した位置が全閉位置として認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-192790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、全閉位置を認識する閉動作において、先頭ランナーがカーテンの全閉位置を規定するストッパ部材に接触してカーテンが閉方向において停止位置に達した場合、電動モータは過負荷状態になる。この電動モータの過負荷状態が検知されると電動モータは停止する。
【0006】
カーテンが実際の停止位置に達してから電動モータが停止するまでの間にタイムラグが生じて、実際の全閉位置からさらに進んだ位置を停止位置と誤って電動遮蔽ユニットが認識することがある。したがって、次にカーテンの閉動作を行った場合には、実際の停止位置ではなくこの誤った停止位置まで電動モータは駆動するようになり、実際カーテン及びベルトは、停止位置に達してそれ以上は閉方向に進まない場合であっても、電動モータは駆動し続けてベルトを部分的に引き伸ばし、ベルトに過剰な伸びが生じることがある。
【0007】
電動モータの停止後、ベルトは伸びた量(伸び量)だけ元に戻ろうとし、例えば、カーテンレールの内側に接触し、異音が発生することがある。さらに、電動遮蔽ユニットは、本来の停止位置ではない誤った位置を停止位置と認識するため、ストッパ部材に衝突する勢いが強くなり大きな異音の発生の原因となることが懸念される。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、遮蔽部材の閉動作時に発生する異音を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る電動遮蔽ユニットは、レールの長手方向の両端に設けられたプーリの一方に係合し、該一方のプーリを回すことにより前記プーリに巻き掛けられたベルトを回転させて遮蔽部材をレールに沿って移動させるモータと、前記モータの駆動による回転に応じた検出信号を出力する回転検出装置と、前記モータの駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記モータが過負荷状態にある場合に前記検出信号に基づいて算出した前記ベルトの伸び量に基づいて、前記遮蔽部材の目標全閉位置を設定する原点設定部と、前記目標全閉位置に基づいて前記モータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遮蔽部材の閉動作時に発生する異音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電動遮蔽ユニットを備えた電動カーテンシステムにおいてカーテン材の全閉状態を示す図である。
図2】実施の形態1に係る電動遮蔽ユニットを備えた電動カーテンシステムにおいてカーテン材の全開状態を示す図である。
図3】カーテンレールの内部構造を示す概略図である。
図4】電動遮蔽ユニットの構成を示す斜視図である。
図5】電動遮蔽ユニットの回路構成を示すブロック図である。
図6】回転検出装置が出力する検出信号について説明するための図である。
図7】制御装置の制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図8】過負荷状態の検知時における回転検出装置から出力される検出信号の一例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る電動カーテンシステムの駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
図10】ベルトの伸び量の算出方法を説明するためのフローチャートである。
図11】回転検出装置から出力される検出信号に基づいて、ベルト伸び量取得部においてベルトの伸び量の算出方法の一例について説明する図である。
図12】実施の形態2に係る電動カーテンシステムの駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
図13】制御装置における原点の設定方法を説明するためのフローチャートである。
図14】実施の形態3に係る電動カーテンシステムの駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態に係る電動遮蔽ユニット(1)は、レール(110)の長手方向(OC)の両端に設けられたプーリ(111a,111b)の一方に係合し、該一方のプーリ(111a)を回すことにより前記プーリ(111a,111b)に巻き掛けられたベルト(112)を回転させて遮蔽部材(120)を前記レール(110)に沿って移動させる電動モータ(10)と、前記電動モータ(10)の駆動による回転に応じた検出信号を出力する回転検出装置(30)と、前記電動モータ(10)の駆動を制御する制御装置(40)と、を備え、前記制御装置(40)は、前記電動モータ(10)が過負荷状態にある場合に前記検出信号に基づいて算出した前記ベルト(112)の伸び量に基づいて、前記遮蔽部材(120)の目標全閉位置を設定する原点設定部(50)と、前記目標全閉位置に基づいて前記電動モータ(10)を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部(60)と、前記駆動信号に基づいて前記電動モータ(10)を駆動するモータ駆動回路(42)と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、前記電動モータ(10)の過負荷状態を判定する負荷判定部(52)と、前記電動モータ(10)の過負荷状態において、前記モータ駆動回路(42)が前記電動モータ(10)の駆動を停止した後、前記回転検出装置(30)の回転位置を第1回転位置として算出し、該第1回転位置算出後であって所定の時間経過後にさらに前記回転検出装置(30)の回転位置を第2回転位置として算出する回転位置算出部(53)と、前記第1回転位置と前記第2回転位置とに基づいて前記ベルト(112)の前記伸び量を算出するベルト伸び量取得部(55)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、前記回転検出装置(30)の回転位置と前記伸び量と基づいて前記目標全閉位置を算出する原点算出部(57)をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、既存の目標全閉位置の補正が必要になった場合、前記電動モータ(10)が過負荷状態に至り前記モータ駆動回路(42)が前記電動モータ(10)の駆動を停止した後、前記回転検出装置(30)の回転位置を第3回転位置として算出し、前記第3回転位置から前記伸び量だけ前記電動モータ(10)を逆回転させて前記遮蔽部材(120)を開方向に移動させるように前記モータ駆動回路(42)に指示し、前記モータ駆動回路(42)は、前記原点設定部(50)から前記電動モータ(10)を逆回転させる指示を受けて、前記遮蔽部材(120)を開方向に戻すように前記電動モータ(10)を駆動することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、前記モータ駆動回路(42)が前記電動モータ(10)を前記伸び量だけ開方向に駆動した後に算出された前記回転検出装置(30)の回転位置を前記目標全閉位置として設定することを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、前記モータ駆動回路(42)が前記電動モータ(10)を前記伸び量だけ開方向に駆動した後に算出された前記回転検出装置(30)の回転位置からさらに開方向の側の回転位置を前記目標全閉位置として設定することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記原点設定部(50)は、所定の条件が満たされたことを監視する設定条件監視部(56)を有し、該設定条件監視部(56)が前記所定の条件が満たされたことを判断した場合、前記原点設定部(50)は、前記目標全閉位置の設定を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る電動遮蔽ユニット(1)において、前記検出信号は、互いに90°位相がずれた2相のパルス信号であり、各パルスのエッジに基づいて前記伸び量を算出しかつ前記目標全閉位置を設定することを特徴とする。
【0021】
≪電動カーテンシステムの全体構成≫
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、電動遮蔽ユニット1を備えた電動カーテンシステム100においてカーテン材120の全閉状態を示す図である。図2は、実施の形態1に係る電動遮蔽ユニット1を備えた電動カーテンシステム100においてカーテン材120の全開状態を示す図である。図示の電動カーテンシステム100は、カーテンレール110と、カーテン材(遮蔽部材)120と、本発明に係る電動遮蔽ユニット1と、を備える。なお、説明の便宜上、図面において、図1,2に示すように、カーテンレール110の延びる方向をカーテン材120の開閉方向(水平方向、長手方向)OCとし、図中左側をカーテン材120が閉まる側を閉側Cとし、図中右側をカーテン材120が開く側を開側Oとする。また、カーテンレール110からカーテン材120が吊り下げられる方向を吊下方向UDとし、カーテンレール110の側を上側Uとし、カーテンレール110とは反対の側を下側Dとする。
【0022】
電動カーテンシステム100は、カーテン材120をカーテンレール110に沿って移動させることにより、例えば、室内からの外部の視認を可能にし、また、外部からの室内の視認を妨げる。本発明に係る電動遮蔽ユニット1が適用される電動カーテンシステム100は、特定の日射遮蔽システムに限定されない。なお、電動カーテンシステム100は、カーテン材120がカーテンレール110の長手方向OCに沿って移動する片開き型の装置であるが、両開き型の装置として構成されていてもよい。
【0023】
図3は、カーテンレール110の内部構造を示す概略図である。カーテンレール110は、水平方向OCに伸びるレール状の部材である。カーテンレール110は、2つのプーリ111a,111bと、ベルト112と、複数のランナー113と、吊下具114と、を有する。2つのプーリ111a,111bはそれぞれ、開閉方向OCにおいてカーテンレール110の両端に設けられている。2つのプーリ111a,111bのうち開側Oに設けられたプーリ111aは、後述する電動遮蔽ユニット1の電動モータ10と係合している。
【0024】
ベルト112は、各プーリ111a,111bに巻き掛けられて無端状に構成されている。ベルト112には開閉方向OCにプーリ111a,111bの回転方向に応じて移動自在になっている。ベルト112には、複数のランナー113が取り付けられている。各ランナー113には吊下具114が取り付けられており、各吊下具114は、カーテン材120を吊り下げた状態において保持している。
【0025】
なお、複数のランナー113のうち、特に開閉方向OCにおける最も閉側Cに位置するランナー113については、カーテン材120の現在位置を検出するために使用される先頭ランナー113aである。
【0026】
カーテン材120は、吊下具114を介してカーテンレール110に吊り下げられている。電動遮蔽ユニット1は、カーテン材120がカーテンレール110の閉側Cから開側Oに向かって畳み込まれると窓(図示せず)が露出する。また、電動遮蔽ユニット1は、カーテン材120がカーテンレール110の開側Oから閉側Cに向かって引き出されると窓を覆う。閉側Cの全閉位置CCは、カーテン材120によって窓全体が覆われている位置である。全閉位置CCには、ストップ材(図示せず)が設けられている。カーテン材120が全閉位置CCに達したということは、先頭ランナー113aがストップ材に当接して閉側Cへのカーテン材120のさらなる移動は規制される。
【0027】
開側Oの全開位置COは、カーテン材120によって窓全体が覆われていない位置である。全開位置COにはストップ材(図示せず)が設けられている。カーテン材120が全開位置COに達したということは、先頭ランナー113aとは最も反対側に位置するランナー113がストップ材に当接して開側Oへのカーテン材120のさらなる移動は規制される。この状態において、複数のランナー113同士が互いに接触している。
【0028】
<電動遮蔽ユニットの構成>
電動遮蔽ユニット1は、カーテンレール110の長手方向OCの両端に設けられたプーリ111a,111bの一方に係合し、一方のプーリ111aを回すことによりプーリ111a,111bに巻き掛けられたベルト112を回転させてカーテン材(遮蔽部材)120をカーテンレール110に沿って移動させる電動モータ10と、電動モータ10の駆動による回転に応じた検出信号を出力する回転検出装置30と、電動モータ10が過負荷状態にある場合に検出信号に基づいて算出したベルト112の伸び量に基づいて、カーテン材120の目標全閉位置を設定する原点設定部50と、目標全閉位置に基づいて電動モータ10を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部60と、駆動信号に基づいて電動モータ10を駆動するモータ駆動回路42と、を備える。以下、具体的に電動遮蔽ユニット1の構成を説明する。
【0029】
図4は、電動遮蔽ユニット1の構成を示す斜視図である。図5は、電動遮蔽ユニット1の回路構成を示すブロック図である。電動遮蔽ユニット1は、電動モータ10と、電磁クラッチ20と、回転検出装置30と、制御装置40と、を備える。電動モータ10は、例えばDC(Direct Current)ブラシモータである。電動モータ10は、制御装置40から供給されるPWM(Pulse Width Modulation)信号(以下、「モータ駆動用信号」ともいう)により電動モータ10の回転軸11を所望の回転数、トルク及び回転角度・位置等に駆動する駆動源である。以下、電動モータ10の回転軸11の回転を、単に「電動モータ10の回転」ともいう。
【0030】
電磁クラッチ20は開閉動作により、電動モータ10の回転軸11と、後述する回転検出装置30との接続又は切断を行う。
【0031】
回転検出装置30は、電動モータ10の駆動による回転軸11の回転角度に応じた検出信号を出力する。ここで、回転検出装置30は、例えば、ロータリエンコーダ(例えば、インクリメンタル方式)であり、電動モータ10の回転方向の機械的変位量に応じたパルス列を検出信号として出力する。本実施の形態では、一例として、回転検出装置30がロータリエンコーダであるとして説明する。
【0032】
図6は、回転検出装置30が出力する検出信号について説明するための図である。回転検出装置30は、検出信号として、電動モータ10の回転速度に応じた周期を有するA相パルス信号と、A相パルス信号に対して位相が90°ずらされたB相パルス信号とをそれぞれ出力する。回転検出装置30は、電動モータ10が回転方向に所定量だけ変位する毎にパルスを出力する。閉方向においてはパルス信号のエッジ(1~10)毎にデクリメント(-カウント)が行われ、開方向においてはパルス信号のエッジ(1~10)毎にインクリメント(+カウント)が行われる。
【0033】
回転検出装置30は、スリット板31と、基板に設けられた光センサ32と、を有する。スリット板31は、電磁クラッチ20の出力側の回転軸に取り付けられている。スリット板31は、一方のプーリ111aに直接的に又は間接的に連結されてプーリ111aを回転させる出力軸33を有する。出力軸33により、電動モータ10の駆動力をプーリ111a,111bに伝達してベルト112が周回させられる。
【0034】
回転検出装置30においては、回転するスリット板31を通過する光の列をパルス信号として検出することができる。したがって、回転検出装置30により出力軸33の回転の有無、回転方向、回転位置及び回転速度を検出することができる。
【0035】
制御装置40は、電動モータ10の回転方向を制御するとともに、例えば、予めDipスイッチやプログラムで設定されている電動モータ10の目標回転速度に合わせて電動モータ10を制御し、さらに、パルス信号のデューティ値に基づいて目標回転位置(目標全閉位置)まで電動モータ10の駆動を制御する。制御装置40は、回転検出装置30から出力された検出信号、例えば、A相パルス信号及びB相パルス信号の少なくとも一方に基づいて電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置を算出し、算出した回転位置に基づいてベルト112に生じる伸び量を算出する。なお、制御装置40は、電源供給部411から供給される電源電力によって起動される。
【0036】
制御装置40は、操作信号受信部41と、モータ駆動回路42と、クラッチ駆動制御部43と、検出信号入力部44と、メモリ45と、制御部46と、を含む。
【0037】
操作信号受信部41は、リモートコントローラ(以下、「リモコン」ともいう)412からの、例えば、カーテン材120の閉動作又は開動作のような操作命令を受け付け、この操作命令を制御部46へ出力する。
【0038】
モータ駆動回路42は、制御部46からの制御命令に基づいて電動モータ10の回転を駆動制御する。
【0039】
クラッチ駆動制御部43は、制御部46からの制御命令に基づいて電動モータ10の回転軸11と回転検出装置30の出力軸33とが連結又は連結解除されるように電磁クラッチ20の駆動を制御する。
【0040】
検出信号入力部44は、回転検出装置30の光センサ32が受光した信号を受信し、その信号をパルス信号として制御部46に出力する。
【0041】
メモリ45は、制御部46による電動遮蔽ユニット1の駆動に必要な種々のパラメータや演算結果等を記憶する。例えば、上記パラメータとして、カーテン材120が全閉位置に達するまでに必要な電動モータ10の回転軸11の目標回転数(目標全閉位置)、電動カーテンシステム100においてカーテン材120がストップ材に達した際にベルト112に生じる伸び量等がメモリ45に記憶される。メモリ45は、制御部46との間で上記パラメータの通信を行う。
【0042】
図7は、制御装置40の制御部46の構成を示す機能ブロック図である。制御部46は、原点設定部50と、駆動信号生成部60と、を含む。原点設定部50は、閉動作カウント部51と、負荷判定部52と、回転位置算出部53と、回転速度算出部54と、ベルト伸び量取得部55と、設定条件監視部56と、原点算出部57と、を含む。
【0043】
制御部46は、例えば、CPU、RAMやROM等の各種のメモリ、および外部の周辺機器と通信を行うための各種入出力回路等を備えたマイクロコントローラである。上述した原点設定部(閉動作カウント部51、負荷判定部52、回転位置算出部53、回転速度算出部54、ベルト伸び量取得部55、設定条件監視部56及び原点算出部57)50及び駆動信号生成部60は、上記マイクロコントローラが上記メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算を実行することによって実現される。
【0044】
原点設定部50は、電動カーテンシステム100の稼働時にカーテン材120が閉側Cで止まる全閉位置(目標停止位置)となる原点の設定・再設定が必要か否かを判定する。電動カーテンシステム100において、カーテン材120の停止位置は、理想的にはストップ材の位置である。しかしながら、電動モータ10の高性能、高出力化に伴い電動モータ10の駆動をストップ材の位置で停止させた場合であっても、電動モータ10からの出力がベルト112に伝達されることがある。そのため、先頭ランナー113aがストップ材に当接しているのでカーテン材120は移動しないものの、電動モータ10によりベルト112だけが回りベルト112が伸びることがある。ベルト112は、伸びた分だけ戻り、異音の発生原因となる。原点設定部50は、ベルト112の伸び量を考慮して、カーテン材120の閉動作においてベルト112に伸びが生じないようにカーテン材120の全閉位置(目標停止位置、原点)を算出・設定する。
【0045】
閉動作カウント部51は、操作信号受信部41から閉動作の指示を受けた場合、閉動作の指示の回数をカウント(カウントアップ)する。閉動作カウント部51によってカウントされた閉動作のカウント値は、閉動作カウント部51から操作信号受信部41からの閉動作の信号を受け付ける毎に設定条件監視部56に送信される。
【0046】
なお、閉動作カウント部51は、閉動作の指示があったカウント値を記憶することができる。また、閉動作カウント部51が記憶するカウント値は、RAMに保存されて電動カーテンシステム100の電源供給がなくなった場合には消失してもよく、又はROMに保存されて維持されるようになっていてもよい。
【0047】
図8は、過負荷状態の検知時における回転検出装置から出力される検出信号の一例を示す図である。負荷判定部52は、電動モータ10の負荷状態を判定する。負荷判定部52は、2つの相(A相、B相)におけるパルス信号のエッジが発生しない場合に、電動モータ10が過負荷状態にあると判定する。例えば、カーテン材120の閉動作時に、カーテン材120の先頭ランナー113aがストップ材に接触した後、閉方向(デクリメント(-))において、A相にはB相よりも後にエッジが発生している。A相のパルス信号に最後のエッジが発生してから所定の時間(X[ms])経過しても、閉方向においてA相、B相のいずれにもエッジが発生しない場合、負荷判定部52は、電動モータ10が過負荷状態にあると判定する。
【0048】
なお、負荷判定部52は、回転速度算出部54が算出した、電動モータ10の回転軸11及び回転検出装置30のスリット板31の回転速度と平均回転速度とに基づいて、電動モータ10の負荷状態を判定してもよい。この場合、負荷判定部52は、カーテン材120の移動速度、つまり、電動モータ10の回転軸11の回転速度が低下している場合、具体的には算出した最新の回転速度がこれまでの回転速度の積算に基づく平均移動速度を下回る場合に、電動モータ10が過負荷状態にあることを示す信号(以下、「過負荷信号」ともいう)を生成する。
【0049】
回転位置算出部53は、回転検出装置30において検出されるスリット板31を通過する光パルスのパルス信号に基づいて、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置(回転量、回転角度)を算出する。回転位置算出部53は、パルス信号に基づく回転位置を含む信号(以下、「位置信号」ともいう)をベルト伸び量取得部55に送信する。
【0050】
回転速度算出部54は、回転検出装置30から入力されたパルス信号の周期をカウントすることにより、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転速度(実測値)を算出する。回転速度を算出することにより、電動モータ10と同様の速度でカーテンレール110を移動する先頭ランナー113a、すなわちカーテン材120の移動速度も回転速度算出部54において算出される。回転速度算出部54は、算出したカーテン材120の移動速度を、所定の期間、例えば、カーテン材120の開閉動作の間、あるいは所定の移動量の間において積算してカーテン材120の平均移動速度を算出する。
【0051】
ベルト伸び量取得部55は、回転位置算出部53によって算出された及び/又は回転検出装置30の出力軸33回転位置に基づいて、ベルト112の伸び量を算出する。ベルト112の伸び量は、例えば、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の2つの回転位置の差分により算出される。具体的には、負荷判定部52によって電動モータ10が過負荷状態にあること判定された直後に、回転位置算出部53によって算出された回転位置(以下、「第1回転位置」ともいう)と、この第1回転位置の算出後、最初に算出された回転位置(以下、「第2回転位置」ともいう)とに基づいて差分を、つまり、ベルト伸び量取得部55がベルト112の伸び量を算出する。ベルト伸び量取得部55は、ベルト112の伸び量を回転検出装置30から送信されたパルス信号、具体的にはパルスのエッジに基づいて算出する。
【0052】
設定条件監視部56は、所定の条件に基づいて原点設定部50において原点設定処理を実行するか否かを判定する。設定条件監視部56は、制御装置40のメモリ45に格納されるカーテン材120の全閉状態における基準位置(全閉位置)を、設定する又は再設定するかを判定する。設定条件監視部56には、上記所定の条件が格納されている。ここで、「所定の条件」とは、例えば、「電動カーテンシステム100の初回の電源投入直後の閉動作」、「開閉動作中に電動モータ10の過負荷を検知した直後の閉動作」、「原点設定後、所定の回数後の閉動作」又は「カーテン材120が所定の速度を超えて移動した直後の閉動作」等の少なくとも1つの条件を満たすか否かである。
【0053】
設定条件監視部56が上記所定の条件のうち少なくとも1つの条件が満たされたと判定した場合、設定条件監視部56は、原点算出部57に対して原点の設定又は再設定が必要であること示す信号(設定信号)を送信する。上記所定の条件のいずれも満たさない場合、設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に対して操作信号の内容にしたがった動作を継続する信号(継続信号)を送信する。
【0054】
なお、原点設定部50は、設定条件監視部56において閉動作カウント部51、負荷判定部52、回転位置算出部53、回転速度算出部54及びベルト伸び量取得部55からの信号を互いに関連づけて設定条件を満たすか否かを監視するようになっている。
【0055】
原点算出部57は、電動カーテンシステム100におけるカーテン材120の目標全閉位置を回転検出装置30のパルス信号に基づいて算出する。原点算出部57は、例えば、回転位置算出部53によって算出された電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置に関するパルス信号を用いて目標全閉位置を新たに算出する。
【0056】
具体的には、原点算出部57は、電動モータ10の過負荷検知直後、回転位置算出部53において算出された回転軸11及び/又は出力軸33の回転位置と、ベルト伸び量取得部55において算出されたベルト112の伸び量に基づいてカーテン材120の目標全閉位置を、パルス信号を用いて算出する。原点算出部57は、新たなに算出した目標全閉位置に関する信号(原点信号)を駆動信号生成部60に送信する。
【0057】
駆動信号生成部60は、操作信号受信部41からの指示信号(開動作の指示信号)又は原点設定部50(設定条件監視部56又は原点算出部57)からの指示信号(閉動作継続の指示信号又は原点信号)に基づいて、電動カーテンシステム100の駆動に必要な信号をモータ駆動回路42及びクラッチ駆動制御部43に送信する。モータ駆動回路42及びクラッチ駆動制御部43はそれぞれ、受信した信号に基づいて電動モータ10及び電磁クラッチ20を駆動させる。
【0058】
次に、電動カーテンシステム100の制御装置40が実行する電動カーテンシステム100の駆動方法について説明する。
<実施の形態1>
図9は、実施の形態1に係る電動カーテンシステム100の駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。以下の説明において、電動カーテンシステム100の開閉操作のうち、閉動作、つまり、電動モータ10にデクリメントの方向に駆動し、カーテン材120を開側Oから閉側Cに移動させる操作があった場合の制御を例にして説明する。
【0059】
電動カーテンシステム100の制御装置40は、操作者によりリモコン412の操作があった場合に電動カーテンシステム100全体の駆動制御を開始(スタート)する。
【0060】
操作信号受信部41は、リモコン412からの操作信号を受信して、当該操作信号が閉動作の信号か否かを判定する(ステップS11)。操作信号が閉動作でない場合(ステップS11:NO)、操作信号受信部41は操作信号が開動作の信号であるか否かを判定する(ステップS12)。操作信号が開動作でない場合(ステップS12:NO)、操作信号受信部41は、閉動作又は開動作の操作信号を受信するまでステップS11を繰り返す。
【0061】
操作信号受信部41が閉動作の操作信号を受信した場合(ステップS11:YES)、操作信号受信部41から制御部46に閉動作開始の信号を送信する。閉動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、この閉動作が電源投入直後、初めての閉動作か否かを判定する。
【0062】
電動カーテンシステム100が電源投入直後の閉動作を実施する場合、カーテン材120の全閉位置は、設定されておらずメモリ45には目標全閉位置に関する情報が格納されていない。電源投入直後の閉動作か否かは、閉動作カウント部51における閉動作のカウントが電源投入直後のカウントか否かによって閉動作カウント部51によって判定される。例えば、閉動作カウント部51から設定条件監視部56に、初めて閉動作がカウントされた信号、例えばカウント値「1」の信号が送信された場合、設定条件監視部56は、全閉位置の設定が必要であると判定する(ステップS13:YES)。
【0063】
設定条件監視部56は、ベルト伸び量取得部55に、ベルト112の伸び量を算出するように指令信号を送信する。ベルト伸び量取得部55は、設定条件監視部56からベルト112の伸び量を算出する指令信号を受信するとベルト112の伸び量を、回転検出装置30からのパルス信号に基づいて算出する(ステップS14)。
【0064】
図10は、ベルト112の伸び量の算出方法を説明するためのフローチャートである。設定条件監視部56において、目標全閉位置の設定が必要であると判定された後、制御部46は、電動モータ10を駆動させて閉動作を開始する。閉動作の過程において設定条件監視部56は、電動モータ10が過負荷状態に至ったか否かを監視する(ステップS141)。負荷判定部52から過負荷信号が設定条件監視部56に送信されない場合(ステップS141:NO)には、設定条件監視部56は、負荷判定部52からの過負荷信号を受信するまで待つ。
【0065】
カーテン材120の引っ張るランナー113aがストップ材に当接して一応の全閉位置に到達すると、負荷判定部52から設定条件監視部56に過負荷信号が送信され、設定条件監視部56は、電動モータ10が過負荷状態にあると判定する(ステップS141:YES)。
【0066】
設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に対して電動モータ10の駆動停止を指示し、この指示に基づいて駆動信号生成部60は、モータ駆動回路42に対して電動モータ10の駆動を停止する信号(以下、「駆動停止信号」ともいう)を送信する。駆動停止信号を受信したモータ駆動回路42は、電動モータ10への出力を遮断する(ステップS142)。
【0067】
回転位置算出部53は、電動モータ10の出力が遮断されたとほぼ同時に、回転検出装置30から出力されたパルス信号に基づいて算出された電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置(第1回転位置)を算出する(ステップS143)。なお、電磁クラッチ20が閉鎖されている状態において、電動モータ10の回転軸11からの回転力は、電磁クラッチ20を介して回転検出装置30の出力軸33に伝達されるので、出力軸33の回転位置を算出することにより、電動モータ10の回転軸11の回転位置が算出されることになる。
【0068】
回転位置算出部53におけるステップS143の処理後であって、電動モータ10への出力遮断後、電動モータ10への出力遮断までの間に電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が惰性等により回転してベルト112が伸びる時間を確保するため、所定の時間、例えば、100msが経過したか否かを設定条件監視部56が含むタイマ(図示せず)において監視する(ステップS144)。なお、ベルト112が伸びる時間を確保することができれば、所定の時間は、100msに限定されない。
【0069】
電動モータ10への出力遮断後、100msを経過していなければ(ステップS144:NO)、100msの経過を待つ。電動モータ10への出力遮断後、100msを経過した場合には(ステップS144:YES)、設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に電磁クラッチ20の開放を指示し、この指示に基づいて設定条件監視部56は、クラッチ駆動制御部43に電磁クラッチ20を開放する信号(以下、「開放信号」ともいう)を送信する。開放信号を受信したクラッチ駆動制御部43は、電磁クラッチ20を開放する(ステップS145)。
【0070】
電磁クラッチ20の開放後、伸びたベルト112が元の状態に戻るための時間を確保するため、所定の時間、例えば、500msが経過したか否かを設定条件監視部56が含むタイマにおいて監視する(ステップS146)。電磁クラッチ20の開放後、500msを経過していなければ(ステップS146:NO)、500msの経過を待つ。なお、ベルト112が戻る時間を確保することができれば、所定の時間は、500msに限定されない。
【0071】
電磁クラッチ20の開放後、500msを経過した場合(ステップS146:YES)、回転検出装置30の出力軸33は、開方向にベルト112の伸び量だけ逆回転して、回転位置算出部53がその時点で、回転検出装置30から出力されたパルス信号に基づいて算出した回転検出装置30の出力軸33の回転位置(第2回転位置)を算出する(ステップS147)。
【0072】
ベルト伸び量取得部55は、第2回転位置に相当するパルス信号と、第1回転位置に相当するパルス信号とに基づいてベルト112の伸び量を算出する(ステップS148)。具体的には、第1回転位置に相当するパルス信号におけるエッジと、ベルト112の伸び量の分だけインクリメント方向(開方向)に戻った第2位置に相当するパルス信号のエッジと間のエッジ(差分R)に基づいて、ベルト伸び量取得部55は、ベルト112の伸び量を算出する。
【0073】
図11は、回転検出装置から出力される検出信号に基づいて、ベルト伸び量取得部55においてベルト112の伸び量の算出方法の一例について説明する図である。上述のようにA相のパルス信号に最後のエッジE1が発生してから所定の時間(X[ms])経過しても、閉方向においてA相、B相のいずれにもエッジが発生しない場合、負荷判定部52は、電動モータ10が過負荷状態にあると判定する。なお、回転位置算出部53は、最後に発生したA相のエッジE1が発生した後に第1回転位置を算出する。
【0074】
次いで、電磁クラッチ20の開放後にベルト112が伸び量だけ戻った位置において回転位置算出部53によって第2回転位置が算出され、この第2回転位置に相当するB相のパルス信号のエッジE2と、最後のエッジE1とのエッジの差分Rをベルト112の伸び量として算出される。
【0075】
ベルト伸び量取得部55において算出されたベルト112の伸び量、つまりエッジの差分Rは、例えば、ベルト伸び量取得部55が含むRAM又はROM等のメモリに記憶される(ステップS149)。
【0076】
原点算出部57は、ベルト112の伸び量に相当するエッジの差分Rを第1回転位置に相当するエッジE1に加算した第2回転位置に相当するエッジE2に、出力遮断後の電動モータ10の駆動を考慮して、所定のエッジ、例えば、3エッジだけ足した位置におけるエッジE3を最終的な目標全閉位置として算出し(ステップS15)、閉動作は終了する。最終的な目標全閉位置は、次回以降の閉動作の際に使用される。なお、エッジE2に足されるパルス信号のエッジの数は、例えば、カーテン材120が室外から室内への光の入射を防ぐことができる位置に停止すればよく、任意に設定可能である。
【0077】
なお、ステップS12において、操作信号受信部41が開動作の操作信号を受信した場合(ステップS12:YES)、操作信号受信部41から制御部46に開動作開始の信号を送信する。開動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、開動作を開始する。カーテン材120が所定の全開位置に達すると、制御装置40は、電動モータ10の電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS18)。
【0078】
また、ステップS13において、設定条件監視部56が閉動作カウント部51からカウント値「1」以外の信号を受信した場合、設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に閉動作を指示する信号を送信する(ステップS13:NO)。駆動信号生成部60は、メモリ45から既に記憶されている目標全閉位置に関する情報を読み出し、モータ駆動回路42及びクラッチ駆動制御部43それぞれに閉動作の指示信号を送信し、目標全閉位置に基づいて電動モータ10を駆動する。閉動作が開始されると、制御装置40、特に回転位置算出部53は、メモリ45に記憶された目標全閉位置に相当するパル信号に基づいて電動モータ10を駆動して、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したか否かを監視する(ステップS16)。
【0079】
目標全閉位置に達していない場合(ステップS16:NO)には、閉動作を維持する。回転位置算出部53が、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したと判定した場合(ステップS16:YES)、駆動信号生成部60からモータ駆動回路42に電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS17)。この場合、目標全閉位置は、上述のようにストッパ材に対して開側Oに位置するので、ベルト112の伸びの発生及び伸びによる異音発生を抑制することができる。
【0080】
<実施の形態2>
図12は、実施の形態2に係る電動カーテンシステム100の駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。以下の説明において、電動カーテンシステム100の開閉操作のうち、閉動作、つまり、電動モータ10にデクリメントの方向に駆動し、カーテン材120を開側Oから閉側Cに移動させる操作があった場合の制御を例にして説明する。
【0081】
電動カーテンシステム100の制御装置40は、操作者によるリモコン412の操作があった場合に電動カーテンシステム100全体の駆動制御を開始(スタート)する。
【0082】
操作信号受信部41は、リモコン412からの操作信号を受信して、当該操作信号が閉動作の信号か否かを判定する(ステップS21)。操作信号が閉動作でない場合(ステップS21:NO)、操作信号受信部41は操作信号が開動作の信号であるか否かを判定する(ステップS22)。操作信号が開動作でない場合(ステップS22:NO)、操作信号受信部41は、閉動作又は開動作の操作信号を受信するまでステップS21を繰り返す。
【0083】
操作信号受信部41が閉動作の操作信号を受信した場合(ステップS21:YES)、操作信号受信部41から制御部46に閉動作開始の信号を送信する。閉動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、閉動作を開始する。閉動作において、まず、制御部46の原点設定部50における設定条件監視部56が、カーテン材120の全閉位置(基準位置、原点)の設定が必要か否か、つまり、全閉位置の設定が必要となる条件が満たされたか否かを判定する(ステップS23)。
【0084】
設定条件監視部56は、例えば、「原点設定後、所定の回数後の閉動作(条件1)」、「開閉動作中に電動モータ10の過負荷を検知した直後の閉動作(条件2)」又は「カーテン材120が所定の速度を超えて移動した直後の閉動作(条件3)」のうちいずれか1つを満たすか否かを監視する。
【0085】
設定条件監視部56において、上記条件1~3のいずれも満たさないと判定された場合(ステップS23:NO)、制御装置40は、メモリ45から既に記憶されている目標全閉位置に関する情報を読み出し、モータ駆動回路42及びクラッチ駆動制御部43それぞれに閉動作の指示信号を送信し、目標全閉位置に基づいて電動モータ10を駆動する。
【0086】
閉動作が開始されると、回転位置算出部53は、メモリ45に記憶されている既存の目標全閉位置に相当するパル信号に基づいて電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したか否かを監視する(ステップS26)。目標全閉位置に達していない場合(ステップS26:NO)には、閉動作を維持する。回転位置算出部53が、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したと判定した場合(ステップS26:YES)、駆動信号生成部60からモータ駆動回路42に電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS27)。この場合、目標全閉位置は、上述のようにストッパ材に対して開側Oに位置するので、ベルト112の伸びの発生及び伸びによる異音発生を抑制することができる。
【0087】
なお、本実施の形態においては、条件1~3のいずれか1つを満たせばよいが、制御装置40の設定によっては、条件1~3の複数を満たした場合に原点設定部50が既存の目標全閉位置を補正するようにしてもよい。
【0088】
(条件1)
電動カーテンシステム100における閉動作が既存の目標全閉位置の設定後であって、閉動作の駆動の所定の回数後、例えば、10回目の閉動作の駆動である場合、閉動作カウント部51から設定条件監視部56に、例えば、カウント値「11」が送信される。この場合、設定条件監視部56は、既存の目標全閉位置の補正が必要であると判定する(ステップS23:YES)。
【0089】
(条件2)
負荷判定部52が閉動作中に電動モータ10が過負荷状態にあること判定した場合、つまり、カーテン材120が目標全閉位置に到達する前に電動モータ10が過負荷状態にあることを負荷判定部52が判定した場合、負荷判定部52は、設定条件監視部56に電動モータ10が過負荷状態にあることを示す信号を送信する。電動モータ10における過負荷が閉動作中の過負荷か否かについては、設定条件監視部56が負荷判定部52及び回転位置算出部53からのそれぞれの信号に基づいて判定する。
【0090】
設定条件監視部56が、負荷判定部52及び回転位置算出部53からの信号に基づいて、閉動作の過程において電動モータ10が過負荷状態に至ったことを判定した場合、設定条件監視部56は、既存の目標全閉位置の補正が必要であると判定する(ステップS23:YES)。
【0091】
(条件3)
回転速度算出部54は、閉動作中にカーテン材120の移動中の電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転速度を算出し、設定条件監視部56に回転速度に関する信号を送信している。例えば、人為的にカーテン材120が引っ張られ、設定条件監視部56に規定されている電動モータ10が所定の回転速度(例えば、カーテン材120の1.5secmに相当)を超えて回転した場合、設定条件監視部56は、閉動作中にカーテン材120が所定の速度を超えて移動したと判定し、既存の目標全閉位置の補正が必要であると判定する(ステップS23:YES)。
【0092】
設定条件監視部56が上記条件1~3のいずれか1つを満たしたと判定すると、設定条件監視部56は、ベルト伸び量取得部55に、ベルト112の伸び量を算出するように指令信号を送信する。
【0093】
ベルト伸び量取得部55は、設定条件監視部56からベルト112の伸び量を算出する指令信号を受信するとベルト112の伸び量を、回転検出装置30からのパルス信号に基づいて算出する(ステップS24)。
【0094】
図13は、制御装置40における原点の設定方法を説明するためのフローチャートである。設定条件監視部56において、目標全閉位置の設定が必要であると判定された後、電動モータ10が駆動制御されて閉動作を開始する(ステップS241)。次いで、設定条件監視部56は、電動モータ10が過負荷状態にあるか否かを監視する(ステップS242)。負荷判定部52から過負荷信号が設定条件監視部56に送信されない場合(ステップS241:NO)には閉動作が維持される。
【0095】
負荷判定部52は、電動モータ10が過負荷状態に至った否かを監視する(ステップS242)。カーテン材120がストップ材に当接してカーテン材120の現行の目標全閉位置に達すると、負荷判定部52から設定条件監視部56に過負荷信号が送信され、設定条件監視部56は、電動モータ10が過負荷状態にあると判定する(ステップS242:YES)。
【0096】
設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に対して電動モータ10の駆動停止を指示し、この指示に基づいて駆動信号生成部60は、モータ駆動回路42に対して電動モータ10の駆動を停止する信号(以下、「駆動停止信号」ともいう)を送信する。駆動停止信号を受信したモータ駆動回路42は、電動モータ10への出力を遮断する(ステップS243)。
【0097】
回転位置算出部53は、電動モータ10の出力が遮断されたとほぼ同時に、回転検出装置30から出力されたパルス信号に基づいて算出された電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置(第3回転位置)を算出する(ステップS244)。
【0098】
原点算出部57は、回転位置算出部53によって算出された第3回転位置に相当するパルス信号におけるエッジE31に、メモリ45に記憶されているベルト112の伸び量に相当する差分Rを加算(E31+R)して、カーテン材120の目標となる目標全閉位置を仮に設定出する(ステップS245)。
【0099】
原点算出部57は、仮の目標全閉位置に関する信号を駆動信号生成部60に送信する。この仮の目標全閉位置は、パルス信号において第3回転位置に相当するパルス信号のエッジよりもインクリメント方向(開方向)に位置している(図11参照)。駆動信号生成部60は、電動モータ10が過負荷状態に至った際に発生することが想定される差分Rだけ、電動モータ10を第3回転位置から開方向に駆動(逆回転)するようにモータ駆動回路42に指示する。これにより開動作が実施される(ステップS246)。
これにより、
【0100】
回転位置算出部53は、仮の目標全閉位置に相当するパルス信号に基づいて電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が仮の目標全閉位置に相当する回転位置に到達したか否かを監視する(ステップS247)。仮の目標全閉位置に達していない場合(ステップS247:NO)には、開動作を維持する。回転位置算出部53が、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が仮の目標全閉位置に相当する回転位置に到達したと判定した場合(ステップS247:YES)、駆動信号生成部60からモータ駆動回路42に電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS248)。
【0101】
回転位置算出部53におけるステップS248の処理後であって、電動モータ10への出力遮断後、所定の時間、例えば、100msが経過したか否かを設定条件監視部56が含むタイマ(図示せず)において監視する(ステップS249)。
【0102】
電動モータ10への出力遮断後、100msを経過していなければ(ステップS249:NO)、100msの経過を待つ。電動モータ10への出力遮断後、100msを経過した場合には(ステップS249:YES)、設定条件監視部56は、駆動信号生成部60に電磁クラッチ20の開放を指示し、この指示に基づいて設定条件監視部56は、クラッチ駆動制御部43に電磁クラッチ20を開放する信号(以下、「開放信号」ともいう)を送信する。開放信号を受信したクラッチ駆動制御部43は、電磁クラッチ20を開放する(ステップS250)。
【0103】
電磁クラッチ20の開放後、所定の時間、例えば、500msが経過したか否かを設定条件監視部56が含むタイマにおいて監視する(ステップS251)。電磁クラッチ20の開放後、500msを経過していなければ(ステップS251:NO)、500msの経過を待つ。なお、所定の時間は、開動作により開側へベルト112が伸びて、所望の位置より開側Oに停止位置がずれた場合に、停止位置のずれが戻るために確保された時間である。この時間を確保することにより精度の高い全閉位置を認識することができるようになる。
【0104】
電磁クラッチ20の開放後、500msを経過した場合(ステップS251:YES)、回転位置算出部53がその時点で、回転検出装置30から出力されたパルス信号に基づいて算出した回転検出装置30の出力軸33の回転位置(第4回転位置)を算出する(ステップS252)。
【0105】
算出された第4回転位置は、ほぼカーテン材120がストップ材に当接する位置又は少しインクリメント方向(開方向)において手前ではあるが、例えば、先頭ランナー113aがストップ材に当接した際の衝突音の発生を確実に回避するために、図11に示すように、最終的な目標全閉位置は、第4回転位置に相当するパルスに基づくエッジE41に、インクリメント方向(開方向)に、出力遮断後の電動モータ10の駆動を考慮して所定のエッジだけ足した位置におけるエッジE51を最終的な目標全閉位置として算出する(ステップS253)。なお、エッジE41に足されるエッジの数は、例えば、カーテン材120が室外から室内への光の入射を防ぐことができる位置に停止すればよく、任意に設定可能である。
【0106】
原点算出部57は、算出した最終的な目標全閉位置をメモリ45に送信し、閉動作は終了する。(ステップS254)。メモリ45に記憶された新たな目標全閉位置は、次回以降の閉動作の際に使用される。
【0107】
なお、ステップS22において、操作信号受信部41が開動作の操作信号を受信した場合(ステップS22:YES)、操作信号受信部41から制御部46に開動作開始の信号を送信する。開動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、開動作を開始する。カーテン材120が所定の全開位置に達すると、制御装置40は、電動モータ10の電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS28)。
【0108】
なお、本実施の形態において、ステップS246において算出された仮の目標全閉位置を最終的な目標全閉位置としてもよい。この場合、制御装置40においては、ステップS246の処理後、ステップS26の処理に進むように設定されていればよい。
【0109】
また、本実施の形態において、ステップS252において算出された第4回転位置を最終的な目標全閉位置としてもよい。この場合、制御装置40においては、ステップS252の処理後、ステップS26の処理に進むように設定されていればよい。
【0110】
<実施の形態3>
図14は、実施の形態3に係る電動カーテンシステム100の駆動方法及び制御プログラムを説明するためのフローチャートである。以下の説明において、電動カーテンシステム100の開閉操作のうち、閉動作、つまり、カーテン材120をランナー113とともに開側Oから閉側Cに移動させる操作があった場合の制御を例にして説明する。
【0111】
電動カーテンシステム100の制御装置40は、操作者によりリモコン412の操作があった場合に電動カーテンシステム100全体の駆動制御を開始(スタート)する。
【0112】
操作信号受信部41は、リモコン412からの操作信号を受信して、当該操作信号が閉動作の信号か否かを判定する(ステップS31)。操作信号が閉動作でない場合(ステップS31:NO)、操作信号受信部41は操作信号が開動作の信号であるか否かを判定する(ステップS32)。操作信号が開動作でない場合(ステップS32:NO)、操作信号受信部41は、閉動作又は開動作の操作信号を受信するまでステップS31を繰り返す。
【0113】
操作信号受信部41が閉動作の操作信号を受信した場合(ステップS31:YES)、操作信号受信部41から制御部46に閉動作開始の信号を送信する。閉動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、閉動作を開始する(ステップS33)。
【0114】
閉動作において、まず、制御部46の原点設定部50における設定条件監視部56が、カーテン材120の全閉位置(基準位置、原点)の設定が必要か否か、つまり、全閉位置の設定が必要となる条件が満たされたか否かを判定する(ステップS34)。
【0115】
設定条件監視部56が下記条件1~4のいずれか1つを満たしたと判定した場合、設定条件監視部56は、原点算出部57に、ベルト112の伸び量(エッジの差分R)に基づいて原点を新たに又は再度設定するように指令信号を送信する。この指令信号を受信した原点算出部57は、新たな目標全閉位置を設定する。
【0116】
設定条件監視部56において、上記条件1~4のいずれも満たさないと判定された場合(ステップS34:NO)、制御装置40は、メモリ45から既に記憶されている目標全閉位置に関する情報を読み出し、モータ駆動回路42及びクラッチ駆動制御部43それぞれに閉動作の指示信号を送信し、目標全閉位置に基づいて電動モータ10を駆動する。
【0117】
閉動作が開始されると、回転位置算出部53は、メモリ45に記憶されている既存の目標全閉位置に相当するパル信号に基づいて電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したか否かを監視する(ステップS37)。目標全閉位置に達していない場合(ステップS37:NO)には閉動作が維持される。回転位置算出部53が、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33が目標全閉位置に相当する回転位置に到達したと判定した場合(ステップS37:YES)、駆動信号生成部60からモータ駆動回路42に電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS38)。この場合、目標全閉位置は、上述のようにストッパ材に対して開側Oに位置するので、ベルト112の伸びの発生及び伸びによる異音発生を抑制することができる。
【0118】
なお、本実施の形態においては、条件1~4のいずれか1つを満たせばよいが、制御装置40の設定によっては、条件1~4の複数を満たした場合に原点設定部50が基本位置を設定・補正するようにしてもよい。
【0119】
(条件1)
電動カーテンシステム100が電源投入直後の閉動作を実施する場合、カーテン材120の目標全閉位置は、設定されておらずメモリ45には目標全閉位置に関する情報が格納されていない。電源投入直後の閉動作か否かは、閉動作カウント部51における閉動作のカウントが電源投入直後のカウントか否かによって閉動作カウント部51によって判定される。例えば、閉動作カウント部51から設定条件監視部56に、初めて閉動作がカウントされた信号、例えばカウント値「1」の信号が送信された場合、設定条件監視部56は、全閉位置の設定が必要であると判定する(ステップS34:YES)。
【0120】
(条件2)
電動カーテンシステム100における閉動作が既存の目標全閉位置の設定後であって、閉動作の駆動の所定の回数後、例えば、10回目の閉動作の駆動である場合、閉動作カウント部51から設定条件監視部56に、例えば、カウント値「11」が送信される。この場合、設定条件監視部56は、目標全閉位置の設定が必要であると判定する(ステップS34:YES)。
【0121】
(条件3)
負荷判定部52が閉動作中に電動モータ10が過負荷状態にあること判定した場合、つまり、カーテン材120が目標全閉位置に到達する前に電動モータ10が過負荷状態にあることを負荷判定部52が判定した場合、負荷判定部52は、設定条件監視部56に電動モータ10が過負荷状態にあることを示す信号を送信する。電動モータ10における過負荷が閉動作中の過負荷か否かについては、設定条件監視部56が負荷判定部52及び回転位置算出部53からのそれぞれの信号に基づいて判定する。
【0122】
設定条件監視部56が、負荷判定部52及び回転位置算出部53からの信号に基づいて、閉動作の過程において電動モータ10が過負荷状態に至ったことを判定した場合、設定条件監視部56は、目標全閉位置の設定が必要であると判定する(ステップS34:YES)。
【0123】
(条件4)
回転速度算出部54は、閉動作中にカーテン材120の移動中の電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転速度を算出し、設定条件監視部56に回転速度に関する信号を送信している。例えば、人為的にカーテン材120が引っ張られ、設定条件監視部56に規定されている電動モータ10が所定の回転速度(例えば、カーテン材120の1.5secmに相当)を超えて回転した場合、設定条件監視部56は、閉動作中にカーテン材120が所定の速度を超えて移動したと判定し、目標全閉位置の設定が必要であると判定する(ステップS34:YES)。
【0124】
設定条件監視部56が上記条件1~4のいずれか1つを満たしたと判定すると、設定条件監視部56は、ベルト伸び量取得部55に、ベルト112の伸び量を算出するように指令信号を送信する。
【0125】
ベルト伸び量取得部55は、設定条件監視部56からベルト112の伸び量を算出する指令信号を受信するとベルト112の伸び量を、回転検出装置30からのパルス信号に基づいて算出する(ステップS35)。ステップS35における処理は、実施の形態1におけるステップS14における処理と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0126】
ベルト112の伸び量を算出した後、原点設定部50は、原点算出部57に、ベルト112の伸び量(エッジの差分R)に基づいて原点を設定(補正)するように指令信号を送信する。この指令信号を受信した原点算出部57は、新たな目標全閉位置を設定する(ステップS36)。新たに設定された目標全開位置は、メモリ45に記憶され、閉動作は終了する。ステップS36における処理は、実施の形態2におけるステップS24における処理と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0127】
なお、ステップS32において、操作信号受信部41が開動作の操作信号を受信した場合(ステップS32:YES)、操作信号受信部41から制御部46に開動作開始の信号を送信する。開動作の操作開始の信号を受信した制御部46は、開動作を開始する。カーテン材120が所定の全開位置に達すると、制御装置40は、電動モータ10の電動モータ10の駆動を停止するように指示する(ステップS39)。
【0128】
本発明の制御装置40が実施する上記の実施の形態1,2,3においてはいずれも、閉動作における目標全閉位置は、ベルト112の伸び量を考慮して設定されている。したがって、閉動作においては、目標全閉位置において、ランナー113aがストップ材に当接して電動モータ10のベルト112が伸びること及び異音が発生することを抑制することができる。これにより、閉動作の度にランナー113がストップ材に当接して電動モータ10が過負荷状態に至る状態を回避し、目標全閉位置を何度も設定し直す必要がなくなる。
【0129】
また、実施の形態2においては、ベルト112の伸び量だけ電動モータ10を逆回転させることによりベルト112の伸び量を吸収して、電動モータ10の出力を遮断しかつ電磁クラッチ20を開放するので、ベルト112がカーテンレール110内部に接触して異音が発生することを効果的に抑えることができる。
【0130】
また、ベルト112の伸び量は、電動モータ10の回転軸11及び/又は回転検出装置30の出力軸33の回転位置に基づいて算出するので、正確に算出することができる。
【0131】
また、目標全閉位置は、ストップ材ではなくベルト112の伸び量及び電動モータ10の回転位置に基づいて算出されるので異音抑制をより効果的に実施することができる。
また、目標全閉位置は、ベルト112の伸び量に加えて所定の量だけ開方向に設定されているため、例えば、ストップ材に先頭ランナー113aが衝突することを確実に回避することができる。
【0132】
また、制御装置40は、所定の条件に基づいて目標全閉位置を設定するので、定期的なメインテナンスが実施され、電動カーテンシステム100の使用につれて変化する状況に適切した目標全閉位置を設定することができる。
【0133】
また、目標全閉位置は、電動モータ10の回転位置に対応するパルス信号に基づいて算出されるので、極めて正確に算出することができる。
【0134】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態1~3に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態1~3における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0135】
1・・・電動遮蔽ユニット、10・・・電動モータ、11・・・回転軸、20・・・電磁クラッチ、30・・・回転検出装置、31・・・スリット板、32・・・光センサ、33・・・出力軸、40・・・制御装置、41・・・操作信号受信部、42・・・モータ駆動回路、43・・・クラッチ駆動制御部、44・・・検出信号入力部、45・・・メモリ、46・・・制御部、50・・・原点設定部、51・・・閉動作カウント部、52・・・負荷判定部、53・・・回転位置算出部、54・・・回転速度算出部、55・・・ベルト伸び量取得部、56・・・設定条件監視部、57・・・原点算出部、60・・・駆動信号生成部、100・・・電動カーテンシステム、110・・・カーテンレール、111a,111b・・・プーリ、112・・・ベルト、113・・・ランナー、113a・・・先頭ランナー、114・・・吊下具、120・・・カーテン材(遮蔽部材)、411・・・電源供給部、412・・・リモコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14