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特許7489312モータ固定子のリード線絶縁構造及び絶縁方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】モータ固定子のリード線絶縁構造及び絶縁方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20240516BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020216799
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102201
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 泰志
(72)【発明者】
【氏名】中武 耕二
(72)【発明者】
【氏名】依田 昌悟
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-278636(JP,A)
【文献】実開平02-083644(JP,U)
【文献】実開昭56-078308(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース部が内周面側に突出した環状の固定子コアに、前記ティース部に絶縁材料で形成されたインシュレータを装着し、前記複数のティース部に前記インシュレータを介して巻回した固定子コイルとリード線とを結線し絶縁する構造であって、
前記インシュレータに、前記固定子コイルと前記リード線との結線部を収容する結線収容部を形成し
前記インシュレータは、内外周側にそれぞれ縁部を有し、前記インシュレータの内周側の前記縁部において前記結線収容部を架橋して固定する結線収容部固定部を有する
ことを特徴とするモータ固定子のリード線絶縁構造。
【請求項2】
前記インシュレータは、ヒンジ部を介して前記結線収容部を有することを特徴とする
請求項1に記載のモータ固定子のリード線絶縁構造。
【請求項3】
前記結線収容部は前記結線収容部の少なくとも一面に前記結線部を挿入するための穴部を有することを特徴とする
請求項1又は2に記載のモータ固定子のリード線絶縁構造。
【請求項4】
前記結線収容部は、
前記インシュレータと一体成型されたものである
請求項1~3のいずれか1項に記載のモータ固定子のリード線絶縁構造。
【請求項5】
複数のティース部を内周面側に突出形成した環状の固定子コアに、前記ティース部に絶縁材料で形成されたインシュレータを装着し、前記複数のティース部に前記インシュレータを介して巻回した固定子コイルとリード線とを結線し絶縁する方法であって、
前記インシュレータと、前記固定子コイルとリード線との結線部を収容する結線収容部を一体成型する工程と、
前記結線収容部を、前記固定子コイルを巻回する時に、隣接する前記複数のティース部間に形成されたスロットの軸方向端部の位置から前記固定子コイルの巻回時の移動線を妨げない位置に退避させる工程と、
前記固定子コイルを巻回する工程と、
前記固定子コイルと前記リード線の端部同士を絡げて結線部を形成する工程と、
前記結線収容部を、前記スロットの軸方向端部の位置に復帰させるように折り込み、架橋して固定する工程と、
前記固定子コアのスロット部内に前記結線収容部が折り込み固定された際に表面側となる面に形成されている開口から前記固定子コイルと前記リード線とを絡げた結線部を挿入して収容する工程と
を有するリード線絶縁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ固定子のリード線絶縁技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータの固定子には、各相のコイルの一端を結線したコイル結線部が設けられる。コイル結線部は、絶縁を確保した状態で固定子に固定される。コイル結線部の固定方法として、固定子のインシュレータに設けた収容空間に収容し接着剤を用いて固定する方法が知られている。
【0003】
例えば、本願の図8に示すように、固定子に樹脂製のインシュレータ30を装着し(図8(a))、巻線されたマグネットワイヤー(コイル)20とリード線15(より詳細にはリード芯線15a、以下、「リード線15」と称する。)を結線したコイル結線部(結線部)21を形成する際、リード線15にマグネットワイヤー(コイル)20aを巻き付け、はんだ付けした後に(図8(b))、熱収縮チューブ101を被せて収縮させて絶縁し(図8(c))、隣接する複数のマグネットワイヤー(コイル)巻回部の間に生じる隙間111に挿入し、その後ワニス等接着性材料を注入、塗布等を行って固定している構造(図8(d))が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】無し
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなモータ固定子のリード線絶縁技術においては、はんだ付けを行う際に生じやすい、角のようにはんだ17が立った部分が生じた態様、いわゆる「つらら状部」等が形成されてしまい、この「つらら状部」等が熱収縮チューブを傷つけて破損し、絶縁不良部が形成されてしまうおそれがある。
【0006】
また、スロット部に差し込んだコイル結線部を固定するためのワニス処理等を行なった後の乾燥工程に時間を要し、製造時間や工数を増加させこととなる。
さらに、巻線の占積率や巻回状態によっては、隣接する複数のマグネットワイヤー(コイル)巻回部の間に生じる隙間を十分に確保できない場合や、コイル結線部の挿入が簡単ではない形状の隙間となってしまう場合もあり、コイル結線部を挿入することが困難となる場合もある。
【0007】
また、絶縁のために熱収縮チューブが必要となるため、部品点数が多くなり、また工数も増加する場合もある。
本発明は、このような様々な課題を解決するためのリード絶縁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、
複数のティース部が内周面側に突出した環状の固定子コアに、前記ティース部に絶縁材料で形成されたインシュレータを装着し、前記複数のティース部に前記インシュレータを介して巻回した固定子コイルとリード線とを結線し絶縁する構造であって、
前記インシュレータに、前記固定子コイルと前記リード線との結線部を収容する結線収容部を形成したことを特徴とするモータ固定子のリード線絶縁構造が提供される。
【0009】
前記インシュレータは、ヒンジ部を介して前記結線収容部を有することが好ましい。
【0010】
前記結線収容部は前記結線収容部の少なくとも一面に前記結線部を挿入するための穴部を有することが好ましい。
【0011】
前記インシュレータは、内外周側にそれぞれ縁部を有し、前記インシュレータの内周側の前記縁部において前記結線収容部をと固定する結線収容部固定部を有することが好ましい。
【0012】
前記結線収容部材は、前記インシュレータと一体成型されたものであることが好ましい。
【0013】
本発明の他の観点によれば、複数のティース部を内周面側に突出形成した環状の固定子コアに、前記ティース部に絶縁材料で形成されたインシュレータを装着し、前記複数のティース部に前記インシュレータを介して巻回した固定子コイルとリード線とを結線し絶縁する方法であって、
前記インシュレータと、前記固定子コイルとリード線との結線部を収容する結線収容部を一体成型する工程と、
前記結線収容部を、前記固定子コイルを巻回する時に、前記スロットの軸方向端部の位置から前記固定子コイルの巻回時の移動線を妨げない位置に退避させる工程と、
前記固定子コイルを巻回する工程と、
前記固定子コイルと前記リード線の端部同士を絡げて結線部を形成する工程と、
前記結線収容部を、前記スロットの軸方向端部の位置に復帰させるように折り込み固定する工程と、
前記固定子コアのスロット部内に前記結線収容部が折り込み固定された際に表面側となる面に形成されている開口から前記固定子コイルと前記リード線とを絡げた結線部を挿入して収容する工程と
を有するリード線絶縁方法が提供される。
なお、少なくとも、前記固定子コイルと前記リード線の端部同士を絡げて結線部を形成する工程と、前記結線収容部を、前記スロットの軸方向端部の位置に復帰させるように折り込み固定する工程との順序は問うものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前述した絶縁不良部が形成されてしまうこと、製造時間や工数を増加させること、コイル結線部を挿入することが困難となること、部品点数が多くなること、などの課題を克服しつつ、従来同様に巻線作業を行うことができるリード線絶縁構造を提供することを目的とする。
また、本発明によれば、インシュレータの内外周間の一部が結線収容部により架橋されて固定されるので、インシュレータの剛性を強化するだけでなく、巻回されたコイルのモータの軸方向のずれを防ぐことができるという顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態によるモータ固定子のリード線絶縁構造を適用することができるモータの一例を示す斜視図である。図1(a)は結線収容部を固定子コイルの巻回時の移動線を妨げない位置に退避させて固定子コイルを巻回した際の図であり、図1(b)は、結線収容部をスロットの軸方向端部の位置に復帰させるように折り込み固定し、リード線の絶縁を行った後の図である。
図2】本実施の形態のモータ固定子の分解斜視図である。
図3】インシュレータの構造の一例を示す斜視図である。
図4】インシュレータの構造の一例を示す斜視図である。
図5】インシュレータの構造の一例を示す斜視図であり、モータ固定子のリード線絶縁工程を示す図である。
図6】本実施の形態のリード線絶縁工程の流れを示すフローチャート図である。
図7】本実施の形態のリード線絶縁工程と従来のリード線絶縁工程を比較して示すフローチャート図である。
図8】特許文献1に記載の従来の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書においては、モータの回転軸線Cの向く方向をZ軸として定義し、図上、Z軸方向における上下方向を、特に断りのない限り、それぞれ「上」、「下」と観念するものと定義する。なお、これは、説明上の便宜を図るためのものであり、モータ等の配置方向それ自体を限定するものではない。
また、特に断りのない限り、以下の説明においては、Z軸方向に延びる回転軸線Cを中心とする径方向を単に「径方向」と称し、回転軸線Cを中心とする任意の円の形成する円周方向、すなわち、回転軸線Cの軸周り(θZ方向)を単に「周方向」と呼び、Z軸方向を、「上下方向」、「Z軸方向」、又は「軸方向」と称する。
以下に本発明の一実施の形態によるモータ固定子のリード線絶縁技術について図面を参照しながら説明を行う。
【0017】
図1は、本実施の形態によるモータ固定子のリード線絶縁構造を適用することができるモータの一例を示す斜視図である。図1(a)は後述する結線収容部を固定子コイルの巻回時の移動線を妨げない位置に退避させて固定子コイルを巻回した際の図であり、図1(b)は、結線収容部をスロットの軸方向端部の位置に復帰させるように折り込み固定し、リード線の絶縁を行った後の図である。図2は、本実施の形態のモータ固定子の分解斜視図である。
【0018】
また、図3から図5までは、本実施の形態のモータ固定子に適用するインシュレータの構造の一例を示す斜視図であり、モータ固定子のリード線絶縁工程を順に示す図である。また、図6は、本実施の形態のリード線絶縁工程の流れを示すフローチャート図であり。図7は、本実施の形態のリード線絶縁工程と従来のリード線絶縁工程を比較して示すフローチャート図である。
【0019】
図1から3までに示すように、本実施の形態によるモータAは、略円筒状のモータ固定子1と、モータ固定子1の径方向内側に配置される回転子2とを有する。回転子2は、回転軸81を有している。
【0020】
回転子2は、軸方向(Z軸方向)に延びる回転軸線Cを中心とする円柱形状を有する。回転軸81は図示しないベアリングによって軸回りに回転可能に支持されている。
回転子コア82は、珪素鋼板を積層してなる積層体であり、回転軸81を軸回りに囲んで、回転軸81に固定されている。
回転子マグネット83は、回転子コア82の軸周りに沿った外側面に固定されている。
【0021】
図1および図2に示すように、モータ固定子1は、環状の固定子コア(鉄芯コア)10と、上側インシュレータ30と、下側インシュレータ50と、スロット用インシュレータ60と、固定子コイル20とを備える。
固定子コア10は、回転軸線Cと同心の円筒状のヨーク部12と、ヨーク部12から径方向内側に延びる複数のティース部11と、を有する。
【0022】
固定子コア10には、複数のスロット13が設けられている。スロット13は、周方向に隣接する2つのティース部11の側面(周方向の接線と交差する面)と、ヨーク部12の内周面とにより囲まれた空隙を含む。かかるスロットの内部にはスロット用インシュレータ60が格納されている。
【0023】
複数のティース部11は、周方向に隣接して均等に配置され、環状の固定子コア10の内周側に突出している。それぞれのティース部11には、上側インシュレータ30、下側インシュレータ50およびスロット用インシュレータ60が取り付けられるが、固定子コア10に巻回される固定子コイル20は、スロット用インシュレータ60を介して、すなわちスロット用インシュレータ60の周りに巻き付けられている。
各ティース部11は、ヨーク部12から内周方向に延びるティース基部11aと、ティース基部11aの先端の内周側に位置するティース先端部11bと、を有する。
【0024】
本実施の形態は、上側及び下側のインシュレータ30、50のいずれに施しても差し支えないが、以下の説明では、上側インシュレータ30について施した例を詳細に説明する。上側インシュレータ30は、外周側に設けられた外壁部31と、外壁部31から内周側に突出して延在する複数の突出部32と、突出部32の内周側の先端に形成された先端壁部32aと、を有する。上側インシュレータ30の複数のティース部11に上側インシュレータ30を介して固定子コア10に巻回した固定子コイル20を有している。より詳細には、固定子コイル20には、上側インシュレータ30の突出部32に巻線20aが巻き付けられることとなる。また、本実施の形態では、インシュレータが3分割されている例を示したが、本発明はインシュレータの構造には依存せず、例えば、インシュレータが、上側インシュレータ30とスロット用インシュレータ60の半分が一体となったインシュレータ構造体と、下側インシュレータ50とスロット用インシュレータ60の残部が一体となったインシュレータ構造体とからなるように二分割されたインシュレータ構造体を一体としてインシュレータ全体を構成するような形態でも良い。また、そこで、スロット用インシュレータ60をさらに分割するなど任意のインシュレータ構造を採用可能である。
【0025】
本実施の形態においては、上側インシュレータ30については、突出部32において、外壁部31から先端壁部32aとの間に複数巻として巻線20aが巻き付けられて固定子コイル20が形成されている。
なお、巻線20aは、上側インシュレータ30と少なくともスロット用インシュレータ60を固定子コア10に挿入してから、ノズルなどを用いて各スロット13に巻いていくことができる。
図5に示すように、2つの固定子コイル20の絶縁被覆を取り去った部分とリード線の芯線15aは、リード線の芯線15aに固定子コイル20の巻線20aが巻きつけられるように結線されて、はんだ17により固定された結線部21が形成されている。なお、固定子コイル20の結線構成及び並列に接続する固定子コイル20の数は、適宜選択可能である。また、単相のものであるか3相のものであるか、相数は問わず、どのような場合であっても、同様に結線部21を構成できる。
【0026】
(収容部の構造)
以下に、結線収容穴71a、71bからなる結線収容部61の構造について説明する。
結線収容部61は、上側インシュレータ30の外壁部31の任意箇所に複数設けられている。図3図5まででは、4つの結線収容部61が4箇所にそれぞれ設けられている。結線収容部61を設ける箇所は、モータの構成に依存するが、リード線15と固定子コイル20の巻線20aとから結線部を設けやすいところに形成すれば足りる。
【0027】
結線収容部61は、巻線20aを巻回して固定子コイル20を形成する時に、スロット13の軸方向端部の位置から巻線20aの巻回時の移動線を妨げない位置に退避し、巻線20aを巻回した後に、スロット13の軸方向端部の位置に復帰するように折り込み固定されるヒンジ部65を介して上側インシュレータ30の外周縁部に取り付けられるよう構成されている。
【0028】
結線収容部61は、上側インシュレータ30と一体成型により形成することができる。例えば、結線収容部61は、外壁部31に設けられ、上側インシュレータ30の外壁部31からその内側に折り畳み可能に形成されたヒンジ部65を有する板状部材63と、板状部材63の回動方向に設けられた筒状部67とを有している。板状部材63は、先端壁部32aに形成された切り欠きに係合させて固定することができる結線収容部固定部63aを有している。
【0029】
上記の構成において、上側インシュレータ30は、内外周側にそれぞれ縁部を有している。そして、結線収容部61を折り込み固定する際に、結線収容部61は、結線収容部固定部63aにより、上側インシュレータ30の内周側の縁部において結線収容部61と固定される。
【0030】
筒状部67は、板状部材63に形成された例えば2つの開口部から続く2つの結線収容穴71a、71bを有している。結線収容穴71a、71bに、結線部21を挿入することができる。結線部21を結線収容穴71a、71b内において接着剤などで固定しても良い。
また、結線収容穴71a、71b内の構造は任意であり、結線部21の径よりわずかに幅狭の穴として機械的に結線部21に脱着抵抗が付与される形態や、光硬化型樹脂を予め充填しておくなど、結線部21の抜けを押さえるための手段は既知の固定手段を任意に使用することができる。
尚、結線収容部61の上面、下面、側面の少なくともいずれか一面に 結線部を挿入するための結線収容穴71a、71bを有していれば良い。
【0031】
(リード線の絶縁構造の製造工程)
図6は、本実施の形態のリード線絶縁工程の流れを示すフローチャート図である。
これは上記のリード線の絶縁構造の製造方法の一例である。
1)結線収容部61をスロット13の軸方向端部の位置から巻線20aの巻回時の移動線及び巻回装置の腕等を妨げない位置に退避させる(ステップS1)。
2)この状態で、常法により、スロット用インシュレータ60上に巻線20aを巻回して固定子コイル20を形成する(ステップS2)。
3)次ステップとの順序は問わないが、この段階で、巻線20aの絶縁被覆を取り去った部分とリード線の芯線15aを、リード線の芯線15aに巻線が20a巻きつけられるように結線して、結線部21を形成する(ステップS3)。併せて、半田づけを行っても良い。
4)結線収容部61を、スロット13の軸方向端部の位置に復帰させるようにヒンジ部65を曲げて折り込み、上側インシュレータ30の内周側の縁部において結線収容部61を固定(架橋)する(ステップS4)。
5)前記固定子コア10のスロット13間に位置する結線収容部61の表面側に形成されている2つの結線収容穴71a、71bに固定子コイル20の巻線20aとリード線とを絡げた結線部21を挿入して収容する(ステップS5)。
6)結線収容穴71a、71b内に結線部21を接着剤等により固定する(ステップS6)。
【0032】
図7は、本実施の形態によるモータ固定子のリード線絶縁方法の工程(図7(b))と従来のリード絶縁方法(図7(a))とを比較して示す工程図である。
【0033】
従来の絶縁方法では、巻線工程(ステップS101)、リード線15に固定子コイル20の巻線20aの端部を絡げる工程(ステップS102)、リード線15に固定子コイルの端部を巻き付け、はんだ付けする工程(ステップS103)、熱収縮チューブを被せる工程(ステップS104)、熱収縮チューブ収縮工程(ステップS105)、スロット間にリード線15を挿入する工程(ステップS106)、ワニス塗布、ふき取り工程(ステップS107)、乾燥工程(ステップS108)を経て、完成する(ステップS109)。
【0034】
一方、本実施の形態では、ステップS101~S103を経て、結線収容部61を構成する樹脂部品を折り込んで、結線収容穴71a、71bにリード線15を挿入する工程(ステップS111)だけで、リード線絶縁工程を完成させることができる(ステップS109)。
【0035】
上記の構成及び方法によれば、結線部21の固定が容易である。また、チューブなどではなくインシュレータを形成する樹脂材料に設けられた穴部内において結線部21を固定するため、絶縁不良などが生じにくい。
さらに、結線収容穴71a、71bをインシュレータ部品と一体成型するため、部品の点数が減少するという利点がある。
【0036】
なお、本実施形態では、コイル巻線20aとリード線15とを撚り合わせて絡げた例を示しているが、結線部21の構造は必ずしもこの構造に限定されない。
本実施の形態によれば、インシュレータと一体型の樹脂部品を成形し、絶縁に用いていた熱収縮チューブの代わりに絶縁部品として使用する熱収縮チューブのように破れる心配がなく、インシュレータと一体になっているため、内側に折り込んでスロット部にはめ込むだけで結線部とインシュレータの固定が可能となるワニス処理が不要になるため、作業時間・工数を大幅に短縮できる。
【0037】
また、上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
さらに、上記の実施の形態において、結線収容部は、上側インシュレータの外周と内周とを連結する構造となるので、インシュレータの剛性を高めることができるとともに、固定子コイル20の軸方向ずれを低減させることもできる。
【0038】
例えば、本実施の形態では、上側インシュレータに結線収容部を設けた例を示したが、下側インシュレータに設けても良いし、両側に設けても良い。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、モータ固定子のリード線絶縁構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
A モータ
C 回転軸線
Z 軸方向(回転軸線Cの向く方向)
1 モータ固定子
2 回転子
10 固定子コア
11 ティース部
12 ヨーク部
13 スロット
15 リード線
15a リード芯線
17 はんだ
20 固定子コイル
20a 巻線(コイルワイヤー)
21 結線部
30 上側インシュレータ
31 外壁部
32 突出部
32a 先端壁部
50 下側インシュレータ
60 スロット用インシュレータ
61 結線収容部
63 板状部材
63a 結線収容部固定部
65 ヒンジ部
67 筒状部
71a、71b 結線収容穴
81 回転軸
82 回転子コア
83 回転子マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8