(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】風味増強剤及び経口製品の風味増強方法ならびに香粧品の香気増強方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240516BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20240516BHJP
A61K 8/49 20060101ALN20240516BHJP
A61Q 11/00 20060101ALN20240516BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L27/00 Z
A23L27/00 E
A23L27/20 G
A61K8/49
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020559858
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044670
(87)【国際公開番号】W WO2020116117
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018229494
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【氏名又は名称】新井 信輔
(72)【発明者】
【氏名】重藤 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 真人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 賢二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 史織
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-097639(JP,A)
【文献】FREROT E. et al.,Menthofurolactone: a new p-menthane lactone in Mentha piperita L.: analysis, synthesis and olfactory,Flavour and Fragrance Journal,2002年,Vol. 17,pp. 218-226
【文献】特許庁公報 12(2000)-1[7270] 周知・慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料,日本国特許庁,2000年01月14日,pp.476-483 ,3・6 ミント系フレーバー
【文献】NAF R. et al.,Phenols and lactones in Italo-Mitcham peppermint oil Mentha × piperita L.,Flavour and Fragrance Journal,1998年,vol.13,pp.203-208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K、A61Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)からなることを特徴とする甘味増強剤。
【請求項2】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
1記載の甘味増強剤。
【請求項3】
甘味料に、甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が添加されてなる甘味料組成物であって、甘味料がショ糖、フルクトース、グルコース、ブドウ糖果糖液糖、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、イソマルツロース及びグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする甘味料組成物。
【請求項4】
甘味料がショ糖であり、ショ糖100g当たり甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が0.00625~12.5mg添加されてなることを特徴とする請求項
3に記載の甘味料組成物。
【請求項5】
甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が香料に添加されてなることを特徴とする甘味増強用香料組成物。
【請求項6】
香料に対する甘味増強剤の添加量が5~10000ppmであることを特徴とする請求項
5記載の甘味増強用香料組成物。
【請求項7】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
5又は6記載の甘味増強用香料組成物。
【請求項8】
甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を、甘味料を含有する経口製品に添加することを特徴とする
、異味異臭を感じさせることなく、甘味料由来の甘味感を増強する、甘味料含有経口製品の甘味増強方法。
【請求項9】
甘味料が、ショ糖、フルクトース、グルコース、ブドウ糖果糖液糖、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、イソマルツロース及びグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項
8記載の甘味増強方法。
【請求項10】
甘味料含有経口製品に対する甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)の添加量が0.005~10ppmの濃度範囲であることを特徴とする、請求項
8又は9記載の甘味増強方法。
【請求項11】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
10記載の経口製品の甘味増強方法。
【請求項12】
請求項
5又は6記載の甘味増強用香料組成物を、甘味料を含有する経口製品に0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、甘味料を含有する経口製品の甘味増強方法。
【請求項13】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
12記載の経口製品の甘味増強方法。
【請求項14】
甘味料を含有する経口製品を製造する工程において、甘味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を0.005~10ppm添加することを特徴とする、甘味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項15】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
14記載の甘味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項16】
甘味料を含有する経口製品を製造する工程において、請求項
5又は6記載の甘味増強用香料組成物を0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、甘味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項17】
甘味増強が、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果である、請求項
16記載の甘味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項18】
7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)からなることを特徴とするコク味増強剤。
【請求項19】
コク味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が香料に添加されてなることを特徴とするコク味増強用香料組成物。
【請求項20】
コク味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が香料に5~10000ppm添加されてなることを特徴とするコク味増強用香料組成物。
【請求項21】
コク味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を経口製品に添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
【請求項22】
コク味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を経口製品に0.005~10ppm添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
【請求項23】
請求項
19又は20記載のコク味増強用香料組成物を経口製品に0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
【請求項24】
経口製品を製造する工程において、コク味増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を0.005~10ppm添加することを特徴とする、コク味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項25】
経口製品を製造する工程において、請求項
19又は20記載のコク味増強用香料組成物を0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、コク味の増強された経口製品の製造方法。
【請求項26】
7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)からなることを特徴とする香気増強剤。
【請求項27】
香気増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が香料に添加されてなることを特徴とする香気増強用香料組成物。
【請求項28】
香気増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)が香料に5~500000ppm添加されてなることを特徴とする香気増強用香料組成物。
【請求項29】
香気増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を経口製品又は香粧品に添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
【請求項30】
香気増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を経口製品又は香粧品に0.005~500ppm添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
【請求項31】
請求項
27又は28記載の香気増強用香料組成物を経口製品又は香粧品に0.01~2.0質量%添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
【請求項32】
経口製品又は香粧品を製造する工程において、香気増強剤としての7a-ヒドロキシミントラクトン(ペパーミント精油としての使用を除く)を0.005~500ppm添加することを特徴とする、香気の増強された経口製品又は香粧品の製造方法。
【請求項33】
経口製品又は香粧品を製造する工程において、請求項
27又は28記載の香気増強用香料組成物を0.01~2.0質量%添加することを特徴とする、香気の増強された経口製品又は香粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口製品の風味増強剤及び風味増強方法ならびに香粧品の香気増強方法に関する。
詳細には、7a-ヒドロキシミントラクトンからなることを特徴とする風味増強剤である。ここでいう風味増強とは甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上の効果をいい、7a-ヒドロキシミントラクトンは甘味を有する製品に適用される場合は甘味増強剤として機能し、複合的な味を有する製品に適用される場合はコク味増強剤として機能し、さらに香気に特徴を有する製品に適用される場合は香気増強剤として機能する。
さらには、製品が甘味以外にコク味を呈する製品のような場合は、甘味と共にコク味、さらに香気といった2種以上の増強効果を合わせ持つ風味増強剤として使用することができる。
さらに本発明は、本発明の風味増強剤を添加することによる、経口製品の甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病の予防あるいは健康増進意識の高まりに伴うダイエット志向を反映して、食品及び飲料中のショ糖含量の低減が飲食品業界で必要とされている。
この課題に対し、高甘味度を有する人工甘味改質剤(いわゆる高甘味度甘味料)、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン等を使用して、ショ糖を部分的又は完全に置換することが一般的になされている。
【0003】
しかしながら、上記の甘味改質剤は、甘味以外の望ましくない味覚属性、例えば、苦味、収斂味を付与するおそれがあることが知られている。
よって、ショ糖をはじめとする甘味料本来の持つ風味を損なうことなく、甘味を増強する改良技術が広く求められている。
【0004】
そのような改良技術において、これまでに報告されている甘味増強剤及び甘味増強方法としては、乾燥酵母粉末を有効成分として含有する甘味増強剤(特許文献1)、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体からなる甘味増強剤(特許文献2)、アデノシンおよび/または生理学的に許容される塩と単糖または二糖を併用する甘味増強方法(特許文献3)、天然甘味料を含む食品の中に甘草エキスと鳳仙花アルコール抽出液を添加する甘味増強方法(特許文献4)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、これら甘味増強剤自体の香味は、決して好ましいといえるものではない。したがって、汎用性があり様々な風味の経口製品に適用可能なものとは言えない。
そこで、様々な風味の製品に対して、その風味を損なうことなく、付加的な方法で簡便に、甘味を増強するという点において更なる技術の開発が求められていた。
【0006】
また、生活習慣病の予防あるいは健康増進意識の高まりとともに、飲食品中の塩分や脂肪分の低減も食品業界で必要とされている。
この課題に対し、飲食品の塩分や脂肪分の低減に伴うコク味やボリューム感の低下が指摘されている。コク味を強めるための方法についても種々開発されており、畜肉エキス、魚介エキス、野菜エキスなどの天然エキスがコク味強化剤として広く用いられているが、その強化剤に特有の風味を有するものが多い。したがって、汎用性があり様々な風味の経口製品に適用可能なものは少ないのが現状である。
【0007】
汎用性のある呈味付与剤としては、特定のアマドリ化合物(特許文献5)やピログルタミルジペプチド(特許文献6)などが提案されているが、未だ十分な汎用性を有するとは言えない。
様々な風味の飲食品に対して、その本来の風味を損なうことなく、付加的な方法で簡便に、コク味を増強するという点において更なる技術の開発が求められていた。
【0008】
甘味とコクを兼ね備える素材として、低刺激でコクのある甘い香気を有するテトラヒドロベンゾフラノン誘導体の適用が提案されている(特許文献7)。
しかし、テトラヒドロベンゾフラノン誘導体はそれぞれ特徴的な香調を有するため各種飲食品に汎用的に用いることは難しく、さらなる改良技術の提供が求められている。また、上記のようにショ糖や塩分、脂肪分を低減した場合、香りの立ちが悪くなることがあるという指摘がなされていた。
【0009】
飲食品の味や香りに影響を及ぼすことなく飲食品自体の香味を増強する素材としては、例えばスピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油からなることを特徴とする飲食品の香味増強剤が提案されている(特許文献8)。
また、低級脂肪酸を、その閾値濃度に対して0.01~0.5倍濃度添加することを特徴とする飲食品の香味増強方法(特許文献9)などが提案されている。
しかし、いずれの素材も特有の風味を有しており、使用状態によっては違和感を覚えることもあり、さらなる改良技術の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-100562号公報
【文献】特開2009-284859号公報
【文献】国際公開第2013/143822号
【文献】特開平10-248519号公報
【文献】特開2012-029615号公報
【文献】特開2012-029616号公報
【文献】特開平07-101952号公報
【文献】特開2006-296356号公報
【文献】特開2008-263903号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Flavour Fragr. J., 13, 203-208, 1998
【文献】Agric. Biol. Chem., 44(7), 1535-1543, 1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、経口製品の本来の風味に調和した風味増強剤、具体的には風味増強効果が、甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする風味増強剤を提供することである。またさらに、香粧品の香気を増強させる香気増強剤を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく、風味増強効果のある化合物を探索した結果、ミント精油に含まれる非常に多種多様な成分の一つである、7a-ヒドロキシミントラクトンが、それ自体の特徴的な風味を示さずに、甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上の効果を示すことを見出した。
ここで、7a-ヒドロキシミントラクトンは、3-ヒドロキシミントラクトンとして上記特許文献7に記載されている。しかし、3-ヒドロキシミントラクトンは3-エトキシミントラクトンの合成原料として用いられているにすぎず、3-ヒドロキシミントラクトン自体の特徴や飲食品に添加したときの効果については何ら記載されておらず、示唆するものもなかった。
【0014】
本発明の風味改善剤は、前記のごとく特定の風味を有さないので、甘味料や、甘味料を含有する飲食品、あるいはセイボリー製品(野菜系、スパイス系、ナッツ系、畜肉・水産系、デイリー系など塩味系の呈味を主体とした飲食品)や乳製品等、更にはオーラルケア製品などあらゆる経口製品に添加することで、風味を損なうことなく甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上の効果を示すことができる。
すなわち、本発明は、次に掲げる風味増強剤、甘味増強剤、コク味増強剤及び香気増強剤から選ばれる1種又は2種以上の風味増強剤、ならびに、甘味増強、コク味増強及び香気増強から選ばれる1種又は2種以上の効果が増強された経口製品に関する。
またさらに、前記のごとく特定の香気を有さないので、香粧品の香気を、香気を変調させることなく増強させる効果を示すことができる。
したがって、本発明は、次に掲げる香気増強剤、ならびに、香気が増強された香粧品に関する。
【0015】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕風味増強剤
(1)7a-ヒドロキシミントラクトンからなることを特徴とする風味増強剤。
(2)風味増強効果が、甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、上記の風味増強剤。
【0016】
〔2〕甘味増強剤
7a-ヒドロキシミントラクトンからなることを特徴とする甘味増強剤。
〔3〕甘味料組成物
(1)甘味料に、上記の甘味増強剤が添加されてなる甘味料組成物であって、甘味料がショ糖、フルクトース、グルコース、ブドウ糖果糖液糖、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、イソマルツロース及びグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする甘味料組成物。
(2)甘味料がショ糖であり、ショ糖100g当たり上記の甘味増強剤が0.00625~12.5mg添加されてなることを特徴とする上記の甘味料組成物。
(3)上記の甘味料組成物が添加されてなることを特徴とする経口製品。
【0017】
〔4〕甘味増強用香料組成物
(1)上記の甘味増強剤が香料に添加されてなることを特徴とする甘味増強用香料組成物。
(2)香料に対する上記の甘味増強剤の添加量が5~10000ppmであることを特徴とする上記の甘味増強用香料組成物。
(3)上記の甘味増強用香料組成物が添加されてなることを特徴とする甘味の増強された、甘味料を含有する経口製品。
(4)上記の甘味増強用香料組成物が0.01~1.0質量%添加されてなることを特徴とする甘味の増強された、甘味料を含有する経口製品。
【0018】
〔5〕甘味増強方法
(1)上記の甘味増強剤を、甘味料を含有する経口製品に添加することを特徴とする甘味料含有経口製品の甘味増強方法。
(2)甘味料が、ショ糖、フルクトース、グルコース、ブドウ糖果糖液糖、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、イソマルツロース及びグリセリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記の甘味増強方法。
(3)甘味料含有経口製品に対する上記の甘味増強剤の添加量が0.005~10ppmの濃度範囲であることを特徴とする、上記の甘味増強方法。
(4)上記の甘味増強用香料組成物を、甘味料を含有する経口製品に0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、甘味料を含有する経口製品の甘味増強方法。
【0019】
〔6〕甘味増強経口製品
(1)甘味料を含有する経口製品を製造する工程において、上記の甘味増強剤を0.005~10ppm添加することを特徴とする、甘味の増強された経口製品の製造方法。
(2)甘味料を含有する経口製品を製造する工程において、上記の甘味増強用香料組成物を0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、甘味の増強された経口製品の製造方法。
【0020】
〔7〕コク味増強剤
(1)7a-ヒドロキシミントラクトンからなることを特徴とするコク味増強剤。
(2)上記のコク味増強剤が添加されてなることを特徴とするコク味の増強された経口製品
(3)上記のコク味増強剤が0.005~10ppm添加されてなることを特徴とするコク味の増強された経口製品。
【0021】
〔8〕コク味増強用香料組成物
(1)上記のコク味増強剤が香料に添加されてなることを特徴とするコク味増強用香料組成物。
(2)上記のコク味増強剤が香料に5~10000ppm添加されてなることを特徴とするコク味増強用香料組成物。
(3)上記のコク味増強用香料組成物が添加されてなることを特徴とするコク味の増強された経口製品。
(4)上記のコク味増強用香料組成物が0.01~1.0質量%添加されてなることを特徴とするコク味の増強された経口製品。
【0022】
〔9〕コク味増強方法
(1)上記のコク味増強剤を経口製品に添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
(2)上記のコク味増強剤を経口製品に0.005~10ppm添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
(3)上記のコク味増強用香料組成物を経口製品に0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、経口製品のコク味増強方法。
【0023】
〔10〕コク味増強経口製品
(1)経口製品を製造する工程において、上記のコク味増強剤を0.005~10ppm添加することを特徴とする、コク味の増強された経口製品の製造方法。
(2)経口製品を製造する工程において、上記のコク味増強用香料組成物を0.01~1.0質量%添加することを特徴とする、コク味の増強された経口製品の製造方法。
【0024】
〔11〕香気増強剤
(1)7a-ヒドロキシミントラクトンからなることを特徴とする香気増強剤。
(2)上記の香気増強剤が添加されてなることを特徴とする香気の増強された経口製品又は香粧品。
(3)上記の香気増強剤が0.005~500ppm添加されてなることを特徴とする香気の増強された経口製品又は香粧品。
【0025】
〔12〕香料組成物
(1)上記の香気増強剤が香料に添加されてなることを特徴とする香料組成物。
(2)上記の香気増強剤が香料に5~500000ppm添加されてなることを特徴とする香料組成物。
(3)上記の香料組成物が添加されてなることを特徴とする香気の増強された経口製品又は香粧品。
(4)上記の香料組成物が0.01~2.0質量%添加されてなることを特徴とする香気の増強された経口製品又は香粧品。
【0026】
〔13〕香気増強方法
(1)上記の香気増強剤を経口製品又は香粧品に添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
(2)上記の香気増強剤を経口製品又は香粧品に0.005~500ppm添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
(3)上記の香料組成物を経口製品に0.01~2.0質量%添加することを特徴とする、経口製品又は香粧品の香気増強方法。
【0027】
〔14〕香気増強経口製品又は香粧品。
(1)経口製品又は香粧品を製造する工程において、上記の香気増強剤を0.005~500ppm添加することを特徴とする、香気の増強された経口製品又は香粧品の製造方法。
(2)経口製品又は香粧品を製造する工程において、上記の香料組成物を0.01~2.0質量%添加することを特徴とする、香気の増強された経口製品又は香粧品の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の風味増強剤は、甘味増強作用及びコク味増強作用に加えて香気増強作用も有するので、飲食品等に含まれるショ糖をはじめとする甘味料だけでなく塩分や脂肪分の低減を1剤で同時に図ることができる点で優れる。すなわち、呈味改善の観点から飲食品等に添加するための成分の種類や量を減らすことができるので有利である。
本発明の甘味増強剤を甘味飲食品等に添加すれば、ショ糖で甘味付けされた甘味製品の場合はショ糖の含有量を減らすことができ低カロリー化に寄与し、ショ糖以外の高甘味度甘味料で甘味付けされたダイエット製品の場合であれば、高甘味度甘味料の含有量を減らすことができることから、その望ましくない味覚(苦味、収斂味など)を低減できる。
【0029】
本発明のコク味増強剤を脂肪や塩分が含まれる飲食品等に添加すれば、飲食品の塩分や脂肪分を低減してもコク味が強調されることによって薄味感といった物足りなさを解消することができる。
さらに甘味及びコク味の増強効果を奏する一方、それ自体は特有の風味を有していないので、風味を損なうことなく各種の飲食品に幅広く使用できる点で汎用性に優れる。
【0030】
さらには、香気増強作用も有するので、甘味料、塩分、脂肪等が低減された飲食品等においても優れた嗜好性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔1〕風味増強剤
本発明で用いられる7a-ヒドロキシミントラクトン(7a-Hydroxymintlactone;CAS No.514-93-2)は、別名3,6-ジメチル-7a-ヒドロキシ-5,6,7,7a-テトラヒドロ-2(4H)-ベンゾフラノンであり、下記式(1)の構造を有する。
【化1】
【0032】
7a-ヒドロキシミントラクトンは、ミント精油に含まれる香気成分である(非特許文献1)。しかしながら、該化合物の持つ、甘味料に対する甘味増強効果や経口製品に対するコク味増強効果等については知られていなかった。
7a-ヒドロキシミントラクトンはミント精油から分取することができ、また合成して入手することも可能である。
本発明においては、非特許文献2に記載された方法に準じて合成したものを使用した。すなわち、メントフランをメタノール溶媒中、三酸化クロムにて酸化処理を行い、次いで精製する方法である。
【0033】
〔2〕経口製品
本発明でいう経口製品とは、具体的には飲食物及びオーラルケア製品(歯や口の中を清潔に保つための口腔衛生用品)をいう。
本発明の対象となる飲食物の形態としては特に制限がない。
例えば、果実類又はその加工品、野菜又はその加工品、魚介類又はその加工品、練製品、調理食品、総菜類、スナック類、珍味類、加工食品、栄養食品、茶飲料及びコーヒー飲料などの嗜好飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類、ゼリー、プリン、羊かん等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類、菓子パン、食パン等のパン類、ジャム類、ラムネ菓子、タブレット、錠菓類などが挙げられる。
好ましくは茶飲料及びコーヒー飲料などの嗜好飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料等の飲料が挙げられ、特に好ましくは果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料に非常に有用である。
【0034】
本発明の対象となるオーラルケア製品の形態としては特に制限がない。
例えば、歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、口腔用ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、及び歯に直接付着させるストリップの形態の口腔用組成物などが挙げられる。
【0035】
〔3〕香粧品
本発明の対象となる香粧品の形態としては特に制限がない。
例えば、石けん、洗髪用シャンプー又はボディシャンプー、トイレや室内用の除菌剤や芳香剤、衣類・布製品・空間用の消臭剤や除菌剤などが挙げられる。
【0036】
〔4〕甘味増強剤としての使用
7a-ヒドロキシミントラクトンを甘味増強剤として使用する態様としては、甘味増強剤をショ糖などの甘味料に配合して甘味料組成物とし、当該甘味料組成物を飲食品に適用する場合、ならびに甘味増強剤を既に甘味料を含有している経口製品に適用する場合が考えられる。
【0037】
(1)甘味料組成物
本発明の甘味増強剤は、天然や合成の甘味料、さらに賦形剤などの他の成分と組み合わせて甘味料組成物とすることができる。
本発明の甘味増強剤を添加する甘味料としては、例えば、ショ糖、フルクトース、グルコース、ブドウ糖果糖液糖、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、キシロース、アラビノース、ラムノースだけでなく、糖アルコール、例えば、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、イソマルツロース、マルチトール、グリセリン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の甘味増強剤を甘味料に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。風味を損なうことなく、風味を改善しつつ甘味を増強するためには、甘味料がショ糖の場合には、ショ糖100g当たり甘味増強剤を0.00625~12.5mg、好ましくは0.00625~6.25mg、特に好ましく0.0625~1.25mg添加して甘味料組成物とするが好適である。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、甘味増強効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、風味に変調をきたす可能性がある。
【0039】
甘味料がショ糖以外の場合には、各甘味料の甘味の強度を考慮して添加量を決めることが好ましく、甘味強度の指標として、甘味物質の閾値に対するショ糖の閾値の比である「甘味度」を用いるのが適当である。
一般に、ショ糖を1とした場合、フルクトース1.73、グルコース0.74、ステビア抽出物100~150、ラカンカ抽出物300、キシロース0.67、エリトリトール0.7~0.8、キシリトール1.08、マンニトール0.69、ソルビトール0.54、マルチトール0.8~0.95である。
したがって、本発明の甘味増強剤をショ糖以外の甘味料に添加する場合は、上記の添加量をショ糖の甘味度1に対する他甘味料の甘味度で除することが適当である。
【0040】
(2)甘味含有経口製品への適用
本発明の甘味増強剤を、甘味を有する経口製品に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。風味を損なうことなく、風味を改善しつつ甘味を増強するためには0.005~10ppmが適正濃度として例示され、好ましくは0.05~10ppm、特に好ましくは0.1~5ppmが例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、甘味増強効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、風味に変調を来す可能性がある。
なお、本発明の甘味増強剤は、経口製品の任意の製造工程において通常の方法で適宜添加することができる。
【0041】
〔5〕コク味増強剤としての使用
本発明におけるコク味とは、基本5味(甘味、塩味、苦味、酸味、うま味)では表現されない味であり、ボリュームやまとまり、広がり、厚み、濃厚感、持続性で表現される、基本5味を増強し、飲食物のおいしさを向上する感覚を指す。
【0042】
ここで、味覚としてのコク味について、熊倉功夫編「和食-日本人の伝統的食文化-」農林水産省発行(2012年3月)、第58~59頁に以下のように解説されている。
「『コク』という言葉は日本では非常によく使われる。『コク』は日本の食嗜好を理解するための最も重要なキーワードの1つである。特定の成分や物質ではなくて複合的な味わいである。食べ物の味わいに『厚みがある』『ボディ感がある』『濃厚である』などがやや近い表現である。『コクのある』という形容詞は、熟成、豊富な経験、豊潤、円熟などからもたらされる複雑な深みと浅薄でない魅力のようなものをイメージして使われる。『コクがある』というのは料理を褒める言葉である。曖昧ではあるが、おおよそのニュアンスを国民が共有している。一般的にコクがあるという場合、多くの成分が複雑に絡み合って、味わいの厚みをもたらしている場合を指すことが多い。単独の味が強く感じられてしまうとコクでは無くなる。酸味を加えると食べ物はさっぱりすると言うが、酸味の突出でコクが消えるとも言える。コクがあると認められている食材や料理はいくらでもある。フォアグラ、あんこうの肝等の内臓、生クリーム、チーズ、バターなどの乳製品、生ウニ、キャビアやからすみ、イクラなどの魚卵。味噌や醤油、カレー粉、マヨネーズなどの調味料、霜降り牛肉、鮪のトロなどの動物脂、日本で流行しているラーメンの複合的なダシや背脂など無数にある。
コクの特徴に、時間的および空間的な拡がりがある。空間的な拡がりは、口のなかの多くの部位や神経経路で味わいが感じられていることで説明できる。食品を口にしたときに、舌の先ですぐに感じられる甘味や塩味は鼓索神経を介した味覚、舌の奥やその両側で感じるうま味や油脂のおいしさは舌咽神経で伝えられる味である。舌触りには舌だけでなく歯茎なども動員される。味わいの感覚や部位が総動員されることが、コクにとって重要のようである。
コクには時間的な拡がりも大切である。口を近づけるだけで香る匂いから始まり、舌の前半部分で瞬時に立つシャープな味わいと、一呼吸おいてから舌の奥で感じられる味わい。さらには口のなかに留めている間にじわりと顔を出す味わい。飲み込んでからも続く余韻のような心地よい味わい。時間をかけて得られる味わいが十分に納得させられると、コクがあると強く感じる。」
【0043】
本発明のコク味増強剤を経口製品に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。風味を損なうことなく、風味を改善しつつコク味を増強するためには0.005~10ppmが適正濃度として例示され、好ましくは0.05~10ppm、特に好ましくは0.1~5ppmが例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、コク味増強効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、風味に変調を来す可能性がある。
なお、本発明のコク味増強剤は、経口製品の任意の製造工程において通常の方法で適宜添加することができる。
【0044】
〔6〕香気増強剤としての使用
本発明における香気増強とは、添加される香料の香質(odor quality)を変えることなく、香気の強度(odor intensity)を増大させる効果であり、エンハンス効果又はブースター効果とも呼ばれる効果である。本発明の香気増強剤は、添加される香料に特定の香気や異臭を与えることなく、香気の強度のみを増大させる極めて有用な素材である。
本発明の香気増強剤を経口製品又は香粧品に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。香気を損なうことなく、香気を改善しつつ香気を増強するためには0.005~500ppmが適正濃度として例示され、好ましくは0.05~500ppm、特に好ましくは0.05~200ppmが例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、香気増強効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、香気に変調を来す可能性がある。
【0045】
本発明の香気増強剤が用いられる経口製品又は香粧品は特に限定されるものではない。
例えば、果実類又はその加工品、野菜又はその加工品、魚介類又はその加工品、練製品、調理食品、総菜類、スナック類、珍味類、加工食品、栄養食品、茶飲料及びコーヒー飲料などの嗜好飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類、ゼリー、プリン、羊かん等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類、菓子パン、食パン等のパン類、ジャム類、ラムネ菓子、タブレット、錠菓類などの飲食品、歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、口腔用ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、及び歯に直接付着させるストリップなどのオーラル製品、石けん、洗髪用シャンプー又はボディシャンプー、トイレや室内用の除菌剤や芳香剤、衣類・布製品・空間用の消臭剤や除菌剤などが挙げられる。
中でも、好ましくは茶飲料及びコーヒー飲料などの嗜好飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料等の飲料が挙げられ、特に好ましくは果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料に非常に有用である。
【0046】
〔7〕香料組成物としての使用
本発明の甘味増強効果、コク味増強効果及び香気増強効果から選ばれる1種又は2種以上の効果を示す風味増強剤を経口製品又は香粧品に添加する場合、香料中に添加した香料組成物として使用することも有効である。
その場合に用いられる香料としては、特に制限はなく、用途や目的に応じて、従来より使用されていた種々の香料が使用可能である。
【0047】
例えば、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料」(平成12(2000)年1月14日発行、日本国特許庁)や、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第III部 香粧品用香料」(平成13(2001)年6月15日発行、日本国特許庁)等に記載された香料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、単離香料、合成香料など)が挙げられる。
【0048】
本発明の香気増強剤を香料に添加して香料組成物とする場合、その添加量は特に限定されるものではないが、通常は、香料組成物中で5~500000ppmが適正濃度として示され、好ましくは50~100000ppm、特に好ましくは50~10000ppmが例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、香気増強効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、風味に変調を来す可能性がある。
【0049】
上記の香料組成物は、必要に応じて溶剤を含有させた液状香料として経口製品や香粧品等に使用する態様が好適である。
ここで、溶剤としては、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート等のエステル類;トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、動植物油脂等のトリグリセライド類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコールエーテル類;エタノール等のアルコール類を例示することができる。
なお、香料組成物を界面活性剤ともに乳化した乳化香料として使用する態様、さらには賦形剤(加工デンプン、サイクロデキストン等)と混合した後、乾燥(噴霧乾燥、凍結乾燥等)することにより粉末香料として使用する態様も好適である。
【0050】
また。上記香料組成物を経口製品または香粧品に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。
経口製品または香粧品の特有の香気を損なうことなく、むしろ香気を改善しつつ香気を増強するためには、経口製品または香粧品中0.01~2.0質量%が適正濃度として例示され、好ましくは0.01~1.0質量%、特に好ましくは0.1~1.0質量%が例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、香気増強改善効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、経口製品または香粧品の香気に変調を来す可能性がある。
【0051】
本発明の風味増強剤(甘味及びコク味)を香料組成物中に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。
経口製品特有の風味を損なうことなく、むしろ風味を改善しつつ甘味増強効果及び/またはコク味増強効果を発揮するためには香料組成物中5~10000ppmが適正濃度として例示され、好ましくは5~5000ppm、特に好ましくは10~5000ppmが例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、風味改善効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、経口製品の風味に変調を来す可能性がある。
【0052】
また。上記香料組成物を経口製品に添加する場合、その添加量は特に限定されるものではない。
経口製品の特有の風味を損なうことなく、むしろ風味を改善しつつ甘味増強効果及び/またはコク味増強効果を発揮するためには、経口製品中0.01~1.0質量%が適正濃度として例示され、好ましくは0.01~0.5質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%が例示される。
添加濃度が上記濃度範囲に満たない場合は、風味改善効果が十分発揮されない可能性があり、上記濃度範囲を超えた場合には、経口製品の風味に変調を来す可能性がある。
【0053】
本発明の風味増強剤(甘味増強剤、コク味増強剤、香気増強剤)には、前記香料以外にも任意でその他の成分を加えることができる。
任意に加えることができる成分としては、各種酸味料、各種乳化剤、飲食物に使用できる各種溶剤、各種賦形剤、各種甘味料、各種着色料などである。
なお、本発明の風味改善剤は、経口製品や香粧品の任意の加工段階で適宜添加することができる。
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
[原材料]
風味増強剤(甘味増強剤、コク味増強剤、香気増強剤)である7a-ヒドロキシミントラクトンは、非特許文献2に記載された方法に準じて製造した。すなわち、市販されているメントフランをメタノール溶媒中、三酸化クロムにて酸化処理を行い、次いで精製操作を行って製造した。
その他、サンプル作成に使用したグラニュー糖(ショ糖)、牛乳等は市販のものを使用し、レモン香料等の各種香料は当社の製品を使用した。
【0056】
[実施例1~3]
本発明の甘味改善剤、グラニュー糖、水を用い、表1の処方にしたがって実施例1~3のグラニュー糖溶液を調製した。
なお、対照として、甘味増強剤の代わりにエタノールのみを添加したグラニュー糖溶液を調製した。
【0057】
【0058】
[試験例1]
実施例1~3及び対照品のグラニュー糖溶液について官能評価を行った。
評価項目は、甘味感、異味異臭の有無とし、10名の熟練したパネルで評価した。甘味感の評価基準は、対照品の評価値を4とし、非常に強く感じられた場合を7、非常に弱く感じられた場合を1とした場合の7段階相対評価とした。
その結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
表2の結果から、本発明の甘味増強剤を適正量添加することで、異味異臭を感じさせることなく、グラニュー糖の甘味感を増強する効果がみられた。
【0061】
[実施例4~6]
本発明の風味増強剤(甘味増強剤、コク味増強剤)、グラニュー糖、水及び牛乳を用い、表3の処方にしたがって実施例4~6の乳飲料を調製した。
なお、対照として、風味増強剤の代わりにエタノールのみを添加した乳飲料を調製した。
【0062】
【0063】
[試験例2]
実施例4~6及び対照品の乳飲料について官能評価を行った。
評価項目は、甘味感に加えてコク味(広がり、厚み、持続性)を加え、評価基準は試験例1と同様に行い、その結果を表4に示した。
【0064】
【0065】
表4の結果から、本発明の風味増強剤(甘味増強剤、コク味増強剤)を適正量添加することで、乳の風味を損なうことなく、乳飲料の甘味感及びコク味を増強する効果がみられた。
【0066】
[実施例7~11]
本発明の香気増強剤、水、及びオレンジ香料を用い、表5の処方にしたがって実施例7~11のオレンジ飲料(フレーバードウォーター;Flavored Water)を調製した。なお、対照として、香気増強剤の代わりにエタノールのみを添加したオレンジ飲料を調製した。
【0067】
【0068】
[試験例3]
実施例7~11及び対照品のオレンジ飲料について官能評価を行った。
評価項目は、香りの強さ、異味異臭の有無とし、10名の熟練したパネルで評価した。香りの強さの評価基準は、対照品の評価値を4とし、非常に強く感じられた場合を7、非常に弱く感じられた場合を1とした場合の7段階相対評価とした。その結果を表6に示す。
【0069】
【0070】
表6の結果から、本発明の香気増強剤を適正量添加することで、オレンジ風味に異味異臭を付与することなく、オレンジ飲料の風味を増強させる効果がみられた。
【0071】
[実施例12~16]
本発明の香気増強剤、水、プレーンヨーグルト、果糖ブドウ糖液糖及びヨーグルト香料を用い、表7の処方にしたがって実施例12~16のヨーグルト飲料を調製した。なお、対照として、香気増強剤の代わりにエタノールのみを添加したヨーグルト飲料を調製した。
【0072】
【0073】
[試験例4]
実施例12~16及び対照品のヨーグルト飲料について官能評価を行った。
評価項目は、香りの強さ、異味異臭の有無とし、10名の熟練したパネルで評価した。
香りの強さの評価基準は、対照品の評価値を4とし、非常に強く感じられた場合を7、非常に弱く感じられた場合を1とした場合の7段階相対評価とした。その結果を表8に示す。
【0074】
【0075】
表8の結果から、本発明の香気増強剤を適正量添加することで、ヨーグルト風味に異味異臭を付与することなく、香気を増強させる効果がみられた。
【0076】
[実施例17~20]
本発明の風味増強剤(甘味、コク味、香気)、グラニュー糖、水、クエン酸及びレモン香料を用い、表9の処方にしたがって実施例17~20のレモン飲料を調製した。
なお、対照として、風味増強剤の代わりにエタノールのみを添加したレモン飲料を調製した。
【0077】
【0078】
[比較例1~3]
比較例1~3として、表10の処方にしたがって本発明の風味増強剤の代わりに、7a-エトキシミントラクトン(特許文献7に3-エトキシミントラクトンとして記載されている7a-ヒドロキシミントラクトンの類縁化合物。同特許文献にしたがって合成したもの)を添加したレモン飲料を調製した。
また、対照としてエタノールを添加したレモン飲料を調製した。
【0079】
【0080】
[試験例5]
実施例17~20及び比較例1~3で得られたレモン飲料について官能評価を行った。
評価項目は、甘味、コク味、香気増強効果の有無、異味異臭の有無とし、10名の熟練したパネルで評価した。甘味、コク味(広がり、厚み、持続性)、香気増強効果の評価は、対照品の各項目の評価値を基準とし、有無を評価した。その結果を表11に示す。
【0081】
【0082】
表11の結果から、本発明の風味増強剤を適正量添加することで、レモンの風味を損なうことなく、レモン飲料の甘味感、コク味さらには香気を増強する効果がみられた。また、7a-エトキシミントラクトンは、それ自体の香りが強く、0.1ppmの添加においても異味異臭が感じられ、レモン飲料の風味を損なわずに甘味、コク味及び香気を増強させることは困難であった。
【0083】
[実施例21]
バニラ香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.5質量%添加し、香料組成物1を作製した。
この香料組成物1を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを5ppm含有する本発明のバニラ風味アイスクリーム(本アイスクリームは、甘味料としてショ糖を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のバニラ香料を用いて作製したバニラ風味アイスクリームと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0084】
[実施例22]
チョコレート香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを1.0質量%添加し香料組成物2を作製した。
この香料組成物2を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを10ppm含有する本発明のチョコレート風味ソフトキャンディー(本ソフトキャンディーは、甘味料としてショ糖を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のチョコレート香料を用いて作製したソフトキャンディーと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0085】
[実施例23]
バター香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを1.0質量%添加し香料組成物3を作製した。
この香料組成物3を2.0質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを200ppm含有する本発明のバター風味クッキーは、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のバター香料を用いて作製したクッキーと比較して、風味を損なうことなく香気が増強されていた。
【0086】
[実施例24]
グレープフルーツ香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを1.0質量%添加し香料組成物4を作製した。
この香料組成物4を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを10ppm含有する本発明のグレープフルーツ風味タブレットキャンディー(本タブレットキャンディーは、甘味料としてショ糖を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のグレープフルーツ香料を用いて作製したタブレットキャンディーと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0087】
[実施例25]
ピーチ香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.5質量%添加し香料組成物5を作製した。
この香料組成物5を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを5ppm含有する本発明のピーチ風味清涼飲料(本清涼飲料は、甘味料としてフルクトース、グルコースを含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のピーチ香料から作製した清涼飲料と比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0088】
[実施例26]
香料組成物5を0.5質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを5ppm含有する本発明のピーチ風味清涼飲料(本清涼飲料は、甘味料としてステビア抽出物を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のピーチ香料を用いて作製した清涼飲料と比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0089】
[実施例27]
グレープ香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを1.0質量%添加し香料組成物6を作製した。
この香料組成物6を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを10ppm含有する本発明のグレープ風味ヨーグルト(本ヨーグルトは、甘味料としてショ糖を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のグレープ香料を用いて作製したヨーグルトと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0090】
[実施例28]
アップル香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.5質量%添加し香料組成物7を作製した。
この香料組成物7を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを5ppm含有する本発明のアップル風味ゼリー(本ゼリーは、甘味料としてステビア抽出物を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のアップル香料を用いて作製したゼリーと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0091】
[実施例29]
抹茶香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.1質量%添加し香料組成物8を作製した。
この香料組成物8を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを1ppm含有する本発明の抹茶風味チョコレート(本チョコレートは、甘味料としてショ糖を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加の抹茶香料を用いて作製したチョコレートと比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0092】
[実施例30]
ペパーミント香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを5.0質量%添加し香料組成物9を作製した。
この香料組成物9を1.0質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを500ppm含有する本発明のミント風味ガムは、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のペパーミント香料を用いて作製したミント風味ガムと比較して、風味を損なうことなく香気が増強されていた。
【0093】
[実施例31]
香料組成物9を0.1質量%含む、7a-ヒドロキシミントラクトンを50ppm含有する本発明のミント風味歯磨き粉は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のペパーミント香料を用いて作製した歯磨き粉と比較して、風味を損なうことなく香気が増強されていた。
【0094】
[実施例32]
コーヒー香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを1.0質量%添加し、香料組成物10を作製した。
この香料組成物10を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを10ppm含有する本発明のコーヒー飲料(本コーヒー飲料は、糖類、乳を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加の香料を用いて作製したコーヒー飲料と比較して、風味を損なうことなく甘味及びコク味さらには香気が増強されていた。
【0095】
[実施例33]
香料組成物10を0.1質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを10ppm含有する本発明の無糖ブラックコーヒーは、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加の香料を用いて作製した無糖ブラックコーヒーと比較して、風味を損なうことなくコク味さらには香気が増強されていた。
【0096】
[実施例34]
紅茶香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.1質量%添加し、香料組成物11を作製した。
この香料組成物11を0.1質量%添加した本発明の紅茶飲料(本紅茶飲料は、糖類を含む)は、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加の香料を用いて作製した紅茶飲料と比較して、風味を損なうことなく甘味、コク味さらには香気が増強されていた。
【0097】
[実施例35]
スパイス香料(小川香料(株)製)に7a-ヒドロキシミントラクトンを5.0質量%添加し、香料組成物12を作製した。
この香料組成物12を0.2質量%添加した、7a-ヒドロキシミントラクトンを100ppm含有する本発明のミートソースは、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加の香料を用いて作製したミートソースと比較して、風味を損なうことなく香気が増強されていた。
【0098】
[実施例36]
小川香料(株)製フレグランス香料に7a-ヒドロキシミントラクトンを0.5質量%添加し、香料組成物13を作製した。
この香料組成物13をエタノール中に1質量%添加したものを適量、試験紙に滴下して数分後の香気の強さを確認したところ、7a-ヒドロキシミントラクトン無添加のフレグランス香料と比較して、香気が増強されていた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の風味増強剤を添加することにより、甘味料を含む経口製品の風味を損なうことなく、簡便に甘味料の甘味を増強する効果があり、また併せて経口製品のコク味を増強することができ、さらには香気も増強することができ、香粧品を含めて幅広く利用することができる。