(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】歯科用ミルブランク及び歯科用補綴物
(51)【国際特許分類】
A61C 13/09 20060101AFI20240516BHJP
A61C 13/083 20060101ALI20240516BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20240516BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20240516BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20240516BHJP
【FI】
A61C13/09
A61C13/083
A61C13/00 Z
A61C13/08
A61C5/70
(21)【出願番号】P 2020563358
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050893
(87)【国際公開番号】W WO2020138197
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018243474
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019120129
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】松本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 紘之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 承央
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/114776(WO,A1)
【文献】特表2008-539920(JP,A)
【文献】特表2014-534018(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00850601(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0008774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/70,13/00,13/08ー13/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の積層構造を有するミルブランク部を有し、
前記積層構造がエナメル層とコア層とを含む、歯科用ミルブランクであって、
前記コア層が、実質的な切頭錐体である第1部と、前記切頭錐体の相対的に広い底面Bにおいて前記第1部に接続する第2部を含み、
前記切頭錐体の側面が、前記エナメル層と前記コア層との界面の一部を構成し、
前記第2部は、前記第1部の前記底面Bと接する台座面を有し、
前記第2部が、前記第1部の前記底面Bと接する台座面を有し、前記台座面が前記第1部と接する領域の周囲において前記界面の一部を構成し、かつ
前記台座面が、前記第1部の前記底面Bの面積より大きい面積を有し、平面である、歯科用ミルブランク。
【請求項2】
前記切頭錐体の相対的に広い底面Bに直交する仮想面において、前記底面Bに直交する仮想線と前記切頭錐体の前記側面とがなす角度θ1が0°~80°(0°を除く)である、請求項1に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項3】
前記切頭錐体の底面が円又は楕円である、請求項1又は2に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項4】
前記第2部が、a)前記台座面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体、b)前記台座面を底面Cとして有する実質的な柱体、又はc)前記台座面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面と接続する実質的な柱体との組み合わせである、請求項1に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項5】
前記第2部が、前記台座面を底面Cとして有する円柱状である、請求項4に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項6】
前記第2部が、色調の異なる複数の層から構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項7】
前記第2部が、色調の異なる上層と下層の2層から構成され、下記式で表される上層と下層の層間の色調の差△Eが0.5以上である、請求項6に記載の歯科用ミルブランク。
【数1】
(式中、第2部の上層の(L*,a*,b*)を(L9,a9,b9)とし、第2部の下層の(L*,a*,b*)を(L10,a10,b10)とする。)
【請求項8】
前記第1部のL*a*b*表色系における色度がL*=62~86、a*=-2~7、b*=4~27である、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項9】
前記コア層が、前記第1部の前記切頭錐体の相対的に狭い底面Aにおいて前記第1部に接続する第3部をさらに含む、又は
前記コア層の前記底面Aが、前記エナメル層と前記コア層との前記界面の一部を構成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項10】
前記ミルブランク部が、ジルコニア仮焼体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科用ミルブランク及び歯科用補綴物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用製品(例えば、代表的な被覆冠、歯冠、クラウン、差し歯等の補綴物や歯列矯正用製品、歯科インプラント用製品)としては、金属がよく用いられていた。しかしながら、金属は天然歯と色が明確に異なり、審美性に欠けるという欠点を有するとともに、金属の溶出によるアレルギーを発症することもあった。そこで、金属の使用に伴う問題を解決するため、金属の代替材料として、酸化アルミニウム(アルミナ)や酸化ジルコニウム(ジルコニア)等のセラミックス材料が歯科用製品に用いられてきている。特に、ジルコニアは、強度において優れ、審美性も比較的優れるため、特に近年の低価格化も相まって需要が高まっている。
【0003】
一方、口腔内の審美性をより高めるためには、歯科用製品の外観を天然歯の外観に似せる必要がある。しかしながら、ジルコニア(焼結体)自体で、天然歯と同様の外観(特に透明度、光沢(艶))を再現することは困難である。
【0004】
特許文献1には、積層面が曲面になっている樹脂系の歯科用ミルブランクが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ブロックの内部は象牙色で透光性が低い材料、それを囲むエナメル質相当の透光性の高い材料で構成されているブランクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-535610号公報
【文献】特表2014-534018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1による製造方法で製造されるミルブランクから製造される補綴物は、前後方向(前歯として)のグラデーションのみを有するカマボコのような構造のものである。そのような構造を有する補綴物を特に前歯に用いる場合は、歯の左右端の内部に透光性の低い部分ができてしまい、切縁部の透明性及び色調を再現できず、審美性に劣る。また、補綴物として樹脂系の補綴物であり、強度、耐久性に問題がある。また、製造方法の点でも、共押出、順送押出、順送プレス、又はアディティブビルドアップのような接合による製造方法であり、簡便な製造方法ではなかった。
【0008】
特許文献2においては、ブランクの材料はセラミック又はアクリレートと記述されているが、具体的な製造方法が記載されておらず、セラミックスとしての具体的な名称、仮焼、焼成などのプロセスに関する記述もない。
【0009】
以上より、本発明が解決すべき課題として、審美性に優れた多層構造を有するミルブランク及び歯科用補綴物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の多層構造を有することによって、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]2層以上の積層構造を有するミルブランク部を有し、
前記積層構造がエナメル層とコア層とを含む、歯科用ミルブランクであって、
前記コア層が、実質的な切頭錐体である第1部を含み、
前記切頭錐体の側面が、前記エナメル層と前記コア層との界面の一部を構成する、
歯科用ミルブランク。
[2]前記切頭錐体の相対的に広い底面Bに直交する仮想面において、前記底面Bに直交する仮想線と前記切頭錐体の前記側面とがなす角度θ1が0°~80°(0°を除く)である、[1]に記載の歯科用ミルブランク。
[3]前記切頭錐体の底面が円又は楕円である、[1]又は[2]に記載の歯科用ミルブランク。
[4]前記コア層が、前記切頭錐体の相対的に広い底面Bにおいて前記第1部に接続する第2部をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[5]前記第2部が、前記第1部の前記底面Bと接する台座面を有し、前記台座面が前記第1部と接する領域の周囲において前記界面の一部を構成する、[4]に記載の歯科用ミルブランク。
[6]前記第2部が、a)前記台座面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体、b)前記台座面を底面Cとして有する実質的な柱体、又はc)前記台座面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面と接続する実質的な柱体との組み合わせである、[5]に記載の歯科用ミルブランク。
[7]前記第2部が、d)前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体、e)前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Cとして有する実質的な柱体、又はf)第1部の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面Dと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Eとして有する実質的な柱体との組み合わせである、[4]に記載の歯科用ミルブランク。
[8]前記第2部が、前記台座面を底面Cとして有する円柱状である、[6]に記載の歯科用ミルブランク。
[9]前記第2部が、前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Cとして有する円柱状である、[7]に記載の歯科用ミルブランク。
[10]前記第2部が、色調の異なる複数の層から構成される、[4]~[9]のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[11]前記第2部が、色調の異なる上層と下層の2層から構成され、下記式で表される上層と下層の層間の色調の差△Eが0.5以上である、[10]に記載の歯科用ミルブランク。
【数1】
(式中、第2部の上層の(L*,a*,b*)を(L9,a9,b9)とし、第2部の下層の(L*,a*,b*)を(L10,a10,b10)とする。)
[12]前記第1部のL*a*b*表色系における色度がL*=62~86、a*=-2~7、b*=4~27である、[1]~[11]のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[13]前記コア層が、前記第1部の前記切頭錐体の相対的に狭い底面Aにおいて前記第1部に接続する第3部をさらに含む、及び/又は
前記コア層の前記底面Aが、前記エナメル層と前記コア層との前記界面の一部を構成する、[1]~[12]のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[14]前記ミルブランク部が、ジルコニア仮焼体である、[1]~[13]のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[15][1]~[14]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクからなる、歯科用補綴物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、審美性に優れた多層構造を有する歯科用ミルブランク及び歯科用補綴物を提供することができる。すなわち、本発明により、天然歯に近い色調及び透光性を有する多層構造を有する歯科用ミルブランク及び歯科用補綴物を提供することができる。また、本発明の製造方法により、簡便に歯科用ミルブランク及び歯科用補綴物を製造することができる。さらに、本発明により、強度及び耐久性に優れた多層構造を有するミルブランク、歯科用補綴物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明に係るミルブランク部の実施形態の一例を示す概略図である。
【
図1B】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図1C】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面でのコア層の断面図である。
【
図1D】本発明に係るミルブランク部の仮想第一切断面でのコア層の断面図である。
【
図1E】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図1F】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図1G】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図2A】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図2B】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面でのコア層の断面図である。
【
図2C】本発明に係るミルブランク部の仮想第一切断面でのコア層の断面図である。
【
図2D】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図2E】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図2F】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図3A】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図3B】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面でのコア層の断面図である。
【
図3C】本発明に係るミルブランク部の仮想第一切断面でのコア層の断面図である。
【
図3D】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図3E】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図3F】本発明に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4A】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4B】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4C】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4D】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4E】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4F】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4G】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4H】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4I】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4J】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4K】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4L】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4M】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4N】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4O】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4P】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4Q】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4R】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4S】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4T】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4U】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4V】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4W】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4X】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4Y】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図4Z】本発明の他の実施形態に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図5A】比較例2に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図5B】比較例3に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【
図5C】比較例4に係るミルブランク部の仮想第二切断面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のミルブランクは、2層以上の積層構造を有するミルブランク部を有し、前記積層構造がエナメル層とコア層とを含む、歯科用ミルブランクであって、前記コア層が、実質的な切頭錐体である第1部を含み、前記切頭錐体の側面が、前記エナメル層と前記コア層との界面の一部を構成することを特徴とする。
【0015】
[ミルブランク部]
本発明においてミルブランク部(1)は、エナメル層(2)とコア層(3)とを含む2層以上の積層構造を有する。該ミルブランク部(1)の一例を
図1Aに示す。
【0016】
コア層(3)は、ミルブランク部(1)において支台歯の色調が浮き出ないように色調遮蔽性を有する層であり、エナメル層(2)の内側に形成する必要がある。コア層(3)は実質的な切頭錐体である第1部(4)を含み、前記切頭錐体の側面が、前記エナメル層(2)と前記コア層(3)との界面の一部を構成することにより、歯冠正面から見た場合のみならず、歯冠側面から見た場合にも切削加工された歯科用補綴物において第1部(4)のみが歯冠表面に露出する部分がなく、天然歯により近い構造(エナメル質の内側に象牙質が存在する)となるため、天然歯と同様の色調が得られる。
図1Bの点線は、前歯用補綴物をミルブランク部(1)から切削加工した場合の歯冠正面の位置を示し、
図1Eの点線は、前歯用補綴物をミルブランク部(1)から切削加工した場合の歯冠側面の位置を示す。同様に、
図1Fの点線は、臼歯用補綴物をミルブランク部(1)から切削加工した場合の歯冠正面の位置を示し、
図1Gの点線は、臼歯用補綴物をミルブランク部(1)から切削加工した場合の歯冠側面の位置を示す。ミルブランク部(1)においてコア層(3)の第1部(4)は、天然歯の象牙質により近づけるために、所望の高さを有する。第1部(4)の高さは、特に限定されないが、コア層(3)の高さの20~90%が好ましく、30~80%がより好ましく、35~65%がさらに好ましい。なお、コア層(3)の底面は、エナメル層(2)に覆われてもよく、ミルブランク部(1)の表面に露出されてもよい。
【0017】
コア層(3)の好適な形状について以下説明する。
【0018】
コア層(3)は、実質的な切頭錐体である第1部を含む。「実質的な切頭錐体」とは、角錐台、円錐台等の切頭錐体と認識できればよく、例えば、側面が微細な階段状の形状のもの(例えば、
図4B)、第1部(4)の角が丸みを帯びた形状のもの(例えば、
図4O、
図4Q)、及び第1部(4)の相対的に狭い底面Aが窪みを有する形状のもの(例えば、
図4J、
図4S)についても、切頭錐体の相対的に広い底面Bに直交する仮想面(例えば、
図1Aの仮想第二切断面(7))において前記底面Bに直交する仮想線と前記切頭錐体の前記側面とがなす角度θ1(
図1C参照)が0°~80°(0°を除く)の範囲内にある場合は、本発明の切頭錐体に含む。前記θ1は、歯冠側面から見た場合に切削加工後の歯科用補綴物の歯冠正面にコア層の露出を抑制できることから、10°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上がさらに好ましい。また、前記θ1は、歯冠側面から見た場合に切削加工後の歯科用補綴物の歯冠正面に十分な範囲のコア層が得られることから、50°以下が好ましく、40°以下がより好ましく、30°以下がさらに好ましい。コア層(3)が上記の形状を有することによって天然歯の構造により近づけることができる。
【0019】
前記切頭錐体の底面は、円又は楕円であることが好ましい。また、前記切頭錐体としては、円錐台又は楕円錐台であることが好ましく、歯冠正面及び歯冠側面から見た場合に審美性に優れる点から、円錐台がより好ましい。本発明のある好適な実施形態としては、
図3A~
図3Fに示すように、2層以上の積層構造を有するミルブランク部(1)を有し、前記積層構造がエナメル層(2)とコア層(3)とを含み、前記コア層(3)が楕円錐台である第1部(4)を含み、前記切頭錐体の側面が、前記エナメル層(2)と前記コア層(3)との界面の一部を構成する、歯科用ミルブランクが挙げられる。第1部(4)が
図3B及び
図3Cで示される楕円錐台である場合、
図3A(点線が前歯用補綴物の歯冠正面を表す)及び
図3D(点線が前歯用補綴物の歯冠側面を表す)の点線で示されるように切削加工することで、天然歯のような発色を有する前歯用の歯科用補綴物を得ることができる。
【0020】
本発明のある好適な実施形態としては、前記したいずれかの実施形態において、前記コア層(3)が、前記切頭錐体の相対的に広い底面Bにおいて前記第1部(4)に接続する第2部(5)をさらに含む、歯科用ミルブランクが挙げられる。前記実施形態では、例えば、
図1Cを第1部(4)側の上から見た図である
図1Dに示されるように、第1部(4)は、底面Aの面積(π(d
1/2)
2)に比べて相対的に広い面積を有する底面B(π(d
2/2)
2)を有し、前記底面Bにおいて前記第1部(4)に接続する第2部(5)をさらに含む、歯科用ミルブランクが挙げられる。
【0021】
第2部(5)は、第1部(4)の前記底面Bと接する台座面(51)を有し、前記台座面(51)が前記第1部(4)と接する領域の周囲において前記エナメル層(2)と前記コア層(3)との界面の一部を構成することが好ましい。いいかえると、コア層(3)は、
図1Cに示されるように、第1部(4)と第2部(5)が段差を有する形状であってもよい。第2部(5)の形状は、本発明の効果が得られる限り、特に限定されないが、底面及び側面を有し、かつ側面が底面に対して垂直な部分を有する形状であることが好ましい。本発明において、第2部(5)の台座面(51)は、第1部(4)の前記底面Bの面積より大きい面積を有するものが好ましい。
【0022】
ある好適な実施形態では、切縁部の透明性及び色調を再現でき、前歯用の歯科用補綴物としてより審美性に優れる点から、第2部(5)は、a)前記台座面(51)を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体(例えば
図4C)、b)前記台座面(51)を底面Cとして有する実質的な柱体(角柱状又は円柱状)(例えば
図1B、
図3D、
図4A、
図4B、
図4T、
図4U、
図4V)、又はc)前記台座面(51)を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面と接続する実質的な柱体との組み合わせ(例えば
図4F、
図4O)である歯科用ミルブランクが挙げられる。これらのうち、切縁部の透明性及び色調をより適切に再現でき、特に審美性に優れる点から、第2部(5)は、b)前記台座面(51)を底面Cとして有する実質的な柱体であること、又はc)前記台座面(51)を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面と接続する実質的な柱体との組み合わせであることがより好ましく、前記台座面(51)を底面Cとして有する円柱状であることがさらに好ましい。角柱状としては、四角柱、六角柱等が挙げられる。円柱状としては、円柱、楕円柱等が挙げられる。「実質的な柱体」であるとは、本発明の効果を有する限り、柱体のみならず、例えば、角が丸みを帯びた形状(例えば
図4M、
図4N、
図4P、
図4R、
図4S)も含むものである。例えば、
図1Bの歯科用ミルブランクにおいて、第2部(5)の高さは、4mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、6mm以上がさらに好ましい。また、第2部(5)の高さは、12mm以下が好ましく、11mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
図1Bの歯科用ミルブランクにおいて、第1部(4)の高さは、3mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4mm以上がさらに好ましい。また、第1部(4)の高さは、10m以下が好ましく、9.5mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。さらに、第1部(4)と第2部(5)との高さの比は、第1部(4):第2部(5)=1:0.3~1:2が好ましい。
【0023】
他の好適な実施形態としては、コア層(3)は、
図2Aに示されるように、第1部(4)と第2部(5)が段差を有しない形状であってもよい。例えば、ある好適な実施形態では、臼歯用の歯科用補綴物としてより審美性に優れる点から、前記第2部(5)が、d)第1部(4)の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体、e)第1部(4)の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Cとして有する実質的な柱体(例えば
図4H、
図4K、
図4Q)、又はf)第1部(4)の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面Dと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Eとして有する実質的な柱体との組み合わせ(例えば
図4L)である歯科用ミルブランクが挙げられる。これらのうち、歯冠正面から見た場合に臼歯用の歯科用補綴物としてエナメル層の範囲を減らし、象牙質に相当する範囲を十分に確保でき、特に審美性に優れる点から、第2部(5)は、e)第1部(4)の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Cとして有する実質的な柱体、又はf)第1部(4)の前記底面Bと同一の大きさで同一の位置にある面を相対的に狭い底面Cとして有する実質的な切頭錐体と、前記切頭錐体の相対的に広い底面Dと同一の大きさで同一の位置にある面を底面Eとして有する実質的な柱体との組み合わせであることがより好ましい。例えば、コア層(3)が
図2B及び
図2Cの形状である場合、
図2E(点線が臼歯用補綴物の歯冠正面を表す)及び
図2F(点線が臼歯用補綴物の歯冠側面を表す)の点線で示されるように切削加工することで、天然歯のような発色を有する臼歯用の歯科用補綴物を得ることができる。
【0024】
さらに、他の好適な実施形態としては、前記したいずれかの実施形態において、前記コア層(3)は、第1部(4)の前記切頭錐体の相対的に狭い底面Aにおいて前記第1部(4)に接続する第3部(8)をさらに含む、及び/又は、前記コア層(3)の前記底面Aが、前記エナメル層(2)と前記コア層(3)との前記界面の一部を構成する、歯科用ミルブランクが挙げられる。第3部(8)の形状は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、凸形状のもの(例えば、
図4E、
図4N、
図4V)、凹凸を有する形状のもの(例えば、
図4G、
図4P)であってもよい。
【0025】
本発明のある好適な実施形態としては、前記したいずれかの第2部(5)を含む実施形態において、第1部(4)の色調と第2部(5)の色調が同一であってもよい(例えば、
図4D~
図4V)。
【0026】
本発明の他の好適な実施形態としては、前記したいずれかの第2部(5)を含む実施形態において、第1部(4)の色調と第2部(5)の色調が異なっていてもよく、第1部(4)の色調は、内部からの発色が強くなりすぎ、歯冠として不自然に濃くなることを防ぎ、より審美性に優れる点から、エナメル層(2)の色調と、象牙質に相当する第2部(5)の色調の中間色とすることが好ましい。第1部(4)の色調を前記色調にすることによって、歯科用補綴物の内部から発色を適度に抑制して、より天然歯に近い色調とすることができる。
【0027】
さらに、他の好適な実施形態としては、前記したいずれかの第2部(5)を含む実施形態において、第2部(5)は色調が異なる複数の層から構成されてもよい。層の境界の形状は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、底面と平行な形状(
図4W、
図4X)でもよく、凸形状(
図4Y)でもよく、凹形状(
図4Z)でもよい。また、第2部(5)の層の数は特に限定されないが、2層であってもよく、3層であってもよい。第2部(5)を色調が異なる複数の層とすることにより、1つのミルブランクにて切削加工する歯冠の位置を任意に変更し、複数の異なるシェードの歯冠を作製することが可能となる。例えば、淡色のシェードの前歯用補綴物を作製する場合は、
図4W(点線が前歯用補綴物の歯冠側面を表す)の点線で示されるように切削加工し、濃色のシェードの前歯用補綴物を作製する場合は、
図4X(点線が前歯用補綴物の歯冠側面を表す)の点線で示されるように切削加工する。
【0028】
本発明のミルブランク部の形状は、治具を取り付けられる限り特に限定されず、いずれの実施形態においても、例えば、角柱状とすることができ、製造上の観点から四角柱状が好ましい。
【0029】
各層における色調及び透光性の好適な実施形態について以下に説明する。なお、本発明において色調を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系における色度のL*、a*、b*などを用いることができる。透光性を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系におけるΔL*などを用いることができる。ミルブランクがジルコニア仮焼体の場合は、焼結後の値である。これらの測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0030】
エナメル層(2)おいては、L*a*b*表色系における色度がL*=68~90、a*=-3~5、b*=0~24であることが好ましく、L*=70~82、a*=-2~4、b*=2~23であることがより好ましい。
【0031】
エナメル層(2)の透光性ΔL*は、4~20が好ましく、7~18がより好ましく、8~16がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより審美性に優れたミルブランク部とすることができる。
【0032】
第1部(4)の色調は、特に限定されないが、補綴物の内部からの発色が強くなりすぎ、歯冠補綴物として不自然に濃くなることを防ぐ点から、エナメル層の色調と、象牙質の色調の中間色とすることが好ましい。第1部(4)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=62~86、a*=-2~7、b*=4~27であることが好ましく、L*=64~85、a*=-1~6、b*=6~23であることがより好ましく、L*=64~85、a*=-1~4、b*=6~23であることがさらに好ましい。
【0033】
第1部(4)の透光性ΔL*は、4~18が好ましく、5~17がより好ましく、6~11がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより第2部(5)の色調を程よく浮き上がらせることができる。
【0034】
第2部(5)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=60~85、a*=-2~7、b*=4~28であることが好ましく、L*=63~83、a*=-1~6、b*=7~26であることがより好ましく、L*=63~83、a*=-1~4、b*=7~26であることがよりさらに好ましい。
【0035】
第2部(5)の透光性ΔL*は、2~13が好ましく、2~10がより好ましく、3~7がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより色調遮蔽性を向上させ、天然歯と同等の色調を得ることができる。
【0036】
第2部(5)が2層から構成される場合、第2部(5)の上層(9)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=62~85、a*=-2~7、b*=4~28であることが好ましく、L*=63~83、a*=-1~6、b*=7~26であることがより好ましい。第2部(5)の下層(10)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=60~83、a*=-1~7、b*=6~28であることが好ましく、L*=60~80、a*=0~7、b*=8~28であることがより好ましい。
【0037】
第2部(5)の上層(9)の透光性ΔL*は、2~13が好ましく、2~10がより好ましく、3~7がさらに好ましい。第2部(5)の下層(10)の透光性ΔL*は、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、3~6がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより段階的な色調遮蔽性を示し、歯冠の加工位置を任意に変更することにより、複数のシェードに対応する歯冠を作製することができる。
【0038】
本発明のミルブランク部は、該積層構造において隣接した各層の色調及び/又は透光性が互いに異なることが天然歯の外観に近づける観点から好ましい。例えば、第1部(4)の色調と第2部(5)の色調が同一である実施形態では、透光性について、コア層(3)の透光性ΔL*<エナメル層(2)の透光性ΔL*の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。前記実施形態では、エナメル層(2)の透光性ΔL*とコア層(3)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。前記実施形態では、コア層(3)のL*値<エナメル層(2)のL*値であり、エナメル層(2)のa*値<コア層(3)のa*値であり、エナメル層(2)のb*値<コア層(3)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。
【0039】
また、第1部(4)の色調と第2部(5)の色調が異なる実施形態では、透光性について、第2部(5)の透光性ΔL*<第1部(4)の透光性ΔL*<エナメル層(2)の透光性ΔL*の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。前記実施形態では、エナメル層(2)の透光性ΔL*と第1部(4)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。第1部(4)の透光性ΔL*と第2部(5)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~6がさらに好ましい。前記実施形態では、第1部(4)のL*値<エナメル層(2)のL*値であり、エナメル層(2)のa*値<第1部(4)のa*値であり、エナメル層(2)のb*値<第1部(4)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。さらに、前記実施形態では、第2部(5)のL*値<第1部(4)のL*値であり、第1部(4)のa*値<第2部(5)のa*値であり、第1部(4)のb*値<第2部(5)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。
【0040】
さらに、第2部(5)が2層から構成される実施形態では、透光性について、第2部(5)の下層(10)の透光性ΔL*<第2部(5)の上層(9)の透光性ΔL*<第1部(4)の透光性ΔL*<エナメル層(2)の透光性ΔL*の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。前記実施形態では、エナメル層(2)の透光性ΔL*と第1部(4)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。第1部(4)の透光性ΔL*と第2部(5)の上層(9)の透光性ΔL*の差は、1~7が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい。第2部(5)の上層(9)の透光性ΔL*と第2部(5)の下層(10)の透光性ΔL*の差は、1~7が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい。前記実施形態では、第1部(4)のL*値<エナメル層(2)のL*値であり、エナメル層(2)のa*値<第1部(4)のa*値であり、エナメル層(2)のb*値<第1部(4)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。さらに、前記実施形態では、第2部(5)の下層(10)のL*値<第2部(5)の上層(9)のL*値<第1部(4)のL*値であり、第1部(4)のa*値<第2部(5)の上層(9)のa*値<第2部(5)の下層(10)のa*値であり、第1部(4)のb*値<第2部(5)の上層(9)のb*値<第2部(5)の下層(10)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。また、前記実施形態では、第2部(5)の下層(10)のL*値<第2部(5)の上層(9)のL*値<第1部(4)のL*値<エナメル層(2)のL*値であり、エナメル層(2)のa*値<第1部(4)のa*値<第2部(5)の上層(9)のa*値<第2部(5)の下層(10)のa*値であり、エナメル層(2)のb*値<第1部(4)のb*値<第2部(5)の上層(9)のb*値<第2部(5)の下層(10)のb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点からより好ましい。
【0041】
第2部(5)が2層から構成される実施形態において、上層と下層の色調の差は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、第2部(5)の上層(9)の(L*,a*,b*)を(L9,a9,b9)とし、第2部(5)の下層(10)の(L*,a*,b*)を(L10,a10,b10)としたとき、以下の数式(1)に基づいて算出した△Eが0.5以上であれば好ましく、1.0以上であればより好ましく、1.5以上であればさらに好ましい。
【数1】
【0042】
本発明のミルブランク部は、ジルコニア、ガラスなどのセラミックスから構成されていてもよく、レジンから構成されていてもよいが、強度、耐久性の点からジルコニアであることが好ましく、加工のしやすさの点からジルコニア仮焼体がより好ましい。
【0043】
前記ジルコニア仮焼体は、前述した各層の好適な色調、透光性を満たす目的で顔料や添加剤を含むことが好ましい。
【0044】
前記顔料としては、歯科用組成物に用いられる公知の顔料(無機顔料、複合顔料、蛍光顔料等)を用いることができる。無機顔料としては、例えば、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄赤、酸化クロム(Cr2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン等の酸化物等が挙げられる。また、複合顔料としては、例えば、(Zr,V)O2、Fe(Fe,Cr)2O4、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)2O4・ZrSiO4、(Co,Zn)Al2O4等が挙げられる。蛍光顔料としては、例えば、Y2SiO5:Ce、Y2SiO5:Tb、(Y,Gd,Eu)BO3、Y2O3:Eu、YAG:Ce、ZnGa2O4:Zn、BaMgAl10O17:Eu等が挙げられる。
【0045】
前記ジルコニア仮焼体は、歯科用製品として繰り返しの咀嚼運動に耐えるだけの耐チッピング性、及び耐クラック性や、曲げ強さを必要とする点で、安定化剤を含むことが好ましい。すなわち、焼結前のジルコニアに安定化剤を含ませることが好ましい。これにより、歯科用製品の基材となる、焼結後のジルコニア焼結体が、部分安定化ジルコニア及び完全安定化ジルコニアの少なくとも一方をマトリックス相として有することができる。前記ジルコニア焼結体において、ジルコニアの主たる結晶相は正方晶及び立方晶の少なくとも一方であり、正方晶及び立方晶の両方を含有してもよい。また、前記ジルコニア焼結体は単斜晶を実質的に含有しないものが好ましい。実質的に単斜晶を含有しないとは、ジルコニア焼結体における単斜晶の含有量が5.0質量%未満であり、好ましくは1.0質量%未満である。なお、安定化剤を添加して部分的に安定化させたジルコニアは、部分安定化ジルコニア(PSZ;Partially Stabilized Zirconia)と呼ばれ、完全に安定化させたジルコニアは完全安定化ジルコニアと呼ばれている。
【0046】
前記安定化剤としては、酸化イットリウム(Y2O3)(以下、「イットリア」という。)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(カルシア;CaO)、酸化マグネシウム(マグネシア;MgO)、酸化セリウム(セリア;CeO2)、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)、酸化スカンジウム(Sc2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化ランタン(La2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、酸化プラセオジム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)、酸化ユウロピウム(Eu2O3)及び酸化ツリウム(Tm2O3)からなる群から選ばれた酸化物の少なくとも1種であることが好ましい。特に、高い透光性と強度向上の点から、安定化剤としてイットリアが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
安定化剤がイットリアを含有する場合、イットリアの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~8モル%が好ましく、3~6モル%がより好ましい。この含有量であれば、単斜晶への相転移を抑制するとともに、ジルコニア焼結体の透明性を高めることができる。
【0048】
安定化剤として酸化カルシウムを含有する場合、酸化カルシウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~15モル%が好ましく、2.1~12モル%がより好ましい。
【0049】
安定化剤として酸化マグネシウムを含有する場合、酸化マグネシウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~12モル%が好ましく、2.1~10モル%がより好ましい。
【0050】
安定化剤として酸化セリウムを含有する場合、酸化セリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~18モル%が好ましく、2.1~12モル%がより好ましい。
【0051】
安定化剤として酸化スカンジウムを含有する場合、酸化スカンジウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0052】
安定化剤として酸化ランタンを含有する場合、酸化ランタンの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、1~10モル%が好ましく、2~7モル%がより好ましい。
【0053】
安定化剤として酸化エルビウムを含有する場合、酸化エルビウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0054】
安定化剤として酸化プラセオジムを含有する場合、酸化プラセオジムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0055】
安定化剤として酸化サマリウムを含有する場合、酸化サマリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0056】
安定化剤として酸化ユウロピウムを含有する場合、酸化ユウロピウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0057】
安定化剤として酸化ツリウムを含有する場合、酸化ツリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
【0058】
なお、ジルコニア焼結体中の安定化剤の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析、蛍光X線分析等によって測定することができる。
【0059】
本発明の歯科用ミルブランクの製造方法について以下に説明する。
【0060】
本発明の歯科用ミルブランクの製造方法は、粉末プレス法にてコア層(3)を仮成形し、仮成形体となったコア層(3)をエナメル層(2)で覆い本プレス成形する工程を含む。
【0061】
前記粉末プレス法とは、ある層を構成する粉体(例えば、コア層(3)を作製する場合、ジルコニア粉末)及び、顔料や添加剤などの成分が配合された粉体を用意し、金型中でパンチを用いてプレス成形する方法を表す。
【0062】
仮成形時のプレスは従来公知の条件を用いることができるが、プレス圧は、後の本プレス成形より低い条件とする必要がある。得られる成形体(ミルブランク部)の密度は2.0~4.0g/cm3であることが好ましく、該密度を達成できる限り、本プレス成形の装置や条件は限定されない。
【0063】
本発明において、コア層(3)が第2部(5)を有する場合、粉末プレス法にて第1部(4)及び第2部(5)を仮成形し、仮成形体となった第1部(4)及び第2部(5)をエナメル層(2)で覆い本プレス成形する工程を含むことが好ましい。より好ましくは、粉末プレス法にて第2部(5)を仮成形し、得られた第2部(5)の上に第1部(4)の粉末原料を配置し、さらにプレス成形により仮成形し、仮成形体となった第1部(4)及び第2部(5)を、エナメル層(2)で覆い本プレス成形する工程を含む。
【0064】
第2部(5)の仮成形時のプレス圧は、第1部(4)の仮成形時より低い条件とし、かつ第1部(4)の仮成形時の圧力は後の本プレス成形より低い条件とすることが好ましい。
【0065】
得られる成形体(ミルブランク部)の密度は2.0~4.0g/cm3であることが好ましく、該密度を達成できる限り本プレス成形の装置や条件は限定されない。
【0066】
本発明のミルブランク部において、特定の形状を有するコア層(3)を得るために、コア層(3)の仮成形に該形状を有する金型を用いてプレスしてもよく、通常の金型を用いてプレスした後に仮成形体を削って該形状に整えてもよい。本発明の歯科用ミルブランクの製造方法において、第1部(4)及び/又は第2部(5)を前記した所定の形状に成形する工程を含むことが好ましい。各層の境界線をぼかす効果があることから、第1部(4)及び第2部(5)の所望の形状に加工した後の仮成形体を本プレス成形前にサンドブラスト処理することが好ましい。
【0067】
〔歯科用ミルブランク〕
本発明の歯科用ミルブランクは前記ミルブランク部を有し、当該ミルブランク部と支持部とを有することが好ましい。当該支持部によって歯科用ミルブランクをミリング装置に固定することができる。支持部をミルブランク部に取り付ける方法に特に制限はなく、例えば、接着剤等によりミルブランク部と支持部とを接着することができる。
【0068】
本発明の歯科用ミルブランクは歯科用途に使用され、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、アンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯等の歯科用補綴物の作製などに好適に用いることができる。本発明の歯科用ミルブランクから歯科用補綴物を製造する方法に特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができるが、該ミルブランクを切削加工する工程を含むことが好ましい。
【0069】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例】
【0070】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想の範囲内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0071】
[実施例1]
安定化剤としてイットリアを6モル%含有するジルコニア粉末を用意し、直径約11mmの円柱状金型に、プレス後の第2部(5)の高さが7.25mmとなるように、該ジルコニア粉末を表1に記載の量の顔料とともに入れた。次に、該ジルコニア粉末を3kNでプレスし仮成形した後、得られた第2部(5)の上に同量のジルコニア粉末と顔料を入れて、さらにプレスし仮成形し、仮成形体を得た。得られた仮成形体を、
図1Aの仮想第二切断面(7)において
図4Dの構造を有する形状となるように削り、コア層(3)の仮成形体を得た。その後、18.4mm×20.3mmの四角柱状金型に前記コア層(3)の仮成形体を設置し、プレス後のエナメル層(2)の高さ(最大高さ)が18mmとなるように前記第1部(4)及び第2部(5)を備えるコア層(3)の仮成形体の周りに、第1部(4)及び第2部(5)に用いたものと同じジルコニア粉末を表1に記載の種類及び量に変更した顔料とともにエナメル質の原料として入れた。次に、該ジルコニア粉末を75kNで本プレス成形した。次に、SKメディカル電子株式会社製焼成炉「ノリタケ カタナ(登録商標) F-1」を使用して該ミルブランク部を1025℃で2時間焼成して、
図1Aの仮想第二切断面(7)において
図4Dの構造を有するジルコニア仮焼体からなるミルブランク部を作製した。
【0072】
次に、ジルコニア焼結体フレームの作製方法を説明する。まず、印象材と呼ばれる型取り材を用い、支台歯、その対合歯及び支台歯周囲の歯列のメス型を採った。次に、そこへ石膏を流し込みオス型の石膏模型を作製し、支台歯、その対合歯及び支台歯周囲の歯列を再現した。次に、ワックスを用いて、石膏模型の支台歯上に、噛み合わせ、形状、寸法等を合わせたワックス冠を形成した。このワックス冠は、フレーム形成の基礎となるものである。次に、石膏模型の支台歯及びワックス冠を、クラレノリタケデンタル株式会社製「カタナ(登録商標) デンタルスキャナーD750」を用いて光学スキャンして、支台歯及びワックス冠のデジタル化した3次元データを得た。なお、本実施例では、石膏模型を光学スキャンしたが、口腔内スキャナにより直接口腔内を光学スキャンしてもよい。また、ワックス冠を用いずに、石膏模型を光学スキャンした後、3次元CADソフトを用いて仮想的なフレーム形状に基づく3次元データを作製してもよい。
【0073】
次に、作製したジルコニア仮焼体からなるミルブランク部から、前記3次元データに基づき、クラレノリタケデンタル株式会社製ミリング加工機「DWX-50N」を用いて、φ2.0mm及びφ0.8mmの超硬ドリルにより前歯フレーム形状に加工した。その後、SKメディカル電子株式会社製焼成炉「ノリタケ カタナ(登録商標) F-1」を使用して、1550℃で2時間焼成して焼結させ、ジルコニア焼結体からなる前歯フレームを作製した。
【0074】
得られた前歯フレームの表面に残っている余剰部分を、軸付きダイヤモンド砥粒を用いて電動切削工具で除去した。次に、50μmのアルミナを用いて0.2MPaの圧力でサンドブラスト処理を行い、該前歯フレームの表面をつや消し状態とした。その後、クラレノリタケデンタル株式会社製「パールサーフェス(登録商標)」で該前歯フレームの表面を研磨し光沢を持たせ、本発明の歯科用補綴物とした。
【0075】
[実施例2]
各層を作製する際の顔料を表1に記載の含有量に変更し、第1部(4)と第2部(5)の色調が異なるようにした以外は、実施例1と同様にしてミルブランク部を作製し、本発明の歯科用補綴物を得た。
【0076】
[実施例3]
各層を作製する際の顔料を表1に記載の含有量に変更し、第1部(4)と第2部(5)の上層と下層の色調が異なるようにして、プレス後の第2部(5)の下層(10)の高さが4mmとなるように該ジルコニア粉末を表1に記載の量の顔料とともに入れて3kNでプレスした後、プレス後の第2部(5)の上層(9)の高さが3.25mmとなるように該ジルコニア粉末を表1に記載の量の顔料とともに入れて3kNでプレスし、仮成形体を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてミルブランク部を作製し、本発明の歯科用補綴物を得た。第2部(5)の上層と下層の色調の差△Eは、2.3であった。
【0077】
[比較例1]
フレームの原料として平行な4層の積層構造であり、コア層(3)は側面が底面に対して垂直な部分を有しない、市販の98.5mm×14.0mmのクラレノリタケデンタル株式会社製「ノリタケ カタナ(登録商標) ジルコニア」ディスクUTML A3を準備した。次に、実施例1において得られた3次元データに基づき、クラレノリタケデンタル株式会社製ミリング加工機「DWX-50N」を用いて、φ2.0mm及びφ0.8mmの超硬ドリルにより該ディスクをフレーム形状に加工した。加工したフレームを前駆体として、SKメディカル電子株式会社製焼成炉「ノリタケ カタナ(登録商標)F-1」を使用して、1550℃で2時間焼成して焼結させ、前歯フレームを作製した。
【0078】
得られた前歯フレームの表面に残っている余剰部分を、軸付きダイヤモンド砥粒を用いて電動切削工具で除去した。次に、50μmのアルミナを用いて0.2MPaの圧力でサンドブラスト処理を行い、前歯フレームの表面をつや消し状態とした。その後、クラレノリタケデンタル株式会社製「パールサーフェス(登録商標)」で該前歯フレームの表面を研磨し光沢を持たせ、歯科用補綴物とした。
【0079】
[比較例2]
各層を作製する際の顔料を表1に記載の含有量に変更し、ボディ層の仮成形体が
図5Aに記載のコア層(3)の形状となるように削った以外は、実施例1と同様にしてミルブランク部を作製し、歯科用補綴物を得た。
【0080】
[比較例3、4]
ボディ層の仮成形体が
図5B、
図5Cに記載のコア層(3)の形状となるように削った以外は、実施例1と同様にしてミルブランク部を作製し、歯科用補綴物を得た。
【0081】
〔色調の測定〕
各実施例及び比較例で作製した歯科用補綴物の各層のジルコニア粉末をそれぞれ単独で用いて単層のジルコニア焼結体を作製し、直径14mm、厚さ1.2mmの円板となるように加工(両面は#600研磨)し、試料とした(n=1)。該試料について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、「CM-3610A」)を用いて、所定の測定条件(D65光源、測定モードSCI、測定径/照明径=φ8mm/φ11mm)で白背景にて、L*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013 測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間)における色度を測定した。白背景とは、JIS K 5600-4-1:1999第4部第1節に記載の隠ぺい率試験紙の白部を意味する。
【0082】
〔透光性の測定〕
各実施例及び比較例で作製した歯科用補綴物の各層のジルコニア粉末をそれぞれ単独で用いて単層のジルコニア焼結体を作製し、直径14mm、厚さ1.2mmの円板となるように加工(両面を#2000の研磨布紙にて研磨)し、試料とした(n=1)。該試料について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、「CM-3610A」)を用いて、所定の測定条件(D65光源、幾何条件c(di:8°、de:8°)、拡散照明:8°受光、測定モードSCI、測定径/照明径=φ8mm/φ11mm)にて測定した、L*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013)における明度(色空間)のL*値を用いて、透光性を示す数値を次のように算出した。試料の背景を白背景にして測定したL*値を第1のL*値とし、第1のL*値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒背景にして測定したL*値を第2のL*値とし、第1のL*値から第2のL*値を控除した値(ΔL*)を、透光性を示す数値とした。白背景とは、JIS K 5600-4-1:1999第4部第1節に記載の隠ぺい率試験紙の白部を意味し、黒背景とは、前記隠ぺい率試験紙の黒部を意味する。
【0083】
〔目視による評価〕
各実施例及び比較例で作製した歯科用補綴物(n=1)について、VITAシェードガイドのシェードA3と目視によって比較した。判断基準を以下に示す。
A:VITAシェードと比較し色調は同等で審美性が最も良く、かつ天然歯の構造に最も近い。
B:VITAシェードと比較し色調は近く審美性が良く、かつ天然歯の構造に最も近い。
C:VITAシェードと比較し色調は近く審美性が良く、かつ天然歯の構造に近い。
D:VITAシェードと比較し色調は近く審美性は良いが、天然歯の構造ではない。
E:VITAシェードと比較し色調は合っておらず審美性が劣り、天然歯の構造ではない。
【0084】
【0085】
目視により評価を行った結果、実施例1~3の歯科用補綴物は天然歯の層構造に類似した形状を有するため、平行な4層の積層構造を有するミルブランク部から加工した比較例1の歯科用補綴物と比較して、審美性に優れ、天然歯に近い前歯フレームを作製することができた。また、比較例2の歯科用補綴物も天然歯の構造に近い外観が得られていたが、実施例1~3の歯科用補綴物は、砲弾形の形状を有するミルブランク部から加工した比較例2の歯科用補綴物と比較して、目視では切縁部の透明性がより天然歯に近い等の点で審美性により優れており、より天然歯に近い前歯フレームを作製することができた。また、比較例3~4も、実施例1~3の歯科用補綴物と比較して、象牙質に相当する部分が狭くなっていることが目視で確認できる等により審美性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の歯科用ミルブランクは、高い審美性を有する歯科用補綴物として用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ミルブランク部
2 エナメル層
3 コア層
4 第1部
5 第2部
51 台座面
6 仮想第一切断面
7 仮想第二切断面
8 第3部
9 第2部の上層
10 第2部の下層