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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】血漿を採取するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240516BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N33/48 B
G01N33/49 Z
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020568761
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019036763
(87)【国際公開番号】W WO2019241384
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】62/738,069
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/683,698
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519325223
【氏名又は名称】ナウダイアグノスティック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、チンウェイ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-502404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0323433(US,A1)
【文献】特表2002-522767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147349(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0318802(US,A1)
【文献】特開2018-059756(JP,A)
【文献】米国特許第08349618(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0076182(US,A1)
【文献】国際公開第2017/161350(WO,A1)
【文献】米国特許第08105495(US,B2)
【文献】国際公開第2016/025726(WO,A1)
【文献】特表2008-509296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0205086(US,A1)
【文献】米国特許第07238538(US,B2)
【文献】特公平06-096042(JP,B2)
【文献】Jin-Hee Kim,Simple, Miniaturized Blood Plasma Extraction Method,Anal. Chem,2013年10月24日,Vol.85,Page.11501-11508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48
G01N 33/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料から血漿を採取するためのデバイスであって、前記デバイスが、近位端と遠位端との間に延びる流れチャンネルを画成するボディを有し、前記流れチャンネルが、
前記血漿から赤血球を濾過する分離膜を支持するための膜領域と、
前記血漿を採取する吸収膜を支持するための血漿採取領域と
を有し、
前記血漿の流れを止めるために前記吸収膜が前記分離膜から取り外し可能である、デバイス。
【請求項2】
前記分離膜及び前記吸収膜が連続している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記分離膜及び前記吸収膜が重なっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記血漿採取領域及び前記膜領域が取り外し可能に結合され得る、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記膜領域及び/又は前記血漿採取領域が、前記血漿採取領域及び/又は前記膜領域と係合する舌部を有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記舌部が、対応するくぼみと係合する突出部を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記血漿採取領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記膜領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記血漿採取領域の前記頂部分が、前記膜領域の頂表面と対合するための横方向突出部を有する、請求項7又は8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記血漿採取領域の前記頂部分が、その側部表面及び/又は底部表面上に溝をさらに有し、前記溝が、前記血漿採取領域の前記底部分の頂表面上の対応する突出部と対合する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記血漿採取領域の底部分が、表面上で前記デバイスを傾斜させるためのスタンド部材を有する、請求項7から10までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記膜領域の前記頂部分が、前記血漿採取領域の側部表面と係合するためのアーム部材を有する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項13】
前記膜領域の前記頂部分及び前記膜領域の前記底部分が、係合可能に対合するポスト及び空洞を有する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記膜領域の頂部分が、前記膜領域の前記底部分の頂表面上の横方向突出部材と対合するための溝を有する底部表面をさらに有する、請求項12又は13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記血漿採取領域及び前記膜領域が、接着剤なしで取り外し可能に結合可能である、請求項4から14までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記吸収膜が、事前定義されたボリュームを有する、請求項1から15までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記事前定義されたボリュームが5μlから50μlである、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記膜領域は、前記膜領域内の前記流れチャンネルの頂部壁及び底部壁が前記分離膜に接触しないように、拡大されている、請求項1から17までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記膜領域が、前記分離膜を支持するための、前記流れチャンネルの頂部壁及び/又は底部壁から延びる1つ又は複数の支持体を有する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記支持体のうちの少なくとも1つの支持体が前記流れチャンネルの前記底部壁から延びている、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記吸収膜を容易に取り外せるように構成された、請求項1から20までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記遠位端にハンドルをさらに有する、請求項1から21までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ハンドルが、親指又は指を支持するためのギザギザのある円形物を有する、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
カバーをさらに有する、請求項1から23までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記分離膜を有する、請求項1から24までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記分離膜が、溶血なしに赤血球を受け入れる孔径を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記分離膜が、最大8μmの平均孔径を有する、請求項25又は26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記分離膜がガラス繊維を含む、請求項25から27までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記分離膜が、前記血漿の最前部分と共に移動する着色剤を含む、請求項25から28までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記吸収膜を有する、請求項1から29までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記吸収膜が紙パッドを有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記吸収膜が前記分離膜に付着していない、請求項10又は31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記吸収膜が、前記血漿の最前部分と共に移動する着色剤を含む、請求項30から32までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記デバイスが、前記近位端からの前記分離膜を通る前記血液の採取及び流れを可能にし、そこで前記赤血球が保持され、且つ前記血漿が単一ステップで前記吸収膜内へと流れ続ける、請求項1から33までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記デバイスが、前記流れチャンネルを通る前記血液の流れを引き起こすのに緩衝剤又は希釈剤の追加を必要としない、請求項1から34までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記試料を視覚的に検査するための、前記試料を空気乾燥するための、及び/又は前記血漿の流れを妨害することを目的として前記分離膜及び前記吸収膜を分離するための、窓をさらに有する、請求項1から35までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記血液試料が抗凝血物質を必要としない、請求項1から36までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
血液試料から血漿試料を採取するワンステップの方法であって、前記方法が、分離膜及び吸収膜を有する請求項1から37までのいずれか一項に記載のデバイスに前記血液試料を与えるステップと、前記試料が流れチャンネル内に、前記流れチャンネルを通して引き込まれることを可能にするステップとを含む、ワンステップの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体試料の採取(collection)に関する。より詳細には、本発明は、いくつかの観点(aspect)において、流体採取ユニット、及び関連する方法、及びそれを有するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
全血から血漿を採取及び分離するための従来の方法は、通常、静脈血の採血から比較的大量の血液を採取することを必要とする。次いで、全血が遠心分離によって分離され、それにより比較的大量の血漿が得られることになり、また訓練された技術者という形での人間の介入を必要とする。このような採取方法は、医療機関内に患者を存在させることを必要とする。全血から赤血球を濾過して血漿を残すのにラテラル・フロー・デバイス(lateral flow device)が使用されてきた。これらのラテラル・フロー・デバイスは、通常、全血から赤血球を濾過するための膜と、パッドとを有し、パッド内で血漿が採取される。例えば、米国特許第5,064,541号、米国特許第5,916,521号、米国特許第7,736,907号、米国特許第7,785,865号、米国特許第8,119,393号、米国特許第8,377,379号、及び米国特許第9,816,979号を参照されたい。
【0003】
米国特許第6,036,659号が、実験室分析のための遠隔生物試料採取(remote-site biological sample collection)のためのデバイスを説明している。このデバイスは複数の構成で作られ得、これらの構成のすべてが、生物試料を採取及び分離してその所望の成分にするための分離膜を有し、この所望の成分が検出又は測定される。
【0004】
従来技術の欠陥のうちの少なくとも一部の欠陥を解消又は軽減するための又は有用な代替形態を提供するための代替の構成(composition)が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5,064,541号
【文献】米国特許第5,916,521号
【文献】米国特許第7,736,907号
【文献】米国特許第7,785,865号
【文献】米国特許第8,119,393号
【文献】米国特許第8,377,379号
【文献】米国特許第9,816,979号
【文献】米国特許第6,036,659号
【文献】米国特許第7,238,538号
【文献】国際特許出願公開第WO2009/143601号
【文献】国際特許出願公開第WO2013/155617号
【発明の概要】
【0006】
1つの観点によると、血液試料から血漿を採取するためのデバイスが提供され、このデバイスが、近位端と遠位端との間で延在する流れチャンネルを画定するボディを有し、流れチャンネルが、
血漿から赤血球を濾過する分離膜を支持するための膜領域と、
血漿を採取する吸収膜を支持するための血漿採取領域と
を有し、
分離膜から吸収膜までの血漿の流れが妨害可能である。
【0007】
1つの観点では、分離膜から吸収膜までの血漿の流れが遮断される。
【0008】
1つの観点では、分離膜及び/又は吸収膜を取り外すことにより血漿の流れが遮断される。
【0009】
1つの観点では、吸収膜を分離膜から分離することにより血漿の流れが遮断される。
【0010】
1つの観点では、分離膜及び吸収膜が連続する。
【0011】
1つの観点では、分離膜及び吸収膜が重なる。
【0012】
1つの観点では、血漿採取領域及び膜領域が取り外し可能に結合され得る。
【0013】
1つの観点では、膜領域及び/又は血漿領域が、血漿領域及び/又は膜領域に係合される舌部を有する。
【0014】
1つの観点では、舌部が、対応するくぼみに係合される突出部を有する。
【0015】
1つの観点では、血漿採取領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する。
【0016】
1つの観点では、膜領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する。
【0017】
1つの観点では、血漿採取領域の頂部分が、膜領域の頂表面と対合するための横方向突出部を有する。
【0018】
1つの観点では、血漿採取領域の頂部分が、血漿採取領域の底部分の頂表面上にある対応する突出部と対合(結合)するための溝をその側部表面及び/又は底部表面上にさらに有する。
【0019】
1つの観点では、血漿採取領域の底部分が、表面上でデバイスを傾斜させるためのスタンド部材を有する。
【0020】
1つの観点では、膜領域の頂部分が、血漿採取領域の側部表面に係合されるためのアーム部材を有する。
【0021】
1つの観点では、膜領域の頂部分及び膜領域の底部分が、係合可能に対合する、ポスト及び空洞を有する。
【0022】
1つの観点では、膜領域の頂部分が、膜領域の底部分の頂表面上にある横方向に突出する部材と対合するための溝を有する底部表面をさらに有する。
【0023】
1つの観点では、血漿採取領域及び膜領域が接着剤を用いずに取り外し可能に結合可能である。
【0024】
1つの観点では、吸収膜が事前定義されたボリューム(容積)を有する。
【0025】
1つの観点では、事前定義されたボリュームが約5μlから約50μlであり、約5μlから約25μl、約10μlから約20μl、約10μlから約15μlなどである。
【0026】
1つの観点では、膜領域が、膜領域内の流れチャンネルの頂部壁及び底部壁を分離膜に接触させないように、拡大されている。
【0027】
1つの観点では、膜領域が、分離膜を支持するための、流れチャンネルの頂部壁及び/又は底部壁から延在する1つ又は複数の支持体を有する。
【0028】
1つの観点では、支持体のうちの少なくとも1つの支持体が流れチャンネルの底部壁から延在する。
【0029】
1つの観点では、デバイスが、吸収膜を容易に取り外すように構成される。
【0030】
1つの観点では、デバイスが遠位端にハンドルをさらに有する。
【0031】
1つの観点では、ハンドルが、親指又は指を支持するためのギザギザのある円形物(indented circle)を有する。
【0032】
1つの観点では、デバイスがカバーをさらに有する。
【0033】
1つの観点では、デバイスが分離膜を有する。
【0034】
1つの観点では、分離膜が、実質的に(有意な)溶血なしに赤血球を受け入れる孔径(pore size)を有する。
【0035】
1つの観点では、分離膜が、約6μmから約8μmなどといったように、最大約8μmの、赤血球の概略のサイズより大きい平均孔径を有する。
【0036】
1つの観点では、分離膜がガラス繊維を含む。
【0037】
1つの観点では、分離膜が、血漿の最前部分(front)と共に移動可能である(mobilize)着色剤を含む。
【0038】
1つの観点では、デバイスが吸収膜をさらに有する。
【0039】
1つの観点では、吸収膜が紙パッドを有する。
【0040】
1つの観点では、吸収膜が分離膜に付着しない。
【0041】
1つの観点では、吸収膜が、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含む。
【0042】
1つの観点では、デバイスが、近位端から分離膜を通る形での血液の採取及び流れを可能にし、分離膜で赤血球が保持され、血漿が単一ステップで吸収膜の中まで継続して流れる。
【0043】
1つの観点では、デバイスが、流れチャンネルを通る血液の流れを引き起こすのに緩衝剤又は希釈剤を追加することを必要としない。
【0044】
1つの観点では、デバイスが、試料を視覚的に検査するための、試料を空気乾燥するための、並びに/或は血漿の流れを妨害することを目的として分離膜及び吸収膜を分離するための、窓をさらに有する。
【0045】
1つの観点によると、血液試料から血漿を採取するためのデバイスが提供され、このデバイスが、近位端と遠位端との間で延在する流れチャンネルを画定するボディを有し、流れチャンネルが、
血漿から赤血球を濾過する分離膜を支持するための膜領域と、
血漿を採取する吸収膜を支持するための血漿採取領域と
を有し、
血漿の流れを止めるために、吸収膜が分離膜から取り外し可能である。
【0046】
1つの観点では、分離膜及び吸収膜が連続する。
【0047】
1つの観点では、分離膜及び吸収膜が重なる。
【0048】
1つの観点によると、血液試料から血漿を採取するためのデバイスが提供され、このデバイスが、近位端と遠位端との間で延在する流れチャンネルを画定するボディを有し、流れチャンネルが、
血漿から赤血球を濾過する分離膜を支持するための膜領域と、
血漿を採取する吸収膜を支持するための血漿採取領域と
を有し、
血漿の流れが、分離膜及び吸収膜を流体連通させる第1の配置構成(orientation)、並びに分離膜及び吸収膜を流体連通させない第2の配置構成において、制御可能である。
【0049】
1つの観点では、第2の配置構成において、分離膜から吸収膜への間の流体連通が遮断される。
【0050】
1つの観点では、第2の配置構成が、分離膜及び/又は吸収膜を取り外すことを含む。
【0051】
1つの観点では、第2の配置構成が、吸収膜を分離膜から分離することを含む。
【0052】
1つの観点では、分離することが永久的である。
【0053】
1つの観点では、分離することが一時的である。
【0054】
1つの観点では、第1の配置構成において分離膜及び吸収膜が連続する。
【0055】
1つの観点では、第1の配置構成において分離膜及び吸収膜が重なる。
【0056】
1つの観点では、血漿採取領域及び膜領域が取り外し可能に結合され得る。
【0057】
1つの観点では、膜領域及び/又は血漿領域が、血漿領域及び/又は膜領域に係合される舌部を有する。
【0058】
1つの観点では、舌部が、対応するくぼみに係合される突出部を有する。
【0059】
1つの観点では、血漿採取領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する。
【0060】
1つの観点では、膜領域が、取り外し可能に結合され得る頂部分及び底部分を有する。
【0061】
1つの観点では、血漿採取領域の頂部分が、膜領域の頂表面と対合するための横方向突出部を有する。
【0062】
1つの観点では、血漿採取領域の頂部分が、血漿採取領域の底部分の頂表面上にある対応する突出部と対合するための溝をその側部表面及び/又は底部表面上にさらに有する。
【0063】
1つの観点では、血漿採取領域の底部分が、表面上でデバイスを傾斜させるためのスタンド部材を有する。
【0064】
1つの観点では、膜領域の頂部分が、血漿採取領域の側部表面に係合されるためのアーム部材を有する。
【0065】
1つの観点では、膜領域の頂部分及び膜領域の底部分が、係合可能に対合する、ポスト及び空洞を有する。
【0066】
1つの観点では、膜領域の頂部分が、膜領域の底部分の頂表面上にある横方向に突出する部材と対合するための溝を有する底部表面をさらに有する。
【0067】
1つの観点では、血漿採取領域及び膜領域が接着剤を用いずに取り外し可能に結合可能である。
【0068】
1つの観点では、吸収膜が事前定義されたボリュームを有する。
【0069】
1つの観点では、事前定義されたボリュームが約5μlから約50μlであり、約5μlから約25μl、約10μlから約20μl、約10μlから約15μlなどである。
【0070】
1つの観点では、膜領域が、膜領域内の流れチャンネルの頂部壁及び底部壁を分離膜に接触させないように、拡大されている。
【0071】
1つの観点では、膜領域が、分離膜を支持するための、流れチャンネルの頂部壁及び/又は底部壁から延在する1つ又は複数の支持体を有する。
【0072】
1つの観点では、支持体のうちの少なくとも1つの支持体が流れチャンネルの底部壁から延在する。
【0073】
1つの観点では、デバイスが、吸収膜を容易に取り外すように構成される。
【0074】
1つの観点では、デバイスが遠位端にハンドルをさらに有する。
【0075】
1つの観点では、ハンドルが、親指又は指を支持するためのギザギザのある円形物を有する。
【0076】
1つの観点では、デバイスがカバーをさらに有する。
【0077】
1つの観点では、デバイスが分離膜を有する。
【0078】
1つの観点では、分離膜が、実質的に溶血なしに赤血球を受け入れる孔径を有する。
【0079】
1つの観点では、分離膜が、約6μmから約8μmなどといったように、最大約8μmの、赤血球の概略のサイズより大きい平均孔径を有する。
【0080】
1つの観点では、分離膜がガラス繊維を含む。
【0081】
1つの観点では、分離膜が、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含む。
【0082】
1つの観点では、デバイスが吸収膜を有する。
【0083】
1つの観点では、吸収膜が紙パッドを有する。
【0084】
1つの観点では、吸収膜が分離膜に付着しない。
【0085】
1つの観点では、吸収膜が、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含む。
【0086】
1つの観点によると、血液試料から血漿を採取するためのデバイスが提供され、このデバイスが、近位端と遠位端との間で延在する流れチャンネルを画定するボディを有し、流れチャンネルが、
血漿から赤血球を濾過する分離膜を支持するための膜領域と、
血漿を採取する吸収膜を支持するための血漿採取領域と、
膜領域を血漿採取領域から分離するためのチャンバと
を有する。
【0087】
1つの観点によると、チャンバの壁が近位側通気孔を有する。
【0088】
1つの観点では、近位側通気孔がチャンバの底部壁内にある。
【0089】
1つの観点では、チャンバの壁が、分離膜内の血漿の表面張力を破壊するための及び/又は分離膜に対応するための突出部を有する。
【0090】
1つの観点では、チャンバが事前定義されたボリュームを有する。
【0091】
1つの観点では、事前定義されたボリュームが約5μlから約50μlであり、約5μlから約25μl、約10μlから約20μl、約10μlから約15μlなどである。
【0092】
1つの観点では、膜領域が、近位端及び遠位端で分離膜を支持するためのものである。
【0093】
1つの観点では、膜領域が、膜領域内の流れチャンネルの頂部壁及び底部壁を分離膜に接触させないように、拡大されている。
【0094】
1つの観点では、膜領域が、分離膜を支持するための、流れチャンネルの頂部壁及び/又は底部壁から延在する1つ又は複数の支持体を有する。
【0095】
1つの観点では、支持体のうちの少なくとも1つの支持体が流れチャンネルの底部壁から延在する。
【0096】
1つの観点では、デバイスが、吸収膜を容易に取り外すように構成される。
【0097】
1つの観点では、デバイスが、取り外し可能に結合され得る2つの部分から形成される。
【0098】
1つの観点では、デバイスが遠位端にハンドルをさらに有する。
【0099】
1つの観点では、ハンドルが、親指又は指を支持するためのギザギザのある円形物を有する。
【0100】
1つの観点では、デバイスがカバーをさらに有する。
【0101】
1つの観点では、デバイスが、膜領域の上流に、事前定義されたボリュームを有する流れ経路領域をさらに有し、ここでは、事前定義されたボリュームがチャンバのボリュームより大きい。
【0102】
1つの観点では、デバイスが分離膜を有する。
【0103】
1つの観点では、分離膜が、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含む。
【0104】
1つの観点では、分離膜が、実質的に溶血なしに赤血球を受け入れる孔径を有する。
【0105】
1つの観点では、分離膜が、約6μmから約8μmなどといったように、最大約8μmの、赤血球の概略のサイズより大きい平均孔径を有する。
【0106】
1つの観点では、分離膜がガラス繊維を含む。
【0107】
1つの観点では、デバイスが吸収膜を有する。
【0108】
1つの観点では、分離膜が、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含む。
【0109】
1つの観点では、吸収膜が紙パッドを有する。
【0110】
1つの観点では、デバイスが、近位端から分離膜を通る形での血液の採取及び流れを可能にし、分離膜で赤血球が保持され、血漿が単一ステップで吸収膜の中まで継続して流れる。
【0111】
1つの観点では、デバイスが、流れチャンネルを通る血液の流れを引き起こすのに緩衝剤又は希釈剤を追加することを必要としない。
【0112】
1つの観点では、デバイスが、試料を視覚的に検査するための、試料を空気乾燥するための、並びに/或は血漿の流れを妨害することを目的として分離膜及び吸収膜を分離するための、窓をさらに有する。
【0113】
1つの観点では、血液試料が抗凝血物質を必要としない。
【0114】
1つの観点によると、血液試料から血漿試料を採取するワンステップの方法が提供され、この方法が、分離膜及び吸収膜を有する本明細書で説明されるデバイスに血液試料を与えることと、試料を流れチャンネルの中に吸い込むのを及び試料を流れチャンネルを通して吸い込むのを可能にすることとを含む。
【0115】
以下の詳細な説明から本発明の他の特徴及び利点が明らかとなる。しかし、詳細な説明及び具体的な例が、本発明のいくつかの観点を示すものであるが、単に例示として与えられるものであることを理解されたい。その理由は、上記の詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内にある多様な変更形態及び修正形態が当業者には明らかとなるからである。
【0116】
図を参照する以下の説明から本発明がさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】本明細書で説明されるデバイスの第1の観点を示す上面斜視図である。
図2図1のデバイスを示す底面斜視図である。
図3図1のデバイスを示す側面図である。
図4図1のデバイスを示す分解斜視図である。
図5】膜を有さない、図1のデバイスの線5-5に沿う断面図である。
図6】分離膜及び吸収膜を有さない、図1のデバイスの線5-5に沿う断面図である。
図7図6に示されるボックス7を示す詳細図である。
図8】本明細書で説明されるデバイスの第2の観点を示す上面斜視図である。
図9】背面部分が取り付けられていない、図8のデバイスを示す底面斜視図である。
図10】背面部分が取り付けられている、図9のデバイスを示す底面斜視図である。
図11】分離構成である、図8のデバイスを示す上面斜視図である。
図12】分離膜及び吸収膜を有する、図8のデバイスの線12-12に沿う断面図である。
図13】閉構成である、図8のデバイスの血漿採取部分を示す上面斜視図である。
図14】吸収膜を有する、図8のデバイスの血漿採取部分を示す分解上面斜視図である。
図15】吸収膜を有する、図8のデバイスの血漿採取部分を示す分解底面斜視図である。
図16】閉構成である、図8のデバイスの血漿セパレータ部分を示す底面斜視図である。
図17】分離膜が挿入された、図8のデバイスの血漿セパレータ部分を示す分解底面斜視図である。
図18】分離膜を有する、図8のデバイスの血漿セパレータ部分を示す分解底面斜視図である。
図19】分離膜を有する、図8のデバイスの血漿セパレータ部分を示す分解上面斜視図である。
図20】本明細書で説明されるデバイスの第2の観点を示す上面斜視図である。
図21】背面部分が取り付けられていない、図20のデバイスを示す底面斜視図である。
図22】背面部分が取り付けられている、図20のデバイスを示す底面斜視図である。
図23】分離構成である、図20のデバイスを示す上面斜視図である。
図24】分離構成である、図20のデバイスを示す底面斜視図である。
図25】分離膜及び吸収膜を有する、図20のデバイスの線25-25に沿う断面図である。
図26】吸収膜を有する、図20のデバイスの血漿採取部分を示す分解底面斜視図である。
図27】閉構成である、図20のデバイスの血漿セパレータ部分を示す底面斜視図である。
図28】分離膜が挿入された、図20のデバイスの血漿セパレータ部分を示す分解底面斜視図である。
図29】分離膜を有する、図20のデバイスの血漿セパレータ部分を示す分解上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0118】
事前定義された既知のボリュームの血漿を全血試料から採取及び分離するためのデバイスが、いくつかの観点において、本明細書で説明される。毛細管作用及び重力の組み合わせを介して、少量であるが十分であるボリュームの血漿が全血から分離されて、デバイス内で保持される吸収膜内で採取される。吸収膜がデバイスから取り外され得、膜内の血漿が回収されて直接に評価され得る。さらに、血球が別途採取され得、やはり評価され得る。
【0119】
いくつかの観点では、吸収膜までの試料の流れが、血漿の採取時に試料からの血漿の分離を永久的なものとするように、妨害され得る。言い換えると、使用者が、採取された血漿を不明瞭にする可能性があるか又は採取された血漿に他の形で干渉する可能性がある実質的に溶血が起こり得る前に、吸収膜を分離膜から物理的に分離することにより試料の流れを止めるか又は中断させるという選択肢を有する。本明細書で説明されるデバイスは全血から血漿を容易に分離するのを可能にし、いくつかの観点では、血漿中の被分析物及び/又は残りの血球の計量を可能にする。
【0120】
有利には、フィンガー・プリック(finger prick)から得られるような少量のボリュームの全血のみが使用のためにデバイス内で採取される必要がある。加えて、採取される血液が抗凝血物質を含む任意の別個の管類まで移送される必要がなく、また、デバイス又は本明細書で共に説明される分離構成要素のうちに任意の構成要素が抗凝血物質を必要としない。さらに、静脈血をミリリットルの範囲で吸い込むような標準的な方法と比較して、マイクロリットルの範囲の得られた少量のボリュームは低コストで配送され得る。加えて、これらの試験は、血液を採取された人を含めた、任意の人によって実施され得る。フィンガー・プリックによる血液試料のみが必要であり、この血液試料がデバイスに適用され、使用者による他の入力を必要とせずにデバイスにより血漿の分離及び採取が自動で実行される。
【0121】
この点に関して、試料が家庭において又は任意の他の環境において患者自身により便宜的に採取され得る。次いで、自己採取された試料が試験のためにラボラトリに送られ得る。このような自己採取の方法は毛細管血において知られており、ここでは、吸収ペーパーを使用して毛細管血が採取され、吸収ペーパーが乾燥されてその後の試験のためにラボラトリに送られ得る。しかし、従来の採取方法は少なくとも2つの制約を有する:1)試料ボリュームが不明であり、したがって特には試料の乾燥後に被分析物の濃度が正確に決定され得ない、という制約、及び2)赤血球が特定の試験に干渉する可能性があってしたがって血漿試料が好まれる、という制約。本明細書で説明されるデバイスは、毛細管血を採取すること、血液から赤血球を分離すること、及び既知のボリュームの血漿を自動で隔離すること、が可能である。本明細書で説明されるデバイスの構成は、いくつかの観点では、容易な組み立て及び分解を可能にするために可逆的に接続可能である。
【0122】
膜領域を血漿採取領域から分離するためのチャンバを伴う本明細書で説明されるいくつかの観点では、これらの領域が物理的に分離され、膜が互いに接触しない。これにより、分離効率が経時的に低下するというリスクが低減される。その理由は、試料の流れが止まると、溶血が継続して空のチャンバを通って血漿採取領域に入ることができないからである。チャンバを有さない本明細書で説明されるいくつかの観点では、分離膜及び吸収膜が連続しており、互いに妨害可能に流体連通される。試料が流れることが完了すると、膜の間の流体連通が妨害又は中断され得、それにより試料の流れがすべて止められ、赤血球又は溶血した血球(hemolyzed blood cell)が分離膜を通って吸収膜に入るように低速で流れるリスクが排除される。言い換えると、本明細書で説明されるデバイス内での血漿の分離が永久的であるとみなされる。
【0123】
したがって、いくつかの観点では、本明細書で説明されるデバイスがワンステップ・オペレーションを達成することができ、ここでは、毛細管血の少量の試料がデバイスに適用され、既知のボリュームの血漿が得られる。本明細書で説明されるように、全血試料がデバイスに適用され、十分なボリュームが受け取られると、試料がガラス繊維膜などの血漿分離膜に入る。本明細書で説明されるいくつかの観点では、血漿が赤血球から分離されると、血漿が好適なボリュームでチャンバの中に継続して流れる。チャンバが完全に満たされると、血漿が吸収膜の中まで流れる。エア・ベント構造が存在することにより、吸収膜が第2のチャンバ内に保管されるすべての血漿を吸収することになり、吸収膜へのさらなる血漿の流れをすべて終了させる。追加の又は代替の観点では、このデバイスの構成が、分離の完了時に血漿の流れを妨害するのを可能にする。したがって、血漿が採取されると、流れが、例えば、膜を互いから物理的に分離することにより、止められ得る。いくつかの観点では、膜がいかなるポイントにおいも物理的に一体に接続されず、縁部を突き合わせる形で又はわずかに重なる形で、単に互いに接触する。こうすることで、膜が、いくつかの観点では、膜を互いに対して固定するようなバッキング・カードを有さない。例えばハサミなどのいかなるツールも使用することなく、また切り取り線(frangible line)を使用することなく、膜が単純に分離され得る。使用されるデバイス(又は、本明細書で説明されるデバイスの部分)は、通常、吸収膜をデバイスから取り外して質量分析法などの試験のために吸収膜内で血漿を溶出することにより、試験のためのラボラトリに送られ得る。膜中の血漿が事前定義された既知のボリュームであることを理由として、実現される試験が定量的になり得る。
【0124】
(定義)
本明細書で使用される「近位側」という用語は血液採取端部により近いデバイスの部分を意味し、対して本明細書で使用される「遠位側」という用語は血漿分離端部により近いデバイスの部分を意味する。「上流」及び「下流」という用語は、近位端(上流)から遠位端(下流)までの流体の流れを意味する。流体の「最前部分」は、デバイスの近位端から遠位端まで流体が流れるときの流体の下流側の縁部を意味する。
【0125】
「被分析物」という用語は、定量的に又は定性的に測定される任意の化学物質又は生物学的物質を包含することを意図される。典型的ないくつかの観点では、被分析物は、血漿試料中に見られる被分析物である。被分析物には、小分子、タンパク質、抗体、DNA、RNA、核酸、糖質、脂質、有機アナボライト(organic anabolite)又は有機代謝産物(organic metabolite)、ウイルス構成分又はインタクト・ウイルス、バクテリア成分又はインタクト・バクテリア(intact bacteria)、細胞組成、又は無傷細胞、並びにその複合種及び派生物が含まれてよい。
【0126】
例えば、本明細書で説明されるデバイスは、訓練された医療従事者を必要とすることなく被験者から血漿試料を迅速且つ容易に得るのに特に使用されるものである。単純なフィンガー・プリックによる血液試料が得られてデバイスの近位端に適用され得、そこで血液試料が流れ経路の中に吸い込まれる。十分なボリュームの試料が得られると、試料が分離膜を通って流れ、赤血球及び他の細胞質の物質を分離し、下流側の端部において血漿試料を得る。次いで、既知のボリュームの通気チャンバの中に入ることにより、事前定義されたボリュームの血漿が吸収パッドに入ることが可能となる。次いで、血漿を含む吸収パッドが従来の方法によって分析され得、それにより中に存在する任意の所望の被分析物を特定し、任意選択で計量する。同様に、血漿の上流にある保持されている細胞質の物質が従来の方法によって分析され得、それにより中に存在する任意の所望の被分析物を特定し、任意選択で計量する。
【0127】
本出願の範囲を理解することにおいて、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素のうちの1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図される。加えて、本明細書で使用される「comprising」という用語及びその派生語は、言及する特徴、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップの存在を明確に示すオープンエンドな用語(open ended term)であることを意図され、言及されない他の特徴、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップの存在を排除しない。上記は、「including」、「having」という用語及びそれらの派生語などの、同様の意味を有する単語にも適用される。
【0128】
特定の構成要素を「comprising」するという形で説明されるいかなる観点も「consist of」又は「consist essentially of」であってもよく(逆も同様)、ここでは、「consisting of」はクローズドエンドな意味又は限定的な意味を有し、「consisting essentially of」は、明確に示される構成要素を含むが、不純物として存在する物質、構成要素を提供するのに使用されるプロセスの結果として存在する回避することができない物質、及び本明細書で説明される技術的効果を達成すること以外の目的のために追加される構成要素を除いて、他の構成要素を排除する、ことを意味する、ことを理解されたい。
【0129】
本明細書において含まれるものとして定義されるいかなる構成要素も、本明細書で暗に定義されるか又は明確に定義されるかに関わらず、但し書きにより又は消極的な限定により、特許請求される本発明から明確に排除される可能性があることを理解されたい。加えて、本明細書で与えられるすべての範囲は、明確に記述されているかどうかに関わらず、範囲の端さらには範囲のすべての中間ポイントを含む。
【0130】
最後に、本明細書で使用される「substantially」、「about」、及び「approximately」などの程度を表す用語は、修飾される用語の妥当な逸脱量を意味し、したがって最終的な結果は有意に変更されない。程度を表すこれらの用語は、逸脱によりそれらが修飾する単語の意味を打ち消さない場合には、修飾される単語の少なくとも±5%の逸脱を含むものとしてみなされるべきである。
【0131】
(ラテラル・フロー・デバイス)
図1から7が、血液試料から血漿を採取するためのラテラル・フロー・デバイス10の第1の観点を示す。図8から19が、血液試料から血漿を採取するためのラテラル・フロー・デバイス100の第2の観点を示す。
【0132】
図1から7に示されるように、デバイス10が近位端12及び遠位端14を有する。近位端12において、血液試料が、指先からの円滑な試料の流れのためのノッチ16又は他の印によって通常は境界を画定される領域内に適用される。遠位端14が、例えば凹形の中央部分を有する円形物などの、親指又は指によって容易に保持されるように成形されたハンドル18を有する。デバイス10が、通常、血漿の乾燥を促進するための及び血漿が成功裏に採取されたかどうかを観察するための開いている窓20を有する。任意選択で、採取が成功である場合に線(line)などの比色的変化(colorimetric change)が起こってよい。
【0133】
デバイス10が、通常、頂部22及び底部24である2つの別個の部片から形成され、頂部22及び底部24が摩擦嵌合又はスナップ嵌合などの取り外し可能な手法で一体に結合される。一体に結合されるとき、デバイスの頂部22及び底部24が図5~7に最も良好に示されるように流れチャンネル26を形成する。デバイス10が、通常、血漿から赤血球を分離するように機能する分離膜28と、血漿を吸収して、赤血球を含む分離膜28から赤血球を分離した状態で維持するように機能する吸収膜30とを有し、分離膜28及び吸収膜30の両方がラテラル・フローの膜(lateral flow membrane)である。図5が、定位置にある分離膜28及び吸収膜30を有さない流れチャンネルを示しており、対して図6及び7が、定位置にある分離膜28及び吸収膜30を有する流れチャンネルを示す。
【0134】
流れチャンネル26がデバイス10の近位端12で始まり、ここで、血液試料が流れチャンネル26に入る。流れチャンネル26が、流れチャンネル26の手前の上流側の領域より大きい断面を有するチャンバとなるように広くなっている膜領域32を有する。流れチャンネル26が膜領域32の直接の近位側にある傾斜部分33を有し、傾斜部分33が膜を定位置で保持すること及び膜に入るように血液試料を付勢することを補助する。特定の領域において流れチャンネル26のボリュームを低減することにより、分離膜28が毛細管力を用いて血液試料を吸い込むことができる。図面では、流れチャンネルが完全な平坦ではなく、試料の流れの方向の下流に移動するにつれて下降するように流れていることが分かる。こうすることで、試料が下流に移動するにつれて毛細管力及び重量の両方が試料に作用することになる。したがって、通常、分離膜28は、分離膜28の頂部側から血液試料が入るようになるように、流れチャンネル26内で保持される。分離膜28の上流において十分なボリュームが流れチャンネルに吸い込まれるまでは、血液が分離膜28の中へ流れ始めない。こうすることで、十分な量の血液が適用される場合のみ、デバイスが血漿の分離及び採取を完了するように動作する。
【0135】
述べたように、流れチャンネル26の膜領域32が、流れチャンネル26の残りの部分より大きいボリュームを有するように広くなっている。分離膜28が定位置にある場合、分離膜28を完全に通過するように血液を移動させる毛細管トラップ36が作られる。これにより、血液が分離膜28を通るのではなく分離膜28の中で動き回るように流れることが回避され、また、血液試料から血漿を完全に分離することが促進され、その結果、赤血球が分離膜28内で保持され、血漿のみが流れチャンネル26を通って継続して流れる。膜領域32が、分離膜28を定位置で維持するのを補助する、及び分離膜28の血液の飽和時に起こる可能性がある垂れを低減する1つ又は複数の支持体38を有することができる。
【0136】
膜領域32に続いて、流れチャンネル26が、分離膜28を定位置で保持すること及びチャンバ40の中への血漿の継続的な下流への流れを付勢することの両方のための収縮部分34において再び収縮しており、収縮部分34は通常、膜を一切含まず、流れ経路内の単純な開領域である。チャンバ40が、通常、流れ経路の近位側領域より小さい断面を有する。チャンバ40の中への血漿の円滑な流れを保証するために、この領域は、流れチャンネル26の上流側領域から試料を吸い込むためにより大きい毛細管力を有さなければならない。定量デバイスでは、チャンバ40が事前定義されたボリュームを有し、チャンバ40の底部壁内にある近位側通気孔42を使用することにより、この事前定義されたボリュームのみを吸収膜30に入れるよう、に設計される。通気孔42が、吸収膜30より小さいがチャンバ40と等しいか又はチャンバ40より大きい毛細管力を有する。こうすることで、血漿採取領域44内で定位置で保持される吸収膜30に対して血漿の最前部分が接触するようになるまで、チャンバ40が気泡を有さないように通気孔42から血漿で満たされることになる。接触すると、血漿が十分な力で吸収膜30の中に吸い込まれることになり、その結果、通気孔42が、分離膜28からの別の血漿ではなく空気をチャンバ40に入れるのを可能にする。これにより、吸収膜30内で所定のボリュームの血漿が得られるようになり、チャンバ40内で気泡が得られるようになり、この気泡がさらなる流れに対してのバリアとして効果的に機能する。
【0137】
試験が完了すると、頂部22を保持してハンドル18を押圧することによりデバイス10が容易に分離され得、その結果、吸収膜30が必要に応じて乾燥及び配送され得るか、又はデバイスが血漿試験のためにラボラトリに直接に配送され得る。
【0138】
分離膜28及び吸収膜30の容易な製造、並びに挿入及び取り外しのために、述べたように、デバイス10は、通常、図3から7に示されるように、対合する頂部分22及び底部分24によって形成される。デバイス10は単一ユニットとして形成されてもよい。示されるように、頂部分22及び底部分24を一体に保持する対合する摩擦嵌合構成要素46及び48が存在する。示されるように、これらの構成要素が、頂部22及び底部24を互いを基準として枢動させるのを可能にし、それにより試験のためにデバイス10を開けて吸収膜30を取り外すのを容易にする。
【0139】
図8から29が、近位端112及び遠位端114をやはり有するデバイス100の第2の観点を示す。遠位端114がハンドル118を有する。デバイス100が、通常、吸収膜130が湿っているかどうかを使用者が確認するのを可能にするために試料の視覚的検査を可能にする開いている窓120を有する。これにより、血漿の採取が完了したことの高い信頼性の指示が与えられることになる。任意選択の実施例では、吸収膜130が、他の点において試験に影響しないような単純な食用色素又は既知の着色試薬などの、血漿の最前部分と共に移動可能である着色剤を含むことができる。こうすることで、最前部分の移動が容易に視覚化される。さらに、特には吸収膜130が乾燥される場合などの、採取された血漿が吸収膜130の全体を満たすには不十分である量である場合、着色された最前部分から充填領域が容易に特定される。湿っている場合は血漿の最前部分は色を有さない場合でも可視となり得るが、着色剤が別途含まれる場合、血漿が乾燥した後でも血漿の最前部分を特定することが補助されることになり、着色剤が含まれない場合では血漿の最前部分を視覚化することが困難である。いくつかの観点では、この可動の着色剤が量制御用の特徴として機能し、この場合、試料の配送先であるラボラトリが、意図される通りに血漿により吸収膜130の全体が満たされているかどうかを、又は試験が不完全であったかどうかを確認することができる。吸収膜130が計量され得、定量試験を依然として維持することを目的として、着色された最前部分において切断されて再び計量され得る。
【0140】
さらに、窓120が、分離された血漿を含む吸収膜130を効率的に且つ迅速に乾燥するのを可能にする。さらに、窓120が存在するということが、吸収膜130が空気に対して開いており、したがって、デバイス10について既に説明したような通気孔42が通常は含まれない、ということを意味する。しかし、所望される場合、通気孔が任意選択で含まれてもよい。図12が、定位置にある分離膜128及び吸収膜130を有する流れチャンネル126を示す。
【0141】
やはり、第1の観点のデバイス10と同様に、デバイス100が、通常、流れチャンネル126、分離膜128、及び吸収膜130を有し、分離膜128及び吸収膜130の両方がラテラル・フローの膜である。膜128、130が、図8に示されるように、流れチャンネル126に流体連通され、第1の配置構成において互いに流体連通される。図11に示されるように、第2の配置構成において、膜を互いから物理的に切り離すことにより、血漿の流れが妨害され得(速度を低下されるか、止められるか、又は遮断される、など)、それにより膜128、130が互いに流体連通されなくなる。
【0142】
図11で最も良好に見ることができるように、デバイス100が、血漿採取領域144及び膜領域132である2つの別個の領域を有し、血漿採取領域144及び膜領域132が摩擦嵌合又はスナップ嵌合などにより取り外し可能に一体に結合される。血漿採取領域144及び膜領域132がこのように接続されることにより、デバイス100が完全に組み立てられるときに血漿採取領域144及び膜領域132が意図されず分離することが低減される。これは、2つの領域132、144の結合又は血漿採取領域144及び膜領域132を作るように結合される膜の結合が、後で説明するように、互いに対しての取り付けのために接着剤を必要としないという点で有利である。これにより領域132、144(又は、後で説明されるその構成要素)が容易に組み立てられたり分解されたりすることが可能となることに加えて、それに付随する使用者にとっての乱雑さ(例えば、粘着性を有する接着剤製品を取り扱うこと)が低減される。
【0143】
図13~15が血漿採取領域144をより詳細に示す。血漿採取領域144が取り外し可能に一体に結合される頂部分101及び底部分150を有し、それにより吸収膜130を保持するための組み立てられた血漿採取領域144を形成する(図14)。いくつかの観点では、血漿採取領域144が、デバイス100の遠位端144でハンドル118を有する。
【0144】
血漿採取領域144の頂部分101が頂表面106(図14)及び底部表面108(図15)を有する。いくつかの観点では、頂表面106が、吸収膜130の視覚的検査並びに/或は分離又は取り外しのための窓120を有する。頂表面106が横方向突出部160を有し、横方向突出部160が頂部分101の長さにわたって延びていてよいか又は頂部分101の一部分のみにわたって延びていてよい。横方向突出部160は、デバイスを組み立てるとき又は使用するときに膜領域132の頂表面105に結合されるためのものである。
【0145】
頂部分101の底部表面108が溝168を有し、溝168が底部表面108の長さにわたって延びていてよいか又は底部表面108の一部分にわたって延びていてよい。本明細書で説明される表面上でのそれらの位置を含めた、突出部160及び溝168のそれぞれの長さは限定的であるとみなされない。
【0146】
血漿採取領域144の底部分150が頂表面151及び底部表面153を有する。頂表面151が頂表面151から上方に延在する突出部170を有し、突出部170が、例えば、頂部分101の底部表面108の溝168に対応する。底部分150が、頂部分101との接続を容易にするための横方向突出部164をさらに有することができる。頂部分101及び底部分150が例えば溝168及び突出部170を介して接続されるとき、吸収膜130が血漿採取領域144内の定置で保持される。吸収膜130を含む血漿採取領域144は、膜領域132から切り離されると、膜血漿採取領域144から吸収膜130を取り外すのを必要とすることなく、さらなる試験及び分析のためのラボラトリに送られ得る。別法として、吸収膜130が血漿採取領域144から取り外されて、乾燥され、さらなる試験のためにラボラトリに送られてもよい。
【0147】
いくつかの観点では、底部分150が、底部表面153に接続可能であるスタンド部材158を有する。スタンド部材158はデバイス100を例えばテーブルの上に載置するのに有用である。いくつかの観点では、スタンド部材158は傾斜表面を有し、血漿が分離膜128から吸収膜130まで下方に移動するのを容易にする。スタンド部材158はさらに、本明細書で説明されるように、一方の手でデバイスを保持することなく血液試料をデバイス100に適用するのに「ハンズフリー」の選択肢を使用者に提供する、という点で有利である。
【0148】
図16~19及び27~29がデバイス100の膜領域132をより詳細に示す。膜領域132が、やはり取り外し可能に一体に結合される頂部分103及び底部分152を有し、それにより分離膜128を保持するための組み立てられた膜領域132を形成する(図17)。
【0149】
膜領域132の頂部分103が頂部分105(図19)及び底部分107(図17)を有する。頂表面105が、デバイス100を使用のために組み立てるときに血漿採取領域144の一部分を囲んで血漿採取領域144に係合されるためのアーム部材154、156を有する。アーム154、156は、血漿採取領域144及び膜領域132を取り外し可能に一体に結合するために血漿採取領域144に対応する限りにおいて、任意の形状であってよい。例えば、上述したように、膜領域132の頂表面105が血漿採取領域144の横方向突出部160と相互作用し、それにより血漿採取領域144と膜領域132との間での取り外し可能な結合をなす。
【0150】
頂部分103の底部表面107が溝182を有し、溝182が底部表面107の長さのわたって延びていてよいか又は底部表面107の一部分にわたって延びていてよい。溝182の長ささらには本明細書で説明される表面上での溝182の位置は、頂部分103を底部分152に取り外し可能に結合するように機能する限りにおいて、限定的であるとみなされない。膜領域132の底部分152が頂表面155及び底部表面157を有する。頂表面155が、デバイス10に対して説明したように、分離膜128を定位置で維持するのを補助する、及び分離膜128の血液の飽和時に起こる可能性がある垂れを低減する支持体138を有することができる。
【0151】
底部分152が、頂部分103の底部表面107の溝182に対応する横方向突出部180をさらに有する。頂部分103及び底部分152が例えば溝182及び突出部180を介して接続されるとき、分離膜128が組み立てられた膜領域132内の定位置で保持される。
【0152】
血漿採取領域144と膜領域132との間での、及び/又はそれらのそれぞれの頂部分101、103と底部分150、152との間での(例えば、上で言及した「構成要素」など)、取り外し可能な結合に関して、本明細書で説明される範囲内において、解除可能な(例えば、取り外し可能な)取り付けを実現する他の既知の方法も可能であることが当業者には容易に明らかとなろう。
【0153】
デバイス10に対して説明したように、試料が流れチャンネル126を通って流れるとき、デバイス100の流れチャンネル126が、流れチャンネル126の残りの部分より大きいボリュームを有するようにやはり広くなっている。やはりデバイス10と同様に、分離膜128が定位置にあるとき、毛細管トラップ136が作られ、それにより血液が分離膜128を完全に通過するように移動させられる。これにより、血液が分離膜128を通るのではなく分離膜128の中で動き回るように流れることが回避され、また、血液試料から血漿を完全に分離することが促進され、その結果、赤血球が分離膜128内で保持され、血漿のみが流れチャンネル126を通って継続して流れる。
【0154】
一体に結合されているとき、膜領域132の頂部分103及び底部分152が流れチャンネル126を形成し、流れチャンネル126が、デバイス10と同様に、デバイス100の近位端122で始まる。流れチャンネル126が、デバイス10の傾斜部分と同様に機能する傾斜部分133を有することができる。デバイス100の流れチャンネル162の説明は、デバイス10に対しての説明と同じであり、したがってデバイス100に対して繰り返し説明する必要はない。
【0155】
通常、分離膜128は、分離膜128の頂部側から血液試料が入るようになるように、流れチャンネル126内で保持される。図12で見ることができるように、膜領域132の底部分152の頂表面155が分離膜128の頂部側と実質的に面一であり、それにより血液試料が膜128の頂部側に入ることが可能となる。デバイス10に対して説明したように、分離膜128の上流において十分なボリュームが流れチャンネルに吸い込まれるまでは、血液が分離膜128の中へ流れ始めない。こうすることで、十分な量の血液が適用される場合のみ、デバイス100が血漿の分離及び採取を完了するように動作する。
【0156】
図20から29がデバイス100のデザインに対してのいくつかの修正形態を示しており、ここでは、分離膜128及び吸収膜130を定位置で保持するのを及び蒸発を低減するのを補助するための、並びに組み立てを改善するための、追加の特徴が含まれる。
【0157】
図20を参照すると、デバイス100の上面図が示されている。構成要素はすべて、図8から19で確認される構成要素と概して同じである。図20では、膜領域132の頂部分103が舌部200を有して示されており、舌部200が遠位端114の方に延在して窓120の一部分及び吸収膜130を覆う。こうすることで、舌部200が窓120から血漿が過度に早期に蒸発するのを低減し、それにより流れを改善し、吸収膜130内での血漿のボリュームの正確さを向上させる。
【0158】
図20及び23に示されるように、舌部200が、血漿採取領域144の頂部分101の窓120内の対応するくぼみ204に係合される突出部202を有する。舌部200は、膜領域132及び血漿採取領域144を使用のための適切な位置で保持し、さらには上で述べたように蒸発を低減するのを補助する。
【0159】
図28が、デバイス100の膜領域132の頂部分103及び底部分152を係合させる代替の方法を示している。この実施例では、底部分152が2つのポスト206を装備し、2つのポスト206がデバイス100の頂部分152内の対応する空洞208に係合される。これらは例えばスナップ嵌合又は摩擦嵌合により係合され得る。
【0160】
図25、26、及び29が、分離膜128及び/又は吸収膜130を定位置で保持するのを補助するピン210を示している。これらのピンは単純に膜128及び/又は130をわずかに付勢するものであり、それにより、使用時に、又は膜領域132及び血漿採取領域144の分離時に、移動する可能性を低減する。
【0161】
吸収膜130が事前定義されたボリュームを有し、この事前定義されたボリュームのみを、血漿採取領域144内で定位置で保持される吸収膜130に入れるように、設計される。血漿が分離膜128の縁部に到達すると、血漿が毛細管力により吸収膜130の中に吸い込まれる。例えば膜128、130が隣接して接触している(例えば、それらの縁部の間で縁部を突き合わせる形での接触)場合又は膜128、130が重なっている場合などの、膜128、130の配置構成に応じて、血漿が吸収膜130の縁部の中に吸い込まれるか又は吸収膜130の頂部側に吸い込まれる。血漿が吸収膜130の中に採取されると、吸収膜130のボリュームが既知であることにより、吸収膜130内には所定のボリュームの血漿が提供されることになる。
【0162】
デバイス100が組み立てられると、吸収膜130が血漿採取領域144内に収容され、分離膜128が膜領域132内に収容される。膜128、130が各々と水平方向に繋げられていてよいか(例えば、それらの縁部の間で縁部を突き合わせる形で接触している)、又は互いに重なっていてよい(吸収膜130が分離膜128に重なる、又はその逆、など)。いくつかの観点では、膜が血漿の流れのための連続する表面を形成する。それらの配置構成に関係なく、膜128、130が互いに流体連通され、流れチャンネル126に流体連通される。膜128、130が互いに重なり合っているか、又はそれらの縁部において互いに接触しているかに関わらず、膜128、130を通る流れチャンネル126からの血漿の流れが連続的なものとなる。これにより、デバイス100を通る血漿の流れの速度を上げる。有利には、膜128、130が互いに繋がっていることで(例えば、隣接する形で横方向において接触することにより、又は重なり合う形で接触することにより)、これらの膜を密接に物理的に接触した状態から単純に外すことにより、流れチャンネル126を通る血漿の流れ(例えば、分離膜128を通る、吸収膜130までの)を妨害するか又は完全に止めることが可能となる。
【0163】
いくつかの観点では、横方向において隣接する配置構成であるか又は重なる配置構成であるとき、膜128、130が膜128、130の間での接着接続(例えば、裏当てストリップなどを介して互いに物理的に接続されること)を必要としない。こうすることで、デバイス10、100(本明細書で説明されるそれらの結合に関連して)及び膜128、130(本明細書で説明される、互いを基準としたそれらの配置構成に関して)、接着剤を用いない。上で述べたように、これにより、組み立て、分解、及び使用に付随する乱雑さが制限されるという利点が追加され、膜の分離が単純で効率的なものとなる。
【0164】
加えて、デバイス100が互いに取り外し可能に結合され得る2つの領域144、132を有することを理由として、領域144、132を互いから切り離すことにより、吸収膜130が分離膜128から物理的に分離され得る(又は、取り外され得る)。こうすることで、血漿の流れが妨害され得る(例えば、止められ得るか又は遮断され得る)。さらに、膜128、130が互いに接触していないとき(例えば、縁部を突き合わせる配置構成又は重なる配置構成ではないとき)、膜128、130は互いに流体連通されていないが、膜128、130が互いに接触しているときは、流体連通されている。したがって、2つの配置構成を採用することにより(膜128、130が流体連通される第1の配置構成、及び膜128、130が流体連通されない第2の配置構成)、血漿の流れの妨害を見ることができる。第2の配置構成では、血漿の流れが妨害される。こうすることで、互いを基準とした膜128、130の配置構成(例えば、本明細書で説明される第1及び第2の配置構成)を介して膜128、130の間の流体連通を制御することにより、血漿の流れが制御され得る。
【0165】
いくつかの観点では、分離が永久的である。いくつかの観点では、血漿の流れの速度が低下される(例えば、膜128、130を互いに部分的に分離することにより)。いくつかの観点では、例えば、膜128、130を互いから完全に分離するか又は取り外すことにより、血漿の流れが遮断される。本明細書で説明されるように、血漿の流れを遮断するか又は止めること(例えば、妨害すること)が、使用者の要求に応じて、不可逆的であってよいか、可逆的であってよいか、永久的であってよいか、又は一時的であってもよい。
【0166】
血漿採取プロセスが完了すると(つまり、血漿が吸収膜130に吸い込まれてしたがって事前定義されたボリュームで採取されると)、又は上述したように血漿の流れが妨害されると、必要に応じて、吸収膜130が、取り外され、乾燥され、配送され得るか、又はデバイス(完全な形として、又は血漿採取領域144として)が血漿試験のためのラボラトリに直接に配送され得る。
【0167】
本明細書で説明されるデバイスでは、任意の分離膜28、128及び/又は吸収膜30、130が使用され得ることを理解されたい。特定の観点では、膜は、各々のその全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,785,865号、米国特許第8,119,393号、又は米国特許第7,238,538号、或は国際特許出願公開第WO2009/143601号又は国際特許出願公開第WO2013/155617号で説明される膜である。通常、吸収膜30、130が、固定のボリュームの血漿を採取するのを可能にする固定のサイズを有する。これにより本明細書で説明されるデバイスの定量的性質が向上する。しかし、膜28、128、30、130のサイズ及び形状が図に見られるサイズ及び形状のみに限定されず、本明細書で説明されるデバイス内での使用を可能にするような修正である限りにおいて、修正されてもよいことに留意することが重要である。このことは当業者には理解されよう。加えて、デバイス100上の窓120のサイズが変化することができることを理由として、吸収膜130のサイズも変化し得る。こうすることで、デバイス100が、吸収膜130の長さ及びひいては採取される血漿の量を変化させるのを可能にする。
【0168】
本明細書で説明される採取ユニットは特には毛細管血の試料の採取での使用に特に適するが、例えば、細胞懸濁液、細胞培養上清、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、母乳、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液、粘液、又はその組み合わせなどの、そこから固体物質を濾過することが所望される可能性がある任意の流体を採取するのにも使用され得ることを理解されたい。
【0169】
本明細書で説明されるデバイスは、少量のボリュームの血液試料と共に使用されるのに適し、これは、1ml以下、約1μlから約1ml、約1μlから約500μl、約1μlから約250μl、約1μlから約100μl、約1μl、約5μl、約10μl、約15μl、約20μl、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約60μl、約70μl、約80μl、又は約90μlから、約5μl、約10μl、約15μl、約20μl、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約60μl、約70μl、約80μl、約90μl、又は約100μlまで、の血液などである。
【0170】
通気孔42をデバイスの底部壁内にあるものとして説明してきた。代わりに、通気孔42が頂部壁又は側壁内にあってもよいか、或は頂部壁、底部壁、又は側壁の組み合わせの中にあってもよいことを理解されたい。また、通気孔42はデバイスの1つ又は複数の壁にわたって延びていてもよい。
【0171】
流れチャンネルが試料の流れ方向においてデバイスの近位端から遠位端まで下降する形で通常は延在し、その結果、重力が、流れ経路に沿って試料を移動させることに伴う毛細管力を補助することができる、ということを上で説明してきたが、流れチャンネルが平坦又は実質的に平坦であってもよいことを理解されたい。したがって、血液試料が分離膜28の横側からつまり横方向の縁部から入ることができることも企図される。
【0172】
(使用方法)
使用時、本明細書で説明されるデバイス10、100がノッチ16における全血試料の近くに配置され、その結果、血液試料が流れチャンネル26、126の中に吸い込まれる。十分なボリュームが採取されると、血液試料の最前部分が分離膜28、128に接触して分離膜28、128の中に吸い込まれ、分離膜28、128では、赤血球が保持され、血漿が継続して移動する。いくつかの観点では、血漿が収縮部分34に接触すると、これが表面張力を破壊するのを補助し、それにより血漿がチャンバ40に入ることが可能となる。血漿の最前部分が吸収膜30に接触するまで、血漿が継続してチャンバ40を充填する。いくつかの観点では、横方向において接触する配置構成又は重なる配置構成などの、吸収膜130を基準とした分離膜128の配置構成が膜128、130を互いに流体連通させるのを可能にし、加えて、分離された血漿を分離膜128から吸収膜130まで容易に移送することも可能にする。本明細書で説明されるように、この観点では、窓120が存在することで、デバイス10の通気孔42の必要性が打ち消される。しかし、その機能性が所望される場合、デバイス100に通気孔42が含まれてもよい。
【0173】
本明細書で説明されるデバイス10の第1の実施例の吸収膜30に接触すると、血漿が十分な力で吸い込まれ、その結果、空気が通気孔42からチャンバ40に入ることになり、それによりより多くの血漿が分離膜28からチャンバ40に入ることが防止される。こうすることで、吸収膜30内で採取される血漿の量がチャンバ40のボリュームに対応することになり、したがって吸収膜30内には所定の既知の量の血漿が存在することになり、それにより、分離及び採取された血漿に対しての定量的評価が可能となる。定量試験が必要ではない場合、通気孔42は排除されてよい。
【0174】
本明細書で説明されるデバイス100の第2の実施例の吸収膜130に接触すると、いくつかの観点では、吸収膜130が予め決定される固定のサイズを有することを理由として、血漿が吸収膜130に到達した後で吸収膜130内で採取された血漿の量が吸収膜130のボリュームに対応することになり、それにより分離及び採取された血漿の定量的評価が可能となる。
【0175】
いくつかの観点では、分離膜128及び/又は吸収膜130において着色剤を含むことにより(ここでは、着色剤が流体及び試料の存在時に可動となり、試料及び得られる血漿の最前部分と共に流れることになる)、血漿の最前部分を特定すること及び血漿採取プロセスの完了を確認することが補助される。上で述べたように、吸収膜30、130が乾燥されると、血漿の最前部分の流れが止まった場所を視覚化することが困難となる可能性がある。吸収膜30、130が乾燥されても、移動可能な着色剤は可視状態を維持し、それにより量の制御を補助し、また、所望される場合に定量的結果をさらに得るために吸収膜30、130を切断してよい場所のための視覚的な印を提供する。
【0176】
血漿が吸収膜30、130内で採取されると、デバイス10、100が、さらなる処理のためのラボラトリに配送され得る。デバイス100に関しては、これはデバイス100全体であってよいか、又は本明細書で説明される血漿採取領域144のみであってよい。別法として、デバイス10、100が開けられてもよく、吸収膜30、130が乾燥されて、中心的な試験施設に容易に配送され得るか、又は直接に試験されてもよい。同様に、全血試料から血漿を分離した後に残る細胞質の物質に対して試験を実行することが望まれる場合、分離膜28、128が吸収膜30、130とは別個に又は共に配送され得る。
【0177】
上記の開示は概して本発明を説明するものである。状況によって示唆され得るか又は状況によって好都合となり得る場合には変更形態及び均等物の置き換えが企図される。本明細書では具体的な用語を採用してきたが、これらの用語は説明的な意味であることを意図され、限定することを目的とはしていない。
【0178】
上で引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照によりその全体が組み込まれていることを具体的に且つ個別に示されているとする場合と同程度で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0179】
本明細書で本発明の好適な観点を詳細に説明してきたが、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、本発明の好適な観点に対して変形形態が作られることが当業者には理解されよう。
図1
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